JP4508040B2 - 静電型超音波トランスデューサ及びこれを用いた超音波スピーカ - Google Patents
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Description
ここで、従来の超音波トランスデューサの構成を図7に示す。従来の超音波トランスデューサは、振動素子として圧電セラミックを用いた共振型がほとんどである。図7に示す超音波トランスデューサは、振動素子として圧電セラミックを用いて電気信号から超音波への変換と、超音波から電気信号への変換(超音波の送信と受信)の両方を行う。図7に示すバイモフル型の超音波トランスデューサは、2枚の圧電セラミック61および62と、コーン63と、ケース64と、リード65および66と、スクリーン67とから構成されている。
共振型の超音波トランスデューサは、圧電セラミックの共振現象を利用しているので、超音波の送信および受信の特性がその共振周波数周辺の比較的狭い周波数帯域で良好となる。
図8に広帯域発振型超音波トランスデューサ(Pull型)の具体的構成を示す。
下電極133の誘電体131側の面には不均一な形状を有する数十〜数百μm程度の微小な溝が複数形成されている。この微小な溝は、下電極133と誘電体131との間の空隙となるので、上電極132および下電極133間の静電容量の分布が微小に変化する。
これに対して、上記構成の広帯域発振型の超音波トランスデューサの周波数特性は、40kHzから100kHz付近まで平坦で、100kHzで最大音圧に比して±6dB程度である(特許文献1、2参照)。
しかしながら、音圧の最大値は図9に示すように、共振型の超音波トランスデューサが130dB以上であるのに比べ、静電型の超音波トランスデューサでは120dB以下と音圧が低く、超音波スピーカとして利用するには若干音圧が不足していた。
しかし、圧電素子はその材質を問わず鋭い共振点を有しており、その共振周波数で駆動して超音波スピーカとして実用化しているため、高い音圧を確保出来る周波数領域が極めて狭い。すなわち狭帯域であるといえる。
また、Pull型の超音波トランスデューサは、静電力は固定電極側へのみ引き付ける方向にしか働かず振動膜(図8における上電極132に相当する。)の振動の対称性が保たれないため、超音波スピーカに用いる場合、振動膜の振動が直接、可聴音を発生させるという問題が有った。
しかしながら、このPush−Pull型の超音波トランスデューサは、音が抜ける貫通穴が比較的小面積であるためこのままでは、十分な音圧を空中に発生させることは困難であるという問題がある。
したがって、このような構造を有するPush−Pull型の超音波トランスデューサにおいても十分な音圧を発生させるための技術が必要とされていた。
上記Push−Pull型の超音波トランスデューサでは、既述したように、音を外部に放出する貫通穴を有しているため、固定電極と振動膜の間に作用する静電力を十分確保できないが、これは主に振動膜と対向する固定電極側に静電力が作用する十分な電極面積を確保できないためであった。
上記Push−Pull型の超音波トランスデューサでは、固定電極の振動膜と対向する貫通穴外周に円形状に段部を形成していたが、面積効率が低かった。
さらに、前記一対の固定電極に形成された穴を貫通穴とし、前記一対の固定電極の各々の振動膜側における貫通穴外周に多角形状の段部を設けたので、振動膜と対向する固定電極において静電力が作用する対向面積を増加させることができ、これにより大きな膜振動を得ることができる。
このように構成した本発明の静電型超音波トランスデューサでは、前記一対の固定電極の各々の振動膜側における貫通穴外周に設けた段部外周形状を正六角形としたので、振動膜と対向する固定電極において静電力が作用する対向面積を他の多角形状とした場合より一層増加させることができ、これにより大きな膜振動を得ることができる。
このように構成した本発明の静電型超音波トランスデューサでは、前記一対の固定電極の各々の振動膜側における貫通穴外周に設けた多角形状、特に正六角形状の段部をハニカム状に配置することにより、振動膜と対向する固定電極において静電力が作用する対向面積をより一層増加させることができ、これにより大きな膜振動を得ることができる。
このように構成した本発明の静電型超音波トランスデューサでは、一対の固定電極に各々、同一サイズの貫通穴が形成される。したがって、穴加工が容易であり、製造コストの低減が図れる。
