JP2009055644A - 超音波トランスデューサ - Google Patents

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Abstract

【課題】振動時に振動膜の振幅を大きくすることができ、かつ直流バイアス電圧の低減を図った超音波トランスデューサを提供する。
【解決手段】絶縁体で形成された振動膜2と該振動膜2上に形成された導電膜3とからなる上電極10と、上電極10の振動膜2に対向する面に凹凸が複数、形成された下電極12とを有し、上電極10と下電極12とを密着させ、該上電極10と下電極12との間に交流信号を印加することにより超音波を発生させる超音波トランスデューサ1であって、上電極10と下電極12とを密着させることにより該上電極10と下電極12との間に形成される複数の空洞部14内から外部に連通する通気孔16を下電極12に設ける。
【選択図】図1

Description

本発明は、広周波数帯域に渡って一定の高音圧を発生する静電型の超音波トランスデューサにおいて、振動膜の振幅を大きくすることによりでエネルギー効率を向上させ、強い超音波を発生させることができる超音波トランスデューサに関する。
従来の超音波トランスデューサは圧電セラミックを用いた共振型がほとんどである。
ここで、従来の超音波トランスデューサの構成を図6に示す。従来の超音波トランスデューサは、振動素子として圧電セラミックを用いた共振型がほとんどである。図6に示す超音波トランスデューサは、振動素子として圧電セラミックを用いて電気信号から超音波への変換と、超音波から電気信号への変換(超音波の送信と受信)の両方を行う。図6(A)に示すバイモルフ型の超音波トランスデューサは、2枚の圧電セラミック61および62と、コーン63と、ケース64と、リード65および66と、スクリーン67とから構成されている。
圧電セラミック61および62は、互いに貼り合わされていて、その貼り合わせ面と反対側の面にそれぞれリード65とリード66が接続されている。
一方、図6(B)に示すユニモルフ型の超音波トランスデューサは、1枚の圧電セラミック71と、ケース72と、リード73および74と、内部配線75と、ガラス76とから構成されている圧電セラミック71は、内部配線75を介してリード73が接続されるとともに、ケース72に接地されている。
共振型の超音波トランスデューサは、圧電セラミックの共振現象を利用しているので、超音波の送信および受信の特性がその共振周波数周辺の比較的狭い周波数帯域で良好となる。
上述した図6に示す共振型の超音波トランスデューサと異なり、従来より静電方式の超音波トランスデューサは高周波数帯域にわたって高い音圧を発生可能な広帯域発振型超音波トランスデューサとして知られている。図7に広帯域発振型超音波トランスデューサの具体的構成を示す。図7に示す静電型の超音波トランスデューサは、振動体として3〜10μm程度の厚さのPET(ポリエチレンテレフタレート樹脂)等の誘電体131(絶縁体)を用いている。誘電体131に対しては、アルミ等の金属箔として形成される上電極132がその上面部に蒸着等の処理によって一体形成されるとともに、真鍮で形成された下電極133が誘電体131の下面部に接触するように設けられている。この下電極33は、リード52が接続されるとともに、ベークライト等からなるベース板35に固定されている。
また、上電極32は、リード53が接続されており、このリード53は直流バイアス電源50に接続されている。この直流バイアス電源50により上電極32には50〜150V程度の上電極吸着用の直流バイアス電圧が常時、印加され上電極32が下電極33側に吸着されるようになっている。51は信号源である。
誘電体31および上電極32ならびにベース板35は、メタルリング36、37、および38、ならびにメッシュ39とともに、ケース30によってかしめられてる。
下電極33の誘電体31側の面には不均一な形状を有する数十〜数百μm程度の微小な溝が複数形成されている。この微小な溝は、下電極33と誘電体31との間の空隙となるので、上電極32および下電極33間の静電容量の分布が微小に変化する。このランダムな微小な溝は、下電極33の表面を手作業でヤスリで荒らすことで形成されている。静電方式の超音波トランスデューサでは、このようにして空隙の大きさや深さの異なる無数のコンデンサを形成することによって、超音波トランスデューサ22の周波数特性が図8において曲線Q1に示すように広帯域となっている。
