JP4490593B2 - ポリイミドフィルムの製造方法 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、生産性良好で、高い機械的強度を有するポリイミドフィルムの製造方法を提供するものである。
【0002】
【従来の技術】
ポリイミドフィルムは、耐熱性、絶縁性、耐溶剤性および耐低温性等を備えており、コンピュータ並びにIC制御の電気・電子機器部品材料として広く用いられている。
【0003】
近年、携帯電話などの小型汎用機器にポリイミドフィルムが多く使用されるようになり、ポリイミドフィルムに対する需要も益々増大してきており、さらなる高生産性を有するポリイミドフィルムの製造方法の開発が急がれている。
【0004】
通常ポリイミドフィルムは、熱キュア法または化学キュア法のいずれかの方法により製造される。たとえば熱キュア法の場合、ポリイミド前駆体であるポリアミド酸ワニスから溶媒を除去してポリアミド酸フィルムを形成した後、加熱することによりポリイミドフィルムに変換する。この方法において加熱時間を短縮しようとすると十分な物性を発現しない、フィルムが割れてしまう等の問題が出てくる。また、化学キュア法の場合、ポリアミド酸ワニスに化学イミド化剤を混合してゲルフィルムを得、これをさらに硬化・乾燥させてポリイミドフィルムを得るが、生産性を向上するために部分的に硬化及び/または部分的に乾燥されたポリアミド酸フィルム(ゲルフィルム)の作成時間を短くしようとすると、ゲルフィルムの化学イミド化が不十分となり、結果として製造されたポリイミドフィルムの引裂伝搬強度、引張強度および接着強度など基本的な機械的強度の低下をきたすという問題点があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
上記状況に鑑み、本発明者らは鋭意検討を行った結果、高い生産性を有し、かつ高い機械的強度を有するポリイミドフィルムの製造方法に関し、本発明に至ったのである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明にかかるポリイミドフィルムの製造方法は、ポリアミド酸有機溶媒溶液を支持体上に流延しまたは塗布して乾燥し、部分的に硬化及び/または部分的に乾燥されたポリアミド酸フィルムを製造する工程、
該ポリアミド酸フィルムを第3級アミンまたは第3級アミンの溶液に浸漬し、あるいは、該ポリアミド酸フィルムに第3級アミンまたは第3級アミンの溶液を塗布する工程、
その後ポリアミド酸をポリイミドにイミド化しつつ、かつフィルムを乾燥する工程
を含む。
【0007】
また、フィルム表面に残存する余分の液滴を取り除く工程を含みうる。
【0008】
さらに、部分的に硬化及び/または部分的に乾燥されたポリアミド酸フィルムの残揮発分含量が5〜100wt%以下であり、イミド化率が50%以上でありうる。
【0009】
前記第3級アミンが、キノリン、イソキノリン、β―ピコリン、ピリジンからなる群から選択されうる。
【0010】
本発明のポリイミドフィルムは、上記いずれかの方法により製造されうる。
【0011】
【発明の実施の形態】
本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、ポリアミド酸有機溶媒溶液を支持体上に流延しまたは塗布して乾燥し、部分的に硬化及び/または部分的に乾燥されたポリアミド酸フィルムを製造する工程、
該ポリアミド酸フィルムを第3級アミンまたは第3級アミンの溶液にポリアミド酸フィルムを浸漬し、あるいは、ポリアミド酸フィルムに第3級アミンまたは第3級アミンの溶液を塗布する工程、
その後ポリアミド酸をポリイミドにイミド化し、かつこのフィルムを乾燥する工程
を含む。以下、本発明のポリイミドフィルムの製造方法についてその実施の形態の一例に基づき説明する。
【0012】
本発明のポリイミドフィルムの製造方法は、基本的には、いずれのポリイミドフィルムの製造に適用可能である。
【0013】
本発明に用いられるポリアミド酸は、ポリイミドの前駆体であり、基本的には、公知のあらゆるポリアミド酸を適用することができる。通常、芳香族酸二無水物の少なくとも1種とジアミンの少なくとも1種を原料とし、これらを実質的等モル量を有機溶媒中に溶解させて、得られたポリアミド酸有機溶媒溶液を、制御された温度条件下で、上記酸二無水物とジアミンの重合が完了するまで攪拌することによって製造される。
