JP4491572B2 - 酵素免疫測定法による試料中の測定対象物質の測定試薬及び測定方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、試料中の測定対象物質の測定を酵素免疫測定法により行うための測定試薬及び測定方法であって、特に測定の盲検値が高い試薬及び測定方法において、色原体として、(i)4−アミノアンチピリン、及び(ii)フェノール若しくはその誘導体又はアニリン誘導体のいずれか一方を使用することを特徴とするものである。
本発明は、特に化学、生命科学、臨床検査等の分野において有用なものである。
【0002】
【従来の技術】
抗原と抗体、糖とレクチン、ヌクレオチド鎖とそれに相補的なヌクレオチド鎖、リガンドとレセプター等の特異的な親和性を有する物質間の反応を利用した試料中に含まれる微量の測定対象物質の測定試薬及び測定方法は種々のものが知られている。
【0003】
中でも、抗原と抗体の間の抗原抗体反応(免疫反応)を利用した免疫学的測定方法は広く実施されている。
この免疫学的測定方法のうち、抗原又は抗体に酵素、放射性同位元素、又は蛍光色素のような微量の差を識別できる標識物を結合させて、抗原抗体反応の特異性を利用することにより、試料中の抗原又は抗体の存在を免疫学的に測定しようとする標識物による免疫学的測定方法は、比較的短時間に簡便に実施でき、かつ再現性も良いことから汎用されている。
【0004】
この標識物による免疫学的測定方法のうち、標識物として酵素を用いるものを酵素免疫測定法(EIA法;Enzyme Immunoassay)という。このEIAは、抗原又は抗体の一方を酵素で標識し、抗原抗体反応の結果を酵素反応に変換して発色させ、抗原又は抗体を定性的又は定量的に測定しようというものである。また、EIA法のうち固相を利用したものをELISA法(Enzyme−Linked Immunosorbent Assay)と呼ぶ。これら酵素免疫測定法は、放射性同位元素を標識物質として使用する放射免疫測定法と同等の感度を持ち、放射能汚染の危険性もないため、広く利用されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、酵素免疫測定法は高感度であるがゆえ、試料中に含まれる測定対象物質以外の種々の微量成分の影響を受けやすく、いわゆる非特異的反応を受けることが少なくないのが実状である。
これらの非特異的反応は、盲検値として測定され、測定の特異性、ひいては正確性を著しく損ねるものである。
【0006】
この酵素免疫測定法において、標識物質として用いるペルオキシダーゼ等の酵素の酵素反応には、オルト−フェニレンジアミン(OPD)やテトラメチルベンジジン(TMB)等の感度の高い色原体が用いられている。
しかし、この高感度化故に、測定対象物質と抗原又は抗体との抗原抗体反応とは無関係な副反応とも言える非特異的反応による影響が増幅され、盲検値が高くなってしまい、つまり、特異性が悪くなってしまう。
これにより、試料中の測定対象物質の存在の有無の判定、又は試料中の測定対象物質の濃度の測定が難しくなり、正確に行われなくなる。
そして、ひいては、疾病の診断を誤る危険性も生じる。
【0007】
例えば、夏型過敏性肺炎を診断する場合には、罹患が疑われる人の血清中の「夏型過敏性肺炎の原因微生物に対する抗体」の測定等を行う。
これは、「Trichosporon asahii」に対するヒトの抗体が血清試料中に存在するか否かの判定、又はその抗体の存在量(濃度)の測定を、夏型過敏性肺炎の原因微生物である「Trichosporon asahii」という真菌由来の抗原成分を固定化したマイクロプレート、及びペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG抗体を用いて、酵素免疫測定法のサンドイッチ法により測定を行うものである。
このため、「Trichosporon asahii」に対する抗体を含まない健常人の血清試料においても、ペルオキシダーゼ標識抗ヒトIgG抗体との非特異的反応が多く検出されてしまい、すなわち盲検値が高くなり、「Trichosporon asahii」に対する抗体の有無の判定、又は濃度の測定が極めて難しいものとなっていた。
【0008】
