JP4498232B2 - 光カチオン重合性エポキシ樹脂組成物、並びに、これを用いた微細構造体の製造方法及びインクジェットヘッドの製造方法 - Google Patents
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・耐薬品性が要求されるような場合、
・数μm〜数十μmの比較的厚い膜厚で使用する必要がある場合
には、エポキシ樹脂、ビニルエーテル化合物等をベースとするカチオン重合性樹脂材料がよく用いられている。
(a)エポキシ樹脂、
(b)光カチオン重合開始剤、
(c)トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン及びN−エチルジエタノールアミンから選ばれる少なくとも1つのアミン化合物、
(d)以下の化合物1、化合物2または化合物3、
(e)銅トリフラートまたはアスコルビン酸、
を含むことを特徴とする光カチオン重合性エポキシ樹脂組成物である。
(a)エポキシ樹脂、
(b)光カチオン重合開始剤、
(c)トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン及びN−エチルジエタノールアミンから選ばれる少なくとも1つのアミン化合物、
(d)以下の化合物1、化合物2または化合物3、
(e)銅トリフラートまたはアスコルビン酸、
を含む光カチオン重合性エポキシ樹脂組成物の層が設けられた基板を用意する工程と、
該層を露光し、現像する工程と、
現像が行われた前記層を、150℃以上の温度で加熱する工程と、
を有することを特徴とする微細構造体の形成方法である。
インクの流路を有するインクジェットヘッドの製造方法において、
(a)エポキシ樹脂、
(b)光カチオン重合開始剤、
(c)トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン及びN−エチルジエタノールアミンから選ばれる少なくとも1つのアミン化合物、
(d)以下の化合物1、化合物2または化合物3、
(e)銅トリフラートまたはアスコルビン酸、
を含むインクジェットヘッドのインク流路形成材料用の光カチオン重合性エポキシ樹脂組成物の層が設けられた基板を用意する工程と、
該層を露光し、現像する工程と、
現像が行われた前記層を、150℃以上の温度で加熱する工程と、
を有することを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法である。
ここでは、上記の樹脂組成物に含まれる材料について、詳細に説明する。
ベースとなるエポキシ樹脂としては、一般的に知られているビスフェノールA型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂、さらに、特開昭60−161973、特開昭63−221121、特開昭64−9216、特開平2−140219号公報等に記載されているオキシシクロヘキサン骨格を有するエポキシ樹脂等が挙げられるが、特に下記一般式で示される構造を有するオキシシクロヘキサン骨格の多官能エポキシ樹脂が好適に用いられる。
一般式(1)
一般式(2)
該エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂やノボラック型エポキシ樹脂に比べ、高いカチオン重合性を示し、さらに高架橋密度を得やすいことから、耐薬品性、機械的強度に優れた硬化物を得ることができる。さらに、構造中に芳香環を含まないため、光透過性に優れ、厚膜で使用するに適している。また、該エポキシ樹脂のエポキシ当量としては、2000以下、さらに好ましくは、1000以下の化合物が好適に用いられる。エポキシ当量が2000を超えると、硬化反応の際の架橋密度が低下し、硬化物のTgもしくは熱変形温度が低下したり、基板に対する密着性、耐薬品性に問題が生じたりする場合がある。さらに、良好なパターニング性を得るには、常温で固体状であることが好ましい。
