JP4499933B2 - 多方向入力ラバースイッチおよびこのスイッチを用いた情報機器 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、携帯型情報機器等に用いられるラバースイッチに係り、特に操作ボタンを傾倒操作することにより複数の接点の中から何れかを選択的にオン,オフ操作可能な多方向入力ラバースイッチおよびこのスイッチを用いた情報機器に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、パーソナルコンピュータ(以下パソコンという)の高性能化に伴うGUI(Graphical User Interface)の普及により、表示装置の画面上においてカーソル等のポインタを上下左右等の多方向へ自在に移動させるための多種多様なポンテイングデバイスが開発され実用化されている。これらのポンテイングデバイスのうち代表的なものとしては、マウスやトラックボール、タブレット、タッチ・スクリーン等がある。
【0003】
一方、各種電子部品の小型高性能化に伴い、スケジュール管理等の機能に特化したPDA(Personal Digital Assistants)や、電子メールの送受信等が可能な携帯電話等の携帯型情報機器が各種開発されている。
【0004】
これらの携帯型情報機器は、開発当初はモノクロ液晶表示で画面も比較的小さく、また演算装置の処理能力も低かったため扱えるデータは文字データのみである場合が多く、操作系にGUIが採用される機会は少なかった。
【0005】
ところが、昨今の技術革新によりこれらの携帯型情報機器の中には、カラー液晶表示が可能で、演算装置の処理能力向上により文字データ以外にグラフィックデータも扱うことができ、パソコン同様にアイコン表示等のGUIを採用可能な性能を有するものも登場してきた。
【0006】
例えば、携帯電話にケーブル等を介して接続され、電子メールの文章等を効率良く作成することができるようにした、いわゆるメール端末機の中には、比較的大画面のカラー液晶表示装置と、アルファベット入力キー、カーソルキー、ファンクションキー等を有するキーボード等を備え、操作系にGUIを採用したものが提供されるようになってきた。
【0007】
ところが、上述のような携帯型情報機器においては、種々の要因からカーソル等のポインタを操作するために、パソコン用のポンテイングデバイスをそのまま転用することはできないという事情がある。
【0008】
即ち、携帯型情報機器は、手に持ったまま操作することが多いため、マウスパッド等の操作用平面を必要とするマウスは不向きであるし、トラックボールも搭載可能な小型化には限界がある。また、タッチ・スクリーンは一部の携帯型情報機器で採用されてはいるが、一般的に製造コストが高いという問題があった。
【0009】
そこで、携帯型情報機器の使用環境に適した安価なポンテイングデバイスの開発が種々試みられている。このような携帯型情報機器の使用環境に適合させたポンテイングデバイスとして、例えば特開2000−57904号公報に掲載の「多方向スイッチ」がある。
【0010】
図8に、上記従来の多方向スイッチの構成の概略を示す。
【0011】
図8(a)は従来の多方向スイッチの平面図、(b)はそのA−A線断面図である。
【0012】
この従来の多方向スイッチは、僅かな間隔を開けて隣接する対の接点パターン21を複数対有する基板20と、該基板20の一面上の一点を中心にして360度何れの方向にも傾倒可能なように基板20上に配置され、複数対の接点パターン21に対向するキートップ30とを含む多方向スイッチにおいて、キートップ30の基板側面に、無端ベルト状の導電ゴム40が設けられ、キートップ30が特定の方向に傾倒した時に
導電ゴム40によって特定の一対の接点パターン21が互いに電気的に接続されるようになっている。なお、符号50は、キートップ30の底面に形成されるピン状の脚部である。これにより、簡易な構成で、接点の開閉方向を容易に変更することができる多方向スイッチを提供することができる。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記従来の多方向スイッチは、キートップ30の傾倒により例えば8つの方向への入力を可能とするためには接点パターン21を8個設ける必要があり、パターンが微細になって製造コストが嵩むという問題があった。
