JP4506154B2 - 特性インピーダンス測定方法および測定装置 - Google Patents

特性インピーダンス測定方法および測定装置 Download PDF

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Description

近年では、電子製品の動作周波数の高速化が急激に進んでおり、このように信号周波数が高くなると、線路に信号を確実に伝播させるのが困難となってくる。その際に、重要となるのが伝送線路のインピーダンス整合である。線路にインピーダンスの差異があると、反射等の影響を受け、信号が正確に伝わらなくなってしまう。また、製品の小型化つまりは高密度化も進んでいるため、線路は極めて細くなってきており、線路におけるインピーダンス整合は難しいものとなっている。このような中、インピーダンスコントロールは大変重要なことであり、それを成すためにはその測定もまた重要である。
本発明は、プリント配線板に形成された線路の特性インピーダンスを測定する方法及び測定装置に関するものである。
プリント配線板に形成された線路の特性インピーダンスを測定する装置としてTDR(Time Domain Reflectometry)測定器が利用されている(例えば特許文献1参照)。このTDR測定器の測定端子にケーブルやプローブを接続し、測定対象となる線路にプローブを接続もしくは接触させ、測定対象の線路の終端を電気的にオープンにした状態で、ある立ち上がり時間を持つステップパルスを測定対象の線路に印加し、その反射係数を取る事で、特定の時間(距離)における特性インピーダンスを測定する。
この測定においては、測定対象となる線路が理想線路として仮定することで測定を行っている。理想線路とは、線路に抵抗成分・漏れ成分の無い線路である。
特開2002−148291号公報(第1頁、図5)
しかしながら、伝送速度の高速化,高密度化に伴い、伝送信号の周波数は高く、線路幅は極端に細くなり、伝送周波数に依存した抵抗損や伝送周波数及び絶縁材料のtanδに依存する誘電損など、従来の低周波伝送信号では考えなくても問題のなかった線路の抵抗成分・漏れ成分が無視出来なくなって来ていた。その結果、時間的に一定であるはずの特性インピーダンスの測定結果が、時間的に徐々に上昇し正しい結果が得られなかった(図3参照)。また、TDR測定器は、反射波から測定対象物の特性インピーダンスを求めているので、線路長の2倍で抵抗成分・漏れ成分の影響を受ける事となる。このように、一定値でないTDR波形が測定される場合に、どこでの値を特性インピーダンスとするかが問題となる。
本発明はこられの問題を解決するためになされたものであって、伝送信号の周波数が高く、線路幅が極端に細い場合、あるいは線路長が長い場合であっても、抵抗成分・漏れ成分を抽出し、それを測定結果から除去する事で時間的に一定の特性インピーダンスを算出することができる特性インピーダンスの測定方法及び測定装置を提供する。
請求項1の発明は、少なくとも
測定の時間設定の始点を決定する工程と、
測定の時間設定の終点を決定する工程と、
線路の終端に終端抵抗を接続し、終端抵抗及び(抵抗成分+漏れ成分)を含んだ特性インピーダンスを測定する工程と、
前記終端抵抗及び(抵抗成分+漏れ成分)を含んだ特性インピーダンスの値から終端抵抗の値を減算して、終端抵抗接続時の(抵抗成分+漏れ成分)の値を決定する工程と、
(終端抵抗接続時の(抵抗成分+漏れ成分)/(終点時間−始点時間)に経過時間を乗算することにより、各時間の(抵抗成分+漏れ成分)を決定する工程と、
線路の終端を電気的にオープン状態にして、各時間における(抵抗成分+漏れ成分)を含んだ特性インピーダンス測定する工程と、
各時間における(抵抗成分+漏れ成分)を含んだ特性インピーダンスから、前記の各時間の(抵抗成分+漏れ成分)を引き、(抵抗成分+漏れ成分)を含まない特性インピーダンスを演算する工程と、
からなる特性インピーダンスの測定方法であり、時間的に一定の特性インピーダンスを算出することができる。
