以下、本発明の実施の形態を、添付の図面に示した本発明の実施例に基づいて説明する。
図1〜図15は本発明の実施例を示すものであり、図2〜8は本発明の第1実施例を示し、図9〜10は本発明の第2実施例を示し、図1および図11〜15は前記第1および第2実施例に共通する形態および作用を示す。なお、第1実施例と第2実施例とではストロークシミュレータ構成のみが異なるものであり、図2〜8における遊星歯車機構およびマスタシリンダの構成は第1実施例および第2実施例とも共通である。
第1実施例では、図2はストロークシミュレータ、遊星歯車機構およびマスタシリンダの上面要部断面図、図3はストロークシミュレータ、遊星歯車機構およびマスタシリンダの左側面要部断面図、図4はストロークシミュレータ、遊星歯車機構およびマスタシリンダの右側面要部断面図、図5は遊星歯車機構の正面要部断面図、図6はストロークシミュレータの初期状態を示す上面断面拡大図、図7はストロークシミュレータのストロークシミュレート動作を示す上面断面拡大図、図8はストロークシミュレータのストローク制限動作を示す上面断面拡大図である。
第2実施例では、図9はストロークシミュレータの上面断面拡大図、図10はストロークシミュレータの電磁弁制御フローチャート図を示すものである。
第1および第2実施例に共通する形態および作用では、図1は車両用ブレーキ装置の全体構成を示すブレーキ液圧系統図、図11は本発明車両用ブレーキ装置の初期状態を示す模式図、図12は本発明車両用ブレーキ装置のブレーキ操作子入力に同期したモータによる倍力ブレーキ動作を示す模式図、図13は本発明車両用ブレーキ装置のブレーキ操作子入力のみによる非倍力ブレーキ動作を示す模式図、図14はストロークシミュレータ特性図、図15は出力液圧特性図である。
先ず図1において、車両に取り付けられるブレーキ液圧発生装置140は、ブレーキ操作部材であるブレーキ操作子11に連結され、ストロークシミュレータ30と遊星歯車機構90およびモータ120とブレーキ液を蓄えたマスタシリンダリザーバ12を備えるタンデム型のマスタシリンダ60とで構成される。
ブレーキ操作子11の操作量はエンコーダやポテンショメータ等で構成するブレーキ操作子操作量検出手段25にて検出され、ECU13にデータを送信し、ECU13はその検出値に応じた大きな回転力を正逆転自在のモータ120に付与するとともに、該モータ120の電流値および遊星歯車90の出力量検出手段110の値などを参照してECU13がフィードバック制御できるよう電気回路が配索される。
遊星歯車機構90は、ブレーキ操作子11側からの入力とモータ120側からの入力との大きい方の入力を選択してマスタシリンダ60に前記選択された入力を伝達して液圧を出力可能に構成されており、前記マスタシリンダ60は前部出力ポート16Fと後部出力ポート16Rを備える。
マスタシリンダ60の前部出力ポート16Fと後部出力ポート16Rから出力される液圧は前部液圧路17Fと後部液圧路17Rにそれぞれ導かれる。前部液圧路17FはABS15を介して左前輪用車輪ブレーキBFLおよび右前輪用車輪ブレーキBFRに接続される。また後部液圧路17Rも、ABS15を介して左後輪用車輪ブレーキBRLおよび右後輪用車輪ブレーキBRRに接続される。
ABS15は、前部液圧路17Fを分岐して、左前輪用車輪ブレーキBFLおよび右前輪用車輪ブレーキBFR間に設けられる常開型電磁弁18,18と、常開型電磁弁18,18に並列に接続される一方向弁19,19と、減圧リザーバ21と、左前輪用車輪ブレーキBFLおよび右前輪用車輪ブレーキBFRと減圧リザーバ21間に設けられる常閉型電磁弁20,20と、減圧リザーバ21から前部液圧路17F側へブレーキ液を還流するABSモータ22に駆動されるABSポンプ23を備える。
さらにABS15は、後部液圧路17Rを分岐して、左後輪用車輪ブレーキBRLおよび右後輪用車輪ブレーキBRR間に設けられる常開型電磁弁18,18と、常開型電磁弁18,18に並列に接続される一方向弁19,19と、減圧リザーバ21と、左後輪用車輪ブレーキBRLおよび右後輪用車輪ブレーキBRRと減圧リザーバ21間に設けられる常閉型電磁弁20,20と、減圧リザーバ21から後部液圧路17R側へブレーキ液を還流するABSモータ22に駆動されるABSポンプ23を備える。
ABS15はECU13により制御され、各車輪ブレーキBFL,BFR,BRL,BRRに対応した常開型電磁弁18を開くとともに常閉型電磁弁20を閉じる増圧モードと、常開型電磁弁18を閉じるとともに常閉型電磁弁20を開く減圧モードと、常開型電磁弁18および常閉型電磁弁20をともに閉じる保持モードとを切換えて制御し、これにより各車輪ブレーキBFL,BFR,BRL,BRRのブレーキ液圧を状況に応じて最適に制御することができる。
このようにABS15は、各車輪ブレーキBFL,BFR,BRL,BRRに供給される車輪ブレーキ液圧を個別に最適な値に制御可能な液圧制御手段としての機能を有している。
ECU13は、ブレーキ液圧発生装置140およびABS15を統合的に制御するものであり、運転者にブレーキシステムの異常を知らしめる警報装置14を備えるとともに、ブレーキ制御用センサ24の情報をもとに、ブレーキ操作子11の操作有無にかかわらずブレーキ液圧発生装置140に自動的に液圧を発生させる自動ブレーキ制御や、ブレーキ液圧発生装置140に自動的に液圧を発生させた上でABS15を作動制御させて個別の車輪ブレーキ液圧を最適に調整して車両スタビリティなどの制御も行うことができる。
さらにECU13は、電気回生制動装置との協調にも対応することが可能であり、回生制動装置の制動力を運転者の所望した制動力から差し引いた制動力をブレーキ液圧発生装置140に付与することもできるようになっている。
図2〜図5において、ブレーキ液圧発生装置140は、ストロークシミュレータ30と、遊星歯車機構90と、正逆転自在なモータ120と、マスタシリンダ60とを備え、ストロークシミュレータ30、遊星歯車機構90、モータ120、マスタシリンダ60はそれぞれ個別にサブアッセンブリとして構成され、各々は図示せぬボルトにて締結されユニット化される。
