JP4508491B2 - 転写シート及びその製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、転写層の転写と同時に、転写層表面に凹凸模様を賦形できる転写シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、転写層の表面に凹凸模様を転写と同時に形成できる転写シートとしては、転写層を形成する支持体シート上に、硬化性樹脂からなる凹凸模様賦形層を印刷等で設けた構成の転写シートがあった(特公昭56−43875号公報、特開昭63−295300号公報等参照)。そして、支持体シートを剥離するときは、凹凸模様賦形層は支持体シートと共に一体となって転写層から剥離され、その結果、凹凸模様賦形層の凹凸模様を、転写後の転写層の表面に賦形する事ができる。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、従来の凹凸模様賦形層を構成する樹脂として、2液硬化型ウレタン樹脂を使用した場合は、硬化までの時間が非常にかかり、生産性に難点があった。また、凹凸模様賦形層を構成する樹脂として、アミノアルキド樹脂を単体使用した場合では(特開昭63−295300号公報参照)、硬化時間は早いものの、ポリエステル系樹脂の支持体シートとの密着が悪く、転写時に支持体シートを剥離すると、凹凸模様賦形層と支持体シート間で剥離して、凹凸模様賦形層は転写層と一緒になって被転写体側に残ってしまうという問題点があった。
【0004】
そこで、アミノアルキド樹脂等にて、樹脂分全量に対して硬化触媒を1〜5質量%添加して硬化時間を速める事も提案されている(特開2000−301895号公報参照)。しかし、この方法では、高い加熱温度に加えて先のアミノアルキド樹脂の場合よりも長時間、加熱する必要がある為に、凹凸模様賦形層の加熱硬化時に、その熱に耐え切れず、支持体シートに皺が発生することがあった。
【0005】
また、別の生産上の問題として、凹凸模様賦形層が透明な為に、支持体シートとして透明ポリエチレンテレフタレートフィルム等の上に印刷形成された凹凸模様賦形層の印刷品質、例えば凹凸模様賦形層用のインキの転移性、或いは(絵柄層形成後において)絵柄層の絵柄との見当等を目視で容易に確認できなかった。
この為、転写後になって、賦形された凹凸模様の不良が顕在化する場合もあった。
【0006】
すなわち、本発明の課題は、凹凸模様賦形層の硬化時間が速くて、加熱硬化時の支持体シートの熱皺発生が無く、且つ凹凸模様賦形層と支持体シートとの密着も良くて、転写時に凹凸模様賦形層が剥脱することも無い、転写シートを提供することである。また、凹凸模様賦形層に関連した印刷品質の確認も容易な、転写シートを提供する事である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
そこで、上記課題を解決すべく、本発明の転写シートでは、ポリエステル系樹脂の無色透明の支持体シート上に、該支持体シートとは接着し且つ転写層からは剥離可能であり、転写後の転写層表面に凹凸模様を賦形する為の凹凸模様賦形層を有し、該凹凸模様賦形層上に転写層として、剥離層、絵柄層を順次積層した転写シートにおいて、前記凹凸模様賦形層を、樹脂分全量に対して硬化触媒を6〜10質量%添加した、アミノアルキド樹脂、ポリエステル樹脂、及びメラミン樹脂の混合物の、硬化物からなる樹脂にて構成し、さらに前記凹凸模様賦形層を色相、明度及び彩度のうちの少なくとも1つが前記絵柄層と異なる色に着色することにより前記凹凸模様賦形層と前記絵柄層を同調させて形成した。
【0008】
この様に、支持体シートを汎用性があり、耐熱性、強度、転写層との剥離性等に優れたポリエステル系樹脂で構成し、且つ凹凸模様賦形層を、樹脂分全量に対して硬化触媒を6〜10質量%添加した、アミノアルキド樹脂、ポリエステル樹脂、及びメラミン樹脂の混合物の、硬化物からなる樹脂で構成することで、凹凸模様賦形層の硬化時間が速く生産性に優れる上、該支持体シートとの密着も良くなる。しかも、硬化時の加熱で支持体シートに皺が発生することも無く、転写時には確実に凹凸模様賦形層と転写層間で剥離する転写シートとすることができる。
【0009】
