JP4493755B2 - バッカチン誘導体の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、バッカチン誘導体の製造方法に関し、詳しくは7位及び10位の水酸基を保護したバッカチンに対して触媒非存在下(無触媒条件下)にβ−ケトエステルを反応させることにより、13位にこれが結合したバッカチン誘導体を製造する方法に関し、さらにはこの方法で製造されるバッカチン誘導体に関する。
このバッカチン誘導体は、パクリタクセルなどのタキソイド化合物を調製するための原料として有用である。
【0002】
【従来の技術】
パクリタクセル(商品名、タキソール)は、イチイから採取される抗ガン剤の1種であり、とりわけ乳ガンや肺がんに効能があることが知られている。しかし、イチイから採取されるパクリタクセルはごく少量であり、樹皮をはがすことから森林の破壊が問題となっている。
一方、イチイの葉から採取される10−デアセチルバッカチンIII は、再採取が可能であり、パクリタクセルやその誘導体であるドセタクセル(商品名、タキソテール)の前駆体として有用である。
該物質の合成法は半合成法として知られており、これまでに(a)βラクタムを使用する方法(ヨーロッパ特許第0400971号)、(b)オキサゾリン化合物を使用する方法(特表平7−504444号)、(c)チオエステル化合物を使用する方法(特表平10−505360号)、(d)ケイ皮酸を使用する方法(テトラヘドロン、第42巻、4451頁(1986年))等が報告されている。これらの方法は、バッカチンの無保護の13位の水酸基にカルボン酸化合物を結合させるエステル化反応もしくは活性化したカルボン酸(チオエステル)を用いたエステル化反応である。
【0003】
一般にエステル化合物を調製する方法としては、ピリジンや4−ジメチルアミノピリジンなどの塩基存在下、ジシクロヘキシルカルボジイミドやジイソプロピルカルボジイミドなどの縮合剤を用いてカルボン酸化合物とアルコール化合物を結合させる方法や酸無水物・酸ハロゲン化物を用いて、これとアルコール化合物を結合させる方法が知られている。
また、エステル化合物とアルコール化合物を用いるエステル交換反応についても、ケミカル レビュー、第93巻、1449頁(1993年)やジャーナル オブ オルガニック ケミストリー、第50巻、3618頁(1985年)などの文献に記載されている様に、一般的な方法として知られている。
【0004】
これまでに、13位の水酸基上に側鎖部分を導入する反応は、上記の様にカルボン酸及び活性化カルボン酸(チオエステル)を結合させる方法である。エステル交換反応により13位の水酸基に側鎖部分を導入する方法として、本発明者らはスズ化合物もしくはアミン塩基の存在下で、側鎖部分の前駆体としてβ−ケトエステルを導入する方法を報告している(特願平11−037055)。
この方法によれば、容易にβ−ケトエステルを導入できるが、スズ化合物、アミン塩基を抽出等で取り除く必要がある。
【0005】
一般的にエステル交換反応は、硫酸やp−トルエンスルホン酸などの酸触媒、4−ジメチルアミノピリジンや1、8−ジアザビシクロ[5、4、0]ウンデセンなどのアミン塩基、チタンテトラアルコキシド等の存在下で行なわれるが、アルコールとエステルのみで反応が進行する場合についても、ジャーナル オブ ザ アメリカン ケミカル ソサエティー、4195頁(1951年)などで報告されている。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明者らは上記事情に鑑み、これまでに知られている無触媒でのエステル交換反応による側鎖部分前駆体の導入方法について研究を重ね、バッカチンの13位の水酸基にβ−ケトエステルをエステル結合により結合させたバッカチン誘導体の製造方法の開発を試みた。
その結果、触媒非存在下、好ましくは減圧条件においてバッカチンにβ−ケトエステルを反応させると、β−ケトエステルがエステル交換反応によりエステル結合することを見出し、本発明に到達したのである。
【0007】
【課題を解決するための手段】
請求項1記載の本発明は、一般式(I)で表されるバッカチンを触媒非存在下でβ−ケトエステルと反応させることによって、前記バッカチンの13位の水酸基にエステル交換反応により前記β−ケトエステルを導入して得ることを特徴とする、一般式(II)で表されるバッカチン誘導体の製造方法である。
【0008】
【化17】
【0009】
(R1 およびR2 はトリエチルシリル基、ベンジルオキシカルボニル基、アセチル基、アリルオキシカルボニル基のいずれか1つである水酸基の保護基を示し、Bzはベンゾイル基を示す。)
【0010】
【化18】
【0011】
(R1 およびR2 はトリエチルシリル基、ベンジルオキシカルボニル基、アセチル基、アリルオキシカルボニル基のいずれか1つである水酸基の保護基を、R3 はフェニル基、p−メトキシフェニル基、2−フリル基、o−トリフルオロメチルフェニル基、m−フルオロフェニル基、シクロヘキシル基、o−フルオロフェニル基、p−フルオロフェニル基、p−トリフルオロメチルフェニル基、m−トリフルオロメチルフェニル基、シクロプロパニル基、2−オキソシクロペンチル基、2−メチルフェニル基のいずれか1つを、R4 はメチル基もしくはエチル基を示し、Bzはベンゾイル基を示す。)
【0012】
請求項2記載の本発明は、反応を、減圧下で行う請求項1記載の製造方法である。
【0013】
請求項3記載の本発明は、前記R 1 がトリエチルシリル基であり、前記R 2 がベンジルオキシカルボニル基、アセチル基、アリルオキシカルボニル基のいずれか1つである、請求項1又は2記載のバッカチン誘導体の製造方法である。
【0014】
請求項4記載の本発明は、前記β−ケトエステルが、p−メトキシベンゾイル酢酸メチル、o−トリフルオロメチルベンゾイル酢酸メチル、m−トリフルオロメチルベンゾイル酢酸メチル、p−トリフルオロメチルベンゾイル酢酸メチル、o−フルオロベンゾイル酢酸メチル、m−フルオロベンゾイル酢酸メチル、2−フラノイル酢酸メチル、シクロヘキサイル酢酸メチル、2−オキソシクロペンチル酢酸メチル、2−メチルベンゾイル酢酸メチル、p−フルオロベンゾイル酢酸メチル、シクロプロパノイル酢酸メチルのいずれか1つである、請求項1〜3のいずれかに記載のバッカチン誘導体の製造方法である。