そこで、非特異的反応が生じ、盲検値が高い測定試薬及び測定方法において、この非特異的反応による影響を抑制し、盲検値を低減させることができ、特異性が高く正確に試料中の測定対象物質の測定が行える測定試薬及び測定方法が求められていた。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、標識物質であるペルオキシダーゼによる酵素反応の色原体として、(i)4−アミノアンチピリン、及び(ii)フェノール若しくはその誘導体又はアニリン誘導体のいずれか一方を使用するものを用いて、非特異的反応による影響を抑制し、盲検値を低減させて、特異性、そして正確性を高めた酵素免疫測定法による試料中の測定対象物質の測定試薬及び測定方法を提供することを目的とする。
【0010】
【課題を解決するための手段】
本発明は、試料中の測定対象物質の測定を、標識物質としてペルオキシダーゼを用いる酵素免疫測定法により行うための試薬であって、かつ測定の盲検値が高い試薬において、色原体として、(i)4−アミノアンチピリン、及び(ii)フェノール若しくはその誘導体又はアニリン誘導体のいずれか一方を使用することを特徴とする、酵素免疫測定法による試料中の測定対象物質の測定試薬である。
【0011】
本発明の測定試薬においては、測定対象物質が、抗体であることが好適である。
【0012】
また、本発明の測定試薬においては、「測定対象物質である抗体と結合することができる物質−この物質と結合することができる抗体−担体」を含むことが好適である。
【0013】
そして、本発明の測定試薬においては、測定対象物質が、夏型過敏性肺炎の原因微生物に対する抗体であることが好適である。
【0014】
更に、本発明の測定試薬においては、夏型過敏性肺炎の原因微生物が、Trichosporon asahiiであることが好適である。
【0015】
また、本発明は、試料中の測定対象物質の測定を、標識物質としてペルオキシダーゼを用いる酵素免疫測定法により行う測定方法であって、かつ測定の盲検値が高い測定方法において、色原体として、(i)4−アミノアンチピリン、及び(ii)フェノール若しくはその誘導体又はアニリン誘導体のいずれか一方を使用することを特徴とする、酵素免疫測定法による試料中の測定対象物質の測定方法である。
【0016】
本発明の測定方法においては、測定対象物質が、抗体であることが好適である。
【0017】
また、本発明の測定方法においては、「測定対象物質である抗体と結合することができる物質−この物質と結合することができる抗体−担体」を用いることが好適である。
【0018】
そして、本発明の測定方法においては、測定対象物質が、夏型過敏性肺炎の原因微生物に対する抗体であることが好適である。
【0019】
更に、本発明の測定方法においては、夏型過敏性肺炎の原因微生物が、Trichosporon asahiiであることが好適である。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明による試料中の測定対象物質の測定試薬及び測定方法は、標識物質としてペルオキシダーゼを用いる酵素免疫測定法により行うための試薬及び測定方法において、色原体として、(i)4−アミノアンチピリン、及び(ii)フェノール若しくはその誘導体又はアニリン誘導体のいずれか一方を使用することにより、測定の盲検値が高い測定試薬及び測定方法においても正確な測定が行えるものである。
【0021】
本発明の測定試薬及び測定方法では、測定の盲検値が高い測定試薬及び測定方法において、非特異的反応による影響を抑えるために、標識物質であるペルオキシダーゼによる酵素反応に使用する色原体をOPDやTMB等の高感度なものから、4−アミノアンチピリン、及びフェノール若しくはその誘導体の組み合わせ、又は、4−アミノアンチピリン、及びアニリン誘導体の組み合わせの低感度のものに変えることにより、非特異的反応による影響を抑制し、盲検値を低減させ、特異性を向上させることができるものである。
【0022】
なお、本来の測定反応である、測定対象物質と抗原又は抗体との抗原抗体反応(免疫反応)を逃さず捉えるため、測定反応に用いる標識物質結合抗体又は標識物質結合抗原の濃度を高めることが好ましい。
【0023】
すなわち、これにより、標識物質であるペルオキシダーゼの酵素反応に使用する色原体を、従来と比べ低感度のものに変え、これにより低下した感度を、標識物質として用いるペルオキシダーゼを結合させたペルオキシダーゼ結合抗体又はペルオキシダーゼ結合抗原の使用濃度を従来よりも高めて補うことにより、測定の特異性を向上させることと、測定の感度を向上させることの両方の目的を達成することができる。
