JP4498559B2 - 化粧紙及び化粧材 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、壁等の建築物内装材、扉等の建具や家具等の表面材等に用いる化粧紙と、それを基材に貼着した化粧材に関する。特に、耐摩耗性等の表面物性と共に塗布ムラも無く、しかも加工性も良好で被着基材に貼着時に破断し難い化粧紙と、それを貼着した化粧材に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、上記の様な用途に用いる化粧紙では、通常、耐摩耗性、耐汚染性等の表面物性が要求され、この為、例えば、特公昭49−31033号公報では、紙基材に絵柄層を印刷形成後、最表面層として、不飽和ポリエステルプレポリマーの電離放射線硬化性樹脂塗料を表面に塗工して塗膜を形成し、その塗膜を電子線で架橋、硬化させた表面樹脂層を形成した化粧紙を開示している。
【0003】
この様に、化粧紙の最表面層に、電子線等の電離放射線で、モノマー、プレポリマー等からなる電離放射線硬化性樹脂を架橋硬化させた表面樹脂層を設けると、その高い架橋性から、耐摩耗性、耐汚染性等の表面物性が向上した化粧紙が得られる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、上記の様な化粧紙は、表面樹脂層を架橋時の電離放射線照射に伴って、紙基材中のパルフのセルロース分子が切断し、その切断端にカルボキシル基やカルボニル基が生成する。その結果、紙基材の強度劣化が発生し、化粧紙の加工性が低下した。この為、化粧紙を例えば木質合板等の被着基材に、間に接着剤を介してローラで加圧して貼り合わせる時に、化粧紙に加わる張力の増大、機械振動等によって化粧紙が切れてしまう事があった。特に、ラッピング加工等を用いて化粧紙を被着基材の曲面部分や、多角柱の被着基材の隅角部に貼る場合には、化粧紙に局所的な応力の集中が起こる為、化粧紙の破断が起き易いと言う問題が生じた。
【0005】
また、紙基材は一般に浸透性を有する為に、表面樹脂層を塗工形成時に、完全硬化前の流動状態の塗液が紙基材中に浸透する事があり、表面樹脂層表面の艶(高艶或いは低艶でも)が不均一になる塗布ムラ(浸透ムラ)が発生する場合があった。この塗布ムラは、特に、表面樹脂層による耐摩耗性等の表面物性を更に向上させる為に、表面樹脂層中にシリカ、アルミナ等の無機質粒子を含有させる場合に多かった。それは、これら無機質粒子を表面樹脂層中に含有させる場合、該表面樹脂層の形成は、塗液への無機質粒子の分散安定性の観点から、溶剤で希釈して溶液化した塗液を使う必要があり、この様な溶剤希釈した塗液は紙基材への浸透が早いからである。この様な為に、従来は紙基材として、塗布ムラが起き難い基材として、コストは高いが浸透性が少ない含浸紙等を使用したりしていた。
【0006】
そこで、本発明の課題は、優れた耐摩耗性等の表面物性を付与する為に、無機質粒子入りの電離放射線硬化性樹脂の架橋物による表面樹脂層を設けた紙基材の化粧紙に対して、低コストとなる紙間強化紙等の浸透性の紙基材を使用しても、表面樹脂層の塗布ムラを無くし、また化粧紙としての加工性を良くする事と、この様な化粧紙を貼着した化粧材を提供する事である。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の化粧紙は、紙基材上に、JIS K6301による引張強さ40MPa〜55MPaであり、着色剤を含有する高弾性樹脂シーラー層を形成した上で、最表面層として無機質粒子を含む電離放射線硬化性樹脂の架橋物からなる表面樹脂層を形成してなり、前記表面樹脂層形成前の、少なくとも前記紙基材と前記高弾性樹脂シーラー層とからなる積層体に於ける透気度が、JIS P 8117による透気度5000秒〜10000秒である構成とした。
【0008】
