JP4459404B2 - 化粧板及びその製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、壁等の建築物内装材、扉等の建具や家具等の表面材等に用いる、化粧紙を基材に貼着して成る化粧板に関する。特に、耐引掻強度に優れ、また製造し易い化粧板及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来より、上記の様な表面装飾用途では、通常、表面強度が要求される。この為、例えば、(1) 特開昭52−134007号公報、特開昭53−64289号公報等では、紙基材上に絵柄インキ層を印刷した化粧紙の上に、表面保護層(上塗り層)としてウレタン樹脂層を形成する事を開示している。(2) また、(2-1) 特公昭49−31033号公報、(2-2) 特許第2740943号公報、(2-3) 特許第2856862号公報等に開示の様に、表面保護層(上塗り層)として電子線(或いは紫外線)硬化性樹脂を電子線(或いは紫外線)照射により架橋硬化さてた硬化性樹脂層を用いた耐摩耗性を有する化粧紙も使用されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記の様な化粧紙を用いた化粧板では、その表面強度は必ずしも満足できるものでは無かった。すなわち、上記(1) の構成では、スチールウールで擦ると傷が付き耐引掻性が劣り、また耐摩耗性(JIS K6902等の試験で評価)は極めて低かった。また、上記(2) による化粧紙では、スチールウール摩擦に対する耐久性(耐スチールウール擦傷性)は良好であり、更に上記(2-3) の如く表面保護層中に球状α−アルミナ等の硬質粒子を添加する事により、耐摩耗性も大幅に向上する。しかしながら、これらはいずれも耐引掻強度には乏しく、鉛筆等で引っ掻いた場合では表面に凹みが発生し、耐引掻性が不十分であった。しかもこの耐引掻性は、表面保護層の硬度を高くするだけでは向上出来なかった。
【0004】
そこで、本発明の課題は、特に耐引掻性が優れた化粧板と、その製造方法を提供する事である。また、生産工程の自由度を広げられ製造が容易な製造方法を提供する事である。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するために、本発明の化粧板は、原紙の一方の面に熱硬化性樹脂又は電離放射線硬化性樹脂の硬化物から成る表面保護層が硬化形成され、他方の面に含浸樹脂として熱及び電離放射線の両方の作用にて完全硬化する樹脂が含浸され硬化されて成る化粧紙が、基材上に前記原紙の他方の面側が基材表面側を向く様にして前記含浸樹脂により積層接着されて成る構成とした。
更に、熱及び電離放射線の両方の作用にて完全硬化する樹脂がメラミン(メタ)アクリレート系のプレポリマー又はオリゴマーである構成とするか、或いは、熱及び電離放射線の両方の作用にて完全硬化する樹脂がアクリロイル基乃至はメタクリロイル基以外のビニル基等の電離放射線重合性不飽和基で変性した変性メラミン化合物である構成とすることができる。
【0006】
この様に、原紙にも硬化樹脂を含浸させ硬化させ、且つ原紙表面にも硬化性樹脂の硬化物からなる表面保護層を形成し、両者の相乗効果により、引っ掻き時の凹み発生を防止し、耐引掻性を良好にできる。また、耐スチールウール擦傷性や耐摩耗性も良好にできる。
【0007】
また、本発明の化粧板の製造方法は、(A)樹脂含浸前の原紙の表面側に熱硬化性樹脂又は電離放射線硬化性樹脂の硬化物から成る表面保護層が形成されて成る化粧紙の前記原紙中に、含浸樹脂として熱及び電離放射線の両方の作用にて完全硬化する樹脂を含浸させる含浸工程、
(B)該含浸樹脂を加熱及び/又は電離放射線照射によって、該含浸樹脂が指触乾燥状態にはなるが、完全には硬化反応が完了し無い程度に硬化させて得た化粧工程紙を巻き取る第1の硬化工程、(B)該含浸樹脂を加熱及び/又は電離放射線照射によって、該含浸樹脂が指触乾燥状態にはなるが、完全には硬化反応が完了し無い程度に硬化させて得た化粧工程紙を巻き取る第1の硬化工程、(C)前記巻き取った化粧工程紙を繰り出し、該化粧工程紙の前記樹脂含浸側である原紙側が基材側を向く様にして基材上に載置して、加熱加圧する積層工程、(D)加熱及び/又は電離放射線照射により、含浸樹脂の未硬化分を完全に硬化させるとともに上記化粧工程紙を基材に接着させる第2の硬化工程、をこの順に行う様にした。
【0008】
この様な製造方法として、含浸樹脂に熱硬化性且つ電離放射線硬化性の樹脂を用い、製造過程で先ずどちらかの反応基を硬化させる事により、確実且つ容易に、且つ硬化率を安定させてタックフリー(指触乾燥)な状態の硬化完了前の化粧工程紙として、ブロッキング無しに巻き取り、保管し、またその後基材と接着硬化させる事が可能となる。その為、含浸してから化粧工程紙を基材に接着するまでの間の時間を任意に設定可能であり、生産工程の自由度が広げられる。また、遅硬性の熱硬化と速硬性の電離放射線硬化を組み合わせる事により、不完全硬化の程度を制御し易い製造方法となる。また、完全硬化物の硬度も高くできる。そして、含浸樹脂を完全硬化させることによって、表面保護層と含浸樹脂との両硬化樹脂の相乗効果により、得られる化粧板は耐引掻性を良好にできる。また耐スチールウール擦傷性や耐摩耗性も良好にできる。
【0009】
また、本発明の化粧板の製造方法は、(A)樹脂含浸前の原紙の表面側に熱硬化性樹脂又は電離放射線硬化性樹脂の硬化物から成る表面保護層が形成されて成る化粧紙の前記原紙中に、含浸樹脂として熱及び電離放射線の両方の作用にて完全硬化する樹脂を含浸させる含浸工程、
(B)該含浸樹脂を電離放射線照射によって、該含浸樹脂が指触乾燥状態にはなるが、完全には硬化反応が完了し無い程度に硬化させて得た化粧工程紙を巻き取る第1の硬化工程、
(C)前記巻き取った化粧工程紙を繰り出し、該化粧工程紙の前記樹脂含浸側である原紙側が基材側を向く様にして基材上に載置して、加熱加圧することにより含浸樹脂の未硬化分を完全に硬化させるとともに上記化粧工程紙を含浸樹脂により基材に接着させる積層工程、をこの順に行う様にした。
