JP4501394B2 - 防食性に優れた樹脂被覆鋼管の製造方法 - Google Patents
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Description
[1]連続ラインにて溶接鋼管に樹脂被覆を施し、樹脂被覆鋼管を製造する方法において、
前記樹脂被覆を施す前に、下記(1)式を満足する加熱条件で溶接鋼管の溶接部を加熱することを特徴とする防食性に優れた樹脂被覆鋼管の製造方法。
300≧T≧270t−0.31 …(1)
但し、T:加熱温度(℃)
t:加熱保持時間(min)
前記樹脂被覆を施す前に、下記(2)式を満足する加熱条件で溶接鋼管の溶接部を加熱することを特徴とする防食性に優れた樹脂被覆鋼管の製造方法。
300≧T≧438t−0.38 …(2)
但し、T:加熱温度(℃)
t:加熱保持時間(min)
[4] 上記[1]〜[3]のいずれかの製造方法において、樹脂被覆の下地として防錆処理を施すことを特徴とする防食性に優れた樹脂被覆鋼管の製造方法。
本発明において製造の対象となる樹脂被覆鋼管は、防食被覆が管外面又は内面のいずれか若しくは両方に形成されたものであるが、一般的な樹脂被覆鋼管は、少なくとも管外面に防食被覆を有する。
本発明の製造方法では、防食用の樹脂被覆を施す前に鋼管の溶接部を特定の条件で加熱するものであるが、その条件を規定するために行った試験の結果を以下に示す。
UOE鋼管の外表面をグリットブラスト処理した後、溶接部の加熱を目的として鋼管をインダクションヒーターにより種々の加熱温度(100℃〜300℃)と加熱保持時間(1分〜20分)で加熱した。引き続き、鋼管の上記加熱温度が230℃未満のものについてはインダクションヒーターにより鋼管を230℃まで加熱し、鋼管の上記加熱温度が230〜250℃のものについてはそのまま、鋼管の上記加熱温度が250℃超のものについては鋼管温度を250℃まで降温させた後、エポキシ粉体塗料(密度1.49、粒径250μm以下)を静電粉体塗装機により鋼管外面に平均膜厚が400μmとなるように塗装し、次いで、水冷により冷却することで単層樹脂被覆鋼管を得た。
このようにして得られた単層樹脂被覆鋼管の溶接部上及びその近傍の樹脂被覆について、管長方向の長さ12mの部分の1m当りのピンホールの発生個数をピンホール検出機(導通電圧3.0KV)で測定するとともに、溶接部及びその近傍の部位とその他の母材部分の防食性を、後述する実施例と同様の陰極剥離試験により評価した。
UOE鋼管の外表面をグリットブラスト処理した後、溶接部の加熱を目的として鋼管をインダクションヒーターにより種々の加熱温度(100℃〜300℃)と加熱保持時間(1分〜20分)で加熱した。引き続き、鋼管の上記加熱温度が230℃未満のものについてはインダクションヒーターにより鋼管を230℃まで加熱し、鋼管の上記加熱温度が230℃超のものについては鋼管温度を230℃まで降温させた後、エポキシ粉体塗料(密度1.49、粒径250μm以下)を静電粉体塗装機により鋼管外面に平均膜厚が400μmとなるよう塗装(プライマー塗装)した。次いで、変性ポリエチレン樹脂接着層(無水マレイン酸変性ポリエチレン,融点:121℃,MFR:1.0)とポリエチレン樹脂層(高密度ポリエチレン,密度:0.943,融点:124℃,MFR:0.24)からなる2層溶融押出樹脂シートを螺旋状に鋼管に巻け付けた後、水冷により冷却することで多層樹脂被覆鋼管を得た。
このようにして得られた多層樹脂被覆鋼管について、溶接部上のポリエチレン樹脂被覆(上記2層溶融押出樹脂シートにより形成されたポリエチレン樹脂被覆)を管長方向に12m、幅100mmで剥がし取ってプライマー層を露出させ、このプライマー層の1m当りのピンホールの発生個数をピンホール検出器(導通電圧3.0KV)で測定するとともに、溶接部及びその近傍の部位とその他の母材部分の防食性を、後述する実施例と同様の陰極剥離試験により評価した。
◎:溶接部上及びその近傍の樹脂被覆中でのピンホール発生なし;陰極剥離試験での陰極剥離距離10mm以下
