JP4499035B2 - 遺伝子導入促進剤及びそれを含む遺伝子導入用組成物 - Google Patents

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Description

【技術分野】
【0001】
本発明は、遺伝子導入促進剤及びそれを含む遺伝子導入用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
遺伝子治療の1つの方法として、遺伝子導入すべき所望の外来遺伝子を含み、遺伝子導入される動物の細胞中で前記外来遺伝子を発現することができる組換えベクターを生体に投与する方法が知られている。例えば、Biochem. Biophys. Res. Commun(BBRC), 233:527-531(1997)及びNature Biotechnol, 16: 867-870 (1998))には、インターロイキン−5(IL-5)遺伝子を含む組換えベクターを筋肉に注射し、かつ、この際の遺伝子導入の効率を高めるために遺伝子導入時に電気パルスを与える(エレクトロポレーション)ことによりIL-5遺伝子を生体に導入する方法が記載され、また、PNAS, 96: 6417-6422 (1999)には同様な方法でエリスロポエチン遺伝子を導入する方法が記載されている。
【0003】
また、生体外で細胞に外来遺伝子を導入し、遺伝子導入した細胞を生体に移植することにより遺伝子治療を行う方法も知られている。例えば、Tissue Engineering, 3:243-255 (1997)には、線維芽細胞にプロインシュリン遺伝子を導入し、得られた遺伝子導入線維芽細胞を皮下に移植することにより、プロインシュリン遺伝子を導入する方法が記載されている。
【0004】
また、更には外来遺伝子を導入する事で、直接にその導入成分が生体に作用する事を目指すのではなく、生体内での免疫応答状況を誘起し、ワクチン化を目指す試みとして、DNAワクチンも種々議論されている。例えば、Vox Songuinis 80: 12-18(2001)には、感染症や癌への応用の期待を込めた例示が総説として紹介されている。Vaccine, 17: 2826-2829 (1999)にもDNAワクチンが記載されている。
【0005】
遺伝子治療では,組織特異的に外来遺伝子を発現導入する効率的な技術方法が未だ確立されていない。そこで導入しやすい部位にまず外来遺伝子を導入発現させて、その産物がうまく体内に分泌移動していく方法論・ターゲット分子を探索する方策が模索されてきた。そこでは血球系細胞に導入して効率良く導入された細胞のみを外部で選択して生体に導入する方法もあるが、直接遺伝子のみを導入する方が薬剤選択等の問題を抱え込まない点からより強い期待を抱かせている。いずれの方法でも、上記の通り、導入しようとする外来遺伝子を含む組換えベクターを細胞に導入する必要があるが、その際の遺伝子導入効率が低いという問題がある。この問題を解決すべく、上記のようにエレクトロポレーションの手法を採用する方法も知られているが、エレクトロポレーションでは、細胞に電気パルスを与えるので、組織のダメージが大きいという問題がある。
【発明の開示】
【0006】
従って、本発明の目的は、細胞や組織に大きなダメージを与えることなく、遺伝子導入の効率を高めることができる、遺伝子導入促進剤及びそれを含む遺伝子導入用組成物を提供することである。
【0007】
本願発明者らは、鋭意研究の結果、遺伝子導入すべき所望の外来遺伝子を含み、遺伝子導入される動物の細胞中で前記外来遺伝子を発現することができる組換えベクターと、EDTA又はその塩から成る遺伝子導入促進剤とを媒体中に含み、50mMないし160mMのカリウムイオンを含む物質が遺伝子導入効率を高める効果を有することを見出し、本発明を完成した。
【0008】
すなわち、本発明は、遺伝子導入すべき所望の外来遺伝子を含み、遺伝子導入される動物の細胞中で前記外来遺伝子を発現することができる組換えベクターと、EDTA又はその塩から成る遺伝子導入促進剤とを媒体中に含み、50mMないし160mMのカリウムイオンを含む、筋肉内注射による遺伝子導入用組成物を提供する。
