JP4495917B2 - 画像表示装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、空間光変調素子により変調された光をスクリーン等の表示面に投射結像して表示する画像表示装置に関する。この発明の画像表示装置は、実像を投射するフロントプロジェクタ、リアプロジェクタや、虚像を投射するヘッドマウンテッドディスプレイ、ビユ−ファインダ等として実施できる。
【0002】
【従来の技術】
プロジェクタ装置の高解像化の方法として、DMDやライトバルブなどの空間光変調素子の画素数を増加することなく表示画素数を増やす「画素ずらし表示」方式が提案されている(特許文献1等)。この方式は「空間光変調素子上の画素を拡大表示する位置」を光学的手段などにより1画素以下ずらして時分割表示し、ずらして表示される各々の画素には必要に応じて異なる画像情報を与えることにより見掛け上空間光変調素子の画素数よりも多くの画素を表示する方式である。
【0003】
「画素ずらし表示方式」による画像表示では、「画素ずらしをしない場合と同一の大きさの画素像」をスクリーン上に表示すると、画素をずらした際に、ずらされた画素が隣接する画素領域と重なって表示画像の画質を劣化させるので、スクリーン上に表示される「画素像のサイズ」を縮小することが好ましい。
【0004】
画素像のサイズを縮小する方法として、透過型液晶パネルの画素と1:1に対応させたマイクロレンズのアレイにより、光源側からの光をマイクロレンズごとに集光し、各マイクロレンズに対応する画素を「画素の開口よりも小さいスポット」で照明する方法が提案されている(特許文献2)。
【0005】
上記のような「画素ずらし表示方式」によれば、空間光変調素子の有する画素数よりも多くの画素を「見掛け上」表示することができるが、このように表示される「画素数を見掛け上増大された画像」の像質に関しては、従来、問題とされてきていない。
【0006】
発明者らの研究により「画素ずらし表示方式で表示される画像の画質は、スクリーン上における画素フィールド内の光強度の分布に左右される」という知見が得られた。
【0007】
【特許文献1】
特開平04−113308号公報
【特許文献2】
特開平09−054554号公報
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
この発明は、発明者らにより得られた上記知見に基づき、画素ずらし表示方式による画像表示を行う画像表示装置において、画質の優れた画像の表示を実現することを課題とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
この発明の画像表示装置は「多数の画素が2次元的に配列された空間光変調素子により光変調された光を投射結像光学系により表示面上に導光し、各画素により光変調された光束が、対応する画素表示領域よりも小さい画素フィールドに画素像を結像するようにして結像させ、各画素の画素フィールド位置を時間と共にずらすことにより、各画素表示領域に表示画素像を表示する画像表示装置」であって、光強度分布設定手段を有する(請求項1)。
【0010】
「光強度分布設定手段」は、各画素フィールドに表示される画素像の光強度分布が、画素フィールドの中心を外れた位置にピークを持つ所定の分布となるように、照明光源からの光束を各画素に収束させる「収束特性」を設定される。
【0011】
ここで、用語につき簡単に説明する。
「空間光変調素子」は、多数の画素が2次元的に配列されたもので、各画素単位で透過光もしくは反射光の強度を変調できるものであり、具体的には液晶パネル等の各種ライトバルブやDMD等である。従って、透過光もしくは反射光の光強度を変調できる1単位が「画素」である。
【0012】
「多数の画素の2次元的な配列」は、碁盤目状のように直交2方向の直線的な配列でも良いし、所謂「千鳥状(あるいはハニカム状)」でもよい。
【0013】
「表示面」は、空間光変調素子により空間変調された光が投射結像光学系により「画像」として表示される面であり、一般には「スクリーン」である。