遊星歯車機構90は、第1の太陽歯車軸93とキャリア軸102と第2の太陽歯車軸94とを同軸に備えて左ケーシング91および右ケーシング92に挟持され、ブレーキ操作子11はストロークシミュレータ30を介して第1の太陽歯車軸93に、モータ120はキャリア軸102に、それぞれ動力伝達可能に連結されて第2の太陽歯車軸94より動力伝達可能に連結されるマスタシリンダ60を昇圧作動できるように構成される。
キャリア軸102は外周にウォームホイール歯車96hを形成するキャリア96と、該キャリア96に内装される4個の遊星歯車95,95,95,95と、該遊星歯車95を軸受支持する小軸受98,98と、支持体97とを備える。
図13を併せて参照し、遊星歯車95は、互いに異なる歯数ZBと歯数ZCを同軸でかつ一体に形成される段付歯車であり、両端を小軸受98,98に支持されてキャリア96と該キャリア96に圧入される支持体97が挟持して回動自在に軸支される。
第1の太陽歯車軸93は、キャリア軸102のキャリア96に大軸受99を介して軸支され、該大軸受99を挟んで一方にストロークシミュレータ30の直動を回動に変換して連結すべく回動変換連結子101を一体に形成し、前記大軸受99を挟んで他端に形成する外歯車の歯数ZAを、前記キャリア96と支持体97に軸支される遊星歯車95,95,95,95の歯数ZBに噛合する太陽歯車として構成される。
第2の太陽歯車軸94は、キャリア軸102のキャリア96に圧入される支持体97に大軸受99を介して軸支され、該大軸受99を挟んで一方に前記第2の太陽歯車軸94の回動を直動に変換してマスタシリンダ60に連結すべく直動変換連結子103を一体に形成し、前記大軸受99を挟んで他端に形成する外歯車の歯数ZDを、前記キャリア96と支持体97に軸支される遊星歯車95,95,95,95の歯数ZCに噛合する太陽歯車として構成される。
第1の太陽歯車軸93とキャリア軸102と第2の太陽歯車軸94は互いに同軸であり、キャリア軸102は第1の太陽歯車軸93および第2の太陽歯車軸94の外歯車外周上を自転公転自在な遊星歯車95,95,95,95を有する、2個の太陽歯車と1個の遊星キャリアを有するいわゆるK−H−V歯車分類法での2K−H段付型遊星歯車機構を構成する。
そして、第1の太陽歯車軸93は左ケーシング91に大軸受99を介して支持され、第2の太陽歯車軸94は右ケーシング92に大軸受99を介して支持されて、左ケーシング91と右ケーシング92は図示せぬボルトにて締結されて第1の太陽歯車軸93およびキャリア軸102および第2の太陽歯車軸94を回動可能に挟持する。
右ケーシング92には、第2の太陽歯車軸94の回転角を検出してECU13にデータを送りモータ120がフィードバック制御されるようにエンコーダやポテンショメータ等から構成される出力量検出手段110を備えて遊星歯車機構90がサブアッセンブリされる。
モータ120は、ECU13によって制御され、モータ本体120aは遊星歯車機構90の左ケーシング91および右ケーシング92に図示せぬボルトにて締結され、モータ軸120bと同軸かつ固定的に形成されるウォーム歯車120wは遊星歯車機構90のキャリア96外周に形成されたウォームホイール歯車96hに噛合している。
ウォーム歯車120wからウォームホイール歯車96hへの動力伝達では、一般的に逆効率が低くなることが知られているが、ウォーム歯車120wを駆動歯車としてウォームホイール歯車96hを被動歯車としたときは伝達効率が高く、逆にウォームホイール歯車96hを駆動歯車としてウォーム歯車120wを被動歯車とした場合伝達効率が著しく低く設定される。
すなわち、遊星歯車機構90のキャリア軸102に設けられるウォームホイール歯車96hがモータ120のウォーム歯車120wを逆転させようとする力に対して、位置保持にかかる前記モータ120の電力消費を著しく低く設定できる。
無論、ウォームホイール歯車96hおよびウォーム歯車120wの歯車諸元を更に逆効率の低い設定に変更して、セルフロッキングにより逆転防止をおこなえる設定とすることで更に電力消費を抑止することもできる。
そしてモータ軸端部120cの外周部は、左ケーシング91および右ケーシング92に狭持されたシール部材105に周方向に摺接してシールされる。
そしてキャリア軸102には、第2の逆転制限手段131が備えられており、前記キャリア軸102が初期位置よりも逆転しないように構成される。
第2の逆転制限手段131は、左ケーシング91の前方壁に突出するストッパ部91sがキャリア軸102の左側面前方に形成されるストッパ片96sに当接することで初期位置以上の逆転を制限して構成される(図3でキャリア軸102は時計方向の回転が制限される)。
この第2の逆転制限手段131は、第1の太陽歯車軸93にキャリア軸102よりも大きな回転力が加わったときに、該キャリア軸102の逆転を初期位置までに制限して前記第2の逆転制限手段131が前記キャリア軸102の逆転の反力を支承して拘束することで、入力軸となった第1の太陽歯車軸93の回転力を出力軸である第2の太陽歯車軸94に確実に伝達可能にする。
また第2の逆転制限手段131は、遊星歯車機構90の各歯車軸、93,102,94の初期位置復帰動作にも寄与し、キャリア軸102をモータ120の逆転作動により第2の逆転制限手段131に押し当て初期位置に戻すことで、戻し力が強く後退限を制限されたマスタシリンダ60に連結される第2の太陽歯車軸94が初期位置に戻ると自動的にストロークシミュレータ30に連結される第1の太陽歯車軸93も初期位置に復帰させることができる。
さらに遊星歯車機構90には、第2の太陽歯車軸94の初期位置以上への逆転を制限すべく、第3の逆転制限手段132が備えられる。
第3の逆転制限手段132は、右ケーシング92に突出して形成されるストッパ片92sに直動変換連結子103の後端部を当接して第2の太陽歯車軸94の初期位置以上の逆転を制限して構成される(図4で第2の太陽歯車軸94は反時計方向の回転が制限される)
この第3の逆転制限手段132は、第2の太陽歯車軸94の初期位置以上の逆転を制限することによりマスタシリンダ60のマスタプッシュロッド78の過剰な戻りを防止するとともに、第2の太陽歯車軸94の逆転を制限したのちもキャリア軸102をマスタシリンダ60の減圧方向への回動を続けることで第1の太陽歯車軸93に連結されるストロークシミュレータ30の初期位置への復帰を確実におこなうことができる。