【0010】
更に、上記いずれかの方法において、熱及び電離放射線の両方の作用にて完全硬化する樹脂がメラミン(メタ)アクリレート系のプレポリマー又はオリゴマーである構成とするか、或いは、熱及び電離放射線の両方の作用にて完全硬化する樹脂がアクリロイル基乃至はメタクリロイル基以外のビニル基等の電離放射線重合性不飽和基で変性した変性メラミン化合物である構成とすることができる。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の化粧板及びその製造方法について、実施の形態を説明する。
【0012】
先ず、図1は本発明の化粧板の1形態を例示する断面図であり、図1(A)で示す本発明の化粧板Dは、熱硬化性且つ電離放射線硬化性樹脂が含浸され硬化されて成る原紙1の表面側に、全ベタ層2A及び柄パターン層2Bからなる絵柄インキ層2が形成された上で、その上に熱硬化性樹脂又は電離放射線硬化性樹脂の硬化物から成る表面保護層3が形成された構成の化粧紙Sが、基材4上に前記原紙1側が基材4表面側を向く様にして積層接着されて成る構成の化粧板である。なお参考として、図1(B)で示す化粧板Dは、図1(A)の構成に対して、化粧紙Sと基材4間に接着剤層5を設けて、この接着剤層5によって化粧紙Sを基材4に接着積層した構成である。
【0013】
次に、図2の断面図は、本発明の化粧板の製造方法を概念的に示す説明図である。この製造方法では、先ず、図2(A)で示す如き樹脂含浸前の原紙1Aに対して、図2(B)の如く全ベタ層2A及び柄パターン層2Bからなる絵柄インキ層2を印刷形成し更に、全面に熱硬化性樹脂又は電離放射線硬化性樹脂の硬化物から成る表面保護層3を塗工形成した未含浸化粧紙Saを用意する。そして、含浸工程にて図2(C)の如く、この未含浸化粧紙Saの原紙1A中に、含浸樹脂として熱硬化性且つ電離放射線硬化性樹脂を含浸させて、未含浸の原紙1Aを樹脂含浸された原紙1Bとする。次いで、第1の硬化工程にて、図2(D)の如く、原紙1B中の含浸樹脂を加熱、電離放射線照射、或いは加熱及び電離放射線照射の併用のいずれかの硬化手段C1によって、該含浸樹脂が指触乾燥状態にはなるが、完全には硬化反応が完了し無い程度にまで硬化(以降、この特定の状態を「半硬化」とも呼ぶ)させて化粧工程紙Spとする。この化粧工程紙Spにおいて、前記原紙1Bは、その含浸樹脂が半硬化状態となった原紙1Cとなる。本発明では、この化粧工程紙Spが、ブロッキングせずに巻取保管する事が可能となっている。
【0014】
そして、図2(E)の如く、積層工程にて、この化粧工程紙Spをその原紙1C側が基材4側を向く様にして載置して、加熱加圧して積層する。この後、第2の硬化工程として、加熱、電離放射線照射、或いは加熱及び電離放射線照射の併用のいずれかの硬化手段C2によって、(原紙1C中の)含浸樹脂の未硬化分を完全に硬化させて原紙1とするとともに上記化粧工程紙Spを基材4に接着させて、化粧板Dとする。なお、前記化粧工程紙Spは、その原紙1C中の含浸樹脂は完全硬化状態となって原紙1となり、化粧工程紙Spは化粧紙Sとなる。つまり、図2(E)の化粧板Dは、熱硬化性且つ電離放射線硬化性樹脂が含浸され硬化されて成る原紙1の表面側に、全ベタ層2A及び柄パターン層2Bからなる絵柄インキ層2、熱硬化性樹脂又は電離放射線硬化性樹脂の硬化物から成る表面保護層3がこの順に形成された構成の化粧紙Sが、基材4上に前記原紙1側が基材4表面側を向く様にして積層接着されて成る構成である。
【0015】
次に、図3の断面図は、本発明の化粧板の製造方法には該当しないが参考として挙げる製造方法を概念的に示す説明図である。こちらの製造方法では、先ず含浸工程にて、図3(A)で示す如き樹脂含浸前の原紙1A中に、図3(B)の如く、含浸樹脂として熱硬化性且つ電離放射線硬化性樹脂を含浸させて、樹脂含浸された原紙1Bとする。次いで、第1の硬化工程にて、図3(C)の如く、前記原紙1Bに対して、該原紙1B中の含浸樹脂を加熱、電離放射線照射、或いは加熱及び電離放射線照射の併用のいずれかの硬化手段C1によって、該含浸樹脂が指触乾燥状態にはなるが、完全には硬化反応が完了し無い程度にまで硬化(半硬化)させて原紙1Cとする。そして、図3(D)の如く、表面保護層形成工程として、上記原紙1Cに対して、熱硬化性樹脂又は電離放射線硬化性樹脂の硬化物から成る表面保護層3を全面に塗工形成して化粧工程紙Spとする。なお、同図では、表面保護層3の形成前に、全ベタ層2A及び柄パターン層2Bからなる絵柄インキ層2をこの順に印刷形成しておく形態である。こちらの方法に於いても、該化粧工程紙Spの原紙1Cは、その含浸樹脂は半硬化の状態である。この為、該化粧工程紙Spは、ブロッキングせずに巻取保管する事が可能となっている。
【0016】
この後は、先の第1の製造方法と同様であるが、図3(E)の如く、積層工程にて、この化粧工程紙Spをその原紙1C側が基材4側を向く様にして載置して、加熱加圧して積層する。そして、第2の硬化工程として、加熱、電離放射線照射、或いは加熱及び電離放射線照射の併用のいずれかの硬化手段C2によって、(原紙1C中の)含浸樹脂の未硬化分を完全に硬化させて原紙1とするとともに上記化粧工程紙Spを基材4に接着させて、化粧板Dとする。この際、前記化粧工程紙Spは、その原紙1C中の含浸樹脂は完全硬化状態となって原紙1となり、化粧工程紙Spは化粧紙Sとなる。つまり、図3(E)の化粧板Dも図2(E)同様に、熱硬化性且つ電離放射線硬化性樹脂が含浸され硬化されて成る原紙1の表面側に、全ベタ層2A及び柄パターン層2Bからなる絵柄インキ層2、熱硬化性樹脂又は電離放射線硬化性樹脂の硬化物から成る表面保護層3がこの順に形成された構成の化粧紙Sが、基材4上に前記原紙1側が基材4表面側を向く様にして積層接着されて成る構成である。
【0017】