【0014】
「画素表示領域」は、表示面上において、1画素に割り当てられた面積領域である。例えば、空間光変調素子において、水平方向にN個、鉛直方向にM個の画素が碁盤目状に配列している場合、空間光変調素子に表示される画像をスクリーン上に横:LH(mm)、縦:LV(mm)に表示するものとすれば、スクリーン上で「横:LH/N(mm)、縦:LV/M(mm)の領域」が、空間光変調素子の1画素に割り当てられる面積領域で、これが「画素表示領域」である。
【0015】
「画素フィールド」は、空間光変調素子の1画素で光変調された光が、投射結像光学系により表示面上に結像されたときの結像領域をいう。前述の如く「画素フィールドは画素表示領域より小さ」く、1つの画素表示領域内で、画素フィールド位置が時間とともにずらされることにより、各画素表示領域に表示画素像が表示される。
【0016】
即ち「表示画素像」は、複数の画素フィールドに結像される画素像が、時間と共に位置を変化されることにより、1つの画素表示領域に表示する像である。1つの画素表示領域においては各瞬間には、1つの画素フィールドのみの結像が行われているが、画素フィールドの位置が高速で切り替わることにより、観察者の残像として、複数の画素フィールドに結像された各画像が合成されて「表示画素像」をなす。そしてスクリーン上に観察されるのは表示画素像の集合像である。
【0017】
図1に上記「画素表示領域」と「画素フィールド」の関係を概念的に示す。 この図は「4つの画素フィールドで1つの表示画素像を表示」する場合を想定している。符号GHで示す桝目状部分の1つが「画素表示領域」である。符号F1〜F4は画素フィールドを示している。
【0018】
画素フィールドに表示する画素像を、例えば、画素フィールドF1、F2、F3、F4の順に高速で切り換えると、観察者には、残像として画素フィールドF1〜F4の画像が合成され、画素表示領域GHに表示された「表示画素像」として観察されることになる。
【0019】
「画素表示領域」はもともと、空間光変調素子における1画素に割り当てられた領域であり、画素フィールドF1〜F4に表示される画素像は「空間光変調素子における同一画素によるもの」である。従って、画素フィールドF1〜F4による表示を行うことにより、見かけ上、即ち、観察者の観察としては「空間光変調素子の画素密度に対して4倍の画素密度の画像」が表示されることになる。画素フィールドの数をさらに増やせば見掛けの画素密度はさらに高くなる。
【0020】
図1に示したように、画素フィールドは相互に重なり合うし、隣接する画素表示領域へもはみ出す。しかし、画素フィールドは「画素表示領域よりも小さ」いので、相互の重なり幅や隣接する画素表示領域へのはみ出し量も大きくは無い。
【0021】
この発明では「画素フィールド相互の重なりや隣接する画素表示領域へのはみ出し」をも考慮しつつ、各画素表示領域における合成画像に「ジャギー」や「画素フィールドの隙間」が目立たず、「表示画素像間のボケ」も少なくなるように、各画素フィールドに表示される画素像の光強度分布を「画素フィールドの中心を外れた位置にピークを持つ所定の分布」となるように設定し、この光強度分布を実現するように「照明光源からの光束を各画素に向って収束させる光強度分布設定手段の収束特性を設定する」のである。
【0022】
上記「画素フィールドの中心を外れた位置にピークを持つ所定の分布」は、そのピーク値に対する相対比率(%)を、各画素フィールド用表示領域におけるフィールド中心においてA、フィールド中心から画素フィールド用表示領域全幅の1/5、2/5、4/5だけ離れた位置における相対比率を、それぞれB、C、Dとするとき、これらを設定することにより特定できる。
【0023】
