JP4489043B2 - 水域環境保全材料及び水域環境保全方法 - Google Patents

水域環境保全材料及び水域環境保全方法 Download PDF

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Description

本発明は、腐植及び二価鉄を使用した水域環境保全材料、並びにこの水域環境保全材料を使用した水域環境保全方法に関する。
近年、水域では、生物の生育に必要な鉄分の不足による生物生産量の低下が生じている。例えば沿岸部の海域では、岩場から海藻が消えて石灰藻に覆われる磯焼け、即ち海の砂漠化が急速に拡がり、昆布、ウニ、アワビ等の沿岸水産資源の減少が顕著になっている。
沿岸部の鉄分は、森林の腐植土壌中で生成する水溶性のフルボ酸鉄(フルボ酸と二価の鉄イオンがキレート化したもの)として河川を下り海に供給されていたものであるが、近年の森林の荒廃によってフルボ酸鉄の溶出量が減少したことに磯焼けの根本的な原因があると言われている。
このような問題に対し、従来、二価の鉄イオン(Fe2+)を含む鉄分を付着させたり、石炭灰(フライアッシュ)等を混入させたりしたコンクリートを海中に沈設しておくことで、海藻の増殖を図る技術が提案されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
特許第2640926号公報 特開平8−89126号公報 特開2002−45078号公報
しかし、たとえ光合成生物が摂取可能な二価の鉄イオン(Fe2+)を溶出させたとしても、二価の鉄イオンは水中の酸素によって酸化され易く、三価の鉄イオン(Fe3+)になって即座に粒状鉄(Fe)として沈降し、生物が摂取することが不可能となる。したがって、従来の技術では、二価の鉄イオンの生物への供給は効率的といえない。水域環境に鉄分を供給するのであれば、二価の鉄イオンが酸化されにくい状態で供給することが好ましい。
そこで、本発明の課題は、製作から水域での使用までの簡易化とコスト低減を図りながら、酸化されにくい安定的なフルボ酸鉄として二価の鉄イオンを効率的に生物へ供給することを可能とする水域環境保全材料及び水域環境保全方法を提供することである。
本発明に係る水域環境保全材料は、透水性を有する袋材に、二価鉄含有物質と腐植含有物質とが詰め込まれていることを特徴とする。
本発明に係る他の水域環境保全材料は、透水性を有する袋材に、二価鉄含有物質と発酵後に腐植を含有する物質とが詰め込まれていることを特徴とする。この水域環境保全材料は、前記袋材に、更に、発酵促進材を詰め込むことができる。また、前記発酵後に腐植を含有する物質として、例えば廃木材チップを使用してもよい。
また、これらの水域環境保全材料における前記二価鉄含有物質は、例えば製鋼スラグ又は石炭溶融灰である。
更に、前記透水性を有する袋材は、植物繊維からなるものでもよい。その場合、前記植物繊維として、例えばココナッツ繊維を使用することができる。
更にまた、これらの水域環境保全材料には、重りを取り付けることができる。また、籠状の容器に詰め込まれていてもよい。更に、シート状の材料に取り付けることもできる。その場合、前記シート状の材料が帯状であってもよい。
本発明に係る水域環境保全方法は、前述の水域環境保全材料を使用することを特徴とする。
本発明の水域環境保全材料は、二価鉄(FeOやFe)を含有する物質と腐植(フルボ酸等)を含有する物質を共に用いて結合させ、安定的なフルボ酸鉄を生成させることが可能であり、生物への二価の鉄イオン供給の効率性が高い。このため、本発明によれば、製作から水中への設置作業が簡易で、かつ光合成生物に必要な二価の鉄イオンやフルボ酸鉄を効率よく、かつ持続的に供給可能となり、水域環境保全が達成できる。
本発明の水域環境保全材料は、種々の水域において使用可能であり、本発明による効果は水域によって若干異なる。なお、「水域環境保全材料」とは、水域環境の保全に寄与する材料を意味し、「水域環境保全」とは、水域環境にとって良い影響を与えることを意味する幅広い概念である。「水域環境保全」という用語には、例えば、水域環境の改善、水域環境の維持、水域環境の悪化防止などの概念が含まれる。これらの少なくとも1つの効果を有していれば、水域環境保全に該当する。また、「水域」とは、海水であるか淡水であるかを問わず、水が関連する場所を意味する概念である。例えば、海、河川、湖沼、干潟などが水域の例として挙げられる。ただし、これらのみに限定されるものではない。