なお、本発明の化粧板及びその製造方法では、基材4に化粧工程紙Spを接着させるには、原紙1C中の半硬化の含浸樹脂で接着させる。但し、接着剤を使用する化粧板及びその製造方法もあり得る。図1(B)の断面図で例示する化粧板Dは、接着剤使用により、先の図2(E)や図3(E)で例示した構成の化粧板Dに対して、基材4と化粧紙S間に接着剤層5を介在させた構成である。
【0018】
以下、各層について更に詳述する。
【0019】
〔原紙〕
含浸樹脂として熱硬化性且つ電離放射線硬化性樹脂を含浸して(最終的に完全硬化させた)原紙1とする為の原紙1Aとしては、含浸性を有する紙として、例えば、薄葉紙、クラフト紙、上質紙、リンター紙、バライタ紙、和紙等が使用できる。紙を構成するパルプとしては、N材(針葉樹)パルプ、L材(広葉樹)パルプ、或いはこれらを混合したパルプを用いる。一般に、紙の地合、表面平滑性を重視する場合はL材パルプを、また紙の強度を重視する場合はN材パルプを主体とする。また、坪量は通常20〜150g/m2 程度である。
【0020】
〔含浸樹脂〕
含浸樹脂には本発明では、熱硬化性且つ電離放射線硬化性樹脂を使用する。この樹脂は、硬化が熱硬化性でもあり、且つ電離放射線硬化性でもある樹脂である。この様な熱硬化性且つ電離放射線硬化性樹脂としては、例えば、(1) メラミン(メタ)アクリレート系のプレポリマー(乃至はオリゴマー)からなる樹脂、(2) 不飽和ポリエステル樹脂(ビニルエステル樹脂も含む)等が使用できる。或いは、(3) 熱硬化性樹脂と電離放射線硬化性樹脂との混合樹脂(組成物)も使用できる。
なお、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はメタクリレートの意味である。
【0021】
上記(1) のメラミン(メタ)アクリレート系の樹脂は、プレポリマー(乃至はオリゴマー或いは低分子化合物の)メラミン骨格に対して、アクリロイル基(−CO−CH=CH2 )やメタクリロイル基(化学式は省略。以下同様)を付加して(メタ)アクリレート化した化合物である。メラミン骨格の化合物を(メタ)アクリレート化合物とするには、例えばアルコキシメチル化したメラミンとしてポリメトキシメチルメラミンのメトキシメチル基(−CH2 −O−CH3 )を、2−HEA(2−ヒドロキシエチルアクリレート)や2−HEMA(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)を反応させて、アクリロイルオキシ基(−O−CO−CH=CH2 )やメタクリロイルオキシ基で変性する。この際、全てのメトキシ基を変性せず一部を残せば、残余の基がいわゆる熱硬化性のメラミン樹脂の反応基となり、その結果、熱硬化性且つ電離放射線硬化性の樹脂(組成物)となる。なお、熱硬化用の反応基としては、上記メトキシメチル基以外にエトキシメチル基等の各種アルコキシアルキル基の他に、メチロール基(−CH2 −OH)等でも良い。また、電離放射線硬化性とする為の変性基は、(メタ)アクリレート系樹脂とする場合は、上記アクリロイル基やメタクリロイル基を付与するが、ビニル基等のその他の電離放射線重合性不飽和基で変性した変性メラミン化合物も使用可能である。
なお、電離放射線として、紫外線或いは可視光線を用いる場合には、光重合開始剤として、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類等を0.1〜10質量程度添加する。
【0022】
上記(2) の不飽和ポリエステル樹脂は、無水マレイン酸、フマル酸等の不飽和二塩基酸と、エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコールとの重縮合反応によるポリエステルプレポリマーと、スチレン、ビニルトルエン等のビニルモノマーを主成分とする公知の樹脂組成物である。
【0023】
また、熱重合開始剤として、過酸化ベンゾイル、過酸化メチルエチルケトン、t−ブチルパーベンゾエート等の過酸化物を0.1〜10質量%程度添加する。また、電離放射線として、紫外線或いは可視光線を用いる場合には、これに加えて更に、光重合開始剤として、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類等を0.1〜10質量程度添加する。
【0024】
上記(3) の熱硬化性樹脂と電離放射線硬化性樹脂との混合樹脂(組成物)に於ける熱硬化性樹脂としては、例えば、メラミン樹脂、尿素樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、或いは反応型ホットメルト樹脂等を使用できる。また、上記電離放射線硬化性樹脂としては、例えば次の様な樹脂を使用できる。なお、熱硬化性樹脂と電離放射線硬化性樹脂との混合割合は、第1の硬化工程での硬化率度合いに応じて適宜割合とする。
【0025】
また、上記電離放射線硬化性樹脂としては、具体的には、分子中にラジカル重合性不飽和結合又はカチオン重合性官能基を有する、プレポリマー(所謂オリゴマーも包含する)及び/又はモノマーを適宜混合した電離放射線により硬化可能な組成物が好ましくは用いられる。なお、ここで電離放射線とは、分子を重合或いは架橋させ得るエネルギーを有する電磁波又は荷電粒子を意味し、通常は、電子線(EB)、又は紫外線(UV)が用いられる。
【0026】
上記プレポリマー又はモノマーは、具体的には、分子中に(メタ)アクリロイル基、(メタ)アクリロイルオキシ基等のラジカル重合性不飽和基、エポキシ基等のカチオン重合性官能基等を有する化合物からなる。これらプレポリマー、モノマーは、単体で用いるか、或いは複数種混合して用いる。なお、ここで、例えば、(メタ)アクリロイル基とは、アクリロイル基又はメタクリロイル基の意味である。また、電離放射線硬化性樹脂としては、ポリエンとポリチオールとの組み合わせによるポリエン/チオール系のプレポリマーも好ましくは用いられる。
【0027】
分子中にラジカル重合性不飽和基を有するプレポリマーの例としては、ポリエステル(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、メラミン(メタ)アクリレート、トリアジン(メタ)アクリレート等が使用できる。分子量としては、通常250〜100,000程度のものが用いられる。なお、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの意味である。
