JP4507876B2 - 固体撮像素子 - Google Patents

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Description

本発明は、シリコン層内に光電変換素子が形成された、固体撮像素子に係わる。
固体撮像素子は、半導体層内に光電変換素子が形成されて構成される。
そして、固体撮像素子において、光電変換素子が形成された半導体層の表面準位に起因して、所謂暗電流が発生することが問題になる。
この暗電流は、主として、図7Aのポテンシャル図に示すように、表面準位に捕獲された電子が伝導帯まで熱的に励起されることにより、表面空乏層の電界によって、光電変換素子を構成するフォトダイオードのn型半導体領域まで移動するために、発生するものである。
例えば、半導体層がシリコンである場合には、そのバンドギャップが1.1eVであり、かつバーディーン・リミットによって、このバンドギャップが2:1に分割されるところに表面準位(及びフェルミレベル)が存在する。
従って、このとき表面準位に捕獲されている電子にとってのポテンシャル障壁は0.7eVとなる。
そこで、この表面準位に起因する暗電流を低減するために、フォトダイオードの表面にp層を設ける方法が採用されている(例えば、特許文献1参照。)。
これによって、ある程度暗電流が抑えられている。
即ち、図7Bのポテンシャル図に示すように、p層の存在によって、表面準位に捕獲された電子にとってのポテンシャル障壁が1.0eVとなり、p層がない場合と比較して0.3eVほど高くなる。これにより、熱的に励起される電子数を低減することができるため、暗電流を低減することができる。
シリコン基板の表面にp層を設けた場合には、その室温(T=300K)における暗電流の量が、p層を設けない場合と比較して、フェルミディラックの分布関数から見積もって4桁減少する。
ここで、フェルミディラックの分布関数は、下記数1となる。
Figure 0004507876
ただし、Eはエネルギーであり、Eはフェルミエネルギーであり、Tは絶対温度であり、kはボルツマン定数であり、eは自然対数である。そして、E−Eが、ポテンシャル障壁の大きさに対応する。
特開2002−252342号公報(図15)
しかしながら、画素の微細化が進むに従い、各画素のフォトダイオードが受光する光量が減少することから、信号量も低下するため、相対的にS/N比が小さくなってしまう。
このため、シリコン基板の表面にp層を設けて暗電流の量が4桁減少しても、充分なS/N比を確保することができなくなり、例えば夜景の空を撮像しても、得られる画像にドット状のノイズとして現れることになる。
これは、通常、入射光量が少ない場合には、感度不足を補うために画像の信号をアンプ等でゲインを高くして信号強度を高くしているが、このとき信号強度と同時にノイズの強度が高められるので、結果として画像中のノイズが目立ってしまうからである。
今後、さらなる微細化が進むに従い、信号強度が減っていくため、シリコン基板の表面にp層を設けて暗電流によるノイズを低減するだけでは追いつかなくなる。
従って、充分なS/N比を確保するために新たな工夫が必要になる。
上述した問題の解決のために、本発明においては、暗電流によるノイズを低減することにより、充分なS/N比を確保することを可能にする固体撮像素子を提供するものである。
本発明の固体撮像素子は、シリコンから成る半導体層と、この半導体層内に形成された光電変換素子と、半導体層の、少なくとも光電変換素子が形成された部分の上に形成された、SiGeCから成る単結晶層とを含み、半導体層と単結晶層との間に、超格子が設けられているものである。
上述の本発明の固体撮像素子の構成によれば、シリコンから成る半導体層の、少なくとも光電変換素子が形成された部分の上に、SiGeCから成る単結晶層が形成されていることにより、単結晶層のバンドギャップが半導体層よりも広いため、表面準位からの電子に対する障壁が大きくなり、この電子に起因する暗電流を低減することができる。
上述の本発明によれば、単結晶層により表面準位からの電子に対する障壁が大きくなり、この電子に起因する暗電流を低減することができ、例えば12桁と大幅に低減することも可能になるため、入射光による信号のS/N比を飛躍的に改善することが可能になる。
これにより、暗い部屋等の入射光量が少ない撮像条件において、高感度化のために信号のゲインを高く設定しても、ノイズが目立ない画像を得ることが可能になる。
