JP4490867B2 - 装身用パッド並びにその製造方法 - Google Patents
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Description
ところで、この種のパッド素材については、より自然な装着感を得るために、素材そのものを含め、製品自体に種々の技術的な工夫が凝らされている。
周縁部を互いにシールした二枚の表皮シートにより形成された表皮体に対し、その内側に充填材を封入し、パッドとして用いる部材において、
前記表皮シートのうち身体に密着しないおもて側の表皮シートは、熱可塑性を有する樹脂シートと、ニットシートとをラミネートした素材で構成され、且つこのおもて側の表皮シートは、形保持シートに仮留めされて装身用パッドの形状に応じて凹陥した型キャビティーを構成し、
また前記表皮シートのうち身体への密着側の表皮シートは、前記型キャビティーを覆うようにしておもて側の表皮シートと周縁シール部において一部に未シール状態の注入口を確保してシールされ、袋状の表皮体を形成するものであり、
また前記充填材は、未硬化の状態で前記注入口から前記型キャビティーの容積より少ない量表皮体内に封入され、
更に、表皮体内に残留している空気を注入口から排除することによって表皮体内を負圧状態として充填材で満たして注入口を閉鎖状態とし、これによって密着側の表皮シートには、その周縁部を中心部に向かって引き寄せるプリストレスが付与され、
この状態を保ったまま充填材の硬化が図られ、周縁シール部が身体の密着側と反対側へカールする現象を抑えるように形成されていることを特徴として成るものである。
この発明によれば、身体への密着側の表皮シートは、中心部に向かって張るように作用しているから、比較的薄くなりがちな周縁部が反対側にカールするような現象が生ずることが抑えられ、ボディスーツ等に組み込む際の安定性が良い。更におもて側の表皮シートがニットシートで覆われるような状態となり、その装着感等が優れる。
(A) 前記密着側の表皮シート及びおもて側の表皮シートにおける樹脂シートには、硬度30〜90(JIS A)のウレタン樹脂を適用すること、
(B) 前記ニットシートには、伸縮性を有した合成樹脂繊維織物を適用すること、
(C) 前記充填材には、針入度100〜200〔JIS K2207(50g荷重)〕、比重0.6〜0.7である中空球形状充填剤入りのシリコーンゲルを適用すること、
の上記(A) 〜(C) の、一または複数が選択されるものであることを特徴とする。
この発明によれば、装身用パッドは、耐久性に優れ、その物理的性状等をこのような数値範囲にすることにより、より自然な装着感が得られる。
この発明によれば、使用者の体形合わせた美容目的の整姿用の装身パッドを提供することができる。
準備工程において、
保形性を有する形保持シートと表皮シートとを仮止め状にラミネートさせた状態で、所望の型キャビティが形成された母型シートと、
この母型シートにおける型キャビティを覆うように、母型シートに一体化される密着側の表皮シートと、
型キャビティ内に注入するゲル状の充填材とを素材として用意し、
次いで、シール工程において、
前記母型シートの型キャビティ側に、密着側の表皮シートを重ねて、型キャビティ周縁をシールするとともに、一部に未シール状態の注入口を確保して、袋状の表皮体を形成し、
次いで、注入工程において、
未硬化状態の充填材を注入口から表皮体内に注入し、且つその注入量は、型キャビティ容積より少ない量とし、
次いで空気排除工程において、
密着側の表皮シートを型キャビティ側に押圧し、表皮体内に残留している空気を前記注入口から外部に排除して、表皮体内を負圧状態として充填材で満たした状態にし、
次いで、硬化工程において、
前記注入口を閉鎖状態に保つとともに、母型シートを下にした状態とし、表皮体内は空気を存在させず、密着側の表皮シートの中央部が凹陥し張るように充填材を満たした状態に保ち加熱雰囲気中で注入した充填材の硬化を図り、密着側の表皮シートに対し、周縁部を中心に向って引き寄せるプリストレスを付与した状態とし、
次いで、離型工程において、
おもて側の表皮シートと、形保持シートとの剥がし取りを行うようにし、周縁シール部が身体への密着側と反対側へカールする現象を抑えるようにしたことを特徴として成るものである。