請求項2の発明は、線路の終端を電気的にオープン状態にしてのTDR測定と、終端を電気的にショート状態にしてのTDR測定とを行い、これら二つの測定結果の波形を重ね合わせることで測定の時間設定の終点を決定することを特徴とした請求項1に記載の特性インピーダンス測定方法であって、測定対象の線路の電気長、抵抗成分・漏れ成分を容易に決定できるものである。
請求項3の発明は、線路の終端を電気的にオープン状態にしてのTDR測定を行い、更にそのオープン状態の波形に演算を施し新たな波形の生成を行い、これら二つの波形を重ね合わせることで測定の時間設定の終点を決定することを特徴とした請求項1に記載の特性インピーダンス測定方法であって、測定時間の短縮化を図り、測定端子の接触回数を減らすことにより、2回測定による測定値のずれをなくし、正確な電気長、つまりは正確な特性インピーダンス値の測定を行えるものである。
請求項4の発明は、一方は終端でグラウンド線とシグナル線が導通する様に作成された線路、もう一方は終端でグラウンド線とシグナル線が導通しない様に作成された線路、の2本の同等の線路長を持つ線路を用い、それぞれTDR測定を行い、その二つの測定波形を重ね合わせることで測定の時間設定の終点を決定することを特徴とした請求項1に記載の特性インピーダンス測定方法であって、終端を電気的にショート状態にする素子が不要となる。
請求項5の発明は、測定の時間設定の始点を決定する手段と、
測定の時間設定の終点を決定する手段と、
線路の一方に終端抵抗を接続し、終端抵抗及び(抵抗成分+漏れ成分)を含んだ特性インピーダンスを測定する手段と、
前記終端抵抗及び(抵抗成分+漏れ成分)を含んだ特性インピーダンスの値から終端抵抗の値を減算して、終端抵抗接続時の(抵抗成分+漏れ成分)の値を決定する手段と、
(終端抵抗接続時の(抵抗成分+漏れ成分)/(終点時間−始点時間)に経過時間を乗算することにより、各時間の(抵抗成分+漏れ成分)を決定する手段と、
線路の終端を電気的にオープン状態にして、各時間における(抵抗成分+漏れ成分)を含んだ特性インピーダンス測定する手段と、
各時間における(抵抗成分+漏れ成分)を含んだ特性インピーダンスから、前記の各時間の(抵抗成分+漏れ成分)を引き、(抵抗成分+漏れ成分)を含まない特性インピーダンスを演算する手段と、
を少なくとも具備する特性インピーダンスの測定装置を提供するもので、抵抗成分・漏れ成分を含まない特性インピーダンスを求めることができ、線路が規定の精度を具備しているか否かの判断に用いることができる。なお、この各種手段は、装置に内蔵された演算装置にソフトウエア的に設けることができ、または装置の外部に独立したハードウェア及びソフトウエアにより設けることもできる。
請求項6の発明は、線路の終端に接続され、さらにその後段に、終端を電気的にオープン状態にする素子と、終端を電気的にショート状態にする素子と、抵抗素子のいずれかを接続することができる接続端子を具備することを特徴とした請求項5に記載の特性インピーダンス測定装置であり、それぞれの素子を測定したい特性に応じて適宜取り替えることで測定を行うことができる。
請求項7の発明は、線路の終端に接続され、内部の電気配線がショートされている接続端子を具備することを特徴とした請求項5に記載の特性インピーダンス測定装置であり、特に測定対象の線路の電気長が短い場合に測定誤差を小さくできるものである。
請求項8の発明は、TDR測定により得られた波形に演算を施し新たな波形の生成を行う手段を具備することを特徴とした請求項5に記載の特性インピーダンス測定装置であって、測定時間の短縮化を図り、測定端子の接触回数を減らすことにより、2回測定による測定値のずれをなくし、正確な電気長、つまりは正確な特性インピーダンス値の測定を行うことを可能とするものである。
本発明の効果としては、伝送信号の周波数が高く、伝送線路幅が極端に細い場合、若しくは線路長が長い線路の特性インピーダンスを測定する際、抵抗成分と漏れ成分の影響を受けて、時間的に徐々に上昇するような測定結果を、従来の特性インピーダンスの測定結果同様、ほぼ一定の値にすることが出来、個人の主観や、数値の読み取り方法に左右されない、安定した測定を行う事が可能となる。
