以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。尚、以下の好ましい実施形態の説明は、本質的に例示に過ぎず、本発明、その適用物或いはその用途を制限することを意図するものではない。また、以下では説明の便宜上、本発明の実施形態に類似する参考例について先に記述し、その後に実施形態について記述する。
(参考例)
図1は、本発明を適用した参考例のエンジンの吸気側動弁系の構成を示す。このエンジンは、図示は省略するが、4つの気筒が一列に並んだ直列4気筒エンジンであり、その各気筒毎に2つの吸気弁1,2と2つの排気弁(図示せず)とを有する4弁式のダブルオーバヘッドカム方式を採用している。同図において、符号3は、前記4つの気筒が並ぶエンジン前後方向に延びるように配設されていて、エンジンのクランク軸によりカムチェーン(図示せず)を介して回転駆動される吸気側のカムシャフトである。
前記カムシャフト3の前端部には、該カムシャフト3のクランク軸に対する回転位相を所定の角度範囲内で変更可能な公知の位相可変機構18(Variable Cam Timing:以下、VCTと略称する)が付設されている。詳しい説明は省略するが、このVCT18は、スプロケット19の中心孔を貫通するカムシャフト3の前端に固定されたロータと、このロータをエンジン前方から覆うように配置されてスプロケット19に固定されたケーシングとからなり、このロータ及びケーシングの間には周方向に並んで複数の油圧作動室が形成されている。
そして、コントローラ17からの制御信号の入力に応じて、電磁弁20の位置が切換えられることにより、前記VCT18の油圧作動室に供給される作動油圧の方向が切換えられて、前記ロータ及びケーシング、即ちカムシャフト3とスプロケット19とが相対的に回動されるようになっている。但し、前記ロータ及びケーシングの相対回動角度の大きさには機構的な制限があり、例えば40〜60°の範囲内の所定値とされている。
また、前記電磁弁20は、作動油圧の大きさを連続的に変更可能なデューティソレノイドバルブなどであり、これによりロータのケーシングに対する回動量を前記の角度範囲内で連続的に変化させることで、カムシャフト3のクランク軸に対する回転の位相を連続的に変更して、クランク角で見た吸気弁1,2の開閉時期、即ち吸気弁1,2のリフトの位相角を連続的に変更することができる。
また、前記カムシャフト3には、各気筒毎に一対の揺動カム4,5が揺動自在に支持されている。これら一対の揺動カム4,5は、前記2つの吸気弁1,2にそれぞれ対応するように配置され、円筒状の連結部9によって互いに連結されて、カムシャフト3の周りに一体に揺動するようになっている。これにより、各気筒毎2つの吸気弁1,2が同時にリフトされる。尚、前記連結部9の外周面は、カム軸受面と摺接するカムジャーナル部とされている。
前記の如く揺動カム4,5を動作させるために、前記カムシャフト3には、その軸心X(カムシャフト3の回転中心:図2等参照)から偏心した4つの円形の偏心カム6が互いに間隔を空けて一体に設けられている。この各偏心カム6にはそれぞれ回転自在に外輪7が外嵌めされていて、この外輪7の外周に突出するように設けられた偏心凸部に、連結リンク8を介して前記揺動カム5が連結されている。すなわち、前記外輪7は、一端側が前記カムシャフト3の偏心カム6に回転自在に嵌合され、他端部(偏心凸部)が連結リンク8によって揺動カム5に連結されたリンク(以下、オフセットリンクという)である。
また、前記カムシャフト3の斜め上方には、これと平行にコントロールシャフト11が設けられている。このコントロールシャフト11には4つのコントロールアーム12がそれぞれ結合固定されており、該各コントロールアーム12の先端部と前記オフセットリンク7の他端部とが規制リンク13によって連結されている。この規制リンク13は、前記偏心カム6の回転に伴いオフセットリンク7の一端側がカムシャフト3の周りを公転するときに、このオフセットリンク7の変位を規制してその他端部を往復運動させるものであり、これにより、そのオフセットリンク7の他端部に連結された前記連結リンク8が揺動カム4,5を揺動させることになる。
さらに、前記コントロールシャフト11には、円周の一部のみに歯が形成されたウォーム歯車14が結合され、このウォーム歯車14の歯に、電動モータ15で回転駆動されるウォーム16が噛み合っている。そうして、コントローラ17からの制御信号の入力に応じてモータ15が作動し、コントロールシャフト11が回動してコントロールアーム12の位置が変わることによって、オフセットリンク7の他端部の往復運動の軌跡、即ち前記連結リンク8の揺動軌跡が変更され、これにより揺動カム4,5の揺動角などが変化して、吸気弁1,2のリフト量や開閉時期などのリフト特性が変化するようになっている。
言い換えると、前記連結リンク8及び規制リンク13は、揺動カム5とオフセットリンク7とを連結するとともに、前記偏心カム6の回転に伴う該オフセットリンク7の動作を、揺動カム5(及び揺動カム4)が揺動するように規制するリンク機構を構成している。また、そのリンク機構を含めて、前記カムシャフト3の偏心カム6、オフセットリンク7、コントロールシャフト11、コントロールアーム12等により、吸気弁1,2のリフト量を連続的に変更可能なリフト可変機構(Variable Valve Lift:以下、VVLともいう)が構成されている。
