JP4504120B2 - 表面に凹凸形状を発現させる絵具塗膜の形成方法 - Google Patents
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Description
又、商品化はされていないが、ステンドグラス用の絵具として、アクリル酸エステル系樹脂エマルジョンを主原料として温水中に浸漬しても顔料が溶出しない絵具(特許文献1)の提案等がある。
しかし、これら絵具は、樹脂が硬化して塗膜を形成しても、表面が均一でほぼ平滑な面となり、小学生や幼児向けには面白さはあるが、一般向けには重厚感、肉筆感に乏しいものであった。
又、肉厚に塗ることはできるが、一様には塗れずに色むらが起き易く、その色むらも表面は平滑なだけなので、表現力に乏しい等の欠点を残していた。
請求項2記載の発明は、上記発明においてポリビニルブチラールのブチラール化度を60〜75mol%としたことを特徴とする。
請求項3記載の発明は、上記発明においてポリビニルブチラール分子量の平均重合度を600〜2000としたことを特徴とする。
請求項4記載の発明は、上記発明において可塑剤をトリエチレングリコール系可塑剤としたことを特徴とする。
請求項5記載の発明は、上記発明において溶剤をアルコール系溶剤としたことを特徴とする。
該ブチラール樹脂は、ポリビニルブチラールを指し、下記の如き化学構造式を有する樹脂である。
即ち、ポリビニルブチラールは、親水性部となるビニルアルコール成分と、疎水性部となるビニルブチラール成分と、その中間の性質を有する酢酸ビニル成分との共重合体を形成するものである。そのなかで、親水性部と疎水性部との割合を定めたものがブチラール化度であるが、本発明者らは、後に詳述する如く、ある一定範囲のブチラール化度を有するブチラール樹脂に特定種類の可塑剤を混合させたところ、その表面に凹凸形状が発現することを見い出したものである。
そこで、先ず、そのブチラール化度と凹凸形状発現との関係を調べようと下記の試験を行った。
その結果は、表1の通りであった。
後述する可塑剤の混入を一定割合とし、そのなかでブチラール樹脂の平均重合度とエタノール溶液濃度との関係を試験した。
その結果は、表2の通りであった。
該エステル結合を有する可塑剤として、トリエチレングリコール系を代表させて、凹凸形状出現の状況試験を行った。
その結果は、表3に示す通りであった。
その結果、ブチラール樹脂に対し、可塑剤は90:10以下では凹凸発現が困難で、逆に50:50以上では可塑化が過剰で凹凸が弱かった。しかし、80:20〜70:30の範囲では大きな形状の発現が見られ、又、60:40では、小さな凹凸がたくさん出現し、優れた凹凸形状の発現が確認された。
可塑剤の種類から、フタル酸系、アジピン酸系、ひまし油を選択し、下記の試験を行った。
従って、エステル結合を有する可塑剤の中から種類を選択することで、デザインの趣向に適合させることが可能となる。
それが表5である。
その結果が表6の通りである。
それぞれ、溶剤の種類及びブチラール樹脂の重合度によって、凹凸形状の発現の形態に変化が生じることが判明し、従って、溶剤の種類及びブチラール樹脂の重合度の高低を選択することによって、異なる形態の凹凸形状を得ることが可能となる。
該黒色絵具をガラス基板上に塗布し、乾燥を待った。
本発明絵具の凹凸形状は、目視できる大きさで、デザインの基調に変化と趣向を加えるものであるが、その物理的形態を観察すべく、約100倍の211万画素のCCDカメラにて撮影した。
それを倍率100倍にして拡大写真としたものが図3であり、この写真によれば、直径100μm〜300μm程度の周縁に凸状の山部が、その中に凹状の谷部が形成された凹凸模様が観察された。
ブチラール樹脂は、親水性部となるビニルアルコール成分と、疎水性部となるビニルブチラール成分と、その中間の性質を有する酢酸ビニル成分との共重合体を形成し、該ブチラール樹脂にエステル結合を有する可塑剤を混合させると、−COO−基を備えたエステル結合は、OH基を有するアルコール成分に対して親和性を発揮し、一方のビニルブチラール基は疎水性基で親和性を示さない。
従って、可塑剤の混入で樹脂の軟質化を試みても、全体が均一に軟質化するのでなく、親水性部を有する部分に多く作用し、疎水性部には少なく作用し、中間部分には中間的な作用を果たし、その結果軟質化の程度は部位によって偏ったものとなる。