また、凹凸模様賦形層を着色した構成とすることで、支持体シート上に形成された凹凸模様賦形層が表現する凹凸模様を、着色パターンとして目視等で容易に認識出来る。従って、凹凸模様賦形層として転移したインキの転移形状から凹凸模様賦形層自体の印刷品質を、転写シート製造中の段階で容易に確認できる。また、絵柄層の絵柄を凹凸模様賦形層と見当合わせする事もでき、絵柄層と凹凸模様賦形層との見当の印刷品質も容易に確認できる。従って、これら凹凸模様賦形層に関連する印刷品質を容易に確認できる
【0010】
請求項2に記載の本発明は、ポリエステル系樹脂の無色透明の支持体シート上に、該支持体シートとは接着し且つ転写層からは剥離可能であり、転写後の転写層表面に凹凸模様を賦形する為の凹凸模様賦形層を有し、該凹凸模様賦形層上に転写層として、剥離層、絵柄層を順次積層する転写シートの製造方法において、前記支持体シート上に、アミノアルキド樹脂、ポリエステル樹脂、及びメラミン樹脂の混合物に、色相、明度及び彩度のうちの少なくとも1つが前記絵柄層と異なる色に着色する着色剤および樹脂分全量に対して6〜10質量%の硬化触媒を添加したインキを用いて印刷後、加熱硬化して、凹凸模様賦形層を形成し、次に、前記凹凸模様賦形層の上に剥離層を形成し、その後、前記剥離層の上に前記絵柄層を前記凹凸模様賦形層と同調させて形成することを特徴とする転写シートの製造方法である
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、図面を参照しながら本発明の実施の形態を説明する。
【0012】
〔層構成概要〕
本発明の転写シートは、図1(A)の断面図で示す基本的構成の転写シートSの如く、支持体シート1上に特定材料から成る凹凸模様賦形層2を有し、該凹凸模様賦形層2上の転写層3として、少なくとも剥離層4、絵柄層5をこの順に積層した構成の転写シートである。なお、必要に応じ適宜、図1(B)で示す転写シートSの如く、図1(A)の構成に対して、更に、絵柄層5の上に接着剤層6を積層した構成等としても良い。
【0013】
そして、本発明の転写シートSで転写すれば、図2の転写(同図はローラ転写法による場合)の概念図で示す如く、支持体シート1を剥離するときは、凹凸模様賦形層2は支持体シート1と共に一体となって転写層3から剥離され、その結果、凹凸模様賦形層2によって、少なくとも剥離層及び絵柄層からなる転写後の転写層3の表面に凹凸模様7を賦形できる。
なお、剥離層は、絵柄層が通常は薄い為に凹凸模様賦形層の凹凸を完全に受容して絵柄層による転写層表面に凹凸模様を表現し難い為に設ける。もちろん、剥離層は、絵柄層の表面保護、転写時の剥離力を適正化する等の役割も担う。
【0014】
以下、各層について更に説明する。
【0015】
〔支持体シート〕
支持体シート1には、熱可塑性のポリエステル系樹脂にて製造された樹脂シートであれば良い。具体的には、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリアリレート、ポリエチレンナフタレート、エチレン−テレフタレート−イソフタレート共重合体等の熱可塑性ポリエステル樹脂等が挙げられる。なかでも、2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムは代表的である。なお、支持体シートの厚みは、通常は20〜200μm程度である。
支持体シートの樹脂を、ポリエステル系樹脂とする事によって、凹凸模様賦形層に使用する特定材料との組み合わせ使用に於いて、支持体シートとの凹凸模様賦形層との密着を良好にでき、転写時に支持体シートと凹凸模様賦形層間で剥離するのを防げる。また、ポリエステル系樹脂は、耐熱性、力学的強度ともに優れており、転写時の熱や応力による破断や変形、及び支持体シート剥離時の支持体シート破断を生じ難く、転写シートの剥離層として用いられる多くの樹脂との剥離性が良好であり、且つ入手の容易性、価格の点からも転写シートの支持体シートとして好適である。しかも、凹凸模様賦形層の加熱硬化時の熱で、支持体シートに熱皺が発生することも無い。
【0016】
〔凹凸模様賦形層〕
凹凸模様賦形層2は、樹脂分全量に対して硬化触媒を6〜10質量%添加した、アミノアルキド樹脂、ポリエステル樹脂、及びメラミン樹脂の混合物の、硬化物からなる樹脂で構成する。凹凸模様賦形層を支持体シート上に形成するには、所望の凹凸模様を有する版を使用した印刷法等で形成すれば良い。印刷法としては、凹凸模様の凹凸高さに応じて、例えば、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷等の公知の印刷法を採用すれば良い。凹凸模様の凹凸高さが大きい場合には、特にシルクスクリーン印刷が好ましい。