上記構成の超音波トランスデューサ14では、上電極32に直流バイアス電圧が印加された状態で上電極32と下電極33との間に矩形波信号(ドライバ12の出力:50〜150Vp-p)が印加されるようになっている。因みに、図8に曲線Q2で示すように共振型の超音波トランスデューサの周波数特性は、中心周波数(圧電セラミックの共振周波数)が例えば、40kHzであり、最大音圧となる中心周波数に対して±5kHzの周波数において最大音圧に対して−30dBである。これに対して、上記構成の広帯域発振型の超音波トランスデューサの周波数特性は、40kHzから100kHz付近まで平坦で、100kHzで最大音圧に比して±6dB程度である(特許文献1、2参照)。
ここで、広帯域発振型の超音波トランスデューサにおいて、高い音圧レベルを得るのに上電極の振動膜の振幅を大きくとる必要性があるのは、以下の理由による。すなわち、超音波トランスデューサから放射される超音波の音圧レベル(SPL)は、デバイス面積をS、振動膜の振動速度をv、上電極と下電極との間に印加される印加電圧をVとすると、SPL∝S・v・Vの関係がある。音圧レベルを大きくとるには、デバイス面積S、振動膜の振動速度v、印加電圧Vのいずれかまたは、すべてを大きくすればよいが、超音波トランスデューサの小型化を考慮すると、デバイス面積S、印加電圧Vを大きくしたくない。
したがって、音圧レベルを大きくするという要求を満たすためには、振動膜の振動速度vを大きくする必要がある。ここで、振動膜の振動速度vは、振動周波数と振幅に依存するが、広周波数帯域にわたって高い音圧レベルを得る必要性から振動膜の振動速度、ひいては音圧レベルを大きくするためには、振動膜の振幅を大きく取る必要があることが判る。
特開2000−50387号公報 特開2000−50392号公報
しかしながら、従来の広帯域発振型の超音波トランスデューサにあっては、数十〜数百Vの直流バイアス電圧を用いて上電極の薄膜と下電極のバルク材料を吸着しているために、上電極における振動膜の十分な振幅が得られないという問題を抱えている。
また、この直流バイアス電圧は高電圧であり、危険性もさることながら装置の大型化、高パワー化、高コスト化を招いていた。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、振動時に振動膜の振幅を大きくすることができ、かつ直流バイアス電圧の低減を図った超音波トランスデューサを提供することを目的とする。
請求項1に記載の発明は、絶縁体で形成された振動膜と該振動膜上に形成された導電膜とからなる上電極と、前記上電極の振動膜に対向する面に凹凸が複数、形成された下電極とを有し、前記上電極と下電極とを密着させ、該上電極と下電極との間に交流信号を印加することにより超音波を発生させる超音波トランスデューサであって、前記上電極と下電極とを密着させることにより該上電極と下電極との間に形成される複数の空洞部内において前記振動膜が振動時に生ずる空気の圧縮抵抗を低減させる圧縮抵抗低減手段を有することを特徴とする。
請求項1に記載の発明によれば、前記上電極と下電極とを密着させることにより該上電極と下電極との間に形成される複数の空洞部内において前記振動膜が振動時に生ずる空気の圧縮抵抗を低減させる圧縮抵抗低減手段を有するので、振動膜が振動時に空気の流れガスムーズとなり、振動膜の振幅を大きくすることができる。
また、請求項2に記載の発明は、絶縁体で形成された振動膜と該振動膜上に形成された導電膜とからなる上電極と、前記上電極の振動膜に対向する面に凹凸が複数、形成された下電極とを有し、前記上電極と下電極とを密着させ、該上電極と下電極との間に交流信号を印加することにより超音波を発生させる超音波トランスデューサであって、前記上電極と下電極とを密着させることにより該上電極と下電極との間に形成される複数の空洞部内から外部に連通する通気孔を前記下電極に設けたことを特徴とする。
請求項2に記載の発明によれば、前記上電極と下電極とを密着させることにより該上電極と下電極との間に形成される複数の空洞部内から外部に連通する通気孔を前記下電極に設けたので、振動膜が振動時に空気の流れがスムーズとなり、振動膜の振幅を大きくすることができる。