以下、本発明を実施するための最良の形態について、詳細に説明する。先ず、本発明の水域環境保全材料の具体的用途と、その効果について記載する。ただし、以下に列挙する具体的用途に本発明の技術的範囲が限定されるものではない。なお、参考までに、水域環境保全材料の具体的用途の概念について、図1に示す。図1は、覆砂、水底凹部埋め戻し、養浜、干潟、浅場、藻場、漁場において、水域環境保全材料が配置された状態を示す概念図である。図1において、ドット(多数の点々)が付された部位が、水域環境保全材料が配置された領域である。
本発明の水域環境保全材料は、覆砂材料として用いられる。覆砂材料とは、富栄養化した底泥上に投下され、底泥を物理的に封じ込めるために用いられる材料である。袋材に詰め込まれた材料を用いるため、袋材に詰め込む材料の質量や量を調整することで、潮流によって流されずに、安定して水底に存在させることが可能である。また、天然の砂を用いる場合と比べ、周辺水域への安定的な二価の鉄イオンあるいはフルボ酸鉄供給が可能となることから、水域における生物生産性を向上させる効果も得られる。さらに、富栄養化した底泥において発生した硫化水素を、二価の鉄イオンによって化学的に固定化し、青潮の発生を抑制することも可能である。
二価の鉄イオンによる硫化水素の化学的固定のメカニズムとしては、下記化学式1で示す以下のメカニズムが提唱されている(「平成7・8年度 製鋼スラグの覆砂材としての適用技術の調査・研究 報告書」、平成9年3月、(財)沿岸開発技術研究センター 鐵鋼スラグ協会 参照)。
Figure 0004489043
本発明の水域環境保全材料は、水底凹部埋め戻し材料としても用いられる。水底凹部埋め戻し材料とは、図1に示すような水底に生じた凹部を埋めるために用いられる材料である。凹部を物理的に埋めることによって、凹部からの硫化水素の発生が防止される。また、本発明の水域環境保全材料を用いて凹部を埋めた場合、二価の鉄イオンによる硫化水素の化学的固定が可能である。
本発明の水域環境保全材料は、養浜材料としても用いられうる。養浜材料とは、波によって海岸の砂が削り取られたような海岸に、再び人の手で砂を戻す際に用いられる材料を意味する。養浜の目的は大きく分けて2つある。1つは、砂が削り取られた海岸に砂を戻すことで、砂浜が持っている「波を砕く」機能や動物や植物の生息地としての機能を再び蘇らせることである。もう1つは、海水浴などの海洋性レクリエーションの場を新たに作り出すことである。本発明の水域環境保全材料はいずれの目的にも用いられうるが、二価の鉄イオンやフルボ酸鉄を溶出しやすいという本発明の特徴を考慮すると、動物や植物の生息地としての機能を付与する上で特に有効である。本発明の水域環境保全材料は、二価の鉄イオンやフルボ酸鉄といった生物の生長に不可欠な成分が豊富であるため、水域環境保全材料内部及び周辺での生物生産性が増大し、生物により水質が浄化される。ひいては、食物連鎖を通じた海岸全体の生物増産が図られる。
本発明の水域環境保全材料は、干潟材料としても用いられる。干潟材料とは、潮の高い時には冠水しているが、潮が引いた時には姿を見せる水域の造成に用いられる材料を意味する。本発明の水域環境保全材料は、二価の鉄イオンやフルボ酸鉄の溶出が豊富であるため、水域環境保全材料内部及び周辺での生物生産性が増大し、生物により水質が浄化される。ひいては、食物連鎖を通じた干潟全体の生物増産が図られる。干潟材料として用いる場合には、生物の生息環境を確保するために、本発明の水域環境保全材料の上面を砂等の粒状材料で覆う、あるいは砂等の粒状材料に対して部分的に本発明の水域環境保全材料を設置することが好ましい。
本発明の水域環境保全材料は、浅場材料としても用いられる。浅場とは、通常、水深が5m以内の浅い海を意味し、浅場材料とは浅場の造成に用いられる材料を意味する。本発明の水域環境保全材料は、鉄鋼スラグからのミネラル溶出が豊富であるため、水域環境保全材料内部及び周辺での生物生産性が増大し、生物により水質が浄化される。