このように構成した本発明の静電型超音波トランスデューサでは、一対の固定電極において各々対向する位置では同一サイズであり、複数の穴サイズの貫通穴が形成される。したがって、穴加工が容易であり、製造コストの低減が図れる。
このように構成した本発明の静電型超音波トランスデューサでは、前記一対の固定電極は、単一の導電性部材、例えば、SUS、真鍮、鉄、ニッケル等の導電性材料で形成することができる。
このように構成した本発明の静電型超音波トランスデューサでは、前記一対の固定電極は、複数の導電性部材で形成することができる。
このように構成した本発明の静電型超音波トランスデューサでは、前記一対の固定電極は、導電性部材と絶縁部材から構成される。例えば、ガラスエポキシ基板や紙フェノール基板等の絶縁部材に所望の穴加工をした後、ニッケルや金、銀、銅等でメッキ処理をすることにより、固定電極を導電性部材と絶縁部材で形成することができる。これにより、超音波トランスデューサの軽量化が図れる。
このように構成した本発明の超音波トランスデューサでは、振動膜は絶縁性高分子フィルムの両面に電極層が形成される。そしてこの場合に後述するように振動膜に対向する固定電極側には絶縁層が設けられる。したがって、振動膜の作製が容易になる。
このように構成した本発明の超音波トランスデューサでは、電極層を絶縁層(絶縁高分子フィルム)で挟むように振動膜が形成される。したがって、固定電極側の絶縁処理が不要になり、超音波トランスデューサの製造が容易になる。また、振動膜に対する固定電極の配置における対称性の確保が容易になる。
このように構成した本発明の静電型超音波トランスデューサでは、絶縁性高分子フィルムの片面に電極層が形成された薄膜を2枚使用し、各々電極層同士を密着させることにより振動膜が形成される。したがって、振動膜の作製が容易となる。
このように構成した本発明の静電型超音波トランスデューサでは、前記振動膜は、エレクトレットフィルムが用いられる。この場合に固定電極側には絶縁層が形成される。したがって、振動膜の作製が容易となる。
このように構成した本発明の静電型超音波トランスデューサでは、振動膜として絶縁層(絶縁フィルム)の両面に導電層(電極層)が形成された振動膜を使用する場合、あるいは振動膜としてエレクトレットフィルムを使用する場合には固定電極の振動膜側に電気的絶縁処理が施される。したがって、絶縁層(絶縁フィルム)の両面に導電層(電極層)が形成された両面電極蒸着膜や、エレクトレットフィルムを振動膜として使用することが可能となる。
このように構成した本発明の静電型超音波トランスデューサでは、前記振動膜には、単一極性の直流バイアス電圧が印加される。したがって、振動膜の電極層には常に同極性の電荷が蓄積されるので、前記一対の固定電極に印加される交流信号により変化する固定電極の電圧の極性に応じて、振動膜が静電吸引力及び静電斥力を受け、振動する。
このように構成した本発明の超音波トランスデューサでは、前記固定電極と振動膜を保持する部材は絶縁材料で構成される。したがって、固定電極と振動膜との間の電気的絶縁が保持される。
このように構成した本発明の超音波トランスデューサでは、前記振動膜は膜平面上における直角四方向に張力をかけて固定される。したがって、従来、振動膜を固定電極側に吸着させるために数百ボルトの直流バイアス電圧を振動膜に印加する必要があったが、振動膜の膜ユニット作製時に膜に張力をかけて固定することにより、従来、上記直流バイアス電圧が担っていた引張り張力と同様の作用をもたらすため、上記直流バイアス電圧を低減することができる。
このように構成した本発明の超音波スピーカでは、信号源により可聴周波数帯の信号波が生成され、キャリア波供給手段により超音波周波数帯のキャリア波が生成され、出力される。さらに、変調手段によりキャリア波が前記信号源から出力される可聴周波数帯の信号波により変調され、この変調手段から出力される変調信号が前記固定電極と前記振動膜の電極層との間に印加され、駆動される。
さらに、上記構成の静電型超音波トランスデューサを用いて構成したので、すなわち、前記一対の固定電極に形成された穴を貫通穴とし、前記一対の固定電極の各々の振動膜側における貫通穴外周に多角形状の段部を設けたので、振動膜と対向する固定電極において静電力が作用する対向面積を増加させることができ、これにより大きな膜振動を得ることができる。
図1において、本発明の実施形態に係る静電型超音波トランスデューサ1は、電極として機能する導電性材料で形成された導電部材を含む一対の固定電極10A、10Bと、一対の固定電極に挟持され、導電層121を有する振動膜12と、一対の固定電極10A、10Bと振動膜を保持する部材(図示せず)とを有している。