【0014】
また、GUIを用いた操作系においては、カーソル等のポインタの移動速度を可変できるようにして操作性を高めたいという要望があるが、上記従来の多方向スイッチでは、カーソル等のポインタの移動速度を制御することはできなかった。
【0015】
この発明は、上記問題点を解決すべく案出されたものであり、携帯型情報機器のGUI環境におけるカーソル等のポインタを容易に操作することができ、しかもポインタの移動速度を可変することのできる安価なポンテイングデバイスとしての多方向入力ラバースイッチを提供することを目的としている。
【0016】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために、本発明は、接点回路(2b,10b)が形成されたプリント基板(3)と、該プリント基板の上に載置され、前記接点回路に対向する可動接点(2c,10c)を裏面側に有する傾倒操作可能な凸状の操作ボタン(10a)が一体的に形成されたラバーシート(1)とを備え、該操作ボタンの傾倒操作に伴う前記接点回路と前記可動接点との接触または離間によるオン/オフ動作に基づいて、多方向の操作を検知可能な多方向入力ラバースイッチにおいて、前記接点回路は、前記凸状の操作ボタンを押圧して傾倒させる方向により前記可動接点が当接して導通される部位が変化する放射状接点パターン(10b)と、該放射状の接点パターンを囲繞するリング状接点パターン(R)とから構成され、前記放射状接点パターンは、外側に放射状に延設される複数本の腕部を備えるコモン電極(▲6▼)と、該コモン電極の各腕部の外側に所定の間隙を挟んで対向するように配置された前記腕部と同数のセグメント電極(▲1▼〜▲4▼)とから構成され、且つ、前記リング状接点パターンは、前記セグメント電極を所定の間隙を挟んで外側から取り囲むように形成した。
【0017】
これにより、傾倒操作可能な凸状の操作ボタンがラバーシートに一体的に形成されているので安価に製造することができる。また、可動接点と、凸状の操作ボタンを押圧して傾倒させる方向により前記可動接点が当接して導通される部位が変化する放射状の接点回路とにより多方向の入力が可能であり、また前記リング状接点パターンを利用してポインタの移動速度を制御することができ、簡易な構成で携帯型情報機器のGUI環境におけるカーソル等のポインタを容易に操作することが可能なポンテイングデバイスを提供することができる。
【0018】
なお、前記可動接点は、前記操作ボタンの傾度が比較的小さい場合には、前記コモン電極と前記所定のセグメント電極とのみ接触し、前記操作ボタンの傾度が比較的大きい場合には、当該可動接点の変形により前記コモン電極と前記所定のセグメント電極と前記リング状接点パターンと接触するように構成するとよい。これにより、操作者は操作ボタンの傾け具合によって、ポインタの移動速度を変えることができる。即ち、ポインタを比較的低速度で移動させたい場合には操作ボタン軽く傾ける操作を行い、ポインタを比較的高速度で移動させたい場合には操作ボタン強く傾ける操作を行うことにより、所望の速度でポインタを移動させることができる。
【0019】
また、前記コモン電極の各腕部には、円周方向に延びる先端部が形成されるようにできる。これにより、前記可動接点との接触を確実に行うことができる。
【0020】
さらに、前記ラバーシートおよび前記操作ボタンは、シリコンゴムで一体成形するようにできる。これにより、従来一般に用いられているシリコンゴム製のラバーシートから成るキーボードの製造装置(例えば射出成形の製造設備等)を利用して操作ボタンを形成することができる。
【0021】
また、前記操作ボタンは、軟質のシリコンゴムからなる第1層の上に、硬質のシリコンゴムからなる第2層が積層されて形成されるようにしてもよい。これによれば、第2層の硬質のシリコンゴムにより、操作ボタンを押圧して傾倒させる際の剛性を高めて、操作性を向上させることができる。
【0022】