【0028】
分子中にラジカル重合性不飽和基を有するモノマーの例としては、単官能モノマーでは、メチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート等がある。また、多官能モノマーでは、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパンエチレンオキサイドトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等もある。
【0029】
分子中にカチオン重合性官能基を有するプレポリマーの例としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ化合物等のエポキシ系樹脂、脂肪酸系ビニルエーテル、芳香族系ビニルエーテル等のビニルエーテル系樹脂のプレポリマーがある。
チオールとしては、トリメチロールプロパントリチオグリコレート、ペンタエリスリトールテトラチオグリコレート等のポリチオールがある。また、ポリエンとしては、ジオールとジイソシアネートによるポリウレタンの両端にアリルアルコールを付加したもの等がある。
【0030】
なお、紫外線にて硬化させる場合には、電離放射線硬化性樹脂に光重合開始剤を添加する。ラジカル重合性不飽和基を有する樹脂系の場合は、光重合開始剤として、アセトフェノン類、ベンゾフェノン類、チオキサントン類、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル類を単独又は混合して用いることができる。また、カチオン重合性官能基を有する樹脂系の場合は、光重合開始剤として、芳香族ジアゾニウム塩、芳香族スルホニウム塩、芳香族ヨードニウム塩、メタロセン化合物、ベンゾインスルホン酸エステル等を単独又は混合物として用いることができる。
なお、これらの光重合開始剤の添加量としては、電離放射線硬化性樹脂100質量部に対して、0.1〜10質量部程度である。
【0031】
なお、電離放射線の線源は、紫外線源としては、超高圧水銀灯、高圧水銀灯、低圧水銀灯、カーボンアーク灯、ブラックライト、メタルハライドランプ等の光源が使用される。紫外線の波長としては通常190〜380nmの波長域が主として用いられる。
また、電子線源としては、コッククロフトワルトン型、バンデグラフト型、共振変圧器型、絶縁コア変圧器型、或いは、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器を用い、100〜1000keV、好ましくは、100〜300keVのエネルギーをもつ電子を照射するものが使用される。電子線の照射量(吸収線量)としては、通常20〜150kGy(2〜15Mrad)程度である。
【0032】
ところで、本発明の化粧板の製造方法では、上述の如き含浸樹脂の硬化は2段階とする。すなわち、先ず、第1段階の硬化(第1の硬化工程)は、化粧紙の(樹脂含浸前の)原紙1Aに熱硬化性且つ電離放射線硬化性樹脂を含浸させた後(通常は直後)に、熱、電離放射線、或いはこれらの両方を併用して、含浸樹脂を、指触乾燥(触っても指に粘着して付着しない状態)にはなるが、未反応の反応基(重合性不飽和基や官能基)を残しており、熱或いは電離放射線のいずれか片方又は両方の作用により、更に硬化し、好ましくは(被着)基材と接着する能力を保持する程度に硬化させる。
具体的な第1段階の硬化の程度の目安としては、質量Miの硬化物を取り、その中の未反応物に対する溶剤(例えば、アセトン、酢酸エチル、トルエン等)を用いて未反応物を溶解除去した後、該溶剤を乾燥除去させたときの残った質量をMfとしたときの、下式で表される硬化率が20〜80%程度とする。
【0033】
硬化率(%)=(Mf/Mi)×100
【0034】
この第1段階の硬化によって、樹脂含浸しなお且つ表面保護層が形成された化粧工程紙を、接着力を保持したまま、巻き取ったり、重ねて載置して保管したりしても、化粧工程紙同士が接着(ブロッキング)することを防止できる。
第2段階の硬化は、第1段階の硬化を行った化粧工程紙を、所望の基材の上に、その原紙(1C)側が基材側を向く様にして載置して、加熱加圧して基材に圧着するとともに、含浸樹脂に熱硬化性が残留している場合は、その時の熱で、含浸樹脂の未硬化分を硬化完了させ、接着力を発現させるとともに化粧工程紙に硬化を付与し化粧紙として、耐引掻性を発現させる。また、含浸樹脂に電離放射線硬化性が残留している場合は、加熱加圧によって該化粧工程紙を基材に圧着すると同時に、或いは圧着した後に、電離放射線を照射して含浸樹脂の未硬化分を硬化完了させ、接着力と硬度の発現を行うことができる。
【0035】
なお、含浸樹脂としては、ユニバーサル硬度(樹脂単体から成る塗膜に対してH.Fisher社製の超微小硬度計H100Vを用い、6秒間連続で20mNの荷重を加えて測定)が200(単位はN/mm2 )以上の範囲のものを選ぶことが、含浸樹脂を原紙に含浸し第2段階の硬化を完了した時点での耐引掻性向上の点で好ましい。
【0036】
含浸工程と絵柄インキ層や表面保護層形成工程との工程の前後関係は、(1) 本発明の方法では、先ず樹脂含浸前の原紙1Aに対して必要に応じ適宜設ける絵柄インキ層を印刷形成し、更に必須の表面保護層を塗工形成した後、而る後に、含浸と第1の硬化を行う。(2) 参考として挙げた方法では、先ず樹脂含浸前の原紙1Aに対して含浸し、第1段階の硬化を行い、而る後に、必要に応じて適宜設ける絵柄インキ層を印刷形成し、更に必須の表面保護層を塗工形成する。これら(1) 及び(2) のいずれでも可能である。含浸は、原紙1Aの表面から裏面に至るまで一様に行う。なお、含浸樹脂を原紙1Aに施して含浸させるには、ロールコート等の公知の塗工・含浸方法によれば良い。
【0037】
〔絵柄インキ層〕