図1は本発明の特性インピーダンス測定方法および測定装置の実施の形態を説明するための構成例である。
演算機能を内蔵したTDR測定器(1)から、ある立ち上がりを持つステップパルスが、周波数特性の良好なケーブル(2)を伝搬し、測定端子(3)から、測定対象物(6)上の線路(7)に印加される。測定対象物(6)の電気長、抵抗成分・漏れ成分の測定を行う為に、測定端子(3)と同程度の性能を持つ接続端子(4)には、終端抵抗(5)、もし必要ならば、ショート素子(5)、オープン素子(5)を接続する事を可能としている。
測定結果はTDR測定器(1)に取り込まれ、測定波形として表示される。また測定波形のデータを、TDR測定器(1)から図示しないパソコン等へ公知のデータ通信手法により送ることも可能であり、パソコン内に複数回の測定結果をデータとして蓄積し、それらの波形を重ね合せてモニタ等(図示せず)に表示することにより、測定の時間設定の始点、終点を決定することが出来る。また測定データに適宜演算を施し、それにより測定の時間設定の終点を決定することも可能である。
同様にして、線路の一方に終端抵抗(5)を接続し、終端抵抗及び抵抗成分・漏れ成分を含んだ特性インピーダンスの測定を行い、これから抵抗成分・漏れ成分の決定、各時間成分の抵抗成分・漏れ成分の決定を行い、抵抗成分・漏れ成分を含んだ特性インピーダンスから、各時間成分の抵抗成分・漏れ成分を引き、抵抗成分・漏れ成分を含まない特性インピーダンスの演算を行うことができる。詳細な決定方法については実施例でさらに詳しく説明する。なお、図1に示したのは、本発明の測定方法及び測定装置の実施の一形態を説明する構成例であって、本発明はこれに限定されるものではない。また図1においては、線路の例としてマイクロストリップ線路を示しているが、本発明の測定方法及び測定装置で測定可能な線路はこれに限定されるものではない。
測定端子(3)は、TDR測定器(1)が測定対象物(6)の線路(7)に印加するステップパルスが高周波成分を含むため、周波数特性が良いものが望ましい。その構造は、例えば、シグナル端子に対してその近傍(500[μm]以下)にグラウンド端子があるものや、シグナル端子の両脇にグラウンド端子があるものを使用する。また、シグナル端子、グラウンド端子の長さが短いものを使用する。図1の(2)の周波数特性が良好なケーブルとの接続はSMAコネクタなど周波数特性の良いコネクタが望ましい。
接続端子(4)は、前記測定端子(3)と同様に、測定対象物(6)の線路(7)に接触できる構造を特徴に持ち、TDR測定器(1)が測定対象物(6)の線路(7)に印加するステップパルスが高周波成分を含むため、周波数特性が良いものが望ましく、その構造は、例えば、シグナル端子に対してその近傍(500[μm]以下)にグラウンド端子があるものや、シグナル端子の両脇にグラウンド端子があるものを使用する。また、シグナル端子、グラウンド端子の長さが短いものを使用する。終端抵抗(5)との接続は、SMAコネクタなどの周波数特性の良いコネクタが望ましい。
終端抵抗(5)は、TDR測定器(1)が測定対象物(6)の線路(7)に印加するステップパルスが高周波成分を含むため、周波数特性の優れた抵抗値が既知の抵抗体(例えば30[Ω]、50[Ω]、75[Ω]の抵抗値を有する)である。なお、この終端抵抗は、例のような独立した部品であっても良いが、線路端部と導通するように測定対象物(6)に予め埋め込まれたものであっても良い。
なお、特性インピーダンスを測定するにあたって、測定対象物(6)における線路(7)の電気長が詳しく分かる必要がある。その電気長を測定するにあたって、終端抵抗(5)以外にも、TDR測定器(1)が測定対象物(6)の線路(7)に印加するステップパルスが高周波成分を含むため、周波数特性が良いオープン素子(5)、ショート素子(5)と付け替えることが必要である。