【0017】
上記、アミノアルキド樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂の各々には公知の樹脂を使用すれば良い。
なお、アミノアルキド樹脂はアミノ樹脂とアルキド樹脂とを配合した樹脂である。また、アミノ樹脂は尿素、メラミン、グラアナミン、アニリン、スルホアミド、或いはアミノ基含有アクリル樹脂等のアミノ基含有化合物のアミノ基にホルムアルデヒドを反応させて得られる樹脂であり、尿素の場合は尿素樹脂、メラミンの場合はメラミン樹脂、グラアナミンの場合はグアナミン樹脂、アニリンの場合はアニリン樹脂等とも呼ばれる。また、アルキド樹脂は、例えば、無水フタル酸等の二塩基酸とグリセリン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールとのエステルを、更にヒマシ油等の各種の油脂又は脂肪酸で変性したものが代表的であるが、更にロジンやフェノールで変性したロジン変性アルキド樹脂、フェノール変性アルキド樹脂等の変性アルキド樹脂等もある。
なお、ポリエステル樹脂には、不飽和二重結合を分子内に有する所謂不飽和ポリエステル樹脂を使う必要は無く、飽和ポリエステル樹脂を使用すれば良い。飽和ポリエステル樹脂は水酸基やカルボキシル基が反応基となる。飽和ポリエステル樹脂は、例えば、無水フタル酸やアジピン酸等の二塩基酸とプロピレングリコールやエチレングリコール等の二価アルコールとから得られる様な縮重合物等がある。
また、メラミン樹脂はメラミンとホルムアルデヒドから得られる樹脂で、前記アミノ樹脂の一種であるが、メラミンにホルムアルデヒドを反応させたものを有機溶剤可溶性とする為に、更にアルコールを反応させたアルキル化メラミン樹脂、代表的にはブチルアルコールで変性したブチル化メラミン樹脂が一般的である。
【0018】
アミノアルキド樹脂、ポリエステル樹脂、及びメラミン樹脂の混合物に於ける割合は、アミノアルキド樹脂を樹脂分全量に対して、10〜90質量%の範囲とする。
また、ポリエステル樹脂とメラミン樹脂との割合は、通常は〔ポリエステル樹脂〕/〔メラミン樹脂〕=10/90〜90/10(質量比)程度とする。
【0019】
また、硬化触媒としては、パラトルエンスルホン酸等の強酸を添加する。硬化触媒の添加量は、樹脂分全量に対して6〜10質量%程度である。硬化触媒の添加によって、加熱硬化時間が短く凹凸模様賦形層を生産性良く形成できる。また、硬化触媒の添加量がこれ以下であると、必要な加熱条件(温度及び時間)が厳しくなり(高温度、長時間)、支持体シートに(熱)皺が発生し易くなる。
【0020】
凹凸模様としては、特に限定は無く、例えば、木目導管溝、木目年輪、花崗岩の劈開面、砂目、梨地、ヘアライン、万線状溝、タイル貼りや煉瓦積の目地、布目の表面テクスチュア、皮絞、文字、幾何学模様等である。
【0021】
また、凹凸模様賦形層2は、着色している層とするのも好ましい。着色により、凹凸模様賦形層の印刷品質を転写シートの段階で容易に確認できる様になる。
【0022】
着色は目で見て、凹凸模様賦形層による凹凸模様の(主として平面的な)形状や位置を確認できる程度の色(色相、明度、彩度)であれば良い。凹凸模様賦形層を可視化する事により、凹凸模様賦形層形成時では、支持体シート上に転移したインキで形成された凹凸模様賦形層で表現される凹凸模様の形状の再現性や欠点(カスレ、滲み、太り、細り等)等の凹凸模様賦形層自体の印刷品質を確認できる。また、その後の絵柄層形成時では、絵柄層の絵柄を凹凸模様賦形層に見当合わせする事も可能となる。従って、絵柄層の絵柄と凹凸模様賦形層の凹凸模様との見当の印刷品質も容易に確認できる。特に絵柄層の見当合わせを行う場合には、支持体シートを無色透明とし、且つ凹凸模様賦形層の色相、明度及び彩度のうちの少なくとも1つを絵柄層と異ならせる。一般に絵柄層が淡色(高明度)である場合は、凹凸模様賦形層は黒色、褐色、紺色、深緑色、深紅色等の暗色とすることが好ましい。その為には、代表的には、凹凸模様賦形層を構成する樹脂をバインダーとして、該樹脂バインダーに対して、凹凸模様賦形層を着色させる為の着色剤がカーボンブラックであれば1〜30質量%程度添加すると良い。この他、凹凸模様賦形層の着色に使用できる着色剤としては、有機顔料、無機顔料、染料等が使用できる。例えば、例えば、鉄黒、群青、弁柄、黄鉛、チタン白等の無機顔料、アニリンブラック、フタロシアニンブルー、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー等の有機顔料(或いは染料)等が挙げられる。凹凸模様賦形層の着色としては、通常の可視光線で目視できる様な着色が好ましい。しかし、紫外線照射を行うことが可能であれば、紫外線による励起によって、可視光線を発する蛍光顔料(或いは染料)を着色剤として用いても良い。