このように構成された遊星歯車機構90によれば、第1の太陽歯車軸93を拘束してキャリア軸102を回動させると第2の太陽歯車軸94が回動して、そしてまたキャリア軸102を拘束して第1の太陽歯車軸93を回動させても第2の太陽歯車軸94を回動せしめることができる。
また第1の太陽歯車軸93を回動させつつキャリア軸102も回動させた場合は第2の太陽歯車軸94では複合回転数を得られ、第1の太陽歯車軸93の回動量に対する第2の太陽歯車軸94の回動量を無段階に変速することも可能になる。
実施例の遊星歯車機構90では、ブレーキ操作子11の操作量に応じた倍力をモータ120の回転力で付与してキャリア軸102をマスタシリンダ60が昇圧する方向に回動させる。
するとブレーキ操作子11より連結される第1の太陽歯車軸93にはマスタシリンダ60に発生する大きな倍力油圧反力がかかる。
すなわち、キャリア軸102にマスタシリンダ60の油圧を倍力せしめるための回転力が作用したときは第1の太陽歯車軸93と第2の太陽歯車軸94は互いに逆回転させようとする力が働くことになる。
図2〜5を参照し、第1実施例のストロークシミュレータ30には、シミュレータボディ31に内装されて遊星歯車機構90の反力を支承する第1の逆転制限手段130と、弾性材料によりブレーキ操作子11の操作量の増大に応じて操作ストロークと操作反力を増大させるシミュレート手段53と、シミュレータ動作を状況により制限する遮断弁手段48とを備える。
前記シミュレート手段53には液圧室37bを備え、該液圧室37bはシミュレータボディ31に穿設される連通穴31v,31hを経由し遊星歯車機構90の左ケーシング91に穿設される連通穴91h,91rを経由して右ケーシングに穿設される連通穴92r,92mからさらにマスタボディ61に穿設される連通穴61mを経由してマスタシリンダリザーバ12に連通する。
これら複数の連通穴31v,31h,91h,91r,92r,92m,61mは栓53,53およびシール部材54,54,54によってブレーキ液圧発生装置140の外部および内部へのブレーキ液のリークが無いようにして接続される。
図6を併せて参照し、ストロークシミュレータ30には、前記第1の逆転制限手段130とシミュレート手段53の相対位置の変化によって前記液圧室37bとマスタシリンダリザーバ12への連通を遮断する遮断弁手段48が備えられる。
シミュレータボディ31は異径段付の内径を形成し、小径内径部には前記シミュレート手段53がスリーブ37の内径部に子部品をカートリッジ様に小組して、該スリーブ37の外径軸後端外周角部はシミュレータボディ31の小径内径後端部の周方向に形成する溝部に嵌着される係止リング43に当接し後退限を規制して内装される。
スリーブ37の外径軸後部にはシール部材38が装着されシミュレータボディ31の小径内径部に摺接する。
スリーブ37内径は異径段付の有底円筒状に形成し、該スリーブ37の大径内径部にシミュレータピストン35およびピストンガイド39を摺動可能に内装する。
シミュレータピストン35は、外径を異径段付形状に形成して該シミュレータピストン35大径軸後端外周角部がスリーブ37の大径内径後端部の周方向に形成される溝部に嵌着される係止リング42に当接し後退限を規制される。
シミュレータピストン35の大径軸中間部にはシール部材36が装着され、スリーブ37の大径内径円筒部に摺接する。
シミュレータピストン35の小径軸外周には、ゴム等の弾性材料で形成される円筒形状のシミュレータラバー40がゆるい嵌め合いで挿入される。
シミュレータピストン35の小径軸先端はピストンガイド39の有底円筒状の内径部を摺動可能に構成するが、ゆるい嵌め合いであり有底円筒部内が密封されることの無いよう充分なクリアランスがとられる。
ピストンガイド39の外径は異径段付形状に形成され、シミュレータばね41がピストンガイド39小径軸外周に案内されるようにしてスリーブ37の小径内径底部とピストンガイド39の大径軸前端との間に張架され、直列に配置したシミュレータラバー40をゆるく予圧している。
このシミュレータばね41のセット荷重は、遊星歯車機構90の初動荷重およびマスタシリンダ60の初動荷重の合計よりも小さく、かつシミュレータラバー40よりも低いばね定数に設定される。
そしてスリーブ37の大径内径前端の段付部とピストンガイド39の大径軸前端部との軸方向のクリアランスL1を設定してシミュレータばね41とシミュレータラバー40との双方の荷重がバランスして張架される。
ピストンガイド39大径軸外周には軸方向に貫通する放射状の油路を複数形成してピストンガイド39の前方および後方のブレーキ液の流通を許容する。
シミュレータピストン35では、首振り自在に装着されるシミュレータプッシュロッド33がヨーク32およびナット34に螺着され、ヨーク32はブレーキ操作子11に連結される(図1参照)。
第1の逆転制限手段130は、シミュレータボディ31の大径内径部後端にストッパピストン44と連接ピストン50と戻しばね49を備える。
連接ピストン50は、前方に首振り自在に支承する連結ロッド51を、遊星歯車機構90の第1の太陽歯車軸93に形成される回動変換連結子101にピン52を介して回動自在に支持して連結される。
そして連接ピストン50は、外径を異径段付形状に形成し、大径軸中間部にはシール部材45を装着してシミュレータボディ31の大径内径部を摺動可能にするとともに、小径軸はストッパピストン44の内径に摺動可能に挿入される。
ストッパピストン44は、外周にブレーキ液の流通を許容すべく、外径軸がゆるいはめあいでシミュレータボディ31の大径内径部を摺動可能にするとともに、内径を異径段付形状に形成して小径内径部には前記連接ピストン50の小径軸が摺動可能にされている。
そしてストッパピストン44の軸後端は、複数の放射状スリット44aが形成されブレーキ液が流通する油路を確保するとともに、軸後端をシミュレータボディ31の環状段部31aに当接してストッパピストン44の後退限が規制される。
ストッパピストン44の大径内径後端の段付部と連接ピストン50の大径軸の後端部間には戻しばね49が張架され、該戻しばね49のセット荷重は遊星歯車機構90の初動荷重およびマスタシリンダ60の初動荷重の合計よりも小さく設定されるため、ストッパピストン44の軸前端と連接ピストン50の大径軸後端は軸方向に密接している。
遮断弁手段48はスリーブ37の前方底部を貫通する弁穴37aとストッパピストン44の後端にゴム材等からなり焼付け接着される弁座47とで構成される。