また、前記可動接点は、前記ラバーシートの裏面に一体的に形成されるリング状部の表面に導電性材料を塗布して形成されるようにできる。これにより、操作ボタンを一体的に形成する工程で、リング状部も形成することができ、当該リング状部の表面に導電性材料を例えば印刷により塗布することでリング状の可動接点を容易に形成することができる。
【0023】
また、前記プリント基板上に前記ラバーシートを載置した際に、前記接点回路と前記可動接点の対向面の間隙が略0.2mmとなるように構成するとよい。
【0024】
また、前記ラバーシートには、複数の可動接点を裏面側に有する垂直方向に押下可能な複数の凸状の入力ボタンが設けられ、前記プリント基板には、前記各可動接点に対向する接点回路が形成されるようにできる。これにより、複数の凸状の入力ボタンと、各可動接点に対向する接点回路とで構成されるキーボードに、前記操作ボタン等から成るポンテイングデバイスを付加することができる。
【0025】
また、他の発明に係る情報機器は、前記多方向入力ラバースイッチと、表示装置と、制御装置とを備え、該制御装置は、前記可動接点が、前記コモン電極と前記所定のセグメント電極とのみ接触している時には、前記表示装置に表示されるポインタを比較的低速で移動させるように制御し、前記コモン電極と前記所定のセグメント電極と前記リング状接点パターンと接触している時には、前記表示装置に表示されるポインタを比較的高速で移動させるように制御するようにしたものである。
【0026】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の好適な実施形態を図1〜図7の図面に基づいて説明する。
【0027】
図1は、本発明に係る多方向入力ラバースイッチを搭載したキーボードを備える携帯型情報機器の斜視図およびその要部の拡大図である。
【0028】
図1に例示する携帯型情報機器Mは、携帯電話にケーブル等を介して接続されて、電子メール等の文章を作成するいわゆるメール端末機である。
【0029】
このメール端末機Mは、液晶表示パネル100を備える表示部Aと、ラバースイッチ群Sで構成されるキーボード部Bとがヒンジ101で開閉自在に連結された構成となっている。また、表示部Aの上部には、回動可能なデジタルカメラ200が設けられている。
【0030】
ラバースイッチ群Sには、本発明に係る多方向入力ラバースイッチ10と複数の通常のラバースイッチ2が含まれており、多方向入力ラバースイッチ10はキーボード部Bの手前側の右端に設けられている。このラバースイッチ群Sは、樹脂製の筐体Cに収納されてキーボード部Bを構成するようになっている。
【0031】
メール端末機Mの仕組みや操作等は本発明の内容とは直接関連しないので詳細な説明は割愛するが、本メール端末機Mは、図示しない接続ケーブルを介して図示しない携帯電話と接続され、上記キーボード部Bのラバースイッチ群Sを操作して液晶表示パネル100の画面上で作成した文書データや、デジタルカメラ200から取り込んだ画像データ等を携帯電話を介して送信したり、逆に携帯電話を介して受信した文書データや画像データを液晶表示パネル100の画面上に表示させたりできるようになっている。
【0032】
次に、キーボード部Bのラバースイッチ群Sおよび多方向入力ラバースイッチ10の詳細について説明する。
【0033】
図2はキーボード部B内のラバースイッチ群Sの分解斜視図、図3はプリント基板の回路パターンを示す平面図である。
【0034】
図2に示すように、キーボード部B内のラバースイッチ群Sは、多方向入力ラバースイッチ10の操作ボタン10aと、通常のラバースイッチ2の入力ボタン2a,2a…が一体的に形成されたシリコンゴム等から成るラバーシート1と、接点回路を形成したプリント基板3とから構成されている。
【0035】
なお、通常のラバースイッチ2の入力ボタン2a,2a…の中には形状の異なるものや、押下された際の機能が異なるもの(例えば、アルファベットやひらがな、カタカナの入力用のボタンや、漢字変換用のボタンなど)が含まれるが、構造的には略同一であるので特に区別はしない。
【0036】
図2に示すプリント基板3には、多方向入力ラバースイッチ10の操作ボタン10aに対向する放射状の接点回路10bとリング状接点パターンRのみが示されているが、実際には図3の平面図に示すように通常のラバースイッチ2の入力ボタン2a,2a…のぞれぞれに対向する接点回路2b,2b…が略全面にわたって設けられている。
