JP4498505B2 - 射出成形同時絵付用シート及びその製造方法 - Google Patents

射出成形同時絵付用シート及びその製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、層間密着性が良いラミネートタイプの射出成形同時絵付用シートに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来から、樹脂成形物の表面を絵付した絵付成形品が各種用途で使用されている。例えば、特公昭50−19132号公報、特公昭43−27488号公報等に開示の射出成形同時絵付方法等では、射出成形同時絵付用シートを射出成形の雌雄両型間に配置した後、溶融樹脂をキャビティ内に射出充填することで、樹脂成形物の成形と同時にその表面に射出成形同時絵付用シートを接着積層して、該シートで絵付された絵付成形品を得る方法を開示している。
【0003】
そして、得られる絵付成形品に塗装感や表面艶等の意匠性を付与して高級感を出すとともに十分な耐擦傷性、耐候性等の表面物性も得る為には、表面シートには、透明性に優れたポリメチルメタクリレート(PMMA)等の透明アクリル樹脂シートを使用して、その裏面に装飾層を印刷形成する一方、樹脂成形物の色を隠したり、射出成形型で真空成形する際の成形性を調整したりする等の為に、樹脂成形物側には適宜着色不透明とする基材シートとしてABS樹脂シート等を、熱ラミネート法やドライラミネート法等によって積層した構成の射出成形同時絵付用シート等が使用されてきた(特開平11−91041号公報等参照)。なお、基材シートにABS樹脂シートを用いた構成は、従来、射出成形樹脂として射出成形同時絵付にて良く使用されているABS樹脂(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン共重合体)に対する射出成形同時絵付用シートの密着性を考慮した構成である。
【0004】
また、特に最近では、射出成形樹脂として特にポリプロピレン等の安価なポリオレフィン系樹脂の使用が望まれる事が多い。そこでこの様な場合、基材シートにはABS樹脂シートに代えて、ポリオレフィン系樹脂シートを使用した構成の射出成形同時絵付用シートも試みられてきた。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
ところが、上記した様な、表面シートに透明アクリル樹脂を使用し、基材シートにABS樹脂又はポリオレフィン系樹脂を使用した構成に於いては、それぞれ、射出成形樹脂がABS樹脂又はポリオレフィン系樹脂の場合には、射出成形同時絵付用シートとの樹脂成形物との密着性は良くなるにしても、射出成形同時絵付用シートの層内での密着性の点においては、間に装飾層を挟んだ表面シートと基材シートとの密着性(層間密着性)が必ずしも良いものでは無かった。
【0006】
そこで、本発明の課題は、ラミネートタイプの射出成形同時絵付用シートにおいて、透明アクリル樹脂の表面シートと、間に装飾層を挟んで、ABS樹脂又はポリオレフィン系樹脂からなる基材シートとの層間密着性を良くする事である。
【0007】
【問題を解決するための手段】
そこで、上記課題を解決すべく、本発明の射出成形同時絵付用シート及びその製造法では、図1の断面図で示す射出成形同時絵付用シートSの如く、ラミネートタイプの射出成形同時絵付用シートにおいて、透明アクリル樹脂の表面シート1の裏面に、バインダーの樹脂がアクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合物又はアクリルウレタン樹脂から成り、これに着色剤が添加されて成る装飾層2を形成し、次いで該装飾層上に2液硬化型ウレタン樹脂の硬化物から成る接着剤層3を形成し、次いで該接着剤層上に表面に活性水素含有極性官能基を有するポリオレフィン系樹脂から成る基材シート4を積層して成る、射出成形同時絵付用シートの製造方法とした。また、ラミネートタイプの射出成形同時絵付用シートにおいて、透明アクリル樹脂の表面シートの裏面に、バインダーの樹脂がアクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合物又はアクリルウレタン樹脂から成り、これに着色剤が添加されて成る装飾層を形成し、次いで該装飾層上に2液硬化型ウレタン樹脂の硬化物から成る接着剤層を形成し、次いで該接着剤層上に表面に活性水素含有極性官能基を有するABS樹脂から成る基材シートを積層して成る、射出成形同時絵付用シートの製造方法とした。また、前記基材シートが、コロナ処理を行って活性水素含有極性官能基を生成させた基材シートである射出成形同時絵付用シートの製造方法とした。
【0008】
この様に、ラミネ−ト後に最表面層となる表面シート1に透明アクリル樹脂を採用し、一方、樹脂成形物に接する最裏面層となる基材シート4にはABS樹脂を採用し、これら層間に設ける装飾層2にはバインダーの樹脂がアクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合物又はアクリルウレタン樹脂から成り、これに着色剤が添加されて成る層として、そして、該装飾層2と基材シート4間には、2液硬化型ウレタン樹脂の硬化物から成る接着剤層3を設け、且つ、ABS樹脂から成る基材シート4は、その表面(「表面」とは接着剤層3に接する側の面。図1で上側。)が、活性水素含有極性官能基を有する基材シートとする事によって、この射出成形同時絵付用シートを用いて得られる絵付成形品に優れた透明性及び表面物性を付与できる上、特にABS樹脂(基材シートがABS樹脂の形態の場合)の樹脂成形物に密着良くラミネートでき、しかも射出成形同時絵付用シートの各層の密着性(層間密着性)も良好にできる様になる。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を説明する。