また、請求項3に記載の発明は、両面に凹凸が複数、形成された下電極と、前記下電極の両面に、それぞれ対向して配置され絶縁体で形成された振動膜と該振動膜上に形成された導電膜とからなる二つの上電極とを有し、前記二つの上電極と下電極とを密着させることにより前記下電極の上下端に複数の空洞部が形成されてなる超音波トランスデューサであって、前記下電極の上下端に形成された空洞部のうち前記下電極の上端に形成された空洞部と、その直下の前記下電極の下端に形成された空洞部とをそれぞれ、連通する通気孔を形成したことを特徴とする。
請求項3に記載の発明によれば、下電極の両面に上電極を構成する振動膜を設け、前記下電極の上下端に形成された空洞部のうち上端に形成された空洞部と、その直下の前記下電極の下端に形成された空洞部とをそれぞれ、連通する通気孔を形成したので、二つの上電極の振動膜を二つの上電極間に印加される交流信号の極性に応じて、同方向に変位させることにより下電極の上下端に形成された空洞部にトラップされた空気の体積変化を抑制することができ、それ故、空気の体積膨張率によるばね効果が減少し、より大きな膜振動が得られる。
また、請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の超音波トランスデューサにおいて、前記二つの上電極と下電極との接触面を接着することにより固定したことを特徴とする。
請求項4に記載の発明によれば、二つの上電極と下電極との接触面を接着することにより固定するようにしたので、二つの上電極と下電極との接触面を吸着させるための直流バイアス電圧を低減することができ、従来大掛かりであった電源装置の小型化が図れる。
また、請求項5に記載の発明は、請求項3に記載の超音波トランスデューサにおいて、前記二つの上電極と下電極との接触面を押圧する押圧手段を有することを特徴とする。
請求項5に記載の発明によれば、二つの上電極と下電極との接触面を押圧して固定する押圧手段を有するので、二つの上電極と下電極との接触面を吸着させるための直流バイアス電圧を低減することができ、従来大掛かりであった電源装置の小型化が図れる。
また、請求項6に記載の発明は、請求項3乃至5のいずれかに記載の超音波トランスデューサにおいて、前記下電極に一定の直流バイアス電圧を印加し、前記二つの上電極間に交流信号電圧を印加することを特徴とする。
請求項6に記載の発明によれば、下電極に一定の直流バイアス電圧を印加し、下電極の上下端に配置された二つの上電極間に交流信号電圧を印加するようにしたので、下電極の上下端に配置された上電極の振動膜を効率的に振動させることができる。
また、請求項7に記載の発明は、請求項3乃至6のいずれかに記載の超音波トランスデューサにおいて、前記二つの上電極のいずれか一方に対面した位置に音波を前方に発散または収束させるコーンを有することを特徴とする。
請求項7に記載の発明によれば、前記二つの上電極のいずれか一方に対面した位置に音波を前方に発散または収束させるコーンを有するので、二つの上電極を構成する振動膜の振動により発生する超音波出力を有効利用することができる。
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して詳細に説明する。図1に本発明の第1実施形態に係る超音波トランスデューサの構成を示す。同図において、第1実施形態に係る超音波トランスデューサ1は、絶縁体で形成された振動膜2と該振動膜2上に形成された導電膜3とからなる上電極10と、上電極10の振動膜2に対向する面に凹凸が複数、形成された下電極12と、直流バイアス電源18と、信号源20とを有している。
上電極10と下電極12との間には、常時、電圧調整可能な直流バイアス電源18により一定の直流バイアス電圧が印加されており、この電界により発生する静電力により下電極12の凸部Aに上電極10が吸着され、上電極10とした電極12との間に形成せれる空洞部14を除き、密着した状態にある。
また、下電極12には、空洞部14から外部に連通する通気孔16が形成されている。
また、上電極10と下電極12との間には、直流バイアス電源18による直流バイアス電圧に重畳された状態で信号源20により信号電圧である交流信号(周波数は20kHz以上の超音波周波数帯)が印加されるようになっている。
前記通気孔16は、空洞部14内において振動膜2が振動時に生ずる空気の圧縮抵抗を低減させる圧縮抵抗低減手段として機能する。
上記構成において、上電極10の導電膜3と下電極12との間に直流バイアス電源18により、直流バイアス電圧が印加されると、上電極10に下電極12の凸部12Aが吸着され、この状態で信号源20より交流信号が上電極10の導電膜3と下電極12との間に直流バイアス電圧に重畳されて印加されることにより上電極10の振動膜2は交流信号により駆動され、振動する。