【0015】
請求項5記載の本発明は、前記一般式(I)で表されるバッカチンが、イチイの葉より採取される10−デアセチルバッカチンIIIである、請求項1〜4のいずれかに記載のバッカチン誘導体の製造方法である。
【0016】
請求項6記載の本発明は、請求項1に記載の前記一般式(II)で表されるバッカチン誘導体である。
(R1 およびR2 はトリエチルシリル基、ベンジルオキシカルボニル基、アセチル基、アリルオキシカルボニル基のいずれか1つである水酸基の保護基を、R3 はフェニル基、p−メトキシフェニル基、2−フリル基、o−トリフルオロメチルフェニル基、m−フルオロフェニル基、シクロヘキシル基、o−フルオロフェニル基、p−フルオロフェニル基、p−トリフルオロメチルフェニル基、m−トリフルオロメチルフェニル基、シクロプロパニル基、2−オキソシクロペンチル基、2−メチルフェニル基のいずれか1つを、R4 はメチル基もしくはエチル基を示し、Bzはベンゾイル基を示す。)
【0017】
請求項7記載の本発明は、一般式(III)で表されるバッカチン誘導体である。
【0018】
【化19】
【0019】
(R1 およびR2 はトリエチルシリル基、ベンジルオキシカルボニル基、アセチル基、アリルオキシカルボニル基のいずれか1つである水酸基の保護基を示す。nは1から5の整数である。Bzはベンゾイル基を示す。)
【0020】
請求項8記載の本発明は、前記R 1 がトリエチルシリル基であり、前記R 2 がベンジルオキシカルボニル基、アセチル基、アリルオキシカルボニル基のいずれか1つである、請求項6又は7記載のバッカチン誘導体である。
【0021】
請求項9記載の本発明は、請求項1〜5に記載の製造方法によって得られる、以下の構造式で表されるいずれか1つの化合物である、バッカチン誘導体である。(構造式中、Bzはベンゾイル基を示す。)
【0022】
【化20】
【0023】
【化21】
【0024】
【化22】
【0025】
【化23】
【0026】
【化24】
【0027】
【化25】
【0028】
【化26】
【0029】
【化27】
【0030】
【化28】
【0031】
【化29】
【0032】
【化30】
【0033】
【化31】
【0034】
【化32】
【0035】
【発明の実施の形態】
以下に本発明を詳しく説明する。
本発明に使用するバッカチンは、イチイの葉より採取される10−デアセチルバッカチンIII の類縁体もしくは低分子量の化合物から合成によって得られる化合物を使用することができる。とりわけ10−デアセチルバッカチンIII が発明を効率的に達成するのに適している。
本発明に使用する保護基を導入した10−デアセチルバッカチンIII は、前記一般式(I)によって表される。
【0036】
上記式中における水酸基の保護基としては、例えば「日本化学会編、新実験化学講座、14、有機合成V、第11−1章」に記載されている保護基が挙げられる。具体的にはトリエチルシリル基、ベンジルオキシカルボニル基、アセチル基、アリルオキシカルボニル基などが挙げられる。
【0037】
次に、本発明に使用するβ−ケトエステルは、下記のいずれかの式によって表されるものである。
【化33】
【0038】
(式中、R3 は無置換もしくは置換フェニル基、無置換もしくは置換フリル基、無置換もしくは置換ピリジニル基、アルキル基、ヒドロキシアルキル基、ハロゲン化アルキル基、環状アルキル基、チエニル基のうちのいずれかである。詳しくは、フェニル基、p−メトキシフェニル基、2−フリル基、o−トリフルオロメチルフェニル基、m−フルオロフェニル基、シクロヘキシル基などを挙げることができる。R4 は水素原子もしくはアルキル基であり、アルキル基の具体例としてはメチル基、エチル基などが挙げられる。また、R5 はカルボキシル基とエステルを形成するアルコールの母核であり、メチル基、エチル基、イソプロピル基、アリル基などが挙げられる。)
【0039】
【化34】
(式中、R5 はカルボキシル基とエステルを形成するアルコールの母核であり、具体的にはメチル基、エチル基、イソプロピル基、アリル基などが挙げられる。また、nは1〜5までの整数である。)
【0040】
β−ケトエステルは、市販品を用いてもよく、酸塩化物とアセト酢酸メチルを反応させて調製してもよい。
本発明に用いられるβ−ケトエステルとしては、例えばp−メトキシベンゾイル酢酸メチル、o−トリフルオロメチルベンゾイル酢酸メチル、m−トリフルオロメチルベンゾイル酢酸メチル、p−トリフルオロメチルベンゾイル酢酸メチル、o−フルオロベンゾイル酢酸メチル、m−フルオロベンゾイル酢酸メチル、2−フラノイル酢酸メチル、シクロヘキサノイル酢酸メチル、2−オキソシクロペンチル酢酸メチル、2−メチルベンゾイル酢酸メチルなどがある。
【0041】
バッカチンとβ−ケトエステルの反応は、β−ケトエステルを過剰量(5〜30当量)用いることにより、他の溶媒を加えることなく行なうことができる。しかし、必要に応じて他の溶媒の存在下に反応を行なうこともでき、その際に用いる溶媒としては、例えばジエチレングリコールジメチルエーテル、トリエチレングリコールジメチルエーテル、シメンなどの高沸点溶媒がある。
【0042】
また、この反応は一般的なエステル交換反応で用いられる触媒の非存在下で行なわれる。
さらに、バッカチンとβ−ケトエステルの反応は、常圧下で行なうこともできるが、長時間の反応となるため、アスピレーターや真空ポンプ等の減圧装置を用いて、0.5〜400mmHgの減圧条件で行なうことが好ましい。とりわけ無溶媒で反応を行なうときは、0.5〜1mmHg、溶媒を加えるときは、20〜40mmHgの条件が好適である。反応は、60〜120℃、好ましくは90℃で1.5〜24時間、好ましくは2.5〜5時間行なう。
なお、過剰量のβ−ケトエステルは、減圧するためのライン上でトラップすることにより回収され、再利用が可能である。
