JP4508537B2 - ニゲロース酢酸エステル、ニゲロース及びニゲリトールの製造方法 - Google Patents
ニゲロース酢酸エステル、ニゲロース及びニゲリトールの製造方法 Download PDFInfo
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、ニゲロース酢酸エステル、ニゲロース(3−O−α―D−グルコピラノシルーD−グルコース)及びニゲリトールの新規な製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
【特許文献1】
特開昭55−19004号公報
【特許文献2】
特開平7−59559号公報
【非特許文献1】
エス・エー・ベーカー(S.A.Barker)等、『ジャーナル・オブ・ザ・ケミカル・ソサイティ(Journal of theChemical Society)』、2448頁乃至2454頁、1957年
【非特許文献2】
フジモトヒロシ等、『アグリ・バイオロ・ケム(Agric.Biol.Chem.)』、第52巻、第6号、1345乃至1351頁、1988年
【非特許文献3】
小林昭一、『食品工業』、第2巻、第29号、20乃至29頁、1988年
【非特許文献4】
タケオケンイチ等、『カーボハイドレート・リサーチ(Carbohydrate Research)』、第224巻、111乃至122頁、1992年
【0003】
糖類の酢酸エステルは、アルキルグルコシドをはじめとする各種糖類誘導体を合成するための中間体としてだけでなく、それ自体、乳化助剤、樹脂添加剤や紙力増強助剤などの工業薬品として、更に医薬品、化粧品の原料として使用される有用な化合物である。このうち、ニゲロース酢酸エステルは、近年記録媒体におけるインク受容層の構成成分として注目されている。また、ニゲロースは、微生物多糖類であるニゲランの加水分解物中より見出された、グルコースがα−1,3−グルコシド結合した2糖類であり、低甘味で上品な甘味を有し、耐熱性や保湿性に優れた糖質である。ニゲロースは、清酒、味醂、味噌、麹汁のような発酵食品や蜂蜜などの日常的に摂取する飲食品中にその存在が確認され、別名サケビオースとも呼ばれている。近年、ニゲロースは、これら飲食品の芳醇なコク味を形成する重要な糖質としてだけでなく、免疫賦活作用や抗う蝕性などを有する新たな機能性食品素材としても注目されている。更に、ニゲリトールをはじめとする糖アルコール類は、一般的に、消化管内で消化吸収されにくい、口内細菌によって発酵されにい、低甘味、非う蝕性、食品の物性改善等の特徴を持ち、食品、医薬品、化粧品の原料として使用される有用な化合物である。
【0004】
従来、ニゲロース酢酸エステル及びニゲリトールの製造方法は、実験室規模のものでしかなく、工業的規模の製造方法は未だ確立されていない。また、ニゲロースの製造法としては、例えば、特許文献1及び非特許文献1に、多糖類であるニゲランやエルシナン等を基質とし、酵素又は酸などを用いて加水分解してニゲロースをはじめとするニゲロオリゴ糖を製造する方法が提案されている。しかしながら、この方法は、基質としてのニゲランやエルシナン等が非常に高価であることから、工業的に安価に大量生産する方法としては好ましくない。
【0005】
また、非特許文献2には、公知のα−グルコシダーゼやグルコアミラーゼの糖転移・縮合反応を用いてニゲロースを調製する方法が開示されているものの、この方法は、ニゲロースの生成量が非常に少量であることから、工業的に安価に大量生産する方法としては好ましくない。
【0006】
更に、非特許文献3には、澱粉加水分解物に、サイクロデキストリン生成酵素を作用させてニゲロースを製造する方法が開示されているものの、この方法は、高価なサイクロデキストリン生成酵素を通常の50倍以上も大量に必要とし、しかもニゲロースの生成量が少ないことから、工業的に安価に大量生産する方法としては好ましくない。
【0007】
更に、非特許文献4には、ニゲロースを有機合成する方法が開示されているものの、この方法は、ニゲロース以外のニゲロオリゴ糖質が生成することから、ニゲロースを高純度で得るには不適である。
【0008】
また、特許文献2には、α−1,4−グルコシド結合したポリサッカライドまたはオリゴサッカライドなどの基質に、α−1,3結合をもたらす糖転移酵素のうちの1種または2種以上を作用させてニゲロースをはじめとするニゲロオリゴ糖を製造する方法が開示されている。しかしながら、この方法も、ニゲロオリゴ糖の生成量は、せいぜい糖固形分当り26.1%(w/w)(以下、本明細書では、特に断らない限り、「%(w/w)」を単に「%」で表す。)であり、十分なものではない。
【0009】