また、たとえ低感度の撮像素子であっても、入射光量に関係なく、アンプの増幅だけで高画質の画像を得ることが可能になる。
そして、素子を微細化して入射光量が少なくなっても、充分なS/N比を確保することが可能になるため、感度不足を補うためにアンプで増幅するだけで、ノイズが目立たない良好な画像が得られる。
従って、素子を微細化することにより、固体撮像素子の多画素化を図ることができ、また固体撮像装置の小型化を図ることができる。
まず、本発明の具体的な実施の形態の説明に先立ち、本発明の概要について説明する。
本発明では、前述した課題を鑑みて、暗電流を有効的に減らす手段として、ワイドバンドギャップの材料から成る単結晶層を、光電変換素子が形成された半導体層(半導体基板、半導体エピタキシャル層、半導体基板及びその上の半導体エピタキシャル層等、単結晶の半導体層が該当する)の表面に接合させて、高いポテンシャル障壁を築く。
例えば、フォトダイオードが形成されたn型Si層の表面に立方晶系のSiC層を接合させると、SiCのバンドギャップを2.2eVとすれば、深さ方向のポテンシャル分布を図3に示すように、ポテンシャル障壁が1.5eVとなり、図7Aや図7Bに示した場合よりも障壁が大きくなることから、暗電流が減少する。
この場合、前述したフェルミディラックの分布関数から、室温において12桁ほど暗電流が減少することになる。
このように、暗電流が減少することにより、ノイズが低減されることから、S/N比が高くなる。これにより、入射光量が低い場合にアンプで信号を増幅しても、ノイズが目立たなくなる。
上述したワイドバンドギャップ材料としては、各種の材料が考えられる。
例えば、化合物半導体である混晶系の組成比を変えることにより、バンドギャップを制御できる。例えばAlGaInP系混晶やSiC系混晶やZnCdSe系混晶やAlGaInN系混晶が挙げられる。
そして、光電変換素子を形成する半導体層としてシリコン層を用いた場合には、製造の容易さ等も考慮すると、同じVI族元素を用いたSiC系の相性が良い。
しかしながら、シリコンとSiCとの格子不整の絶対値が大きいために、接合界面の所でミスフィット転位が発生しやすい。ここで述べている格子不整Δaとは、次式(数2)で定義することができる。
Figure 0004507876
ここで、aSiC, aSiは、それぞれSiCとSiの格子定数である。
このミスフィット転位の発生を防ぐためには、例えばSiCの膜厚を臨界膜厚程度以下に薄くすればよい。例えば、SiCの膜厚を30nm以下にすれば良いことが実験的に判っている。
さらに、SiとCの組成比が1:1のようにCの組成比が高い場合には、さらに膜厚15nm以下とより薄くすれば良いことも判っている。
また、SiCにGeを含有させてSiGeC系混晶とすることにより、格子不整Δaの絶対値を小さくしても良い。
ここで、表1にSi,Ge,Cの結晶構造と格子定数を示す。
Figure 0004507876
表1に示すように、Cの格子定数がSiの格子定数よりも小さいために、SiC系だけでは格子不整Δaの絶対値が大きくなる。
そこで、Siの格子定数より大きいGeをSiCに混ぜることによって、格子不整Δaの絶対値をある程度小さくすることができる。
このようにSiGeCにより単結晶層を形成する場合にも、単結晶層の膜厚を、好ましくは30nm以下、より好ましくは15nm以下にする。
なお、Cを含まないSiGeは、バンドギャップがSiよりも小さいため、このSiGeC系を単結晶層に用いる場合には、Cを含有させる必要がある。
上述のようにGeを入れてSiGeC系混晶とすることにより結晶性を高めることができるが、別の方法でも結晶性を高くすることも可能である。
即ち、Si層等の半導体層と、SiC層又はSiGeC層等の単結晶層との間の界面に、厚さ15nm以下の歪み超格子を1層以上入れることにより、この歪み超格子により、歪みが緩和されたり、転位が膜面方向に抜けたりするため、結晶性が高くなる。この場合の超格子の薄膜は、Siと格子定数の異なるものであれば良い。即ち、例えばSiGeC系で組成比の異なる層をSi基板の上に多層に積層しても同様な効果が得られる。
上述した化合物の単結晶層の薄膜を得るためには、CVD(化学的気相成長)法、MOCVD(有機金属CVD)法、プラズマCVD法、MBE(分子線エピタキシー)法、レーザアブレーション法、スパッタリング法等、一般的な結晶成長方法であれば可能である。
または、カーボン等炭素系の材料をシリコンの表面に付着させた後に、アニール処理を施す等の方法によってシリコンの表面を炭化させることにより、表面にSiC層を形成しても良い。