【0037】
また、図2,図3において符号4は、各接点回路2b,2b…および接点回路10b、リング状接点パターンRから延設される配線パターン5,5…を図示しない制御装置に接続するための接続端子である。接点回路2b,2b…は、それぞれ2つの電極が所定の間隙を有して配置されて構成されている。
【0038】
放射状の接点回路10bおよびリング状接点パターンRの詳細な構成については後述する。なお、接点回路10b,リング状接点パターンR,各接点回路2b,2b…および配線パターン5,5…はそれぞれ導電性のインクを用いた印刷により形成される。
【0039】
一方、ラバーシート1の裏面側には、図4の裏面図に示すように、接点回路10bおよびリング状接点パターンRと対向するリング状の可動接点10cと、通常の各接点回路2b,2b…と対向する可動接点2c,2c…とが形成されている。なお、通常の可動接点2c,2c…の中には形状の異なるものや、押下された際の機能が異なるものが含まれるが、本実施形態では特に区別はしない。
【0040】
図4において、符号6は、可動接点10cおよび通常の各接点回路2b,2b…の周囲に形成される窪み部であり、可動接点10cおよび通常の各可動接点2c,2c…の高さは、この窪み部6,6…の深さより若干低く(例えば、0.2mm程低く)なるように形成されている。さらに、可動接点10cおよび通常の各可動接点2c,2cの表面には、カーボンインク等の導電性材料が印刷により塗布され、プリント基板3側の接点回路10bおよび各接点回路2b,2b…と接触または離間されることで電気的に導通/遮断されてオン/オフ可能な接点が形成されている。
【0041】
つまり、プリント基板3上にラバーシート1を載置した状態において、通常のラバースイッチ2の入力ボタン2a,2a…が操作者の指により押下されると、窪み部6,6…内で各可動接点2c,2c…が降下して、対向する各接点回路2b,2b…に当接して導通状態にする。これにより、制御装置の制御により、所定の文字やキャラクタが液晶表示パネル100の画面上に表示されたり、所定の機能(例えば、送信や受信など)が実行されたりする。また、入力ボタン2a,2a…から操作者の指が離れるとラバーシート1の弾性により各可動接点2c,2c…と各接点回路2b,2b…が離間した状態に復帰する。
【0042】
次に、多方向入力ラバースイッチ10の詳細な構成について図5〜図7を参照して説明する。
【0043】
図5の(a)は、多方向入力ラバースイッチ10の非操作時の状態を示す断面図、(b),(c)は操作時の状態を示す断面図である。
【0044】
多方向入力ラバースイッチ10の操作ボタン10aは、10a1と10a2の2層構造となっており、第1層(10a1)はリング状の可動接点10cおよびラバーシート1本体と共に軟質のシリコンゴムで一体成形され、第2層(10a2)は、第1層(10a1)の上に硬質のシリコンゴムを熱圧着して形成される。なお、第2層(10a2)の周縁部には環状の滑り止め段差300が複数段にわたって形成されている。
【0045】
リング状の可動接点10cの周囲には前述の通り、窪み部6が形成されており、可動接点10cの高さは、この窪み部6の深さより若干低く(例えば、0.2mm程低く)なるように形成されている。また、リング状の可動接点10cの表面にはカーボンインク等の導電性材料が印刷により塗布されている。そして、操作ボタン10aを有するラバーシート1は、放射状の接点回路10bと可動接点10cが対向するようにしてプリント基板3上に載置される。なお、符号Cで示されるのは、樹脂製の筐体のカバー部である。
【0046】
また、特に限定されるものではないが、リング状の可動接点10cの下端部は、押圧されて変形した際の接触面積が均等に拡がるように角部の無い滑らかな丸みを帯びた形状とすることが望ましい。
【0047】
次に、図6を参照して放射状の接点回路10bとリング状接点パターンRの具体例について説明する。図6は、プリント基板3上の放射状の接点回路10bとリング状接点パターンRの拡大平面図である。
【0048】