○:溶接部上及びその近傍の樹脂被覆中のピンホール発生個数が0.5個/m未満;陰極剥離試験での陰極剥離距離10mm以下
△:溶接部上及びその近傍の樹脂被覆中のピンホール発生個数が0.5個/m以上、1個/m未満;陰極剥離試験での陰極剥離距離10mm以下
×:溶接部上及びその近傍の樹脂被覆中のピンホール発生個数が1個/m以上;陰極剥離試験での陰極剥離距離10mm超
T≧270t−0.31 … (1)
但し、T:加熱温度(℃)
t:加熱保持時間(min)
さらに、下記(2)式を満足する範囲において、溶接部上及びその近傍の樹脂被覆中でのピンホールの生成が特に効果的に抑制され、より高い防食性能が得られている。
T≧438t−0.38 … (2)
但し、T:加熱温度(℃)
t:加熱保持時間(min)
このため本発明の製造方法では、防食用の樹脂被覆を施す前に鋼管の溶接部を上記(1)式、好ましくは上記(2)式を満足する加熱条件で加熱することを条件とする。
なお、本発明において行う溶接部の加熱は、上記加熱条件内であれば、一定温度に保持されても、温度変化(昇温または降温)を生じてもよい。
また、使用する加熱手段にも特別な制限はなく、誘導加熱、バーナーによる直火加熱などを用いることができるが、加熱の迅速性、温度制御性などの点で誘導加熱装置、特に高周波誘導加熱装置が好ましい。
(a) 必要に応じてクロメート処理などの防錆処理(以下、総称して「防錆処理」という)を施した後、塗装工程(樹脂被覆工程)前の段階で防食性の向上を目的として溶接部を加熱し、引き続き塗装を行い、この塗装の前又は/及び後に塗料の硬化に必要な温度まで鋼管を加熱することにより塗料を硬化させる。なお、防食性向上を目的とした溶接部の加熱(この場合は鋼管全体の加熱)により塗料の硬化に必要な鋼管温度が確保できれば、塗装の前又は/及び後において特に塗料硬化のための加熱を行う必要はない。
(b) 防食性の向上を目的として溶接部を加熱した後、一旦100℃未満の温度まで放冷し、しかる後、必要に応じて防錆処理を施した後、塗装を行い、この塗装の前又は/及び後に塗料の硬化に必要な温度まで鋼管を加熱することにより塗料を硬化させる。
また、鋼管に防錆処理を施すことなく塗装を施す場合には、防食性向上を目的として溶接部を上述した条件で加熱し、引き続き、塗装を行う。
一般に、ポリオレフィン樹脂層などの樹脂層の被覆は、プライマー塗装後連続して行われる。すなわち、ポリオレフィン樹脂層などの樹脂層の被覆は、プライマー塗装後の昇温状態にある鋼管に、溶融押出樹脂シートを巻き付けることによりなされる。被覆方法は、Tダイ法、丸ダイ法が一般的であるが、これらに限定されるものではない。また、Tダイ法においては、下層側の接着樹脂層と上層側の防食樹脂層をそれぞれ単独で被覆してもよい。
なお、以上の実施形態は防食被覆構造として単層樹脂被覆、プライマー塗装−樹脂層からなる複層樹脂被覆を例に説明したが、本発明の樹脂被覆鋼管の製造方法は、これらの防食被覆構造に限定されるものではなく、要は、防食被覆の少なくとも一部として塗料の塗装がなされる任意の樹脂被覆鋼管の製造に適用することができる。
したがって、本発明法は、防食用の樹脂被覆の少なくとも一部として粉体塗料の塗装(特に、塗膜厚が200μm以上となるような粉体塗装)が行われる場合に、特に有用なものであると言える。
(i) 粉体塗料の塗装を行う前に、鋼管の溶接部を上記(1)式の条件、好ましくは上記(2)式の条件を満足するように加熱する樹脂被覆鋼管の製造方法。
(ii) 上記(i)の製造方法において、粉体塗料の塗装を行う前に、鋼管の溶接部を上記(1)式の条件、好ましくは上記(2)式の条件を満足するように加熱し、引き続き、粉体塗料の塗装に必要な温度まで鋼管を加熱した後、粉体塗料の塗装を行う樹脂被覆鋼管の製造方法。
(iii) 上記(ii)の製造方法において、鋼管にクロメート処理などの防錆処理を施した後、鋼管の溶接部を上記(1)式の条件、好ましくは上記(2)式の条件を満足するように加熱する樹脂被覆鋼管の製造方法。
(iv) 上記(i)の製造方法において、鋼管の溶接部を上記(1)式の条件、好ましくは上記(2)式の条件を満足するように加熱した後、常温付近まで冷却し、次いで、鋼管にクロメート処理などの防錆処理を施し、さらに、粉体塗料の塗装を行う樹脂被覆鋼管の製造方法。