この様な高弾性樹脂シーラー層を設けた上で、無機質粒子を含む電離放射線硬化性樹脂の架橋物からなる表面樹脂層を形成する事で、表面樹脂層形成時に、その塗液が紙基材中に浸透し表面に塗布ムラが生じるのを防げ、なお且つ、表面樹脂層形成時の電離放射線照射で紙基材のパルプのセルロース分子が切断されて、紙基材の強度劣化が起きても、それを補い化粧紙全体としての強度を維持する事ができる。これらの結果、表面樹脂層による優れた耐摩耗性等の表面物性を有する上、なお且つ、加工性も良好な化粧紙にできる。したがって、ロールラミネータ等で被着基材に化粧紙を貼り合わせるラミネート加工の時に、加工機の機械振動や、連続帯状の化粧紙を(枚葉の)被着基材に貼着する毎に搬送停止して切断する時の機械的ショック(張力の瞬間的な増加)等によって、化粧紙が切れてしまう紙切れを防げる。また、低コストとなる紙間強化紙等も紙基材として使用できる。
【0009】
また、透気度が5000秒〜10000秒になる様に、少なくとも高弾性樹脂シーラー層を紙基材上に設ける事で、該層によるシーラー効果を確実に得る事ができる。従って、表面樹脂層形成時に、その塗液が紙基材中に浸透し表面に塗布ムラが生じるのを防げ、また、表面樹脂層による優れた耐摩耗性等の表面物性をより確実に付与できる。
【0010】
また、本発明の化粧紙は、前記紙基材が針葉樹パルプからなることを特徴とするものである。
【0011】
また、本発明の化粧材は、上記いずれかの化粧紙を接着剤にて被着基材に貼り合わせて成る構成とした。
化粧材をこの様な構成とする事で、塗布ムラが無く、優れた耐摩耗性等の表面物性を有する上、なお且つ、化粧紙を被着基材に貼着時の紙切れが防げる為、歩留り良く製造できる化粧材となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の化粧紙及び化粧材について、実施の形態を説明する。
【0013】
先ず、図1は、本発明の化粧紙の一形態例を示す断面図である。図1の化粧紙Sは、紙基材1に、特定の機械的物性を有する高弾性樹脂シーラー層2、絵柄層3、表面樹脂層4が順次積層され、該表面樹脂層4中には無機質粒子aが含まれている構成である。また、図2は、本発明の化粧材の一形態例を示す断面図である。図2に示す化粧材Dは、図1の如き化粧紙Sが、その紙基材1側が被着基材6側を向く様に間に接着剤層5を介して、被着基材6に積層された構成である。
【0014】
本発明の化粧紙Sは図1の如く、紙基材1上に高弾性樹脂シーラー層2が形成され、化粧紙の表面側に表層として無機質粒子aを含む表面樹脂層4が形成された構成であり、通常はこれに加えて図示の如く絵柄層3を設けることが多い。高弾性樹脂シーラー層2は、表面樹脂層4を架橋物とする時の電離放射線による紙基材の強度劣化を補う。また、高弾性樹脂シーラー層2は紙基材1と表面樹脂層4との間に介在して、表面樹脂層形成用塗液が紙基材に浸透して塗布ムラとなるのを防ぐ。また、このシーラー機能の点においては、高弾性樹脂シーラー層を形成する為の塗液の塗布量は、表面樹脂層形成用塗液の塗工対象となる少なくとも紙基材と高弾性樹脂シーラー層との積層体(絵柄層を有する事もある)、に於ける透気度が5000秒以上である様にするのが、その効果が確実に得られ点で好ましい。
なお、もちろんの事、こられの層のうち、絵柄層3は必要に応じて設ける層であり、絵柄層は意匠上支障が無い場合は適宜省略し得る。また、物性上、製造適性上等で必要に応じ適宜、例えば絵柄層3と表面樹脂層4間にプライマー層を設ける等、その他の層を設けても良い。
【0015】
以下、これら各層について更に詳述する。
【0016】
〔紙基材〕
紙基材1としては、含浸紙或いは非含浸紙等の公知の化粧紙用原紙等が使用される。特に、本発明で対象となるのは、表層とする表面樹脂層の架橋硬化時に紙基材中にまで浸透した電離放射線(特に電子線)により、パルプのセルロース分子が切断され、その結果、切断端にカルボキシル基やカルボニル基が生成し強度劣化したパルプからなる物である。紙基材としては、具体的には例えば、薄葉紙、紙間強化紙、クラフト紙、上質紙、リンター紙、バライタ紙、硫酸紙、和紙等の紙である。なかでも、本発明では高弾性樹脂シーラー層を設けるので、安価だが浸透性である紙間強化紙等は好適である。また、紙基材の坪量は通常20〜150g/m2 程度であり、厚みで言えば20〜200μm程度が好ましい。