斯かる状況下、ニゲロース酢酸エステル、ニゲロース及びニゲリトールを工業的に大量かつ安価に、高収率で製造し得る新規な製造方法の確立が鶴首されていた。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、前記従来技術に鑑み、ニゲロース酢酸エステル、ニゲロース及びニゲリトールを工業的に大量かつ安価に、高収率で製造し得るニゲロース酢酸エステル、ニゲロース及びニゲリトールの製造方法を確立することを課題とする。
【0011】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、前記課題を解決することを目的として鋭意研究する中、『ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・バイオケミストリー(European Journal of Biochemistry)』、第226巻、641乃至648頁(1994)年において、アルテルナン(alternan)に加水分解酵素アルテルナナーゼ(alternanase)を作用させて得られる、4個のグルコース残基がα−1,3及びα−1,6結合により交互に連なった構造を有するサイクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→}(以下、「環化四糖」という。)の報告があった。この報告を契機として、環化四糖が多方面で利用されることが期待され始めたが、この論文に記載された方法の場合、原料であるアルテルナンの入手が容易でなく、しかも、該原料からの環化四糖の生成収率が工業的観点からすれば十分ではないことなどから、この方法は環化四糖の工業的製造方法として利用できるものではなかった。
【0012】
一方、本発明者らは、国際公開第WO 01/090338号公報において、パノース等の澱粉由来の糖質から環化四糖を生成する、α−イソマルトシル転移酵素を用いる環化四糖の製造方法を開示するとともに、国際公開第WO 02/010361号公報においては、前記α−イソマルトシル転移酵素と、マルトオリゴ糖からα−イソマルトシルグルコ糖質を生成するα−イソマルトシルグルコ糖質生成酵素とを澱粉原料に作用させて環化四糖を効率よく製造する方法を開示している。
【0013】
その後、本発明者らは、環化四糖が分子内にニゲロース構造を有していることに着目し、環化四糖からニゲロース酢酸エステル、ニゲロース及びニゲリトールを製造する方法について加酢分解及び水素添加に着目して研究した結果、上述のようにして得た環化四糖をアセテートイオン(CH3COO−)と接触させて加酢分解すると、反応溶液中にニゲロース酢酸エステルが多量に存在し、更にこのニゲロース酢酸エステルを脱アセチル化してニゲロースを生成させると、ニゲロースの生成収率が飛躍的に向上することを見出した。更にまた、このニゲロースを水素添加することによって高純度のニゲリトールを効率良く生成させ得ることを見出し、前記課題を解決したものである。
【0014】
【発明の実施の形態】
本発明において、環化四糖とは、化学式1で表される糖質を意味し、特に同じ出願人による国際公開第WO 01/090338号公報や国際公開第WO 02/010361号公報において開示された製造方法によって得られる環化四糖は本発明において有利に利用できる。更に、本発明においては、無水及び含水いずれの環化四糖も有利に利用することができる。
【0015】
【化4】
化学式1:
【0016】
本発明において、ニゲロース酢酸エステルとは、環化四糖の加酢分解によって得られうる、化学式2で表されるニゲロースの酢酸エステル全般を示す。
【0017】
【化5】
化学式2:
(化学式2において、Rはそれぞれ独立して、水素又はアセチル基を表す。但し、Rすべてが水素である場合を除く。)
【0018】
ニゲロース酢酸エステルは、環化四糖を加酢分解することによって生成する。
加酢分解とは、通常、酸の存在下でアセテートイオンが求核的に反応して起こる加溶媒反応の一種である。本発明において、加酢分解に用いられる反応液は、ニゲロース酢酸エステルの生成収率や反応時間、反応条件等を勘案しながら調製すればよく、通常、酢酸、無水酢酸及び無水酢酸誘導体から選ばれる1種又は2種以上の酸をアセテートイオンの供給源として用い、更に硫酸、濃硫酸、ルイス酸、トリフルオロ酢酸やトリフルオロメタンスルホン酸などの酸を混合した混合液が使用される。これらの酸の混合液中の割合は、環化四糖を加酢分解し、ニゲロース酢酸エステルを生成させ得る限り随意であり、通常、環化四糖1モルに対して、酢酸、無水酢酸及び無水酢酸誘導体から選ばれる1種又は2種以上の酸を2モル以上含み、かつ適宜の酸を適量含む混合液が使用される。例えば、無水酢酸、酢酸及び硫酸を使用する場合には、無水酢酸:酢酸:硫酸を6:4:1(容量比)の割合で混合し、該混合液を原料である環化四糖1gに対して3乃至100ml、好ましくは5乃至50ml用いられる。尚、加酢反応は、通常、無水の条件で行うのが好ましい。しかし、微量の水分が存在していても円滑に進行するので必ずしも完全に水分を除去して行う必要はない。反応温度及び反応時間は、ニゲロース酢酸エステルの生成収率を勘案しながら適宜設定すればよく、通常、反応温度は−50℃乃至100℃の範囲、好ましくは室温で、反応時間は30分乃至30日の範囲で設定する。尚、本明細書において、「室温」とは1乃至35℃を意味する。