そのVVLの構成についてより具体的には、まず、図2(b)に示すように、吸気弁2のステム上端には直動式タペット21が設けられ、このタペット21に揺動カム5が当接している。吸気弁2は、タペット21内部に設けられたリテーナ22とシリンダヘッドに設けられたリテーナ23との間に配設されたバルブスプリング24によって、吸気ポート25を閉じる方向(吸気弁1,2リフト方向とは反対方向)に付勢されている。尚、吸気弁1についても前記吸気弁2と同様の構成になっている。
前記連結リンク8の一端部は、揺動カム5にピン31により回動自在に連結され、一方、規制リンク13の一端部は、コントロールアーム12の先端部にピン32により回動自在に連結されている。そうして、この連結リンク8と規制リンク13とは、オフセットリンク7の両側にそれぞれ配設されて、該オフセットリンク7を中間に挟んで連係している。すなわち、連結リンク8及び規制リンク13の各々の他端部は、オフセットリンク7の他端部に連結ピン33によって同軸に且つ回動自在に連結されている。尚、前記ピン31〜33はいずれもカムシャフト3と平行に延びている。
図示の如く、前記オフセットリンク7と連結リンク8との連結ピン33はカムシャフト3の上方に位置しており、その側方にはコントロールアーム12の回動中心(コントロールシャフト11の軸心)が位置している。コントロールアーム12の先端のピン32は規制リンク13の回動軸であり、そのピン32の位置を変更することによって規制リンク13及び連結ピン33の揺動軌跡を変化させ、これにより、吸気弁1,2のリフト量を変更することができる。
すなわち、各リンクやピンの具体的な動作については以下に詳述するが、モータ15によりコントロールシャフト11及びコントロールアーム12を回動させて、図2に示すようにピン32をコントロールシャフト11の下方に位置づけると、揺動カム4,5の揺動角が大きくなり、リフトピークにおける吸気弁1,2のリフト量が最も大きな大リフト制御状態になる。また、そこからコントロールアーム12などの回動によってピン32を上方へ移動させると、これに応じて揺動カム4,5の揺動角は小さくなり、図3に示すようにピン32をカムシャフト3の上方に位置付けると、吸気弁1,2のリフト量が最も小さな小リフト制御状態になる。
前記図2に示す大リフト制御状態において、揺動カム5は、同図(b)に示すようにカムノーズの先端側で直動式タペット21を押圧し、該タペット21を介して吸気弁2を大きくリフトさせたリフトピークの状態(揺動カム4が直動式タペットを介して吸気弁1を大きくリフトさせた状態)と、同図(a)に示すように吸気弁2(吸気弁1)がリフトしないゼロリフトの状態との間で揺動する。小リフト制御状態である図3の場合も同様にリフトピークの状態(カムノーズの基端側でタペット21を押圧)とゼロリフトの状態との間で揺動する(同図(a)及び(b)参照)。
(リフト可変機構の動作)
以下、そのようなリンクやカムの動作を、図4及び図5を参照して具体的に説明する。この両図では、コントロールアーム12、連結リンク8及び規制リンク13については簡略に直線で表しており、また、偏心カム6の中心(オフセットリンク7の外輪の中心)の回転軌跡を符号T0として示している。尚、上述の如く吸気弁1と揺動カム4との関係は吸気弁2と揺動カム5との関係と同じであって、揺動カム4は揺動カム5と同様に働くので、以下では、吸気弁2と揺動カム5との関係について説明する。
まず、図4を参照して揺動カム5自体のプロファイルを説明すると、この揺動カム5の周面には、曲率半径が所定角度範囲一定の基円面(ベースサークル区間)θ1と、該θ1に続いて曲率半径が漸次大きくなっているカム面(リフト区間)θ2とが形成されている。同図は、前記図2の大リフト制御状態を表しており、コントロールアーム12は大リフト制御位置にある。
同図に実線で示すのは吸気弁2がリフトピーク近傍にある図2(b)の状態であり、このときには、連結リンク8によってピン31が最も上方に引き上げられ、揺動カム5は、カム面θ2のカムノーズ先端側がタペット21に当接した状態になっている。一方、仮想線で示すのはゼロリフトの状態(図2(a))であり、このときには揺動カム5の基円面θ1がタペット21に接していて、吸気弁2はリフトしていない(吸気弁2は閉じている)。
そして、カムシャフト3(偏心カム6)が図の時計回りに回転すると、これに伴いオフセットリンク7の一端側(図の下端側)は、図に矢印で示すようにカムシャフト3の軸心X周りを公転することになるが、このときにはオフセットリンク7の他端部の変位は、そこに連結されている規制リンク13によって規制される。すなわち、規制リンク13は、コントロールシャフト11の下方に位置付けられたピン32を中心に図の実線の位置と仮想線の位置との間を揺動し、これに伴い、オフセットリンク7の他端側(連結ピン33)は、偏心カム6が1回転する度に、ピン32を中心として往復円弧運動をすることになる(この連結ピン33の運動軌跡をT1として示す)。
前記連結ピン33の往復円弧運動T1に伴い、この同じ連結ピン33によって一端部がオフセットリンク7に連結されている連結リンク8の他端部(ピン31)は、図にT2として示す軌跡で往復円弧運動し、そのピン31によって連結リンク8に連結されている揺動カム5が図の実線の位置と仮想線の位置との間で揺動運動をする。すなわち、前記連結ピン33が上方に移動するときには、連結リンク8によってピン31が上方に引き上げられて、揺動カム5のカムノーズがタペット21を押し下げ、これによりバルブスプリング24(図2参照)を押し縮めながら、吸気弁2をリフトさせる。
一方、連結ピン33が下方に移動するときには、連結リンク8によってピン31が下方に押し下げられて、揺動カム5のカムノーズが上昇することになるので、前記のようにして圧縮されたバルブスプリング24の反力によってタペット21が押し上げられて、前記カムノーズの上昇に追従するように上方に移動し、そのタペット21内のリテーナ22によって吸気弁2が引き上げられて、吸気ポート25が閉じられる。