【0024】
本発明の測定試薬及び測定方法において、試料中の測定対象物質の測定を行う際の手順は、公知の酵素免疫測定法の手順に準じて行えばよい。
【0025】
この操作の手順であるが、測定対象物質が抗体であり、サンドイッチ法により測定を行う場合を例に取り、以下説明を行う。
【0026】
▲1▼ 『「測定対象物質である抗体と結合することができる物質」(例えば、測定対象物質である抗体にとっての抗原、又はこの抗原の抗原決定基を有する物質等)と結合することができる抗体』を担体に固定化し、更に、前記の「測定対象物質である抗体と結合することができる物質」を結合させて、「測定対象物質である抗体と結合することができる物質−この物質と結合することができる抗体−担体」の順に結合させて固定化させたものを調製する。
【0027】
▲2▼ 次に、この担体の「測定対象物質である抗体と結合することができる物質」等を固定化した部分に一定量の試料を添加して一定時間接触させる。
【0028】
これにより、試料中に測定対象物質が存在する場合には、「測定対象物質−測定対象物質である抗体と結合することができる物質−この物質と結合することができる抗体−担体」の結合を形成させる。
【0029】
▲3▼ この添加・接触と同時に、若しくは一定時間のうちに、又は洗浄の後に、「測定対象物質である抗体と結合することができる物質」であって前記の「測定対象物質である抗体と結合することができる物質」と同一又は異なる物質(例えば、抗体、又は抗原等)に標識物質であるペルオキシダーゼを結合させたもの(「ペルオキシダーゼ標識結合物質」)の一定量を、この担体の「測定対象物質である抗体と結合することができる物質」等を固定化した部分に添加して一定時間接触させる。
【0030】
この操作により、試料中に測定対象物質である抗体が存在する場合には、「ペルオキシダーゼ標識結合物質−測定対象物質−測定対象物質である抗体と結合することができる物質−この物質と結合することができる抗体−担体」の結合を形成させる。
【0031】
▲4▼ 次に、担体に結合していない未結合の「ペルオキシダーゼ標識結合物質」を洗浄分離する。(B/F分離)
【0032】
▲5▼ そして、「ペルオキシダーゼ標識結合物質−測定対象物質−測定対象物質である抗体と結合することができる物質−この物質と結合することができる抗体−担体」の結合により担体に結合したペルオキシダーゼ標識結合物質のペルオキシダーゼ活性を測定することにより、試料中の測定対象物質の測定を行う。
【0033】
この測定においては、担体とペルオキシダーゼ標識結合物質が試料中の測定対象物質等を介して、「ペルオキシダーゼ標識結合物質−測定対象物質−測定対象物質である抗体と結合することができる物質−この物質と結合することができる抗体−担体」と結合するので、担体に間接的に結合したペルオキシダーゼ標識結合物質の量を測定することにより試料中に含まれていた測定対象物質の有無、又は量を測定することができるものである。
【0034】
「ペルオキシダーゼ標識結合物質−測定対象物質−測定対象物質である抗体と結合することができる物質−この物質と結合することができる抗体−担体」の結合により担体に結合したペルオキシダーゼ標識結合物質のペルオキシダーゼ活性の測定であるが、色原体として、(i)4−アミノアンチピリン、及び(ii)フェノール若しくはその誘導体又はアニリン誘導体のいずれか一方を使用し、更に過酸化水素を存在させて反応させ、色原体よりロイコ型色素を生成させて、その生成したロイコ型色素の量を吸光度を測るなどの光学的方法等により測定を行えばよい。
【0035】
本発明における酵素免疫測定法は、例えば、サンドイッチ法、又は競合法等の手法により行うことができる。
【0036】
また、本発明における酵素免疫測定法は、例えば、1ステップ法、又は2ステップ法等の手法により行うことができる。
【0037】
また、本発明による試料中の測定対象物質の測定においては、担体として磁性体よりなる物質又は磁性体を含む物質を用い、これに磁力を作用させて、B/F分離を磁気的に行うこともできる。
【0038】
本発明の試料中の測定対象物質の測定において、担体としては、抗原又は抗体等を固定化することができる担体であれば、その種類、材質、形状等を特に限定することなく使用することができる。
【0039】
これは、酵素免疫測定法、蛍光免疫測定法、放射免疫測定法、又は発光免疫測定法などの標識物質を用いた免疫測定法等において、一般的に測定に用いられている担体については、問題なく用いることができる。
