JP4496381B2 - 高純度4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法 - Google Patents

高純度4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、高純度の4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホン(以下「4,4’−BS」ということがある)の製造方法に関する。
4,4’−BSは、繊維、樹脂などの化学工業分野において重要な化合物であり、近年、各分野においてより高純度のものが求められている。
従来、「ジヒドロキシジフェニルスルホン異性体混合物をo−ジクロロベンゼン80〜40重量%およびフェノール20〜60重量%からなる混合溶媒で処理し、次いで得られる処理物を加熱することなくろ過し、高純度の4,4’−BS結晶を分離拾得することを特徴とするジヒドロキシジフェニルスルホン異性体混合物から4,4’−BSを単離する方法」が採られている(特公昭51−36264号公報)。
しかしながら、上記の方法では、高収率で4,4’−BSを得ることができない。
また、「フェノールと硫酸を、反応混合物の約15〜35重量%の不活性溶媒中で反応させて異性体混合物を生成し、約160〜200℃の温度で反応の水を除き、水が生じなくなるまで反応生成物混合物の温度を約160〜200℃に保持し、反応生成物混合物の温度を約80〜120℃に冷却し、必要ならば追加量の不活性溶媒を加え、不活性溶媒が反応生成物混合物の約20〜80重量%をなすスラリーを形成し、該スラリーを分配して結晶性の4,4’−BSと、溶けている2,4’−BSを含有する液体とを得ることからなる4,4’−BSを合成する方法」も採られている(特公平4−74347号公報参照)。
特公平4−74347号公報によると、純度が93.5重量%(実施例1)または95.3重量%(実施例2)の4,4’−BSが得られるが、より高純度の4,4’−BSを製造する方法は、開示されていない。また、特許文献2の実施例には、「ガスクロマトグラフィーによって副生成物は、検出されなかった」と記載されているが、ガスクロマトグラフィーによって検知されないフェノールスルホン酸が、不純物として含まれる場合が多い。
本発明は、ジヒドロキシジフェニルスルホンの異性体組成を変化させずに、トリ体と着色性不純物のみを効果的に除去する、ジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は、鋭意研究の結果、芳香族系非極性溶媒の存在下、生成したジヒドロキシジフェニルスルホンを懸濁させながらフェノールとスルホン化剤又はフェノールスルホン酸とを脱水反応させ、得られた反応懸濁液に極性溶媒を混合し、ジヒドロキシジフェニルスルホンの少なくとも一部を一旦溶解させた後に晶析させることによって、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成するに至った。
即ち、本発明は、以下の4,4’−BSの製造方法に係るものである。
1.フェノールとスルホン化剤又はフェノールスルホン酸とを脱水反応させて4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを製造する方法において、芳香族系非極性溶媒の存在下において、生成したジヒドロキシジフェニルスルホンを懸濁させながら前記脱水反応を行い、得られた反応懸濁液に極性溶媒を混合し、ジヒドロキシジフェニルスルホンの少なくとも一部を溶解させた後、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを晶析させることを特徴とする高純度4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法。
2.フェノールとスルホン化剤又はフェノールスルホン酸とを脱水反応させて4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを製造する方法において、芳香族系非極性溶媒の存在下において、生成したジヒドロキシジフェニルスルホンを懸濁させながら前記脱水反応を行い、得られた反応懸濁液に極性溶媒を混合し、ジヒドロキシジフェニルスルホンの少なくとも一部を溶解させた後、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを一次晶析させ、得られた4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンをろ過またはデカンテーションによって分離することにより、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを製造し、且つ、得られた分離液について、懸濁液となるかまたは蒸留乾固するまで溶媒を蒸発させ、得られた懸濁液中の固形分または残渣の少なくとも一部を極性溶媒と非極性溶媒との混合溶媒に溶解させ、