【0010】
〔表面シート〕
表面シート1は、透明アクリル樹脂からなる透明な樹脂シートである。透明アクリル樹脂としては、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート−エチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート−スチレン共重合体等のアクリル樹脂〔但し、(メタ)アクリレートとは、アクリレート又はメタクリレートの意味〕を単体又は2種以上の混合物として用いる。表面シートに良好な耐擦傷性を付与する為に、透明アクリル樹脂には、滑剤として炭化水素系滑剤、脂肪酸系滑剤等の滑剤を添加すると好ましい。但し、滑剤を添加し過ぎると射出成形同時絵付時に型内でシートが滑って、シワ、歪み等を生じ易くなる。その為、滑剤は表面シートの動摩擦係数が0.2〜0.9になる様に添加すると良い。添加量でいうと0.1〜0.5質量%程度である。また、表面シートに耐候(光)性を付与する為には、表面シート中に、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、微粒子酸化セリウム等の紫外線吸収剤、及び/又は、ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤等の光安定剤を添加することが好ましい。紫外線吸収剤、及び光安定剤の添加量は、いずれも通常0.1〜5質量%程度とする。
なお、表面シートは単層の他、2層以上の積層体の透明アクリル樹脂シートとして用いても良い。また、透明とは通常は無着色透明だが、必要に応じ適宜公知の着色剤の添加によって着色透明としても良い。表面シートに透明アクリル樹脂を使用し、装飾層をその下層とする事で、透明アクリル樹脂による優れた透明性によって塗装感や表面艶等の高級感溢れる意匠性を付与出来る事になる。また、ポリオレフィン系樹脂等にくらべて、耐候性及び耐擦傷性等の表面物性も良好にできる。
【0011】
なお、表面シートの厚みは特に制限は無く、通常は20〜200μm程度とする。但し、上記の如く、耐候性、表面の耐摩耗性等の点から、表面シートの厚みは30μm以上、より好ましくは50μm以上とするのが良い。
【0012】
〔装飾層〕
装飾層2は、印刷等で例えば絵柄等を表現した層である。装飾層2は、そのバインダーの樹脂に特定の樹脂を使用し、着色剤を含有する層とする。装飾層2のバインダーの樹脂としては、アクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合物、或いはアクリルウレタン樹脂を使用する。この様な特定樹脂を使用する事で、装飾層を表面シートと後述の接着剤層間に密着良く形成できる。
なお、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体とアクリル樹脂との混合物の組み合わせは、アクリル樹脂はアクリル樹脂の表面シートとの密着性向上に寄与し、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体は印刷適性や成形適性向上に寄与する。また、アクリルウレタン樹脂はその単体でそれら適性を満足させる事ができる。
【0013】
上記塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体としては、通常、酢酸ビニル含有量が5〜20質量%程度、平均重合度350〜900程度のものが用いられる。また、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体は、必要に応じ、更にマレイン酸、フマル酸等のカルボン酸を共重合させたものでも良い。
【0014】
上記アクリル樹脂としては、例えば、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリブチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート−スチレン共重合体等のアクリル樹脂、或いは、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等と、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート等の分子中に水酸基を有する(メタ)アクリル酸エステルとを共重合させて得られるアクリルポリオール等のアクリル樹脂を、単体又は2種以上混合して使用する。なお、(メタ)アクリレートとはアクリレート又はメタクリレートの意味である。
アクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合比は、アクリル樹脂/塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体=1/9〜9/1(質量比)程度である。
【0015】
上記アクリルウレタン樹脂としては、2液硬化型のアクリルウレタン樹脂、或いは熱可塑性のアクリルウレタン樹脂等を使用すれば良い。
【0016】
例えば、2液硬化型のアクリルウレタン樹脂は、アクリルポリオールを主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするウレタン樹脂である。
アクリルポリオールとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート−2ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体、オクチル(メタ)アクリレート−エチルヘキシル(メタ)アクリレート−2ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート−ブチル(メタ)アクリレート−2ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート−スチレン共重合体等を単体又は2種以上混合して使用する。