本発明の水域環境保全材料は、藻場材料としても用いられる。藻場とは、水底で大型水生植物が群落状に生育する場所を意味し、藻場材料とは、藻場を造成するために用いられる材料を意味する。藻場としては、アマモ場、アラメ・カジメ場、ガラモ場が挙げられる。アマモ場は、アマモ、コアマモなどからなる藻場である。アラメ・カジメ場は、アラメ・カジメ、コンブなどからなる藻場である。ガラモ場は、ノコギリモク、オオバモクなどのホンダワラ類からなる藻場である。本発明の水域環境保全材料は、二価の鉄イオンやフルボ酸鉄の溶出が豊富であるため、水域環境保全材料内部及び周辺での生物生産性が増大し、生物により水質が浄化される。このような連鎖により、生物資源の豊富な、海の森が創設される。なお、本発明の水域環境保全材料は、既に水中に存在する、あるいは新たに水中に設置する天然石やコンクリート等の海藻付着基盤に対する二価の鉄イオンやフルボ酸鉄供給材料として用いることも可能である。
本発明の水域環境保全材料は、漁場材料としても用いられる。漁場とは、漁業を行う水域を意味し、漁場材料とは魚類が産卵し、生息する場所を造成するために用いられる材料を意味する。本発明の水域環境保全材料は、二価の鉄イオンやフルボ酸鉄の溶出が豊富であるため、水域環境保全材料内部及び周辺での生物生産性が増大し、豊かな漁場が形成される。
先ず、本発明の第1の実施形態に係る水域環境保全方法について説明する。本実施形態の水域環境保全方法は、石炭溶融灰又は転炉スラグの少なくとも一方、廃木材チップに石炭溶融灰又は転炉スラグの少なくとも一方を混合したもの、又は、これらに発酵促進剤を混合したものがそれぞれ詰め込まれたココナッツ繊維製の袋を海中に沈設しておくことを特徴とするものである。
二価鉄は水中での酸化過程で溶出しやすく、二価の鉄イオンの形で生物に吸収されるが、二価鉄は非常に不安定な物質であり、自然界には存在しない。これに対し、産業副産物であり有効利用が望まれている石炭溶融灰や転炉スラグは二価鉄を多く含有している。
石炭灰には微粉炊ボイラー灰(フライアッシュ)と噴流床石炭ガス化炉からの溶融灰(スラグ)があり、フライアッシュ中には鉄分が酸化鉄(Fe2)として0.6〜23%程度含まれているが、石炭ガス化複合発電(IGCC)における還元雰囲気中で生成した溶融灰では、このうちの80%程度が二価の鉄で存在する。
転炉スラグは、二価鉄を20%程度含み、さらに、発生量が膨大であることから供給が容易であることや、フライアッシュよりも鉄イオンの溶解度が数倍から20倍程度高いということから考えると、二価の鉄イオンを溶出する材料として好適な材料と考えられる。
フルボ酸はカルボキシル基(−COOH)やカルボニル基(−CO−)を有する。無酸素下で生成した二価の鉄イオン(Fe+)はキレート剤(錯体)としてフルボ酸と結合してフルボ酸鉄となる。フルボ酸鉄は水溶性で寿命が長く、海水中で安定に存在する。このフルボ酸鉄は植物プランクトンや昆布等の藻類の生長には必須な成分である。ココナッツ繊維は天然繊維の中で最も退化速度が遅く、土中では5〜7年、海水中では10年以上である。
発酵促進剤としては、放線菌などの有用な微生物を用い、伐採木、抜根、剪定枝、建築廃材、除草発生材、ダムなどの流木などの粉砕チップの有機物を条件的嫌気性発酵分解して腐植を比較的短時間に製造し、有機物を低分子化してフミン酸やフルボ酸などの有機酸を生成させる。
本実施形態によれば、石炭溶融灰又は転炉スラグ、又は廃木材チップに石炭溶融灰や転炉スラグを混合したもの、さらには発酵促進剤を混合したものが詰め込まれたココナッツ繊維製の袋を海中に沈設しておくと、袋内で生成したフルボ酸鉄が溶出して、その周辺の昆布等の海藻と接触して養分となり、特に、袋表面のココナッツ繊維に根付く海藻の養分となる。
即ち、海中に沈設された袋内の石炭溶融灰や転炉スラグから溶出した鉄イオンと腐植中のフルボ酸との結合によってフルボ酸鉄となって海藻の養分となる。しかも、袋は天然繊維の中で最も退化速度が遅いココナッツ繊維なので、10年以上の長期にわたり石炭溶融灰や転炉スラグを保持して鉄イオンの溶出を保証できる。