次いで、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを二次晶析させることを特徴とする高純度4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを製造する方法。
3.フェノールとスルホン化剤又はフェノールスルホン酸との脱水反応を酸触媒の存在下に行うことを特徴とする上記1又は2に記載の高純度4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法。
4.芳香族系非極性溶媒が、メシチレンであることを特徴とする上記1〜3のいずれかに記載の高純度4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法。
5.極性溶媒が、炭素数4〜15の高級アルコール、多価アルコールおよびフェノール類から選ばれることを特徴とする上記1〜4の何れかに記載の高純度4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法。
6.極性溶媒が、フェノールであることを特徴とする上記1〜5のいずれかに記載の高純度4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法。
7.反応懸濁液と極性溶媒とを混合し、加圧下に加熱しながらジヒドロキシフェニルスルホンの少なくとも一部を溶解させることを特徴とする上記1〜6の何れかに記載の高純度4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法。
8.得られた懸濁液中の固形分または残渣の少なくとも一部を、加圧下に加熱しながら極性溶媒と芳香族系非極性溶媒との混合溶媒に溶解させることを特徴とする上記2〜7の何れかに記載の高純度4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法。
9.二次晶析によって得られた4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを、フェノールとスルホン化剤又はフェノールスルホン酸とを脱水反応させる前又は脱水反応後に反応系に加えることを特徴とする上記2〜8のいずれかに記載の高純度4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法。
10.一次晶析させた4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンをろ過またはデカンテーションすることによって得られた分離液について、懸濁液となるかまたは蒸留乾固するまで溶媒を蒸発させ、懸濁液となった後または蒸発乾固後も異性化温度以上に保持する上記2に記載の高純度4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法。
本発明では、芳香族系非極性溶媒の存在下において、フェノールとスルホン化剤又はフェノールスルホン酸とを脱水反応させる。脱水反応は、生成したジヒドロキシジフェニルスルホンを懸濁させながら進行させる。脱水反応により生成するジヒドロキシジフェニルスルホン(以下「BS」ということがある)は、若干量の2,4’−BSを含む2,4’−BSと4,4’−BSとの異性体混合物である。
脱水反応に用いるスルホン化剤は、公知のものを用いることができ、例えば濃硫酸、無水硫酸、発煙硫酸、クロロスルホン酸などを例示することができる。
フェノールに対するスルホン化剤またはフェノールスルホン酸の比は、特に制限されず広い範囲から適宜選択されるが、通常化学量論的割合またはその近傍である。より具体的には、スルホン化剤1molに対するフェノールのモル比は、1.9〜2.1mol程度であり、フェノールスルホン酸1molに対するフェノールのモル比は、0.9〜1.1mol程度である。上記の範囲とすることによって、高収率または高純度の4,4’−BSをより確実に得ることができる。
脱水反応においては、反応媒体として、芳香族系非極性溶媒を用いる。反応媒体は、実質的に4,4’−BSを溶解しない溶媒が好ましい。
芳香族系非極性溶媒としては、例えば、クロロベンゼン(沸点132℃)、ジクロロベンゼン(沸点180℃)、トリクロロベンゼン(沸点212℃)、クロロトルエン(沸点162℃)、3,4−ジクロロトルエン(沸点209℃)、ジエチルベンゼン(沸点182℃)、メシチレン(沸点165℃)、テトラリン(沸点207℃)などを例示することができる。芳香族系非極性溶媒は、一種単独で用いてもよく、又は二種以上を併用してもよい。