また、イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネートが用いられる。例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、或いは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(乃至は脂環式)イソシアネート、或いはまた、上記各種イソシアネートの付加体、又は多量体を用いる事もできる。例えば、トリレンジイソシアネートの付加体、トリレンジイソシアネート3量体(trimer)等がある。
また、熱可塑性のアクリルウレタン樹脂は、例えば2価のアクリルポリオールと2価のイソシアネートとをウレタン結合させて得られる様な、線状高分子からなる。
【0017】
なお、装飾層のバインダーの樹脂としては、副成分の範囲内で、必要に応じて、適宜その他の樹脂、例えば、熱可塑性ポリエステル樹脂、熱可塑性や2液硬化型等の(アクリルウレタン樹脂以外の)ウレタン樹脂等の樹脂を併用しても良い。
【0018】
装飾層2は、上記特定樹脂をバインダーの樹脂として、着色剤が添加された樹脂液を使用して形成することができる。該樹脂液は、バインダーの樹脂、着色剤、それに通常は希釈溶剤等からなる液状組成物であり、例えば、装飾層を印刷形成する場合は、インキであり、塗工形成する場合は塗液である。
【0019】
上記、着色剤としては、公知の染料や顔料で良く、例えばチタン白、カーボンブラック、弁柄、黄鉛、コバルトブルー等の無機顔料、アニリンブラック、フタロシアニンブルー、イソインドリノン、キナクリドン等の有機顔料、アルミニウム箔粉等の金属顔料、二酸化チタン被覆雲母等の真珠光沢(パール)顔料、その他染料等を用いる事ができる。
【0020】
この様に、装飾層2は、上記特定樹脂をバインダーの樹脂として、着色剤を含有する層であるが、装飾層としては、これ以外の点に於いては、基本的には特に制限は無い。
なお、装飾層の絵柄は、木目、石目、布目、砂目、皮絞模様、幾何学模様、文字、記号、全面ベタ等と任意である。
【0021】
なお、装飾層2は、通常、樹脂液として印刷インキ又は塗料で、公知の印刷又は塗工法(塗工法は全ベタ柄のとき)により形成するが、通常は、装飾層2は表面シート1に対して樹脂液を施して形成する。そして、装飾層2が形成された表面シート1を、間に接着剤層3を介して、特定の基材シート4と、ドライラミネーション法等の公知の積層法で積層すれば、本発明の射出成形同時絵付用シートが得られる。
【0022】
なお、装飾層としては、木目柄等による装飾目的の層の他に、銀粉等の導電性粉末をバインダー中に分散させた、導電性層等の機能層でも良い。
【0023】
〔接着剤層〕
接着剤層3は、装飾層2と基材シート4との間に介在しこれらの層間密着性を向上させる。この接着剤層3は、本発明では2液硬化型ウレタン樹脂の硬化物として形成する。
【0024】
2液硬化型ウレタン樹脂は、ポリオールを主剤とし、イソシアネートを架橋剤(硬化剤)とするウレタン樹脂である。ポリオールとしては、分子中に2個以上の水酸基を有するもので、例えばポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、アクリルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリウレタンポリオール等が用いられる。また、イソシアネートとしては、分子中に2個以上のイソシアネート基を有する多価イソシアネートが用いられる。例えば、2,4−トリレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、或いは、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート等の脂肪族(乃至は脂環式)イソシアネート、或いはまた、上記各種イソシアネートの付加体、又は多量体を用いる事もできる。例えば、トリレンジイソシアネートの付加体、トリレンジイソシアネート3量体(trimer)等がある。
【0025】
なお、接着剤層は、上記2液硬化型ウレタン樹脂を用いた接着剤をインキ又は塗液として、公知の印刷法又は塗工法で形成すれば良い。接着剤層の厚みは特に制限はないが、例えば5〜20μm程度である。
そして、表面シートと基材シートとを間に、装飾層及びこの接着剤層が挟まれた状態で積層後、接着剤層の2液硬化型ウレタン樹脂の硬化反応を完結させて接着剤層を硬化物として、その最終接着力を得れば良い。
【0026】
なお、接着剤層の形成に於いて、接着剤を施す面は、基材シート面、或いは、装飾層形成済みの表面シートの該装飾層面であるが、或いは、これら両方でも良い。接着剤を施す面は、密着性の点で通常は、基材シート面である。
【0027】
〔基材シート〕
基材シート4としては、表面に活性水素含有極性官能基を有するポリオレフィン系樹脂から成る樹脂シート、又は、表面に活性水素含有極性官能基を有するABS樹脂から成る樹脂シートを使用する。
【0028】
ポリオレフィン系樹脂シート又はABS樹脂シートの表面に、活性水素含有極性官能基を有する様にするには、該表面にコロナ放電処理、プラズマ処理、オゾン吹付処理等を行い、水酸基、カルボキシル基、アミノ基等の活性水素含有極性官能基を表面に生成させれば良い。なお、活性水素含有極性官能基を有する面は、射出成形同時絵付用シートの層間密着性を向上させる点で、少なくとも接着剤層側の面であれば良い。しかし、他方の面、すなわち、樹脂成形物の被着体に接する側となる裏面側も、該樹脂成形物との密着性向上が望まれる場合には該樹脂成形物の樹脂に応じて適宜、活性水素含有極性官能基を有する面としても良い。