(v) 上記(i)〜(iv)のいずれかの製造方法において、粉体塗料の塗装を行ってプライマー層を形成した後、その上層に1層以上の樹脂層を被覆する樹脂被覆鋼管の製造方法。
それらの結果を、樹脂被覆鋼管の製造条件とともに表1及び表2に示す。なお、表1に示す以外の樹脂被覆鋼管の製造条件、防食性の試験方法は、以下のとおりである。
・前処理:グリットブラスト処理,除錆度Sa2.5以上
・クロメート処理:クロメート処理剤「コスマー100」(関西ペイント(株)製),クロメート処理皮膜の全クロム付着量300mg/m2
・粉体塗料による塗装:エポキシ粉体塗料(密度1.49,粒径250μm以下),平均塗膜厚350〜400μm
・プライマー層の上層にポリオレフィン樹脂層を形成する場合の2層ポリオレフィン樹脂層の構成
接着層:接着性ポリエチレン樹脂(MFR=1.0g/10min,融点121℃)、膜厚0.2〜0.5mm
防食層:高密度ポリエチレン樹脂(MFR=0.24g/10min,融点124℃,密度0.943g/cm3)、膜厚3.0mm
防食性は陰極剥離試験により評価した。母材部と溶接部について、以下のような条件で試験を行い、初期孔からの剥離半径を剥離距離とし、剥離距離が10m以下の場合を防食性:良好とした。
初期孔:9mmφ
電圧:−1.5V VS SCE
電解質:3%食塩水
温度:80℃
期間:30日
造管して2日以内のJIS G−3457によるSTPY40,外径914.4mm,管厚9mmのUOE鋼管を使用し、その鋼管の外面をグリットブラスト処理した後、溶接部の加熱を目的としてインダクションヒーターで200℃×3分間加熱保持した。この鋼管を室温付近まで放冷した後、スキューロール上を回転させながら搬送しつつ、まず、転写ロールを用いてクロメート処理液を鋼管表面に塗布した後、塗布面が次のスキューロールと接触するまでに、第1インダクションヒーターにより鋼管を100℃に加熱して焼付け、クロメート層を形成した。その後、直ちに第2インダクションヒーターにより鋼管を230℃まで加熱した後、エポキシ粉体塗料を静電粉体塗装機により鋼管外面に塗装し、プライマー層を形成した。引き続き、変性ポリエチレン樹脂接着層とポリエチレン樹脂層からなる2層溶融押出樹脂シートを螺旋状に鋼管に巻け付けた後、水冷により冷却し、複層樹脂被覆鋼管を得た。
得られた樹脂被覆鋼管の溶接部上のポリエチレン樹脂被覆(上記2層溶融押出樹脂シートにより形成されたポリエチレン樹脂被覆)を100mm幅で管長方向に12m剥がし取ってプライマー層を露出させ、このプライマー層の1m当りのピンホールの発生個数をピンホール検出機(導通電圧3.0KV)で測定した。また、溶接部及びその近傍の部位とその他の母材部分の防食性を陰極剥離試験により評価した。
造管して2日以内のJIS G−3457によるSTPY40,外径914.4mm,管厚9mmのUOE鋼管を使用し、その鋼管の外面をグリットブラスト処理した後、スキューロール上を回転させながら搬送しつつ、まず、転写ロールを用いてクロメート処理液を鋼管表面に塗布した後、塗布面が次のスキューロールと接触するまでに、第1インダクションヒーターにより鋼管を100℃に加熱して焼付け、クロメート層を形成した。引き続き、溶接部の加熱を目的として鋼管を第2インダクションヒーターにより200℃×3分間加熱保持した後、直ちに第3インダクションヒーターにより鋼管を230℃まで加熱し、エポキシ粉体塗料を静電粉体塗装機により鋼管外面に塗装した後、水冷により冷却し、単層樹脂被覆鋼管を得た。
得られた樹脂被覆鋼管の溶接部上及びその近傍の樹脂被覆層の1m当りのピンホールの発生個数をピンホール検出機(導通電圧3.0KV)で測定した(管長方向に12m測定)。また、溶接部及びその近傍の部位とその他の母材部分の防食性を陰極剥離試験により評価した。