【0019】
欺くして得られる加酢分解反応後の反応溶液は、ニゲロース酢酸エステルをこれまでにはない程度の高含有率で含むニゲロース酢酸エステル高含有物であって、反応溶液中のニゲロース酢酸エステル含有量は、固形物当たり、通常、30%以上であり、反応条件を適切に設定することによって、40%乃至99%にも達する。とりわけ、本出願と同じ出願人による国際公開第WO01/090338号公報や国際公開第WO02/010361号公報において開示された製造方法によって得られる高純度の環化四糖を用いた場合は、固形物当たりのニゲロース酢酸エステルの含有率が40%以上の反応溶液を容易に得ることができる。環化四糖の純度や由来に関わらず、加酢分解反応後の反応溶液は、通常、加酢反応の反応条件に依存して、ニゲロース酢酸エステル以外に、グルコース、フラクトース、マルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、他の澱粉部分加水分解物、α−イソマルトシルグルコ糖質、α−ニゲロシルグルコ糖質、α−グルコシル−(1→6)−α−グルコシル−(1→3)−α−グルコシル−(1→6)−α−グルコース(以下、『開環四糖』と呼ぶこともある。)及び環化四糖から選ばれる1種又は2種以上の糖質の酢酸エステルを、固形物当たり、通常、1乃至70%含んでいる。
【0020】
加酢分解反応後の反応溶液は、通常、水酸化ナトリウムや炭酸水素ナトリウムのようなアルカリで中和した後、生成した沈殿を濾過によって回収して中性になるまで水洗し、更に乾燥して粉末状製品とする。必要ならば、更に、上記の中和後の沈殿に、炭化水素やハロゲン化炭化水素のような水との分離能に優れた有機溶媒を添加して、糖の酢酸エステルを抽出した後、カラムクロマトグラフィーや結晶化を行うことによって、ニゲロース酢酸エステルの純度を高めることも可能である。とりわけ、ニゲロース酢酸エステルの工業的製造方法としては、シリカゲルカラムクロマトグラフィーの採用が好適であり、高純度ニゲロース酢酸エステルを工業的に高収率、大量、容易かつ安価に製造することができる。斯かる方法によれば、ニゲロース酢酸エステルの固形物当たりの純度を、通常、60%以上、好ましくは、80%以上、より好ましくは、95%以上の高純度にまで高収率で高めることが可能である。糖の酢酸エステルを抽出する際に用いられる有機溶媒の量は、ニゲロース酢酸エステルの抽出率、生成収率や用途等を勘案しながら適宜選択されるが、 重量換算で環化四糖の1乃至50倍量が好ましく、更に好ましくは5乃至20倍量とする。
【0021】
斯くして得られるニゲロース酢酸エステル及びニゲロース酢酸エステルの含量を更に高めたニゲロース酢酸エステル高含有物は、アルキルグルコシドをはじめとする各種糖類誘導体を合成するための中間体としてだけでなく、それ自体、乳化助剤、樹脂添加剤や紙力増強助剤などの工業薬品として、更に医薬品、化粧品などの原料として有利に用いることができる。
【0022】
また、ニゲロースは、ニゲロース酢酸エステルを脱アセチル化することによって生成する。詳細には、上述のように、環化四糖を加酢分解して得たニゲロース酢酸エステルを含む反応溶液をアルカリで中和後、生じた沈殿に有機溶媒を添加してニゲロース酢酸エステルを脱アセチル化することによってニゲロースは生成する。脱アセチル化に使用する脱アセチル化剤及びそれらの量は、ニゲロースの生成収率や反応時間、反応条件等を勘案しながら適宜選択され、脱アセチル化剤としては、ニゲロース酢酸エステルを脱アセチル化できる薬剤であればよく、例えばナトリウムメトキシド−メタノール溶液やアンモニア飽和メタノールが好ましい。しかし、必ずしもこれらに限定されるものではない。脱アセチル化反応の反応温度及び反応時間は、ニゲロースの生成収率を勘案しながら適宜設定すればよく、通常、反応温度は−50℃乃至100℃の範囲で、反応時間は30分乃至30日の範囲で設定する。
【0023】
斯くして得られる脱アセチル化反応後の反応溶液は、ニゲロースをこれまでにはない程度の高含有率で含むニゲロース高含有物であって、反応溶液中のニゲロース含有量は、固形物当たり、通常、30%以上であり、反応条件を適切に設定することによって、40乃至99%にも達する。とりわけ、同じ出願人による国際公開第WO 01/090338号公報や国際公開第WO 02/010361号公報において開示された製造方法によって得られる高純度の環化四糖を用いた場合は、固形物当たりのニゲロース含有率が40%以上の反応溶液を容易に得ることができる。環化四糖の純度や由来に関わらず、脱アセチル化反応後の反応溶液は、上述の加酢反応の反応条件に依存して、通常、ニゲロース以外に、グルコース、フラクトース、マルトース、マルトトリオース、マルトテトラオース、他の澱粉部分加水分解物、α−イソマルトシルグルコ糖質、α−ニゲロシルグルコ糖質及びα−グルコシル−(1→6)−α−グルコシル−(1→3)−α−グルコシル−(1→6)−α−グルコースから選ばれる1種又は2種以上の糖質を、固形物当たり、通常、1乃至70%含んでいる。