つまり、大リフト制御状態では、揺動カム5がその周面の基円面θ1及びカム面θ2の略全体によってタペット21を押圧するように大きく揺動し、このように大きな揺動角に対応して吸気弁2のリフト量が大きくなるのである。
次に、前記の大リフト制御状態から、コントロールアーム12をコントロールシャフト11の軸心回りに上方へ略水平になるまで回動させると、図3や図5に示すように、規制リンク13の回動軸であるピン32が前記大リフト制御状態よりもカムシャフト3の回転方向の手前側に位置して、リフト量の小さな小リフト制御状態になる。この図5においても前記図4と同様に吸気弁2がリフトピーク近傍にある状態を実線で示し、ゼロリフトの状態を仮想線で示している。
同図において、カムシャフト3(偏心カム6)が回転すると、前記大リフト制御状態と同様にオフセットリンク7の連結ピン33は規制リンク13によって変位が規制され、コントロールシャフト11の側方に位置するピン32を中心として、往復円弧運動T3をする(規制リンク13は図の実線位置と仮想線位置との間で往復回動する)。そして、その連結ピン33の往復円弧運動T3に伴って連結リンク8のピン31が往復円弧運動T4をし、そのピン31によって連結リンク8に連結されている揺動カム5が、図の実線の位置と仮想線の位置との間で揺動運動をして、吸気弁2を開閉するようになる。
つまり、小リフト制御状態では、前記大リフト制御状態と比べて揺動カム5の揺動角が小さくなり、この揺動カム5が、その周面の基円面θ1及びこれに連続するカム面θ2の一部分のみによってタペット21を押圧するようになって、吸気弁2のリフト量が小さくなるのである。
(リフト特性の変化)
上述のようなリフト可変機構VVLの作動によって大リフト制御状態から小リフト制御状態まで連続的に変更される吸気弁1,2のリフトカーブを、図6に示す。同図においてリフトカーブL1は、揺動カム5が図4の実線位置(大リフト制御状態のリフトピーク近傍)と仮想線位置(ゼロリフト)との間で揺動する大リフト制御状態を示し、一方、L2は、揺動カム5が図5の実線位置(小リフト制御状態のリフトピーク近傍)と仮想線位置(ゼロリフト)との間で揺動する小リフト制御状態を示している。
図示の如く、この例のリフト可変機構VVLによれば、吸気弁1,2のリフト量の増大とともに開弁期間(開時期から閉時期までのクランク角期間であって、緩衝区間を含まない)も広がって、当該吸気弁1,2の閉時期が遅角するようになっている。これは、上述したように、揺動カムの揺動角の変化に対応して、吸気弁1,2のリフト量が変更されるからである。
また、図の例では、吸気弁1,2のリフト量が小さいときほど、リフトピークの時期(クランク角位置)が進角している。これは、上述したように、大リフト制御状態から小リフト制御状態への移行にあたって、コントロールアーム12などの回動により規制リンク13の位置をカムシャフト3の回転方向手前側に移動させており、これにより、連結ピン33の往復円弧運動の軌跡が図4のT1の位置から図5のT3の位置へと、カムシャフト3の回転方向手前側に移動するからである。
すなわち、前記図4に示す大リフト制御状態においては、吸気弁1,2がリフトピーク近傍にあるときの偏心カム6の中心は、その回転軌跡T0上の点Taに位置するが、前記図5に示す小リフト制御状態においてはリフトピーク近傍での偏心カム6の中心位置は同図に示す点Tbに移動する。つまり、大リフト制御状態から小リフト制御状態に移行すると、吸気弁1,2のリフトピークは、図5に示すように前記回転軌跡T0上の点Ta、Tbの中心角θ3だけ進角するのである。
要するに、この例のリフト可変機構VVLによれば、吸気弁1,2のリフト特性は、そのリフト量が小さなときほど開弁期間、即ちリフトの作動角が狭くなり、且つその閉時期が早くなる一方、リフト量の連続的な増大とともに開弁期間が広がり、且つその閉時期が遅角するように変化するものである。
そのようなリフト特性の変化は一般的なエンジンの吸気の特性に合致している。すなわち、一般的にエンジンの負荷が高くなるのは高回転側であることが多いが、高回転側ではクランク角で見た吸気弁1,2の開弁期間が同じであっても、その時間間隔は短くなるので、リフト量の増大によって吸気の流路断面積を拡大するだけでなく、開弁期間(クランク角)の増大によって吸気のための時間を確保することが好ましい。また、吸気弁1,2の閉時期を気筒の下死点以降まで遅角させれば、吸気流の慣性によって充填効率を高めることができる。
一方、気筒のポンピングロスを減らすためには、周知の如く吸気弁1,2が気筒の吸気行程の途中で閉じる所謂吸気早閉じの特性とするのが好ましいから、エンジンが低負荷乃至低回転側にあるときには吸気弁のリフト量は小さくするとともに、その位相角は進角させるのがよいのである。
前記のような特性のVVLによって吸気弁1,2のリフト量を最小リフトから最大リフトまで連続的に変更することで、このエンジンでは、スロットル弁に頼らずにエンジンへの出力要求に対応する分量の空気を気筒へ充填することができ、これによりエンジンの出力を制御することができる。そこで、このエンジンでは、図示しないが、各気筒への吸気通路の上流側にモータ駆動のスロットル弁を配設しているものの、これを通常は部分負荷域でも全開として気筒のポンピングロスを減らし、これにより燃費を低減するようにしている。