上述したバンドギャップの広い単結晶層は、前述したように、膜厚をあまり厚くし過ぎると、半導体層との間でミスフィット転移が発生するため、数十nm以下とすることが望ましい。
一方、膜厚をあまり薄くし過ぎると、トンネル効果が生じて、障壁としての役割を充分に果たせなくなるため、2nm以上、より好ましくは5nm以上にする。
なお、バンドギャップの広い層を、単結晶層ではなく、非晶質層や多結晶層にすると、下の半導体層との界面に準位が形成されて、暗電流を充分に低減することができなくなるため、好ましくない。
続いて、本発明の具体的な実施の形態を説明する。
本発明の一実施の形態として、固体撮像素子の概略構成図(模式的平面図)を図1に示す。
本実施の形態は、本発明の固体撮像素子をCCD固体撮像素子に適用したものである。
この固体撮像素子1は、受光部としてフォトダイオードPDがマトリクス状に多数配置され、受光部(フォトダイオードPD)の各列に対応して、それぞれ垂直方向(図中縦方向)に延びる垂直CCDレジスタ2が設けられ、各垂直CCDレジスタ2の一端に水平方向(図中横方向)に延びる水平CCDレジスタ3が接続され、さらに水平CCDレジスタ3の一端に、出力アンプ4を介して出力部5が接続されて構成されている。
また、図1の固体撮像素子1の受光部を含む断面図を図2に示す。
図2に示すように、n型のシリコン基板11の上部にp型半導体ウエル領域12が形成され、このp型半導体ウエル領域12に、フォトダイオードPD及び垂直CCDレジスタ2を構成する半導体領域が形成されている。
フォトダイオードPDは、いわゆる光電変換素子となるものであり、p型半導体ウエル領域12の上部にn型の電荷蓄積領域13が形成され、これら領域12,13によりダイオードが構成されている。
垂直CCDレジスタ2では、p型半導体ウエル領域12の表面付近に、信号電荷が転送されるn型転送チャネル領域15が形成され、n型転送チャネル領域15の下に第2のp型半導体ウエル領域14が形成されている。
また、フォトダイオードPDのn型の電荷蓄積領域13と、右側のn型転送チャネル領域15との間には、p型のチャネルストップ領域16が形成されており、このチャネルストップ領域16により、信号電荷がn型の電荷蓄積領域13から右側のn型転送チャネル領域15に流れ込まないようにしている。
フォトダイオードPDのn型の電荷蓄積領域13と、左側のn型転送チャネル領域15との間は、読み出しゲート領域17となっている。
シリコン基板11の上には、ゲート絶縁膜18を介して、多結晶シリコンから成る転送電極19が形成されている。転送電極19は、読み出しゲート部17と転送チャネル領域15上とチャネルストップ領域16上とにまたがって形成され、この転送電極19の開口に対応してフォトダイオードPDの電荷蓄積領域13が形成されている。
転送電極19上には、SiOから成る層間絶縁膜20を介して、Alから成る遮光膜21が形成されている。この遮光膜21は、転送電極19の上方から側面に跨って形成され、かつフォトダイオードPDの電荷蓄積領域13上に開口を有している。
本実施の形態の固体撮像素子1においては、特に、受光部のフォトダイオード(光電変換素子)PDが形成されたシリコン基板11上に接合して、シリコン基板11のシリコンよりもバンドギャップの広い材料、例えばSiCやSiGeCから成る単結晶層25を設けている。
この単結晶層25を設けたことにより、従来の構成と比較して、暗電流を大幅に低減することができる。
前述したように、SiCやSiGeCを単結晶層25に用いる場合には、単結晶層25の膜厚を30nm以下にすることが望ましい。例えば10nm程度の膜厚とする。
単結晶層25を形成する工程は、例えばCVD法等、前述した各種方法を採用することができる。
上述の本実施の形態の固体撮像素子1の構成によれば、フォトダイオードPDが形成されたシリコン基板11上に接合して、シリコン基板11のシリコンよりもバンドギャップの広い材料から成る単結晶層25を設けていることにより、この単結晶層25のバンドギャップが広いため、表面準位からの電子に対する障壁が大きくなり、この電子に起因する暗電流を低減することができる。そして、暗電流を例えば12桁と大幅に低減することも可能になり、入射光による信号のS/N比を飛躍的に改善することができる。
これにより、暗い部屋等の入射光量が少ない撮像条件において、高感度化のために信号のゲインを高く設定しても、ノイズが目立ない画像を得ることが可能になる。
また、固体撮像素子1が低感度であっても、入射光量に関係なく、アンプの増幅だけで高画質の画像を得ることが可能になる。