【0043】
以下に、バッカチンとして10−デアセチルバッカチンIII を使用した場合を代表例として、本発明を具体的に説明する。
7位及び10位の水酸基を保護した10−デアセチルバッカチンIII は、下記の反応工程Iによって製造することができる。
【0044】
【数1】
反応工程I
【0045】
10−デアセチルバッカチンIII (化合物(1))に塩化トリエチルシリル、イミダゾール及び塩化メチレンを加え、0〜100℃、好ましくは20℃にて0.5〜100時間、好ましくは3時間反応させて、7位の水酸基を保護した10−デアセチルバッカチンIII (化合物(2))を得る。
該化合物(2)に、塩化ベンジルオキシカルボニル、4−ジメチルアミノピリジン、塩化メチレンを加え、−20℃〜30℃、好ましくは0℃にて0.5〜100時間、好ましくは14時間反応させて、10位にベンジルオキシカルボニル基を導入した化合物(3)を得る。
【0046】
7位及び10位の水酸基を保護した10−デアセチルバッカチンIII の13位の水酸基にエステル交換反応によりβ−ケトエステルを導入した化合物は下記の反応工程IIによって製造することができる。
【0047】
【数2】
反応工程II
【0048】
7位及び10位の水酸基を保護した10−デアセチルバッカチンIII 、すなわち化合物(3)にβ−ケトエステルを加え、減圧下80〜120℃、好ましくは90℃にて1.5〜24時間、好ましくは5時間反応させて、エステル化合物(化合物(4))を得る。
【0049】
本発明で得られるバッカチン誘導体は、数工程を経てタキソイド化合物を調製することができる。
得られるタキソイド誘導体としてはパクリタクセルやドセタクセルの他、側鎖部分の3’位にフェニル基以外の官能基を有する化合物、3’位のアミノ基上にベンゾイル基やt−ブトキシ基以外の官能基を有する化合物、7位や10位の水酸基に種々のアシル基が結合した化合物などを得ることができ、これまでに知られている化合物とは異なる抗腫瘍活性を有する化合物を得ることが期待できる。
【0050】
【実施例】
以下に、実施例により本発明を詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
実施例1 (7−トリエチルシリル−10−ベンジルオキシカルボニル−13−(3−フェニル−3−ケト−プロパノイル)−バッカチンIII の製造)
10−デアセチルバッカチンIII (1)を常法により7位の水酸基をトリエチルシリル基、10位の水酸基をベンジルオキシカルボニル基で保護した化合物(化合物(3)、C43H56O12Si 、分子量792.99)79mgに、ベンゾイル酢酸エチルエステル0.343mlを加えて90℃、減圧条件(0.5mmHg)下で3時間反応させた後、この溶液をシリカゲルカラムにて精製しエステル化合物85mg(化合物(4)、C52H62O14Si 、分子量939.14)を得た。
この化合物を重クロロホルムに溶解し、1H-NMRで解析し、それぞれのピークを帰属して構造を決定し、反応工程IIの化合物(4)として示した構造式で表されるものであることを確認した。
【0051】
エステル化合物の1H-NMR(500MHz 、CDCl3)
σ(ppm)
12.51 (0.30H, s), 8.03-8.12 (2H, m), 7.95-8.03 (0.70H*2, m), 7.78-7.85 (0.30H*2, m), 7.30-7.68 (11H, m), 6.32 (0.30H, s), 6.27 (0.70H, s), 6.19-6.30 (1H, m),5.75 (0.30H, s), 5.63-5.72 (1H, m), 5.17, 5.24 (0.30H*2, ABq, J=12.2 Hz), 5.16-5.22 (0.70H*2, ABq, J=12.2 Hz), 4.97 (0.30H, bd, J=8.3 Hz), 4.92 (0.70H, bd, J=7.9 Hz), 4.50 (0.30H, dd, J=10.4, 6.7 Hz), 4.45 (0.70H, dd, J=10.7, 6.7 Hz), 4.26-4.33 (1H, m), 4.09-4.20 (1H+0.70H*2, m), 3.84 (0.30H, d, J=6.7 Hz), 3.79 (0.70H, d, J=7.0 Hz), 2.48-2.59 (1H, m), 2.20-2.44 (2H, m), 2.37 (0.30H*3, s), 2.23 (0.70H*3, s), 2.14 (0.30H*3, d, J=0.9 Hz), 2.01 (0.70H*3, d, J=0.9 Hz), 1.85-1.95 (1H, m), 1.71 (0.30H*3, s), 1.69 (0.70H*3, s), 1.22 (0.30H*3, s), 1.20 (0.70H*3, s), 1.19 (0.30H*3, s), 1.17 (0.70H*3, s), 0.86-0.95 (9H, m), 0.52-0.63 (6H, m)
【0052】
実施例2
反応温度を70℃としたこと以外は実施例1と同様にして反応を行なった。
実施例1の化合物(3)79mgに、ベンゾイル酢酸エチルエステル0.343mlを加え70℃、減圧条件(0.5mmHg)下で27時間反応させた後、過剰のベンゾイル酢酸エチルエステルをクーゲルロール蒸留装置を用いて留去した。
残分をシリカゲルカラムにて精製しエステル化合物85mg(化合物(4)、C52H62O14Si 、分子量939.14)を得た。この化合物は、1H-NMRによる解析でも実施例1で得られた化合物と同一であることが示された。
【0053】
実施例3
反応温度を50℃としたこと以外は実施例1と同様にして反応を行なった。
実施例1の化合物(3)79mgに、ベンゾイル酢酸エチルエステル0.343mlを加え50℃、減圧条件(0.5mmHg)下で21時間反応させた後、この溶液をシリカゲルカラムにて精製しエステル化合物8mg(化合物(4)、C52H62O14Si 、分子量939.14)を得た。この化合物は、1H-NMRによる解析でも実施例1で得られた化合物と同一であることが示された。また、原料を71mg回収した。