より具体的に、この参考例では、前記のようなリフト可変機構VVLによる吸気弁のリフト量の変更を、基本的にエンジンの運転状態に応じて行うようにしている。例えば図7に示すような制御マップを参照して、エンジンの目標トルク(エンジンの負荷状態)及びエンジン回転数に対応する適切なリフト量を制御目標値として求め、この値(目標リフト量)になるように、コントローラ17によってモータ15の作動量を制御する。このモータ15の作動によりコントロールシャフト11が回動して、コントロールアーム12の回動位置が大リフト制御位置及び小リフト制御位置の間の適切な位置に制御される。
前記図7の制御マップによれば、コントローラ17は、エンジンの目標トルク及び回転数に基づいて、同じ目標トルクであれば高回転側ほどリフト量が大きくなるように、また、同じエンジン回転数であれば目標トルクが高いほどリフト量が大きくなるように、即ち、高負荷乃至高回転側ほどリフト量が大きくなるように、コントロールアーム12の回動位置を変更するようになっている。言い換えると、コントローラ17は、図1に仮想線で示すように、エンジンの運転状態に応じてリフト可変機構VVLを制御して、吸気弁1,2を低負荷乃至低回転側で相対的に小リフトとし、高回転乃至高負荷側で相対的に大リフトとするリフト制御部17a(リフト制御手段)をプログラムの形態で備えている。
そのようなリフト可変機構VVLの作動制御に加えて、この例ではVCT18の作動制御によって吸気弁1,2のリフトの位相角をエンジンの運転状態に応じて変更するようにしている。すなわち、VVLはその構造上、上述したようにリフト量の小さなときほど位相角が進角し、リフト量の大きなときには遅角するという好ましい特性を有しているが、その位相角の変化の幅は十分でないので、VCT18の作動によって吸気側カムシャフト3の回転位相を変更し、低負荷乃至低回転側では位相角を進角させる一方、高負荷乃至高回転側では遅角させるようにするのである。
但し、アイドル時のようにエンジンの負荷及び回転数が特に低い運転域(特定運転域)では、気筒への吸気の充填量が不足して、燃焼安定性が損なわれる虞れがあるので、ここでは位相角を遅角させて、吸気弁1,2が吸気効率の最も高い吸気行程の中期にリフトピークとなるようにしている。
すなわち、図8に制御マップの一例を示すように、コントローラ17は、エンジンの運転状態に応じてVCT18を制御し、アイドル運転域では最大遅角(進角量0°)とする一方、それ以外の大半の運転域においては位相角が相対的に進角するようにしている。図の例ではアイドル運転域から低中負荷域までは負荷の増大に応じて位相角が進角し、最大進角(60°adv)となった後は負荷の増大及び回転数の上昇とともに遅角して、高負荷乃至高回転域で再び最大遅角(進角量0°)となっている。
そのようなVCT18による位相角の制御と上述したVVLの作動特性とが合わさって、吸気弁1,2の基本的なリフト特性は、図9に模式的に示すようなものとなる。すなわち、図示の如く、アイドル運転時に対応する最小のリフトカーブL2から、リフト量の増大に伴い位相角が進角して、最小リフト及び最大リフトの中間のリフトカーブL3まで(以下、低リフト区間ともいう)は、吸気弁1,2の閉時期が気筒の下死点BDCよりも進角側の所謂吸気早閉じの特性になっている。
そのように比較的リフト量の低いとき、即ちエンジンの運転される頻度が高い中負荷までの運転域において、吸気弁1,2のリフト特性を所謂早閉じとして、気筒のポンピングロスをさらに減らすことによって、エンジンの燃費を効果的に低減することができる。尚、前記中間のリフトカーブL3は、吸気弁1,2の開弁期間の長さが概略、気筒の吸気行程と一致するものであり、吸気弁1,2が気筒の略上死点で開き、略下死点で閉じることから、吸気流の慣性が小さな低回転域において吸気の充填効率が概略、最も高くなるようなリフトカーブである。
また、前記リフトカーブL3よりも高リフト側では、吸気弁1,2のリフト量の増大に伴い開弁期間が広がるとともに、その位相角が遅角することで、吸気弁1,2の閉時期は高負荷高回転の最大リフトカーブL1に向かって大きく遅角することになる。こうして、出力要求の高い高負荷高回転側では吸気弁1,2の閉時期は下死点BDCよりも大きく遅角側にずれることになり、このことで、吸気流の慣性を効果的に利用して、気筒への充填効率を大幅に高めることができる。
つまり、コントローラ17は、図1に仮想線で示すように、エンジンの運転状態に応じてVCT18を制御して、吸気弁1,2のリフトの位相角を進角、遅角させる位相制御部17b(位相制御手段)をプログラムの形態で備えている。この位相制御部17bは、上述したように、低負荷低回転の特定運転域(この例ではアイドル域)では気筒の吸気行程中期にて吸気弁1,2がリフトピーク状態になるように位相角を遅角させる一方、少なくともその高負荷側に隣接する部分負荷の運転域(低リフト区間に対応する運転域)では、相対的に位相角を進角させて、吸気弁1,2の閉時期がBDCよりも進角側となるようにVCT18を制御するものである。
(未暖機時の補正制御)
ところで、一般的にエンジンは、例えば冷却水温度が約80〜90°Cくらいの状態で摺動部のクリアランスが適正値になり、エンジンオイルも柔らかくなって、回転抵抗の少ない所期の状態で運転されるものである。言い換えると、エンジンが始動後に十分に暖まるまでの間は、その回転に対する機械的な抵抗が大きくなるとともに、気筒周辺や吸気系の温度が低いことによって燃料の気化霧化が悪くなり、混合気の着火性や燃焼性が低下することになる。このような燃焼安定性の低下の度合いは個々のエンジンによっても異なるが、通常は冷却水の温度が60〜80°Cくらいの所定値に達するまでの間(所定の未暖機状態)の燃焼安定性の低下が問題になる。