【0014】
ここで、本発明のポリイミド前駆体であるポリアミド酸の製造に用いられる材料について説明する。
【0015】
ポリアミド酸の製造に用いられうる酸無水物としては、例えば、ピロメリット酸二無水物、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、1,2,5,6−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、オキシジフタル酸二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)スルホン二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、エチレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)、ビスフェノールAビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)及びそれらの類似物を含む。これらは、単独または、任意の割合の混合物が好ましく用い得る。
【0016】
これらのうち、本発明のポリイミド前駆体であるポリアミド酸において最も適当に用いられる酸二無水物は、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、p−フェニレンビス(トリメリット酸モノエステル酸無水物)であり、これらを単独または、任意の割合の混合物が好ましく用い得る。
【0017】
本発明にかかるポリイミド前駆体であるポリアミド酸の製造において使用し得る適当なジアミンは、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、ベンジジン、3,3’−ジクロロベンジジン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、1,5−ジアミノナフタレン、4,4’−ジアミノジフェニルジエチルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルシラン、4,4’−ジアミノジフェニルエチルホスフィンオキシド、4,4’−ジアミノジフェニルN−メチルアミン、4,4’−ジアミノジフェニル N−フェニルアミン、1,4−ジアミノベンゼン(p−フェニレンジアミン)、1,3−ジアミノベンゼン、1,2−ジアミノベンゼン、及びそれらの類似物を含み、これらを単独または、任意の割合の混合物が好ましく用い得る。
【0018】
これらジアミンにおいて、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル及びp−フェニレンジアミンが特に好ましく、また、これらをモル比で100:0から0:100、好ましくは100:0から10:90の割合で混合した混合物が好ましく用い得る。
【0019】
ポリアミド酸を合成するために好ましく用いられ得る溶媒は、アミド系溶媒すなわちN,N−ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどであり、N,N−ジメチルフォルムアミドまたはN,N−ジメチルアセトアミドを単独または、任意の割合の混合物を用いるのが好ましい。
【0020】
ポリアミド酸溶液は、通常5〜35wt%,好ましくは10〜30wt%の濃度で得られる。この範囲の濃度である場合に適当な分子量と溶液粘度を得ることができる。
【0021】
また、ポリイミドは前駆体であるポリアミド酸をイミド化して得られるが、イミド化には、熱キュア法及び化学キュア法のいずれかを用いる。熱キュア法は、脱水閉環剤等を作用させずに加熱だけでイミド化反応を進行させる方法である。また、化学キュア法は、ポリアミド酸有機溶媒溶液に、無水酢酸等の酸無水物に代表される化学的転化剤と、イソキノリン、β−ピコリン、ピリジン等の第三級アミン類等に代表される触媒とを作用させる方法である。化学キュア法に熱キュア法を併用してもよい。イミド化の反応条件は、ポリアミド酸の種類、フィルムの厚さ、熱キュア法及び/または化学キュア法の選択等により、変動し得る。
【0022】