ストッパピストン44の内径部に挿入された連接ピストン50の小径軸後端は弁座47後端より突き出してスリーブ37の前端と密着しており、スリーブ37の弁穴37aとストッパピストン44の弁座47はクリアランスL2を持ち離間してセットされ、シミュレート手段53に画成された液圧室37bはマスタシリンダリザーバ12に連通してブレーキ液を満たしながら大気開放されている。
図7を併せて参照して、このように構成されたストロークシミュレータ30では、先ずブレーキ操作子11の操作量に応じた倍力操作を遊星歯車機構90がマスタシリンダ60に付与して、該倍力操作によって発生する第1の歯車軸93の逆転による大きな倍力油圧反力を第1の逆転制限手段130が支承する。
このときシミュレート手段53のシミュレートばね41のセット荷重が遊星歯車機構90の初動荷重およびマスタシリンダ60の初動荷重の合計よりも小さく設定されているため、第1の太陽歯車軸93の回動が無い状態でいち早くブレーキ操作子操作量検出手段25がブレーキ操作子11の操作量を検出して、ECU13は検出値に対応し、モータ120に大きな動力を供給してマスタシリンダ60に高い油圧を発生させ、その反力を第1の逆転制限手段130が支承する。
このように第1の逆転制限手段130が支承する倍力油圧反力よりブレーキ操作子11に入力されて連接ピストン50に伝達される操作力のほうが小さいため第1の太陽歯車軸93の回動は無いままモータ120の動力でマスタシリンダ60は昇圧する。
そして前記倍力油圧反力により連接ピストン50をストッパピストン44に密着させて、遮断弁手段48は弁座47と弁穴37aを離間したまま、すなわちクリアランスL2を保持しながら開弁しているので、液圧室37bは大気開放されて該液圧室37bの容積変化を許容する。
そして第1の逆転制限手段130が支承する反力によりストロークを規制されたスリーブ37内径で、シミュレータばね41およびシミュレータラバー40のたわみに伴いシミュレータピストン35の摺動を許容してブレーキ操作子11のストロークシミュレート操作がおこなわれる。
図14のストロークシミュレータ特性を参照して、ストロークシミュレータ30の遮断弁手段48が開放されている状態ではブレーキ操作子11の入力の増加に伴って該ブレーキ操作子11のストロークがC0−C1−C2−C3の線図に変化する。
先ずブレーキ操作子11の入力を加えていくと、ストロークシミュレータ30のシミュレート手段53に張架されるシミュレートばね41のセット荷重を超えてC0のポイントとなりストロークが立ち上がる。
さらにブレーキ操作子11の入力を加えていくと、シミュレートばね41と直列に張架されて予圧を与えられていたシミュレータラバー40がたわみ始めるC1のポイントになり、シミュレートばね41とシミュレータラバー40との両者が同時にたわみはじめる。
またC0のポイントからC1のポイントへの過程ではブレーキ操作子11よりの入力荷重より遊星歯車機構90の初動荷重とマスタシリンダ60の初動荷重との合計の方が高いため第1の太陽歯車軸93の回動は開始されず、C0のポイント近傍では既にブレーキ操作子操作量検出手段25の検出値に対応した倍力油圧反力が第1の逆転制限手段130に支承されている。
さらに入力が加わり、シミュレートばね41とシミュレータラバー40との複合ばね定数にてストロークが増加していくとクリアランスL1がゼロとなりC2ポイントになる。
C2ポイントからフルストロークC3ポイントはシミュレータラバー40の単独のばね定数でストロークが増加してゆき、該シミュレータラバー40のゴム特性により非線形の線図となる。
そしてブレーキ操作子11の入力減少にともない、C3−C2−C1−C0の線図と略同一の線図に沿ってブレーキ操作子11のストロークも減少する。
図8を併せて参照して、車両の電源が立ち上がっていないなどの場合は、初期状態において遊星歯車機構90に倍力操作がおこなわれずに第1の逆転制限手段130には遊星歯車機構90およびマスタシリンダ60の初動荷重のみがかかっている。
ブレーキ操作子11の入力がおこなわれると、シミュレータピストン35がセット荷重の低いシミュレータばね41のみをたわませてストロークする過程で、前記ブレーキ操作子11の入力荷重が第1の太陽歯車軸93にかかる遊星歯車機構90およびマスタシリンダ60の初動荷重を超える。
そして第1の太陽歯車軸93の回動が開始されると、連接ピストン50とストッパピストン44間に張架される戻しばね49の付勢力によりストッパピストン44を取り残して連接ピストン50とスリーブ37が前進して前記ストッパピストン44に備える弁座47とスリーブ37の弁穴37aは密着し、遮断弁手段48は閉弁するので液圧室37bとマスタシリンダリザーバ12の連通は遮断される。
液圧室37bは油密状態になり、非圧縮性流体であるブレーキ液の充満によりスリーブ37内径でのシミュレータピストン35のストロークを制限する。
このとき、液圧室37bは圧力が高まるが、遮断弁手段48の弁穴37aを小径とするため、該弁穴37aと弁座47を離間させようとする力より戻しばね49の不勢力が勝り、遮断弁手段48は開弁しない設定とされている。
そしてシミュレート手段53は、シミュレート動作を制限したままシミュレータボディ31内径を摺動して連接ピストン50を押動する。
押動される連接ピストン50は、連結ロッド51とピン52を介して第1の太陽歯車軸93に一体に形成される回動変換連結子101に動力を伝達して前記第1の太陽歯車軸93に回動力を発生させる。
したがってブレーキ操作子11のストロークは、ストロークシミュレータ30での消費を制限して第1の太陽歯車軸93の回動に伴う第2の太陽歯車軸94の回動、すなわちマスタシリンダ60の昇圧操作のみに消費されることになる。
なお万が一、遮断弁手段48がリークなどの不具合をおこした場合においても、マスタシリンダ60を昇圧させることができるようにシミュレート手段53のシミュレータピストン35のフルストローク量を設定している。
図9は本発明の第2実施例を示し、該第2実施例ではストロークシミュレータ30´の構成のみを第1実施例のストロークシミュレータ30と異なるものとしており、ブレーキ液圧発生装置140を構成する遊星歯車機構90およびマスタシリンダ60は前記第1実施例と構成を同一とするものであり説明を省略する。