光カチオン重合開始剤としては、オニウム塩、ボレート塩、トリアジン化合物、アゾ化合物、過酸化物等が挙げられるが、感度、安定性、反応性、溶解性の面から、芳香族スルフォニウム塩、芳香族ヨードニウム塩が好適に用いられる。芳香族スルフォニウム塩としては、例えばみどり化学(株)より市販されているTPS−102、103、105、MDS−103、105、205、305、DTS−102、103、旭電化工業(株)より市販されているSP−170、172等を、また芳香族ヨードニウム塩としては、みどり化学(株)より市販されているDPI−105、MPI−103、105、BBI−101、102、103、105等が挙げられる。これらの中から、使用する露光波長に応じて適宜選択することが可能である。また、添加量は、目標とする感度、架橋密度となるよう任意の添加量とすることができるが、特に、エポキシ樹脂に対して、0.1〜7wt%の範囲で好適に用いることができる。また、必要に応じて波長増感剤として、例えば旭電化工業(株)より市販されているSP−100等を添加して用いても良い。さらに、複数種を混合して用いても良い。
カチオン重合阻害物質とは、酸触媒の機能を低下させる物質のことであり、一般には塩基性化合物が用いられる。塩基性物質としては、プロトンのアクセプターとなり得る化合物、すなわち非共有電子対を持つ化合物が用いられる。具体的には、窒素、硫黄、リン等の原子を含む化合物が挙げられるが、なかでも含窒素化合物が好ましい。
さらに、これらの塩基性物質は、二種以上混合することも各種性能のバランスを取る上で有用である。
本発明では、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン及びN−エチルジエタノールアミンから選ばれる少なくとも1つのアミン化合物が用いられる。
本発明における光カチオン重合性エポキシ樹脂組成物を用いて被処理基板上に形成された微細構造体は、一般的なレジストとは異なり、そのまま部品等の構成部材として使用することを前提としたものであり、その用途に応じて耐水性、耐溶剤性、機械的強度を付与する必要がある。
添加量は、目標とする耐水性、耐溶剤性にあわせて任意の添加量とすることができるが、特に、1〜50wt%の範囲で用いることが好ましく、さらには樹脂との相溶性の観点から、1〜30wt%とすることが好ましい。また、機械的強度を高めるため、加熱により架橋反応を促進させることが好ましく、それ故、化合物の末端に架橋反応性の高い、水酸基、エポキシ基を有する化合物をより好適に用いることができる。さらには化合物の末端が2つ以上の水酸基であることが、より好ましい。
フルオロアルキル基を有し、かつエポキシ基と架橋反応する置換基を末端に有する化合物を添加した系では、エポキシ樹脂とフルオロアルキル基を有し、かつエポキシ基と架橋反応する置換基を末端に有する化合物との反応性の違いから、露光部の架橋密度にばらつきが生じ、露光界面での耐溶剤性、パターニング性が劣化する場合がある。特に、本発明では、樹脂中にカチオン重合阻害物質を含有しているため、架橋反応の速度差の影響を受けやすく、耐溶剤性、パターニング性が劣化しやすい。その結果、フルオロアルキル基を有し、かつエポキシ基と架橋反応する置換基を末端に有する化合物が反応しきれずに、界面に析出してしまう場合がある。そこで、後処理によって架橋密度を向上させることが好ましく、その方法としては、例えば、熱カチオン重合触媒を併用する方法が挙げられる。前述の光カチオン重合開始剤は、熱カチオン重合触媒を併用し加熱することによって架橋密度を増加させることができる。このような熱カチオン重合触媒としては、銅トリフラート(トリフルオロメタンスルホン酸銅(II))またはアスコルビン酸等を添加して用いる。特にエポキシ樹脂への溶解性、反応性を考慮した場合、銅トリフラートの添加が有効であり、150℃以上の温度で熱処理を施すことにより、本発明における光カチオン重合性エポキシ樹脂組成物を用いて被処理基板上に形成された微細構造体の架橋密度を、大幅に向上させることが可能である。
本発明による光カチオン重合性エポキシ樹脂組成物には、架橋密度の増加、塗布性の改良、耐水性の向上、耐溶剤性の向上、可撓性付与、基板との密着力向上などを目的として、種々の添加剤を添加して用いることも可能である。
例えば、基体との密着性向上を目的として、シランカップリング剤を添加して用いても良い。
次に、図1および図2を用いて、本発明の微細構造体、およびその製造方法について簡単に説明する。
図1は本発明による微細構造体の製造方法の断面図を模式的に示す説明図である。
そこで、以下、具体的な実施例と比較例とを用いて、この点について詳細に説明する。
実施例1
まず、以下に示す光カチオン重合性エポキシ樹脂組成物1を用意した。