【0023】
なお、着色された凹凸模様賦形層自体の印刷品質を確認する時期は、もちろん転写層形成前の段階で行うのが好ましい。そうすれば、印刷品質不良となった凹凸模様賦形層の部分を有する支持体シートに対して、無駄に転写層を形成しなくても済むからである。
【0024】
なお、凹凸模様賦形層自体の印刷品質、凹凸模様賦形層と絵柄層との見当の印刷品質等の凹凸模様賦形層に関連した印刷品質の確認は、目視で確認しても良いが、光電管やイメージセンサ等の電気的手段によっても良い。例えば光電管やイメージセンサでは測定濃度の均一性により凹凸模様賦形層自体の印刷品質のバラツキを管理したり、イメージセンサでは読み込んだ凹凸模様形状や絵柄層絵柄形状により凹凸模様賦形層自体の印刷品質のバラツキ管理や、絵柄層との見当合わせを行ったりその印刷品質管理をすることができる。
【0025】
また、凹凸模様賦形層には、転写後の転写層表面の光沢感を調整する機能を付与する事もできる。転写層表面に一見して凹凸が目視できない程度の微小凹凸を賦形すれば、光沢感は無くなりマット(艶消し)となり、微小凹凸は賦形せずに比較的大きな凹凸(模様)を賦形すれば、その凹凸(模様)が目視可能な模様となって見える事になる。この様な、光沢感等の微小凹凸の調整の為には、該微小凹凸の模様は印刷で形成するのでは無く、凹凸模様賦形層中に、マット剤を添加しておけば良い。こうすれば、凹凸模様の賦形と同時に、微小凹凸による光沢感の調整もできる。マット剤としては、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の公知の充填剤を使用すれば良い。マット剤の粒径1〜10μm程度のものを使用する。添加量は、例えばシリカでは、樹脂分全量に対して、1〜10質量%程度添加する。
なお、凹凸模様賦形層による凹凸は、この微小凹凸のみによる凹凸でも良いし、前記木目導管溝等の目視可能な凹凸模様のみによる凹凸でも良いし、これらの組み合わせでも良い。
【0026】
なお、凹凸模様賦形層は、図1(A)に例示する如く、支持体シート1に対して全面にわたって連続していない分離独立した不連続層として形成しても良いし、或いは全面にわったて連続し且つ転写層側の面が凹凸を成す連続層として形成しても良い。
【0027】
〔剥離層〕
剥離層4の機能としては、凹凸模様賦形層の上に形成される事で、凹凸模様賦形層の凹凸を吸収して(埋めて)剥離層内に転写後の凹凸なる凹凸模様を受容する機能がある。また、その結果、剥離層は、凹凸模様賦形層上に直接に絵柄層を印刷形成した場合に、凹凸模様賦形層の凹凸によってインキが部分的に盛れない印刷抜けを防ぐ機能も有する。もっとも、剥離層は凹凸模様賦形層の凹凸高さを完全に埋め尽くせる厚さで無くても良く、次の絵柄層を印刷抜け無しに形成できる程度の凹凸ならば残っていても良い。極端な場合では、絵柄層の絵柄及び形成方法次第では、絵柄層の後に形成した接着剤層で始めて凹凸模様賦形層の凹凸を吸収しきれる程度でも良い。この場合は、剥離層は次に説明する別の機能が主目的となる。
また、剥離層は、転写シートに於ける従来公知の機能として、絵柄層の保護層としてや、剥離力を適正にする為の層としても機能させる事ができる。
【0028】
上記の様な剥離層としては、ポリエステル系樹脂の支持体シート、前記凹凸模様賦形層、或いは、これら両方との剥離性を有すれば、特に制限は無く、従来公知の材料及び方法で形成すれば良い。例えば、剥離層の樹脂としては、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート共重合体等のアクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、セルロース系樹脂等の単独又は混合物が挙げられる。
【0029】