放射状の接点回路10bは、略90°等間隔で配置された4本の腕部を有するコモン電極▲6▼と、このコモン電極▲6▼の各腕部を個別に取り巻く4つのセグメント電極▲1▼、▲2▼、▲3▼、▲4▼とから構成されている。
【0049】
コモン電極▲6▼の各腕部には、円周方向(図6では右周り)に延びる鈎状先端部が形成されている。各セグメント電極▲1▼、▲2▼、▲3▼、▲4▼は、所定の間隙を挟んでコモン電極▲6▼の各腕部の鈎状先端部と噛み合うような形状に形成されている。さらに、各セグメント電極▲1▼、▲2▼、▲3▼、▲4▼の外側には、所定の間隙をおいてこれらを囲むようにリング状接点パターンRとしてのリング状電極▲5▼が形成されている。
【0050】
なお、コモン電極▲6▼、各セグメント電極▲1▼、▲2▼、▲3▼、▲4▼およびリング状電極▲5▼は、カーボンインク等の導電性材料を印刷により塗布して形成されている。また、コモン電極▲6▼、各セグメント電極▲1▼、▲2▼、▲3▼、▲4▼およびリング状電極▲5▼には図3に示すようにそれぞれ配線パターン5,5…が接続され、接続端子4を介して制御装置に接続されるようになっている。
【0051】
ここで、上記のような構成を備える多方向入力ラバースイッチ10の動作および作用について説明する。
【0052】
まず、図5(a)に示すような非操作状態から、操作者が指を操作ボタン10aに載せてf方向に軽く押圧すると、図5(b)に示すように、操作ボタン10aは、図上右側に傾倒する。これにより、リング状の可動接点10cは、図上右端側がプリント基板3上の放射状の接点回路10bと当接し、その位置にあるコモン電極▲6▼と各セグメント電極▲1▼、▲2▼、▲3▼、▲4▼の何れか一つ(但し、位置によっては隣接する二つ)が導通状態とされる。
【0053】
さらに、F方向に強く押圧すると、図5(c)に示すように、操作ボタン10aは、図上右側にさらに傾倒する。これにより、リング状の可動接点10cは、押圧力により変形して、その位置にあるコモン電極▲6▼と各セグメント電極▲1▼、▲2▼、▲3▼、▲4▼の何れか一つ(但し、位置によっては隣接する二つ)およびリング状電極▲5▼と接触して導通状態とされる。
【0054】
図5(b),(c)では、説明の都合上、操作ボタン10aを右側に傾倒させた場合について説明したが、操作ボタン10aの構成から、指で押圧する方向により360度何れの方向にも傾倒可能であることはいうまでもない。
【0055】
ここで、図7と表1を参照して、操作ボタン10aの傾倒方向とリング状の可動接点10cが当接する放射状の接点回路10bの電極(コモン電極▲6▼と各セグメント電極▲1▼、▲2▼、▲3▼、▲4▼およびリング状電極▲5▼)の組合せと、液晶表示装置100の画面上のカーソル等のポインタの移動方向について説明する。なお、上述の通り操作ボタン10aは360度何れの方向にも傾倒可能であるが、説明の簡略化のため、図8に示すように45度づつの(A)〜(H)の8つの方向に傾倒させる場合について説明する。
【0056】
【表1】
【0057】
表1に示すように、操作ボタン10aを(A)の方向に軽く傾倒させた場合には、コモン電極▲6▼とセグメント電極▲1▼が導通状態となり、その信号が制御装置(CPU)に入力され、CPUによりポインタが上方向に移動するように表示制御が行われる。また、操作ボタン10aを(A)の方向に強く傾倒させた場合には、コモン電極▲6▼とセグメント電極▲1▼とリング状電極▲5▼の3つの電極が導通状態となり、ポインタは上方向に加速して移動するように表示制御される。
【0058】
さらに、操作ボタン10aを(B)の方向に軽く傾倒させた場合には、コモン電極▲6▼とセグメント電極▲1▼,▲2▼とが導通状態となりポインタは右上方向に移動し、強く傾倒させた場合には、コモン電極▲6▼とセグメント電極▲1▼,▲2▼とリング状電極▲5▼が導通状態となり、ポインタは右上方向に加速して移動するように表示制御される。
【0059】
同様にして、操作ボタン10aを(C),(D),(E),(F),(G),(H)のそれぞれの方向に軽く傾倒させた場合には、表1に示すように、コモン電極▲6▼とセグメント電極▲2▼、コモン電極▲6▼とセグメント電極▲2▼,▲3▼、コモン電極▲6▼とセグメント電極▲3▼、コモン電極▲6▼とセグメント電極▲3▼,▲4▼、コモン電極▲6▼とセグメント電極▲4▼、コモン電極▲6▼とセグメント電極▲4▼,▲1▼とがそれぞれ導通状態となり、ポインタは右方向、右下方向、下方向、左下方向、左方向、左上方向にそれぞれ移動するように表示制御される。