樹脂組成物1
・エポキシ樹脂:EHPE−3150(ダイセル化学(株)製):100重量部
・光カチオン重合開始剤:SP−170(旭電化工業(株)製):1重量部
・カチオン重合阻害物質:トリエタノールアミン:表中参照
・フルオロアルキル基を有し、かつエポキシ基と架橋反応する置換基を末端に有する化合物:下記化合物1:表中参照
・熱カチオン重合触媒:トリフルオロメタンスルホン酸銅(II)(銅トリフラート):表中参照
基板とパターンの界面が一部剥離することにより、基板の一部に干渉縞が観察されたものを△、基板とパターンの界面全体に干渉縞が観察されたものを×、干渉縞が観察されなかったものを○とした。
基板とパターンの界面が一部剥離することにより、基板の一部に干渉縞が観察されたものを△、基板とパターンの界面全体に干渉縞が観察されたものを×、干渉縞が観察されなかったものを○とした。
膨潤率に関しては、上記試験1の終了後にライン&スペースの間隔を測定することでパターン幅の変化率を求めた。その上で、資料No.1のパターン幅の変化率に対して、サンプルのパターン幅の変化率が同程度のもの(膨潤率大きいもの)を×、サンプルのパターン幅の変化率が、資料No.1のパターン幅の変化率に対して、3割程度小さいものを△、変化率が4割以上小さいものを〇とした。
以上説明した本発明の光カチオン重合性エポキシ樹脂組成物は、上述したようにインクジェットヘッドの流路形成材料として好適に利用可能である。本発明の材料を用いた具体的なヘッドの製造方法としては、例えば、登録第3143307、登録第3143308号公報に記載されているような、感光性樹脂材料を用いて、中空の構造体を形成してインク流路とする製造方法をあげられる。なお、本発明による光カチオン重合性エポキシ樹脂組成物は、その優れた耐薬品性、機械的強度、良好なパターニング特性から、上述のインクジェットヘッド以外にも、様々な分野への適用が可能である。
Claims (13)
- 前記エポキシ樹脂のエポキシ当量が、2000以下である請求項1または2に記載の光カチオン重合性エポキシ樹脂組成物。
- 前記エポキシ樹脂が、常温で固体である請求項3に記載の光カチオン重合性エポキシ樹脂組成物。
- 前記光カチオン重合開始剤が、芳香族スルフォニウム塩および芳香族ヨードニウム塩から選択された少なくとも1種である請求項1〜4のいずれかに記載の光カチオン重合性エポキシ樹脂組成物。
- 前記(c)が、トリエタノールアミン及びトリイソプロパノールアミンから選ばれる少なくとも1つである請求項1〜5のいずれかに記載の光カチオン重合性エポキシ樹脂組成物。
- 前記(c)が、トリエタノールアミンである請求項6に記載の光カチオン重合性エポキシ樹脂組成物。
- 前記(d)が、前記化合物1である請求項1〜7のいずれかに記載の光カチオン重合性エポキシ樹脂組成物。
- 前記(c)を、前記(b)の光カチオン重合開始剤に対して0.1wt(重量)%〜20wt%含有する請求項1〜8のいずれかに記載の光カチオン重合性エポキシ樹脂組成物。
- 前記(d)の添加量が、前記(a)のエポキシ樹脂に対して、1wt%〜50wt%である請求項1〜9のいずれかに記載の光カチオン重合性エポキシ樹脂組成物。
- 前記(e)が銅トリフラートであり、銅トリフラートを、前記(b)の光カチオン重合開始剤に対して0.01wt%〜50wt%含有する請求項1〜10のいずれかに記載の光カチオン重合性エポキシ樹脂組成物。
- インクの流路を有するインクジェットヘッドの製造方法において、
(a)エポキシ樹脂、
(b)光カチオン重合開始剤、
(c)トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、ジエタノールアミン、ジイソプロパノールアミン及びN−エチルジエタノールアミンから選ばれる少なくとも1つのアミン化合物、
(d)以下の化合物1、化合物2または化合物3、
(e)銅トリフラートまたはアスコルビン酸、
を含むインクジェットヘッドのインク流路形成材料用の光カチオン重合性エポキシ樹脂組成物の層が設けられた基板を用意する工程と、
該層を露光し、現像する工程と、
現像が行われた前記層を、150℃以上の温度で加熱する工程と、
を有することを特徴とするインクジェットヘッドの製造方法。
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