そして、基材シート表面の活性水素含有極性官能基は、接着剤層中のイソシアネート基と反応してウレタン結合等の化学結合を生じて、接着剤層を基材シートに強固に接着させる事ができる。
【0029】
なお、活性水素含有極性官能基を有する様にした表面は、その濡れ指数が0.4mN/cm2 (40dyn/cm2 )以上となる様にすると接着剤層と基材シートとの密着性がより良い。
【0030】
射出成形同時絵付用シートの最裏面層となる基材シートにポリオレフィン系樹脂を使用することで、射出成形同時絵付用シートを、ポリオレフィン系樹脂からなる樹脂成形物に密着良くラミネ−トできる様になり、また、基材シートにABS樹脂を使用することで、射出成形同時絵付用シートを、ABS樹脂からなる樹脂成形物に密着良くラミネ−トできる様になる。
【0031】
なお、上記ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン(低密度、又は高密度)、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体等の高結晶質の非エラストマーポリオレフィン系樹脂、或いは各種のオレフィン系熱可塑性エラストマーが用いられる。これらのポリオレフィン系樹脂は1種類のみの単独使用でも良いが、或いは2種類以上を併用しても良い。オレフィン系熱可塑性エラストマーとしては、例えば下記のものが使用できる。
【0032】
(1)特公平6−23278号公報記載の、(A) ソフトセグメントとして、数平均分子量Mnが25,000以上、且つ、質量平均分子量Mwと数平均分子量Mnとの比Mw/Mn≦7の沸騰ヘプタンに可溶なアタクチックポリプロピレン10〜90質量%と、(B) ハードセグメントとして、メルトインデックスが0.1〜4g/10分の沸騰ヘプタン不溶性のアイソタクチックポリプロピレン90〜10質量%、との混合物からなる軟質ポリプロピレン。
なお、特に成形性を良好にし、印刷適性(見当精度)とも両立させるには、アイソタクチックポリプロピレンとアタクチックポリプロピレンとの混合割合は、アタクチックポリプロピレンの質量比で下限は5質量%以上、上限は50質量%以下、より好ましくは40質量%以下が好ましい。
【0033】
(2)エチレン−プロピレン−ブテン共重合体樹脂からなる熱可塑性エラストマー。ここで、そのブテンとして、1−ブテン、2−ブテン、イソブチレンの3種の構造異性体のいずれも用いることができる。共重合体としては、ランダム共重合体で、非晶質の部分を一部含む上記エチレン−プロピレン−ブテン共重合体の好ましい具体例としては次の(i) 〜(iii) が挙げられる。
(i) 特開平9−111055号公報記載のもの。これは、エチレン、プロピレン及びブテンの三元共重合体によるランダム共重合体である。単量体成分の質量比はプロピレンが90質量%以上とする。メルトフローレートは、230℃、2.16kgで1〜50g/10分のものが好適である。そして、このような三元ランダム共重合体100質量部に対して、燐酸アリールエステル化合物を主成分とする透明造核剤を0.01〜50質量部、炭素数12〜22の脂肪酸アミド0.003〜0.3質量部を熔融混練してなるものである。
(ii)特開平5−77371号公報記載のもの。これは、エチレン、プロピレン、1−ブテンの三元共重合体であって、プロピレン成分含有率が50質量%以上の非晶質重合体20〜100質量%に、結晶質ポリプロピレンを80〜0質量%添加してなるものである。
(iii) 特開平7−316358号公報記載のもの。これは、エチレン、プロピレン、1−ブテンの三元共重合体であって、プロピレン及び/又は1−ブテンの含有率が50質量%以上の低結晶質重合体20〜100質量%に対して、アイソタクチックポリプロピレン等の結晶質ポリオレフィン80〜0質量%を混合した組成物に対して、N−アシルアミノ酸アミン塩、N−アシルアミノ酸エステル等の油ゲル化剤を0.5質量%添加してなるものである。
【0034】
なお、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体樹脂は、単独で用いても良いし、上記(i) 〜(iii) に必要に応じ更に他のポリオレフィン系樹脂を混合して用いても良い。
【0035】
(3)特公昭53−21021号公報記載の如き、(A) ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン等のオレフィン重合体(結晶性高分子)をハードセグメントとし、これに(B) 部分架橋したエチレン−プロピレン共重合体ゴム、不飽和エチレン−プロピレン−非共役ジエン三元共重合体ゴム等のモノオレフィン共重合体ゴムをソフトセグメントとし、これらを均一に配合し混合してなるオレフィン系エラストマー。なお、モノオレフィンゴム/オレフィン重合体=50/50〜90/10(質量比)の割合で混合する。
【0036】
(4)特公昭53−34210号公報等に記載の如き、(B) 未架橋モノオレフィン共重合体ゴム(ソフトセグメント)と、(A) オレフィン系共重合体(結晶性、ハードセグメント)と架橋剤とを混合し、加熱し剪断応力を加えつつ動的に部分架橋させてなるオレフィン系エラストマー。なお、(B) モノオレフィンゴム/(A) オレフィン系共重合体=60/40〜80/20(質量比)である。
【0037】