【0060】
また、操作ボタン10aを(C),(D),(E),(F),(G),(H)のそれぞれの方向に強く傾倒させた場合には、表1に示すように、上記コモン電極▲6▼とセグメント電極の組合せに加えてリング状電極▲5▼が導通状態となりポインタは各方向に加速して移動するように表示制御される。
【0061】
このような操作ボタン10aの傾倒方向および傾倒の強さに応じたポインタの移動は、コモン電極▲6▼と各セグメント電極▲1▼、▲2▼、▲3▼、▲4▼とリング状電極▲5▼の導通状態の組合せに応じた電気信号を制御装置(CPU)で判別し、適当な演算処理を行うことにより可能となる。
【0062】
なお、表1において、操作ボタンの傾倒方向(X)は、操作ボタン10aが上記(A)〜(H)方向以外の押され方をした場合のポインタの動きの例を示している。例えば、コモン電極▲6▼とセグメント電極▲1▼,▲2▼,▲3▼とがそれぞれ導通状態となってしまった場合には、ポインタを右方向へ移動させるように表示制御される。
【0063】
また、表1において、操作ボタンの傾倒方向(Y)は、操作ボタン10aが異常な押され方をした場合にポインタの移動を停止させてしまう場合を例示している。例えば、コモン電極▲6▼とセグメント電極▲1▼,▲2▼,▲3▼,▲4▼とがそれぞれ導通状態となってしまった場合には、ポインタの移動を停止させるように制御される。
【0064】
なお、操作ボタン10aは、各傾倒状態から指を離すとラバーシート1の弾性により図5(a)のようにリング状の可動接点10cと放射状の接点回路10bが離間した状態に復帰する。
【0065】
これにより、操作者は、液晶表示パネル100の画面上において、所望の位置にカーソル等のポインタを移動させたい場合に、操作ボタン10aを適当な方向に傾倒させることにより容易に移動を実行することができ、また、強く傾倒させることにより加速させてポインタを移動させることができるので、簡易な構成のメール端末機MにおけるGUIの操作性を向上させることができる。
【0066】
以上述べたように、本実施形態に係る多方向入力ラバースイッチ10は、操作ボタン10aおよびリング状の可動接点10cをラバーシート1本体と共にシリコンゴムで一体成形しているので、従来一般に用いられているシリコンゴムから成るキーボードの製造装置(例えば射出成形の製造設備等)を利用して簡易かつ安価に形成することができる。
【0067】
また、操作ボタン10aおよびリング状の可動接点10cを形成したラバーシート1を、放射状の接点回路10bとリング状接点パターンRを形成したプリント基板3上に載置するだけで、携帯型情報機器のGUI環境におけるカーソル等のポインタを容易に操作することが可能な簡易な構成のポンテイングデバイスを安価に提供することができる。
【0068】
以上本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることはいうまでもない。
【0069】
例えば、本実施形態に係る多方向入力ラバースイッチは、メール端末機に限らず携帯電話やPDA等の携帯型情報機器の全般に搭載することができる。
【0070】
【発明の効果】
本発明によれば、傾倒操作可能な凸状の操作ボタンがラバーシートに一体的に形成されているので安価に製造することができる。また、リング状に形成される可動接点と、凸状の操作ボタンを押圧して傾倒させる方向により前記リング状の可動接点が当接して導通される部位が変化する放射状の接点回路とにより多方向の入力が可能であり、また前記リング状接点パターンを利用してポインタの移動速度を制御することができ、簡易な構成で携帯型情報機器のGUI環境におけるカーソル等のポインタを容易に操作することが可能なポンテイングデバイスを提供することができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係る多方向入力ラバースイッチを搭載したキーボードを備える携帯型情報機器の斜視図およびその要部の拡大図である。