絵柄インキ層2は通常は設けるが、意匠表現上必要無い場合(表面保護層や原紙自体による意匠表現で事足りる場合等)は省略しても良い。絵柄インキ層2は、インキを用いて、グラビア印刷、シルクスクリーン印刷、オフセット印刷、グラビアオフセット印刷、インキジェットプリント等の従来公知の印刷法で絵柄を形成した層である。絵柄としては、例えば、木目模様、石目模様、布目模様、タイル調模様、煉瓦調模様、皮絞模様、文字、幾何学模様、全面ベタ、或いはこれらの2種以上の組み合わせ等を用いる。図1〜図3の各図は、絵柄インキ層2として、全ベタ層2Aと部分的に形成され柄パターンを表現する柄パターン層2Bとの組み合わせ例でもある。全ベタ層は柄パターン層に対する下地色としてや、下地(原紙や基材)色の隠蔽の為に設ける(例えば着色隠蔽ベタ層として)。柄パターン層は木目模様等の各種模様を表す。
【0038】
なお、絵柄インキ層の形成に用いるインキは、バインダー等からなるビヒクル、顔料や染料等の着色剤、これに適宜加える体質顔料等の各種添加剤からなるが、バインダーの樹脂としては、例えば、ニトロセルロース、酢酸セルロース、セルロースアセテートプロピオネート等のセルロース系樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、ポリエステル樹脂等の単体又はこれらを含む混合物を用いる。また、着色剤としては、チタン白、カーボンブラック、弁柄、黄鉛、群青等の無機顔料、アニリンブラック、キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料、二酸化チタン被覆雲母、アルミニウム等の箔粉等の光輝性顔料、或いはその他染料等を使用する。
また、絵柄インキ層の絵柄が全面ベタの場合は、塗液を用い、ロールコート等の公知の塗工法で塗工形成した絵柄層としても良い。
上述の絵柄インキ層、或いは絵柄層等の装飾層は必要に応じて適宜設ける。
【0039】
〔表面保護層〕
表面保護層3は、熱硬化性樹脂又は電離放射線硬化性樹脂の硬化物として形成する。熱硬化性樹脂や電離放射線硬化性樹脂としては、公知の樹脂を、要求物性に応じて使用すれば良い。例えば、熱硬化性樹脂としては、2液硬化型ウレタン樹脂、アミノアルキド樹脂、エポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂等を用いる。また、電離放射線硬化性樹脂としては、例えばアクリレート系の樹脂を用いる。そして、表面保護層は、熱硬化性樹脂又は電離放射線硬化性樹脂からなる塗液を、グラビアコート、ロールコート等によって塗工し、塗膜を硬化させて形成することができる。硬化は通常は架橋硬化である。また、表面保護層の厚さは、通常1〜20μm程度とする。
【0040】
なお、上記2液硬化型ウレタン樹脂とは、ポリオールを主剤としイソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするウレタン樹脂である。ポリオールとしては、分子中に2個以上のヒドロキシル基を有する化合物であり、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、1,2,6−ヘキサントリオール、ブテンジオール、シュークロース、グルコース、ソルビトール、ペンタエリスリトール、マンニトール、トリエタノールアミン、n−メチルジメタノールアミン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール等が用いられる。
【0041】
一方、上記イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネートが用いられる。例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4′−ジイソシアネート、クルードMDI、ポリフェニルメタンポリイソシアネート、キシレンジイソシアネート、トリフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、或いは、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、或いは、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート(ジシクロヘキシルメタン−4,4′−ジイソシアネート)、水素添加トリレンジイソシアネート等の各種水素添加イソシアネートや、イソホロンジイソシアネート等の脂環式イソシアネート等が用いられる。
或いはこれらポリイソシアネートと、低分子量グリコール又はトリオール、例えば、ジプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,2,6−ヘキサントリオール、トリメチロールプロパンと反応させて得られる、イソシアネート末端低分子量付加体等の各種イソシアネートの付加体、又は多量体を用いることもできる。例えば、トリレンジイソシアネート3量体等のイソシアネート多量体等である。
尚、上記イソシアネートに於いて脂肪族(乃至は脂環式)イソシアネートは耐候性、耐熱黄変性も良好に出来る点で好ましく、具体的には例えばヘキサメチレンジイソシアネートが挙げられる。
【0042】
また、上記電離放射線硬化性樹脂としては、前述含浸樹脂として述べた様な電離放射線硬化性樹脂のなかから適宜選択使用する事ができる。よって、ここでは更なる説明は省略する。
【0043】
なお、表面保護層は、熱硬化性樹脂又は電離放射線硬化性樹脂で形成するが、更に必要に応じて、各種添加剤を添加しても良い。これらの添加剤としては、例えば、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、酢酸ビニル樹脂、アクリル樹脂、セルロース系樹脂等の熱可塑性樹脂、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、減摩剤等の微粉末からなる体質顔料(充填剤)、シリコーン樹脂、ワックス等の滑剤、染料、顔料等の着色剤等である。