(5)特公昭56−15741号公報等に記載の如き、(A) アイソタクチックポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体、プロピレン−ブテン−1共重合体等のペルオキシドと混合・加熱すると分子量を減じ、流動性を増すペルオキシド分解型オレフィン重合体(ハードセグメント)と、(B) エチレン−プロピレン共重合体ゴム、エチレン−プロピレン−非共役ジエン三元共重合体ゴム等のペルオキシドと混合・加熱することにより、架橋して流動性が減じるペルオキシド架橋型モノオレフィン共重合体ゴム(ソフトセグメント)、(C) ポリイソブチレン、ブチルゴム等のペルオキシドと混合・加熱しても架橋せず、流動性が不変の、ペルオキシド非架橋型炭化水素ゴム(ソフトセグメント兼流動性改質成分)、及び(D) パラフィン系、ナフテン系、芳香族系等の鉱物油系軟化剤、とを混合し、有機ペルオキシドの存在下で動的に熱処理してなるオレフィン系エラストマー。なお、(A) が90〜40質量部、(B) が10〜60質量部で、(A) +(B) =100質量部として、これに、(C) 及び/又は(D) が5〜100質量部の配合比となる。
【0038】
(6)特開平2−139232号公報に記載の如き、エチレン−スチレン−ブチレン共重合体からなるオレフィン系熱可塑性エラストマー。
【0039】
(7)活性水素含有極性官能基として水酸基又は/及びカルボキシル基を持たせた、上記(1)から(6)のオレフィン系熱可塑性エラストマー。例えば、エチレン−ビニルアルコール共重合体等のグラフト重合で水酸基を、また、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の共重合体でカルボキシル基を導入したオレフィン系熱可塑性エラストマーを用いる。これら水酸基、カルボキシル基はどちらか一方、又は両方を併用してもよい。
【0040】
基材シートの表面に活性水素含有極性官能基を持たせるには、上記(7)の様に、樹脂自体に活性水素含有極性官能基を持たせても良く、この様な場合には、前記したコロナ放電処理やプラズマ処理等を適宜省略しても良い。
【0041】
ポリオレフィン系樹脂の基材シートは、延伸シート、未延伸シートのいずれでも良いが、成形性の点では未延伸シートの方が好ましい。
ポリオレフィン系樹脂の基材シートは、Tダイ押出法等の公知の成膜法によって既にシートとした物を使用しても良いが、表面シートに装飾層、接着剤層等を形成した積層シートに対して、Tダイ押出法等によってシートとして成膜と同時に積層しても良い(この場合には、表面シート側に接着剤層を予め形成しておき、また、ポリオレフィン系樹脂は樹脂自体に活性水素含有極性官能基を有する樹脂を使用するか、或いは溶融押出しされたポリオレフィン系樹脂シートの接着面に、オゾン吹付処理等を施して活性水素含有極性官能基を生成させる)。なお、前者の場合は、ドライラミネーション等の公知の積層法で積層すれば良い。
【0042】
また、ポリオレフィン系樹脂の基材シートとする場合、そのポリオレフィン系樹脂の種類は、射出成形同時絵付用シートを積層する樹脂によって適宜選択すると良い。例えば、積層する樹脂が、ポリプロピレン系の場合はポリプロピレンを使用し、ポリエチレン系の場合はポリエチレンを使用したりするのが好ましい。ポリエチレンやポリプロピレンを採用した場合は、基材シートの入手容易性、汎用性、低コスト等の利点が得られる。
また、オレフィン系熱可塑性エラストマーを使用した場合には、射出成形同時絵付用シート全体としての必要な厚みを、高価なアクリル樹脂の表面シートで出すよりかは、低コストとなり、また、撓りやすくハンドリングも容易となる。また、オレフィン系熱可塑性エラストマーは、結晶質ポリオレフィン樹脂からなるハードセグメントとゴム(エラストマー)成分からなるソフトセグメントとからなる為、結晶質ポリオレフィン樹脂(高密度ポリエチレン、アイソタクチックポリプロピレン等)の基材シートの場合に起き易い、ネッキング(局所的に不均一にシートの伸びが集中すること)を生じ難く、成形性の点でも有利である。
【0043】
一方、基材シートに用いるABS樹脂としては、従来公知のABS樹脂を使用することができる。
【0044】
ポリオレフィン系樹脂又はABS樹脂からなる基材シートには、更に必要に応じ、難燃剤、滑剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤、充填剤等の各種の添加剤を添加しても良い。
【0045】
例えば、難燃剤としては水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム等が用いられる。紫外線吸収剤としては、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系等が用いられる。また、光安定剤としては、ヒンダードアミン系ラジカル捕捉剤等が用いられる。
また、充填剤としては、例えば、マイカ、タルク、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、シリカ、アルミナ、カオリナイト等の体質顔料等が用いられる。
【0046】
また、着色剤を添加することで、基材シートに着色隠蔽性を付与して、射出成形同時絵付用シートを積層する樹脂の色を隠蔽し且つ装飾層の下地色を整える事もできる。着色剤には、前述装飾層のところで述べた如き、公知の着色剤を使用すれば良い。
【0047】
なお、基材シートは、2層等の複層構成としても良い。例えば、2層とする場合、直接2層を熱融着で積層しても良いが、層間に接着層を介して積層しても良い。接着層には前述接着剤層で述べた2液硬化型ウレタン樹脂等が使用できる。また。層間に接着層を介在させずに2層等と複層構成とするには、例えば、Tダイによる共押出法によって成膜と同時に積層すれば良い。接着層を介して積層するには、例えば、ドライラミネーション法で積層すれば良い。
【0048】
また、例えばポリオレフィン系樹脂の基材シートを2層構成とする場合では、表面側(接着剤層に接する側)のポリオレフィン系樹脂のシートを樹脂自体が活性水素含有極性官能基を有する樹脂を使用して、他方の側は樹脂自体に活性水素含有極性官能基を持たせない樹脂を使用する組み合わせも可能である。これによって、基材シートをより低コストにできる。