イミド化を化学キュア法により行なう場合、本発明にかかるポリイミドフィルムの製造において、ポリアミド酸溶液に添加する化学的転化剤は、例えば脂肪族酸無水物、芳香族酸無水物、N,N ' - ジアルキルカルボジイミド、低級脂肪族ハロゲン化物、ハロゲン化低級脂肪族ハロゲン化物、ハロゲン化低級脂肪酸無水物、アリールホスホン酸ジハロゲン化物、チオニルハロゲン化物またはそれら2種以上の混合物が挙げられる。それらのうち、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水ラク酸等の脂肪族無水物またはそれらの2種以上の混合物が、好ましく用い得る。化学的転化剤の量としては、ポリアミド酸溶液中のアミド酸のモル数に対して、0.5〜5倍量、好ましくは1〜4倍量、さらに好ましくは1.5〜3倍量の割合で用い得る。
【0023】
イミド化を効果的に行うためには、化学的転化剤に触媒を同時に用いることが好ましい。触媒としては脂肪族第三級アミン、芳香族第三級アミン、複素環式第三級アミン等が用いられる。それらのうち複素環式第三級アミンから選択されるものが特に好ましく用い得る。具体的にはキノリン、イソキノリン、β−ピコリン、ピリジン等が好ましく用いられる。触媒の量としてはポリアミド酸溶液中のアミド酸のモル数に対して、0.1〜2倍量、好ましくは、0.2〜1倍量の割合で用い得る。少なすぎるとイミド化率が好適な範囲よりも小さくなる傾向があり、多すぎると硬化が速くなり、支持体上に流延するのが困難となる。
【0024】
本発明のポリイミドフィルムの製造方法において、部分的に硬化及び/または部分的に乾燥されたポリアミド酸フィルム(ゲルフィルムという)の製造工程は、公知の方法で行い得る。即ち、上記調整したポリアミド酸有機溶媒溶液をガラス板、エンドレスステンレスベルト、ステンレスドラムなどの支持体上に流延または塗布し、熱的にイミド化する。あるいは、化学的転化剤及び触媒を低温でポリアミド酸溶液中に混合し、引き続いてこのポリアミド酸溶液を支持体上にフィルム状にキャストし加熱することにより、化学的転化剤及び触媒を活性化する。これら、熱的または化学的イミド化により、部分的に硬化され、自己支持性を有するポリアミド酸フィルム(ゲルフィルム)が製造される。
【0025】
ゲルフィルムは、ポリアミド酸からポリイミドへの硬化の中間段階にあり、自己支持性を有する。ゲルフィルムの状態は、残揮発分含量およびイミド化率によって、表すことができる。残揮発分含量と、イミド化率は、以下の式で算出される。
【0026】
残揮発分含量は、式1
(A−B)×100/B・・・・式1
式1中
A,Bは以下のものを表す。
A:ゲルフィルムの重量
B:ゲルフィルムを450℃で20分間加熱した後の重量
から算出される。
【0027】
イミド化率は、赤外線吸光分析法を用いて式2
(C/D)×100/(E/F)・・・・式2
式2中
C、D、E、Fは以下のものを表す。
C:ゲルフィルムの1370cm−1の吸収ピーク高さ
D:ゲルフィルムの1500cm−1の吸収ピーク高さ
E:ポリイミドフィルムの1370cm−1の吸収ピーク高さ
F:ポリイミドフィルムの1500cm−1の吸収ピーク高さ
から算出される。
【0028】
ゲルフィルムの残揮発分含量は5〜500%の範囲、好ましくは5〜100%、より好ましくは10〜80%、最も好ましくは30〜60%の範囲にある。この範囲のフィルムを用いることが好適であり、外れると所定の効果が発現しにくい。また、ゲルフィルムの、イミド化率は50%以上の範囲、好ましくは80%以上、より好ましくは85%以上、最も好ましくは90%以上の範囲にある。この範囲のフィルムを用いることが好適であり、この範囲から外れると所定の効果が発現しにくい。
【0029】
本発明のポリイミドフィルムの製造方法によれば、上記残揮発分含量、イミド化率の範囲内のゲルフィルムを得られる範囲内において、ゲルフィルム作成時間は、従来のゲルフィルムの製造時間より20〜70%、さらには10〜70%短縮することが可能となる。
【0030】
次に、前記熱キュア法または化学キュア法により得られた、部分的に硬化及び/または部分的に乾燥されたポリアミド酸フィルムは、第3級アミンまたは第3級アミンの溶液を塗布、または部分的に硬化及び/または部分的に乾燥されたポリアミド酸フィルムを第3級アミンまたは第3級アミンの溶液に浸漬する工程に付される。