【0054】
実施例4
反応時の圧力条件を大気圧(760mmHg)としたこと以外は実施例1と同様にして反応を行なった。
実施例1の化合物(3)79mgに、ベンゾイル酢酸エチルエステル0.343mlを加え90℃、大気圧下で24時間反応させた後、この溶液をシリカゲルカラムにて精製しエステル化合物77mg(化合物(4)、C52H62O14Si 、分子量939.14)を得た。この化合物は、1H-NMRによる解析でも実施例1で得られた化合物と同一であることが示された。
【0055】
実施例5
反応時の圧力条件を減圧条件(20mmHg)とし、ベンゾイル酢酸エチルエステルの量を減量した以外は実施例1と同様にして反応を行なった。
実施例1の化合物(3)79mgに、ベンゾイル酢酸エチルエステル0.086mlを加えて90℃、減圧条件(20mmHg)下で10時間反応させた後、過剰のベンゾイル酢酸エチルエステルをクーゲルロール蒸留装置を用いて留去した。
残分をシリカゲルカラムにて精製しエステル化合物88mg(化合物(4)、C52H62O14Si 、分子量939.14)を得た。この化合物は、1H-NMRによる解析でも実施例1で得られた化合物と同一であることが示された。
【0056】
実施例6
反応時の圧力条件を減圧条件(20mmHg)とし、ベンゾイル酢酸エチルエステルの量を減量した以外は実施例1と同様にして反応を行なった。
実施例1の化合物(3)79mgに、ベンゾイル酢酸エチルエステル0.034mlを加え90℃、減圧条件(20mmHg)下で24時間反応させた後、この溶液をシリカゲルカラムにて精製しエステル化合物40mg(化合物(4)、C52H62O14Si 、分子量939.14)を得た。この化合物は、1H-NMRによる解析でも実施例1で得られた化合物と同一であることが示された。また、原料を43mg回収した。
【0057】
実施例7
実施例1では無溶媒であったが、この例では溶媒としてトリエチレングリコールジメチルエーテルを用いて反応を行なった。
実施例1の化合物(3)79mgに、ベンゾイル酢酸エチルエステル0.086ml、トリエチレングリコールジメチルエーテル0.2mlを加え90℃、減圧条件(20mmHg)下で24時間反応させた後、この溶液をシリカゲルカラムにて精製しエステル化合物87mg(化合物(4)、C52H62O14Si 、分子量939.14)を得た。この化合物は、1H-NMRによる解析でも実施例1で得られた化合物と同一であることが示された。
【0058】
実施例8
ベンゾイル酢酸エチルエステルを減量したこと以外は実施例7と同様にして反応を行なった。
実施例1の化合物(3)79mgに、ベンゾイル酢酸エチルエステル0.034ml、トリエチレングリコールジメチルエーテル0.2mlを加え90℃、減圧条件(20mmHg)下で20時間反応させた後、この溶液をシリカゲルカラムにて精製しエステル化合物61mg(化合物(4)、C52H62O14Si 、分子量939.14)を得た。この化合物は、1H-NMRによる解析でも実施例1で得られた化合物と同一であることが示された。また、原料を27mg回収した。
【0059】
実施例9、10
実施例1ではバッカチンの10位はベンジルオキシカルボニル基であったが、アセチル基やアリルオキシカルボニル基であっても同様の反応を行なうことができることを示す。
7位をトリエチルシリル基、10位をアセチル基もしくはアリルオキシカルボニル基で保護したバッカチン(0.1mmol)に、ベンゾイル酢酸エチルエステル0.343mlを加え90℃、減圧条件(0.5mmHg)下で3時間反応させた後、過剰のベンゾイル酢酸エチルエステルをクーゲルロール蒸留装置を用いて留去した。
残分をシリカゲルカラムにて精製しエステル化合物を得た。収量、1H-NMRなどの測定結果は次の通りである。
【0060】
(実施例9:10位の保護基がアセチル基であるバッカチンを使用)
収量:77mg、収率:91%
下記の構造式で表されるエステル化合物の1H-NMR(500MHz 、CDCl3 )
【0061】
【化35】
【0062】
σ(ppm)
12.51 (0.4H, s), 8.08 (2H, d, J=8.2 Hz), 7.96-8.02 (0.6H*2, m), 7.79-7.83 (0.4H*2, m), 7.43-7.68 (6H, m), 6.49 (0.4H, s), 6.44 (0.6H, s), 6.18-6.30 (1H, m), 5.75 (0.4H, s), 5.63-5.72 (1H, m), 4.98 (0.4H, d, J=7.9 Hz), 4.93 (0.6H, d, J=7.9 Hz),4.51 (0.4H, dd, J=6.7, 10.7 Hz), 4.46 (0.6H, dd, J=6.7, 10.6 Hz), 4.26-4.33 (1H, m), 4.09-4.20 (1H+0.6+H*2, m), 3.87 (0.4H, d, J=7.0 Hz), 3.82 (0.6H, d, J=7.1 Hz), 2.47-2.60 (1H, m), 2.15-2.43 (2H, m), 2.37 (0.4H*3, s), 2.23 (0.6H*3, s), 2.19 (0.4H*3, s), 2.17 (0.6H*3, s), 2.12 (0.4H*3, d, J=0.9 Hz), 1.99 (0.6H*3, d, J=0.9 Hz), 1.70 (0.4H*3, s), 1.68 (0.6H*3, s), 1.25 (0.4H*3, s), 1.22 (0.6H*3, s), 1.20 (0.4H*3, s), 1.18 (0.6H*3, s), 0.88-0.98 (9H, m), 0.53-0.65 (6H, m)
【0063】
(実施例10:10位の保護基がアリルオキシカルボニル基であるバッカチンを使用)
収量:85mg、収率:96%
下記の構造式で表されるエステル化合物の1H-NMR(500MHz 、CDCl3 )