【0049】
また、ポリオレフィン系樹脂やABS樹脂からなる基材シートを2層構成とすることで、例えば、樹脂成形物側の基材シートは着色隠蔽層として専ら着色隠蔽付与、成形性、及び射出成形同時絵付けの為に必要な厚さを確保した層として使用し、表側の基材シートは、着色剤等を添加せず、専ら接着剤層との密着を確保した層として使用する事も出来、コストを最小限にして且つ複数の要求物性を満たすことができる。そして、上記隠蔽性によって、射出成形樹脂の色に左右されずに、絵付けによる色調表現を安定化することもできる。
【0050】
なお、基材シートの厚みは、用途、及び表面シートの厚さ(射出成形同時絵付用シート全体としの必要厚さ)等によるが、通常は50μm〜2mm程度とする。また、該厚みは、射出成形同時絵付用シート全体の総厚が200μm以上となる様するのが、ハンドリングの容易さ等の点で好ましい。また特に、オフライン予備成形を行う場合には、総厚は400μm以上とすることが好ましい。これらの為に、該厚みは、通常は表面シートの厚みよりも厚くする。
また、射出成形同時絵付用シート全体としての必要な厚みは、高価なアクリル樹脂の表面シートよりは、この基材シートで出すのが、より低コストとなり好ましい。
【0051】
〔射出成形同時絵付方法〕
ここで、上述した本発明の射出成形同時絵付用シートの使用用途である、射出成形同時絵付方法について、一応説明しておく。ここでの射出成形同時絵付方法は、ラミネ−ト形態となり、特公昭50−19132号公報、特公昭43−27488号公報等に記載されるように、射出成形同時絵付用シートを、一対の型の間に配置した後、両型を型締めし、両型で形成されるキャビティ内に流動状態の樹脂を射出し充填して固化させて、樹脂成型物の成形と同時にその表面に射出成形同時絵付用シートを積層して、樹脂成形物を絵付けする方法である。
【0052】
なお、基本的には、射出成形同時絵付方法としては、従来公知の各種形態をとり得る。例えば、射出成形同時絵付用シートの予備成形を行う形態、或いは行わない形態。また、射出成形同時絵付用シートの予熱を行う形態、行わない形態。なお、予備成形時には通常は射出成形同時絵付用シートは予熱する。但し、なかでも、予備成形をオフラインで行う形態が、本発明の射出成形同時絵付用シートの場合は、特に好適である。
【0053】
なお、もちろんの事だが、射出成形同時絵付用シートの絞りが大きい場合は、予備成形を行うのが好ましい。一方、射出成形同時絵付用シートの絞りが少ない場合は、射出される流動状態の樹脂の樹脂圧で該シートを成形しても良い。この際、絞りが浅ければ、予備成形無しで樹脂射出と同時に型内に充填される流動状態の樹脂の樹脂圧で射出成形同時絵付用シートを成形しても良い。また、樹脂圧で射出成形同時絵付用シートを成形する場合でも、該シートは予熱せずに射出樹脂の熱を利用しても良い。また、射出成形同時絵付用シートの予備成形は、通常は、射出成形型を真空成形型と兼用して行うが、型間に該シートを供給する前に、型外部で別の真空成形型で該シートを真空成形する様な予備成形(オフライン予備成形)でも良い。但し、予備成形は、射出成形型を真空成形型と兼用して行う形態が効率的で且つ精度良く積層できる点で好ましい。しかし、予備成形済み射出成形同時絵付用シートを予め別の場所で纏めて製造しておく場合等では、予備成形は、射出成形型とは別の型で行うオフライン予備成形の形態が好ましい。特にこのオフライン予備成形による形態は、前述の如く本発明の射出成形同時絵付用シートの形状保持性を活かせる一形態として好適である。なお、本発明に於いて真空成形とは真空圧空成形も包含する。
【0054】
ところで、図2は射出成形同時絵付方法を或る一形態で説明する概念図である。図2に示す形態では、射出成形型は別の型である真空成形型で、射出成形同時絵付用シートを加熱し軟化させて予備成形した後に、成形された射出成形同時絵付用シートを射出成形型に挿入後、型締めして樹脂を射出する、オフラン予備成形による形態である。そこで次に、図2を用いて、この形態の射出成形同時絵付方法を更に説明する。
【0055】
先ず、図2(A)の如く、型面に吸引孔31等の吸引手段を有する真空成形型Mvを用いて、ヒータ32で加熱軟化させた射出成形同時絵付用シートを真空成形により予備成形する。なお、真空成形型Mvは、鉄やアルミニウム等の金属、或いはセラミックス等からなる。また、射出成形同時絵付用シートSは適宜枠状のシートクランプ33で固定する。この際、射出成形同時絵付用シートの基材シート側は、射出樹脂側(図面上方)となる向きとする。また、ヒータ32による加熱軟化は、例えば非接触の輻射加熱とするが、接触による伝導加熱でも良い。そして、予備成形は、吸引孔から吸引して真空成形して、射出成形同時絵付用シートを真空成形型Mvの型面に沿わせ真空成形する。なお、真空成形は圧空も併用する真空圧空成形でも良く、これも包含する。
【0056】
次いで、予備成形された射出成形同時絵付用シートSを、図2(B)の如く、一対の射出成形型MaとMbとの間に供給する。ここでは射出成形型Maの方は射出ノズルと連通する湯道(ランナー)及び湯口(ゲート)を有し、射出成形型Mbはそのキャビティ面が前記予備成形型Mvの型面と同一又は略同一形状を成し、予備成形済の射出成形同時絵付用シートを固定する型となる。これらの型は鉄等の金属、或いはセラミックスからなる。型開き状態に於いて両型Ma、Mb間に射出成形同時絵付用シートSを供給し、型Mbに射出成形同時絵付用シートSを枠状のシートクランプ42で押圧する等して固定する。この際、射出成形同時絵付用シートのポリオレフィン系樹脂シート側は、図面右側の射出樹脂側となる様にする事はもちろんである。次いで、図2(C)の如く両型を型締めし、両型で形成されるキャビティに加熱熔融状態等の流動状態の樹脂を充填する。そして、射出成形同時絵付用シートの不要部分がある場合は、それを適宜トリミングすれば、図3の断面図で概念的に示す如き、樹脂成形物5の表面に射出成形同時絵付用シートSが積層した構成の絵付成形品Pが得られる。