また、紙基材自体による塗布ムラ改善策として、叫解度の向上、スーパーカレンダー等によって透気度の数値の増大(浸透性低減)を行っても良い。
また、パルプ種は、絵柄層等の印刷適性、地合の均一性等の観点からは、広葉樹(L材)パルプを使用することが好ましい。また、針葉樹(N材)パルプは、印刷適性、地合の均一性の点では、広葉樹パルプよりも劣るが、パルプ強度の点で、より強力である為、電離放射線(特に電子線)によるパルプ強度の低下分を補いパルプ強度を底上げする意味では好ましい。なお、N材パルプによる印刷適性、地合の均一性の低下を補う為には、カレンダー加工、着色顔料添加等によれば良い。
【0017】
〔高弾性樹脂シーラー層〕
高弾性樹脂シーラー層2は、該層のJIS K6301による引張強さが40MPa(約400kgf/cm2 に相当)以上となる様な高弾性を示し紙基材の強度低下を補うと共に、シーラー機能も有する樹脂層である。この様な樹脂層を形成する樹脂としては、上記機械的物性及びシーラ機能を少なくとも満足する樹脂であれば基本的には特に制限は無い。例えば、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂等が使用できる。具体的には、高弾性樹脂シーラー層は、ポリエステルポリオール樹脂、アクリルポリオールとイソシアネートとによるアクリルウレタン樹脂、或いはウレタン樹脂等の樹脂の中から、上記機械的物性を満足するものを適宜選択使用すれば良い。高弾性樹脂シーラー層は、この様な樹脂からなる塗液を紙基材に、ロールコート等の公知の塗工法で塗工形成すれば良い。塗液には、有機溶剤或いは水等の溶剤を適宜使用する。なお、塗工量は、紙基材の元々の強度、表面樹脂層架橋時の電離放射線量、紙基材の浸透性、用途等によるが、0.5〜10g/m2 (固形分基準)程度である。
【0018】
紙基材上に、この様な高弾性樹脂シーラー層を形成したことにより、表層として形成する表面樹脂層の架橋硬化時の電離放射線(特に電子線)照射による紙基材のセルロース分子切断による強度劣化を補うと共に、塗布ムラを防ぐ事が可能となる。そして、該強度劣化による化粧紙としての加工性低下を改善するには、高弾性樹脂シーラー層の引張強さを40MPa以上とするのが好ましい。ところで、引張強さの上限は特に無いが、通常の樹脂の引張強さが80〜90MPaであることから、上限は自ずとこの程度(最大90MPa程度)となる。なお、この引張強さは、紙基材等のその他の化粧紙構成層と一体となった高弾性樹脂シーラー層、すなわち化粧紙としての強度では無く、高弾性樹脂シーラー層のみの特性値である。この引張強さは、高弾性樹脂シーラー層のみの単層を成膜して、それについて引張試験を行って得た値である。高弾性樹脂シーラー層を単層として成膜するには、紙基材上にでは無く、例えば表面をワックス等の離型剤で離型処理したポリエチレンテレフタレートフィルム等の離型性シートや或いはシリコーン樹脂塗工離型紙等の離型性シート上に、塗液を塗工して高弾性樹脂シーラー層を形成した後(厚みは実際の化粧紙の時よりも厚くても良い)、高弾性樹脂シーラー層のみを剥がせば得られる。なお、本発明にてJIS K6301(架硫ゴム物理試験方法)による引張強さとは、該規格に準拠して測定した値である。
【0019】
なお、高弾性樹脂シーラー層中には、塗工適性等の物性調整、或いは意匠表現等の為に必要に応じて適宜、公知の体質顔料、着色剤等を含有させても良い。着色剤を含有されれば、下記する絵柄層の全ベタ層を兼用させる事もできる。また、高弾性樹脂シーラー層は紙基材中に全て含浸(浸透)して、紙基材中の層として紙基材と一体化した層であっても良いし、また、一部紙基材中に含浸された状態となり、高弾性樹脂シーラー層と紙基材とが、その界面近傍に於いて重複一体化した形でも良い。
【0020】
また、高弾性樹脂シーラー層の塗布量の目安としては、表面樹脂層形成前の、少なくとも紙基材と高弾性樹脂シーラー層とからなる積層体に於ける透気度が5000秒以上となる様にする事が好ましい。すなわち、絵柄層を設けずに、紙基材と高弾性樹脂シーラー層とからなる積層体に、表面樹脂層を形成する場合は、該積層体に於ける透気度を5000秒以上とすると良い。また、絵柄層を印刷形成した印刷紙に、表面樹脂層を形成する場合は、その印刷紙に於ける透気度が5000秒以上となる様にすると良い。なお、絵柄層形成後の印刷紙の透気度は、紙基材と高弾性樹脂シーラー層とからなる積層体の透気度よりも、通常は上昇する。