芳香族系非極性溶媒は、脂肪族系炭化水素溶媒などの他の非極性溶媒と併用してもよい。他の非極性溶媒と併用する場合、芳香族系非極性溶媒の含有量は、溶媒全体に対して、通常50重量%以上程度、好ましくは70重量%以上程度である。以下、芳香族系非極性溶媒または芳香族系非極性溶媒と他の非極性溶媒との混合溶媒を「反応媒体」ということがある。
脂肪族系炭化水素溶媒としては、例えば、n−デカンなどの直鎖脂肪族炭化水素;エクソンモービル社製のアイソパーG、アイソパーHなどの分枝状炭化水素;デカリン(trans体の沸点185.5℃、cis体の沸点195.7℃)などの脂環式炭化水素;テトラクロロエタン(沸点146℃)などのハロゲン化脂肪族炭化水素などを例示できる。脂肪族系炭化水素溶媒は、一種単独で用いてもよく、又は二種以上を併用してもよい。
芳香族系非極性溶媒としては、メシチレン、クロロトルエン、3,4−ジクロロトルエン、ジエチルベンゼンなどが好ましく、特にメシチレンが好ましい。メシチレンは、反応系を撹拌しやすく、生成するBSを微細粒子として安定に析出できる点で好ましく、更に温度管理が容易である点でも好ましい。また、メシチレンを用いると、4、4’−BSを高純度且つ高収率で得やすいので好ましい。
反応媒体の使用量は、反応液を撹拌するのに充分な量であれば特に制限されないが、ジヒドロキシジフェニルスルホンの理論収量に対する反応媒体の重量比は、通常1:0.1〜5程度であり、好ましくは1:0.2〜3程度である。なお、芳香族系非極性溶媒と脂肪族系炭化水素溶媒などの他の非極性溶媒とを併用する場合には、芳香族系非極性溶媒と他の非極性溶媒との合計量を反応媒体の重量とする。
脱水反応は、副生する水を系外に除去しながら、進行させるのが好ましい。例えば、芳香族系非極性溶媒、脂肪族系炭化水素溶媒などの反応媒体と共に水を蒸留しながら、反応を進行させればよい。水を分離除去後、芳香族系有機溶媒、脂肪族系炭化水素溶媒などの反応媒体は、系内に還流してもよい。
脱水反応における温度、圧力、反応時間などの反応条件は、公知の条件を適用することができる。例えば、特公平7−91261号公報、特公平8−2861号公報、特公平8−2863号公報などに記載の公知の方法に準ずる条件を適用することができる。
脱水反応の反応温度は、通常120℃以上程度、好ましくは120℃〜220℃程度であり、より好ましくは140℃〜190℃程度である。脱水反応は、常圧であっても進行するが、必要に応じて加圧状態または減圧状態としてもよい。反応時間は、特に制限されず、反応温度などに応じて適宜設定することができるが通常1〜30時間程度であり、好ましくは2〜20時間程度である。
本発明の方法では、脱水反応終了後も、ヒドロキシジフェニルスルホンを懸濁させたまま異性化温度以上に保持してもよい。異性化温度以上に保持することによって、2,4’−BSから4,4’−BSへの異性化反応が進行する。
保持温度は、2,4’−BSから4,4’−BSへの異性化反応が進行する限り特に制限されないが、通常120℃以上程度であり、好ましくは140℃〜175℃程度である。このような温度範囲とすることによって、迅速に異性化反応が進行する。脱水反応終了後、異性化温度以上に保持する時間は、反応温度などに応じて適宜設定することができるが、通常1〜10時間程度であり、好ましくは2〜5時間程度である。脱水反応が終了したかどうかは、例えば、副成する水の量が増加しなくなったかどうかなどで判断することができる。異性化反応は、常圧であっても進行するが、必要に応じて加圧状態または減圧状態としてもよい。
異性化反応は、好ましくは酸触媒の存在下に行う。脱水反応と同時に2,4’−BSから4,4’−BSへの異性化反応も進行するので、酸触媒は、、脱水反応の原料とともに反応系に酸触媒を添加してもよいが、脱水反応後半または終了後に添加してもよい。4,4’−BSの着色を抑制するには、脱水反応後半または終了後に添加してもよい。
フェノールスルホン酸も、酸触媒として機能する。従って、反応原料としてフェノールスルホン酸を用いる場合、反応中間体としてフェノールスルホン酸が生成する場合などには、必要に応じて不足分を添加するか、またはフェノールスルホン酸よりも触媒効果の高い酸触媒を添加してもよい。フェノールスルホン酸よりも触媒効果の高い酸触媒としては、例えば、好ましい酸触媒として後述する酸触媒を例示することができる。