【0024】
脱アセチル化反応後の反応溶液は、通常、濾過、遠心分離などの常法により反応溶液中の不溶物を除去し、次いで、活性炭により脱色し、H型、OH型イオン交換樹脂等で脱塩・精製し、濃縮してシラップ状製品とするか、更にこれを乾燥して粉末状製品とする。必要ならば、更に、例えば、イオン交換カラムクロマトグラフィー、活性炭クロマトグラフィー、シリカゲルカラムクロマトグラフィーなどのカラムクロマトグラフィーによる分画、アルコール及びアセトンなど有機溶媒を用いる分別、膜分離法等の1種又は2種以上を適宜組み合わせて精製し、高純度ニゲロース又はニゲロース高含有物とすることも可能である。とりわけ、高純度ニゲロース又はニゲロース高含有物の工業的大量製造方法としては、イオン交換樹脂カラムクロマトグラフィーの採用が好適である。具体的には、例えば、Na+形、K+形等のアルカリ金属形、及びCa2+形、Mg2+形等のアルカリ土類金属形の1種又は2種以上の強酸性カチオン交換樹脂を用いるイオン交換樹脂カラムクロマトグラフィーによるときには、高純度ニゲロース又はニゲロース高含有物を工業的に高収率、大量、容易かつ安価に製造することができる。前記イオン交換樹脂カラムクロマトグラフィーに於いては、固定床方式、移動床方式、擬似移動床方式のいずれの方式を採用することも可能である。斯かる方法によれば、ニゲロースの固形物当たりの純度を、通常、60%以上、好ましくは、80%以上、より好ましくは、95%以上の高純度にまで高収率で高めることが可能である。
【0025】
斯くして得られるニゲロース及びニゲロース含量を更に高めたニゲロース高含有物は、低甘味であり、良質で上品な甘味を有すると共に、耐熱性や保湿性に優れた甘味料として好適に利用できる。又、ニゲロース高含有物は、保存安定性も優れていると共に、コク味やボディ感の付与、塩かどの緩和、賦形性、照り付与性、粘性、糖質晶出防止性、水分・水分活性の調節、非発酵性などの有用な性質をも兼備している。従って、本発明の方法により得られるニゲロース高含有物は、甘味料、呈味改良剤、風味改良剤、品質改良剤、安定剤、賦形剤などとして、食品、飼料、餌料、化粧品、医薬品、嗜好品などの経口的又は非経口的に投与可能な各種組成物に有利に用いることができる。
【0026】
また、ニゲリトールは、上述のようにして得たニゲロースを水素添加することによって生成する。水素添加の条件は、還元性糖質であるニゲロースが分解されることなく非還元性糖アルコールであるニゲリトールに変換される限り、特に限定されない。例えば、原料のニゲロースを濃度30乃至70%(w/v)水溶液とし、触媒を適量添加して攪拌しながら温度を90乃至150℃に上げ、水素圧を20乃至100kg/cm2に上げて水素添加を完了するか、望ましくはDEを0.5未満に低減させるまで水素添加を行う。この際使用する触媒及びその量は、ニゲリトールの生成収率や反応時間、反応条件等を勘案しながら適宜選択され、特にラネーニッケルや銅が好ましい。水素添加完了後、触媒を除去し、常法にしたがって、活性炭による脱色、イオン交換樹脂による脱塩などの精製工程を経た後、濃縮してシラップ状製品とする。必要ならば、更に乾燥し、粉末状製品とすることも可能である。
【0027】
斯くして得られる水素添加反応後の反応溶液は、ニゲリトールをこれまでにはない程度の高含有率で含むニゲリトール高含有物であって、反応溶液中のニゲリトール含有量は、固形物当たり、通常、30%以上であり、反応条件を適切に設定することによって、40乃至99%にも達する。とりわけ、同じ出願人による国際公開第WO 01/090338号公報や国際公開第WO 02/010361号公報において開示された製造方法によって得られる高純度の環化四糖を用いてニゲロースを製造した場合は、固形物当たりのニゲリトール含有率が40%以上の反応溶液を容易に得ることができる。環化四糖の純度や由来に関わらず、水素添加反応後の反応溶液は、上述の加酢反応の反応条件に依存して、通常、ニゲリトール以外に、ソルビトール、マルチトール、マルトトリイトール、マルトテトライトール、α−イソマルトシルグルコ糖質由来の糖アルコール、α−ニゲロシルグルコ糖質由来の糖アルコール及びサイクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→}由来の糖アルコールから選ばれる1種又は2種以上の糖アルコールを、固形物当たり、通常、1乃至70%含んでいる。
【0028】