なお、透気度は、加圧式平滑度・透気度試験機等によって測定できる。測定は、JIS P 8117に準じて行えば良い。
なお、従来化粧紙用途で使用されている一般紙、紙間強化紙等の塗布ムラが起きる化粧紙原紙は、透気度は該数値が高くてもせいぜい100秒程度である。
【0021】
〔絵柄層〕
絵柄層3は、絵柄等を表現する為の層であり、通常は設けるが、必要無い場合は省略しても良い。また、絵柄層を設ける場合、絵柄層の形成方法、材料、絵柄等の、絵柄層の内容は特に制限は無い。絵柄層は、通常は、インキを用いて、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷、グラビアオフセット印刷、インキジェットプリント等の従来公知の印刷法等で形成する。絵柄は、例えば、木目模様、石目模様、布目模様、タイル調模様、煉瓦調模様、皮絞模様、文字、幾何学模様、全面ベタ等である。また、全面ベタの場合は、塗液による塗工で形成する事もできる。絵柄層の形成に用いるインキ(或いは塗液)は、バインダー等からなるビヒクル、顔料や染料等の着色剤、これに適宜加える体質顔料、安定剤、可塑剤、触媒、硬化剤等の各種添加剤からなるが、バインダーの樹脂としては、熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂、電離放射線硬化性樹脂等の中から、要求される物性、印刷適性等に応じて適宜選択すれば良い。例えば、ニトロセルロース、酢酸セルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース系樹脂、ポリ(メタ)アクリル酸メチル、ポリ(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸メチル−(メタ)アクリル酸ブチル−(メタ)アクリル酸2ヒドロキシエチル共重合体等のアクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂、アルキド樹脂等の単体又はこれらを含む混合物を用いる。また、着色剤としては、チタン白、カーボンブラック、弁柄、黄鉛、群青等の無機顔料、アニリンブラック、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料、二酸化チタン被覆雲母、アルミニウム等の箔粉等の光輝性顔料、或いはその他染料等を使用する。
【0022】
なお、高弾性樹脂シーラー層自体、或いは紙基材自体に着色剤を添加し該層による意匠表現で事足りる場合は、この絵柄層は省略する事もできる。
【0023】
〔表面樹脂層〕
表面樹脂層4は、化粧紙の最表面の表層となる層であり、無機質粒子を含む電離放射線硬化性樹脂(組成物)の架橋物から構成する。表面樹脂層は、液状とした電離放射線硬化性樹脂(組成物)をグラビアコート、ロールコート等によって塗工し、塗膜を電離放射線照射によって架橋させ無機質粒子入りの架橋物として形成する。なお、グラビア印刷等による全ベタ印刷で形成しても良い。塗工量は1〜30g/m2 (固形分基準)程度である。
【0024】
電離放射線硬化性樹脂としては、具体的には、分子中にラジカル重合性不飽和結合又はカチオン重合性官能基を有する、プレポリマー(所謂オリゴマーも包含する)及び/又はモノマーを適宜混合した電離放射線により架橋硬化可能な組成物が好ましくは用いられる。なお、ここで電離放射線とは、分子を重合或いは架橋させ得るエネルギーを有する電磁波又は荷電粒子を意味し、通常は、電子線(EB)、又は紫外線(UV)が一般的である。但し、紫外線に比べて電子線の方が、紙基材のセルロース分子分断による強度劣化が起き易く、本発明はこの強度劣化を補うのが目的であるので、架橋に電子線照射を利用するタイプの電離放射線硬化性樹脂が特に好適である。
【0025】