酸触媒として、例えば、ベンゼンスルホン酸、クロロベンゼンスルホン酸、ベンゼン−1,3−ジスルホン酸、クロルベンゼン−2,4−ジスルホン酸、ブロムベンゼン−2,4−ジスルホン酸、フルオロベンゼン−2,4−ジスルホン酸、トルエン−2,4−ジスルホン酸、エチルベンゼン−2,4−ジスルホン酸、ベンゼン−1,3,5−トリスルホン酸、クロルベンゼン−2,4,6−トリスルホン酸、ブロムベンゼン−2,4,6−トリスルホン酸、フルオロベンゼン−2,4,6−トリスルホン酸、トルエン−2,4,6−トリスルホン酸、エチルベンゼン−2,4,6−トリスルホン酸等の芳香族系スルホン酸;トリフルオロメタンスルホン酸などの脂肪族系スルホン酸;全フッ素化イオノマー(例えば、商品名:ナフィオン)などのスルホン基を有する樹脂などを例示することができ、これらの中では、ベンゼン−1,3−ジスルホン酸、クロルベンゼン−2,4−ジスルホン酸、ブロムベンゼン−2,4−ジスルホン酸、フルオロベンゼン−2,4−ジスルホン酸、トルエン−2,4−ジスルホン酸、エチルベンゼン−2,4−ジスルホン酸、ベンゼン−1,3,5−トリスルホン酸、クロルベンゼン−2,4,6−トリスルホン酸、ブロムベンゼン−2,4,6−トリスルホン酸、フルオロベンゼン−2,4,6−トリスルホン酸、トルエン−2,4,6−トリスルホン酸、エチルベンゼン−2,4,6−トリスルホン酸が好ましい。酸触媒は、単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
酸触媒の使用量は、触媒量であれば特に制限されず、広い範囲から適宜選択することができ、スルホン化剤に対して、通常0.5〜10モル%程度、好ましくは2〜5モル%程度である。
次に、脱水反応により生じた反応懸濁液に極性溶媒を混合し、生成したジヒドロキシジフェニルスルホンの少なくとも一部を溶解させる。極性溶媒を混合すると、2,4’−BS、フェノールスルホン酸などの不純物が液相に溶けるので、目的とする高純度の4,4’−BSを得ることができる。反応懸濁液に極性溶媒を混合する態様は特に制限されず、反応懸濁液に極性溶媒を添加してもよく、極性溶媒に反応懸濁液を添加してもよい。
必要に応じて異性化反応を行った場合には、異性化反応後の反応懸濁液と極性溶媒とを混合し、生成したジヒドロキシジフェニルスルホンの少なくとも一部を溶解させる。BSを溶解させる量は、本発明の効果が奏される限り特に制限されないが、溶解量が多いほどより純度の高い4,4’−BSを得やすく、懸濁しているBSを完全に溶解させるのが最も好ましい。例えば、純度が99.5%以上程度の4,4’−BSを得たい場合には、懸濁しているBSを完全に溶解させるのが好ましい。
用いる極性溶媒としては、例えば、炭素数4〜15の高級アルコール類、多価アルコール類、フェノール類などを例示することができる。高級アルコールとしては、例えば、ブタノール、アミルアルコール、オクチルアルコール等の高級アルコール類を例示することができる。多価アルコール類としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールモノエチルエーテル(例えば商品名:エチルセロソルブ)、エチレングリコールモノブチルエーテル(例えば商品名:ブチルセロソルブ)等を例示できる。フェノール類としては、例えば、フェノール、クレゾール、キシレノールなどを例示することができる。極性溶媒は、一種を単独で用いてもよく又は二種以上を併用してもよい。極性溶媒としては、フェノールが特に好ましい。また、極性溶媒と非極性溶媒の組合せとしては、フェノールとメシチレンの組合せが好ましい。
極性溶媒の使用量は、所望量のBSが溶解する限り特に制限されないが、反応媒体と極性溶媒の合計重量に対して、通常10重量%以上程度、好ましくは30重量%〜70重量%程度である。なお、芳香族系非極性溶媒と脂肪族系炭化水素溶媒などの他の非極性溶媒とを併用する場合には、芳香族系非極性溶媒と他の非極性溶媒との合計量を反応媒体の重量とする。
BSは、加熱しなくとも溶解するが、必要に応じて加熱してもよい。加熱温度は、生成するBSの少なくとも一部が溶解する限り特に制限されないが、通常130℃以上程度、好ましくは150℃〜220℃程度、より好ましくは160〜200℃程度である。
また、常圧であってもBSを溶解できるが、必要に応じて加圧状態としてもよく、通常0.01〜1MPa程度、好ましくは0.05〜0.5MPa程度に加圧することができる。加圧することによって、フェノールなどの極性溶媒の使用量を低減することができ、結果として収率をより高くすることができる。
次に、4,4’−BSを晶析させる。以下、この工程を一次晶析ということがあり、一次晶析により得られた結晶を「一次結晶」ということがある。
晶析温度は、4,4’−BSが晶析する限り特に制限されないが、通常150℃以下程度であり、好ましくは100℃以下程度、より好ましくは60℃以下程度である。加熱温度と晶析温度との差は、通常20℃以上程度であり、好ましくは50℃以上程度であり、より好ましくは50〜150℃程度である。