このとき、空洞部14内の空気には振動膜の振動に応じて圧力が加わるが、この空気は外部に連通する通気孔16を介してスムーズに流れるので、振動膜2においてより大きな振動(振幅)が得られる。
図3は、従来の超音波トランスデューサと本発明の第1実施形態に係る超音波トランスデューサの動作時の状態を示している。図3は、超音波トランスデューサにおいて、上電極と下電極との間に形成されている1つの空洞部についてのみ簡略化して示している。
図3(A)に示すように従来の静電型の超音波トランスデューサでは、動作時に空洞部14内の空気がダンパ(ばね)として作用するために上電極10の膜振動の振幅は小さくなる。これに対して、本発明の第1実施形態に係る超音波トランスデューサでは、空洞部14から外部に連通する通気孔16が下電極12に設けられているので、上電極10の振動膜が振動時に空洞部14内の空気の流れがスムーズになり、膜振動の振幅は大きくなる。
図1に示した第1実施形態に係る超音波トランスデューサ1の断面構造は、実際には、図2(A)に示すように、ケース20によりかしめられている。
なお、第1実施形態に係る超音波トランスデューサの断面構造は、図2(A)に示したものに限らず、図2(B)に示すように、ベース板22上に下電極12を固定し、下電極12に設けられたすべての通気孔14をベース板22に設けた外部に連通する凹部24に連通するように構成してもよい。
また、図2(C)に示すように、ベース板30上に下電極12を固定し、下電極12に設けられた複数の通気孔14の各々をベース板22に設けた外部に連通する上記各通気孔14の直下に設けられた通路24に連通するように構成してもよい。
次に、本発明の第2実施形態に係る超音波トランスデューサの構成を図4に示す。同図において、第2実施形態に係る超音波トランスデューサ1Aは、両面に凹凸が複数、形成された下電極112と、下電極112の両面に、それぞれ対向して配置され絶縁体で形成された振動膜101と該振動膜101上に形成された導電膜102とからなる二つの上電極100A、100Bと、直流バイアス電源118と、信号源120と、二つの上電極100、100の一方に、例えば、上電極100Bに対面する位置に設けられたコーン125とを有している。
二つの上電極100A、100Bと下電極112とを密着させることにより下電極112の上下端に複数の空洞部114A(下電極の上端側),114B(下電極の下端側)が形成されている。
また、下電極112の上下端に形成された空洞部114A,114Bのうち下電極112の上端に形成された空洞部114Aと、その直下の下電極112の下端に形成された空洞部114Bとをそれぞれ、連通する通気孔116が下電極112に形成されている。
また、下電極112には、電圧調整可能な直流バイアス電源118により一定の直流バイアス電圧が印加されるようになっている。
また、信号源120により、二つの上電極100A、100B間に信号電圧である交流信号(周波数は20kHz以上の超音波周波数帯)が印加されるようになっている。
上電極100Bの一方に対面する位置に設けられたコーン125は、図上、下方に向けて発生した超音波を反射面125A,125Bにより上方に反射する機能を有する。なお、本実施形態におけるコーン125の配置では、コーン125は下方に向けて発生した超音波を発散するよう機能するが、このコーン125の反射面130Cを上電極100Bに対面するように位置させた場合には、コーン125は下方に向けて発生した超音波を前方に収束するように機能する。
コーンの材質としては、空気と音響インピーダンスの差が大きい材料、例えば硬い固体(金属、セラミック、プラスチック)などが望ましい。
上記構成において、下電極112に直流バイアス電源118により一定の直流バイアス電圧が印加された状態で、信号源120により交流信号が上電極100A,100B間に印加されることにより二つの上電極100A,100Bの導電膜102は駆動され、振動する。このときに上電極100Aの導電膜102に正極性の交流電圧が印加されるときは、上電極100Bの導電膜102には負極性の交流電圧が印加される。この場合に、下電極112に正の直流バイアス電圧が印加されているので、下電極112の上端側に形成されている空洞部114Aに対面する位置にある上電極100Aの振動膜101は下電極112より反発力を受け、図上、上方に変位する。