上記「画素フィールド用表示領域」は、1つの画素表示領域に表示される画素フィールドの数をnとするとき、画素表示領域をn個の等面積・等形状に分割した各分割部分を言う。例えば、図1の例の如く、1つの画素表示領域GHに表示される画素フィールドがF1〜F4の4個である場合であれば、画素フィールドごとに対応させて、画素表示領域GHを縦横方向に2等分ずつして得られる4個の正方形形状の領域(画素表示領域の1/4の大きさを持ち、各々画素表示領域GHと相似形である。)の個々が画素フィールド用表示領域である。
【0024】
良好な画像表示を実現できるための、上記A〜Dの組合せは幾通りかある。
【0025】
例えば、
A≧65、B≧60、C≧30、D≦18
を満足する設定は好ましいものの1つである。
【0026】
A〜Dの好ましい設定例としては、他に、
A≧30、B≧60、C≧41.2、D≦18
を満足する設定、
A≧30、B≧60、C≧30、D≦12
を満足する設定、
A≧30、B≧80、C≧30、D≦18
を満足する設定、
A≧30、B≧60、C≧65、D≦18
を満足する設定を挙げることができる。
【0027】
請求項1記載の画像表示装置は「照明光源からの光束を各画素に向って収束させる光強度分布設定手段」、「空間光変調素子の画素配列に対応してアレイ配列されたマイクロミラーアレイ」である点に特徴がある。
【0028】
請求項1記載の画像表示装置は「各画素により光変調された光束を、光強度分布設定手段の作用により画素よりも小さく集光し、投射結像光学系により、上記集光の位置もしくはその近傍を物体面として表示面上に結像させる」ように構成することができる(請求項2)
即ち、光強度分布設定手段は、光源からの光束を、空間光変調素子における各画素に向って収束させる。その収束位置は画素上であってもよいが、必ずしも画素上である必要はない。
【0029】
光源側からの光束は、光強度分布設定手段により画素に向って収束される。そして、収束する光束が画素により光変調されて「画素よりも小さくなる部分」を物体面として、投射結像光学系により表示面上に結像させるので、表示面上における画素フィールドは「画素表示領域よりも小さく」なる。
【0030】
このとき、表示面の画素フィールドに形成される画素像の光強度分布は、上記物体面における「収束する光束が画素よりも小さくなった部分」における強度分布の拡大像である。従って上記「収束する光束が画素よりも小さくなった部分」における強度分布が、表示面上において上記所定の光強度分布を実現するように、光強度分布設定手段による収束特性を設定するのである。
【0031】
【発明の実施の形態】
図2は、画像表示装置の実施の1形態を示している。この画像表示装置は、3板式のカラー画像表示装置であり、「ライトバルブ」として赤・緑・青用の3枚の「反射型の液晶パネル」を用いるものである。
【0032】
光源装置1から放射された照明用の白色光(「ロッドインテグレータなどの照度均一化手段」が用いられ、空間光変調素子の全域に対する照度分布を均一化する処理が施されている。)は平行光束に近い光束にされており、偏光器2により「偏光面が図面に直交する方向となる直線偏光」とされ、偏光ビームスプリッタ3に「S偏光」として入射し、偏光ビームスプリッタ3によりダイクロイックプリズム4に向けて反射される。
【0033】
ダイクロイックプリズム4は、入射してくる白色光のうち「赤色成分」を反射させて赤成分画像用の液晶パネル(反射型)5Rに入射させ、「青色成分」を反射させて青成分画像用の液晶パネル5Bに入射させ、「緑色成分」を透過させて緑色成分画像用の液晶パネル5Gに入射させる。
【0034】
液晶パネル5R、5G、5Bにはそれぞれ、表示すべきカラー画像の赤成分画像・緑成分画像・青成分画像が表示される。各液晶パネルに入射した光は反射されてダイクロイックプリズム4に戻るが、このとき、表示すべき各成分画像における「明部」では偏光面が当初の状態から90度旋回され、「暗部」では偏光面は当初の状態に保たれるように光変調が行われる。かくして、各色照明光は、各液晶パネルにより赤・緑・青の各成分画像に応じ「偏光面の向き」の分布として空間光変調される。
【0035】