【0040】
例えば、ポリスチレン、ポリカーボネイト、ポリビニルトルエン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリメタクリレート、ポリアクリルアミド、ラテックス、リポソーム、ゼラチン、アガロース、セルロース、セファロース、ガラス、金属、セラミックス又は磁性体等の材質よりなる粒子、マイクロカプセル、ビーズ、マイクロプレート、試験管、スティック又は試験片等の担体を用いることができる。
【0041】
また、前記の担体を強磁性体で被覆又は担体成型時に強磁性体を含有させて調製した磁性担体等を用いることもできる。
【0042】
標識物質であるペルオキシダーゼを、抗原又は抗体等に結合させる方法は、化学的結合法等の公知の方法を用いることができる。
【0043】
この化学的結合法により行う場合には、日本臨床病理学会編「臨床病理臨時増刊特集第53号 臨床検査のためのイムノアッセイ−技術と応用−」,臨床病理刊行会,1983年、日本生化学会編「新生化学実験講座1 タンパク質IV」,東京化学同人,1991年等に記載の公知の方法に従い、標識物質であるペルオキシダーゼと、抗原又は抗体等を、グルタルアルデヒド、カルボジイミド、イミドエステル又はマレイミド等の二価性の架橋試薬と混合、接触させ、ペルオキシダーゼと、抗原又は抗体等のそれぞれのアミノ基、カルボシキル基、SH基、アルデヒド基又は水酸基等と反応させることにより結合を行うことができる。
【0044】
担体に、抗原又は抗体等を固定化させる方法は、物理的吸着法又は化学的結合法等の公知の方法を用いることができる。
【0045】
物理的吸着法による場合は、公知の方法に従い、緩衝液等に溶解した抗原若しくは抗体等を、担体の固定化したい部分に添加し接触させたり、又は、抗原若しくは抗体等と担体を、緩衝液等の溶液中で混合し接触させること等により行うことができる。
【0046】
例えば、緩衝液等に溶解した抗原若しくは抗体等を、担体の固定化したい部分に添加し接触させ、又は、抗原若しくは抗体等と担体を、緩衝液等の溶液中で混合し接触させ、これを約2℃〜約40℃で約10分〜約1日間行う。
【0047】
また、化学的結合法により行う場合には、日本臨床病理学会編「臨床病理臨時増刊特集第53号 臨床検査のためのイムノアッセイ−技術と応用−」,臨床病理刊行会,1983年、日本生化学会編「新生化学実験講座1 タンパク質IV」,東京化学同人,1991年等に記載の公知の方法に従い、担体又は担体の固定化したい部分と、抗原又は抗体等を、グルタルアルデヒド、カルボジイミド、イミドエステル又はマレイミド等の二価性の架橋試薬と混合、接触させ、担体、担体の固定化したい部分、又は抗原若しくは抗体等のそれぞれのアミノ基、カルボキシル基、SH基、アルデヒド基又は水酸基等と反応させることにより固定化を行うことができる。
【0048】
更に、非特異的反応を抑制するために処理を行う必要があれば、抗原又は抗体等を固定化させた担体のこの固定化した部分を、BSA、カゼイン、ゼラチン、卵白アルブミン若しくはその塩などのタンパク質、界面活性剤又は脱脂粉乳等を接触させ被覆させること等の公知の方法により処理して、ブロッキング処理(マスキング処理)を行ってもよい。
【0049】
標識物質であるペルオキシダーゼを結合させた抗原若しくは抗体、又は測定対象物質等を溶解させる溶液、あるいは試料の希釈液については、各種水系溶媒を用いることができる。
【0050】
例えば、精製水、生理食塩水又はトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン緩衝液、リン酸緩衝液若しくはリン酸緩衝生理食塩水などの各種緩衝液等の水系溶媒を用いることができる。なお、この緩衝液のpHについては、pH3〜12の範囲内にあることが好ましい。
【0051】
この緩衝液としては、例えば、MES、Bis−Tris、Bis−Trisプロパン、ADA、PIPES、ACES、MOPSO、MOPS、BES、TES、HEPES、DIPSO、TAPSO、POPSO、HEPES、HEPPSO、EPPS、Tricine、Bicine、TAPS、CHES、リン酸、リン酸塩、ホウ酸、ホウ酸塩、グリシン、グリシルグリシン、イミダゾール、又はトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン〔Tris〕などの緩衝剤の水溶液等を挙げることができる。