上記プレポリマー又はモノマーは、具体的には、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、エポキシ基等のカチオン重合性官能基等を有する化合物からなる。これらプレポリマー、モノマーは、単体で用いるか、或いは複数種混合して用いる。なお、ここで、例えば、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基の意味である。また、電離放射線硬化性樹脂としては、ポリエンとポリチオールとの組み合わせによるポリエン/チオール系のプレポリマーも好ましくは用いられる。
【0026】
分子中にラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーの例としては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート等が使用できる。分子量としては、通常250〜100,000程度のものが用いられる。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの意味である。
【0027】
分子中にラジカル重合性不飽和基を有するモノマーの例としては、単官能モノマーでは、メチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等がある。また、多官能モノマーでは、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等もある。
【0028】
分子中にカチオン重合性官能基を有するプレポリマーの例としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ化合物等のエポキシ系樹脂、脂肪酸系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂のプレポリマーがある。
チオールとしては、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等のポリチオールがある。また、ポリエンとしては、ジオールとジイソシアネートによるポリウレタンの両端にアリルアルコールを付加したもの等がある。
【0029】
なお、紫外線にて架橋させる場合には、電離放射線硬化性樹脂に光重合開始剤を添加する。ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合は、光重合開始剤として、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル類を単独又は混合して用いることができる。また、カチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、光重合開始剤として、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等を単独又は混合物として用いることができる。
なお、これらの光重合開始剤の添加量としては、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部程度である。
【0030】
一方、上記電離放射線硬化性樹脂に含有させる無機質粒子としては、耐摩耗性等の表面物性を更に向上させる為に、もちろん該電離放射線硬化性樹脂の硬化物よりも硬質の無機質粒子が使用される。この様な無機質粒子の材質としては、アルミナ(α−アルミナ等)、アルミノシリケート、シリカ、硝子、炭化ケイ素、窒化ホウ素、ダイヤモンド等が挙げられる。無機質粒子の形状は、球、多角形(立方体、正八面体、その他の多面体等)、鱗片状、不定形等である。無機質粒子の平均粒径は3〜30μm程度が好ましい。平均粒径が小さ過ぎると耐摩耗性向上効果が低下し、大き過ぎると表面の平滑性が低下する。例えば具体的には、平均粒径25μm程度のα−アルミナ粒子、平均粒径5μm程度のシリカ粒子等が使用される。また、平均粒径は表面樹脂層の厚みの0.3〜2.0倍の範囲とするのが好ましい。この範囲未満では十分な耐摩耗性向上効果が得にくく、またこの範囲を超えると表面がざらついたり、手触り感が低下したりする。なお、無機質粒子の添加量は、樹脂分全量に対して、5〜30質量%程度である。