また、前記第1実施例と同一部品で同機能のものには符号も同一としている。
ストロークシミュレータ30´には、シミュレータボディ31´に内装されて遊星歯車機構90の反力を支承する第1の逆転制限手段130´と、弾性材料によりブレーキ操作子11の操作量の増大に応じて操作ストロークと操作反力を増大させるシミュレート手段53とシミュレータ動作を状況により制限するべく電磁弁133とを備える。
シミュレータボディ31´はストレートの内径を形成し、該内径部には前記シミュレート手段53がスリーブ37にカートリッジ様に小組してシミュレータボディ31後端の内径周方向に形成した溝部に嵌着される係止リング43に当接し後退限を規制して内装される。
前記係止リング43は、前記第1の逆転制限手段130´の機能を兼ね備えており、スリーブ37に伝達される倍力油圧反力をも支承する。
シミュレート手段53の構成および作用は前記第1実施例と同一であり、説明を省略する。
スリーブ37の前方には連接ピストン50´が外周にシール部材45´を装着してシミュレータボディ31´の内径に摺動可能に組み込まれる。
連接ピストン50´には連結ロッド51が首振り自在に装着されて、該連結ロッド51の前端はピン52を介して遊星歯車機構90の第1の太陽歯車軸93に一体に形成される回動変換連結子101に連結される。
シミュレータボディ31´の内径には、シミュレート手段53と連接ピストン50´とが挿入される中間部に油路31yが穿設され、該油路31yは電磁弁133を経由してマスタシリンダリザーバ12に連通している。
電磁弁133は常閉型のものであり、無通電時にはシミュレート手段53の液圧室37bとマスタシリンダリザーバ12は前記電磁弁133により連通を遮断されており、ストロークシミュレータ30´のストロークシミュレート動作は制限されている。
そして前記電磁弁133の開閉はECU13´により電気的に制御がされるよう構成される。
図10は、図9のストロークシミュレータ30´におけるECU13´の電磁弁133を開閉する制御フローチャート例を示す。
先ず電磁弁133が開弁するフローについて説明し、スタートからS1に進みフラグ0かつ電源電圧が所定値以上?の判定をおこない、ここではのちのステップで判定するモータ120の電流値判定にて異常であれば1が立つフラグの状態とECU13´に供給される電源電圧のモニター値より、該モニター値が所定値以上であるかを判定して前記フラグが0でかつ前記電源電圧モニター値が所定値以上でありYESである場合はS2へ進む。
S2では電磁弁通電をおこない、ここでは常閉型電磁弁133に通電して該常閉型電磁弁133の開弁動作をしてS3に進む。
S3では、ブレーキ操作子操作量検出をおこない、ここではブレーキ操作子11の操作によるブレーキ操作子操作量検出手段25の検出値を得てS4に進む。
S4では操作量に対応したモータ動力供給をおこない、ここではECU13´がS3で検出されるブレーキ操作子操作量検出手段25の検出値をもとに所定の倍力比を乗じた回転力をモータ120に与えるように演算し、モータ120に動力を供給する。
またS4では、ブレーキ操作子操作量検出手段25の検出値が小さく、所定量以下である場合、いわゆるスレッショルド値に達していない場合はノイズとみなしモータ120への動力供給量はゼロとしてS5に進む。
S5では操作量に対するモータ駆動電流値が所定値範囲内?の判定をおこない、ここではECU13´にフィードバックされて監視されるモータ120の駆動電流値が所定範囲内であって、充分な駆動力が出されているかを判定してYESであればリターンする。
次に電磁弁133が閉弁するフローについて説明し、スタートからS1に進みフラグ0かつ電源電圧が所定値以上?の判定をおこない、ここではフラグが1であるかまたはECU13に供給される電源電圧モニター値が所定値未満でありNOである場合はS7へ進む。
S7では、常閉型である電磁弁133を無通電とすることで、該S6以前に電磁弁133が通電されていて開弁状態であった場合には閉弁動作をおこない、電磁弁133が無通電で閉弁していた場合においては動作に変化が無いことになる。
またS1でYESであった場合にはS2,S3,S4からS5へと進み、S5では操作量に対するモータ駆動電流値が所定範囲内?の判定をおこない、ここではECU13´にフィードバックされて監視されるモータ120の駆動電流値が所定範囲外でNOであればS6に進む。
S6ではフラグ立ち上げをおこない、フラグの規定値である0を1にして、のちの制御ループにおいて、すでにモータ120の動力に異常があることを認識させて電磁弁133の開閉制御の頻繁なる切換え、いわゆる制御パタツキを防止するようにしてS7に進み電磁弁133の閉弁動作をおこないリターンする。
前記フラグは、値が1になっていた場合でも車両の主電源のリセット、いわゆるイグニッションキーがONからOFF、さらに再度ONになる際にはフラグの値も1から0にリセットされる。
以上のように構成されるストロークシミュレータ30´では、ECU13´に供給される電源電圧が所定値以上であり予めモータ120への動力供給が充分できると判定された場合および、動力を供給した結果フィードバック検出される該モータ120の電流値が所定範囲内であり正常に倍力動作がおこなわれていると判定する場合には電磁弁133が開弁する。
そして、シミュレート手段53に画成される液圧室37bとマスタシリンダリザーバ12とを連通して、大気圧開放状態にされた液圧室37bは容積変化を許容し、シミュレータばね41およびシミュレータラバー40のたわみも許容して、ストロークシミュレート動作がおこなわれる。
ストロークシミュレータ30´の電磁弁133が開弁しているときのストロークシミュレータ特性は図14と同一に設定される。
また、ECU13´に供給される電源電圧が所定値より低く予めモータ120への動力供給が充分できないと判定された場合および、動力を供給した結果フィードバック検出される該モータ120の電流値が所定範囲外で正常に倍力動作がされていないと判断する場合には電磁弁133が閉弁する。
なお、車両の電源が投入されていないいわゆるイグニッションキーがOFFの状態、または車両のバッテリ電源が外されているなどの場合においても、電磁弁133は常閉型であるため同様動作となる。