【0052】
また、標識物質であるペルオキシダーゼを結合させた抗原若しくは抗体、又は測定対象物質等を溶解させる溶液、あるいは試料の希釈液には、BSA、ヒト血清アルブミン、カゼイン若しくはその塩などのタンパク質、塩化ナトリウムなどの各種塩類、各種糖類、脱脂粉乳、正常ウサギ血清などの各種動物血清、アジ化ナトリウムなどの各種防腐剤又は非イオン性界面活性剤、両イオン性界面活性剤若しくは陰イオン性界面活性剤などの各種界面活性剤等を適宜添加して用いることができる。
【0053】
そして、これらを添加する際の濃度は特に限定されるものではないが、0.001〜10%(W/V)が好ましく、特に0.01〜5%(W/V)が好ましい。
【0054】
なお、この各種界面活性剤としては、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、デカグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレングリセリン脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンフィトステロール、フィトスタノール、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンヒマシ油、硬化ヒマシ油若しくはポリオキシエチレンラノ
キシエチレンアルキルエーテル硫酸塩若しくはポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩などの陰イオン性界面活性剤等を挙げることができる。
【0055】
標識物質としては、ペルオキシダーゼを用いるが、このペルオキシダーゼとしては、例えば、細菌若しくはカビなどの微生物由来のもの、ヒト若しくはウシなどの動物由来のもの、西洋ワサビなどの植物由来のもの、又は遺伝子組み換え法により調製したもの等を用いることができる。
また、ペルオキシダーゼの使用濃度は、160〜640purpurogallin mU/mlの濃度範囲で用いることが好ましい。
【0056】
なお、本発明においては、前記の『「測定対象物質の抗体と結合することができる物質」と結合することができる抗体』が、D−8株由来のマウス抗Trichosporon asahii・モノクローナル抗体であることが好適である。
このD−8株由来のマウス抗Trichosporon asahii・モノクローナル抗体は、Trichosporon asahiiの近縁の菌種との交差反応性が認められない抗体である。〔J.Clin.Microbiol.,31巻,7号,1949−1951頁,1993年〕
この近縁の菌種との反応性が認められないD−8株由来のマウス抗Trichosporon asahii・モノクローナル抗体を用いると、近縁の菌種との反応性のないTrichosporon asahiiの抗原を「測定対象物質である抗体と結合することができる物質」として担体に結合することができるため、高い特異性が得られて好ましい。
【0057】
本発明の測定方法及び測定試薬においては、色原体として、(i)4−アミノアンチピリン、及び(ii)フェノール若しくはその誘導体又はアニリン誘導体のいずれか一方を使用する。
【0058】
ここでフェノールの誘導体としては、例えば、4−クロロフェノール、2,4−ジクロロフェノール、2,4−ジブロモフェノール、若しくは2,4,6−トリクロロフェノール、又はこれらの塩等を挙げることができる。
【0059】
また、アニリン誘導体としては、例えば、N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン(HDAOS)、N−スルホプロピル−3,5−ジメトキシアニリン(HDAPS)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン(DAOS)、N−エチル−N−スルホプロピル−3,5−ジメトキシアニリン(DAPS)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシ−4−フルオロアニリン(FDAOS)、N−エチル−N−スルホプロピル−3,5−ジメトキシ−4−フルオロアニリン(FDAPS)、N−(2−カルボキシエチル)−N−エチル−3,5−ジメトキシアニリン(CEDB)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3−メトキシアニリン(ADOS)、N−エチル−N−(3−スルホプロピル)−3−メトキシ.