【0031】
なお、上記電離放射線硬化性樹脂には、更に必要に応じて、各種添加剤を添加しても良い。これらの添加剤としては、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、セルロース系樹脂等の熱可塑性樹脂、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の微粉末からなる体質顔料(充填剤)、シリコーン樹脂、ワックス等の滑剤、染料、顔料等の着色剤等である。
【0032】
なお、電離放射線の電子線源としては、コッククロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、或いは、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用い、100〜1000keV、好ましくは、200〜300keVのエネルギーをもつ電子を照射するものが使用される。また、紫外線源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト、メタルハライドランプ等の光源が使用される。紫外線の波長としては通常190〜380nmの波長域が主として用いられる。
【0033】
〔化粧材〕
上述した本発明の化粧紙を、被着基材の表面に接着剤で貼着すれば、本発明の化粧材が得られる。図2の断面図に示す化粧材Dは、その一形態である。同図の化粧材Dでは、図1で例示の如き構成の本発明の化粧紙Sが、接着剤層5を介して、被着基材6に貼着した構成である。
【0034】
〔被着基材〕
被着基材としては、特に制限は無い。例えば、被着基材の材質は、無機非金属系、金属系、木質系、プラスチック系等である。具体的には、無機非金属系では、例えば、抄造セメント、押出しセメント、スラグセメント、ALC(軽量気泡コンクリート)、GRC(硝子繊維強化コンクリート)、パルプセメント、木片セメント、石綿セメント、ケイ酸カルシウム、石膏、石膏スラグ等の非陶磁器窯業系材料、土器、陶器、磁器、セッ器、硝子、琺瑯等のセラミックス等の無機質材料等がある。また、金属系では、例えば、鉄、アルミニウム、銅等の金属材料がある。また、木質系では、例えば、杉、檜、樫、ラワン、チーク等からなる単板、合板、パーティクルボード、繊維板、集成材等がある。また、プラスチック系では、例えば、ポリプロピレン、ABS樹脂、フェノール樹脂等の樹脂材料がある。
被着基材の形状としては、平板、曲面板、多角柱等任意である。
【0035】
〔接着剤〕
接着剤層5として、化粧紙と被着基材とを接着させる接着剤としては、特に制限は無い。被着基材の材質、用途、要求物性等に応じて、公知の接着剤の中から適宜なものを選択使用すれば良い。例えば、接着剤としては、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、酢酸ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂、熱硬化性ウレタン樹脂等の硬化性樹脂等からなる接着剤を使用する。接着剤は、ロールコート等の公知の塗工法で施せば良い。なお、接着剤は、被着基材、化粧紙、或いはこれら両方に施した後、化粧紙を被着基材に貼り合わせる。
【0036】
〔用途〕
本発明の化粧紙及び化粧材の用途は、特に制限は無いが、壁、床、天井等の建築物内装材、扉、扉枠、窓枠等の建具、回縁、幅木等の造作部材、箪笥、キャビネット等の家具等に用いる。
【0037】
【実施例】
以下、本発明について、実施例及び比較例により更に説明する。
【0038】
〔実施例1〕
図1の如き構成の化粧紙S(化粧紙)を次の様にして作製した。紙基材1には坪量50g/m2 のL材パルプ(広葉樹パルプ)からなる建材用原紙を用い、この片面の全面にグラビア印刷により、ポリエステル系熱可塑性樹脂として平均分子量20,000のポリエステルポリオールを用いた高弾性樹脂シーラー層2(引張強さ40MPa)を、固形分基準の塗布量で1.5g/m2 となる様に形成した。