【0064】
【化36】
【0065】
σ(ppm)
12.51 (0.3H, s), 8.03-8.12 (2H,m), 7.94-8.03 (0.7H*2, m), 7.77-7.85 (0.3H*2, m), 7.44-7.70 (6H, m), 6.31 (0.3H, s), 6.18-6.31 (1H, m), 6.25 (0.7H, s), 5.90-6.01 (1H, m), 5.75 (0.3H, s), 5.65-5.71 (1H, m), 5.35-5.42 (1H, m), 5.24-5.32 (1H, m), 4.98 (0.3H, d, J=6.3 Hz), 4.92 (0.7H, d, J=6.2 Hz), 4.59-4.72 (2H, m), 4.50 (0.3H, dd, J=6.7, 10.7 Hz), 4.45 (0.7H, dd, J=6.7, 10.4 Hz), 4.26-4.34 (1H, m), 4.09-4.20 (1H+0.7H*2, m), 3.84 (0.3H, d, J=7.1 Hz), 3.79 (0.7H, d, J=7.0 Hz), 2.48-2.58 (1H, m), 2.20-2.44 (2H, m), 2.37 (0.3H*3, s), 2.24 (0.7H*3, s), 2.13 (0.3H*3, bs), 2.00 (0.7H*3, bs), 1.86-1.95 (1H, m), 1.71 (0.3H*3, s), 1.69 (0.7H*3, s), 1.24 (0.3H*3, bs), 1.22 (0.7H*3, bs), 1.21 (0.3H*3, s), 1.20 (0.7H*3, s), 0.88-0.98 (9H, m), 0.54-0.64 (6H, m)
【0066】
実施例11−19
ケトエステルとして、ベンゾイル酢酸エチルエステル以外にも、種々のケトエステルを用いて所望の化合物を得ることができる。以下に、種々のケトエステルを用いた場合の収率等を示す。
実施例1の化合物(3)79mgに、ケトエステル(化合物(3)に対して10もしくは20当量)を加え、90℃、減圧条件(20mmHg)下で反応させて、各種バッカチン誘導体を得た。ケトエステルの量、反応時間、収量、1H-NMRなどは次の通りである。
【0067】
(実施例11:p−メトキシベンゾイル酢酸メチル)
ケトエステル:10当量、反応時間:7時間、収量:96mg、収率:99% 下記の構造式で表されるエステル化合物の1H-NMR(500MHz 、CDCl3)
【0068】
【化37】
【0069】
σ(ppm)
12.56 (0.2H, s), 8.03-8.12 (2H, m), 7.93-8.00 (0.8H*2, m), 7.75-7.79 (0.2H*2, m), 7.57-7.64 (1H, m), 7.14-7.52 (7H, m), 6.95-7.02 (2H, m), 6.32 (0.2H, s), 6.27 (0.8H, s), 6.17-6.30 (1H, m), 5.62-5.70 (1H, m), 5.17, 5.24 (0.2H*2, ABq, J=12.2 Hz), 5.14, 5.23 (0.8H*2, ABq, J=12.2 Hz), 4.98 (0.2H, bd, J=9.8 Hz), 4.92 (0.8H, bd, J=7.9 Hz), 4.50 (0.2H, dd, J=10.4, 6.7 Hz), 4.45 (0.8H, dd, J=10.7, 6.7 Hz), 4.26-4.33 (1H, m), 4.13-4.20 (1H, m), 4.06, 4.11 (0.8H*2, ABq, J=15.2 Hz), 3.90 (0.8H*3, s), 3.88 (0.2H*3, s), 3.84 (0.2H, d, J=6.7 Hz), 3.79 (0.8H, d, J=6.7 Hz), 2.48-2.58 (1H, m), 2.37 (0.2H*3, s), 2.25 (0.8H*3, s), 2.13 (0.2H*3, d, J=1.2 Hz), 2.02 (0.8H*3, d, J=1.2 Hz), 1.85-1.94 (1H, m), 1.71 (0.2H*3, s), 1.69 (0.8H*3, s), 1.22 (0.2H*3, s), 1.18-1.22 (1H, m), 1.17 (0.8H*3, s), 0.86-0.97 (9H, m),0.52-0.63 (6H, m)
【0070】
(実施例12:m−フルオロベンゾイル酢酸メチル)
ケトエステル:10当量、反応時間:6時間、収量:84mg、収率:88% 下記の構造式で表されるエステル化合物の1H-NMR(500MHz 、CDCl3)
【0071】
【化38】
【0072】
σ(ppm)
12.49 (0.50H, s), 8.03-8.12 (2H, m), 7.74-7.79 (0.50H, m), 7.66-7.72 (0.50H, m), 7.30-7.64 (11H, m), 6.32 (0.50H, s), 6.27 (0.50H, s), 6.19-6.30 (1H, m), 5.73 (0.50H, s), 5.63-5.71 (1H, m), 5.24, 5.17 (0.50H*2, ABq, J=12.2 Hz), 5.23, 5.16 (0.50H*2, ABq, J=12.1 Hz), 4.97 (0.50H, bd, J=8.0 Hz), 4.92 (0.50H, bd, J=7.9 Hz), 4.50 (0.50H, dd, J=10.6, 6.6 Hz), 4.45 (0.50H, dd, J=10.4, 6.7 Hz), 4.27-4.34 (1H, m), 4.08-4.20 (3H, m), 3.84 (0.50H, d, J=6.7 Hz), 3.79 (0.50H, d, J=6.7 Hz), 2.48-2.59 (1H, m), 2.20-2.43 (2H, m), 2.36 (0.50H*3, s), 2.25 (0.50H*3, s), 2.14 (0.50H*3, d, J=1.3 Hz), 2.02 (0.50H*3, d, J=1.4 Hz), 1.86-1.94 (1H, m), 1.79 (0.50H*3, s), 1.69 (0.50H*3, s), 1.22 (0.50H*3, s), 1.20 (0.50H*3, s), 1.19 (0.50H*3, s), 1.18 (0.50H*3, s), 0.86-0.95 (9H, m), 0.52-0.63 (6H, m)