また、このとき、下電極112の下端側に形成されている空洞部114Bに対面する位置にある上電極100Bの振動膜101は、下電極112より吸引力を受け、図上、上方に変位する。
同様に、上電極100Aの導電膜102に負極性の交流電圧が印加されるときは、上電極100Bの導電膜102には正極性の交流電圧が印加される。この場合に、下電極112に正の直流バイアス電圧が印加されているので、下電極112の上端側に形成されている空洞部114Aに対面する位置にある上電極100Aの振動膜101は下電極112より吸引力を受け、図上、下方に変位する。
また、このとき、下電極112の下端側に形成されている空洞部114Bに対面する位置にある上電極100Bの振動膜101は、下電極112より反発力を受け、図上、下方に変位する。
このように、上電極100A,100Bの導電膜102、102間に信号源120より交流信号が印加されると、その印加される交流信号の極性に応じて、上電極100Aの振動膜101が上方に変位する場合には、上電極100Bの振動膜101も上方に変位し、上電極100Aの振動膜101が下方に変位する場合には、上電極100Bの振動膜101も下方に変位するように、上電極100A,100Bの導電膜102、102は、同方向に変位するために、空洞部114A、空洞部114B内にトラップされた空気は、通気孔116を介して移動し、空洞部114A,114Bにトラップされた空気の体積変化を抑制することができ、それ故、空気の体積膨張率によるばね効果が減少し、より大きな膜振動が得られる。
図5に第2実施形態に係る超音波トランスデューサの上電極と下電極との固定方法を示している。図4に示した第2実施形態に係る超音波トランスデューサでは、上電極100A,100Bの振動膜は、交流信号の極性に応じて上下双方の力を交互に受けるので、常に下電極112に吸引されているわけではない。したがって、静電吸引力に代わる他の方法が必要となる。なお、図5では、電極構造を簡略化して示しているが、図4に示す超音波トランスデューサの電極構造と同一のものである。
図5(A)に示す上電極と下電極との固定方法は、超音波トランスデューサ1Aにおける二つの上電極100A,100Bと下電極112との接触面を接着することにより固定するものである。
図5(B)に示す上電極と下電極との固定方法は、下電極112の空洞部114A,114Bの形状に対応する(同一の)形状の、例えばメッシュ状の部材140で上電極100A,100Bを下電極112に固定する方法を図示している。メッシュの材質としては電極を傷めないような柔らかく滑らかな加工が施されている材料、例えば繊維、プラスチックなどが望ましい。メッシュ状の部材140は本発明の押圧手段に相当する。
図5に示す方法により上電極と下電極とを固定することにより、上電極を下電極に吸着させるための直流バイアス電圧を不要とすることができる。
なお、第1実施の形態、第実施形態に係る超音波トランスデューサの周波数特性は、図8における曲線Q1に示すものとなり、広周波数帯域にわたって、音圧レベルが一定で、かつ大きくとれる。
以上に説明したように、本発明の第1実施形態に係る超音波トランスデューサによれば、上電極と下電極とを密着させることにより該上電極と下電極との間に形成される複数の空洞部内から外部に連通する通気孔を前記下電極に設けたので、振動膜が振動時に空気の流れがスムーズとなり、振動膜の振幅を大きくすることができる。
また、本発明の第2実施形態に係る超音波トランスデューサによれば、下電極の両面に上電極を構成する振動膜を設け、前記下電極の上下端に形成された空洞部のうち上端に形成された空洞部と、その直下の前記下電極の下端に形成された空洞部とをそれぞれ、連通する通気孔を形成したので、二つの上電極の振動膜を二つの上電極間に印加される交流信号の極性に応じて、同方向に変位させることにより下電極の上下端に形成された空洞部にトラップされた空気の体積変化を抑制することができ、それ故、空気の体積膨張率によるばね効果が減少し、より大きな膜振動が得られる。
さらに、第2実施形態に係る超音波トランスデューサによれば、二つの上電極と下電極との接触面を接着することにより固定するようにしたので、二つの上電極と下電極との接触面を吸着させるための直流バイアス電圧を低減することができ、従来大掛かりであった電源装置の小型化が図れる。