そして、これに溶剤及び顔料、染料等が加えられて絵具が完成するが、これを塗布すると、その乾燥過程にあって、先ず混合成分中揮発温度の低い溶剤から蒸散が始まる(図4(1)(2)参照)。
その溶剤は、上記可塑剤の混入によって軟質化された樹脂部に偏りのあるブチラール樹脂にあって、軟質化部が多く存在する部位で溶解作用を発揮し、その他の部位ではそれ程でないという存在に偏りが生じる。
そして、当然により多く溶剤の存在する部位で溶剤の揮散が始めるが、揮散に伴う蒸気の潜熱吸収によって周辺部位の温度が低下し、その可塑化ブチラール樹脂のガラス転移温度付近に近づくと、相転移で低温溶質部が硬化し、優先的に固着が始まる。その固着部分は相対的に窪みとなって谷部形成が進行する(図4(3)参照)。
谷部の底が固着すると、溶剤の揮散とともに周辺の溶液は、谷部中心の底部から四方へと排出される方向にベクトルが働き、逆に周縁には、軟質化の少ない疎水性の部分が残されており、ここに樹脂分が集積される(図4(4)参照)。
こうして、谷部と周囲を覆う山部との間に壁が形成され、即ち、凹凸形状が形成される(図4(5)参照)。
このとき、光沢の有無や、凹凸の大きさの選択は、溶剤の種類及びブチラール樹脂の重合度の高低及び可塑剤の種類によって調製したものから選ぶ。
そして、その乾燥を待つと、構図に沿って描かれた部位に上記機構で説明した如き経過を経て凹凸形状が発現し、それが重厚感、肉筆感等を誘起して、図5のような特異なデザイン特性のステンドグラスとなる。
平均重合度2000のポリビニルブチラール(PVB)に可塑剤としてトリエチレングリコール系可塑剤であるトリ(エチレングリコール)ビス(2−エチルヘキサノエート)を70:30wt%の比率で混合し、ミックスエタノールIP溶剤で12wt%溶液とし、シール用下地溶液を調製した。
該シール用下地溶液30mLを直径120mmのガラス製シャーレの本体底部に均一に流延し、室温にて、一晩開放系で乾燥を待った。
塗膜の形成を確認後、カッターでシャーレの外周部に沿って切れ目を入れ、捲るようにして一部に隙間を作り、冷水を張った水浴にシャーレ全体を3分間浸漬させた。
水に漬け冷やされることで、硬くなり、ガラスに対する粘着力が低下する性質を利用して、シャーレの本体底部に形成した無色透明なシールを水中でゆっくりと慎重に剥離し、ポリプロピレン製のプラスチック板上に平らに延ばし、貼り付けた。
吸い取り紙でシール表面の水分を拭き取った後、顔料入りの本発明絵具を使ってシール表面に絵付けを行い、さらに必要に応じて、該シール用下地溶液を糊として用い、絵付けしたシール表面に装飾用品(星形ビーズ)のトッピングを行った。
さらに、応用例として、該シール用下地溶液または顔料入りの本発明絵具を調製するときに、アロマオイルなどの芳香剤を適量添加して、香り付きのシールが作成できた。
その結果、直径120mmで厚み約100μmの円形シールが完成した。これを乗用車のリアウィンドウに内側から貼付したところ、生地が透明で絵付部が半透明となり、且つ、凹凸面が太陽光や夜間のライトアップで輝いて見えるという装飾性に優れたものとなった。更に、耐候性や耐久性にも優れたものであった。
Claims (5)
- (1)ブチラール化度50〜85mol%のポリビニルブチラールを主成分とし、
(2)該ポリビニルブチラールの分子量が平均重合度表示で200〜2500の範囲であり、
(3)エステル結合を有する可塑剤を、該ポリビニルブチラール100重量部に対し25〜100重量部の範囲で混合し、
(4)該ポリビニルブチラールに可塑剤を加えたものの総重量が5wt%〜20wt%の範囲となるように溶剤を混合させて成る絵具組成物を調整し、
該絵具組成物を対象とする基板の表面に流延して塗布し、
室温で且つ開放系の環境下で乾燥させて表面に凹凸形状を発現させることを特徴とする絵具塗膜の形成方法。
- ポリビニルブチラールのブチラール化度を60〜75mol%とした請求項1記載の絵具塗膜の形成方法
- ポリビニルブチラール分子量の平均重合度を600〜2000とした請求項1または2に記載の絵具塗膜の形成方法。
- 可塑剤をトリエチレングリコール系可塑剤とした請求項1〜3のうちいずれか1項記載の絵具塗膜の形成方法。
- 溶剤をアルコール系溶剤とした請求項1〜4のうちいずれか1項記載の絵具塗膜の形成方法。
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