そして、シミュレート手段53に画成される液圧室37bとマスタシリンダリザーバ12との連通を遮断して、液圧室37bを油密状態にして容積変化を制限し、シミュレータばね41およびシミュレータラバー40のたわみも規制されてストロークシミュレート動作を制限する。
そしてシミュレート手段53は、シミュレート動作を制限したままシミュレータボディ31´の内径を摺動して連接ピストン55を押動する。
押動される連接ピストン55は、連結ロッド51とピン52を介して歯車軸93に一体に形成される回動変換連結子101に動力を伝達して前記第1の太陽歯車軸93に回動力を発生させる。
ブレーキ操作子11の入力は、ストロークシミュレータ30´に消費されることなく効率よく遊星歯車機構90の第1の太陽歯車軸93に回動力として伝達される。
なお万が一、電磁弁133がリークなどの不具合をおこした場合においても、マスタシリンダ60を昇圧させることができるようにシミュレート手段53のシミュレータピストン35のフルストローク量を設定している。
マスタシリンダ60は、遊星歯車機構90の第2の太陽歯車軸94に一体形成される直動変換連結子103にピン79を介して首振り可能に支持されるマスタプッシュロッド78が、マスタシリンダ60の後部マスタピストン62を押動できるように連結される。
そしてマスタシリンダ60は、タンデム型のものであり、前部出力ポート16Fに液圧を発生させる前部マスタピストン71と、後部出力ポート16Rに液圧を発生させる後部マスタピストン62とを備える。
マスタボディ61は、有底円筒状のシリンダ内にて前部および後部マスタピストン71,62が摺動自在に嵌合する。
マスタボディ61の上部には、前部および後部マスタピストン71,62により画成される液室へのブレーキ液の補給が可能なように、合成樹脂から成るマスタシリンダリザーバ12(図1参照)が取り付けられブレーキ液を満たしている。
前部マスタピストン71の軸方向中間部およびマスタボディ61間にブレーキ液を補給すべく、常時通じて前部マスタピストン71の軸方向中間部に開口する補給ポート61Cがマスタボディ61に穿設される。
前部マスタピストン71の前部には、前部出力ポート16Fに液圧を発生させるべく、マスタボディ61のシリンダ内面に摺接するカップ72が装着される。また前部マスタピストン71の後方側には後部出力ポート16Rに発生した液圧を受圧すべく、マスタボディ61のシリンダ内面に摺接するカップ73が装着される。
前部マスタピストン71には、戻しばね76の付勢力により前部マスタピストン71が後退限位置に戻ったときに前部出力ポート16Fとマスタシリンダリザーバ12を連通させる中心型のリリーフ弁74が設けられる。このリリーフ弁74は、前部マスタピストン71の前端部に同軸に装着され、前部マスタピストン71が後退限にあるときにはリリーフ弁74を弁ばね75のばね付勢力に抗して前進位置に保持し開弁して、前部マスタピストン71の前進時には弁ばね75によるリリーフ弁74の後退動作すなわち閉弁動作を許容するようにして両端がマスタボディ61に固定的に支持される開弁棒77とで開閉可能に構成される。
開弁棒77は、その両端をマスタボディ61で支持されて前部マスタピストン71の長孔内に挿通されており、リリーフ弁74の後端が開弁棒77に当接される。
リリーフ弁74は、前部マスタピストン71が後退限に在るときには開弁棒77でリリーフ弁74が押圧されることにより開弁し、前部出力ポート16Fとマスタシリンダリザーバ12を連通させてシリンダ内にブレーキ液を補給可能となる。また前部マスタピストン71が後退限から前進すると、開弁棒77が前部マスタピストン71に対して後方に相対移動することにより、リリーフ弁74が閉弁して前部出力ポート16Fへの圧力発生が可能になる。
後部マスタピストン62は異径段付軸にして、大径軸はマスタボディ61のシリンダ内径に、小径軸はマスタボディ61の後端部にシール部材69を備えて嵌着されるガイド67の内径にそれぞれ摺動自在に嵌合される。
ガイド67の前端にはマスタピストン62の環状段付部が当接し、またガイド67の後端はマスタボディ61の後端溝部に嵌着されるストッパ70に当接して、ガイド67とともに後部マスタピストン62の後退限が決められている。
そして後部マスタピストン62は、前方外周に後方からのみブレーキ液の流通を許容してマスタボディ61内径に摺接するカップ63を備え、後部マスタピストン62の後方軸はガイド67内周に装着されたカップ68に摺接する。
またマスタボディ61には、後部マスタピストン62の後退限位置にあるときはマスタシリンダリザーバ12と後部出力ポート16Rを連通して、後部マスタピストン62の前進位置ではカップ63の通過によりマスタシリンダリザーバ12と後部出力ポート16Rの連通が遮断され閉弁するリリーフポート61aと、マスタシリンダリザーバ12からカップ63とカップ68間に常時ブレーキ液の補給をおこなう補給ポート61bとが穿設される。
前部および後部マスタピストン71,62の最大間隔を規制すべく、前部マスタピストン71後端に当接するリテーナ65と後部マスタピストン62間に縮設される戻しバネ66のセット長を、後部マスタピストン62に螺着されるリテーナガイド64が規制するようになっている。
前部マスタピストン71の戻しバネ76より後部マスタピストン62の戻しバネ66のセット荷重の方が大きく設定されており、後部マスタピストン62の後退限では前部および後部マスタピストン71,62の最大間隔をおいた位置で前部マスタピストン71の後退限も設定される。
このように構成されたマスタシリンダ60では、遊星歯車機構90の第2の太陽歯車軸94に連結されるマスタプッシュロッド78の押動により、後部マスタピストン62と前部マスタピストン71が同時に前進を開始して後部マスタピストン62の戻しバネ66より小さなセット荷重に設定される前部マスタピストン71の戻しバネ76をたわませる。
そして前部マスタピストン71ではリリーフ弁74が、また後部マスタピストン62ではリリーフポート61aがほぼ同時に閉弁動作をおこなう。
前記閉弁動作後は、後部マスタピストン62と前部マスタピストン71の前進および後退に応じた液圧を後部出力ポート16Rおよび前部出力ポート16Fに発生させることができる。