特に、このエンジンでは、上述したように、比較的低負荷乃至低回転側で、吸気弁1,2のリフト量が相対的に小さな低リフト区間において、該吸気弁1,2が気筒の下死点よりも進角側、即ち吸気行程の途中で閉じるようになっているため、吸気によって気筒内に生じる流動が弱くなってしまい、前記した未暖機時における燃料の気化霧化の悪化が助長されて、エンジンの燃焼安定性が損なわれる虞れがあった。
また、上述したように、気筒のポンピングロスを減らして、エンジンの燃費を低減するということは、言い換えれば、エンジンへの出力要求が同じでも気筒への吸気の充填量が少なくて済むということであり、その分は有効圧縮比が低い状態で運転することになるから、圧縮端における気筒内の温度及び圧力が相対的に低くなる傾向にあり、このことも混合気の着火性を低下させる要因となる。
つまり、この参考例のエンジンでは、上述したように吸気弁1,2のリフト特性を変更するようにしたことに起因して、未暖機状態で且つリフト量の比較的低い運転状態では燃焼安定性が損なわれる虞れがあり、このことを防ぐために、吸気弁1,2のリフト量やその位相角の補正制御を行って、燃焼安定性を高めるようにしたものである。
以下、前記の補正制御を中心に、コントローラ17によるリフト可変機構VVLとVCT18の具体的な制御手順を図10のフローチャート図に基づいて説明する。まず、スタート後のステップS1では主にエンジンの運転状態を検出するための各種センサからの信号を入力するとともに、メモリに記憶されているデータを読み込む。続くステップS2において、例えばアクセルペダルの踏み操作量を検出するセンサからの信号と、エンジン回転数センサ(クランク角センサでもよい)からの信号とに基づいて、エンジンの目標トルクを求め、この目標トルクとエンジン回転数とから図7の制御マップを参照して、エンジンの運転状態に対応するリフト量を設定する(目標リフト量の設定)。同様に図8の制御マップを参照して、エンジンの運転状態に対応するリフトの位相角を設定する(目標進角の設定)。
次いで、ステップS3において、エンジンがアイドル運転状態かどうか判定する。この判定は、前記目標トルク及びエンジン回転速度に基づいて、エンジンがアイドル運転域にあるかどうか判定すればよく、アイドル運転域であればYESと判定して後述のステップS5に進む。一方、アイドル運転域になければ(判定はNO)、ステップS4に進んで、今度はエンジンが未暖機状態かどうか判定する。この判定は、例えば水温センサ26(図1参照)によるエンジン水温の検出値が予め設定した値(例えば60〜80°Cの間で実験的に設定すればよい)以上かどうか判別し、エンジン水温が設定値以上の暖機後であれば(判定はNO)、ステップS5に進む。
ステップS5では、前記ステップS2にて設定した目標リフト量に対応する制御信号をモータ15へ出力して、コントロールシャフト11及びコントロールアーム12を回動させるとともに(VVLの作動)、同じステップS2にて設定した目標進角に対応する制御信号を電磁弁20へ出力して、VCT18を作動させ、しかる後にリターンする。
こうして、エンジンがアイドル運転域にあるか、或いは暖機後であれば、その運転状態に応じて、リフト可変機構VVLの作動により前記図6に示すように吸気弁1,2のリフトカーブが変更されるとともに、そのリフトカーブ全体がVCT18の作動によって進角側乃至遅角側にシフトされ、これにより、吸気弁1,2のリフト特性は、前記図9に示すように変化することになる。尚、特にアイドル運転時には、コントローラ17からスロットル弁のモータ27に制御信号を出力して、これを閉じるようにしてもよい。
一方、前記ステップS4にて、エンジン水温の検出値が設定値未満の未暖機状態であるYESと判定されれば、ステップS6に進んで、前記ステップS2にて設定した目標進角を遅角側に補正し、続くステップS7では前記ステップS2にて設定した目標リフト量を減少補正する。すなわち、エンジンが未暖機状態であれば、暖機後のエンジンに最適な特性となるように制御マップに設定されている吸気弁1,2のリフトの位相角を遅角側に補正するとともに、このことにより吸気充填効率が高くなっても、エンジントルクが増大しないように、目標リフト量を減少補正するものである。
前記ステップS6における目標進角の遅角補正量は、例えばエンジンの運転状態(負荷及び回転数)に対応付けて予め実験的に求めた最適値を位相角の補正マップとして設定しておけばよい。より具体的には、補正マップには上述の低リフト区間に対応する運転域における遅角補正量を、補正後のリフト特性による吸気弁1,2の閉時期ができるだけ気筒の下死点に近づくように設定し、それよりも高リフト側では遅角補正量を零とする(即ち、低リフト区間に対応する運転域以外では補正を行わない)。また、前記ステップS7におけるリフト量の減少補正量は、前記位相角の遅角補正量に対応付けて、これと同様に補正マップとして設定しておけばよい。
そうして目標進角及び目標リフト量を補正した後に前記ステップS5に進んで、補正後の目標リフト量に対応する制御信号をモータ15へ出力して、リフト可変機構VVLを作動させるとともに、同じく補正後の目標進角に対応する制御信号を電磁弁20へ出力してVCT18を作動させ、しかる後にリターンする。
以上より、エンジンが未暖機状態にあって燃焼安定性の損なわれる虞れがあるときには、前記位相角の補正マップに基づいて吸気弁1,2のリフトの位相角が暖機後よりも遅角するように補正され、その閉時期が気筒の下死点に近づくようになる。より具体的には、図11に一例を示すように、例えばエンジンがアイドル運転域から高負荷乃至高回転側へ移行するときに、吸気弁1,2のリフトカーブは、まず最小のリフトカーブL2から、アイドル運転域と同じ最大遅角状態のままでリフト可変機構VVLの特性に従ってリフト量が増大し、このリフト量の増大とともに吸気弁1,2の開弁期間が広がって、その閉時期が遅角する。