特に、廃木材チップに発酵促進剤も混合することで有機物の条件的嫌気性発酵分解が促進されて腐植が製造される。そして、腐植中のフルボ酸鉄が製造される。これにより海藻の生育を促進して磯焼けを修復できる。
次に、本発明の第2の実施形態に係る水域環境保全材料について説明する。本実施形態の水域環境保全材料は、透水性を有する袋材に、二価鉄含有物質、又は二価鉄含有物質と腐植含有物質が詰め込まれていることを特徴とする。食物連鎖の源である光合成生物(食物プランクトンや海藻)にとって、鉄は必須な栄養素であるのみならず、光合成や窒素分の取り込みにおいて重要な役目を果たす。しかし、水中では鉄以外の栄養素がイオンの形で存在し、簡単に光合成生物に摂取されるのと異なり、水中での鉄の大部分は生物が摂取不可能な粒状体である。鉄がイオンの形(OH基と結合した二価の鉄イオン)で存在する量は極微量である。またさらに、粒状鉄と鉄イオンは平衡状態で水に溶解しているため、鉄イオンが生物に摂取されると、この平衡が崩れて粒状鉄が鉄イオンに変わるが、一旦摂取された鉄イオンが再び粒状鉄から供給されるには10日以上かかると言われている(松永勝彦著、森が消えれば海も死ぬ、講談社、1993年7月20日 参照)。
そこで従来、二価の鉄イオンを含有するコンクリート状材料を生物付着基盤として利用する発明がなされてきた(鉄イオンには二価の鉄イオンと三価の鉄イオンがあり、このうち生物が吸収可能なのは二価の鉄イオンのみである)。しかし、二価の鉄イオンは不安定であり、水温にもよるが、海水中での二価の鉄イオンの安定性はおおむね1時間という説(「平成7・8年度 製鋼スラグの覆砂材としての適用技術の調査・研究 報告書」、平成9年3月、(財)沿岸開発技術研究センター 鐵鋼スラグ協会 参照)や、90%以上が900秒以内に酸化され、三価鉄として即座に沈殿するという説がある。よって、従来技術では、たとえ2価の鉄イオンを溶出させたとしても、生物に取り込まれる前に酸化される場合が生じるため、効率的とはいえない。
これに対し、本実施形態の水域環境保全材料は、二価の鉄イオンの安定化による長期的な水域環境保全を図るものであり、二価鉄含有物質と腐植(フルボ酸等)含有物質を共に袋材へ詰め込むことにより、溶出した二価の鉄イオンを腐植によってキレート化し、水中で安定に存在することができるフルボ酸鉄として生物へ供給することを可能とするものである。これにより、溶出した二価の鉄イオンを効率的に、長時間、広範囲に亘って生物へ供給することが可能となる。またさらに、材料を袋材に詰め込んだものを用いるため、土木仮設工事で用いられる土嚢と同様な簡易な製造や施工も可能となる。
フルボ酸鉄は、無酸素下で生成した二価鉄イオン(Fe2+)がキレート剤(錯体)としてフルボ酸と結合して生成されるものである。フルボ酸鉄は本来、森林の腐植土壌中で生成されるものである、本発明では、土嚢と同様な簡易な製造方法により、人工的に短時間で生成させることが可能となる。
次に、本実施形態で用いる袋材の態様について、詳細に説明する。袋材の役割としては、内部材料からの二価の鉄イオンやフルボ酸鉄の周辺水域への溶出性を確保しつつ、水流、潮流、波浪、あるいは水と内部材料の比重の違いによる内部材料の流失や浮き上がりなどによる逸散の防止、材料を直接水中へ投入することで発生する水の濁りの防止、良好なハンドリングの確保を行うものである。
袋材の材質は、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリウレタン等の無機化学材料、及び植物繊維等の天然有機材料の他、これらを組み合わせたもの等、水中への設置後に水質を汚染する材質以外であり、かつ内部材料の詰め込み時や水中への設置時において、破れによる著しい内部材料の逸散が生じない強度を有し、上記の役割を果たせる材質であればよいため、特に限定はしない。また、二価の鉄イオンやフルボ酸鉄を溶出しない材質であっても、繊維状にしたものを編んで通水性を有する袋材を製作する他、溶出用の孔を設けるなどの加工を施したものを用いればよい。なお、編目の間隙や加工して開けた孔の大きさは、二価の鉄イオンやフルボ酸鉄が通過する大きさ以上であり、内部材料が吸い出されて周辺水域に著しい濁りが生じない程度の大きさ以下であればよく、特に規定はしない。