【0031】
部分的に硬化及び/または部分的に乾燥されたポリアミド酸フィルム(ゲルフィルム)に塗布、または浸漬する第3級アミンとしては、脂肪族第三級アミン、芳香族第三級アミン、複素環式第三級アミン等が用いられる。それらのうち複素環式第三級アミンから選択されるものが特に好ましく用い得る。具体的にはキノリン、イソキノリン、β−ピコリン、ピリジン等が好ましく用いられる。これらの第3級アミンは単独または2種以上の混合物で用いてもよい。またさらに有機溶剤溶液として用いることもでき、この場合いかなる溶媒で稀釈してもかまわないが、アミド系溶媒すなわちN,N−ジメチルフォルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチル−2−ピロリドンなどであり、N,N−ジメチルフォルムアミドまたはN,N−ジメチルアセトアミドを単独または任意に割合の混合物を用いるのが好ましい。稀釈して用いる場合、いかなる濃度のものを用いてもよいが、第3級アミンの濃度が100〜5重量%となるように調製された溶液を用いるのが好ましい。過度に希薄な溶液を用いると本発明の目的の一つである強度低下抑制の効果が小さくなる。
【0032】
ゲルフィルムに、第3級アミンまたは第3級アミン溶液を塗布する方法は、当業者が用い得る公知の方法を用い得るが、例えば、グラビアコート、スプレーコート、ナイフコーター等を用いた塗布方法が利用可能であり、塗布量の制御や均一性の観点より、グラビアコーターが特に好ましく用い得る。塗布量としては,1g/m以上40g/mが好ましく、5g/m以上30g/mがさらに好ましい。塗布量がこの範囲よりも少ないと強度低下を抑制することが困難となる。この範囲より、多くなると、フィルムの外観が悪くなる。
【0033】
また、第3級アミンまたは第3級アミン溶液に浸漬する場合は、特に制限はなく、一般的なディップコート法が利用し得る。具体的には、上記溶液を入れた槽にゲルフィルムを連続的に、またはバッチで浸すことにより行われる。浸漬時間については1秒以上100秒、好ましくは1〜20秒が好ましい。この範囲より長くなると、フィルムの外観が悪くなり、浸漬時間が短すぎると強度低下を抑制することが困難となる。
【0034】
第3級アミンまたは第3級アミン溶液を塗布、又は浸漬されたゲルフィルムは、その後、フィルム表面の余分な液滴を除去する工程を加えることが、フィルム表面にムラのない外観の優れたポリイミドフィルムを得ることが出来るので好ましい。液滴の除去は、ニップロールによる液絞り、エアナイフ、ドクターブレード、拭き取り、吸い取りなどの公知の方法が利用可能であり、フィルムの外観、液切り性、作業性等の観点より、ニップロールが好ましく用いられ得る。
【0035】
上記のようにして、第3級アミンまたは第3級アミン溶液を塗布または浸漬されたゲルフィルムは、硬化時の収縮を回避するために端部を固定される。固定されたゲルフィルムは、乾燥工程に付される。ゲルフィルム中の、水分、残留溶媒、残存転化剤及び触媒が除去され、イミド化されていないアミド酸が完全にイミド化されて、ポリイミドフィルムが得られる。この乾燥工程の温度条件は、最終的に500〜580℃の温度に昇温し、この温度範囲で1〜400秒加熱するのが好ましい。この温度より高い温度、及び/または加熱時間が長いと、フィルムの熱劣化が起こり問題が生じる。逆にこの温度より低い温度、及び/または加熱時間が短いと所定の効果が発現しない。
【0036】
上記本発明のポリイミドフィルムの製造方法により製造された、ポリイミドフィルムは、ゲルフィルム作成時間を短縮しても、所望の機械的強度を保持し得るポリイミドフィルムを得ることができる。従って、ゲルフィルム作成時間を短縮化できることにより生産性が改善され、引裂伝搬強度及び接着強度の低下を防ぎ、引張強度の向上したポリイミドフィルムが得られる。
【0037】
本発明にかかるポリイミドフィルムは、フレキシブルプリント基板、一般磁気記録用などの磁気テープ、磁気ディスク、太陽電池などの半導体素子のパッシベーション膜などに好ましく用いられる。
【0038】
【実施例】
以下に実施例を挙げて、本発明の効果を具体的に説明するが、本発明は、以下の実施例に限定されるものではなく、当業者は本発明の範囲を逸脱することなく、種々の変更、修正、及び改変を行い得る。