そうして吸気弁1,2の閉時期が気筒の略下死点にまで遅角すると、その後はリフト量が増大しても吸気弁1,2の閉時期は気筒の略下死点に保たれるように、そのリフト量の増大に対応して位相角が進角し、暖機後と同じ中間のリフトカーブL3に到達する。そして、その後は暖機後と同じようにリフト特性が変化するようになる。
すなわち、未暖機時にはリフトカーブL2〜L3の低リフト区間において、暖機後に比べて位相角が遅角するように補正され、吸気弁1,2は、暖機後よりもピストンの移動速度が高く、気筒の吸気効率が高いクランク角期間において開かれることになるから、その分、気筒への吸気の充填量を多くすることができる。
但し、そのような位相角の遅角補正によって吸気弁1,2の閉時期が遅角することで、気筒のポンピングロスが増大する。また、前記リフト量の補正マップに基づいて吸気弁1,2のリフト量が減少補正されることによって、当該吸気弁1,2の周囲を流通する吸気流が強く絞られ、気筒への充填量の増大が抑えられるとともに、その流通抵抗によってもポンピングロスが増大することになる。
すなわち、エンジンの未暖機状態で前記のように吸気弁1,2のリフトの位相角を暖機後よりも遅角させるとともに、同じエンジン運転状態であれば暖機後と同じエンジントルクが得られるようにリフト量を減少補正した場合、結局、気筒への吸気の充填量は、そのリフト量の減少及び位相角の遅角によるポンピングロスの増大に見合う分だけ、増大することになる。こうして充填量が増大した分だけ、気筒の有効圧縮比が高くなるので、その圧縮上死点近傍における混合気の温度及び圧力(圧縮端の温度及び圧力)が高くなって、混合気の着火性及び燃焼性が向上するのである。
また、前記のように吸気弁1,2が、暖機後よりもピストンの移動速度が高く、吸気効率の高いクランク角期間において開かれることで、吸気によって気筒内に生成される流動が強くなり、しかも、吸気弁1,2の閉時期から点火タイミングまでの時間間隔が短くなることによって、点火までの流動の減衰が抑えられることになるから、気筒内の流動により燃料の気化及び空気との混合を促進して、混合気の着火性及び燃焼性を高めることができる。
したがって、この参考例のエンジンの吸気制御装置によると、まず基本的に、吸気側の動弁系に設けたリフト可変機構VVLをエンジンの運転状態(負荷及び回転数)に応じて制御して、吸気弁1,2のリフト量を連続的に変更することにより、各気筒に必要な分量の空気を充填することができるので、スロットル弁を廃止してもエンジン出力を制御することができる。よって、ポンピングロスを減らして燃費を低減することができる。
また、吸気側カムシャフト3の回転位相を変更するVCT18により、吸気弁1,2の位相角をエンジンの運転状態に応じて制御して、低負荷低回転側の常用運転域では所謂、吸気早閉じの特性として燃費のさらなる低減を図る一方、リフト量が大きくなる高負荷高回転域では吸気弁1,2の閉時期を下死点以降まで大きく遅角させることで、吸気流の慣性を最大限に有効利用して充填効率を十分に高くすることができ、これにより高いエンジン出力が得られるようになる。
さらに、アイドル運転域では吸気弁1,2のリフトの位相角を大きく遅角させて、吸気効率を高めることで、そのリフト量は小さくても所要の充填効率を得て、燃焼安定性を確保することができる。
そして、本発明の特徴として、上述したように、エンジンが未暖機状態で比較的低負荷乃至低回転側の運転状態にあるときに、暖機後の同じ運転状態と比べて吸気弁1,2のリフト量を減少させるとともに、その位相角を遅角させることで、気筒の有効圧縮比を高くして圧縮端の温度及び圧力を高めるとともに、低負荷低回転であっても十分な気筒内流動によって混合気形成を促すことができ、これにより、未暖機状態であっても所要の燃焼安定性を確保することができる。
尚、前記図10に示す制御フローにおいて、ステップS2,S5は、エンジンの運転状態に応じてリフト可変機構VVLやVCT18を制御を制御する、というリフト制御部17a及び位相制御部17bによる制御に対応している。
また、同フローのステップS6,S7により、エンジンが未暖機状態にあるときには、所定の低リフト区間における吸気弁1,2のリフトの位相角が相対的に遅角して、その閉時期が気筒の下死点に近づくように、前記位相制御部17bによる制御を補正するとともに、吸気弁1,2のリフト量が小さくなるように、前記リフト制御部17aによるリフト可変機構VVLの制御を補正する補正制御部17cが構成されている。
言い換えると、前記参考例のコントローラ17は、図1に仮想線で示すように、前記リフト制御部17a及び位相制御部17bの制御を補正する補正制御部17cを、プログラムの形態で備えている。
(実施形態)
図12は、本発明の実施形態に係るエンジンの吸気制御装置におけるリフト可変機構VVLとVCT18の制御手順を示すフローチャート図である。尚、この実施形態に係るエンジンの吸気制御装置の全体的な構成は参考例のものと同じなので、同じ構成要素には同じ符号を付してその説明は省略する。
そして、この実施形態のものでは、上記参考例と同様に、エンジンの未暖機状態において吸気弁1,2の低リフト区間におけるリフトの位相角を遅角側に補正するとともに、例えば寒冷地などの始動後でエンジンの温度状態が特に低いときには、燃料の気化霧化が非常に悪くなることを考慮して、このような低温状態では吸気弁1,2のリフト量を増大させて略一定に保ち、エンジントルクはスロットル弁によって制御することで、気筒の有効圧縮比を高めて、燃焼安定性を確保するようにしたものである。