【0009】
本発明により、細胞や組織に大きなダメージを与えることなく、遺伝子導入の効率を高めることができる、新規な遺伝子導入促進剤及びそれを含む遺伝子導入用組成物が提供された。本発明の遺伝子導入促進剤の存在下に遺伝子導入を行うことにより、細胞や組織に大きなダメージを与えることなく細胞への遺伝子導入効率を向上させることができるので、本発明は、遺伝子治療の効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明の実施例1において行った遺伝子導入において、用いたEDTAの濃度と、導入されたEGFP遺伝子を発現する骨格筋線維数との関係を示す図である。
【図2】図2は、本発明の実施例1において行った遺伝子導入において、EDTAと等モル量のカルシウムイオン又はマグネシウムイオンを添加した場合の、導入されたEGFP遺伝子を発現する骨格筋線維数を示す図である。
【図3】図3は、本発明の実施例1において行った遺伝子導入において、用いたEDTAの濃度及びPBSの有無と、導入されたEGFP遺伝子を発現する骨格筋線維数との関係を示す図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の遺伝子導入促進剤は、カルシウムイオン及び/又はマグネシウムイオンを捕捉する物質、すなわち、カルシウムイオン及びマグネシウムイオンのいずれか一方又は両方を捕捉する物質から成る。このような物質として本発明の遺伝子導入促進剤は、細胞や組織へのダメージが軽微であり、医薬品として既に認可されているという観点からEDTA(エチレンジアミン四酢酸)又はその塩(好ましくは、ナトリウムやカリウムのようなアルカリ金属塩、複数のカルボキシル基の一部が塩になっているものを包含する)から成る。
【0012】
本発明の遺伝子導入促進剤は、遺伝子導入すべき所望の外来遺伝子を含み、遺伝子導入される動物の細胞中で前記外来遺伝子を発現することができる組換えベクターと共に組織又は細胞に投与される。したがって、本発明はまた、遺伝子導入すべき所望の外来遺伝子を含み、遺伝子導入される動物の細胞中で前記外来遺伝子を発現することができる組換えベクターと、上記本発明の遺伝子導入促進剤とを媒体中に含む、遺伝子導入用組成物をも提供する。この遺伝子導入用組成物中の、上記遺伝子導入促進剤の濃度は、特に限定されないが、1〜30mMが好ましく、2〜20mMがさらに好ましく、3〜10mMがさらに好ましい。
【0013】
遺伝子導入用組成物の媒体としては、水系媒体が好ましく、さらに水系緩衝液又は水が好ましい。組成物の浸透圧が細胞中の浸透圧よりも大きくなると組織及び細胞のダメージが発生し、遺伝子導入効率が低下するので、組成物は等張又は低張であることが好ましく、特に、下記実施例に具体的に示されるように、低張の場合に遺伝子導入効率が高くなるので、組成物は低張液であることが最も好ましい。低張液は、媒体として純水を用いるか又は生理緩衝液よりも緩衝剤及び塩の濃度を低下させた緩衝液を用いることにより容易に調製することができる。
【0014】
また、媒体として、細胞内液のイオンバランスを有する緩衝液を用いると、等張液であっても細胞のダメージが特に小さく、また、遺伝子導入促進効果も高くなり、再現性も高まることが見出された。このような好ましい緩衝液では、カリウムイオン濃度が重要であり、緩衝液中のカリウムイオン濃度は、50mMないし160mM、好ましくは80mMないし130mMである。特に、50mMないし160mM、好ましくは80mMないし130mMのカリウムイオン、10mMないし120mM、好ましくは20mMないし70mMのナトリウムイオン、10mMないし80mM、好ましくは15mMないし30mMのリン酸イオン及び90mMないし160mM、好ましくは110mMないし140mMの塩素イオンを含む、カリウムリッチなリン酸緩衝液が好ましい。なお、このようなカリウムリッチな緩衝液は、等張液としても用いることができるし、上記の緩衝液を水で希釈して低張液として用いることもできる。水で希釈する場合、希釈倍率は10倍以下が好ましい。また、浸透圧調節剤として用いられることがあるグルコースやショ糖のような単糖類や少糖類は、組成物を筋肉注射する場合、本発明の遺伝子導入促進効果を低減させるので用いないことが好ましい。