各液晶パネル5R、5G、5Bにより空間光変調された光は、ダイクロイックプリズム4により「色合成」され、偏光ビームスプリッタ3に入射する。「画像の明部」を構成する光は偏光面が当初の状態から90度旋回しているので、偏光ビームスプリッタ3に対してP偏光として入射し、同スプリッタ3を透過する。「画像の暗部」となる光は当初の偏光状態を保っているので、偏光ビームスプリッタ3により反射される。このようにして、偏光ビームスプリッタ3を透過した光が、カラー画像を形成する結像光束となる。
【0036】
この結像光束は、光路シフト手段6を介して投射結像光学系7に入射し、投射結像光学系7の結像作用により、スクリーン8上にカラー画像を形成する。
【0037】
このとき、スクリーン8上に結像する各画素に対応する画素像は「画素表示領域よりも小さい画素フィールド」に結像している。説明の具体性のために、画素フィールド4つで単位の「表示画素像」を構成するものとする。
【0038】
各液晶パネルでは、1つの表示画素像を構成する4つの画素フィールドの画素像を微小時間間隔で表示し、これに同期して光路シフト手段6が、結像光束の光路を上下・左右にシフトさせる。このようにして各液晶パネル5R〜5Gの画素密度に対して、見掛け上4倍の画素密度を持ったカラー画像をスクリーン8上に観察できる。
【0039】
前述の如く、各液晶パネルを照明する照明光束は「ロッドインテグレータなどの照度均一化手段」により液晶パネルの画素配列全域に対する照度分布を均一化されているので、表示されるカラー画像も全体としては均一な明るさである。
【0040】
図3に、反射型の液晶パネルの代表的な構成例を3例示す。
図3(a)に示すものは、LCOS(Liquid crystal on silicon)51上に接着剤層52によりマイクロレンズアレイ53を一体化したものである。LCOSは「シリコン基板上に反射面を形成し、その上に、透明な画素電極で挟持された液晶層を形成したもの」である。
【0041】
図3(b)に示すものは、LCOS51上に接着剤層52によりマイクロレンズアレイ53Aを一体化したものである。この例では、マイクロレンズのアレイが、マイクロレンズアレイ53とは逆の側の面に形成されている。
【0042】
図3(c)に示すものは、LCOS51上に接着剤層52によりマイクロレンズアレイ53Aを一体化し、その上にさらに接着剤層54により透明基板55を一体化したものである。
【0043】
これら液晶パネルにおける「画素の配列」は、碁盤目状やハニカム状であり、画素配列はマイクロレンズアレイ53等におけるマイクロレンズの配列と1:1に対応している。照明光は図5(a)〜(c)の上側から照射され、マイクロレンズアレイ53、53Aの各マイクロレンズにより集光され、対応する画素を照射する。図3に示した3例の液晶パネルは、何れも、図2の実施の形態における液晶パネル5R、5G、5Bとして使用することができる。
【0044】
図5は、説明中の実施の形態において、各液晶パネルにおけるマイクロレンズ530の作用を示している。光源側からの光束(ここでは平行光束としているが必ずしもこれに限らず、発散性や収束性であることもあり得る。)はマイクロレンズ530の収束作用により、液晶パネルの対応する画素に向って収束され、収束途上において上記画素の反射面510で反射され、再度マイクロレンズ530に入射し、マイクロレンズ530の上方(スクリーン側)において集光する。
【0045】
図においては、マイクロレンズ530を上側へ透過した光束が1点で集光しているように描かれているが、実際には「有限の広がりを持った光スポット」として集光することになる。各画素に対応した集光点は同一面540上にあり、投射結像光学系は、この面540を「物体面」として、各画素に応じた光スポットを表示面であるスクリーン上に結像させる。このとき結像される個々の光スポット像(画素像)の結像領域が「画素フィールド」である。
【0046】
画素フィールドの物点となる上記物体面上の各「光スポット」は、液晶パネルにおける各画素よりも小さく(画素の大きさの1/2程度、面積にして1/4程度)集光しているので、その像が結像する画素フィールドは「画素表示領域」よりも小さくなる(画素表示領域の面積の1/4程度)。