【0039】
ポリイミドフィルムの引裂伝播強度は、ASTM D-1938、引張強度はJIS C−2318に準拠して測定した。
【0040】
接着強度は、ナイロン・エポキシ系接着剤を用いて電解銅箔(三井金属鉱業社製、商品名3ECVLP、厚み35μm)とポリイミドフィルムとを張り合わせ、3層銅張積層板を作製し、JIS C−6481に従って銅パターン幅3mmで90度ピールで評価した。
【0041】
ゲルフィルムの加熱工程の温度条件は、比較例、実施例ともに、同じ条件で行った。
【0042】
(比較例1)ピロメリット酸二無水物/4,4’−ジアミノジフェニルエーテル/p−フェニレンジアミンをモル比で4/3/1の割合でポリアミド酸を合成した。このポリアミド酸を18.5wt%含むDMF溶液100gを調整し、無水酢酸35gとβピコリン5gからなる転化剤を混合、攪拌し、遠心分離による脱泡の後、アルミ箔上に厚さ400μmで流延塗布した。攪拌から脱泡までは0℃に冷却しながら行った。このアルミ箔とポリアミド酸溶液の積層体を、120℃150秒間加熱し、自己支持性を有するゲルフィルムを得た。このゲルフィルムの残揮発分含量は41wt%であり、イミド化率は81%であった。このゲルフィルムをアルミ箔から剥がし、フレームに固定した。このゲルフィルムを300℃、400℃、500℃で各30秒間加熱して厚さ25μmのポリイミドフィルムを製造した。このポリイミドフィルムの基本的な機械特性を表1に示す。
【0043】
(比較例2)アルミ箔とポリアミド酸溶液の積層体を160℃75秒間加熱した以外は、比較例1と全く同様にして厚さ25μmのポリイミドフィルムを製造した。中間段階で経由したゲルフィルムの残揮発分含量は36wt%であり、イミド化率は78%であった。このポリイミドフィルムの基本的な機械特性を表1に示す。
【0044】
(比較例3)ピロメリット酸二無水物/4,4’−ジアミノジフェニルエーテルをモル比で1/1の割合で用いた以外は、比較例1と全く同様にして厚さ25μmのポリイミドフィルムを製造した。中間段階で経由したゲルフィルムの残揮発分含量は40wt%であり、イミド化率は89%であった。このポリイミドフィルムの引裂伝播強度を表1に示す。
【0045】
(比較例4)アルミ箔とポリアミド酸溶液の積層体を160℃75秒間加熱した以外は、比較例2と全く同様にして厚さ25μmのポリイミドフィルムを製造した。中間段階で経由したゲルフィルムの残揮発分含量は38wt%であり、イミド化率は87%であった。このポリイミドフィルムの基本的な機械特性を表1に示す。
【0046】
比較例1と2、および比較例3と4を比較すると、ゲルフィルムの作成時間を短縮すると、引裂伝播強度、引張強度、接着強度の機械的強度いずれもが、低下することがわかる。
【0047】
(実施例1)比較例2と同様にして残揮発分含量は48wt%、イミド化率が78%であるゲルフィルムを得た。このゲルフィルムをイソキノリンに浸漬し、ニップロールに通すことにより余分な液滴を除去した後、300℃、400℃、500℃で各30秒間加熱して厚さ25μmのポリイミドフィルムを製造した。このポリイミドフィルムの基本的な機械特性を表1に示す。
【0048】
(実施例2)比較例2と同様にして残揮発分含量は53wt%、イミド化率が78%であるゲルフィルムを得た。このゲルフィルムをイソキノリンの35重量%DMF溶液に浸漬し、圧縮空気を吹き付けて余分な液滴を除去した後、比較例2と同じ条件で加熱し、厚さ25μmのポリイミドフィルムを得た。このポリイミドフィルムの基本的な機械特性を表1に示す。
【0049】
(実施例3)比較例4と同様にして残揮発分含量は49wt%、イミド化率が87%であるゲルフィルムを得た。このゲルフィルムをイソキノリンに浸漬し、圧縮空気を吹き付けて余分な液滴を除去した後、比較例4と同じ条件で加熱し、厚さ25μmのポリイミドフィルムを得た。このポリイミドフィルムの基本的な機械特性を表1に示す。
【0050】
(実施例4)比較例4と同様にして残揮発分含量は52wt%、イミド化率が87%であるゲルフィルムを得た。このゲルフィルムをイソキノリンの35重量%DMF溶液に浸漬し、圧縮空気を吹き付けて余分な液滴を除去した後、比較例2と同じ条件で加熱し、ポリイミドフィルムを得た。このポリイミドフィルムの基本的な機械特性を表1に示す。