固定電極10Aと電極層121、固定電極10Bと電極層121は、それぞれコンデンサが形成されている。固定電極10A、10Bの構造は本発明に係る静電型超音波トランスデューサの主要構成をなすものであるが、これについては後述する。
一方、一対の固定電極10A、10Bには、信号源18より相互に位相反転した交流信号18A,18Bが印加される。
また、このとき、交流信号18Bが負のサイクルとなり、対向する固定電極10Bには負の電圧が印加されるために、振動膜12の前記表面部分12Aの裏面側である裏面部分12Bには、静電吸引力が作用し、裏面部分12Bは、図1上、さらに下方に引っ張られる。
本発明の実施形態に係る超音波トランスデューサ1は、従来の、振動膜に静電吸引力のみしか作用しない静電型の超音波トランスデューサ(Pull型)に比して、広帯域性と高音圧を同時に満たす能力を持っている。
図2(a)は貫通穴タイプであり、具体的には、一対の固定電極10A,10Bに形成された穴は、円柱状に形成された貫通穴である。この貫通穴が形成された固定電極は、製造は最も簡単であるが振動膜12と対向する電極に相当する部分がないため、静電力が弱いという欠点を有している。
この場合各穴の淵部分に並行する場所(段部)が振動膜12と対向しており、この部分が平行板コンデンサを構成している。
本発明の実施形態に係る静電型超音波トランスデューサは、一対の固定電極の各々の振動膜側における貫通穴外周に多角形状の段部を設けたことを特徴としている。
図3及び図4は、固定電極に形成された貫通穴14の外周部を振動膜12(図1参照)側から見た平面図である。
図3(a)は、図2(b)に示した2段貫通穴構造の場合における複数の貫通穴外周部の形状及びそれらの配置を示している。同図に示すように貫通穴14の外周に円形状に段部(振動膜に対向する固定電極における対向電極部分)20が形成され、これらの段部20が隣接するように形成されている。
図4は、貫通穴の外周形状を正八角形にした場合である。この場合も貫通穴14の外周形状が円形の時に比べて対向電極部分の面積が増加(増加した対向電極部分24)してはいるが、その比は1.05と僅か5%増に留まり、静電力増加の効果がほとんど無い事が分かる。
また、前記複数個の貫通穴は、各々対向する位置では同一サイズであり、複数の穴サイズを有するようにしてもよい。
また、本実施形態に係る超音波トランスデューサを構成する固定電極は、導電性部材と絶縁部材から構成してもよい。
また、軽量化を図る必要があるため、回路基板などで一般的に用いられるガラスエポシキ基板や紙フェノール基板に所望の穴加工を施した後、ニッケルや金、銀、銅などでメッキ処理をすることなども可能である。また、この場合成型後のソリを防止するために基板へのメッキ加工は両面に施すなどの工夫も有効である。
また、振動膜12には数百ボルトの直流バイアス電圧が必要となるが、膜ユニット作製時に振動膜12の膜表面上における直角四方向に張力をかけて固定することにより、前記バイアス電圧は低減できる。
この場合も膜電極材料としては、Alが最も一般的で、その他、Ni、Cu、SUS、Tiなどが上記高分子材料との相性、コストなどの面から望ましい。さらに透明導電膜ITO/In,Sn,Zn酸化物などでも良い。
変調器53は、キャリア波発振源52から出力されるキャリア波を可聴周波数波発振源51から出力される可聴波周波数帯の信号波により変調し、パワーアンプ54を介して超音波トランスデューサ55に供給する。
逆にキャリア周波数が高いと減衰が激しいのでパラメトリックアレイ効果が十分に起きず、音が広がる超音波スピーカを提供することができる。これらは同じ超音波スピーカでも用途に応じて使い分けることが可能なため大変有効な機能である。
また、上記構成の静電型超音波トランスデューサを用いて構成したので、すなわち、前記一対の固定電極に形成された穴を貫通穴とし、前記一対の固定電極の各々の振動膜側における貫通穴外周に多角形状の段部を設けたので、振動膜と対向する固定電極において静電力が作用する対向面積を増加させることができ、これにより大きな膜振動を得ることができる。
Claims (18)
- 複数の貫通穴が形成された第1の固定電極と、
前記複数の貫通穴における各々の貫通穴が形成された位置に対応する位置に形成された複数の貫通穴を有する第2の固定電極と、