二価鉄含有物質は、二価鉄を含有し、水との接触によって二価鉄イオンを溶出する物質であれば、特に種類、形状、寸法、二価鉄の溶解度等を限定するものではない。しかし、効率性を考慮すると、二価鉄含有量が3質量%程度以上である物質が好ましい。また、海藻が群落を保てる程の効果を得るには、周辺水域の鉄濃度を100nM以上にする必要があると言われている。
腐植含有物質とは、腐植であるフルボ酸とフミン酸が含有された物質である。フルボ酸は水溶性であり、カルボル基(−COOH)やカルボルニル基(−C=O)などを有しており、鉄などの金属を結びつける機能があるため、無酸素部位で生成した鉄イオンがフルボ酸鉄と結合し、水中でも安定的なフルボ酸鉄が生成される。腐植物含有物質とは、特にこのフルボ酸を含有する物質を示し、腐植土層のような天然のものや廃木材等を発酵させて製造した人工のものがある。本発明においては、フルボ酸が含有され、溶出する材料であれば、種類、フルボ酸の溶解度等は特に限定するものではない。
次に、本発明の第3の実施形態に係る水域環境保全材料について説明する。本実施形態の水域環境保全材料は、透水性を有する袋材に、二価鉄含有物質と、発酵後に腐植を含有する物質又は発酵後に腐植を含有する物質と発酵促進材が詰め込まれたことを特徴とする水域環境保全材料である。
発酵後に腐植を含有するようになる物質を二価鉄含有物質と共に袋詰したものを環境保全材料として用いることにより、水中への設置後に、徐々に内部材料が発酵し、生成した腐植が二価の鉄イオンと結合して水中へのフルボ酸鉄供給が可能となるものである。効果の発現までに数日から数ヶ月の期間を要するが、天然の腐植土層を採取することによる自然破壊や、人工の腐植含有物質を生成する手間が省略できる。なお、この効果の発現を早めるには、条件的嫌気性発酵分解によって短時間に腐植の生成を可能とするために発酵促進剤を用いるとよい。
発酵後に腐植を含有するようになる物質とは、植物質の物質であり、発酵によって腐植を含有するようになり、かつ袋材への詰め込みが容易な寸法の物質であれば特に種類を規定するものではない。発酵促進剤としては、放線菌などの微生物が有用である。なお、本発明の水域環境保全材料の具体的用途と、その効果については、既に説明した通りであるので、ここでは説明を省略する。
次に、本発明の第4の実施形態に係る水域環境保全材料について説明する。本実施形態の水域環境保全材料は、前述の第2及び第3の実施形態の水域環境保全材料において、二価鉄含有物質が、製鋼スラグ又は石炭溶融灰であることを特徴とするものである。
製鋼スラグには、二価鉄が3〜20質量%程度含まれており、石炭溶融灰にも5〜20質量%程度含有されている。これらの材料を二価鉄含有物質として使用することは、含有量の多さのみならず、産業副産物の有効利用という面からも積極的な利用が望まれる材料である。
製鋼スラグは、鋼を製造する過程において発生する鉄鋼副産物であり、転炉スラグ、予備処理スラグ、脱炭スラグ、脱燐スラグ、脱硫スラグ、脱珪スラグ、電気炉還元スラグ、電気炉酸化スラグ、二次精錬スラグ、造塊スラグなどが例示できる。これらの2種以上を混合して用いる他、炭酸化処理することで周辺水域のpH上昇を抑制したものを用いてもよい。
製鋼スラグは還元雰囲気中で生成されるため、酸化しやすく不安定な二価鉄を安定的に含有しつづける性質を有している。また製鋼スラグは、二価鉄の含有のみならず、カルシウム分の含有にも富む材料である。よって、既に説明した二価の鉄イオンによる硫化水素の化学的固定の他、カルシウム分の溶出により、硫酸還元菌による硫化物の硫酸還元を阻止する効果(「昭和53年度 赤潮対策技術開発試験報告書 石灰による底質改良試験」、昭和54年3月、三重県浜島水産試験場 参照)や燐の化学的固定効果も有する。カルシウムによる燐の化学的固定のメカニズムとしては、下記化学式2で示す以下のメカニズムが提唱されている。
Figure 0004489043