【0044】
なお、減摩剤としては、耐摩耗性向上が必要な場合に、硬質の無機質粒子が使用される。無機質粒子の材質としては、アルミナ(α−アルミナ等)、シリカ、硝子、炭化ケイ素、ダイヤモンド等が挙げられる。無機質粒子の形状は、球、多角形、鱗片状、不定形等である。無機質粒子の平均粒径は3〜30μm程度が好ましい。平均粒径が小さ過ぎると耐摩耗性向上効果が低下し、大き過ぎると表面の平滑性が低下する。減摩剤の添加量は、樹脂分全量に対して5〜30質量%程度である。
【0045】
なお、表面保護層の表面には凹凸模様を設けても良い。凹凸模様は、撥じき印刷(後述実施例2参照)、滲み込み手法(後述実施例4参照)等の公知の形成法によれば良い。
【0046】
〔基材〕
化粧板Dの基材4としては、各種板材が使用されるが、その材質等は特に制限は無い。例えば、基材の材質は、木質系、無機非金属系、金属系、プラスチック系等である。具体的には、木質系では、例えば、杉、松、樫、ラワン、チーク等の樹木から成る木材単板、木材合板、集成材、中密度繊維板(MDF)等の木質繊維板の木質板が挙げられる。また、無機非金属系では、ケイ酸カルシウム板、石膏板、セメント系板等の窯業系板、金属系では、鉄、アルミニウム等の金属板、プラスチック系では、ポリプロピレン、ABS樹脂、フェノール樹脂等の樹脂板等が挙げられる。なお、基材形状は、化粧工程紙を化粧面に貼着可能な形状であれば特に制限は無く、平板以外にも、例えば、曲面板等でも良い。
【0047】
〔接着剤〕
接着剤層5は、必須では無く、含浸樹脂を接着剤としても兼用させて、第2段階の硬化により基材と化粧工程紙とを接着させる事も可能である。しかし、更に別途、基材上、化粧工程紙の被着面、或いはこれら両方に、接着剤を施して、接着剤層5を形成しても良い。接着剤の使用により、より広範囲な基材と化粧紙の材料の組み合わせに対して密着良い化粧板とする事ができる。この場合の接着剤としては、特に制限は無く、原紙及び含浸樹脂、基材の材質、用途、要求物性等に応じて、公知の接着剤の中から適宜なものを選択使用すれば良い。例えば、接着剤としては、2液硬化型ウレタン樹脂、尿素樹脂、エポキシ樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂、或いは酢酸ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂、(メタ)アクリレート系電離放射線硬化性樹脂等の硬化性樹脂等からなる接着剤を使用する。接着剤は、ロールコート、スプレーコート等の公知の塗工法で施せば良い。
【0048】
〔用途〕
本発明による化粧板の用途は、特に制限は無いが、壁、床、天井等の建築物内装材、扉、扉枠、窓枠等の建具、回縁、幅木等の造作部材、箪笥、キャビネット等の家具等に用いる。
【0049】
【実施例】
以下、本発明について、実施例及び比較例により更に説明する。
【0050】
〔実施例1〕
図1(A)の断面図で示す如き化粧板Dを、図2に示す第1の製造方法にて作製した。
坪量50g/m2 の原紙1Aに杉板目の木目模様を表現した絵柄インキ層2として、アクリル樹脂とニトロセルロースとの混合樹脂をバインダー樹脂とし、チタン白、黄鉛及びベンジジンイエローを着色剤主成分とするインキによる全ベタ層(着色隠蔽ベタ層)2Aと、ニトロセルロースをバインダー樹脂とし、カーボンブラック及び弁柄を着色剤主成分とするインキによる木目柄の柄パターン層2Bとをこの順に形成した上に、ポリエステルポリオール100質量部に1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート6質量部を添加して成る2液硬化型ウレタン樹脂塗液を塗工し架橋硬化させて固形分基準塗布量で8g/m2 の表面保護層3を形成した未含浸化粧紙Sa〔図2(B)の段階に該当〕に、含浸樹脂としてメラミンジアクリレートプレポリマーからなる熱硬化性且つ電離放射線硬化性樹脂塗料を裏面(非印刷面)側から60g/m2 含浸した〔図2(C)の段階に該当〕後、第1の硬化工程として電子線を200keV、50kGy(5Mrad)照射し指触乾燥にはなるが完全には硬化せず、熱硬化性を残した状態に硬化(半硬化)させて化粧工程紙Spとしてロール状に巻き取った〔図2(D)の段階に該当〕。
【0051】
この後、厚み30mmのパーチクルボードからなる基材4に、熱プレス法〔150℃、60秒、3MPa(約30kgf/cm2 )〕加熱加圧して、上記化粧工程紙の原紙中の含浸樹脂の未硬化分を熱硬化(第2の硬化工程)させるとともに、該化粧工程紙を基材に接着させてラミネートして、図1(A)の如き化粧板Dを得た。化粧材Dは、基材4上に、基材4側から原紙1、絵柄インキ層2(全ベタ層2Aと柄パターン層2Bからなる)及び表面樹脂層3からなる構成の化粧紙Sが、貼着、積層された構成である。
【0052】
〔実施例2〕
坪量60g/m2 の樹脂未含浸の原紙に、杉板目の木目模様を表現した絵柄インキ層として、アクリル樹脂とニトロセルロースとの混合樹脂をバインダー樹脂とし、チタン白、黄鉛及びベンジジンイエローを着色剤主成分とするインキによる全ベタ層(着色隠蔽ベタ層)と、ニトロセルロースをバインダー樹脂とし、カーボンブラック及び弁柄を着色剤主成分とし、更にシリコーン樹脂の撥液剤を添加してなる撥液インキによる木目導管溝柄の柄パターン層とをこの順に形成した後、ポリエステルポリオール100質量部に1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート6質量部を添加して成る2液硬化型ウレタン樹脂塗液を固形分基準で8g/m2 塗布し、前記柄パターン層2Bの直上部の塗料のみ撥液して凹部として架橋硬化させて、表面に柄パターン層に同調した凹凸模様を有する表面保護層を形成して未含浸化粧紙を用意した。
【0053】