前記第1の固定電極と前記第2の固定電極との間に位置し且つ導電層を有する振動膜と、を有し、
前記第1の固定電極と前記第2の固定電極との間に交流信号を印加可能な静電型超音波トランスデューサであって、
前記第1及び第2の固定電極は、当該第1及び第2の固定電極の前記振動膜側の面における前記貫通穴の外周に多角形状の段部を有することを特徴とする静電型超音波トランスデューサ。 - 前記段部は前記固定電極における前記振動膜に対向する対向電極部であることを特徴とする請求項1記載の静電型超音波トランスデューサ。
- 前記段部の形状は正六角形であることを特徴とする請求項1または2に記載の静電型超音波トランスデューサ。
- 前記段部がハニカム状に配置されたことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の静電型超音波トランスデューサ。
- 前記複数の貫通穴は複数のサイズにて形成され、
前記第1の固定電極に形成された第1の貫通穴と前記第1の貫通穴に対応する位置に且つ前記第2の固定電極に形成された第2の貫通穴とは同じサイズであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の静電型超音波トランスデューサ。 - 前記第1及び第2の固定電極に形成された前記複数の貫通穴は、各々同じサイズであることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の静電型超音波トランスデューサ。
- 前記第1及び第2の固定電極は、単一の導電性部材で形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の静電型超音波トランスデューサ。
- 前記第1及び第2の固定電極は、複数の導電性部材で形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の静電型超音波トランスデューサ。
- 前記第1及び第2の固定電極は、導電性部材と絶縁部材とで形成されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれかに記載の静電型超音波トランスデューサ。
- 前記振動膜は、絶縁性高分子フィルムの両面に電極層が形成された膜であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の静電型超音波トランスデューサ。
- 前記振動膜は、電極層が2枚の絶縁性高分子フィルムで挟むように形成された膜であることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の静電型超音波トランスデューサ。
- 前記振動膜は、絶縁性高分子フィルムの片面に電極層が形成された薄膜を2枚有し、前記電極層同士を密着させて構成されていることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の静電型超音波トランスデューサ。
- 前記振動膜は、エレクトレットフィルムで構成されることを特徴とする請求項1乃至9のいずれかに記載の静電型超音波トランスデューサ。
- 前記第1及び第2の固定電極の前記振動膜側に電気的絶縁処理が施されていることを特徴とする請求項10または請求項13に記載の静電型超音波トランスデューサ。
- 前記振動膜には、単一極性の直流バイアス電圧が印加可能であることを特徴とする請求項1乃至14のいずれかに記載の静電型超音波トランスデューサ。
- 前記第1及び第2の固定電極と前記振動膜とを保持する保持部材を有し、
前記保持部材は絶縁材料で構成されることを特徴とする請求項1乃至15のいずれかに記載の静電型超音波トランスデューサ。 - 前記振動膜は該振動膜表面における直角四方向に張力をかけた状態で固定されることを特徴とする請求項1乃至16のいずれかに記載の静電型超音波トランスデューサ。
- 請求項1乃至17のいずれかに記載の静電型超音波トランスデューサと、
可聴周波数帯の信号波を生成する信号源と、
超音波周波数帯のキャリア波を生成し、出力するキャリア波供給手段と、
前記キャリア波を前記信号源から出力される可聴周波数帯の信号波により変調する変調手段とを有し、
前記静電型超音波トランスデューサは、前記固定電極と前記振動膜の電極層との間に印加される前記変調手段から出力される変調信号により駆動されることを特徴とする超音波スピーカ。
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