【0073】
(実施例13:o−フルオロベンゾイル酢酸メチル)
ケトエステル:10当量、反応時間:6時間、収量:88mg、収率:92% 下記の構造式で表されるエステル化合物の1H-NMR(500MHz 、CDCl3)
【0074】
【化39】
【0075】
σ(ppm)
12.56 (0.45H, s), 8.18-8.22 (0.45H, m), 8.03-8.12 (0.55H*2+0.45H, m), 7.92-8.01 (1H, m), 7.14-7.70 (11H, m), 6.31 (0.45H, s), 6.29 (0.55H, s), 6.20-6.29 (1H, m), 6.00 (0.45H, s), 5.68 (0.45H, d, J=6.9 Hz), 5.67 (0.55H, d, J=6.9 Hz), 5.17, 5.242 (0.45H*2, ABq, J=12.2 Hz), 5.16, 5.236 (0.55H*2, ABq, J=12.2 Hz), 4.96 (0.45H, bd, J=8.2 Hz), 4.93 (0.55H, bd, J=8.6 Hz), 4.50 (0.45H, dd, J=10.4, 6.7 Hz), 4.47 (0.55H, dd, J=10.7, 6.8 Hz), 4.28-4.33 (1H, m), 4.13-4.20 (1H+0.55H, m), 4.09 (0.55H, dd (AB), J=16.6, 3.5 Hz), 3.85 (0.45H, d, J=7.0 Hz), 3.81 (0.55H, d, J=7.0 Hz), 2.48-2.58 (1H, m), 2.38 (0.45H*3, s), 2.26 (0.55H*3, s), 2.23-2.40 (2H, m), 2.13 (0.45H*3, bs), 2.09 (0.55H*3, bs), 1.86-1.93 (1H, m), 1.71 (0.45H*3, s), 1.70 (0.55H*3, s), 1.22 (0.45H*3, s), 1.20 (0.55H*3, s), 1.19 (0.45H*3, s), 1.17 (0.55H*3, s), 0.91 (9H, t, J=15.9 Hz), 0.52-0.62 (6H, m)
【0076】
(実施例14:p−フルオロベンゾイル酢酸メチル)
ケトエステル:10当量、反応時間:6時間、収量:90mg、収率:94% 下記の構造式で表されるエステル化合物の1H-NMR(500MHz 、CDCl3 )
【0077】
【化40】
【0078】
σ(ppm)
7.10-8.13 (m, 14H), 6.14-6.35 (m, 2H), 5.60-5.74 (m, 1H), 5.10-5.30 (m, 2H), 4.88-5.04 (m, 1H), 4.40-4.55 (m, 1H), 4.26-4.35 (m, 1H), 4.05-4.22 (m, 3H), 3.74-3.91 (m, 1H), 2.48-2.60 (m, 1H), 2.22-2.44 (m, 5H), 1.97-2.18 (m, 3H), 1.84-1.96 (m, 1H), 1.65-1.74 (m, 3H), 1.15-1.24 (m, 6H), 0.82-0.98 (m, 9H), 0.50-0.64 (m, 6H)
【0079】
(実施例15:m−トリフルオロメチルベンゾイル酢酸メチル)
収率:284mg、収率:56.3%
下記の構造式で表されるエステル化合物の1H-NMR(500MHz 、CDCl3 )
【0080】
【化41】
【0081】
σ(ppm)
12.50 (0.55H, s), 8.24 (0.45H, bs), 8.18 (0.45H, bd, J=8.0 Hz), 8.05-8.12 (2H, m), 8.05 (0.55H, bs), 7.98 (0.55H, bd, J=8.0 Hz), 7.92 (0.45H, bd, J=7.9 Hz), 7.79 (0.55H, bd, J=8.0 Hz), 7.70 (0.45H, t, J=7.9 Hz), 7.56-7.65 (1H+0.55H, m), 7.30-7.51 (7H, m), 6.32 (0.55H, s), 6.27 (0.45H, s), 6.19-6.30 (1H, m), 5.78 (0.55H, s), 5.65-5.71 (1H, m), 5.24, 5.17 (0.55H*2, ABq, J=12.3 Hz), 5.23, 5.16 (0.45H*2, ABq, J=12.0 Hz), 4.97 (0.55H, bd, J=8.3 Hz), 4.92 (0.45H, bd, J=8.0 Hz), 4.50 (0.55H, dd, J=10.4, 6.7 Hz), 4.45 (0.45H, dd, J=10.4, 6.7 Hz), 4.28-4.35 (1H, m), 4.19, 4.13 (0.55H*2, ABq, J=15.4 Hz), 4.13-4.19 (1H, m), 3.84 (0.55H, d, J=7.0 Hz), 3.79 (0.45H, d, J=7.1 Hz), 2.48-2.60 (1H, m), 2.35-2.44 (1H, m), 2.36 (0.55H*3, s), 2.23-2.32 (1H, m), 2.27 (0.45H*3, s), 2.15 (0.55H*3, d, J=1.2 Hz), 2.03 (0.45H*3, d, J=1.2 Hz), 1.86-1.94 (1H, m), 1.71 (0.55H*3, s), 1.69 (0.45H*3, s), 1.23 (0.45H*3, s), 1.21 (0.45H*3, s), 1.20 (0.55H*3, s), 1.17 (0.55H*3, s), 0.88-0.94 (9H, m), 0.53-0.61 (6H, m)