【0015】
遺伝子導入用組成物中に含まれる組換えベクターは、遺伝子導入すべき所望の外来遺伝子を含み、遺伝子導入される動物の細胞中で前記外来遺伝子を発現することができるものであれば何ら限定されるものではなく、従来から遺伝子治療に用いられている、遺伝子発現用の発現ベクターに、導入すべき所望の外来遺伝子を挿入したものを用いることができる。遺伝子治療用の発現ベクターは、通常、大腸菌中での複製を可能にする複製開始点、ウイルス由来のプロモーター或いは標的組織での目的遺伝子発現に適したプロモーター、該プロモーターの下流に位置し、種々の制限酵素部位を含むマルチクローニングサイト、該マルチクローニングサイトの下流に位置するウイルス由来のターミネーター及び薬剤耐性、栄養要求性又は温度感受性等の選択マーカーを具備する。ベクターが細胞に導入されたか否かの調査を容易にするために、グリーン蛍光タンパク質(GFP)遺伝子やルシフェラーゼ遺伝子を組み込み、これらの遺伝子を所望の外来遺伝子と共に発現させて、グリーン蛍光タンパク質やルシフェラーゼを産生させ、遺伝子導入細胞を容易に検出できるようにしているものもある。発現ベクターは、プラスミドベクターでも、レトロウイルスやアデノウイルスのようなウイルスベクターでもよいが、安全性の面からプラスミドベクターの方が好ましい。遺伝子治療に用いられる発現ベクター自体はこの分野において周知であり、種々のものが市販されており、市販のベクターをそのまま利用することができる。遺伝子導入用組成物中の組換えベクターの濃度は、特に限定されず、適宜選択されるが、通常、1 mg/ml〜10 mg/ml程度が好ましい。
【0016】
本発明の遺伝子導入用組成物は、従来の遺伝子導入用組成物と同様に用いることができる。すなわち、これを筋肉注射及び皮下注射等により、生体に直接投与することができる。この場合、投与量は、特に限定されず、治療の目的や、導入効率等により適宜選択されるが、通常、生体の体重1kg当り10μl〜100μl程度である。また、本発明の遺伝子導入用組成物は、線維芽細胞やリンパ球に生体外で遺伝子導入する場合にも用いることができる。体外に取り出して遺伝導入するときに細胞に傷害を与えると、生体再移入したときに生着率が低下すると考えられるが、本発明の遺伝子導入促進剤を用いると細胞傷害性が少ないため、生着率が向上する。この場合の組成物の使用量も特に限定されず、適宜選択される。
【0017】
本発明の遺伝子導入用組成物を生体に投与することにより、又は本発明の遺伝子導入用組成物を作用させて遺伝子導入した細胞を生体に移植することにより、生体に所望の外来遺伝子を導入することができる。所望の外来遺伝子としては、何ら限定されるものではなく、従来から知られているIL-5、エリスロポエチン、プロインシュリン等の他、例えば、生物学製剤の置き換え(血友病A対する第VIII因子遺伝子、血友病Bに対する第IX因子遺伝子等)、
DNAワクチン(マラリア、結核、スギ花粉、種痘、HBVなどのウイルス感染等)等、
体外遺伝子治療(体外に取り出した細胞に対して遺伝子導入して生体内に戻す治療、ADA欠損症などの遺伝子治療等)、
動物に対するDNAワクチン、例えば、
(猫)猫AIDS、ヘルペス、
(牛)牛白血病、牛下痢症候群ウイルス、
(馬)馬ヘルペス、
(豚)豚コレラ、
(犬)狂犬病、ジステンパー、パルボ、伝染性肝炎、など、
を例示することができるが、これらに限定されるものではない。
【0018】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。もっとも、本発明は下記実施例に限定されるものではない。
【実施例1】
【0019】