図4は、スクリーン上における画素表示領域と画素フィールドの関係を示している。太線の枠が画素表示領域GHを示し、破線の円形F1が画素フィールドを示す。画素フィールドの位置を上下左右に変位させて、画像表示領域GHに画像を合成的に表示することは、先に図1に即して説明したとおりである。
【0047】
ところで、この発明の対象である画像表示装置において一般的に用いられる光源装置は「ランプ光源」であって、その照度分布は良く知られたように「照明光束の中心強度がやや落ち込んだ特性」であることが多い。図6は、このような照度分布の典型例を示している。照度分布は軸対称的である。
【0048】
画像表示装置における各画素の結像を考えると、スクリーン上の各画素フィールドに結像されるのは「各画素を通過する光路において、光源とスクリーンとの間にある結像光学系による光源の像」であり、従って、一般的には、各画素フィールドにおける強度分布も、光源の照度分布に類似した分布になる。
【0049】
図4に示すように、画素フィールドF1の周辺部は、隣接する画素フィールドとも重なるし、隣接する画像表示領域へもはみ出している。このような画素フィールドの重なり(同一画素表示領域内での重なり、隣接する画素表示領域の画素フィールドとの重なり)においては、画素フィールドの光強度分布が互いに加え合わせられることになる。
【0050】
このため、表示される画像においては画素像相互間に光強度の不均一が生じやすく、このような光強度の不均一が顕著になると前述したように、スクリーン上の画像に「ジャギー」が発生し、「画素フィールドの隙間」が目立ち、「表示画素像間のボケ」が発生する。
【0051】
そこで発明者らは画像シミュレーションにより、以下の如くしてスクリーン上の表示画像の画質評価を「相対劣化尺度法に準拠した官能評価」で行った。
図4に示す如く、1つの画像表示領域に4つの画素フィールドを表示することとし、1つの画素表示領域GHを画素フィールドに応じて4分割し、分割された各「画素フィールド用表示領域」をさらに5×5の「子領域」に分割した。この分割領域を構成する5×5の子領域の個々に光強度を割り振った。
【0052】
前述の如く、画素フィールドにおける光強度は「中心の回りに軸回転対称」であるので、5×5個の子領域で構成される画素フィールド用表示領域のうち、中央の子領域:a、画素フィールド用表示領域全幅(子領域5つ分の幅)を5等分し、画素フィールド用表示領域の中央から1/5だけ離れた子領域:b、中央から2/5だけ離れた子領域:c、中央から4/5だけ離れた子領域(隣接する画素フィールドもしくは隣接する画素表示領域の画素フィールドと重なり合う子領域):dの4点で、上記光強度分布を特定した。このように「4つの子領域:a〜dに対して、光強度値をそれぞれ独立に設定する」ことにより任意の光強度分布が得られる。
【0053】
官能評価による画質評価は5段階評価とし「表示画像のぼけ方、エッジのジャギー、細線の分離性、色のにじみ、写真の見映え、文字の見易さ」などを総合評価し、5点を最良点として4点以上を満たす条件について検討した。
【0054】
光強度分布のピーク値を100とし、上記各子領域:a、b、c、dにおける光強度分布の上記ピーク値に対する相対比率(%)をA、B、C、Dとした。 光源の照度分布が図6に示すように「照明光束の中心強度がやや落ち込んだ特性」であることに鑑み、画素フィールドにおける光強度分布においても、光強度分布のピーク値が画素フィールドの中央部(子領域:a)を外れている場合を調べた。
【0055】
その結果、まず、A≧65、B≧60、C≧30、D≦18なる場合において5段階評価で4以上の評価結果が得られた。
この場合において、A=65、B=60、C=30、D=18の場合の光強度分布を図7に示す。
【0056】
上記結果において、相対比率:Aの値を下げた場合にも4以上の評価結果が得られる条件は、
A≧30、B≧60、C≧41.2、D≦18、