水素添加反応後の反応溶液は、通常、濾過、遠心分離などの常法により反応溶液中の不溶物を除去し、次いで、活性炭により脱色し、H型、OH型イオン交換樹脂等で脱塩し精製し、濃縮してシラップ状製品とするか、更にこれを乾燥して粉末状製品とする。必要ならば、更に、例えば、イオン交換カラムクロマトグラフィー、活性炭クロマトグラフィー、シリカゲルカラムクロマトグラフィーなどのカラムクロマトグラフィーによる分画、膜分離法等の1種又は2種以上を適宜組み合わせて精製し、高純度ニゲリトール又はニゲリトール高含有物とすることも可能である。とりわけ、高純度ニゲリトール又はニゲリトール高含有物の工業的大量製造方法としては、イオン交換樹脂カラムクロマトグラフィーの採用が好適であり、固定床方式、移動床方式、擬似移動床方式のいずれの方式を採用することも可能である。斯かる方法によれば、ニゲリトールの固形物当たりの純度を、通常、60%以上、好ましくは、80%以上、より好ましくは、95%以上の高純度にまで高収率で高めることが可能である。
【0029】
斯くして得られるニゲリトール及びニゲリトール含量を更に高めたニゲリトール高含有物は、低甘味であり、非う蝕性、食品の物性改善作用を有することから、甘味料、呈味改良剤、風味改良剤、矯味剤、品質改良剤などとして、食品、飼料、餌料、化粧品、医薬品、嗜好品などの経口的又は非経口的に投与可能な各種組成物に有利に用いることができる。
【0030】
以下、実験及び実施例に基づいてより詳細に本発明を説明する。
【0031】
【実験1】
<環化四糖の加酢分解の温度条件の検討>
【実験1−1】
<環化四糖の脱水>
国際公開第WO 01/090338号公報及び国際公開第WO 02/010361号公報の実施例A−7又はA−8において開示された製造方法によって得られた環化四糖(純度99.9%及び水分含量11.98%)をジャケット付き回転式真空乾燥機を用いて、温度100℃、−300乃至−350mmHgの条件で、約10時間減圧乾燥した。その後、温度を常温に、気圧を常圧に戻して無水環化四糖を回収した。この無水環化四糖の水分含量を常法にしたがって測定したところ、0.74%であった。
【0032】
【実験1−2】
<無水環化四糖の加酢分解>
蓋付き容器に無水酢酸36ml、酢酸24ml及び硫酸4.5mlを入れて混合した混合液に、実験1−1で得た無水環化四糖8.5gを徐々に添加し、攪拌して溶解した。溶解後、室温(約28℃)又は80℃の温度条件下で加酢分解反応を進行させ、経時的に反応液0.5mlをサンプル液として採取した。採取した各サンプル液に6Nの水酸化ナトリウム水溶液1mlを加えて中和した後、遠心分離して沈殿物を採取した。この沈殿物にクロロホルム0.5mlを加えて溶解し、ニゲロース酢酸エステルを含む糖質のエステルをクロロホルムに抽出し、得られたクロロホルム溶液を数回水洗した後、常法に従ってクロロホルムを留去した。得られたニゲロース酢酸エステルを含む残査に、無水酢酸ナトリウムで脱水したメタノールを適量添加して溶解させた後、28%(v/v)ナトリウムメトキシド−メタノール溶液20μlを加えて4℃で一晩静置し、ニゲロース酢酸エステルを脱アセチル化して、ニゲロースを生成させた。次に、反応液に適量の水を添加し、膜濾過して不純物を除いた後、旭化成株式会社製電気透析装置(商品名『マイクロアシライザーG0』、イオン交換膜は、商品名『AC−110−04』、旭化成株式会社製を、電極液は、0.1N硝酸ナトリウム溶液を使用。)を用いて脱イオン水で透析し、得られた溶液の糖組成をHPLC法により測定した。HPLC法としては、昭和電工株式会社製『ショーデックス・シュガー(Shodex Sugar)KS−801』カラムを用い、カラム温度60℃、流速0.5ml/min水の条件下で行い、検出は、示差屈折計(商品名『RI−8020』、東ソー株式会社製)を用いて行った。糖組成をHPLC法で測定した結果の具体例として、28℃で加酢分解した13日目のサンプル液を上述のように処理して得た溶液の測定結果を図1に示す。
【0033】
更に、上述の透析して得られた溶液に含まれる糖類の同定をガスクロマトグラフィー法(以下、「GLC法」と略記する。)により行った。まず、透析後の溶液の一部を乾固し、常法にしたがってトリメチルシリル化したものを分析試料とした。ガスクロマトグラフ装置は水素炎イオン化検出器が装着された株式会社島津製作所製『GC−14Bn』、カラムはジーエルサイエンス株式会社製『キャピラリー・カラム(Capillarly column) BC−1701』(30m×0.25mm)、キャリアーガスは窒素ガスを流量1ml/分で、温度は180℃から320℃まで7.5℃/分の昇温速度で分析した。その結果、加酢分解反応の各サンプル液を脱アセチル化した溶液中の単糖類は、グルコースとフルクトース、二糖類の90%以上がニゲロース、四糖類は未反応の環化四糖又は開環四糖であることが確認された。
【0034】