ICRマウスの前頸骨筋で増強型グリーン蛍光タンパク質を発現させた場合
【0020】
増強型グリーン蛍光タンパク質 (Enhanced green fluorescence protein : 以下EGFPと記載する) の発現プラスミドpEGFP-C1 (Accsession No. U55763、Clontech社より市販) を用い、骨格筋での遺伝子導入効率をEGFP発現陽性筋線維数として蛍光顕微鏡下に観察した(この実施例ではEGFP遺伝子が外来遺伝子)。pEGFP-C1を大腸菌(XL-1Blueコンピテント細胞)に導入し、カナマイシン含有LB寒天プレートに播種して37℃で約12時間培養した。このプレートより、単一の大腸菌のコロニーを選択し、この大腸菌をカナマイシン含有Superbroth培養液にて約20時間振盪培養した。増殖した大腸菌よりアルカリ溶解法にてプラスミドを抽出し、2回のCsCl2平均密度勾配遠心法により調製した。pEGFP-C1は、終濃度4 mg/ml 以上の濃度になるように TEバッファー(10mM Tris-HCl pH=8.0, 1mM EDTA pH=8.0)に溶解し遺伝子導入用試料とした。
【0021】
遺伝子導入実験の骨格筋として、1)皮膚の直下にあり微小な皮膚切開により直視下に観察できること、2)骨格筋の収縮・弛緩による変位が少ないこと、3)筋肉注射が容易な厚みがあるなどの条件から、下肢外側前面にある前頸骨筋を選択した。筋肉注射用の試料の体積は、20 μlで、遺伝子導入効率を改善するためにエチレンジアミン四酢酸2ナトリウム塩(EDTA-2Naと記載する)の5倍濃度溶液(pH=8.0)を終濃度1,3,10、30mMとなるように加えた。試料の組成は以下の通りである。
pEGFP-C1 10 μl(40 μg、終濃度 2 mg/ml)
5倍濃度 EDTA-2Na (pH=8.0) 4 μl
4倍濃度リン酸緩衝液(pH=7.4) 5 μl
純水 1 μl
【0022】
筋肉注射用試料は、滅菌された1.5 mlチューブに入れ氷冷した。使用する直前に室温にもどし、29ゲージ注射針の付いたインシュリン自己注射用シリンジ(29G 0.5ml myjector SS-05M2913、テルモ)に気泡が入らないように移し筋肉注射を施行した。
【0023】
実験には、静岡実験動物(SLC)より購入したICRマウス(オス、6週齢)を飼育し、7週齢から8週齢で用いた。麻酔には、30 mg/kg体重に相当する希釈したソムノペンチル(ペントバルビタール)を腹腔内に投与した。下肢を70%アルコールにて消毒し、前頸骨筋の筋腹に相当する部分の皮膚に約3mm程度の切開を加えた。インシュリン自己注射用シリンジの29ゲージ針を筋の走行に対して直角に挿入しプラスミド溶液を静かに注入した。しばらく注射針を前頸骨筋に挿入したままにして漏れを防いだ。注入後、数分経過してから皮膚を縫合した。注入後、4日目に動物を頸椎脱臼法によって屠殺した。下肢の皮膚を剥離し、前頸骨筋を摘出した。速やかに前頸骨筋試料を筋線維の走行に対して垂直方向に4分割しOCTコンパウンドに包埋した後、液体窒素にて十分冷却したイソペンタン中で急速凍結した。定法に従い、前頸骨筋サンプルの連続凍結切片を作成し、蛍光顕微鏡(Nikon E600蛍光顕微鏡 B2-Aフィルターを使用)を用いて、骨格筋内で発現しているEGFPに特異的な蛍光を観察した。
【0024】
その結果、3mM、10mM EDTA-2Naをプラスミド試料に加えた場合、EGFPを強く発現する骨格筋線維数がダルベッコ変法リン酸緩衝液(1xdPBS(Dulbecco's modified phosphate buffered saline)を用いた場合に比較して10倍以上に増加した(図1)。更に、EDTAによる遺伝子導入効率の改善は、等モル量のカルシウムやマグネシウムイオンを加えることにより観察されなくなった(図2)。したがって、EDTAによる2価陽イオンに対するキレート作用が遺伝子導入効率の改善に必要であると考えられた。
【0025】