すなわち、まず、図12に示すフローのスタート後のステップT1〜T5では、上述した参考例の制御フロー(図10参照)のステップS1〜S5と同様の手順を実行し、エンジンが暖機後であれば、その運転状態に応じてリフト可変機構VVLとVCT18とを作動させて、吸気弁1,2のリフト特性を前記図9に示すように変化させる。
一方、エンジンが未暖機状態であれば(ステップT3にてYES)、ステップT4においてアイドル運転域にあるかどうか判定し、アイドル運転域にあれば(YES)後述のステップT10に進む一方、アイドル運転域になければ(NO)、ステップT6に進んで、今度は特に温度の低い低温状態かどうか判定する。この判定は、例えば水温センサ26からの信号に基づいて、その検出値、即ちエンジン水温が、未暖機状態の判定のための設定値よりも低温側の設定値(例えば10°C)以上かどうか判別し、エンジン水温が前記低温側の設定値以上であれば(判定はNO)、ステップT7,T8から前記ステップT5へと進んで、上述した参考例の制御フロー(図10参照)のステップS6,S7,S5と同様の制御手順を実行する。
つまり、エンジンが未暖機状態であっても、特に温度の低い低温状態でなければ、前記参考例と同様に比較的低負荷乃至低回転側の運転状態において吸気弁1,2のリフト量を減少補正し、且つその位相角を遅角補正することにより、燃焼安定性を確保するようにしている。
これに対し、前記ステップT6においてエンジン水温が前記低温側の設定値未満であり、エンジンが低温状態にあるYESと判定すれば、ステップT9に進んで目標進角を遅角側に補正するとともに、続くステップT10において目標リフト量を増大補正する。そして、続くステップT11においてエンジンの運転状態に応じてスロットル弁の開度を制御し、前記ステップT5に進んで、前記補正後の目標リフト量及び目標進角に基づいてリフト可変機構VVL及びVCT18をそれぞれ制御して、しかる後にリターンする。
ここで、前記ステップT9,T10における目標進角やリフト量の補正は、それぞれ、上述した未暖機状態での補正と同様に予め実験的に設定したマップを参照して行うようにすればよい。すなわち、まず、低温状態における位相角の補正マップは、例えば前記未暖機状態のものと同じであればよく、低リフト区間に対応する運転域において遅角補正後は吸気弁1,2の閉時期ができるだけ気筒の下死点に近づくように設定されている(尚、必ずしも未暖機状態と同じ補正マップを用いる必要はなく、例えば、遅角補正後に吸気弁1,2が気筒の吸気行程中期にてリフトピークとなるように設定した補正マップを用いることもできる)。
一方、低温状態におけるリフト量の補正マップは、前記未暖機状態のものとは異なり、低リフト区間の中でも低リフト側の吸気弁1,2のリフト量を、該吸気弁1,2の閉時期が気筒の略下死点になるまで強制的に増大させるように設定されている。すなわち、VCT18の作動によって吸気弁1,2のリフトの位相角を遅角させる場合、その機構的な制限により、リフトが非常に低いときには閉時期を下死点まで遅角させることができないが(図11を参照)、例えば図13においてリフトカーブL4までリフト量を増大させれば、吸気弁1,2の閉時期は略下死点になる。
そうして吸気弁1,2のリフト量を強制的に増大させる一方で、同じエンジン運転状態であれば暖機後と同じエンジントルクが得られるように、吸気通路のスロットル弁を閉じて、気筒への吸気の充填量を調整する。こうしてスロットル弁を閉じると、その下流側の吸気通路全体が負圧となることから、スロットル弁を全開に保って気筒内のみを負圧にする場合に比べて大幅にポンピングロスが増大することになり、このポンピングロスの増大に見合うように気筒への吸気の充填量が多くなる。つまり、低温状態では気筒の有効圧縮比が暖機後に比べてかなり高くなり、それだけ圧縮端の温度及び圧力が上昇することになる。
尚、前記のようにスロットル弁を制御するための制御マップは、エンジンの運転状態に応じてスロットル弁の目標開度を設定した一般的なものであり、これを実験等により予め作成して、コントローラ17のメモリに記憶させておけばよい。
さらに、前記フローのステップT4においてエンジンがアイドル運転域にあるYESと判定して前記ステップT10,T11,T5に進むときには、前記と同様に吸気弁1,2の目標リフト量を増大補正するとともに、スロットル弁は略全閉となるように制御する。すなわち、アイドル状態では特に燃焼安定性の確保が難しいことを考慮して、未暖機状態であれば、低温状態でなくても吸気弁1,2のリフトを強制的に高め、スロットル弁により吸気を絞るようにするのである。
前記図12に示す制御フローにおいても、ステップT2,T5がリフト制御部17a及び位相制御部17bによる制御に対応しており、ステップST6〜T11により、エンジンの未暖機状態で低リフト区間における吸気弁1,2のリフト量やその位相角の補正制御を行う補正制御部17cが構成されている。
そして、この実施形態の補正制御部17cは、エンジンが未暖機状態の中でも低温側の低温状態にあるときには、吸気弁のリフトの位相角を遅角補正するだけでなく、そのリフト量を所定値まで増大させる一方、吸気通路のスロットル弁によって吸気の流量を調整するようにしたものである。
したがって、この実施形態の場合、エンジンが特に温度の低い低温状態のときには、図13に一例を示すように、エンジンがアイドル運転域にあっても吸気弁1,2のリフトカーブは、最小リフトのリフトカーブL2にはならず、それよりも高リフトのリフトカーブL4になる。
この際、スロットル弁は略全閉とされ、その弁体の周縁部と吸気通路壁面との隙間から吸気が流通するようになるから、気筒のポンピングロスが極めて大きくなり、その分、気筒への吸気の充填量が多い状態になる。このため、当該気筒の有効圧縮比はかなり高くなり、エンジンの未暖機状態は勿論、低温状態であっても気筒の圧縮端の温度及び圧力が十分に高くなる。