上記未含浸化粧紙に、含浸樹脂としてメラミントリアクリレートプレポリマーからなる熱硬化性且つ電離放射線硬化性樹脂塗料を裏面(非印刷面)側から80g/m2 含浸した後、実施例1同様に、第1の硬化工程として電子線を200keV、50kGy(5Mrad)照射し半硬化させて化粧工程紙としてロール状に巻き取った。
この後、実施例1同様に、パーチクルボードからなる基材に、上記化粧工程紙を熱プレス法にて、接着させてラミネートするとともに第2の硬化工程として含浸樹脂の未硬化分を熱硬化させて、化粧板を得た。
【0054】
〔実施例3〕
表面保護層に凹凸模様が形成された実施例2同様の未含浸化粧紙の裏面側から、含浸樹脂としてメラミントリアクリレートプレポリマーからなる熱硬化性且つ電離放射線硬化性樹脂塗料を80g/m2 含浸した後、第1の硬化工程として180℃で2分加熱して、指触乾燥にはなるが完全には硬化せず、熱硬化性を残した状態に硬化(半硬化)させて化粧工程紙としてロール状に巻き取った。
この後、実施例2同様にパーチクルボードからなる基材に熱プレス後、第2の硬化工程として、今度は電子線を200keV、50kGy(5Mrad)化粧工程紙側から照射して含浸樹脂の未硬化分を硬化させるとともに、該化粧工程紙を基材に接着させてラミネートして、化粧板を得た。
【0055】
〔実施例4〕
坪量60g/m2 の樹脂未含浸の原紙に杉板目の木目模様を表現した絵柄インキ層として、アクリル樹脂とニトロセルロースとの混合樹脂をバインダー樹脂とし、チタン白、黄鉛及びベンジジンイエローを着色剤主成分とするインキによる全ベタ層(着色隠蔽ベタ層)と、ニトロセルロースをバインダー樹脂とし、カーボンブラック及び弁柄を着色剤主成分とし、更に平均粒径10μmのシリカ粒子を10質量%添加して成る艶消インキによる木目導管溝柄の柄パターン層とをこの順に形成した後、3官能ポリエステルアクリレートプレポリマー60質量部、トリメチロールプロパントリアクリレート10質量部、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート29質量部、及びシリコーンアクリレート1質量部から成る電離放射線(電子線)硬化性樹脂塗料を、固形分基準で10g/m2 塗布し、前記柄パターン層の直上部の塗料のみ滲み込ませて凹部として架橋硬化させて、表面に柄パターン層に同調した凹凸模様を有する表面保護層を形成して未含浸化粧紙を用意した。
上記未含浸化粧紙に、実施例2同様に、含浸樹脂としてメラミントリアクリレートプレポリマーからなる熱硬化性且つ電離放射線硬化性樹脂塗料を80g/m2 含浸後、第1の硬化工程として電子線を200keV、50kGy(5Mrad)照射し半硬化させて化粧工程紙としてロール状に巻き取った。
この後、30mm厚みのMDF(中密度繊維板)からなる基材に、実施例2同様に、上記化粧工程紙を熱プレス法にて、接着させてラミネートするとともに第2の硬化工程として含浸樹脂の未硬化分を熱硬化させて、化粧板を得た。
【0056】
〔実施例5〕
実施例2に於いて、原紙を坪量30g/m2 の原紙に変更した他は同様の全ベタ層(着色隠蔽ベタ層)及び柄パターン層からる絵柄インキ層と、凹凸模様を有する表面保護層とを形成した未含浸化粧紙を用意した。
この未含浸化粧紙に、含浸樹脂としてメラミンアクリレートプレポリマーからなる熱硬化性且つ電離放射線硬化性樹脂塗料を50g/m2 実施例2同様に含浸した後、第1の硬化工程として電子線を200keV、50kGy(5Mrad)照射し半硬化させて化粧工程紙としてロール状に巻き取った。
この後、30mm厚みのMDF(中密度繊維板)からなる基材に、実施例2同様に、上記化粧工程紙を熱プレス法にて、接着させてラミネートするとともに第2の硬化工程として含浸樹脂の未硬化分を熱硬化させて、化粧板を得た。
【0057】
〔比較例1〕
実施例1に於いて、含浸樹脂としてメラミンジアクリレートの替わりに単なる熱硬化性樹脂のメラミン樹脂を使用し、第1の硬化工程は180℃、2分間の加熱で行い、また第2の硬化工程は150℃で60秒間、3MPa(約30kgf/cm2 )の条件で熱プレスで行った以外は、実施例1と同様にして化粧板を得た。
【0058】
〔比較例2〕
実施例2に於いて、含浸樹脂としてメラミントリアクリレートの替わりに単なる熱硬化性樹脂のメラミン樹脂を使用し、第1の硬化工程は180℃、2分間の加熱で行い、また第2の硬化工程は150℃で60秒間、3MPa(約30kgf/cm2 )の条件で熱プレスで行った以外は、実施例2と同様にして化粧板を得た。
【0059】
〔比較例3〕
実施例3に於いて、含浸樹脂としてメラミントリアクリレートの替わりに単なる熱硬化性樹脂のメラミン樹脂を使用し、第1の硬化工程は180℃、2分間の加熱で行い、また第2の硬化工程は150℃で60秒間、3MPa(約30kgf/cm2 )の条件で熱プレスで行った以外は、実施例3と同様にして化粧板を得た。
【0060】
〔比較例4〕
実施例4に於いて、含浸樹脂としてメラミントリアクリレートの替わりに単なる熱硬化性樹脂のメラミン樹脂を使用し、第1の硬化工程は180℃、2分間の加熱で行い、また第2の硬化工程は150℃で60秒間、3MPa(約30kgf/cm2 )の条件で熱プレスで行った以外は、実施例4と同様にして化粧板を得た。
【0061】
〔比較例5〕
実施例5に於いて、含浸樹脂としてメラミンアクリレートの替わりに単なる熱硬化性樹脂のメラミン樹脂と熱可塑性樹脂との混合樹脂を使用し、第1の硬化工程は180℃、2分間の加熱で行い、また第2の硬化工程は150℃で60秒間、3MPa(約30kgf/cm2 )の条件で熱プレスで行った以外は、実施例5と同様にして化粧板を得た。
【0062】
〔性能評価〕
耐引掻性として鉛筆凹み試験及び引っ掻き硬度試験を行い、また、耐ブロッキング性、基材密着性も評価した。結果は表1に示す。なお、各性能は次の様にして評価した。
【0063】
(1) 鉛筆凹み試験:鉛筆9H、荷重500gで、JIS K 5400による鉛筆引っ掻き試験機にて化粧板表面を引っ掻き、表面に発生した凹みの深さを測定して評価した。
(2) 引っ掻き硬度試験:JAS特殊合板引っ掻き硬度試験により化粧板表面を引っ掻き、表面に発生した凹みの深さを測定して評価した。