EDTAに代えて、分子構造の異なるキレート物質であるEGTA、CyDTA、DTPA-OH、EDDP 又はHDTA を用いて上記実験を行ったところ、これらのキレート化剤を用いた場合でもEDTAと同様な効果があることが確認された。もっとも、EGTAなどを用いた場合は、骨格筋組織へのダメージが観察されたので、このような組織傷害性が全く観察されないEDTAが最も好ましい。
【実施例2】
【0026】
ICRマウスの前頸骨筋でルシフェラーゼを発現させた場合
【0027】
pGL3basicプラスミド(Accession No. U47295 )より1.7kbのルシフェラーゼ遺伝子断片(53-1742)を制限酵素HindIIIとXbaI消化により切り出した。この遺伝子断片を制限酵素HindIII/XbaIで消化した発現ベクターpCR3(Invitrogen社製)のマルチクローニングサイトにT4DNAリガーゼにより挿入した。結合反応産物を用いて大腸菌XL-1Blueを形質転換し、アンピシリン添加寒天培地にて選択した。37℃で約12時間培養し、培地上に形成されたアンピシリン耐性コロニーを複数1mlのLB液体培地に播種しプラスミドDNAを定法に従い少量調製した。得られたプラスミドDNAを制限酵素HindIIIとXbaI消化後、アガロース電気泳動法により1.7kbの遺伝子断片を含む組み換えプラスミドを選別し、さらにベクター特異的なプライマーGLprimer2(ctttatgtttttggcgtcttcc)とルシフェラーゼプライマーlucA(tcgtcatcgctgaatacatg)によるPCR法によりルシフェラーゼ発現プラスミドpCMVlucを含むクローンを選択した。選択した大腸菌クローンをアンピシリン含有Superbroth培養液にて約20時間振盪培養した。増殖した大腸菌よりアルカリ溶解法にてプラスミドを抽出し、2回のCsCl2 平均密度勾配遠心法により調製した。pEGFP-C1は、終濃度4 mg/ml 以上の濃度になるように TEバッファー(10mM Tris-HCl pH=8.0, 1mM EDTA pH=8.0)に溶解し遺伝子導入用試料とした。
【0028】
実施例1と同様に、静岡実験動物(SLC)より購入したICRマウス下肢の前頸骨筋に対して遺伝子の導入を行った。EDTA-2Naの5倍濃度溶液(pH=8.0)を終濃度10 mMとなるように加えた。試料の組成は以下の通りである。
pCMVluc 10 μl(40μg、終濃度 2 mg/ml)
50 mM EDTA-2Na(pH=8.0) 4 μl
純水 6 μl
【0029】
筋肉注射用試料は、滅菌された1.5 mlチューブに入れ氷冷した。使用する直前に室温にもどし、29ゲージ注射針の付いたインシュリン自己注射用シリンジ(29G 0.5ml myjector SS-05M2913、テルモ)に気泡が入らないように移し筋肉注射を施行した。
【0030】
注入後、3日目に動物を頸椎脱臼法によって屠殺した。下肢の皮膚を剥離し、前頸骨筋を摘出し、凍結した。凍結した骨格筋を粉砕し、抽出バッファー100mMリン酸カリウム溶液(pH=7.8、1mMジチオスレイトール添加)を骨格筋質重量の2倍加え懸濁した。室温にて攪拌後、凍結融解を3回繰り返し、15000回転5分間の遠心分離後に上清を骨格筋抽出液として回収した。
【0031】
タンパク質の定量には、ブラッドフォード法に基づくキット(BioRad社製)を使用した。ルシフェラーゼ活性の検出には、プロメガ社製のDual-Luciferase Reporter Assay Systemを用いた。あらかじめ、ガラスバイアル中に50μlのルシフェラーゼアッセイ試薬を分注し、ルミノメーター(BLR-301,アロカ社製)に入れ、攪拌しながら10μlの骨格筋抽出液を加えた。発光を15秒間積算し、サンプル間の比較にはタンパク量で補正した値を用いた。
【0032】
その結果、pEGFP-C1を発現させた実施例1と同様に、3mMから10mM EDTA-2Naをプラスミド試料に加えた場合にルシフェラーゼ活性が10倍高くなった。dPBSを加えない低張液を用いると、更に、ルシフェラーゼの発現量が3倍程度高くなることが分かった(図3)。