また線路の終端を電気的にショート状態にする場合、ショート素子(5)を用いるのではなく、図12の線路Aに示したような、測定対象線路端部においてシグナル線とグラウンド線が導通するように、プリント配線板に予め作り込まれたものを用意しても測定が可能である。ただし、この場合はオープン状態での測定用および終端抵抗付き測定用として、図12の線路Bに示したような線路長の等しい別の測定線路が必要で、計2本の線路から一つの検査結果を得ることができる。
図2は、図1に示した本発明の実施の形態を説明するための構成例において、測定対象物(6)の電気長が短く、接続端子(4)の電気長が測定対象物(6)の電気長に影響してしまう場合に用いる、ショート素子としての働きを持たせた接触端子(4’)であり、測定誤差を少なくすることが可能となる。
接触端子(4’)は、前記接続端子(4)と同様に、測定対象物(6)の線路(7)に接触できる構造を特徴に持ち、TDR測定器(1)が測定対象物(6)の線路(7)に印加するステップパルスが高周波成分を含むため、周波数特性が良いものが望ましい。その構造は、例えば、シグナル端子に対してその近傍(500[μm]以下)にグラウンド端子があるものや、シグナル端子の両脇にグラウンド端子があるものを使用する。また、できるだけ電気長の測定を正確に行うために、測定対象物(6)のごく近傍にてシグナル端子とグラウンド端子がショートするような構造になっている。
本発明の測定方法及び測定装置を、図1の構成例を用い実施例によりさらに詳しく説明する
まず、測定の時間設定の始点を決定する為に、測定端子(3)先端に電気的にオープンとショートの状態を作り、オープンの測定結果から25〜50[Ω]の抵抗値を減じ、もしくはショートの測定結果に25〜50[Ω]の抵抗値を加え、オープン状態とショート状態の測定結果の波形を重ね合わせる。その交点の時間を始点0.0[s]とする。もしくは、TDR測定器(1)のキャリブレーション機能を用いて始点0.0[s]を作る。
次に、測定の時間設定の終点と抵抗成分・漏れ成分を含んだ特性インピーダンスを決定する為に、測定対象物(6)の一端に測定端子(3)を接触させ、終端を電気的にオープン状態にし、線路(7)の特性インピーダンスを測定する。例えば、電気的にオープンにするには、以下の方法がある。
(ア)接続端子(4)を線路(7)に接続させ、さらにオープン素子(5)を接続する。
(イ)接続端子(4)を線路(7)に接続しない。
ただし、上記(ア)の方法は測定対象物(6)の電気長が十分に長く、接続端子(4)の電気長が測定対象物(6)の電気長にほとんど影響しない場合の方法であり、測定対象物(6)の電気長が短く、接続端子(4)の電気長が測定対象物(6)の電気長に影響する場合は、(イ)の方法で測定を行う。
この時、測定対象物(6)の抵抗成分と漏れ成分の影響で、図3のように測定結果は右上がりの結果となる。
さらに、測定の時間設定の終点を決定する為に、測定対象物(6)の一端に測定端子(3)を接触させ、終端を電気的にショート状態にし、線路(7)の特性インピーダンスを測定する。そして、前記測定の時間設定の始点を決定と同様に、電気的にオープン状態の測定結果の波形とショート状態の測定結果の波形を重ねあわせ、その交点の時間を終点とする。
この際、前記の時間設定の終点と抵抗成分・漏れ成分を含んだ特性インピーダンスの決定のため行なった測定と線路の長さを同じにする。そのためには、前記(ア)の場合は接続端子(4)を線路(7)に接触させ、ショート素子(5)を接続し、前記(ア)と同じ線路長とする。また前記(イ)の場合、図2で示すような接触端子(4’)を線路(7)に接触させることにより、接触端子(4’)の電気長はほぼ無視できるため、前記(イ)の場合と同じ電気長となる。