であることがわかった。パラメータCの範囲は狭くなったがパラメータAの範囲は広くなっている。
【0057】
また、
A≧30、B≧60、C≧30、D≦12
の条件でも4以上の評価結果が得られた。パラメータDの範囲は狭くなったが、パラメータCの範囲は広くなっている。
【0058】
さらに、
A≧30、B≧80、C≧30、D≦18
の条件でも4以上の評価結果が得られた。パラメータBの範囲は狭くなったがパラメータDの範囲は広くなっている。
【0059】
また、
A≧30、B≧60、C≧65、D≦18
の条件でも4以上の評価結果が得られた。パラメータCの範囲は狭くなったがパラメータBの範囲は広くなっている。
【0060】
上記の各結果から「画素フィールド中心における光強度がピーク値になっていなくてもよい」ことがわかった(請求項1)。
【0061】
上記のような「画素フィールドにおける中心光強度が落ちるような光強度分布のプロファイル」が許容されると、このプロファイルの周辺分布状態を最適化し易くなり、最適設計が容易化されるという副次的効果が得られる。
【0062】
官能評価の解析結果から得られた重要なことは、表示面上の画素フィールドにおける画素像の光強度分布は「強度ピークが中心になくとも良い」こと、強度ピークが画素フィールドの中心から「やや外れたところ」にあっても、画素フィールドの境界外側、すなわち隣接する画素フィールドに重複するプロファイルの減衰率が高ければ良いことである。
【0063】
今回検討した相対比率:A〜Dの寄与率は以下のようで、C、D、A、Bの順に高いことがわかった。
【0064】
Figure 0004495917
評価した範囲内で最良の結果はA=60、B=100、C=80、D=6なる条件を満たす分布である。
【0065】
マイクロレンズを空間光変調素子の画素の各々と1:1に設け、マイクロレンズによって空間光変調素子から放射する光束を集光し、その集光像を拡大投射系によって表示面に結像させると、表示面上の画素フィールドのサイズを縮小できる。このようにすると画素ずらし表示したときに互いの画素フィールドの重なり合いが少ないので画素フィールド相互の分離性が高くなる。
【0066】
ここで、マイクロレンズによって収束された光束の光強度分布は、マイクロレンズの光学諸元(曲率半径、非球面係数、肉厚、屈折率、マイクロレンズの前後に他の材料がある場合にはこれらのパラメータも含まれる。)によって調整できる。この調整により表示面上における画素フィールドの光強度分布を調整でき、このことを利用して画素フィールドにおける画素像の光強度分布として、上記の如く、官能評価で4点以上となるような光強度分布を実現できる。
【0067】
例えば、上記の如く「光強度分布設定手段」としてマイクロレンズアレイを用いる場合であれば、光線追跡法により画素フィールドの光強度分布が上記の如き分布となるような「個々のマイクロレンズの非球面形状」を、光線追跡法を用いて最適化すればよい。これに伴い「収束特性」が定まる。
【0068】
この調整方法は「空間光変調素子から放射される光束の集光状態によって分布を変形する手段」であるので光量ロスはない。よって、表示装置の光利用効率を低下させることはない。
【0069】
請求項1記載の画像表示装置では、上記の説明におけるマイクロレンズのかわりにマイクロミラーを用いる。この場合の実施の形態としては、例えば、反射型の空間光変調素子の「画素の反射面」自体を「非球面の凹面ミラー」にすればよい。この場合も、上記と同様に収束光束の光強度分布を変形でき、マイクロレンズを用いた場合と同様の効果が得られる。
【0070】
結像光束は、投射結像光学系を通過して表示面に導光されるので、厳密に言えば、投射結像光学系も「画素フィールドにおける光強度分布の変形」に寄与するが、分布の決定に支配的なのはマイクロレンズもしくはマイクロミラーにより収束される光束の収束特性である。投射結像光学系は複数の画素から放射された多数の光束が各々異なる位置を通過する状態で用いられるので、各光束について光強度分布をポジティブにコントロールすることは難しい。