一次晶析により、高純度の4,4’−BSを得ることができる。得られる4,4’−BSの純度は、通常98%以上程度であり、好ましい条件下では99%以上であり、より好ましい条件下では99.5%以上程度である。晶析した高純度の4,4’−BSは、ろ過、デカンテーションなどの公知の固液分離手段により分離回収することができる。必要に応じて、分離回収後、乾燥してもよい。
本発明においては、ろ過、デカンテーションなどの公知の固液分離手段により一次晶析させた4,4’−BSを分離し、得られた分離液について、懸濁液となるかまたは蒸留乾固するまで溶媒を蒸発させ、得られた懸濁液中の固形分または残渣の少なくとも一部を極性溶媒と芳香族系非極性溶媒との混合溶媒に溶解させ、次いで、4,4’−BSを晶析(二次晶析)させてもよい。以下、二次晶析により得られた結晶を「二次結晶」ということがある。二次晶析により析出した4,4’−BSは、ろ過またはデカンテーションによって分離すればよい。
溶媒を蒸留する時には、必要に応じて加熱してもよい。加熱温度は、蒸留が進行する限り特に制限されないが、120℃以上程度がより好ましく、140℃〜175℃程度が特に好ましい。このような温度範囲とすることによって2,4’−BSから4,4’−BSへの異性化反応が進行するので、二次結晶としてより高純度の4,4’−BSを得ることができる。溶媒の蒸留は、常圧であっても行えるが、必要に応じて減圧下または加圧下において行ってもよい。
蒸発乾固後も、必要に応じて異性化温度以上に保持してもよい。異性化温度以上に保持することによって、2,4’−BSから4,4’−BSへの異性化反応が進行する。保持温度は、2,4’−BSから4,4’−BSへの異性化反応が進行する限り特に制限されないが、通常120℃以上程度であり、好ましくは140℃〜175℃程度である。このような温度範囲とすることによって、迅速に異性化反応が進行する。保持時間は、保持温度などに応じて適宜設定することができるが、通常1〜10時間程度であり、好ましくは2〜5時間程度である。異性化反応は、常圧であっても進行するが、必要に応じて減圧状態または加圧状態としてもよい。
蒸留などにより回収された溶媒は、脱水反応用の溶媒として再利用することができる。極性溶媒としてフェノール以外の溶媒を使用した場合には、蒸留などの公知の方法によって極性溶媒を除去した後、脱水反応用溶媒として再利用することができる。極性溶媒としてフェノールを使用した場合には、極性溶媒を除去する必要はない。脱水反応用溶媒として再利用する場合には、不足分のフェノール、スルホン化剤またはフェノールスルホン酸、酸触媒などを必要に応じて追加すればよい。
次に、懸濁液中の固形分または得られた残渣の少なくとも一部を極性溶媒と芳香族系非極性溶媒との混合溶媒に溶解させる。溶解させる固形分または残渣の量が多いほど高純度の二次結晶を得やすく、完全に溶解させるのが最も好ましい。
二次晶析の際にも、芳香族系非極性溶媒は、脂肪族系炭化水素溶媒などの他の非極性溶媒と併用してもよい。芳香族系非極性溶媒と他の非極性溶媒と併用する場合、芳香族系非極性溶媒の含有量は、非極性溶媒全体に対して、通常50重量%以上程度、好ましくは70重量%以上程度である。
混合溶媒に含まれる極性溶媒と芳香族系非極性溶媒との比は、特に制限されないが、極性溶媒の濃度は、混合溶媒全体に対して10〜90重量%程度、好ましくは30〜70重量%程度である。芳香族系非極性溶媒としてフェノールを使用した場合には、脱水反応におけるフェノールと芳香族系非極性溶媒との混合比と同程度にするのが好ましい。
混合溶媒の使用量は、所望量のBSまたは残渣が溶解する限り特に制限されないが、BSまたは残渣の重量に対する混合溶媒の重量比は、通常1:1〜10程度、好ましくは1:2〜5程度である。
溶解後、再度4,4’−BSを晶析(二次晶析)させる。晶析温度は、4,4’−BSが晶析する限り特に制限されないが、通常150℃以下程度であり、好ましくは100℃以下程度、より好ましくは60℃以下程度である。加熱温度と晶析温度との差は、通常20℃以上程度であり、好ましくは50℃以上程度であり、より好ましくは50〜150℃程度である。
二次結晶は、ろ過、デカンテーションなどの公知の固液分離手段により分離回収すればよい。必要に応じて、分離回収後、乾燥してもよい。
回収した二次結晶は、そのままでも高純度であるが、フェノールとスルホン化剤又はフェノールスルホン酸とを脱水反応させる前又は脱水反応後に反応系に加え、再度晶析させてもよい。二次結晶を脱水反応後に反応系に加える場合、反応懸濁液と極性溶媒とを混合する前後のいずれの段階で加えてもよい。脱水反応終了後に異性化反応を行う場合には、異性化反応の前後のいずれの段階で二次結晶を反応系に加えてもよい。この場合も、反応懸濁液と極性溶媒とを混合する前後のいずれの段階で二次結晶を加えてもよい。この様に二次結晶を得ることによって、4,4’−BSの収率をより高くすることができる。