【0051】
(実施例5)比較例4と同様にして、残揮発分含量51wt%,イミド化率85%であるゲルフィルムを得た。このゲルフィルムをβピコリンに親戚し、圧縮空気を吹き付けて余分な液滴を除去した後、比較例2と同様の条件で、加熱し、ポリイミドフィルムを得た。このポリイミドフィルムの基本的な機械特性を表1に示す。
【0052】
(実施例6)ピロメリット酸二無水物/4,4’−ジアミノジフェニルエーテルをモル比で1/1の割合で用い、ポリアミド酸を合成した。このポリアミド酸を18.5wt%含むDMF溶液100gを調整し、無水酢酸35gとβピコリン5gからなる転化剤を混合、攪拌し、遠心分離による脱泡の後、アルミ箔上に厚さ400μmで流延塗布した。攪拌から脱泡までは0℃に冷却しながら行った。このアルミ箔とポリアミド酸溶液の積層体を、140℃110秒間加熱し、自己支持性を有するゲルフィルムを得た。このゲルフィルムの残揮発分含量は46wt%であり、イミド化率は82%であった。このゲルフィルムをイソキノリンに浸漬し、ニップロールに通すことにより余分な液滴を除去した後、300℃、400℃、500℃で各30秒間加熱して厚さ25μmのポリイミドフィルムを製造した。このポリイミドフィルムの基本的な機械特性を表1に示す。
【0053】
(実施例7)ピロメリット酸二無水物/4,4’−ジアミノジフェニルエーテルをモル比で1/1の割合で用い、ポリアミド酸を合成した。このポリアミド酸を18.5wt%含むDMF溶液100gを調整し、無水酢酸35gとβピコリン5gからなる転化剤を混合、攪拌し、遠心分離による脱泡の後、アルミ箔上に厚さ400μmで流延塗布した。攪拌から脱泡までは0℃に冷却しながら行った。このアルミ箔とポリアミド酸溶液の積層体を、170℃60秒間加熱し、自己支持性を有するゲルフィルムを得た。このゲルフィルムの残揮発分含量は42wt%であり、イミド化率は88%であった。このゲルフィルムをイソキノリンに浸漬し、ニップロールに通すことにより余分な液滴を除去した後、300℃、400℃、500℃で各30秒間加熱して厚さ25μmのポリイミドフィルムを製造した。このポリイミドフィルムの基本的な機械特性を表1に示す。
【0054】
【表1】
Figure 0004490593
【0055】
表中、PMDAは、ピロメリット酸二無水物,4,4’ODAは、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル,p−PDAは、p−フェニレンジアミンを示す。
【0056】
実施例1乃至7は、ゲルフィルム作成時間を短縮したにもかかわらず、ゲルフィルム作製時間の長い比較例1および3によるポリイミドフィルムの機械的強度に匹敵する数値を得た。
【0057】
【発明の効果】
本発明のポリイミドフィルムの製造方法により、生産性よく高い機械的特性を有するポリイミドフィルムを製造することができる。

Claims (4)

  1. ポリアミド酸有機溶媒溶液を支持体上に流延しまたは塗布して乾燥し、部分的に硬化及び/または部分的に乾燥されたポリアミド酸フィルムを製造する工程、該ポリアミド酸フィルムを第3級アミンまたは第3級アミンの溶液に浸漬し、あるいは、該ポリアミド酸フィルムに第3級アミンまたは第3級アミンの溶液を塗布する工程、その後ポリアミド酸をポリイミドにイミド化しつつ、かつフィルムを乾燥する工程を含み、前記部分的に硬化及び/または部分的に乾燥されたポリアミド酸フィルムの残揮発分含量が30〜60wt%である、ポリイミドフィルムの製造方法。
  2. さらに、フィルム表面に残存する余分の液滴を取り除く工程を含む、請求項1記載のポリイミドフィルムの製造方法。
  3. 前記部分的に硬化及び/または部分的に乾燥されたポリアミド酸フィルムのイミド化率が50%以上である、請求項1または2に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
  4. 前記第3級アミンが、キノリン、イソキノリン、β―ピコリン、ピリジンからなる群から選択される、請求項1から3のいずれか1項に記載のポリイミドフィルムの製造方法。
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