【0071】
マイクロレンズあるいはマイクロミラーによる集光像を投射結像光学系で再結像する系において、マイクロレンズないしマイクロミラーによる収束光束が最も収束する位置から光軸方向の前後にデフォーカスした位置では、光強度分布特性が異なっている。そこで、投射結像光学系に対する物体面を、上記集光位置の前後に移動することによって、前記の集光位置前後の分布を表示面上に再生し、画素フィールドにおける光強度の分布形状を変えることもできる(請求項2)。
【0072】
勿論、投射結像光学系をデフォーカスさせる場合には、表示面の位置もデフォーカスさせる。
【0073】
光強度分布設定手段としては、上に説明したものの他、マイクロレンズアレイを2段以上設けるものや、マイクロレンズアレイとマイクロミラーアレイをハイブリッド構成するなどの構成例も可能である。空間光変調素子も、反射型のもののみならず、透過型のものを用いることもできることは言うまでもない。
【0074】
また、上には3枚の液晶パネルを用いてカラー画像を表示する実施の形態を示したが(図2)、これに限らず、1枚の液晶パネルを用い、カラースクロールフィルタ等で液晶パネルに照射する光の色を赤・緑・青に順次切り換える「フィールドシーケンシャル方式の画像表示装置」に対してもこの発明を実施できることは言うまでもない。
【0075】
【発明の効果】
以上に説明したように、この発明によれば新規な画像表示装置を実現できる。この発明の画像表示装置は上記の如く、表示面上に表示される画像の画素密度を見掛け上「空間光変調素子の画素密度」より増大させることができ、且つ、通常の光源の有する「中心光強度が落ちるような光強度分布のプロファイル」に拘らず、表示画像のぼけ、エッジのジャギーや色のにじみが目立たず、細線の分離性、写真の見映え、文字の見易さが良好な画像を表示できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】画素表示領域GHと画素フィールドF1〜F4の関係を説明する図である。
【図2】画像表示装置の1例を説明するための図である。
【図3】空間光変調素子としての液晶パネルの構成の3例を示す図である。
【図4】この発明の特徴部分を説明するための図である。
【図5】液晶パネルにおけるマイクロレンズの作用を説明するための図である。
【図6】画像表示装置の光源からの光束の照度分布の一般的なプロファイルを示す図である。
【図7】表示面上の画素フィールド内における光強度分布の1例を示す図である。
【符号の説明】
GH 画素表示領域
F1〜F4 画素フィールド
5R〜5G 液晶パネル(空間光変調素子)
530 マイクロレンズ

Claims (2)

  1. 多数の画素が2次元的に配列された空間光変調素子により光変調された光を投射結像光学系により表示面上に導光し、上記各画素により光変調された光束が、対応する画素表示領域よりも小さい画素フィールドに画素像を結像するようにして結像させ、各画素の画素フィールド位置を時間と共にずらすことにより、各画素表示領域に表示画素像を表示する画像表示装置において、
    照明光源からの光束を各画素に向って個別的に収束させる光強度分布設定手段として、空間光変調素子の画素配列に対応してアレイ配列されたマイクロミラーアレイを用い、
    各画素フィールドに表示される画素像の光強度分布が、画素フィールドの中心を外れた位置にピークを持つ所定の分布となるように、
    上記マイクロミラーアレイの収束特性を設定したことを特徴とする画像表示装置。
  2. 請求項1記載の画像表示装置において、
    各画素により光変調された光束が、光強度分布設定手段であるマイクロミラーアレイの作用により上記画素よりも小さく集光させられ、投射結像光学系が、上記集光の位置もしくはその近傍を物体面として表示面上に結像させることを特徴とする画像表示装置。
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