二次結晶を分離回収することによって生じた分離液は、脱水反応用の溶媒として再利用することができる。極性溶媒としてフェノール以外の溶媒を使用した場合には、蒸留などの公知の方法によって極性溶媒を除去した後、脱水反応用溶媒として再利用することができる。極性溶媒としてフェノールを使用した場合には、極性溶媒を除去する必要はないが、蒸留により精製してから再利用するのが好ましい。脱水反応用溶媒として再利用する場合には、不足分のフェノール、スルホン化剤またはフェノールスルホン酸、酸触媒などを必要に応じて追加すればよい。
得られた一次結晶または二次結晶は、必要に応じて更に精製してもよい。一次結晶と二次結晶の混合物を更に生成してもよい。例えば、一次結晶を水、アルコール(例えば、メタノール、エタノール)などの溶媒;活性炭;ハイドロサルファイトなどの還元剤;エチレンジアミン四酢酸(EDTA)等と共に混合し、一次結晶を溶解させた後、活性炭をろ過などにより除去し、得られた分離液から4,4’−BSを晶析させる方法などを例示することができる。
本発明によれば、極めて高純度(例えば98%以上程度、好ましい条件下では99%以上程度、より好ましい条件下では99.5%以上程度)の4,4’−BSを製造することができる。
本発明によれば、高収率で4,4’−BSを製造することができる。二次結晶を得た場合には、より高い収率で4,4’−BSを製造することができる。
本発明によれば、煩雑工程を経ずして単純な工程のみで高純度の4,4’−BSを製造することができる。
本発明方法によると、一次結晶として、副生物であるフェノールスルホン酸およびトリヒドロキシトリフェニルジスルホン(トリ体)が実質的に含まれない4,4’−BSを製造することができる。
また、一次結晶または二次結晶を分離回収した後の分離液から溶媒を回収し、脱水反応の溶媒としてリサイクルした場合(特に極性溶媒としてフェノールを使用した場合)には、廃水、廃棄物が極めて少ないかまたは出ない製造方法、つまりクローズドシステムを提供することができる。
以下、本発明の実施例を比較例と共に挙げ、本発明をより具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に制限されるものではない。
メシチレン144gとフェノール189g(2.0モル)との混合物に、撹拌しながら98%硫酸100g(1.0モル)を滴下後、反応液を200℃の油浴を用いて加熱し、脱水反応を行った。145℃付近で反応液が沸騰し始めた。溜出物はコンデンサーで凝縮され、トラップで2相に分離され、上相である有機相は連続的に反応系内に戻した。溜出が始まってから5時間後、反応液の温度が165℃となり、トラップで分離された下相の水量は38mlで一定となった。反応系内には結晶が析出し、スラリー状態となった。得られた反応懸濁液を少量サンプリングし、HPLCにて分析した結果、その組成(重量比)は、4,4’−BS/2,4’−BS/トリヒドロキシトリフェニルジスルホン=92.5/6.0/1.5であった。
反応懸濁液にフェノール189gを追加後、密閉下にて加熱したところ、185℃となった時点で結晶は完全に溶解した。この時、系内の圧力は0.07MPaであった。
次いで、撹拌しながら溶液を冷却したところ、165℃にて結晶が析出し始めた。さらに40℃まで冷却後、析出した結晶を濾別、洗浄、乾燥し、208gの結晶を得た。得られた結晶の組成(重量比)は、4,4’−BS/2,4’−BS/トリヒドロキシトリフェニルジスルホン=99.5/0.5/0であり、仕込んだ硫酸に対する4,4’−BSの収率は、83%であった。なお、得られた結晶からは、フェノールスルホン酸などのスルホン酸類は検出されなかった。
実施例1に記載の方法に従って、脱水反応を行った。反応終了後、反応懸濁液にフェノール189g追加した。これを約180℃まで加熱し、結晶の大半が溶解したが、結晶の一部が懸濁(スラリー)状態で存在している状態とした以外は、実施例1と同様にして冷却晶析、後処理を行い208gの結晶を得た。得られた結晶の組成(重量比)は、4,4’−BS/2,4’−BS/トリヒドロキシトリフェニルジスルホン=99.2/0.8/0であり、仕込んだ硫酸に対する4,4’−BSの収率は、83%であった。なお、得られた結晶からは、フェノールスルホン酸などのスルホン酸類は、検出されなかった。
実施例1において一次結晶を濾別して得られた濾液(濾液中の4,4’−BS/2,4’−BS=48:52)を165℃に加熱し、減圧下にて溶媒の溜出がなくなるまで溶媒回収を行った。更に170℃で2時間保持し、2,4’−BSから4,4’−BSへの異性化反応を実質的に完結させ、蒸留乾固物を得た。