なお、剥離層は、上記樹脂を用いたインキ或いは塗液で、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷等の印刷法、或いは、グラビアコート、ロールコート等の塗工法等の公知の形成法で形成すれば良い。また、剥離層の厚みは、凹凸模様の深さ(或いは高さ)、用途、要求物性等に応じて適宜厚さとすれば良く、通常は1〜50μm程度とする。
【0030】
〔絵柄層〕
絵柄層5は、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷等の従来公知の印刷等による形成方法及び材料で絵柄を形成すれば良い。絵柄は用途に合わせて、例えば木目模様、石目模様、布目模様、タイル調模様、煉瓦調模様、皮絞模様、文字、幾何学模様、全面ベタ等を用いる。なお、全面ベタはグラビアコート等の塗工法で形成する事もできる。
【0031】
絵柄層形成用のインキ(又は塗液)は、一般的なインキ(又は塗液)同様に、バインダー等からなるビヒクル、顔料や染料等の着色剤、これに適宜加える各種添加剤からなる。バインダーに用いる樹脂は、例えば、アクリル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、セルロース系樹脂、ポリウレタン樹脂等の単体又はこれらを含む混合物を用いる。着色剤としては、チタン白、カーボンブラック、弁柄、黄鉛、群青等の無機顔料、アニリンブラック、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料、二酸化チタン被覆雲母の箔粉等の光輝性顔料、或いは、その他染料等を用いる。
【0032】
また、絵柄層としては、金属薄膜層等を用いる事もある。金属薄膜層としては、アルミニウム、真鍮、金、銀、銅、クロム等を用いて真空蒸着法、スパッタリング法等で形成する。また、金属薄膜層は全面又は部分的(絵柄状等)な層とする。
【0033】
〔接着剤層〕
接着剤層6は、転写層を被転写体に転移、接着させるための層で、必要な場合に設ければ良い。絵柄層自体が接着剤層の役割を有したり、被転写体側に接着剤層を設けたりすれば、転写シート側の接着剤層は必ずしも必要では無い。
接着剤層としては、従来公知の熱可塑性樹脂、硬化性樹脂等を用いれば良い。
例えば、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、アイオノマー、塩素化ポリオレフィン等の熱可塑性樹脂、或いは、フェノール樹脂、ブロックイソシアネート硬化型ウレタン樹脂等の熱硬化性樹脂等を1種又は2種以上の混合物として用いる。
接着剤層は、上記樹脂からなるインキ(又は塗液)をグラビア印刷(又はロールコート)等の公知の印刷法(又は塗工法)等で形成すれば良い。接着剤層の厚さは特に制限は無いが、通常は1〜100μm程度である。
【0034】
〔その他の層〕
本発明の転写シートでは、例えば転写層として、上記剥離層、絵柄層、接着剤層以外の層を有しても良い。例えば、剥離層と絵柄層間に専ら表面物性(耐摩耗性や耐溶剤性)等を付与する為の保護層を設けたり、剥離層と絵柄層間、絵柄層と接着剤層との間にこれら層間密着力を向上する為の易接着層を設けたりしても良い。例えば、保護層には2液硬化型樹脂(例えばウレタン樹脂やアクリル樹脂等)や紫外線や電子線等の電離放射線で硬化する電離放射線硬化性樹脂等が使用できる。また、易接着層には2液硬化型ウレタン樹脂等が使用できる。
【0035】
〔転写シートを用いた転写方法〕
なお、本発明の転写シートを利用して被転写体に転写する転写方法としては、圧力を用いた通常の転写方法が適用出来る。その場合、更に必要に応じて熱の作用も利用する。特に、被転写体の被転写面が三次元凹凸形状の場合には、熱と圧力の併用が好ましい。例えば、下記の様な各種の転写方法を適用できる。
【0036】
(1)ローラ転写法:ローラ転写法は、例えば、特開平6−99550号公報、特開平8−286599号公報等に記載されている様に、慣用的な転写圧加圧方法を採用した転写方法である。ローラ転写法は図2の概念図でも説明した様に、転写シートSを、その転写層3を被転写体B側に向けて、支持体シート1側から弾性体ローラR(鉄芯周囲をシリコーンゴム等の弾性体で被覆したゴムローラ等)によって加圧して転写圧を与える。通常は、弾性体ローラを予め加熱しておき、加圧と同時に接着剤を加熱活性化したり、或いは転写シートを加熱軟化させて被転写面形状への追従成形性を付与したりする。
【0037】