そして、固体撮像素子1の画素を微細化して入射光量が少なくなっても、充分なS/N比を確保することが可能になるため、感度不足を補うためにアンプで増幅するだけで、ノイズが目立たない良好な画像が得られる。
従って、固体撮像素子1の画素を微細化することにより、固体撮像素子1の多画素化や固体撮像装置の小型化を図ることができる。
(実施例)
ここで、実際に、本実施の形態の固体撮像素子1を作製して、特性を調べた。
まず、単結晶層25としてSiC層を形成した、固体撮像素子1を作製した。
シリコン基板11の上に、例えばCVD法を用いて、単結晶層25としてSiC層を例えば膜厚10nm程度結晶成長させた。このとき、例えば、原料としてCとモノシランSiHとを使用して、基板温度を1100℃以下とした。
なお、CVD法以外の他の方法により、SiC層を形成することも可能である。例えば、レーザアブレーション法では、ターゲット材料にSiCを用いて結晶成長させることが可能である。
その後に、通常のCCD固体撮像素子の製造工程と同様の工程を行って、図1及び図2に示した本実施の形態の固体撮像素子1を作製した。
作製した固体撮像素子1を使用して、実際に撮像を行ったところ、暗電流が非常に少なくなり、暗い条件で撮像してもノイズが目立たない画像が得られた。
次に、単結晶層25としてSiGeC層を形成した、固体撮像素子1を作製した。
シリコン基板11を、NHOH,H,HOの混合液(混合比は1:1:5)に10分間浸すことにより、表面を洗浄した。
その後、HF(HF:HO=1:50)処理を10秒行うことにより、シリコン基板11表面の自然酸化膜を除去した。
このような工程を経ることによって、シリコン基板11の表面を清浄化すると、その後の結晶成長の結晶性が向上する。
このように前処理を行って、自然酸化膜を除去したシリコン基板11を基板ホルダーに設置した。
次に、減圧CVD法を用いて、シリコン基板11上に単結晶層25となるSiGeC層を成膜した。
まず、圧力1×10Pa、基板温度1150℃で、水素ガスの流量を1リットル/分とした条件のもとで、さらにプロパンCを450μmol/分の条件で供給して、この状態で2分間保持することにより、シリコン基板11の表面を炭化させた。
さらに、減圧CVD法によって、原料ガスのモノシランSiHとCとGeH4とを、それぞれ、36μmol/分と59μmol/分と10μmol/分の条件で同時供給することにより、SiGeC結晶をシリコン基板上に30秒間成長させた。この結果、単結晶層25となるSiGeC層をほぼ10nmの膜厚で成膜することができた。
なお、ここでは減圧CVD法を用いたが、その他の方法によりSiGeC層を形成することも可能である。例えば、レーザアブレーション法では、ターゲット材料にSiGeCを用いて結晶成長させることが可能であり、有機シラン系材料等の有機金属系材料を用いたガスソースMBE法でも結晶成長させることが可能である。
その後に、通常のCCD固体撮像素子の製造工程と同様の工程を行って、図1及び図2に示した本実施の形態の固体撮像素子1を作製した。
作製した固体撮像素子1を使用して、実際に撮像を行ったところ、暗電流が非常に少なくなり、暗い条件で撮像してもノイズが目立たない画像が得られた。
上述の実施の形態では、単結晶層25を、シリコン基板11上に全面的に形成したが、例えば、電気特性を良くする等の目的で、フォトダイオードPD部以外の単結晶層を、RIE(反応性イオンエッチング)法等のエッチング方法で除去しても良い。この場合、リソグラフィ技術でフォトダイオード部をマスクで保護してからエッチングを行っても良い。
この場合の実施の形態を次に示す。
続いて、本発明の他の実施の形態の固体撮像素子の概略構成図(断面図)を図4に示す。
本実施の形態の固体撮像素子30では、例えばSiC又はSiGeCから成る単結晶層26が、シリコン基板11のフォトダイオードPD部のみの表面に形成されている。この単結晶層26は、シリコン基板11の上に接合して形成されている。
その他の構成は、先の実施の形態の固体撮像素子1と同様であるため、同一符号を付して重複説明を省略する。
単結晶層26は、例えば、全面的に単結晶層26となる膜を成膜した後に、フォトダイオードPD部以外の単結晶層を、RIE(反応性イオンエッチング)法等のエッチング方法で除去することにより、形成することができる。