次に、測定対象物(6)の一端に測定端子(3)を接触させ、終端に終端抵抗を付け、線路(7)の特性インピーダンスを測定する。この時、測定対象物(6)の線路(7)に抵抗成分・漏れ成分がある時は、図4のように特性インピーダンスの測定結果に終端抵抗と抵抗成分・漏れ成分が上乗せした値が現れる。ここで、「抵抗成分+漏れ成分=測定結果−終端抵抗」の関係となるので、実施例1の場合、図4より測定結果が56[Ω]、終端抵抗を50[Ω]としたので、抵抗成分+漏れ成分は6[Ω]となる。
次に、求めた抵抗成分+漏れ成分を各時間における抵抗成分+漏れ成分にする為に、
「各時間における抵抗成分+漏れ成分=(抵抗成分+漏れ成分)/(終点時間−始点時間)」の関係から求める。実施例の場合、1.5×10-13[s]の周期で、サンプリングを行った。
抵抗成分・漏れ成分を含んだ特性インピーダンスを決定する為に測定した値は、ある時間における抵抗成分と漏れ成分を含む特性インピーダンスである。従って、時間毎に加算される抵抗成分+漏れ成分を引く事で一定の特性インピーダンスを得る事が出来る。例えば、測定開始から、0.1[ns]後の抵抗成分と漏れ成分は、図5に示す測定時間の始点の算出結果、図6に示す測定時間の終点の算出結果、及び前項で示した関係を用いて、
6[Ω]/(4.5817×10-8−4.5321×10-8)[s]×0.1×10-9[s]
であるので、1.2[Ω]となる。この値を抵抗成分+漏れ成分を含む特性インピーダンスから引くと、
56[Ω]−1.2[Ω]=54.8[Ω]
となる。また、測定開始から0.2[ns]後の抵抗成分と漏れ成分は、
6[Ω]/(4.5817×10-8−4.5321×10-8)[s]×0.2×10-9[s]
であるので、2.4[Ω]となる。この値を抵抗成分+漏れ成分を含む特性インピーダンスから引くと、
57[Ω]−2.4[Ω]=54.6[Ω]
となる。このようにして求めた、抵抗成分・漏れ成分を含まない特性インピーダンスを図7に示す。
本発明の他の実施例として、測定操作を簡略化できる測定方法、及び測定装置の実施例を以下に述べる。
TDR波形とは電圧パルスの反射を測定したものであり、その反射率によって波形が変化するものである。そこで、電気的にオープンの状態と、ショートの状態のTDR波形に着目すると、これらは反射率がそれぞれ1、-1であり、TDR波形でも縦軸(インピーダンス値)方向にほぼ対称な形となる。この事を利用し、電気的にオープンの状態の測定結果から鏡像波形を生成し、測定の時間設定の終点を決定するための測定波形を作り出すことが出来る。
実施例1では電気長の測定(測定の時間設定の始点と終点を決定する)において、測定対象物(6)の線路(7)に測定端子を複数回(オープン状態での測定とショート状態での測定)接触させる必要があった。ここで、この操作を簡略化できれば測定時間の短縮化が図れ、測定端子の接触回数を減らすことにより、2回測定による測定値のずれをなくし、より正確な電気長、つまり正確な特性インピーダンス値の測定を行うことができる。
電気的にオープンの状態の波形から、ショートの状態の波形を生成する具体的な方法としては、インピーダンス値の変化率の変化等から測定対象が電気的にオープン状態になっている場所を特定し、そこでのインピーダンス値を基準として、オープン状態のTDR波形(無限大へ発散する波形)を縦軸(インピーダンス値)方向に反転させた鏡像波形を生成することで、ショート状態のTDR波形(0[Ω]へと収束する波形)の代替波形が得られる。
まず、測定の時間設定の始点を決定する為に、測定端子(3)に電気的にオープンの状態を作り測定を行う。そして前項に記載の測定方法に従いTDR波形のインピーダンス値の変化率が変化している場所を特定し(例えば、1[Ω]/10[ps]以上インピーダンス値が変化した時)その変化し始めのインピーダンス値を基準として鏡像波形を得る。そしてオープン状態の測定波形から25〜50[Ω]の抵抗値を減じ、もしくは鏡像波形に25〜50[Ω]の抵抗値を加え、オープン状態の測定波形と鏡像波形を重ね合わせて、その交点の時間を始点0.0[s]とする。(図8の矢印で示した点)