(2)真空成形転写法:特公昭56−45768号公報(オーバーレイ法)、特公昭60−58014号公報(真空プレス法)等に記載されるように、被転写体上に転写シートを対向又は載置し、少なくとも被転写体側からの真空吸引による圧力差により転写シートを被転写体に圧接して転写する、所謂真空成形積層法を利用した転写方法。
【0038】
(3)射出成形同時絵付転写法:特開平6−315950号公報、特公平2−42080号公報に記載されるように、転写シートを射出成形の雌雄両型間に配置した後、加熱溶融等で流動状態の樹脂を型内に射出し充填し、樹脂成形物の成形と同時にその表面に転写シートを積層後、転写シートの支持体シートを剥離して、転写する転写方法。
【0039】
(4)ラッピング転写法:特公昭61−5895号公報、特開平5−330013号公報等に記載されるように、円柱、多角柱等の柱状の被転写面を有する被転写体の長軸方向に、転写シートを供給しつつ、複数の向きの異なるローラーにより、被転写体を構成する複数の側面に順次転写シートを圧接して転写してゆく、所謂ラッピング加工方法による転写方法。
【0040】
(5)固体粒子衝突圧を利用する転写法:特許第2844524号公報、特開平10−193893号公報等に開示された新規な転写方法である。この転写方法は、被転写体に、転写シートの転写層側を対向させ、支持体シート側に多数の固体粒子(金属粒子等を使用)を衝突させ、その衝突圧によって転写シートを被転写体の表面形状に追従させ成形させて、転写する。この転写方法は、ローラ転写法等では不可能な複雑、或いは深い微細凹凸の表面に転写する場合に特に好適である。
【0041】
(6)その他、BMC(Bulk Molding Compound)成形法、SMC(Sheet Molding Compound)成形法、ハンドレイアップ成形法等のFRP(Fiber Reinforced Plastics)における各種成形法、或いは、RIM(Reaction Injection Molding)、マッチドモールド成形法等の成形と同時に行う転写方法、等がある。
【0042】
なお、上記(1)、(2)、(4)及び(5)は既に形状を有する被転写体に転写するものであり、(3)及び(6)は、樹脂成形品として被転写体の形状発現と同時に転写するものである。また、上記(3)の方法では、樹脂の成形型、又は別の型により転写シートを予備成形した後に、樹脂を射出成形して成形と同時に転写する方法もある。これと同様に、(6)に列記の方法においても、転写シートの成形は樹脂成形と同時の場合と、樹脂成形の前に予備成形する場合がある。なお、ハンドレイアップ法では、転写シートの成形は予備成形となる。
【0043】
〔被転写体〕
また、本発明の転写シートによる転写の被転写体としては、特に制限はない。
被転写体には、用途及び採用する転写法に応じ適宜な材質及び形状の物を使用すれば良い。例えば、被転写体の材質は、木質系、無機非金属系、金属系、プラスチック系等である。具体的には、木質系では、例えば、杉、檜、樫、ラワン、チーク等からなる単板、合板、パーティクルボード、繊維板〔MDF(中質繊維板)等〕、集成材等がある。無機非金属系では、例えば、押し出しセメント、スラグセメント、ALC(軽量気泡コンクリート)、GRC(硝子繊維強化コンクリート)、パルプセメント、木片セメント、石綿セメント、ケイ酸カルシウム、石膏、石膏スラグ等の非陶磁器窯業系材料、土器、陶器、磁器、セッ器、硝子、琺瑯等のセラミックス等の無機質材料等がある。また、金属系では、例えば、鉄、アルミニウム、銅等の金属材料がある。また、プラスチック系では、例えば、ポリプロピレン、ABS樹脂、フェノール樹脂等の樹脂材料がある。
【0044】
〔転写製品の用途〕
なお、本発明の転写シートを用いて得られる転写製品の用途は、特に限定は無い。例えば、サイディング等の外壁、塀、屋根、門扉、破風板等の外装、壁面、天井、床等の建築物の内装、窓枠、扉、手摺、敷居、鴨居等の建具類の表面化粧、箪笥等の家具やテレビ受像機等の弱電・OA機器のキャビネットの表面化粧、自動車、電車、航空機、船舶等の乗物内装材等である。転写品の形状は、平板、曲面板、棒状体、立体物等と任意である。
【0045】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳述する。
【0046】
〔実施例1〕