環化四糖の加酢分解を室温(約28℃)又は80℃で行った反応溶液を経時的にサンプリングしたサンプル液について、上記のように脱アセチル化・濾過・透析処理を行い、各溶液中の糖組成を上述のHPLC法で測定した。室温(約28℃)及び80℃で加酢分解を行った反応溶液中の糖組成の経時変化を、それぞれ図2及び図3に示す。図2及び図3において、○、△及び□の記号は、順に加酢分解反応の各サンプル液を脱アセチル化した溶液中に含まれる単糖類(グルコース及びフルクトース)、二糖類(主としてニゲロース)及び四糖類(未反応の環化四糖又は開環四糖)の割合を示している。図2に示すように、環化四糖の加酢分解を室温(約28℃)で行った場合、二糖類が緩やかに生成し、9日後の時点で測定溶液中の二糖類の割合は40%以上に達し、さらに副生成物である単糖類の生成も抑えられていた。図3に示すように、環化四糖の加酢分解を80℃で行った場合は、副生成物である単糖類が優先的に生成し、ニゲロースを含む二糖類の割合は最大でも約20%と低かった。以上の結果より、環化四糖からニゲロースを生成させる加酢分解は、室温条件下で行う場合、80℃の場合と比べて、副生成物の生成が少なく優れていることが判明した。
【0035】
【実験2】
<高純度ニゲロースの調製>
【実験2−1】
<環化四糖からのニゲロースの調製>
蓋付き容器に無水酢酸720ml、酢酸480ml及び硫酸90mlを入れて混合した混合液に、実験1−1で得た無水環化四糖170gを徐々に添加し、攪拌して溶解した。溶解後、室温(約28℃)で13日間環化四糖の加酢分解を行った後、反応溶液1150mlに10N水酸化ナトリウム水溶液1760mlを加えて中和した。得られた溶液を、500ml容の遠心管に移し、遠心分離して沈殿を採取した。この沈殿をクロロホルム1lに溶解し、得られたクロロホルム溶液を数回水洗した。クロロホルム層を2ml容のナス型フラスコに分取し、常法に従ってエバポレーターを用いて減圧下でクロロホルムを留去した。得られた残査を60℃で2時間真空乾燥して乾固させた後、無水酢酸ナトリウムで脱水したメタノール1500mlを添加して残査を溶解させ、続いて28%(v/v)ナトリウムメトキシド−メタノール溶液40mlを加えて4℃で一晩静置し、糖類の酢酸エステルを脱アセチル化した。得られた反応溶液を500ml容の遠心管に移し、遠心分離してニゲロースを含む沈殿を回収した。この沈殿を水600mlに溶解させ、5N塩酸を添加することによってpH6に調整した後、得られた水溶液を旭化成株式会社製電気透析装置(商品名『マイクロアシライザーG3』、イオン交換膜は商品名『AC−110−400』(旭化成株式会社製)、透析液は脱イオン水を、電極液としては5%硝酸ナトリウム溶液を使用。)を用いて透析して、ニゲロース高含有物1050mlを得た。尚、透析して得られるニゲロース高含有物中の糖組成を、後述する実験2−2とは別に次のHPLC法により分析し、更に糖の同定を実験1−2に記載のGLC法にて行ったところ、ニゲロース44.4%、グルコース15.9%、フラクトース1.3%、環化四糖及び開環四糖が38.2%であった。この際のHPLC法は、昭和電工株式会社製『ショーデックス・シュガー(Shodex Sugar)KS−801』カラムを用い、カラム温度60℃、流速0.5ml/min水の条件下で行い、検出は、示差屈折計(商品名『RI−8020』、東ソー株式会社製)を用いて行った。
【0036】
【実験2−2】
<クロマトグラフィー法によるニゲロースの精製>
実験2−1で得られたニゲロース高含有物を、不純物を除去するために、活性炭処理及び膜濾過し、95mlを分取した。これをエバポレーターを用いて28mlにまで濃縮した後、ローム・アンド・ハ−ス(Rohm and Hass)社製『アンバーライト(Amberlite) CR−1320Na』ゲルを用いたイオン交換クロマトグラフィー(樹脂量700ml)に供した。カラム温度は60℃、流速4.2ml/min水の条件下で行い、検出は、示差屈折計(商品名『ERC−7530』、エルマ株式会社製)を用いて行った。二糖の濃度が50%以上の画分を回収し、東ソー株式会社製『トヨパール(Toyopearl)HW−40S』ゲルを用いたゲル濾過クロマトグラフィー(樹脂量1425ml)に供した。カラム温度は室温、流速2.0ml/min水の条件下で行い、検出は、示差屈折計(商品名『ERC−7530』、エルマ株式会社製)を用いて行い、二糖の濃度が97.6%の画分を回収した。この画分の糖組成を実験1−2に記載のGLC法にて分析したところ、95.2%がニゲロースであり、ニゲロースの収率は、原料の環化四糖に対して約5.9%であった。
【0037】