次に、時間設定の終点と抵抗成分・漏れ成分を含んだ特性インピーダンスを決定する為に、測定対象物(6)の一端に測定端子(3)を接触させ、終端を電気的にオープン状態にし、線路(7)の特性インピーダンスを測定する。この時、測定対象物(6)の抵抗成分と漏れ成分の影響で、図3のように右上がりの結果となる。ただし、ここでは前記(ア)の場合のようにオープン素子は用いずに、単純に何も接触させずにオープン状態にして測定をする。こうして得られたオープン波形から鏡像波形を得て、その二つの測定結果の重ね合わせにより、交点を測定の時間設定の終点とする(図9の矢印の点)。
次に、測定対象物(6)の一端に測定端子(3)を接触させ、終端に終端抵抗を付け、線路(7)の特性インピーダンスを測定する。この時、測定対象物(6)の線路(7)に抵抗成分・漏れ成分がある時は、図10のように特性インピーダンスの測定結果に終端抵抗と抵抗成分と漏れ成分が上乗せした値が現れる。
ここで、「抵抗成分+漏れ成分=測定結果−終端抵抗」の関係となるので、実施例2の場合、測定結果が56[Ω]、終端抵抗を50[Ω]となったので、抵抗成分+漏れ成分は6[Ω]となる。
次に、求めた抵抗成分+漏れ成分を、各時間における抵抗成分+漏れ成分にする為に
「各時間における抵抗成分+漏れ成分=(抵抗成分+漏れ成分)/(終点時間−始点時間)」の関係から求める。ここでは、1.5×10-13[s]の周期でサンプリングを行った。
抵抗成分・漏れ成分を含んだ特性インピーダンスを決定する為に測定した値は、ある時間における抵抗成分と漏れ成分を含む特性インピーダンスである。従って、時間毎に加算される抵抗成分+漏れ成分を引く事で一定の特性インピーダンスを得る事が出来る。例えば、測定開始から、0.1[ns]後の抵抗成分と漏れ成分は、図8に示す測定時間の始点の算出結果、図9に示す測定時間の終点の算出結果、及び前項で示す関係を用いて、
6[Ω]/(4.96×10-10−3.58×10-11)[s]×0.1×10-9[s]
であるので、1.3[Ω]となる。この値を抵抗成分+漏れ成分を含む特性インピーダンスから引くと、
56[Ω]−1.3[Ω]=54.7[Ω]
となる。また、測定開始から0.2[ns]後の抵抗成分と漏れ成分は、
6[Ω]/(4.96×10-10−3.58×10-11)[s]×0.2×10-9[s]
であるので、2.6[Ω]となる。この値を抵抗成分+漏れ成分を含む特性インピーダンスから引くと、
57[Ω]−2.6[Ω]=54.4[Ω]
となる。このようにして求めた、抵抗成分・漏れ成分を含まない特性インピーダンスを図11に示す。
本発明の他の実施例として、終端を電気的にショートする素子が不要な測定方法の実施例を以下に述べる。
測定の時間設定の始点を決定する為に、測定端子(3)先端に電気的にオープンとショートの状態を作り、オープンの測定結果から25〜50[Ω]の抵抗値を除し、もしくはショートの測定結果に25〜50[Ω]の抵抗値を加え、オープン状態とショート状態の測定結果を重ね合わせる。その交点の時間を始点0.0[s]とする。もしくは、TDR測定器(1)のキャリブレーション機能を用いて始点0.0[s]を作る。
次に、時間設定の終点と抵抗成分・漏れ成分を含んだ特性インピーダンスを決定する為に、図12の線路Bに示すような測定対象線路の一端に測定端子(3)を接触させ、終端を電気的にオープン状態にし、線路の特性インピーダンスを測定する。ただし、ここでは前記(ア)の場合のようにオープン素子は用いずに、単純に何も接触させずにオープン状態にして測定をする。
この時、測定対象物(6)の抵抗成分と漏れ成分の影響で、図13のように測定結果は右上がりの結果となる。
更に、時間設定の終点を決定する為に、図12の線路Aに示すような一端でシグナル線とグラウンド線が導通している測定対象線路の、シグナル線とグラウンド線が導通してない側の端子に測定端子(3)を接触させ、他端が電気的にショート状態の線路の特性インピーダンスを測定する。そして、前記測定の時間設定の始点を決定と同様に、線路Bによる電気的にオープン状態の測定結果の波形と、線路Aによるショート状態の測定結果の波形を重ねあわせ、その交点の時間を終点とする。この際、時間設定の終点と抵抗成分・漏れ成分を含んだ特性インピーダンスの決定のため行なった測定と線路の長さを同じにする。