【0039】
次いで、上記高弾性樹脂シーラー層の上に更に、絵柄層3として着色ベタ層と、木目柄の柄パターン層とをグラビア印刷で順次形成して印刷紙とした。なお、着色ベタ層には、アクリル樹脂とニトロセルロースとの混合樹脂をバインダーとし、着色剤はチタン白、黄鉛及び弁柄を主成分とするインキを使用した。また、柄パターン層には、ニトロセルロースとアルキド樹脂との混合樹脂をバインダーとし、着色剤は弁柄及びカーボンブラックを主成分とするインキを使用した。
また、この印刷紙の透気度を加圧式平滑度・透気度試験機にて測定したところ、5000秒であった。
【0040】
そして、上記印刷紙の絵柄層上に更に、ポリエステルアクリレートプレポリマー60質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート10質量部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート29質量部、シリコーンアクリレート1質量部、及び無機質粒子として平均粒径25μmの球形状α−アルミナ粒子20質量部を含み、溶剤分50質量%となる様に酢酸エチルで希釈された電離放射線(電子線)硬化性樹脂塗料を、ロールコート法により、塗布量25g/m2 (固形分基準)となる様に塗布し乾燥後、電子線を照射(175keV、50kGy(5Mrad))して架橋物として、無機質粒子aを含む表面樹脂層4を形成して、化粧紙Sとした。
【0041】
次いで、上記化粧紙Sを、被着基材6として厚み3mmからなるMDF(中質繊維板)に酢酸ビニル系接着剤を塗布した後、前記化粧紙の紙基材側が被着基材に向く様にして、ロールラミネータで貼り合わせて、図2の如き本発明の化粧材(化粧板)を得た。すなわち、図2の化粧材Dは、被着基材6上に接着剤層5を介して、被着基材側から紙基材1、高弾性樹脂シーラー層2、絵柄層3、及び無機質粒子aを含む表面樹脂層4からなる化粧紙Sが、貼着、積層された構成である。
【0042】
〔実施例2〕
実施例1に於いて、引張強さ40MPaである高弾性樹脂シーラー層の塗布量(固形分基準)を、2.3g/m2 に変更して、印刷紙の透気度を7500秒とした他は、実施例1と同様にして、化粧紙を得た。そして、この化粧紙を用いて実施例1同様に化粧材を得た。
【0043】
〔実施例3〕
実施例1に於いて、高弾性樹脂シーラー層の樹脂として引張強さ55MPaのポリエステル系熱可塑性樹脂を用い、該高弾性樹脂シーラー層の塗布量(固形分基準)を、3.2g/m2 に変更して、印刷紙の透気度を10000秒とした他は、実施例1と同様にして、化粧紙を得た。そして、この化粧紙を用いて実施例1同様に化粧材を得た。
【0044】
〔比較例1〕
実施例1に於いて、高弾性樹脂シーラー層の形成を省略した他は、実施例1と同様にして図4の如き化粧紙Saを得た。そして、この化粧紙を用いて実施例1同様に化粧材を得た。なお、印刷紙の透気度は300秒であった。
【0045】
〔比較例2〕
実施例1に於いて、引張強さ40MPaである高弾性樹脂シーラー層の塗布量(固形分基準)を、0.7g/m2 に変更して、印刷紙の透気度を1000秒とした他は、実施例1と同様にして、化粧紙を得た。そして、この化粧紙を用いて実施例1同様に化粧材を得た。
【0046】
〔比較例3〕
実施例1に於いて、引張強さ40MPaである高弾性樹脂シーラー層の塗布量(固形分基準)を、1.0g/m2 に変更して、印刷紙の透気度を4000秒とした他は、実施例1と同様にして、化粧紙を得た。そして、この化粧紙を用いて実施例1同様に化粧材を得た。
【0047】
〔比較例4〕
実施例1に於いて、高弾性樹脂シーラー層の樹脂を引張強さ30MPaのポリエステル系熱可塑性樹脂とし、また、その塗布量(固形分基準)を、1.5g/m2 に変更して、印刷紙の透気度を5000秒とした他は、実施例1と同様にして、化粧紙を得た。そして、この化粧紙を用いて実施例1同様に化粧材を得た。
【0048】
〔性能評価〕
各実施例及び比較例に於いて、下記の評価方法で、塗布ムラと加工性を評価した。結果は、表1に纏めて示す。