【実施例3】
【0033】
媒体として、下記表1に示す組成を有する、細胞内液のイオンバランスを有する、カリウムリッチな緩衝液(以下、「K-PBS」)又は下記の組成を有するdPBSを用いたことを除き、実施例1と同様な実験を行なった。なお、遺伝子導入用組成物中のEDTA-2Na濃度は3 mMとした。
【0034】
K-PBSの調製は具体的には次のように行なった。KCl粉末を終濃度で120 mMとなるように秤量した。次に、0.1M Na2HPO4と0.1M NaH2PO4を混和し、pH7.4の0.1Mリン酸ナトリウム緩衝液を調製した。秤量したKClを適当量の蒸留水に溶解し、リン酸ナトリウム緩衝液を終濃度25mMになるように加えてから、正確に体積を合わせ、120mM KCl、25mM リン酸ナトリウム緩衝液とした。
【0035】
【表1】
緩衝液組成
Figure 0004499035
【0036】
その結果、蛍光顕微鏡を用いた観察により、EGFP発現筋線維数は、K-PBSを用いた場合の方がdPBSを用いた場合よりも明らかにEGFP発現筋線維数が多く、媒体としてK-PBSを用いることにより遺伝子導入効率が高まることが確認された。
【0037】
また、筋細胞の細胞膜の損傷(透過性亢進)を調べるために、上記遺伝子導入用組成物を投与した1時間後に0.1%エバンスブルー(色素)溶液100μlを尾静脈より注射した。色素投与1時間後に前頸骨筋を採取し、定法にしたがい凍結組織切片を作製した。筋線維に取り込まれた色素は、蛍光顕微鏡(Gフィルター)を用いて観察した。
【0038】
その結果、エバンスブルーの取り込み(細胞膜の損傷の程度を表す)は、K-PBSを用いた場合の方が明らかに少なく、K-PBSを用いることにより細胞膜の損傷がさらに少なくなることがわかった。さらに、K-PBSとPBSの2:1、1:1及び1:2混合物を媒体として用いて同様な実験を行なったところ、色素の取り込みは、K-PBSの濃度依存的に変化した。このことから、K-PBSを媒体として用いることにより、筋細胞膜の損傷をさらに少なくできることが明らかになった。なお、PBSを用いた場合でも、筋細胞膜の損傷は時間の経過と共に減少した。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明のにより、遺伝子導入促進剤は、細胞や組織に大きなダメージを与えることなく、遺伝子導入の効率を高めることができる。本発明の遺伝子導入促進剤の存在下に遺伝子導入を行うことにより、細胞や組織に大きなダメージを与えることなく細胞への遺伝子導入効率を向上させることができるので、本発明は、遺伝子治療の効率を高めることができ、遺伝子治療に有用な遺伝子導入用組成物を提供するものである。

Claims (6)

  1. 遺伝子導入すべき所望の外来遺伝子を含み、遺伝子導入される動物の細胞中で前記外来遺伝子を発現することができる組換えベクターと、EDTA又はその塩から成る遺伝子導入促進剤とを媒体中に含み、50mMないし160mMのカリウムイオンを含む、筋肉内注射による遺伝子導入用組成物。
  2. 80mMないし130mMのカリウムイオンを含む請求項1記載の組成物。
  3. 前記組成物が低張液である請求項1又は2に記載の組成物。
  4. 前記組成物中の前記遺伝子導入促進剤の濃度が1〜30mMである請求項1〜3のいずれか1項に記載の組成物。
  5. 前記組成物中の前記遺伝子導入促進剤の濃度が2〜20mMである請求項4記載の組成物。
  6. 前記組成物は、50mMないし160mMのカリウムイオン、10mMないし120mMのナトリウムイオン、10mMないし80mMのリン酸イオン及び90mMないし160mMの塩素イオンを含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の組成物。
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