図1(B)の如き転写シートSを次の様にして作製した。厚さ26μmの2軸延伸ポリエチレンテレフタレートフィルムからなる支持体シート1の(コロナ放電処理未処理の)片面に、凹凸模様賦形層2として、アミノアルキド樹脂40質量部、ポリエステル樹脂23質量部、及びメラミン樹脂37質量部の混合物に、マット剤としてシリカを添加し、更に使用時に硬化触媒としてパラトルエンスルホン酸を樹脂分全量に対して6質量%添加したインキをグラビア印刷後、120℃で20秒間加熱硬化して、支持体シートが部分的に露出する様なパターン状に木目導管溝模様〔平均厚み(突起高さ)2μm〕を表した凹凸模様賦形層2を形成した。
【0047】
次に、上記凹凸模様賦形層2の上の転写層3として、先ず、3官能ウレタンアクリレートプレポリマーとジペンタエリスリトールヘキサアクリレートとからなる混合物にアルミナ粉末を添加した電離放射線硬化性樹脂を、グラビアコート法によって塗布し、電子線で架橋して、厚さ3μmの剥離層4を形成した。
【0048】
次に、上記剥離層4の上に、バインダーの樹脂がアクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との1対1質量比の混合物で、チタン白、弁柄、カーボンブラック、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルーを主体とする着色剤を用いたインキをグラビア印刷して、木目柄のパターン柄を有する柄層と着色隠蔽性の全ベタ層とからなる絵柄層5を形成し、引き続き、アクリル樹脂からなる厚さ4μmの接着剤層6をグラビアコートで形成して、本発明の転写シートSを得た。
【0049】
〔実施例2〕
実施例1に於いて、凹凸模様賦形層2の形成を、次の如き黒色インキを使用して形成した他は、実施例1と同様にして転写シートを作製した。当実施例2に於ける凹凸模様賦形層2用の黒色インキは、アミノアルキド樹脂40質量部(これに着色剤としてカーボンブラックが該アミノアルキド樹脂100質量部に対して20質量%添加しておいたので、これも含めると48質量部)に、ポリエステル樹脂23質量部とメラミン樹脂37質量部を混合した混合物に、使用時に硬化触媒としてパラトルエンスルホン酸を樹脂分全量に対して8質量%を添加したインキを使用した。そしてこの黒色インキをグラビア印刷後、実施例1同様の条件で加熱硬化して、実施例1同様に支持体シートが部分露出する凹凸模様賦形層2を形成した。
【0050】
〔比較例1〕
実施例1に於いて、凹凸模様賦形層2に用いた樹脂を、アミノアルキド樹脂のみの使用に変更し(硬化触媒は4質量%使用)、加熱硬化条件を120℃3秒間に変えた他は、実施例1と同様にして転写シートを作製した。
【0051】
〔比較例2〕
実施例1に於いて、凹凸模様賦形層2に用いた樹脂を、ポリエステル樹脂とメラミン樹脂との2樹脂の混合樹脂(これらの割合は同じ)に変更し(硬化触媒は4質量%使用)、加熱硬化条件を120℃5分に変えた他は、実施例1と同様にして転写シートを作製した。
【0052】
〔比較例3〕
実施例1に於いて、凹凸模様賦形層2に用いた樹脂に対する硬化触媒の添加量を、4質量%に落とし、加熱硬化条件を120℃30秒と長くした他は、実施例1と同様にして転写シートを作製した。
【0053】
〔性能評価〕
上記各転写シートの性能を評価すべく、鉄芯の表面をシリコーンゴムで被覆し表面温度200℃に加熱した加熱ゴムローラを用いたローラ転写法によって、被転写体として平板状で1mm厚のMDF(中質繊維板)からなる板材に、転写速度3m/分の速度で転写して試験片を作製した。
【0054】
そして、支持体シートの熱皺発生の有無、凹凸模様賦形層の密着性、絵柄層と凹凸模様賦形層の見当を評価した。
凹凸模様賦形層と支持体シートとの密着性は、転写シートの段階と、転写時(支持体シート剥離時)の両方について評価した。転写シートの段階では、支持体シートに凹凸模様賦形層を形成後、且つ転写層形成前の段階にて、セロハン粘着テープ〔ニチバン株式会社製、「セロテープ」(登録商標)〕を凹凸模様賦形層上に貼り付けた後、該テープを貼付け面に対して垂直方向(90°剥離)に勢い良く引き剥がして、凹凸模様賦形層がテープと共に剥がれるか否かで密着性を評価した。剥がれ無きものは良好、剥がれたものは不良とした。一方、転写時の密着性の評価は、転写シートを被転写体に圧着後、支持体シートを剥離するときに、支持体シートと一体となって凹凸模様賦形層が転写層から剥がれ凹凸模様賦形層が転写層側に密着しないものは良好、支持体シートと凹凸模様賦形層間で剥離し凹凸模様賦形層が転写層に取られて密着してしまうものは、不良とした。