次に、図12の線路Bに示すような測定対象線路の一端に測定端子(3)を接触させ、他端に終端抵抗を付け、線路の特性インピーダンスを測定する。この時、測定対象物(6)の線路に抵抗成分・漏れ成分がある時は、図14のように特性インピーダンスの測定結果に終端抵抗と抵抗成分と漏れ成分が上乗せした値が現れる。
ここで、
「抵抗成分+漏れ成分=測定結果−終端抵抗」
の関係となるので、実施例の場合、測定結果が55[Ω]、終端抵抗を50[Ω]であるので、抵抗成分+漏れ成分は5[Ω]となる。
次に、求めた抵抗成分+漏れ成分を、各時間における抵抗成分+漏れ成分にする為に、
「各時間における抵抗成分+漏れ成分=(抵抗成分+漏れ成分)/(終点時間−始点時間)」の関係から求める。ここでは1.0×10-12[s]の周期でサンプリングを行った。
抵抗成分・漏れ成分を含んだ特性インピーダンスを決定する為に測定した値は、ある時間における抵抗成分と漏れ成分を含む特性インピーダンスである。従って、時間毎に加算される抵抗成分+漏れ成分を引く事で一定の特性インピーダンスを得る事が出来る。例えば、測定開始から、0.4[ns]後の抵抗成分と漏れ成分は、図15に示す測定時間の始点の算出結果、図16に示す測定時間の終点の算出結果、及び前項に記した関係を用いて、
5[Ω]/(8.54×10-10−8.8×10-11)[s]×0.4×10-9[s]
であるので、2.6[Ω]となる。この値を抵抗成分+漏れ成分を含む特性インピーダンスから引くと、
69.2[Ω]−2.6[Ω]=66.6[Ω]
となる。また、測定開始から、0.6[ns]後の抵抗成分と漏れ成分は、
5[Ω]/(8.54×10-10−8.8×10-11)[s]×0.6×10-9[s]
であるので、3.9[Ω]となる。この値を抵抗成分+漏れ成分を含む特性インピーダンスから引くと、
69.5[Ω]−3.9[Ω]=65.6[Ω]
となる。このようにして得られた抵抗成分・漏れ成分を含まない特性インピーダンスを図17に示す。
以上のように、本発明の特性インピーダンスの測定方法および測定装置は、高い動作周波数を持つ電子製品の伝送線路のインピーダンス整合を取るにあたって重要となる特性インピーダンス測定を、正確かつ容易に行うことができる測定方法、及び測定装置を提供するものであり、高速に動作するプリント配線板の設計等に非常に有効な技術である。
特性インピーダンス測定装置の構成例を示す説明図。 ショート素子としての働きを持たせた接触端子の例を示す説明図。 抵抗成分・漏れ成分を除去する前の特性インピーダンスを示すグラフ図。 抵抗成分と漏れ成分を示すグラフ図。 実施例1の測定の時間設定の始点決定を示すグラフ図。 実施例1の測定の時間設定の終点決定を示すグラフ図。 実施例1の抵抗成分・漏れ成分を除去した後の特性インピーダンスを示すグラフ図。 実施例2の測定の時間設定の始点決定を示すグラフ図。 実施例2の測定の時間設定の終点決定を示すグラフ図。 実施例2の抵抗成分・漏れ成分を除去する前の特性インピーダンスを示すグラフ図。 実施例2の抵抗成分・漏れ成分を除去した後の特性インピーダンスを示すグラフ図。 実施例3の線路長の同等な2本一組の線路の説明図。 実施例3の抵抗成分・漏れ成分を除去する前の特性インピーダンスを示すグラフ図。 実施例3の抵抗成分と漏れ成分を示すグラフ図。 実施例3の測定の時間設定の始点決定を示すグラフ図。 実施例3の測定の時間設定の終端決定を示すグラフ図。 実施例3の抵抗成分・漏れ成分を除去した後の特性インピーダンスを示すグラフ図。
符号の説明
(1) ・・・ TDR測定器
(2) ・・・ 測定器と測定端子を繋ぐプローブ
(3) ・・・ 測定端子
(4) ・・・ 接続端子
(4’)・・・ ショート素子としての働きを持つ接触端子
(5) ・・・ 素子
(6) ・・・ 測定対象物
(7) ・・・ 線路

Claims (8)