この発明によれば、保形性を有する形保持シートを利用して順次製造するので、母型シートの成形形状いかんで多くの製品形状のバリエーションを低コストで得ることができる。また、空気排除工程により表皮体内の空気を排除でき、充填材内に気泡の入らない状態の、周辺部を中心に向かって引き寄せるプリストレスが付与された製品が得られる。
前記工程には、
(a) 前記準備工程とシール工程では、密着側の表皮シートに予め剥離紙を設け、この剥離紙によって補強した状態で表皮シートを母型シートに重ね、型キャビティ周縁のシールを行う剥離紙補強処理、
(b) 前記空気排除工程では、その前処理として注入された未硬化の充填材を一定時間、表皮体の注入口を上方に向けることによって、下方に充填材を偏在させる端縁部充填促進処理、
(c) 前記(b) 記載の端縁部充填促進処理を行うにあたっては、パッドの尖断面部を下方に配置する尖断面部充填促進処理、
(d) 前記注入工程では、注入口に充填材供給用の注入管と保護管との二重管状の充填ノズルを差し込んで注入を行うものであり、注入後は、注入管を保護管内に退去させた上、充填ノズルを引き抜くことにより液ダレを防ぐ液ダレ防止処理、
(e) 前記硬化工程では、表皮体内に注入した充填材自体の粘性と負圧作用とを利用して、注入口を密閉するようにした自閉鎖処理、
の上記(a) 〜(e) の一または複数の処理が組み込まれることを特徴とする。
この発明によれば、表皮体の製造段階、充填材の充填段階、充填材の硬化段階において、より適切な加工ができる。
なお前記シリコーンゲルとしては、東レ・ダウコーニング株式会社製の製品名「CF5106」を適用するもので、前記充填剤としては、例えば日本フィライト株式会社製の製品名「エクスパンセル092」が適用できる。また因みに前記シリコーンゲルは、A液とB液より構成され、使用前にこのA液、B液、充填剤を58.8:39.2:2などの比率で混合してその混合比率により上述した所望の比重及び硬度に設定するものである。
〔準備工程〕
準備工程は必要な素材を準備するものであり、まずおもて側の表皮シート22を供給するための母型シート25が用意される。この母型シート25は、ブランク状態では平板状のポリエチレンテレフタレート製シート等を適用した形保持シート23に対し、おもて側の表皮シート22が仮留め状態にラミネートされて供給されるものである。この仮留め状態とは、例えば手による剥離等により形保持シート23からおもて側の表皮シート22が容易に変形破損することなく剥離できる状態を言うのである。そして形保持シート23に対してのおもて側の表皮シート22のラミネート態様はおもて側の表皮シート22におけるニットシート22B側が形保持シート23側にラミネートされ、その上面に樹脂シート22Aがニットシート22Bに対してはほぼ一体にラミネートされた状態として構成される(図2(a)参照)。
このような素材を準備した後、シール工程において母型シート25の型キャビティ25A側に密着側の表皮シート21を重ねて、型キャビティ25Aの周縁をシールして周縁シール部11Aを形成するとともに、一部に未シール状態の注入口11Bを確保して、全体として袋状の表皮体2を形成する。なおこの際、注入口11Bは尖断面部12が存在するような場合、その反対側の鈍断面部13側に開口させておくことが望ましい。
次いで未硬化の状態の充填材3を注入口11Bから表皮体2に注入する。この作業にあたっては、充填ノズル30からの充填材3が注入口11Bの内面に付着しないように図ることが望ましい。このため図2(c)、図3(b)に示すような充填ノズル30を用いることが好ましいものであって、充填ノズル30は、言わば二重管状に注入管31と保護管32とが組み合わされている。加えて充填材3を注入後、保護管32がとどまった状態で注入管31のみが保護管32内を更に退去するように構成することがより好ましい。
そしてこの注入量は母型シート25が構成する型キャビティ25Aの容積よりも充分少ない量とする。具体的には50%を中心に40〜60%程度の容積とすることが好ましい。
このような状態で、更に表皮体2の内部内側周縁部に充分に充填材3が行き渡るように端縁部充填促進処理がなされる。すなわち例えば尖断面部12を下方に位置するように、図4(a)に示すように立てかけたような状態で充填材3の行き渡りを待つときには、自重により充填材3が尖断面部12の表皮体2の隙間に充分に行き渡るのである。また他の鈍断面部13等の部位を同じような処理で行い、充填材3の行き渡りを確実にすることが可能である。