上述の本実施の形態の固体撮像素子30の構成によれば、シリコン基板11のフォトダイオードPD部上に接合して、シリコン基板11のシリコンよりもバンドギャップの広い材料から成る単結晶層26を設けていることにより、この単結晶層26のバンドギャップが広いため、表面準位からの電子に対する障壁が大きくなり、この電子に起因する暗電流を低減することができる。そして、暗電流を例えば12桁と大幅に低減することも可能になり、入射光による信号のS/N比を飛躍的に改善することができる。
これにより、暗い部屋等の入射光量が少ない撮像条件において、高感度化のために信号のゲインを高く設定しても、ノイズが目立ない画像を得ることが可能になる。
また、固体撮像素子30が低感度であっても、入射光量に関係なく、アンプの増幅だけで高画質の画像を得ることが可能になる。
そして、固体撮像素子30の画素を微細化して入射光量が少なくなっても、充分なS/N比を確保することが可能になるため、感度不足を補うためにアンプで増幅するだけで、ノイズが目立たない良好な画像が得られる。
従って、固体撮像素子30の画素を微細化することにより、固体撮像素子30の多画素化や固体撮像装置の小型化を図ることができる。
ここで、実際に、図4に示した実施の形態の固体撮像素子30を作製して、特性を調べた。
前述したと同様に、前処理及びSiGeC層の成膜を行って、シリコン基板11上に単結晶層26となるSiGeC層を形成した。
次に、リソグラフィ技術とRIE技術とにより、フォトダイオードPD部以外のSiGeC層を除去して、フォトダイオードPD部のみにSiGeCから成る単結晶層26を残した。
その後に、通常のCCD固体撮像素子の製造工程と同様の工程を行って、図4に示した本実施の形態の固体撮像素子30を作製した。
作製した固体撮像素子30を使用して、実際に撮像を行ったところ、暗電流が非常に少なくなり、暗い条件で撮像してもノイズが目立たない画像が得られた。
なお、マスクを用いて、フォトダイオードPD部のみに単結晶層が形成されるようにしてもよい。
例えば、フォトダイオードPD部以外のシリコン基板11の上をマスクで覆って、シリコン基板11の表面を炭化させる。これにより、フォトダイオードPD部のみに単結晶層が形成される。
なお、この場合に作製される固体撮像素子は、その断面図を図5に示すように、フォトダイオードPD部に形成される単結晶層27が、シリコン基板11の内部に入り込んで形成される点が図4の構成とは異なっている。
上述の各実施の形態では、シリコン基板11にSiC又はSiGeCから成る単結晶層25,26,27を形成していたが、単結晶層には、基板11のシリコンよりもバンドギャップが広いその他の材料を用いることも可能である。
ここで、SiC以外の、バンドギャップがシリコンSiよりも広い材料を、以下に格子定数と共にリストアップする。以下に挙げた材料は、すべてシリコンSiと同じ立方晶系を有するものである。これは、シリコン上にエピタキシャル成長させるためには、同じ立方晶系であることが望ましいからである。
材料 バンドギャップEg(eV) 格子定数a(Å)
GaAs 1.43 5.654
AlAs 2.16 5.66
GaN 3.27 4.55
AlN 6.8 4.45
ZnSe 2.67 5.667
ZnS 3.70 5.41
MgSe 3.6 5.62
MgS 4.5 5.89
ここで、GaAsとAlAsとGaNとAlNはIII−V族化合物半導体であり、AlGaAs系三元混晶でもAlGaN系三元混晶としても良い。これ以外のIII−V族化合物半導体としてAlGaInP系四元混晶等も存在する。
また、ZnSeとZnSはII−VI族化合物半導体であり、ZnMgSSe系四元混晶としても良い。II−VI族化合物半導体では、この他にZnMgO系三元混晶等も存在する。
また、本発明は、シリコン以外の半導体層に光電変換素子を形成した固体撮像素子にも適用することができる。
例えば、化合物半導体層に光電変換素子(フォトダイオード)を形成した固体撮像素子に対しても、本発明を適用することができる。
0.9μm〜1.7μmの波長領域の赤外線を検知するには、光電変換素子を形成する半導体層に、GaInAs等の化合物が使用される。
また、3μm〜5μmの波長領域の赤外線を検知するには、光電変換素子を形成する半導体層に、InSbやPtSi等の化合物が使用される。
さらに、8μm〜14μmの波長領域を検出するには、光電変換素子を構成する半導体層に、HgCdTe等の化合物がよく使用される。
このような赤外領域を検知することによって、例えば、石英ガラスファイバーの光通信用のフォトダイオードや温度情報を得る固体撮像素子(通称;赤外線サーモグラフィー)にも本発明を適用することができる。