後部マスタピストン62と前部マスタピストン71が後退限に戻ると前部マスタピストン71ではリリーフ弁74が、また後部マスタピストン62ではリリーフポート61aが開弁して後部出力ポート16Rおよび前部出力ポート16Fはマスタシリンダリザーバ12に連通して大気圧開放状態となる。
図11〜13を併せて参照して、第1および第2実施例のブレーキ液圧発生装置140の作用を模式図にて説明する。
なお、図3,4では遊星歯車95の個数は4個であるが、図11〜13の模式図では遊星歯車95の個数を2個に省略する。
先ず図11は、ブレーキ液圧発生装置140の非作動初期状態を示すものである。
ブレーキ操作子11に連結されるストロークシミュレータ30,30´は遊星歯車機構90の第1の太陽歯車軸93に一体形成する回動変換連結子101に連結され、ストロークシミュレータ30,30´は遮断弁手段または電磁弁48,133を介してマスタシリンダリザーバ12に液路を接続する。
マスタシリンダ60は遊星歯車機構90の第2の太陽歯車軸94に一体形成する直動変換連結子103に連結される。
遊星歯車機構90には第1の太陽歯車軸93が歯数ZAを形成して、キャリア軸102のキャリア96に自転公転可能に軸支される遊星歯車95,95の一端に形成される歯数ZB,ZBに噛合する。
第2の太陽歯車軸94は、第1の太陽歯車軸93の歯数ZAよりも大きな歯数ZDが形成され、前記遊星歯車95,95の他端に形成されて歯数ZBよりも小さな歯数ZC,ZCに噛合する。
キャリア軸102のキャリア96外周のウォーム歯車96hにはモータ120により回動されるウォームホイール歯車120wが噛合している。
そして、遊星歯車機構90の第1の太陽歯車軸93は第1の逆転制限手段130に、キャリア軸102は第2の逆転制限手段131に、第2の太陽歯車軸94は第3の逆転制限手段132にそれぞれ当接して初期位置にあり、ストロークシミュレータ30,30´およびマスタシリンダ60のピストンは後退限にある。
図12は、ブレーキ操作子11の操作量に対応したモータ120の動力によりマスタシリンダ60に倍力液圧を発生させる動作を示す。
図15の出力液圧特性を併せて参照し、図15の線図において実線で示される特性線図K0−K1−K2−K3−K8は通常の倍力液圧線図であり、破線で示されるK0−K4−K5−K6は電気回生制動装置との協調回生制動時の倍力液圧線図であり、2点鎖線で示されるK7−K8はモータ120の倍力の無いブレーキ操作子11のみの力による非倍力液圧線図である。
先ず通常の倍力においては、ブレーキ操作子11に入力がおこなわれるとストロークシミュレータ30,30´はストロークシミュレート動作をおこない、ブレーキ操作子操作量検出手段25が操作量を検出して、ECU13はその検出値に対応して倍力するようモータ120に動力を供給制御する。
モータ120のウォーム歯車120wはキャリア軸102がマスタシリンダ60を増圧する方向(図12では反時計方向)に回転してゆく。
キャリア軸102(キャリア96)の回転にともない、キャリア96に軸支される遊星歯車95,95は第1の太陽歯車軸93の歯数ZA上と第2の太陽歯車軸94の歯数ZD上とを自転しながら公転して第2の太陽歯車軸94を図12の反時計方向に回転させる。
そして第2の太陽歯車軸94に連結されるマスタシリンダ60では倍力油圧が発生する一方、該マスタシリンダ60の初動反力と倍力油圧反力は遊星歯車95,95を介して第1の太陽歯車軸93を第2の太陽歯車軸94とは逆方向に回転させようとする回転力(図12では時計方向)が働き、該回転力は第1の逆転制限手段130に支承されるため第1の太陽歯車軸93は拘束される。
このように正常に倍力動作がおこなわれると、ストロークシミュレータ30,30´の遮断弁手段48(または電磁弁133)は開弁状態にあり、ブレーキ操作子11の入力増加にともない図14の特性のようにストロークシミュレート動作がおこなわれてゆく。
出力液圧特性において、倍力作動開始時には図15の実線K0−K1に示されるように一気に液圧が高められるいわゆるジャンピングがおこなわれ、食い付きのよいブレーキフィーリングを提供する。
さらなるブレーキ操作子11の入力増大にともない、モータ120によるキャリア軸102の倍力がおこなわれてゆくが、K0−K1−K2までの線図において、キャリア軸102の回転角θ2に対する第2の太陽歯車軸94の回転角θ3は次式の関係になる。
θ3=θ2{1−(ZA・ZC)/(ZB・ZD)}
そして線図のK2−K3では、モータ120の最大回転力付近となり倍力動作を停止するが、すでにマスタシリンダ60の出力液圧は車両の車輪が路面とロックすべき(実際はABS15が車輪ロックを防止する)液圧値を充分超えており、K2以上の昇圧を求める必要性はない。
さらにブレーキ操作子11の入力が加わると、K3−K8の線図になり、K7−K8に示される非倍力液圧線図上に復帰する。
すなわちK3のポイントで、モータ120の倍力によりキャリア軸102が第2の太陽歯車軸94を回転させる力より、ブレーキ操作子11による第1の太陽歯車軸93が第2の太陽歯車軸94を回転させる力のほうが上回ったために非倍力液圧線図上に復帰することになる。
そしてブレーキ操作子11の入力が低下すると、K8−K3−K2−K1−K0線図と略同一の線図に沿って出力液圧も低下してゆく。
また、坂道停止などでブレーキ操作子11の入力をほぼ一定に保持したり、前記K2−K3間のようにモータ120の動力を増減させる必要が無い場合においては、キャリア軸102のウォームホイール歯車96hからモータ120のウォーム歯車120wへの動力伝達逆効率を低く設定することにより、モータ120の逆転抑止に用いる動力供給を微弱に制御して電力消費を抑えることができる。
電気回生制動装置との協調回生制動時の倍力において、ブレーキ液圧発生装置140の動作は通常倍力の場合と同一であるが、図15出力液圧特性の破線で示すK0−K4−K5−K6線図のようにブレーキ操作子入力に対する出力液圧を運転者の所望する通常倍力制動力から電気回生制動力分を差し引いて出力液圧を発生させるものである。
図15の出力液圧特性では、少なくとも非倍力液圧線図K7−K8よりも上回るようにK0からK4のポイントにジャンピングしてK4からK5では非倍力線図K7−K8線図の勾配と平行にして、K5からK6ポイントまでを通常倍力線図K1からK2までの勾配と平行にオフセットして出力液圧を抑制制御してモータ120に動力を供給する。