【0057】
〔射出成形樹脂〕
なお、射出成形同時絵付方法に於いて、射出成形して樹脂成形物5とする樹脂としては、基本的には、射出成形同時絵付方法に於ける従来公知のものが使用でき特に制限はなく、製品の要求物性やコスト等に応じて選定される。但し、本発明の射出成形同時絵付用シートは、その基材シートの樹脂に応じて、該樹脂がポリオレフィン系樹脂の場合にはポリオレフィン系樹脂に対して、該樹脂がABS樹脂の場合にはABS樹脂に対して密着が良い様に構成されているので、ポリオレフィン系樹脂或いはABS樹脂が好適である。なお、ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリメチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、プロピレン−ブテン共重合体等の高結晶質の非エラストマーポリオレフィン系樹脂、或いは各種のオレフィン系熱可塑性エラストマーが用いられる。
【0058】
なお、本発明の射出成形同時絵付用シートは、ポリオレフィン系樹脂と密着性が良い形態もあるが、その密着性をより向上させる必要がある場合には、これらポリオレフィン系樹脂に、エチレンプロピレンゴムを添加すると良い。エチレンプロピレンゴムはエチレン−プロピレン共重合体からなるゴム(EPR)であり、非晶質のランダム共重合体である。また、エチレンプロピレンゴムとしては純粋なエチレン−プロピレン共重合体の他に、エチレン−プロピレン−ジエンターポリマー(EPDM)も使用できる。エチレンプロピレンゴムはポリオレフィン樹脂100部に対し1〜40部(質量基準)の範囲で添加するのが、密着性向上、剛性維持の点から好ましい。
【0059】
なお、射出成形樹脂は、用途に応じて適宜、着色剤を添加して着色した樹脂を使用しても良い。着色剤には、前述装飾層で述べた如き公知の着色剤を使用できる。また、射出成形樹脂には、必要に応じて適宜、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム等の無機物粉末、ガラス繊維等の充填剤、安定剤、滑剤等の公知の各種添加剤を含有させる。
【0060】
〔絵付成形品〕
本発明の射出成形同時絵付用シートを樹脂成形物に積層する事で、図3の断面図で概念的に示す如き絵付成形品Pが得られる。すなわち、前述した本発明の射出成形同時絵付用シートSがポリオレフィン系樹脂やABS樹脂、或いはその他の樹脂からなる樹脂成形物5の表面に積層した構成の成形品である。樹脂成形物5の樹脂としては、射出成形同時絵付用シートの基材シートの樹脂に応じて、該樹脂がポリオレフィン系樹脂の場合にはポリオレフィン系樹脂が好適であり、該樹脂がABS樹脂の場合にはABS樹脂が好適である。
もちろん、射出成形同時絵付用シートSは、その基材シートが樹脂成形物と接する様に積層されている。樹脂成形物5の表面に射出成形同時絵付用シートSを積層するには、前述した射出成形同時絵付方法が好適である。ポリオレフィン系樹脂又はABS樹脂からなる樹脂成形物の場合、その樹脂成形物に射出成形同時絵付用シートが積層した絵付成形品は、射出成形同時絵付用シートと樹脂成形物との密着性に優れ、また表面の透明性も良好な成形品とする事ができる。
【0061】
【実施例】
以下、実施例及び比較例により本発明を更に詳述する。
【0062】
〔実施例1〕
図1の如き構成の射出成形同時絵付用シートSを次の様にして作製した。無着色のポリメチルメタクリレート(PMMA)にアクリルゴムを混合してなり、これに脂肪族アルコール系滑剤を0.2質量%添加してなるシート(厚さ0.125mm)を透明アクリル樹脂から成る基材シート1として、その片面に、バインダーの樹脂がアクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との1対1質量比混合物で、弁柄を主成分とする着色剤を使用した着色インキを印刷して木目柄の装飾層2を形成し、更にアクリルポリオール100質量部と1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート8質量部とからなる2液硬化型ウレタン樹脂の接着剤からなる塗液を全面に塗工して接着剤層3を厚さ2μmに形成して、印刷シートとした。
【0063】
次に、弁柄、チタン白、黄鉛及びカーボンブラックを着色剤として添加して黄褐色に着色した不透明なポリプロピレンからなる基材シート4(厚さ0.3mm)の表面(接着剤層を形成する側の面)に、コロナ放電処理を行って活性水素含有極性官能基を生成させて、0.42mN/cm2 の濡れ指数とした。そして、この処理面に、アクリルポリオール100質量部に対して、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート8質量部を添加した2液硬化型ウレタン樹脂系接着剤を塗工して、厚さ12μmの(未硬化の)接着剤層3を形成した。次いで、この接着剤層3と上記印刷シートの装飾層2とが接する様にして、基材シート4を上記印刷シートにドライラミネーション法によって積層して、接着剤層の2液硬化型ウレタン樹脂は硬化を完結させて硬化物として、本発明の射出成形同時絵付用シートSを得た。
【0064】
〔実施例2〕
実施例1に於いて、基材シート4に用いた樹脂を、ポリプロピレンからABS樹脂に代えた他は、実施例1と同様にして、本発明の射出成形同時絵付用シートを作製した。なお、基材シートの表面の濡れ指数は0.43mN/cm2 であった。
【0065】
〔比較例1〕