更に、ゲル濾過クロマトグラフィーにおける二糖の含量が50%以上の画分(但し、上述の二糖の濃度が97.6%の画分を除く。)を回収し、ワイエムシー株式会社製カラム(商品名『ワイエムシー・パック(YMC Pack)ODS−AQ R−355−15AQ』)を用いたHPLCに供した。カラム温度は室温、流速30ml/min水の条件下で行い、検出は示差屈折計(商品名『ERC−7530』、エルマ株式会社製)を用いて行った結果、二糖の含量が99.4%の画分が得られた。この画分の糖組成を実験1−2に記載のGLC法にて分析したところ、95.2%がニゲロースであり、ニゲロースの収率は、原料の環化四糖に対して約18%であった。以上の結果より、実験2−1のニゲロースを固形物当たり44.4%含むニゲロース高含有物は、クロマトグラフィー法によってニゲロースの純度を90%以上にまで高めることが可能であった。
【0038】
以下、実施例において、本発明のニゲロース酢酸エステル、ニゲロース及びニゲリトールの製造方法について詳細に説明する。
【0039】
【実施例1】
冷却した無水酢酸4800ml、酢酸3200ml及び硫酸600mlの混合液が入った蓋付き容器に、実験1−1で得た無水環化四糖1kgを徐々に添加して溶解させた後、室温(約20℃)で9日間静置して環化四糖を加酢分解した。加酢分解後の反応液に10N水酸化ナトリウム水溶液及び炭酸ナトリウム水溶液を加えて中和した後、ニゲロース酢酸エステルを含む沈殿を採取した。この沈殿をクロロホルム6lに溶解させてニゲロース酢酸エステルを抽出し、得られたクロロホルム溶液を数回水洗した後、常法に従ってエバポレーターを用いて減圧下でクロロホルムを留去した。得られた残査を60℃で5時間真空乾燥して乾固させ、ニゲロース酢酸エステル高含有物を、無水環化四糖に対して約180%の収率で得た。
【0040】
本品は、ニゲロース酢酸エステル以外に、副生成物としてグルコース、フルクトース、環化四糖及び開環四糖などの糖類の酢酸エステルを含有する。本品は、アルキルグルコシドをはじめとする各種糖類誘導体を合成するための中間体としてだけでなく、乳化助剤、樹脂添加剤や紙力増強助剤などの工業薬品として、また医薬品、化粧品の原料として有利に用いることができる。
【0041】
【実施例2】
実施例1の方法で得られたニゲロース酢酸エステル高含有物1800gに無水酢酸ナトリウムで脱水したメタノール9lを添加して溶解し、続いて28%(v/v)ナトリウムメトキシド−メタノール溶液240mlを加えて4℃で一晩静置し、ニゲロース酢酸エステルをはじめとする糖類の酢酸エステルを脱アセチル化してニゲロースをはじめとする糖類を生成させた。得られた反応溶液を遠心分離してニゲロースを含む沈殿を回収した。この沈殿を水6lに溶解して得られた水溶液に陽イオン交換樹脂(商品名『ダイヤイオンPK218』、三菱化学株式会社製)を加えてナトリウムイオンを吸着させ、濾過により樹脂を除去した後、常法にしたがって精製し、ニゲロース高含有物を得た。このニゲロース高含有物を濃度75%に濃縮し、シラップ状ニゲロース高含有物を、ニゲロース酢酸エステルに対して約45%の収率で得た。
【0042】
本品は、固形物当たり、ニゲロース45%、グルコース27%、フラクトース2%及び環化四糖や開環四糖などの糖類を26%含有していた。本品は、低甘味であり、良質で上品な甘味を有すると共に、耐熱性、保湿性、保存安定性、コク味やボディ感の付与、塩かどの緩和、賦形性、照り付与性、粘性、糖質晶出防止性、水分・水分活性の調節、非発酵性などを有していることから、各種飲食品、健康食品、飼料、餌料、化粧品、医薬品、嗜好品などに有利に用いることができる。
【0043】
【実施例3】
実施例2の方法で得られたシラップ状ニゲロース高含有物を、ローム・アンド・ハ−ス(Rohm and Hass)社製『Amberlite CR−1320Na』ゲルを内径12.5cmのジャケット付きステンレス製カラム10本に充填し、これらカラムを直列接続して樹脂層全長を16mとしてイオン交換クロマトグラフィー(樹脂量225ml)を行った。カラム内温度を60℃に維持しつつ、前記シラップを樹脂量に対して1%(v/v)加え、これに水をSV0.2で流して分画し、溶出液の糖組成をHPLC法でモニターしながら、二糖の濃度が92%のニゲロース高含有画分を得た。この際のHPLC法は、昭和電工株式会社製『ショーデックス・シュガー(Shodex Sugar)KS−801』カラムを用い、カラム温度60℃、流速0.5ml/min水の条件下で行い、検出は、示差屈折計(商品名『RI−8020』、東ソー株式会社製)を用いて行った。上記のニゲロース高含有画分の糖組成を実験1−2に記載のGLC法にて分析したところ、97.8%がニゲロースであった。原料であるシラップ状ニゲロース高含有物に対して、ニゲロースの収率は約36%であった。本液を、常法に従って、脱色、脱塩、濃縮して、ニゲロース高含有物を得た。
【0044】
本品は、固形物当たり、ニゲロース90%、グルコース3.3%、フラクトース0.2%及び環化四糖や開環四糖などの糖類を6.5%含有していた。本品は、低甘味で良質かつ上品な甘味を有すると共に、耐熱性、保湿性、保存安定性、コク味やボディ感の付与、塩かどの緩和、賦形性、照り付与性、粘性、糖質晶出防止性、水分・水分活性の調節、非発酵性などを有していることから、各種飲食品、健康食品、飼料、餌料、化粧品、医薬品、嗜好品などに有利に用いることができる。