ニリン(ADPS)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)アニリン(ALOS)、N−エチル−N−(3−スルホプロピル)アニリン(ALPS)、N−(3−スルホプロピル)アニリン(HALPS)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメチルアニリン(MAOS)、N−エチル−N−(3−スルホプロピル)−3,5−ジメチルアニリン(MAPS)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3−メトキシアニリン(TOOS)、N−(2−カルボキシエチル)−N−エチル−3−メチルアニリン(CEMB)、若しくはN−(2−カルボキシエチル)−N−エチル−3−メトキシアニリン(CEMO)、又はこれらの塩等を挙げることができる。
【0060】
また、色原体の使用濃度であるが、4−アミノアンチピリンは10〜1000mMの濃度範囲で使用することが好ましく、またフェノール若しくはその誘導体、又はアニリン誘導体は、6〜300mMの濃度範囲で使用することが好ましい。
【0061】
本発明の測定試薬及び測定方法における測定対象物質としては、測定の盲検値が高いものが好適である。
このような測定対象物質の例として、夏型過敏性肺炎の原因微生物に対する抗体等を挙げることができる。
【0062】
本発明において、試料としては、前記の測定対象物質が存在する可能性があり、かつその測定対象物質の存在の有無の確認又は場合によっては定量を行おうとする液状のものをいう。
【0063】
例えば、ヒト又は動物の血液、血清、血漿、尿、精液、髄液、唾液、汗、涙、腹水、羊水等の体液;ヒト若しくは動物の脳等の臓器、毛髪、皮膚、爪、筋肉、又は神経組織等の抽出液;ヒト又は動物の糞便の抽出液又は懸濁液;細胞或いは菌体の抽出液;植物の抽出液;穀物、野菜、果物、魚介類、肉類又は加工食品等の食品、水、茶、コーヒー、牛乳、又は果汁等の飲料、そして、飲料水、河川水、湖沼水、海水、又は土壌の懸濁液等の環境分析用試料等が挙げられる。
【0064】
【実施例】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0065】
〔実施例〕(本発明による、抗Trichosporon asahii抗体の測定)
【0066】
血清試料中の抗Trichosporon asahii抗体の測定を、本発明の測定方法及び測定試薬、並びに従来の測定方法及び測定試薬により行い、本発明の測定方法及び測定試薬の効果を確かめた。
【0067】
1.測定試薬の調製
【0068】
▲1▼ リン酸等張化緩衝液の調製
精製水約80mlに、リン酸水素二ナトリウム・十二水の0.29g、リン酸二水素カリウムの0.02g、塩化ナトリウムの0.8g、及び塩化カリウムの0.02gを加えて溶解し、精製水で全量100mlとして、リン酸等張化緩衝液を調製した。
【0069】
▲2▼ ブロッキング液の調製
精製水約80mlに、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの0.605g、塩化ナトリウムの0.88gを加えて溶解した後、塩酸を加えてpH8.0に調整した。
更に、カゼインナトリウムの0.5g、アジ化ナトリウムの0.2gを加えて溶解した後、精製水で全量100mlとした。
【0070】
▲3▼ 試料希釈液の調製
精製水の約80mlに、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの0.605g、塩化ナトリウムの11.68gを加えて溶解し、塩酸を加えてpH8.0に調整した。
更に、カゼインナトリウムの0.5g、アジ化ナトリウムの0.2gを加えて溶解した後、精製水で全量100mlとした。
【0071】
▲4▼ 洗浄液の調製
精製水の約80mlに、リン酸水素二ナトリウム・十二水の0.29g、リン酸二水素カリウムの0.02g、塩化ナトリウムの0.8g、塩化カリウムの0.02g、Tween20(界面活性剤)の0.05gを加えて溶解し、精製水で全量100mlとした。
【0072】
▲5▼ POD標識抗体希釈液