以上のことから、製鋼スラグを二価鉄含有物質として使用した場合には、さらに強い青潮発生抑制効果の他、燐の化学的固定効果による赤潮発生抑制効果をも得ることが可能となる。
石炭溶融灰は噴流床石炭ガス化炉から発生する溶融灰である。
なお、製鋼スラグ、石炭溶融灰ともにアルカリを呈する。これにより、フルボ酸よりも存在量は多いが、アルカリ性の雰囲気でなければ水に溶けない腐植であるフミン酸も二価鉄のキレート剤とすることが可能となり、効果的に安定的な二価鉄イオンを生物に供給することが可能となる。
次に、本発明の第5の実施形態に係る水域環境保全材料について説明する。本実施形態の水域環境保全材料は、前述の第3の実施形態の水域環境保全材料において使用する発酵後に腐植を含有する物質が、廃木材チップであることを特徴とするものである。
発酵後に腐植を含有するようになる物質に、伐採木、抜根、剪定枝、建築廃材、除草発生材、ダムや海岸などの流木などの廃木材を粉砕してチップ状にしたものを用いることにより、有効利用が望まれる廃木材の利用につながるのみでなく、植物の採取による環境破壊を防ぐことが可能となる。
次に、本発明の第6の実施形態に係る水域環境保全材料について説明する。本実施形態の水域環境保全材料は、前述の第2〜第5の実施形態の水域環境保全材料において、透水性を有する袋材が、植物繊維又は生物分解性素材の一方又は双方の組合せであることを特徴とするものである。袋材は、環境に対する負荷を考慮すると、将来的には自然に分解される自然に優しい材料が好ましい。そこで、袋材に対して植物繊維を編んだ材料や化学的な材料を使用した場合においても生物に分解される材料を使用することにより、長期間経過後には袋材が自然に消失する、すなわち自然への負荷の少ない水域環境保全材料とすることが可能となる。
次に、本発明の第7の実施形態に係る水域環境保全材料について説明する。本実施形態の水域環境保全材料は、前述の第6の実施形態の水域環境保全材料で使用する植物繊維が、ココナッツ繊維であることを特徴とするものである。
ココナッツ繊維は天然の食物繊維の中で最も退化速度が遅い材料であり、その退化時間は、土中では5〜7年、海水中では10年以上と言われている。このココナッツ繊維を袋材の材料として用いることにより、将来的には自然に分解され消失し、かつ内部材料から二価鉄やフルボ酸鉄の溶出持続期間にもよるが、10年以上の長期にわたって内部材料を保持して水域環境保全に対する効果を持続させることが可能となる。
次に、本発明の第8の実施形態に係る水域環境保全材料について説明する。本実施形態の水域環境保全材料は、前述の第2〜第7の実施形態の水域環境保全材料に、重りを取り付けたものである。
本実施形態の水域環境保全材料が水流、潮流、波浪等の外力によって逸散することが想定される場合には、水域環境保全材料を重りが取り付けられたものとすることで安定性の高い水域環境保全材料とすることができる。重りが取り付けられたとは、水域環境保全材料に重りが取り付けられたものの他、水域環境保全材料よりも大きな重りに水域環境保全材料を取り付ける、嵌め込む、あるいは埋め込むことも含まれる。重りに水域環境保全材料を埋め込む場合には、水域環境保全材料から溶出した二価の鉄イオンやフルボ酸鉄が重りの材料を通って周辺水域へ溶出することが可能な重り材料を用いなければならない。
重りの材料、大きさ、個数は、水域環境保全材料を設置する環境から適宜決定するものであり、特に規定はしないが、重りに鉄製材料を使用した場合には、鉄イオン供給源ともなりうる。
次に、本発明の第9の実施形態に係る水域環境保全材料について説明する。本実施形態の水域環境保全材料は、前述の第2〜第8の実施形態の水域環境保全材料を、籠状の容器に詰め込んだものである。
籠状の容器の中に複数の水域環境保全材料を保持することにより、容易に大きな外力に対しても安定的に設置することが可能な水域環境保全材料となりうる。籠状の容器の材質、大きさは、必要な強度や設置環境から適宜決定するものとする。また、重りを取り付けない水域環境保全材料の場合、籠マットの中に水域環境保全材料を一つ、あるいは複数個詰め込むことも可能である。なお、籠マットの石材には、天然石の他、鉄鋼スラグ、炭酸化処理した鉄鋼スラグ、鉄鋼スラグを利用したコンクリート状材料、廃コンクリート等を用いることが可能である。