【0045】
【実施例4】
実施例3の方法で得られたニゲロース高含有物を、常法にしたがって約60℃で真空乾燥し、粉砕して、ニゲロース高含有糖質粉末を得た。
【0046】
本品は、低甘味で良質かつ上品な甘味を有すると共に、耐熱性、保湿性、保存安定性、コク味やボディ感の付与、塩かどの緩和、賦形性、照り付与性、粘性、糖質晶出防止性、水分・水分活性の調節、非発酵性などを有していることから、各種飲食品、健康食品、飼料、餌料、化粧品、医薬品、嗜好品などに有利に用いることができる。
【0047】
【実施例5】
実施例4の方法で得られたニゲロース高含有糖質粉末を水に溶解し、濃度50%の水溶液を調製し、これに触媒としてラネーニッケル10%を添加し、攪拌しながら温度を90〜125℃に上げ、水素圧を20〜100kg/cm2に上げて水素添加を完了させた後、ラネーニッケルを除去し、常法にしたがって活性炭、イオン交換樹脂で精製し、ニゲリトール高含有物を、固形物当たり約96%の収率で得た。
【0048】
本品は、固形物当たり、ニゲリトール94%、ソルビトール2.5%、その他の糖アルコールなどを3.5%含有していた。本品は、低甘味であり、非う蝕性、食品の物性改善作用を有することから、甘味料、呈味改良剤、風味改良剤、矯味剤、品質改良剤などとして、食品、飼料、餌料、化粧品、医薬品、嗜好品などの経口的又は非経口的に投与可能な各種組成物に有利に用いることができる。
【0049】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明は、ニゲロース酢酸エステル、ニゲロース及びニゲリトールの新規な製造方法に関し、より詳細には、サイクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→}よりニゲロース酢酸エステルを製造するための方法、更に得られたニゲロース酢酸エステルよりニゲロースを製造する方法、及び得られたニゲロースよりニゲリトールを製造する方法に関する。斯かる本発明によれば、斯界に於いて有用なニゲロース酢酸エステル及びその高含有物、ニゲロース及びその高含有物、並びにニゲリトール及びその高含有物を工業的に大量かつ安価に高収率で製造し得る。斯かる本発明によるニゲロース酢酸エステル及びその高含有物は、アルキルグルコシドをはじめとする各種糖類誘導体を合成するための中間体としてだけでなく、乳化助剤、樹脂添加剤や紙力増強助剤などの工業薬品として、更に医薬品、化粧品の原料として有利に用いることができる。また、ニゲロース及びその高含有物は、低甘味で良質かつ上品な甘味を有すると共に、耐熱性、保湿性、保存安定性、コク味やボディ感の付与、塩かどの緩和、賦形性、照り付与性、粘性、糖質晶出防止性、水分・水分活性の調節、非発酵性などを有していることから、各種飲食品、健康食品、飼料、餌料、化粧品、医薬品、嗜好品などに有利に用いることができる。更に、ニゲリトール及びその高含有物は、低甘味であり、非う蝕性及び食品の物性改善作用等を有することから、甘味料、呈味改良剤、風味改良剤、矯味剤、品質改良剤などとして、食品、飼料、餌料、化粧品、医薬品、嗜好品などの経口的又は非経口的に投与可能な各種組成物に有利に用いることができる。
【0050】
本発明は斯くも顕著な作用効果を奏する発明であり、斯界に貢献すること誠に多大な意義ある発明である。
【0051】
【図面の簡単な説明】
【図1】環化四糖の加酢分解を室温(約28℃)で行った13日目のサンプル液の糖組成をHPLC法で分析したチャートを示す。
【図2】環化四糖の加酢分解を室温(約28℃)で行った際の糖組成の経時変化を示す。
【図3】環化四糖の加酢分解を80℃で行った際の糖組成の経時変化を示す。
【符号の説明】
○ 単糖類
△ 二糖類
□ 四糖類
Claims (6)
- 加酢分解後の反応溶液中のニゲロース酢酸エステルの生成量が固形物当たり30%(w/w)以上であることを特徴とする請求項1記載のニゲロース酢酸エステルの製造方法。
- 固形物当たり30%(w/w)以上のニゲロース酢酸エステルとともに、グルコース、フラクトース、α−グルコシル−(1→6)−α−グルコシル−(1→3)−α−グルコシル−(1→6)−α−グルコース及びサイクロ{→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→6)−α−D−グルコピラノシル−(1→3)−α−D−グルコピラノシル−(1→}から選ばれる1種又は2種以上の糖質の酢酸エステルを含んでなるニゲロース酢酸エステル高含有物。
- 採取して得られるニゲロースの純度が90%(w/w)以上であることを特徴とする請求項4記載のニゲロースの製造方法。
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