この蒸留乾固物をフェノール48g及びメシチレン36gと混合し、加熱して全て溶解させた後、40℃まで冷却すると結晶が析出した。得られた結晶を濾別、洗浄および乾燥して、二次結晶28gを得た。二次結晶の組成(重量比)は、4,4’−BS/2,4’−BS/トリヒドロキシトリフェニルジスルホン=99.1/0.6/0.3であり、実施例1において仕込んだ硫酸に対する4,4’−ジヒドロキシフェニルスルホン収率は11%であった。
得られた二次結晶全量を脱水反応終了後に添加した以外は、実施例1と同様の操作を行った結果、237gの結晶を得た。得られた結晶の組成(重量比)は、4,4’−BS/2,4’−BS/トリヒドロキシトリフェニルジスルホン=99.5/0.5/0、仕込み硫酸に対する4,4’−BS収率は94%であった。
なお、得られた結晶からは、フェノールスルホン酸などのスルホン酸類は、検出されなかった。
メシチレン144g、フェノール189g(2.0モル)およびベンゼン−1,3−ジスルホン酸11.9g(0.05モル)からなる混合物に撹拌下98%硫酸100g(1.0モル)を滴下後、200℃の油浴を用いて加熱した。145℃付近で反応液が沸騰をし始めた。溜出物はコンデンサーで凝縮し、トラップで2相に分離され、上相の有機相は連続的に反応系内に戻された。溜出が始まってから5時間後、反応物の温度が165℃となり、トラップで分離された下相の水量は38mlで一定化した。系内は結晶が析出しスラリー状態であった。反応スラリーを少量サンプリングし、HPLCにて分析した結果、組成(重量比)は、4,4’−BS/2,4’−BS/トリヒドロキシトリフェニルジスルホン=96.0/3.0/1.0であった。
その後、実施例1と同様にして、後処理操作を行った結果、237gの結晶を得た。得られた結晶の組成(重量比)は、4,4’−BS/2,4’−BS/トリヒドロキシトリフェニルジスルホン=99.5/0.5/0であり、仕込んだ硫酸に対する4,4’−BS収率は94%であった。
なお、得られた結晶にはベンゼン−1,3−ジスルホン酸及びフェノールスルホン酸を主成分とするスルホン酸類は検出されなかった。
メシチレンの代わりに3,4−ジクロロトルエン208gを用いた以外は、実施例1と同様の方法により脱水反応を行い、反応懸濁液を得た。反応懸濁液を少量サンプリングし、HPLCにて分析した結果、その組成(重量比)は、4,4’−BS/2,4’−BS/トリヒドロキシトリフェニルジスルホン=91.5/7.0/1.5であった。
次に、実施例1と同様の方法によって、反応懸濁液中の結晶を完全に溶解した後、溶液を冷却して、203gの結晶を得た。得られた結晶の組成(重量比)は、4,4’−BS/2,4’−BS/トリヒドロキシトリフェニルジスルホン=99.3/0.7/0であり、仕込んだ硫酸に対する4,4’−BSの収率は、81%であった。なお、得られた結晶からは、フェノールスルホン酸などのスルホン酸類は検出されなかった。
メシチレンの代わりに1,2,4−トリクロロベンゼン240gを用いた以外は、実施例1と同様の方法により脱水反応を行い、反応懸濁液を得た。反応懸濁液を少量サンプリングし、HPLCにて分析した結果、その組成(重量比)は、4,4’−BS/2,4’−BS/トリヒドロキシトリフェニルジスルホン=90.7/7.6/1.7であった。
次いで、フェノールの代わりにクレゾール190gを反応懸濁液に追加した以外は、実施例1と同様の方法によって、反応懸濁液中の結晶を完全に溶解した後、溶液を冷却することにより200gの結晶を得た。得られた結晶の組成(重量比)は、4,4’−BS/2,4’−BS/トリヒドロキシトリフェニルジスルホン=99.4/0.6/0であり、仕込んだ硫酸に対する4,4’−BSの収率は、80%であった。なお、得られた結晶からは、フェノールスルホン酸などのスルホン酸類は検出されなかった。
比較例1
実施例1と同様に脱水反応を行った後、フェノールを追加せずそのまま40℃まで冷却し、析出した結晶を濾別し、洗浄および乾燥した。得られた結晶は、245gであり、その組成(重量比)は、4,4’−BS/2,4’−BS/トリヒドロキシトリフェニルジスルホン=92.5/6.0/1.5であった。また、得られた結晶には、フェノールスルホン酸を主成分とするスルホン酸類が2%含まれており、仕込んだ硫酸に対する4,4’−BS収率は、89%であった。

Claims (10)

  1. フェノールとスルホン化剤又はフェノールスルホン酸とを脱水反応させて4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを製造する方法において、
    芳香族系非極性溶媒の存在下において、生成したジヒドロキシジフェニルスルホンを懸濁させながら前記脱水反応を行い、
    得られた反応懸濁液に極性溶媒を混合し、ジヒドロキシジフェニルスルホンの少なくとも一部を溶解させた後、