  1. 線路の特性インピーダンスを測定する方法において、少なくとも、
    測定の時間設定の始点を決定する工程と、
    測定の時間設定の終点を決定する工程と、
    線路の終端に終端抵抗を接続し、終端抵抗及び(抵抗成分+漏れ成分)を含んだ特性インピーダンスを測定する工程と、
    前記終端抵抗及び(抵抗成分+漏れ成分)を含んだ特性インピーダンスの値から終端抵抗の値を減算して、終端抵抗接続時の(抵抗成分+漏れ成分)の値を決定する工程と、
    (終端抵抗接続時の(抵抗成分+漏れ成分)/(終点時間−始点時間)に経過時間を乗算することにより、各時間の(抵抗成分+漏れ成分)を決定する工程と、
    線路の終端を電気的にオープン状態にして、各時間における(抵抗成分+漏れ成分)を含んだ特性インピーダンス測定する工程と、
    各時間における(抵抗成分+漏れ成分)を含んだ特性インピーダンスから、前記の各時間の(抵抗成分+漏れ成分)を引き、(抵抗成分+漏れ成分)を含まない特性インピーダンスを演算する工程と、
    からなることを特徴とする特性インピーダンス測定方法。
  2. 線路の終端を電気的にオープン状態にしてのTDR測定と、終端を電気的にショート状態にしてのTDR測定とを行い、これら二つの測定結果の波形を重ね合せることで測定の時間設定の終点を決定することを特徴とした請求項1に記載の特性インピーダンス測定方法。
  3. 線路の終端を電気的にオープン状態にしてのTDR測定を行い、そのTDR測定波形に演算を施し新たな波形の生成を行い、これらの二つの波形を重ね合わせることで測定の時間設定の終点を決定することを特徴とした請求項1に記載の特性インピーダンス測定方法。
  4. 一方は一端でグラウンド線とシグナル線が導通するよう作成され、もう一方はグラウンド線とシグナル線が導通しないよう作成された、同等の線路長を持つ2本の線路を用い、それぞれTDR測定を行い、その二つの測定波形を重ね合わせることで測定の時間設定の終点を決定することを特徴とした請求項1に記載の特性インピーダンス測定方法。
  5. 線路の特性インピーダンスを測定する装置において、
    測定の時間設定の始点を決定する手段と、
    測定の時間設定の終点を決定する手段と、
    線路の終端に終端抵抗を接続し、終端抵抗及び(抵抗成分+漏れ成分)を含んだ特性インピーダンスを測定する手段と、
    前記終端抵抗及び(抵抗成分+漏れ成分)を含んだ特性インピーダンスの値から終端抵抗の値を減算して、終端抵抗接続時の(抵抗成分+漏れ成分)の値を決定する手段と、
    (終端抵抗接続時の(抵抗成分+漏れ成分)/(終点時間−始点時間)に経過時間を乗算することにより、各時間の(抵抗成分+漏れ成分)を決定する手段と、
    線路の終端を電気的にオープン状態にして、各時間における(抵抗成分+漏れ成分)を含んだ特性インピーダンス測定する手段と、
    各時間における(抵抗成分+漏れ成分)を含んだ特性インピーダンスから、前記の各時間の(抵抗成分+漏れ成分)を引き、(抵抗成分+漏れ成分)を含まない特性インピーダンスを演算する手段と
    を少なくとも具備することを特徴とする特性インピーダンス測定装置。
  6. 測定する線路の終端に接続され、さらにその後段に、終端を電気的にオープン状態にする素子と、終端を電気的にショート状態にする素子と、抵抗素子のいずれかを接続することができる接続端子を具備することを特徴とした請求項5に記載の特性インピーダンス測定装置。
  7. 測定する線路の終端に接続され、内部の電気配線が電気的にショートされている接続端子を具備することを特徴とした請求項5に記載の特性インピーダンス測定装置。
  8. 測定の時間設定の終点を決定する手段が、TDR測定により得られた波形に演算を施し新たな波形の生成を行う手段からなることを特徴とした請求項5に記載の特性インピーダンス測定装置。
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