これらの材料はバンドギャップが狭いため、光電変換素子を形成する半導体層に用いて、その表面に、より広いバンドギャップを有する単結晶層を接合させることにより、シリコン基板とSiC系との接合と同様に、暗電流を低減する効果が得られる。
また、化合物半導体に限らず、シリコン以外のIV族元素例えばGeからなる半導体層に光電変換素子(フォトダイオード)を形成した構成にも、本発明を適用することが可能である。
上述の各実施の形態では、CCD固体撮像素子に本発明を適用したが、本発明は、その他の構成の固体撮像素子、例えばCMOS型固体撮像素子にも適用することができる。
本発明の固体撮像素子のさらに他の実施の形態の概略構成図(模式的平面図)を図6に示す。本実施の形態は、本発明をCMOS型固体撮像素子に適用したものである。
図6に示すように、この固体撮像素子50は、受光部となるフォトダイオードPDがマトリクス状に配置され、各フォトダイオードPDがそれぞれセルアンプ51を介して信号線52,53に接続されて成る。信号線は、垂直シフトレジスタ54に接続された垂直信号線52と、水平信号線53とから成り、これらの信号線52,53の交点付近に各画素のフォトダイオードPDが設けられている。
水平信号線53は、ノイズキャンセル回路55とその図中下方のMOSトランジスタとを介して、信号電圧を出力する信号線に接続されている。
MOSトランジスタのゲートは、水平シフトレジスタ56に接続され、水平シフトレジスタ56によってMOSトランジスタのオン・オフが行われる。
本実施の形態では、図示は省略するが、フォトダイオードPDやMOSトランジスタのソース・ドレイン領域が形成された半導体層の、少なくともフォトダイオードPD部上に、半導体層よりもバンドギャップの広い単結晶層を設ける。
これにより、前述したCCD固体撮像素子に適用した各実施の形態と同様に、暗電流を大幅に低減することが可能になり、固体撮像素子50の画素を微細化して入射光量が少なくなっても、充分なS/N比を確保することが可能になるため、感度不足を補うためにアンプで増幅するだけで、ノイズが目立たない良好な画像が得られる。
従って、固体撮像素子50の画素を微細化することにより、固体撮像素子50の多画素化や固体撮像装置の小型化を図ることができる。
また、本発明は、フォトダイオードPD等の光電変換素子をマトリクス状に配置した構成に限らず、光電変換素子から成る画素を一列ごとに互い違いに(略市松状に)配置した構成や、画素を一列又は数列配置した構成(ラインセンサ等)にも適用することが可能である。
なお、本発明に係る固体撮像素子を製造する際に、半導体層に光電変換素子を構成する半導体領域やその他の半導体領域を形成する工程と、多結晶層を形成する工程とは、どちらの工程を先に行っても構わない。
本発明は、上述の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲でその他様々な構成が取り得る。
本発明の固体撮像素子の一実施の形態の概略構成図(模式的平面図)である。 図1の固体撮像素子の断面図である。 ポテンシャル分布を示す図である。 本発明の固体撮像素子の他の実施の形態の概略構成図(断面図)である。 図4の固体撮像素子とは異なる方法で単結晶層を形成した場合の固体撮像素子の概略構成図(断面図)である。 本発明の固体撮像素子のさらに他の実施の形態の概略構成図(模式的平面図)である。 A 従来の固体撮像素子のポテンシャル分布を示す図である。 B 表面にP層を設けた構成のポテンシャル分布を示す図である。
符号の説明
1,30,40,50 固体撮像素子、2 垂直CCDレジスタ、3 水平CCDレジスタ、4 出力アンプ、11 シリコン基板、12 p型半導体ウエル領域、13 (n型の)電荷蓄積領域、15 転送チャネル領域、19 転送電極、21 遮光膜、25,26,27 単結晶層、51 セルアンプ、52 垂直信号線、53 水平信号線、54 垂直シフトレジスタ、55 ノイズキャンセル回路、56 水平シフトレジスタ、PD フォトダイオード

Claims (1)

  1. シリコンから成る半導体層と、
    前記半導体層内に形成された光電変換素子と、
    前記半導体層の、少なくとも前記光電変換素子が形成された部分の上に形成された、SiGeCから成る単結晶層とを含み、
    前記半導体層と前記単結晶層との間に、超格子が設けられている
    固体撮像素子。
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