    4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを晶析させることを特徴とする高純度4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法。
  2. フェノールとスルホン化剤又はフェノールスルホン酸とを脱水反応させて4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを製造する方法において、
    芳香族系非極性溶媒の存在下において、生成したジヒドロキシジフェニルスルホンを懸濁させながら前記脱水反応を行い、
    得られた反応懸濁液に極性溶媒を混合し、ジヒドロキシジフェニルスルホンの少なくとも一部を溶解させた後、
    4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを一次晶析させ、得られた4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンをろ過またはデカンテーションによって分離することにより、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを製造し、
    且つ、得られた分離液について、懸濁液となるかまたは蒸留乾固するまで溶媒を蒸発させ、
    得られた懸濁液中の固形分または残渣の少なくとも一部を極性溶媒と非極性溶媒との混合溶媒に溶解させ、
    次いで、4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを二次晶析させることを特徴とする高純度4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを製造する方法。
  3. フェノールとスルホン化剤又はフェノールスルホン酸との脱水反応を酸触媒の存在下に行うことを特徴とする請求項1又は2に記載の高純度4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法。
  4. 芳香族系非極性溶媒が、メシチレンであることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の高純度4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法。
  5. 極性溶媒が、炭素数4〜15の高級アルコール、多価アルコールおよびフェノール類から選ばれることを特徴とする請求項1〜4の何れかに記載の高純度4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法。
  6. 極性溶媒が、フェノールであることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の高純度4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法。
  7. 反応懸濁液と極性溶媒とを混合し、加圧下に加熱しながらジヒドロキシフェニルスルホンの少なくとも一部を溶解させることを特徴とする請求項1〜6の何れかに記載の高純度4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法。
  8. 得られた懸濁液中の固形分または残渣の少なくとも一部を、加圧下に加熱しながら極性溶媒と芳香族系非極性溶媒との混合溶媒に溶解させることを特徴とする請求項2〜7の何れかに記載の高純度4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法。
  9. 二次晶析によって得られた4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンを、フェノールとスルホン化剤又はフェノールスルホン酸とを脱水反応させる前又は脱水反応後に反応系に加えることを特徴とする請求項2〜8のいずれかに記載の高純度4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法。
  10. 一次晶析させた4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンをろ過またはデカンテーションすることによって得られた分離液について、懸濁液となるかまたは蒸留乾固するまで溶媒を蒸発させ、懸濁液となった後または蒸発乾固後も異性化温度以上に保持する請求項2に記載の高純度4,4’−ジヒドロキシジフェニルスルホンの製造方法。
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