実施例1に於いて、コロナ放電処理を省略した他は、実施例1同様に射出成形同時絵付用シートを作製した。なお、基材シートの表面の濡れ指数は0.23mN/cm2 であった。
【0066】
〔比較例2〕
実施例2に於いて、コロナ放電処理を省略した他は、実施例2同様に射出成形同時 付用シートを作製した。なお、基材シートの表面の濡れ指数は0.37mN/cm2 であった。
【0067】
〔性能評価〕
上記実施例及び比較例として得た各射出成形同時絵付用シートについて、その層間密着性について、表面シートと基材シートとをT形剥離試験(JIS K 6854に準拠)によって剥離して、そのときの剥離強度で評価した。図4はT形剥離試験を概念的に示す説明図であり、T形剥離試験では、射出成形同時絵付用シートSは、表面シート側11と基材シート側12とに引き剥がして、その剥離強度を、測定する。なお、試験条件は、試験片の引張速度50mm/分、測定温度は室温(20℃)である。
以上の結果、表1に示す様に、比較例1及び2に対して、実施例1及び2は剥離強度が大きく、層間密着性として満足できるものであった。
【0068】
【表1】
Figure 0004498505
【0069】
次に、図2の概念図で説明した様なオフランイ予備成形による射出成形同時絵付けを行って、各射出成形同時絵付用シートを用い、絵付成形品を作製してみた。なお、射出成形樹脂には、基材シートがポリプロピレンである実施例1及び比較例1の射出成形同時絵付用シートに対しては、エチレン−プロピレン共重合体ゴムを10質量%添加したポリプロピレン樹脂を使用し、基材シートがABS樹脂である実施例2及び比較例2の射出成形同時絵付用シートに対しては、ABS樹脂を使用した。そして、図3に示す如き、射出成形同時絵付用シートSが樹脂成形物5に積層された絵付成形品Pを作製した。絵付成形品は、いずれも、木目柄で絵付けされ且つ透明性も良好で、高級感溢れる意匠感を有する成形品であった。
【0070】
そして、射出成形同時絵付用シートと樹脂成形物との密着性も評価してみた。この密着性は碁盤目テストで評価した。すなわち、絵付成形品表面を被覆した射出成形同時絵付用シート表面を、カッタナイフで碁盤目状に(線間隔1mm)を11本(縦)×11本(横)の樹脂成形物にまで達する刻みを入れた。次いで、刻みの上に、セロハン粘着テープ(ニチバン株式会社製、「セロテープ」(登録商標)24mm幅、産業用)を貼着し、手で剥離する碁盤目テストを、10回繰り返した。一つも碁盤目(10個×10個)の剥脱が無いものは良好、一つでも有るものは不良とした。
この結果、実施例1及び実施例2は良好となったが、比較例1及び比較例2では、不良となった。剥離箇所は表面シートと基材シートとの間であった。
【0071】
【発明の効果】
本発明の射出成形同時絵付用シートによれば、該シートの層間密着性に優れる。したがって、絵付成形品とした時にシートの層間で剥離し難い。そして、ポリオレフィン系樹脂或いはABS樹脂に密着良くラミネートできる。しかも、得られる絵付成形品に優れた透明性を付与できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の射出成形同時絵付用シートを示す断面図。
【図2】射出成形同時絵付方法の一例を説明する概念図。
【図3】得られる絵付成形品の一例を例示する断面図。
【図4】T形剥離試験を説明する説明図。
【符号の説明】
1 表面シート
2 装飾層
3 接着剤層
4 基材シート
5 樹脂成形物
11 表面シート側(のシート)
12 基材シート側(のシート)
31 吸引孔
32 ヒータ
33 シートクランプ
42 シートクランプ
Ma 射出成形型(雄型)
Mb 射出成形型(雌型)
Mv 真空成形型
P 絵付成形品
S 射出成形同時絵付用シート

Claims (4)

  1. ラミネートタイプの射出成形同時絵付用シートにおいて、
    透明アクリル樹脂の表面シートの裏面に、バインダーの樹脂がアクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合物又はアクリルウレタン樹脂から成り、これに着色剤が添加されて成る装飾層を形成し、次いで該装飾層上に2液硬化型ウレタン樹脂の硬化物から成る接着剤層を形成し、次いで該接着剤層上に表面に活性水素含有極性官能基を有するポリオレフィン系樹脂から成る基材シート積層して成る、射出成形同時絵付用シートの製造方法
  2. ラミネートタイプの射出成形同時絵付用シートにおいて、
    透明アクリル樹脂の表面シートの裏面に、バインダーの樹脂がアクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合物又はアクリルウレタン樹脂から成り、これに着色剤が添加されて成る装飾層を形成し、次いで該装飾層上に2液硬化型ウレタン樹脂の硬化物から成る接着剤層を形成し、次いで該接着剤層上に表面に活性水素含有極性官能基を有するABS樹脂から成る基材シート積層して成る、射出成形同時絵付用シートの製造方法
  3. 前記基材シートが、コロナ処理を行って活性水素含有極性官能基を生成させた基材シートである請求項1または請求項2に記載の射出成形同時絵付用シートの製造方法。
  4. ラミネートタイプの射出成形同時絵付用シートにおいて、
    透明アクリル樹脂の表面シートの裏面に、バインダーの樹脂がアクリル樹脂と塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体との混合物又はアクリルウレタン樹脂から成り、これに着色剤が添加されて成る装飾層と、2液硬化型ウレタン樹脂の硬化物から成る接着剤層と、表面に活性水素含有極性官能基を有するABS樹脂から成る基材シートと、をこの順に積層して成る、射出成形同時絵付用シート。
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