造管して2日以内のJIS G−3457によるSTPY40,外径914.4mm,管厚9mmのUOE鋼管を使用し、その鋼管の外面をグリットブラスト処理した後、スキューロール上を回転させながら搬送しつつ、まず、転写ロールを用いてクロメート処理液を鋼管表面に塗布した後、塗布面が次のスキューロールと接触するまでに、第1インダクションヒーターにより鋼管を100℃に加熱して焼き付け、クロメート層を形成した。引き続き、溶接部の加熱を目的として鋼管を200℃×3分間加熱保持した後、直ちに第2インダクションヒーターにより鋼管を230℃まで加熱し、エポキシ粉体塗料を静電粉体塗装機により鋼管外面に塗装した。引き続き、変性ポリエチレン樹脂接着層とポリエチレン樹脂層からなる2層溶融押出樹脂シートを螺旋状に鋼管に巻け付けた後、水冷により冷却し、複層樹脂被覆鋼管を得た。
得られた樹脂被覆鋼管の溶接部上のポリエチレン樹脂被覆(上記2層溶融押出樹脂シートにより形成されたポリエチレン樹脂被覆)を管長方向12m、幅100mmで剥がし取ってプライマー層を露出させ、このプライマー層の1m当りのピンホールの発生個数をピンホール検出機(導通電圧3.0KV)で測定した。また、溶接部及びその近傍の部位とその他の母材部分の防食性を陰極剥離試験により評価した。
溶接部の加熱を目的とする鋼管の加熱条件を表1に示す条件とした以外は、実施例3と同様の条件で樹脂被覆鋼管を製造し、同様の測定及び試験を行った。
[実施例6]
造管して2日以内のJIS G−3457によるSTPY40,外径914.4mm,管厚9mmのUOE鋼管を使用し、その鋼管の外表面をグリットブラスト処理した後、スキューロール上を回転させながら搬送しつつ、まず、転写ロールを用いてクロメート処理液を鋼管表面に塗布した後、塗布面が次のスキューロールと接触するまでに、第1インダクションヒータにより鋼管を100℃に加熱して焼付け、クロメート層を形成した。引き続き、溶接部の加熱を目的として鋼管を250℃×5分間加熱保持した後、エポキシ粉体塗料を静電粉体塗装機により鋼管外面に塗装した。引き続き、変性ポリエチレン樹脂接着層とポリエチレン樹脂層からなる2層溶融押出樹脂シートを螺旋状に鋼管に巻き付けた後、水冷により冷却し、複層樹脂被覆鋼管を得た。それ以外は実施例3と同様の測定および試験を行った。
溶接部の加熱を目的とする鋼管の加熱条件を表1に示す条件とした以外は、実施例3と同様の条件で樹脂被覆鋼管を製造し、同様の測定及び試験を行った。
[比較例4、5]
溶接部の加熱を目的とする鋼管加熱条件を表1に示す条件で行った後、鋼管温度を250℃まで降温させ、エポキシ粉体塗料を静電粉体塗装機により鋼管外面に塗装した。それ以外は実施例3と同様の条件で樹脂被覆鋼管を製造し、同様の測定および試験を行った。
表1及び表2に示されるように、比較例ではピンホールの発生が避けられないのに対し、本発明例はピンホールの発生が効果的に抑制され、このため優れた防食性能が得られている。
Claims (4)
- 連続ラインにて溶接鋼管に樹脂被覆を施し、樹脂被覆鋼管を製造する方法において、
前記樹脂被覆を施す前に、下記(1)式を満足する加熱条件で溶接鋼管の溶接部を加熱することを特徴とする防食性に優れた樹脂被覆鋼管の製造方法。
300≧T≧270t−0.31 …(1)
但し、T:加熱温度(℃)
t:加熱保持時間(min) - 連続ラインにて溶接鋼管に樹脂被覆を施し、樹脂被覆鋼管を製造する方法において、
前記樹脂被覆を施す前に、下記(2)式を満足する加熱条件で溶接鋼管の溶接部を加熱することを特徴とする防食性に優れた樹脂被覆鋼管の製造方法。
300≧T≧438t−0.38 …(2)
但し、T:加熱温度(℃)
t:加熱保持時間(min) - 樹脂被覆が、粉体塗料の塗装により形成される樹脂被覆、又は粉体塗料の塗装により形成される樹脂被覆層とその上層に形成される1層以上の樹脂被覆層からなる多層樹脂被覆であることを特徴とする請求項1又は2に記載の防食性に優れた樹脂被覆鋼管の製造方法。
- 樹脂被覆の下地として防錆処理を施すことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の防食性に優れた樹脂被覆鋼管の製造方法。
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