精製水の約80mlに、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタンの0.605g、塩化ナトリウムの0.88g、ラクトース・一水和物の1.0gを加えて溶解し、塩酸を加えてpH8.0に調整した。
更に、カゼインナトリウムの0.5g、硫酸ゲンタマイシンの0.01gを加えて溶解した後、精製水で全量100mlとした。
【0073】
▲6▼ T.asahii抗原結合マイクロプレートの調製
【0074】
a)T.asahii抗原
Trichosporon asahii株をYeastを加えたSabouraud培地にて2週間培養し、培養上清を得た。
この培養上清を濃縮後、0.1%アジ化ナトリウムを加えて、T.asahii抗原とした。
【0075】
b)T.asahii抗原固定化マイクロプレート
前記a)で調製したT.asahii抗原を、5μg/mlとなるようにリン酸等張化緩衝液に加えた。
これをマイクロプレートのウェルに各100μlずつ分注し、その後37℃で16〜20時間放置して、T.asahii抗原を各ウェルの内壁に固定化させた。
【0076】
次に、このマイクロプレートのウェル内の液を除き、洗浄液で2回洗浄を行った。
その後、各ウェルにブロッキンク液を200μlずつ分注して、各ウェルのブロッキングを行った。
そして、このマイクロプレートのウェル内の液を除き、洗浄液で2回洗浄を行った。
以上の操作により調製したものを、T.asahii抗原結合マイクロプレートとした。
【0077】
なお、対照として、T.asahii抗原は用いず、その代わりにブロッキング液を用いて、前記操作の通りに調製したものを、対照マイクロプレートとした。
(この対照マイクロプレートでは、T.asahii抗原は固定化されていない。)
【0078】
2.試料
【0079】
▲1▼ 患者血清試料
夏型過敏性肺炎の患者8名の血清10μlの各々に、試料希釈液1,000μlをそれぞれ加えて希釈して、8種類の患者血清試料を調製した。
【0080】
▲2▼ 正常血清試料
健常人10名の血清10μlの各々に、試料希釈液1,000μlをそれぞれ加えて希釈して、10種類の正常血清試料を調製した。
【0081】
3.測定
【0082】
▲1▼ 本発明による測定
8種類の患者血清試料の各々の100μlを、T.asahii抗原結合マイクロプレートのウェルと対照マイクロプレートのウェルの各々に添加し、37℃で15時間反応させた。
【0083】
その後、これらのウェルを洗浄液にて洗浄した後、POD標識抗体希釈液で1,000倍に希釈したPOD標識抗ヒトIgG抗体溶液(Sigma社製;A0170、Fc specific)を各ウェルに100μlずつ添加し、37℃で2時間反応させた。
次いで、各ウェルを洗浄液にて洗浄した。
【0084】
この後、本発明法・色原体液〔1mM 4−アミノアンチピリン、20mM フェノール、及び0.006% 過酸化水素を含む0.1Mトリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン−塩酸緩衝液(pH8.0)〕を150μlずつ各ウェルに添加し、37℃で1時間反応させた。
【0085】
この反応の後、各ウェルに、本発明法での反応停止液(8M 塩酸グアニジン水溶液)を150μlずつ添加して反応を停止させた後、マイクロプレートリーダー(バイオラッド社製;3550型)を用いて各ウェルの吸光度(主波長490nm、副波長655nm)を測定した。
【0086】
そして、T.asahii抗原結合マイクロプレートのウェルにおける吸光度測定値(A)から対照マイクロプレートのウェルにおける吸光度測定値(B)を差し引いて吸光度差(C)を算出した。
【0087】
この患者血清試料の本発明の測定における測定結果を、表1に示した。
【0088】
【表1】
【0089】
また、正常血清試料についても、この操作により測定を行い、吸光度を得て、吸光度差を算出した。
【0090】
この正常血清試料の本発明の測定における測定結果を、表2に示した。
【0091】
【表2】
【0092】
▲2▼ 従来の方法による測定
10種類の患者血清試料の各々の100μlを、T.asahii抗原結合マイクロプレートのウェルと対照マイクロプレートのウェルの各々に添加し、37℃で5.5時間反応させた。
【0093】
その後、これらのウェルを洗浄液にて洗浄した後、POD標識抗体希釈液で5,000倍に希釈したPOD標識抗ヒトIgG抗体溶液(Sigma社製;A0170、Fc specific)を各ウェルに100μlずつ添加し、室温で3時間反応させた。