さらに、第2実施形態に係る超音波トランスデューサによれば、二つの上電極と下電極との接触面を押圧して固定する押圧手段を有するので、二つの上電極と下電極との接触面を吸着させるための直流バイアス電圧を低減することができ、従来大掛かりであった電源装置の小型化が図れる。
さらに、第2実施形態に係る超音波トランスデューサによれば、下電極に一定の直流バイアス電圧を印加し、下電極の上下端に配置された二つの上電極間に交流信号電圧を印加するようにしたので、下電極の上下端に配置された上電極の振動膜を効率的に振動させることができる。
さらに、第2実施形態に係る超音波トランスデューサによれば、二つの上電極のいずれか一方に対面した位置に音波を前方に発散または収束させるコーンを有するので、二つの上電極を構成する振動膜の振動により発生する超音波出力を有効利用することができる。
本発明に係る超音波トランスデューサは、位置計測用の各種センサ、指向性スピーカ用音源、インパルス信号発生源等に利用可能である。
本発明の第1実施形態に係る超音波トランスデューサの構成を示す図。 図1に示した本発明の第1実施形態に係る超音波トランスデューサの電極構造の具体例を示す断面図。 従来の超音波トランスデューサと本発明の第1実施形態に係る超音波トランスデューサの動作時の状態を示す説明図。 本発明の第2実施形態に係る超音波トランスデューサの構成を示す図。 本発明の第2実施形態に係る超音波トランスデューサの上電極と下電極との固定方法を示す説明図。 従来の超音波トランスデューサの構成を示す図。 広帯域発振型超音波トランスデューサの具体的構成を示す構成図。 超音波トランスデューサの音圧レベルの周波数特性を示す特性図。
符号の説明
1、1A…超音波トランスデューサ、2、101…振動膜、3、102…導電膜、10、100A、100B…上電極、12、112…下電極、14、114A、114B…空洞部、16、116…通気孔、18、118…直流バイアス電源、20、120…信号源、125…コーン

Claims (7)

  1. 絶縁体で形成された振動膜と該振動膜上に形成された導電膜とからなる上電極と、前記上電極の振動膜に対向する面に凹凸が複数、形成された下電極とを有し、前記上電極と下電極とを密着させ、該上電極と下電極との間に交流信号を印加することにより超音波を発生させる超音波トランスデューサであって、
    前記上電極と下電極とを密着させることにより該上電極と下電極との間に形成される複数の空洞部内において前記振動膜が振動時に生ずる空気の圧縮抵抗を低減させる圧縮抵抗低減手段を有することを特徴とする超音波トランスデューサ。
  2. 絶縁体で形成された振動膜と該振動膜上に形成された導電膜とからなる上電極と、前記上電極の振動膜に対向する面に凹凸が複数、形成された下電極とを有し、前記上電極と下電極とを密着させ、該上電極と下電極との間に交流信号を印加することにより超音波を発生させる超音波トランスデューサであって、
    前記上電極と下電極とを密着させることにより該上電極と下電極との間に形成される複数の空洞部内から外部に連通する通気孔を前記下電極に設けたことを特徴とする超音波トランスデューサ。
  3. 両面に凹凸が複数、形成された下電極と、
    前記下電極の両面に、それぞれ対向して配置され絶縁体で形成された振動膜と該振動膜上に形成された導電膜とからなる二つの上電極とを有し、
    前記二つの上電極と下電極とを密着させることにより下電極の上下端に複数の空洞部が形成されてなる超音波トランスデューサであって、
    前記下電極の上下端に形成された空洞部のうち前記下電極の上端に形成された空洞部と、その直下の前記下電極の下端に形成された空洞部とをそれぞれ、連通する通気孔を形成したことを特徴とする超音波トランスデューサ。
  4. 前記二つの上電極と下電極との接触面を接着することにより固定したことを特徴とする請求項3に記載の超音波トランスデューサ。
  5. 前記二つの上電極と下電極との接触面を押圧して固定する押圧手段を有することを特徴とする請求項3に記載の超音波トランスデューサ。
  6. 前記下電極に一定の直流バイアス電圧を印加し、前記二つの上電極間に交流信号電圧を印加することを特徴とする請求項3乃至5のいずれかに記載の超音波トランスデューサ。
  7. 前記二つの上電極のいずれか一方に対面した位置に音波を前方に発散または収束させるコーンを有することを特徴とする請求項3乃至6のいずれかに記載の超音波トランスデューサ。
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