【0049】
(1)塗布ムラ:表面樹脂層表面の塗布ムラの発生状況を目視により観察し評価した。
【0050】
(2)加工性:ロールラミネータで、連続帯状の化粧紙を接着剤で被着基材に貼り合わせる時の紙切れ発生の有無を評価した。紙切れ発生無ければ良好、発生すれば不良とした。
【0051】
【表1】
【0052】
〔結果考察〕
先ず、塗布ムラは、表1に示す如く、高弾性樹脂シーラー層を設け透気度が5000秒以上となった各実施例、及び、引張強さ40MPa未満だが(高弾性)樹脂シーラー層を設け透気度が5000秒以上となった比較例4については、発生しなかった。しかし、高弾性樹脂シーラー層を設けなかった比較例1、及び該層を設けたが透気度が5000秒未満となった比較例2及び3は発生した。
【0053】
また、加工性は、各実施例、及び比較例2〜3は、引張強さ40MPa以上の高弾性樹脂シーラー層を設けてある為、全て加工性が良好であった。しかし、高弾性樹脂シーラー層を省略した比較例1、及び、(高弾性)樹脂シーラー層が有っても引張強さが40MPa未満である比較例4では、紙切れが発生し不良であった。
【0054】
【発明の効果】
(1) 本発明の化粧紙によれば、特定の機械的物性の高弾性樹脂シーラー層を設けた上で、無機質粒子を含む電離放射線硬化性樹脂の架橋物からなる表面樹脂層を形成してあるので、表面樹脂層形成時に、その塗液を紙基材中に浸透し表面に塗布ムラが生じるのを防げる。しかも、その上、表面樹脂層形成時の電離放射線照射によって紙基材のパルプのセルロース分子が切断され紙基材が強度劣化しても、それを補い化粧紙全体としての強度を維持する事ができる。これらの結果、表面樹脂層による優れた耐摩耗性等の表面物性を有する上、なお且つ化粧紙の加工性も良好となる。したがって、ロールラミネータ等で被着基材に化粧紙を貼り合わせるラミネート加工の時に、加工機の機械振動や、連続帯状の化粧紙を(枚葉の)被着基材に貼着する毎に搬送停止して切断する時の機械的ショック(張力の瞬間的な増加)等によって、化粧紙が切れてしまう紙切れを防げる。また、低コストとなる紙間強化紙等も紙基材として使用できる。
(2) 更に、表面樹脂層形成前の、少なくとも紙基材と高弾性樹脂シーラー層とからなる積層体に於ける透気度を5000秒以上となる様にして、高弾性樹脂シーラー層を設ける事で、該層によるシーラー効果を確実に得る事ができる。従って、表面樹脂層形成時に、その塗液が紙基材中に浸透し表面に塗布ムラが生じるのを防げ、また、表面樹脂層による優れた耐摩耗性等の表面物性を、より確実に付与できる。
【0055】
(3) 本発明の化粧材によれば、上記化粧紙による効果によって、塗布ムラが無く、優れた耐摩耗性等の表面物性を有する上、なお且つ、加工性も良好にして化粧紙が被着基材に貼着されているので、貼着時の紙切れが防げ、歩留り良く製造できる化粧材となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の化粧紙の一形態を例示する断面図。
【図2】本発明の化粧材の一形態を例示する断面図。
【図3】従来の化粧紙の一例を示す断面図。
【符号の説明】
1 紙基材
2 高弾性樹脂シーラー層
3 絵柄層
4 表面樹脂層
5 接着剤層
6 被着基材
a 無機質粒子
D 化粧材
S 化粧紙
Sa 従来の化粧紙
Claims (3)
- 紙基材上に、JIS K6301による引張強さ40MPa〜55MPaであり、着色剤を含有する高弾性樹脂シーラー層を形成した上で、最表面層として無機質粒子を含む電離放射線硬化性樹脂の架橋物からなる表面樹脂層を形成してなり、前記表面樹脂層形成前の、少なくとも前記紙基材と前記高弾性樹脂シーラー層とからなる積層体に於ける透気度が、JIS P 8117による透気度5000秒〜10000秒であることを特徴とする化粧紙。
- 前記紙基材が針葉樹パルプからなることを特徴とする請求項1記載の化粧紙。
- 請求項1又は2に記載の化粧紙を、接着剤にて被着基材に貼り合わせて成る化粧材。
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