電気回生制動装置との協調倍力をおこなっている過程で、車両駆動用バッテリが満充電されて通常倍力に復帰する場合には協調倍力の現ポイントから垂線を立てて通常倍力線図に交わるポイントに上昇させればよく、逆に通常倍力から協調倍力にする場合は逆に下降させればよいことになる。
以上のように、ブレーキ液圧発生装置140になんらかのデバイスを追加することなくECU13の制御により電気回生制動装置は、K4−K5−K6−K2−K1−K4で囲まれる領域で有効に回生電力を蓄えることができ、車両制動力としては協調倍力液圧分の車輪制動力と電気回生制動力の合計、すなわち運転者の所望する通常倍力液圧の車輪ブレーキと同一の制動力を得ることができる。
図13は、車両の電源が立ち上がっていない、およびモータ120の動力に不具合がある場合などの理由により、モータ120に動力が供給されずにブレーキ操作子11の力のみでマスタシリンダ60に非倍力液圧を発生させる動作を示す。
ブレーキ操作子11に入力されると、モータ120への動力の供給が無く、倍力油圧反力を第1の逆転制限手段130が支承されることが無いためストロークシミュレータ30,30´は遮断弁手段48(または電磁弁133)を閉じシミュレート動作を停止しながら、前記ブレーキ操作子11の入力を遊星歯車90の第1の太陽歯車軸93を回動すべく伝達する。
遊星歯車機構90のキャリア軸102は初期位置にあり第2の逆転制限手段131に逆転を制限されるよう当接している。
さらにキャリア軸102のウォームホイール歯車96hからモータ120のウォーム歯車120wへの動力伝達逆効率を低く設定するため、モータ120の逆転に抗する大きな抵抗力もキャリア軸102にかかっていることになる。
ブレーキ操作子11からの入力伝達により、第1の太陽歯車軸93の歯数ZAは図13において反時計方向に回転して、第2の逆転制限手段131により逆転を制限し拘束されたキャリア軸102に軸支される遊星歯車95,95に一体に形成する歯数ZB,ZBおよび歯数ZC,ZCは時計方向に自転して第2の太陽歯車軸94を反時計方向に回転させてマスタシリンダ60を昇圧させる。
図15出力液圧特性の2点鎖線K7−K8の非倍力液圧線図に示すようにマスタシリンダ60を昇圧させるが、このとき第1の太陽歯車軸93の回転角θ1と第2の太陽歯車軸94の回転角θ3の関係は次式のようになる。
θ3=θ1(ZA・ZC)/(ZB・ZD)
ここで、第2の太陽歯車軸94の歯数ZDよりも第1の太陽歯車軸93の歯数ZAが小さく(それにともない、遊星歯車95の歯数ZBより歯数ZCが小さく)設定されているため第1の太陽歯車軸93の回転角θ1より第1の太陽歯車軸94の回転角θ3が小さく減速比が高いため、ブレーキ操作子11の入力に対するマスタシリンダ60への出力が増幅してより小さな踏力で高い液圧を発生できる設定にされている。
ブレーキ操作子11の入力が低下してくると、マスタシリンダ60に発生している油圧の反力および該マスタシリンダ60の戻しばね76,66の付勢力により、第2の太陽歯車軸94は逆転(図13で時計方向)して遊星歯車95も逆転(図13で反時計方向)、そして第1の太陽歯車軸93も逆転(図13で時計方向)して初期位置に復帰する。
このように、遊星歯車機構90は機械的にブレーキ操作子11の入力とモータ120の動力との高い方の力を選択して、いわゆるハイセレクトでマスタシリンダ60に動力を伝達して液圧を発生することができる。
その上、モータ120単独の動力でも自動ブレーキ等に供する液圧を発生することができ、いわゆるブレーキバイワイヤ機能を簡素な構成で提供できる。
また、ストロークシミュレータ30,30´にあってはブレーキ操作子11の入力を遊星歯車機構90が選択した場合にはストロークシミュレート動作を制限してマスタシリンダ60に有効にブレーキ操作子11の入力およびストロークを伝達して液圧を発生させることができる。
さらに、ブレーキ操作子11の入力を遊星歯車機構90が選択した場合には該遊星歯車機構90の減速比により入力を増幅してマスタシリンダ60に伝達するので万一の倍力失陥時でもより小さな踏力で高い液圧を発生することができる。
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明を逸脱することなく種々の設計変更を行うことが可能である。
たとえば上記実施例では車両用ブレーキ装置のブレーキ液圧発生装置140に備える遊星歯車機構90は2K−H型段付遊星歯車機構として説明したが、キャリアに軸支される遊星歯車が外転する太陽歯車(外歯車)を1個、内転する歯車(内歯車)を1個に構成して1段の2K−H型にしたり、あるいは遊星歯車が外転または内転可能な歯車数を3個にしキャリアを浮動させて3K型にしたり、あるいは遊星歯車が外転または内転可能な歯車数を1個にして遊星歯車の自転を自在継ぎ手経由で取り出しK−H−V型などに設変した遊星歯車機構に本発明を適用することも可能である。
そして、キャリアに支持される遊星歯車についてもシングルピニオン型に限定されるものではなくダブルピニオン型とした遊星歯車にも本発明を適用することも可能である。
上記第1実施例ではストロークシミュレータ30の遮断弁手段48を軸方向の密着による閉弁方法として説明したが、たとえばマスタシリンダのように横穴をシールが通過して閉弁する遮断弁手段を備えるように設変したストロークシミュレータにあっても本発明を適用することも可能である。
上記実施例ではストロークシミュレータから遊星歯車機構、該遊星歯車機構からマスタシリンダへの動力伝達手段としてクランク機構にて説明したが、てこ、カム、ボールねじなどを用いてもよく、さらにベルトやチェーンおよびリンクなどを介して前記ストロークシミュレータと遊星歯車機構とマスタシリンダとを遠隔的に配置して構成することも可能である。
上記実施例ではブレーキ操作量検出手段として、足により操作されるブレーキ操作子(ペダル)のみにて説明したが、舵取りハンドルなどに装着されるブレーキレバーなどを追加して、該ブレーキレバーの操作量に対応したブレーキ制動力を発生させることも可能である。
上記実施例ではタンデム型のマスタシリンダを備える車両用ブレーキ装置について説明したが、単一のマスタピストンがマスタボディに摺動可能に収容されるシングルマスタシリンダを備える車両用ブレーキ装置に本発明を適用することも可能である。