【0082】
(実施例16:2−フラノイル酢酸メチル)
ケトエステル:20当量、反応時間:8時間。収量:61mg、収率:66% 下記の構造式で表されるエステル化合物の1H-NMR(500MHz 、CDCl3 )
【0083】
【化42】
【0084】
σ(ppm)
12.03 (0.15H, s), 8.03-8.12 (2H, m), 7.13-7.68 (12H, m), 6.62 (0.85H, dd, J=3.7, 1.9 Hz), 6.56 (0.15H, dd, J=3.6, 1.8 Hz), 6.31 (0.15H, s), 6.27 (0.85H, s), 6.18-6.30 (1H, m), 5.71 (0.15H, s), 5.65-5.70 (1H, m), 5.23, 5.16 (0.15H*2, ABq, J=12.2 Hz), 5.22, 5.15 (0.85H*2, ABq, J=12.1 Hz), 4.97 (0.15H, bd, J=9.8 Hz), 4.93 (0.85H, bd, J=8.3 Hz), 4.50 (0.15H, dd, J=10.4, 6.4 Hz), 4.98 (0.85H, dd, J=10.4, 6.7 Hz), 4.27-4.35 (1H, m), 4.13-4.20 (1H, m), 4.04, 3.94 (0.85H*2, ABq, J=15.5 Hz), 4.84 (0.15H, d, J=7.0 Hz), 4.80 (0.85H, d, J=7.0 Hz), 2.47-2.57 (1H, m), 2.37 (0.15H*3, s), 2.29 (0.85H*3, s), 2.20-2.40 (2H, m), 2.12 (0.15H*3, bs), 2.04 (0.85H*3, bs), 1.85-1.93 (1H, m), 1.72 (0.15H*3, bs), 1.71 (0.85H*3, bs), 1.23 (0.15H*3, s), 1.22 (0.85H*3, s), 1.20 (0.15H*3, s), 1.19 (0.85H*3, s), 0.88-0.95 (9H, m), 0.52-0.62 (6H, m)
【0085】
(実施例17:シクロヘキサノイル酢酸メチル)
ケトエステル:10当量、反応時間:6時間、収量:90mg、収率:95% 下記の構造式で表されるエステル化合物の1H-NMR(500MHz 、CDCl3 )
【0086】
【化43】
【0087】
σ(ppm)
12.06 (0.4H, s), 8.03-8.12 (2H, m), 7.57-7.63 (1H, m), 7.43-7.51 (2H, m), 7.31-7.43 (5H, m), 6.30 (0.4H, s), 6.28 (0.6H, s), 6.22 (0.6H, bt, J=8.4 Hz), 6.14 (0.4H, bt, J=8.6 Hz), 5.66 (1H, d, J=7.0 Hz), 5.16, 5.23 (2H, ABq, J= 12.2 Hz), 5.05 (0.4H, s), 4.90-4.99 (1H, m), 4.42-4.51 (1H, m), 4.26-4.33 (1H, m), 4.16 (1H, d, J=8.5 Hz), 3.81 (0.4H, d, J=7.4 Hz), 3.78 (0.6H, d, J=7.0 Hz), 3.56, 3.66 (0.6H*2, ABq, J=15.5 Hz), 2.48-2.57 (2H, m), 2.32 (0.4H*3, s), 2.26 (0.6H*3, s), 2.15-2.35 (2H, m), 2.09 (0.4H*3, bs), 2.66 (0.6H*3, bs), 1.78-1.95 (5H, m), 1.70 (0.4H*3, s), 1.69 (0.6H*3, s), 1.59-1.74 (3H, m), 1.25-1.43 (3H, m), 1.20 (3H, bs), 1.17 (3H, bs), 0.87-0.95 (9H, m), 0.53-0.62 (6H, m)
【0088】
(実施例18、シクロプロパノイル酢酸メチル)
ケトエステル:10当量、反応時間:6時間、収量:85mg、収率:94% 下記の構造式で表されるエステル化合物の1H-NMR(500MHz 、CDCl3 )
【0089】
【化44】
【0090】
σ(ppm)
12.18 (0.05H, s), 8.04-8.10 (2H, m), 7.58-7.64 (1H, m), 7.45-7.52 (2H, m), 7.31-7.43 (5H, m), 6.30 (0.05H, s), 6.28 (0.95H, s), 6.20-6.28 (0.95H, m), 6.11-6.17 (0.05H, m), 5.66 (1H, d, J=7.0 Hz), 5.16, 5.23 (1H*2, ABq, J=12.2 Hz), 4.94 (1H, bd, J=8.2 Hz), 4.46 (1H, dd, J=6.7, 9.7 Hz), 4.30 (1H, d, J=8.5 Hz), 4.15 (1H, d, J=8.5 Hz), 3.79 (1H, d, J=7.0 Hz), 3.74, 3.69 (1H*2, ABq, J=15.0 Hz), 2.52 (1H, ddd, J=6.7, 9.5, 14.4 Hz), 2.22-2.37 (2H, m), 2.29 (3H, s), 2.05-2.12 (1H, m), 2.08 (3H, s), 1.85-1.93 (1H, m), 1.70 (3H, s), 1.15-1.23 (2H, m), 1.20 (3H, s), 1.17 (3H, s), 1.00-1.08 (2H, m), 0.87-0.96 (9H, m), 0.53-0.63 (6H, m)