しかも、前記のように吸気弁1,2のリフト量が増大され、その開弁期間が拡大されて閉時期が気筒の略下死点となっており、その開弁期間における吸気効率が高くなるとともに、リフト量も増大するので、相乗的に気筒内の吸気流動が強くなり、加えて、点火までの気筒内流動の減衰も抑制されるから、燃焼安定性の確保が難しい低温状態で且つアイドル運転状態であっても、十分な燃焼安定性を確保することができる。
そして、アクセルペダルが踏み操作されて負荷が増大し、エンジンがアイドル運転域から高負荷乃至高回転側へ移行すると、こうして変化するエンジンの運転状態に応じてスロットル弁の開度が制御されて、吸気の流量が調整され、これにより、エンジンへの出力要求に対応する分量の空気が気筒へ充填されるようになる。つまり、前記アイドル運転時と同様にスロットル弁により吸気を絞って敢えてポンピングロスを増大させることにより、気筒の有効圧縮比を高くし、さらに、リフト量の増大と位相角の遅角とによって相乗的に気筒内流動の弱化を抑制することによって、エンジンの低温状態において十分な燃焼安定性を確保することができる。
そうして、スロットル弁が全開になった後もエンジンの負荷乃至回転数が増大すれば、これに応じて吸気弁1,2のリフト量が再び増大するとともに、その位相角が進角して、図示のリフトカーブL4〜L3のように、吸気弁1,2の開弁期間が広がってもその閉時期が気筒の略下死点に維持される。さらにエンジンの負荷乃至回転数が増大すれば、前記リフト量やその位相角の補正制御は行われなくなり、暖機後と同様に図7,8の制御マップに従って、エンジンの運転状態に基づきリフト可変機構VVL及びVCT18が制御されるようになる。
(他の実施形態)
本発明の構成は上述した実施形態に限定されず、その他の種々の構成も包含する。すなわち、例えばエンジンの動弁系に設けるリフト可変機構VVLの具体的な構成は、前記実施形態のものに限定されない。リフト可変機構VVLは、例えば図14に示すように、吸気弁1,2のリフト量が変化してもリフトピークの時期は変化せず、リフト量の増大に応じて開時期が進角し且つ閉時期が遅角するようなものであってもよい。
その場合にも、エンジンの運転状態に応じてVCT18を制御することで、吸気弁1,2のリフト特性を概略、図9のように基本的には低負荷乃至低回転側で位相角が進角し、高負荷乃至高回転側で位相角が遅角するように変化させるとともに、未暖機状態では図11の如く低リフト区間の位相角を遅角させるようにすることができる。
但し、必ずしもそうする必要はなく、例えば前記図14において仮想線で示すように、エンジンの未暖機状態でVCT18を作動させて、低リフト区間におけるリフトの位相角を遅角させるようにするだけでもよい。
或いは、エンジンにVCT18を装備しないことも可能である。この場合には、吸気弁1,2のリフトの位相角を単独で変更することができないので、エンジンの未暖機状態では前記実施形態2の低温状態のようにリフト量を増大補正するとともに、スロットル弁を閉じることにより、気筒の有効圧縮比を増大させて、燃焼安定性を確保する。
すなわち、図15のフローに示すように、エンジンが未暖機状態で所定の低リフト区間にあるときには(ステップU3,U4にてYES)、ステップU6に進んで、図12のフローのステップT10と同様に吸気弁1,2のリフト量を増大補正し、続くステップU7において、同ステップT11と同様にスロットル弁の制御を行うようにすればよい。尚、図示のフローのステップU1,U2,U5ではそれぞれ前記参考例のフロー(図10参照)のステップS1,S2,S5と同じ制御手順を実行する。
こうすると、前記ステップU2,U5がリフト制御部17a及び位相制御部17bに対応し、ステップU6,U7により、エンジンが未暖機状態のときに吸気弁1,2のリフト量が増大するように前記リフト制御部17aによるリフト可変機構VVLの制御を補正するとともに、スロットル弁によって吸気の流れが絞られるようにその駆動モータ27を制御する補正制御部17cが、構成される。
その場合の吸気弁1,2のリフト特性の変化は、例えば図16に示すようになり、エンジンの未暖機状態では図示の如くアイドル運転域からリフト量が強制的にリフトカーブL3まで増大されるとともに、図示しないが、スロットル弁の制御によって気筒への吸気の充填量が調整されるようになる。これにより、前記実施形態2における低温状態での補正制御と同様に、スロットル弁により吸気を絞って敢えてポンピングロスを増大させることにより、気筒の有効圧縮比を十分に高くすることができるので、VCT18による位相角の補正制御は行わなくても、エンジンの未暖機状態において燃焼安定性を確保することができる。
さらに、前記参考例においては、図11に示すように、エンジンの未暖機状態で低リフト区間における吸気弁1,2のリフトの位相角を遅角側に補正していても、その閉時期は気筒の下死点よりも進角側になっているが、これはVCT18による位相角の変更量が機構的に制限されることによる。従って、仮にVCT18によって位相角を任意の角度だけ進角乃至遅角させることができるのであれば、例えば図17に一例を示すように、低リフト区間における吸気弁1,2の閉時期が気筒の略下死点になるようにすることも可能である。
また、前記実施形態2では、図13に示すように、エンジンが低温状態のときには、吸気弁1,2のリフト量を、位相角が最大遅角の状態で吸気弁1,2の閉時期が気筒の略下死点になるリフトカーブL4まで増大させるようにしているが、これに限らず、例えばリフトカーブL3まで一気に増大させるようにしてもよい。