次いで、各ウェルを洗浄液にて洗浄した。
【0094】
この後、従来法・色原体液〔「OPD Peroxidase Substrate Tablet Sets」(Sigma社製;P9187;オルト−フェニレンジアミンを含有)の1錠を精製水20mlで溶解し、0.006%の濃度になるように過酸化水素水を添加したもの。〕を100μlずつ各ウェルに添加し、37℃で20分間反応させた。
【0095】
この反応の後、各ウェルに、従来法での反応停止液(4N 硫酸水溶液)を50μlずつ添加して反応を停止させた後、マイクロプレートリーダー(バイオラッド社製;3550型)を用いて各ウェルの吸光度(主波長490nm、副波長550nm)を測定した。
【0096】
そして、T.asahii抗原結合マイクロプレートのウェルにおける吸光度測定値(A)から対照マイクロプレートのウェルにおける吸光度測定値(B)を差し引いて吸光度差(C)を算出した。
【0097】
この患者血清試料の従来方法の測定における測定結果を、表3に示した。
【0098】
【表3】
【0099】
また、正常血清試料についても、この操作により測定を行い、吸光度を得て、吸光度差を算出した。
【0100】
この正常血清試料の従来方法の測定における測定結果を、表4に示した。
【0101】
【表4】
【0102】
4.考察
正常血清試料(10種類)の従来方法の測定による測定結果を示した表4において、吸光度差(C)の値は、0.376〜2.068となっており、測定の盲検値が非常に高いものであることが分かる。
【0103】
これに対して、同じ正常血清試料の本発明の測定による測定結果を示した表2において、吸光度差(C)の値は、0.057〜0.463となり、これはそれぞれ従来方法における吸光度差の値の9〜22%であって、盲検値を低減できていることが分かる。
【0104】
つまり、本発明による測定は、非特異的な反応の影響を抑制し、盲検値を低減させて、測定の特異性を高めることにより、正確な測定を行えるものであることが分かる。
【0105】
また、患者血清試料(8種類)の従来方法の測定による測定結果を示した表3において、吸光度差(C)の値は、2.676〜2.947である。
【0106】
これに対して、同じ患者血清試料の本発明の測定による測定結果を示した表1において、吸光度差(C)の値は、1.993〜2.998であり、従来方法における吸光度差の値と大きな差がないことが分かる。
つまり、患者血清試料の測定において、本発明による測定は、従来方法と同等の吸光度、すなわち同等の感度を有するものであることが分かる。
【0107】
以上のことより、本発明の測定試薬及び測定方法は、測定の感度を犠牲にすることなく、非特異的な反応の影響を抑え、盲検値を低減し、特異性を高めて、正確な測定が行える測定試薬及び測定方法であることが確かめられた。
そして、それ故、疾病の診断を正確に行うことができる測定試薬及び測定方法であることが確認できた。
【0108】
【発明の効果】
本発明の酵素免疫測定法による試料中の測定対象物質の測定試薬及び測定方法は、非特異的反応が生じ、盲検値が高い測定試薬及び測定方法においても、この非特異的反応による影響を抑制し、盲検値を低減させることができ、特異性高く正確に試料中の測定対象物質の測定を行うことができる測定試薬及び測定方法である。
Claims (2)
- 試料中のTrichosporon asahiiに対する抗体の測定を、標識物質としてペルオキシダーゼを用いる酵素免疫測定法により行う測定方法であって、非特異的反応による影響を抑制し盲検値を低減するため、色原体として、(i)4−アミノアンチピリン、及び(ii)フェノール若しくはその誘導体を使用することを特徴とする、酵素免疫測定法による試料中のTrichosporonasahiiに対する抗体の測定方法。
- 試料中のTrichosporon asahiiに対する抗体の測定を、標識物質としてペルオキシダーゼを用いる酵素免疫測定法により行うに当たり、色原体として、(i)4−アミノアンチピリン、及び(ii)フェノール若しくはその誘導体を使用することを特徴とする、試料中のTrichosporon asahiiに対する抗体の測定において非特異的反応による影響を抑制し盲検値を低減する方法。
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