(3) 耐ブロッキング性:含浸樹脂が半硬化状態である化粧工程紙2枚を、表裏を同じ向きで重ねて、その上から0.1MPa(約1000gf/cm2 )の荷重を加えて、40℃で24時間放置後、室温20℃まで冷却し、荷重を開放して、2枚の化粧工程紙がブロッキングせずに剥がれるか否かで評価した。
(4) 基材密着性:カッタナイフで基材に達するまでの切り込みをX字状に入れて、切り込みのクロス部分に、セロハン粘着テープ〔ニチバン株式会社製、「セロテープ」(登録商標)24mm幅、産業用〕を貼着し、その後、勢い良く剥がして、基材上の化粧紙がテープと共に剥がれるか否かで評価した。
【0064】
【表1】
【0065】
〔結果考察〕
耐引掻性は、全実施例及び、比較例5を除く各比較例は全て、表面に発生した凹みの深さが5μm以下と良好であった。比較例5のみ、凹み深さが10μm以上と不良であった。
一方、巻取時のブロッキング発生に関する耐ブロッキング性は、全実施例が良好であった。しかし、比較例は、比較例5を除く各比較例に於いて、2枚の化粧工程紙を剥がそうとしたところ、2枚の化粧工程紙の表裏が接着して少し破れてしまい、巻取り不可能なレベルと判定した。
また、基材密着性は、比較例3のみ基材と化粧紙間で層間剥離し不良となった他は、他の比較例及び全実施例ともに、その様な層間剥離無く良好であった。
以上の結果、耐引掻性、耐ブロッキング性、及び基材密着性の全てが良好なのは、実施例1〜5のみであり、各比較例は全てを満足しなかった。
【0066】
【発明の効果】
(1) 本発明の化粧板によれば、耐引掻性を良好にでき、鉛筆等によって表面に凹みが発生し難い。また、耐スチールウール擦傷性や耐摩耗性も良好にできる。
【0067】
(2) 本発明の化粧板の製造方法によれば、上記性能の化粧板が容易に得られる。しかも、化粧板製造過程で作製される、含浸樹脂が半硬化の化粧工程紙は耐ブロッキング性を有する為に巻取保存が可能であるので、生産工程の自由度が広げられる。その結果、製造し易い製造方法となる。また、含浸樹脂に遅硬性の熱硬化と速硬性の電離放射線硬化を組み合わせる事により、不完全硬化の程度を制御し易くする事もできる。また、完全硬化物の硬度も高くできる。また、完全硬化した含浸樹脂と表面保護層との両硬化樹脂の相乗効果によって、良好なる耐引掻性が得られる事になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の化粧板の二形態を例示する断面図。
【図2】本発明の化粧板の製造方法を概念的に説明する断面図。
【図3】参考としての別の化粧板の製造方法を概念的に説明する断面図。
【符号の説明】
1 樹脂含浸後で完全硬化状態の原紙
1A 樹脂含浸前の原紙
1B 樹脂含浸後で未硬化状態の原紙
1C 樹脂含浸後で半硬化状態の原紙
2 絵柄インキ層
2A 全ベタ層(着色隠蔽ベタ層等)
2B 柄パターン層
3 表面保護層
4 基材
5 接着剤層
C1 硬化手段(加熱及び/又は電離放射線)
C2 硬化手段(加熱及び/又は電離放射線)
D 化粧材
S 化粧紙
Sa 未含浸化粧紙
Sp 化粧工程紙
Claims (7)
- 原紙の一方の面に熱硬化性樹脂又は電離放射線硬化性樹脂の硬化物から成る表面保護層が硬化形成され、他方の面に含浸樹脂として熱及び電離放射線の両方の作用にて完全硬化する樹脂が含浸され硬化されて成る化粧紙が、基材上に前記原紙の他方の面側が基材表面側を向く様にして前記含浸樹脂により積層接着されて成る、化粧板。
- 熱及び電離放射線の両方の作用にて完全硬化する樹脂がメラミン(メタ)アクリレート系のプレポリマー乃至はオリゴマーである、請求項1記載の化粧板。
- 熱及び電離放射線の両方の作用にて完全硬化する樹脂がアクリロイル基乃至はメタクリロイル基以外のビニル基等の電離放射線重合性不飽和基で変性した変性メラミン化合物である、請求項1記載の化粧板。
- (A)樹脂含浸前の原紙の表面側に熱硬化性樹脂又は電離放射線硬化性樹脂の硬化物から成る表面保護層が形成されて成る化粧紙の前記原紙中に、含浸樹脂として熱及び電離放射線の両方の作用にて完全硬化する樹脂を含浸させる含浸工程、
(B)該含浸樹脂を加熱及び/又は電離放射線照射によって、該含浸樹脂が指触乾燥状態にはなるが、完全には硬化反応が完了し無い程度に硬化させて得た化粧工程紙を巻き取る第1の硬化工程、
(C)前記巻き取った化粧工程紙を繰り出し、該化粧工程紙の前記樹脂含浸側である原紙側が基材側を向く様にして基材上に載置して、加熱加圧する積層工程、
(D)加熱及び/又は電離放射線照射により、含浸樹脂の未硬化分を完全に硬化させるとともに上記化粧工程紙を該含浸樹脂により基材に接着させる第2の硬化工程、をこの順に行う、化粧板の製造方法。 - (A)樹脂含浸前の原紙の表面側に熱硬化性樹脂又は電離放射線硬化性樹脂の硬化物から成る表面保護層が形成されて成る化粧紙の前記原紙中に、含浸樹脂として熱及び電離放射線の両方の作用にて完全硬化する樹脂を含浸させる含浸工程、
(B)該含浸樹脂を電離放射線照射によって、該含浸樹脂が指触乾燥状態にはなるが、完全には硬化反応が完了し無い程度に硬化させて得た化粧工程紙を巻き取る第1の硬化工程、
(C)前記巻き取った化粧工程紙を繰り出し、該化粧工程紙の前記樹脂含浸側である原紙側が基材側を向く様にして基材上に載置して、加熱加圧することにより含浸樹脂の未硬化分を完全に硬化させるとともに上記化粧工程紙を含浸樹脂により基材に接着させる積層工程、をこの順に行う、化粧板の製造方法。 - 熱及び電離放射線の両方の作用にて完全硬化する樹脂がメラミン(メタ)アクリレート系のプレポリマー乃至はオリゴマーである、請求項4又は5に記載の化粧板の製造方法。
- 熱及び電離放射線の両方の作用にて完全硬化する樹脂がアクリロイル基乃至はメタクリロイル基以外のビニル基等の電離放射線重合性不飽和基で変性した変性メラミン化合物である、請求項4又は5に記載の化粧板の製造方法。
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