【0055】
【表1】
Figure 0004508491
【0056】
表1の如く、実施例1では、凹凸模様賦形層の硬化に要した時間も120℃で20秒と短く生産性良く凹凸模様賦形層を形成できた。しかも、凹凸模様賦形層の密着性も良く、支持体シート剥離時は、凹凸模様賦形層は支持体シートと一体となって剥離でき、問題無く凹凸模様が賦形できた。
更に、この実施例1に対して、その凹凸模様賦形層をカーボンブラックで黒色に着色した実施例2では、絵柄層の木目パターンと、凹凸模様賦形層による導管凹部との見当も合せることができた。
【0057】
しかし、凹凸模様賦形層にアミノアルキド樹脂のみを用い硬化触媒を4質量%とした比較例1は、硬化時間は120℃で3秒と短く生産速度の点では問題無いが、凹凸模様賦形層の密着性が悪く、支持体シート剥離時に凹凸模様賦形層が支持体シートから剥離して分離し、転写層側に残ってしまった。
【0058】
また、凹凸模様賦形層にポリエステル樹脂とメラミン樹脂を用い硬化触媒が4質量%であった比較例2は、凹凸模様賦形層の密着性は良く、凹凸模様は問題無く賦形できたが、硬化に120℃で5分を要し生産性が問題であった。
【0059】
また、実施例1に対して、樹脂は同じだが硬化触媒を4質量%に減らした比較例3では、密着性こそ問題なかったが、硬化に120℃で30秒と実施例1に対して5割増の時間を要し生産性が低下した。
【0060】
【発明の効果】
(1)本発明の転写シートによれば、凹凸模様賦形層の硬化時間が速く生産性に優れ、且つ凹凸模様賦形層と支持体シートとの密着も良く、しかも、硬化時の加熱で支持体シートに(熱)皺が発生することも無く、転写時には確実に凹凸模様賦形層と転写層間で剥離できる。
(2)更に、凹凸模様賦形層を着色しておけば、凹凸模様賦形層が表現する凹凸模様を、着色パターンとして目視等で容易に認識出来る。従って、凹凸模様賦形層として転移したインキの転移形状から凹凸模様賦形層自体の印刷品質を、転写シート製造中の段階で容易に確認できる。また、絵柄層の絵柄を凹凸模様賦形層と見当合わせする事もでき、絵柄層と凹凸模様賦形層との見当の印刷品質も容易に確認できる。従って、これら凹凸模様賦形層に関連する印刷品質を容易に確認できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の転写シートの幾つかの形態を例示する断面図。
【図2】転写(弾性体ローラ転写法の場合)によって、凹凸模様賦形層で凹凸模様が転写層に賦形される様子を示す概念図。
【符号の説明】
1 支持体シート
2 凹凸模様賦形層
3 転写層
4 剥離層
5 絵柄層
6 接着剤層
7 凹凸模様
S 転写シート

Claims (2)

  1. ポリエステル系樹脂の無色透明の支持体シート上に、該支持体シートとは接着し且つ転写層からは剥離可能であり、転写後の転写層表面に凹凸模様を賦形する為の凹凸模様賦形層を有し、該凹凸模様賦形層上に転写層として、剥離層、絵柄層を順次積層した転写シートにおいて、
    前記凹凸模様賦形層を、樹脂分全量に対して硬化触媒を6〜10質量%添加した、アミノアルキド樹脂、ポリエステル樹脂、及びメラミン樹脂の混合物の、硬化物からなる樹脂にて構成し、さらに前記凹凸模様賦形層を色相、明度及び彩度のうちの少なくとも1つが前記絵柄層と異なる色に着色することにより前記凹凸模様賦形層と前記絵柄層を同調させて形成することを特徴とする転写シート。
  2. ポリエステル系樹脂の無色透明の支持体シート上に、該支持体シートとは接着し且つ転写層からは剥離可能であり、転写後の転写層表面に凹凸模様を賦形する為の凹凸模様賦形層を有し、該凹凸模様賦形層上に転写層として、剥離層、絵柄層を順次積層する転写シートの製造方法において、
    前記支持体シート上に、アミノアルキド樹脂、ポリエステル樹脂、及びメラミン樹脂の混合物に、色相、明度及び彩度のうちの少なくとも1つが前記絵柄層と異なる色に着色する着色剤および樹脂分全量に対して6〜10質量%の硬化触媒を添加したインキを用いて印刷後、加熱硬化して、凹凸模様賦形層を形成し、次に、前記凹凸模様賦形層の上に剥離層を形成し、その後、前記剥離層の上に前記絵柄層を前記凹凸模様賦形層と同調させて形成することを特徴とする転写シートの製造方法
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