なおこのような未硬化の充填材3による端縁部の充填材3による端縁部の充填促進処理は、シリコーンゲル中の中空球形状充填剤の分離が発生する前に実施する。
このような充填がなされた後、図4(b)に示すように空気排除工程において、未硬化の充填材3を下方から注入口11Bに向かって押し上げるように移動させ、表皮体2内に残留している空気を注入口11Bから外部に排除して表皮体2内を充填材3で満たした状態にするのである。なお前記密着側の表皮シート21に設けられていた剥離紙21Aは、この工程までに取り除かれる。
このような空気排除工程の後、充填材3の硬化を図るのであるが、その際に表皮体2内の充填材3が下がって、再度注入口11Bから空気が吸入されることを防ぐ必要があるが、この作業は注入口11Bを別途ピンチ等により塞ぐほか、充填材3の粘性を利用して自閉鎖状態に処理しておくことも可能である。すなわちこの自閉鎖処理は充填材3がわずかに注入口11Bの中に押し出されるようになり、一方、充填材3自体の容量は型キャビティ25Aのキャビティ容積より少ないから、充填材3は注入口11Bにおいて負圧傾向にあり、その負圧作用が注入口11Bの部位における密着側の表皮シート21とおもて側の表皮シート22との間を密着状態に維持するように作用するものである。
次いで硬化工程において、前記注入口11Bを閉鎖状態に保ったまま、加熱雰囲気中で注入した充填材3の硬化を図る。なおこの際には母型シート25側を下にした状態で保持し、密着側の表皮シート21側の上方から押圧具5により押し付けておくことが好ましい。具体的には例えば図5(a)に示すように、比較的柔軟な形なじみ性のあるウレタンシート、ウレタンパッド等の弾性パッド51をあてがい、更に充分な剛性を有する押さえ板52等を用いてこの弾性パッド51上から密着側の表皮シート21の上面を押して表皮面を均した後、弾性パッド51と押さえ板52を外す。その後、図5(b)に示すように、母型シート25端部の反り返り防止のために、再度押さえ板52のみを載せた状態で硬化を図ることが望ましい。なお硬化時間は70℃程度の加熱雰囲気中で90分程度行う。
このような状態で硬化した後、離型工程において製品の取り出しを行う。なお少なくとも前記硬化工程の始まる前、あるいは終了後、離型工程に至る前に、注入口11Bの部分を注入口シール部11Cとして示すようにシールして塞ぐ。そして離型工程において、前記シール部11近くを所定形状に切り抜くとともに、おもて側の表皮シート22と形保持シート23との剥がし取りを行う。もちろんユーザーの後加工の必要から縫い代を多めにとる必要がある場合、トリミング工程を行わなくても差し支えない。
なお本発明の装身用パッド1は、美容目的の整姿用パッドとしての適用例を挙げて説明したが、例えば装身時のプロテクターとしての作用をするプロテクター用のパッドとしても用いられるし、また医療目的で身体表面の患部、例えば褥瘡発生時の褥瘡部位等を保護するような医療用のパッドとしても利用し得る。従ってそれらに適した適宜の形状がとり得る。例えば図6(a)に示す実施例は、いわゆるドーナツ形をしたものであり、例えば部分的な褥瘡部等の周縁部にあてがって、褥瘡部位を保護するような用い方が可能である。また同様に図6(b)に示すほぼU字形に形成したパッド等は、例えば運動競技における肩から後頸部等を保護するような用い方に適したものである。なお例えばこのような形状において、周縁シール部11Aの概念の中には、前記ドーナツ形の中心口の周縁部に設けたシール部分についても周縁シール部11Aとして理解し得るものである。
11 シール部
11A 周縁シール部
11B 注入口
11C 注入口シール部
12 尖断面部
13 鈍断面部
2 表皮体
21 密着側の表皮シート
21A 剥離紙
22 おもて側の表皮シート
22A 樹脂シート
22B ニットシート
23 形保持シート
25 母型シート
25A 型キャビティ
3 充填材
30 充填ノズル
31 注入管
32 保護管
4 金型
41 成型キャビティ
5 押圧具
51 弾性パッド
52 押さえ板
P ベクトル(プリストレス)
S ボディスーツ
Claims (5)
- 周縁部を互いにシールした二枚の表皮シートにより形成された表皮体に対し、その内側に充填材を封入し、パッドとして用いる部材において、
前記表皮シートのうち身体に密着しないおもて側の表皮シートは、熱可塑性を有する樹脂シートと、ニットシートとをラミネートした素材で構成され、且つこのおもて側の表皮シートは、形保持シートに仮留めされて装身用パッドの形状に応じて凹陥した型キャビティーを構成し、