【図2】本実施形態に係る多方向入力ラバースイッチを構成するキーボード部B内のラバースイッチ群Sの分解斜視図である。
【図3】本実施形態に係る多方向入力ラバースイッチを構成するプリント基板の回路パターンを示す平面図である。
【図4】本実施形態に係る多方向入力ラバースイッチを構成するラバーシートの裏面図である。
【図5】多方向入力ラバースイッチ10の非操作時の状態を示す断面図および操作時の状態を示す断面図である。
【図6】本実施形態に係る多方向入力ラバースイッチを構成するプリント基板3上の放射状の接点回路10bとリング状接点パターンRの拡大平面図である。
【図7】本実施形態に係る多方向入力ラバースイッチを構成する操作ボタン10aの傾倒方向を示す説明図である。
【図8】従来の多方向スイッチの平面図およびそのA−A線断面図である。
【符号の説明】
M メール端末機(携帯型情報機器)
A 表示部
B キーボード部
S スイッチ群
1 ラバーシート
2 通常の入力ボタン
3 プリント基板
4 接続端子
10 多方向入力ラバースイッチ
10a 操作ボタン
10b 放射状の接点回路
10c リング状の可動接点
100 液晶表示パネル
▲6▼ コモン電極
▲1▼〜▲4▼ セグメント電極
▲5▼ リング状電極(リング状接点パターンR)
Claims (5)
- 接点回路が形成されたプリント基板と、該プリント基板の上に載置され、前記接点回路に対向する可動接点を裏面側に有する傾倒操作可能な凸状の操作ボタンが一体的に形成されたラバーシートとを備え、該操作ボタンの傾倒操作に伴う前記接点回路と前記可動接点との接触または離間によるオン/オフ動作に基づいて、多方向の操作を検知可能な多方向入力ラバースイッチにおいて、
前記接点回路は、前記凸状の操作ボタンを押圧して傾倒させる方向により前記可動接点が当接して導通される部位が変化する放射状接点パターンと、該放射状の接点パターンを囲繞するリング状接点パターンとから構成され、
前記放射状接点パターンは、前記プリント基板上に前記ラバーシートを載置した際に前記操作ボタンの中心点の真下に位置する点から放射状に略等間隔で延設される複数本の腕部と、該腕部のそれぞれの先端から、前記点を中心とした円の円周方向に延びる鈎状先端部とを備えるコモン電極と、該コモン電極の各腕部の鈎状先端部の周囲に、該鈎状先端部と所定の間隙を挟んで噛み合うような形状に形成された前記腕部と同数のセグメント電極と、から構成され、且つ、
前記リング状接点パターンは、前記セグメント電極を所定の間隙を挟んで外側から取り囲むように形成されている
ことを特徴とする多方向入力ラバースイッチ。 - 前記可動接点は、
前記操作ボタンの傾度が比較的小さい場合には、前記コモン電極と前記所定のセグメント電極とのみ接触し、
前記操作ボタンの傾度が比較的大きい場合には、当該可動接点の変形により前記コモン電極と前記所定のセグメント電極と前記リング状接点パターンと接触するように構成されていることを特徴とする請求項1に記載の多方向入力ラバースイッチ。 - 前記可動接点は、前記ラバーシートの裏面に一体的に形成されるリング状部の表面に導電性材料を塗布して形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の多方向入力ラバースイッチ。
- 前記ラバーシートには、複数の可動接点を裏面側に有する垂直方向に押下可能な複数の凸状の入力ボタンが設けられ、
前記プリント基板には、前記各可動接点に対向する接点回路が形成されていることを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の多方向入力ラバースイッチ。 - 請求項1から請求項4の何れかに記載の多方向入力ラバースイッチと、表示装置と、制御装置とを備え、
該制御装置は、
前記可動接点が、前記コモン電極と前記所定のセグメント電極とのみ接触している時よりも前記コモン電極と前記所定のセグメント電極と前記リング状接点パターンと接触している時に、前記表示装置に表示されるポインタを加速させて移動させるように制御することを特徴とする情報機器。
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