【0091】
(実施例19:2−オキソシクロペンチル酢酸メチル)
ケトエステル:20当量、反応時間:5時間、収量:84mg、収率:93% 下記の構造式で表されるエステル化合物の1H-NMR(500MHz 、CDCl3 )
【0092】
【化45】
【0093】
σ(ppm)
0.53-0.60(m, 6H, TES), 0.86-0.93(m, 9H, TES), 1.17(s), 1.21(s), 1.56(s), 1.69(s), 1.70 (s), 2.05(s), 1.86-1.98(m, 2H), 2.12-2.58(m, 8H), 3.22(t, J=7.6 Hz, 2'-H), 3.24(t, J=8.8 Hz, 2'-H), 3.80(d, J=6.7 Hz, 3-H), 3.81(d, J=5.5 Hz, 3-H), 4.17(d, J=8.8 Hz, 20-H), 4.30(d, J=8.6 Hz, 20-H), 4.45(dd, J=6.8, 10.4 Hz, 7-H), 4.49(dd, J=6.7, 10.7 Hz, 7-H), 4.95(m, 1H, 5-H), 5.16(d, J=12.2 Hz, Bn), 5.23(d, J=12.2 Hz, Bn), 5.67(d, J=7.0 Hz, 1H, 2-H), 6.16(t, J=8.3 Hz, 13-H), 6.24(t, J=9.0 Hz, 13-H), 6.27(s, 10-H), 6.31(s, 10-H), 7.16-7.26(m, 1H), 7.32-7.42(m, 4H), 7.45-7.52(m, 2H), 7.57-7.64(m, 1H), 8.06-8.11(m, 2H)
【0094】
実施例20
実施例11−19では、減圧条件は20mmHgであったが、実施例20では1mmHgで反応を行なった。
実施例1の化合物(3)79mgに、2−メチルベンゾイル酢酸メチル384mgを加え、90℃、減圧条件(1mmHg)下で25時間反応させた後、反応溶液を1N−塩酸水溶液中にあけ、酢酸エチルで抽出した。有機相を飽和重曹水で洗浄し濃縮後、シリカゲルカラムにて精製しエステル化合物19mg(C53H64O14Si 、分子量953.17)を得た。
この化合物を重クロロホルムに溶解し、1H-NMRで解析し、それぞれのピークを帰属して構造を決定し、下記の構造式で表されるものであることを確認した。
【0095】
【化46】
【0096】
σ(ppm)
0.48-0.64(m, 6H), 0.78-0.99 (m, 9H), 1.08-1.37 (m, 9H), 1.50-2.44 (m, 12H), 2.44-2.60 (m, 1H), 3.69-3.91 (m, 1H), 4.07-4.19 (m, 2H), 4.23-4.35 (m, 1H), 4.37-4.53 (m, 1H), 4.86-5.03 (m, 1H), 5.10-5.29 (m, 2H), 5.61-5.76(m, 1H), 6.14-6.46 (m, 2H), 7.12-7.68 (m, 11H), 7.77-8.14 (m, 4H)
【0097】
【発明の効果】
本発明により、10−デアセチルバッカチンIII の13位の水酸基にβ−ケトエステルを無触媒下、好ましくは減圧下で行なうエステル交換反応によりエステル結合させることによって得られるバッカチン誘導体の製造方法が提供される。 また、本発明のバッカチン誘導体は、抗ガン剤であるパクリタクセルなどのタキソイド化合物を調製するための出発原料として有用である。
Claims (9)
- 一般式(I)で表されるバッカチンを触媒非存在下でβ−ケトエステルと反応させることによって、前記バッカチンの13位の水酸基にエステル交換反応により前記β−ケトエステルを導入して得ることを特徴とする、一般式(II)で表されるバッカチン誘導体の製造方法。
- 反応を、減圧下で行う請求項1記載の製造方法。
- 前記R1 がトリエチルシリル基であり、前記R2 がベンジルオキシカルボニル基、アセチル基、アリルオキシカルボニル基のいずれか1つである、請求項1又は2記載のバッカチン誘導体の製造方法。
- 前記β−ケトエステルが、p−メトキシベンゾイル酢酸メチル、o−トリフルオロメチルベンゾイル酢酸メチル、m−トリフルオロメチルベンゾイル酢酸メチル、p−トリフルオロメチルベンゾイル酢酸メチル、o−フルオロベンゾイル酢酸メチル、m−フルオロベンゾイル酢酸メチル、2−フラノイル酢酸メチル、シクロヘキサイル酢酸メチル、2−オキソシクロペンチル酢酸メチル、2−メチルベンゾイル酢酸メチル、p−フルオロベンゾイル酢酸メチル、シクロプロパノイル酢酸メチルのいずれか1つである、請求項1〜3のいずれかに記載のバッカチン誘導体の製造方法。
- 前記一般式(I)で表されるバッカチンが、イチイの葉より採取される10−デアセチルバッカチンIIIである、請求項1〜4のいずれかに記載のバッカチン誘導体の製造方法。
- 請求項1に記載の前記一般式(II)で表されるバッカチン誘導体。
(R1 およびR2 はトリエチルシリル基、ベンジルオキシカルボニル基、アセチル基、アリルオキシカルボニル基のいずれか1つである水酸基の保護基を、R3 はフェニル基、p−メトキシフェニル基、2−フリル基、o−トリフルオロメチルフェニル基、m−フルオロフェニル基、シクロヘキシル基、o−フルオロフェニル基、p−フルオロフェニル基、p−トリフルオロメチルフェニル基、m−トリフルオロメチルフェニル基、シクロプロパニル基、2−オキソシクロペンチル基、2−メチルフェニル基のいずれか1つを、R4 はメチル基もしくはエチル基を示し、Bzはベンゾイル基を示す。) - 前記R1 がトリエチルシリル基であり、前記R2 がベンジルオキシカルボニル基、アセチル基、アリルオキシカルボニル基のいずれか1つである、請求項6又は7記載のバッカチン誘導体。
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