また前記表皮シートのうち身体への密着側の表皮シートは、前記型キャビティーを覆うようにしておもて側の表皮シートと周縁シール部において一部に未シール状態の注入口を確保してシールされ、袋状の表皮体を形成するものであり、
また前記充填材は、未硬化の状態で前記注入口から前記型キャビティーの容積より少ない量表皮体内に封入され、
更に、表皮体内に残留している空気を注入口から排除することによって表皮体内を負圧状態として充填材で満たして注入口を閉鎖状態とし、これによって密着側の表皮シートには、その周縁部を中心部に向かって引き寄せるプリストレスが付与され、
この状態を保ったまま充填材の硬化が図られ、周縁シール部が身体の密着側と反対側へカールする現象を抑えるように形成されていることを特徴とする装身用パッド。
- 前記構成部材において適用される材料は、
(A) 前記密着側の表皮シート及びおもて側の表皮シートにおける樹脂シートには、硬度30〜90(JIS A)のウレタン樹脂を適用すること、
(B) 前記ニットシートには、伸縮性を有した合成樹脂繊維織物を適用すること、
(C) 前記充填材には、針入度100〜200〔JIS K2207(50g荷重)〕、比重0.6〜0.7である中空球形状充填剤入りのシリコーンゲルを適用すること、
の上記(A) 〜(C) の、一または複数が選択されるものであることを特徴とする請求項1記載の装身用パッド。
- 前記パッドとして用いる部材は、身体の美容目的のものであることを特徴とする請求項1また2記載の装身用パッド。
- 準備工程において、
保形性を有する形保持シートと表皮シートとを仮止め状にラミネートさせた状態で、所望の型キャビティが形成された母型シートと、
この母型シートにおける型キャビティを覆うように、母型シートに一体化される密着側の表皮シートと、
型キャビティ内に注入するゲル状の充填材とを素材として用意し、
次いで、シール工程において、
前記母型シートの型キャビティ側に、密着側の表皮シートを重ねて、型キャビティ周縁をシールするとともに、一部に未シール状態の注入口を確保して、袋状の表皮体を形成し、
次いで、注入工程において、
未硬化状態の充填材を注入口から表皮体内に注入し、且つその注入量は、型キャビティ容積より少ない量とし、
次いで空気排除工程において、
密着側の表皮シートを型キャビティ側に押圧し、表皮体内に残留している空気を前記注入口から外部に排除して、表皮体内を負圧状態として充填材で満たした状態にし、
次いで、硬化工程において、
前記注入口を閉鎖状態に保つとともに、母型シートを下にした状態とし、表皮体内は空気を存在させず、密着側の表皮シートの中央部が凹陥し張るように充填材を満たした状態に保ち加熱雰囲気中で注入した充填材の硬化を図り、密着側の表皮シートに対し、周縁部を中心に向って引き寄せるプリストレスを付与した状態とし、
次いで、離型工程において、
おもて側の表皮シートと、形保持シートとの剥がし取りを行うようにし、周縁シール部が身体への密着側と反対側へカールする現象を抑えるようにしたことを特徴とする装身用パッドの製造方法。
- 前記工程には、
(a) 前記準備工程とシール工程では、密着側の表皮シートに予め剥離紙を設け、この剥離紙によって補強した状態で表皮シートを母型シートに重ね、型キャビティ周縁のシールを行う剥離紙補強処理、
(b) 前記空気排除工程では、その前処理として注入された未硬化の充填材を一定時間、表皮体の注入口を上方に向けることによって、下方に充填材を偏在させる端縁部充填促進処理、
(c) 前記(b) 記載の端縁部充填促進処理を行うにあたっては、パッドの尖断面部を下方に配置する尖断面部充填促進処理、
(d) 前記注入工程では、注入口に充填材供給用の 注入管と保護管との二重管状の充填ノズルを差し込んで注入を行うものであり、注入後は、 注入管を保護管内に退去させた上、充填ノズルを引き抜くことにより液ダレを防ぐ液ダレ防止処理、
(e) 前記硬化工程では、表皮体内に注入した充填材自体の粘性と負圧作用とを利用して、注入口を密閉するようにした自閉鎖処理、
の上記(a) 〜(e) の一または複数の処理が組み込まれることを特徴とする請求項4記載の装身用パッドの製造方法。
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