次に、本発明の第10の実施形態に係る水域環境保全材料について説明する。本実施形態の水域環境保全材料は、前述の第2〜第9の実施形態の水域環境保全材料を、シート状の材料に取り付けたものである。
水域環境保全材料を連続したシート状の材料に取付けることで、そのシート状の材料によって連結することにより、水流、潮流、波浪等の外力に抵抗させることが可能となる。
シート状の材料は、水流、潮流、波浪等の外力によって容易に破れる材料や、著しく水質を汚染するような材料以外であれば、材質、厚み、シート状や網状等の形状について特に規定するものではない。
次に、本発明の第11の実施形態に係る水域環境保全材料について説明する。本実施形態の水域環境保全材料は、前述の第10の実施形態の水域環境保全材料におけるシート状の材料が、帯状であることを特徴とするものである。
シート状材料を帯状にすることにより、設置現場までの輸送が容易になる他、設置の際も帯状のシートを引き出しながら水域環境保全材料を適当な間隔を開けて取り付け、設置していくことで作業の効率化をはかることが可能となる。帯状のシートの材料についても、水流、潮流、波浪等の外力によって容易に破れる材料や、著しく水質を汚染するような材料以外であれば、材質、厚み、シート状(帯状)や網状等の形状について特に規定するものではなく、幅についても、水域環境保全材料のサイズや船舶等のサイズから適宜決定するものとする。
次に、本発明の第12の実施形態に係る水域環境保全方法について説明する。本実施形態の水域環境保全方法は、前述の第2〜第11の実施形態の水域環境保全材料を使用する水域環境保全方法である。
前述の第2〜第11の実施形態の水域環境保全材料を用いて水域環境を保全するには、図3に示すように、水域環境の保全が必要とされている水域に、水域環境保全材料を配置すればよい。水域としては、富栄養化した底泥、水底凹部、養浜、干潟、浅場、藻場、漁場が挙げられる。なお、「これらの水域に配置する」とは、水域環境保全材料が配置される時点において、これらの水域であることを要しない。つまり、新たに干潟や藻場を造成する場合には、水域環境保全材料を配置する時点においては、まだ干潟や藻場とはなっていない。しかしながら、干潟や藻場と造成する意図を持って水域環境保全材料を配置する場合には、その水域は、干潟や藻場に該当する。
各水域に本発明の水域環境保全材料を適用した場合の効果は、すでに説明した通りであるので、ここでは説明を省略する。
なお、本発明の水域環境保全材料は、水中の任意の位置に設置することが可能である。海底まで光合成に必要な日照が差し込む状況や、湧昇流等によって水域環境保全材料より溶出した二価の鉄イオンやフルボ酸鉄が光合成の可能な水深に運ばれるような状況の場合は海底に設置することが可能である他、水深が深い場合においては浮きなどを用いて水中の任意の水深に設置することが可能である。
以下に図を参照して本発明の実施の形態を更に詳細に説明する。本発明の水域環境保全材料は、予め大量に用意しておいても、設置過程で袋詰して作製してもどちらでもよい。
1.単体方式
本発明の水域環境保全材を水中に一個ずつ設置する場合は、図2(a)に示すように、船上クレーン3により水中に次々と設置していく。図は、鉄材(鉄筋又は鉄骨)の重り2を水域環境修復材(水域環境保全材料)1に線材などにより縛り付ける方法で取り付けた水域環境保全材の設置例である。
また、図2(b)に示すように、複数の水域環境保全材料1をあらかじめ接続したもの(鉄材の重り2に線材等により縛り付けて一体化しユニット化したもの)を船上クレーン3により水中に次々と設置していくようにしても良い。この場合、複数の水域環境保全材の接続(一体化しユニット化すること)は、袋材同士の他、図のように重り2を介して接続することも可能である。ここでは、重りに鉄材(鉄筋又は鉄骨)を用いている。
図3は単体方式に重りブロックを取り付けた例を示したものである。ここでは、重りブロックとして、鉄イオン供給源となる石炭溶融灰や製鋼スラグを含有させたコンクリートブロック5の上に、水域環境保全材料1を縛り付けておいたユニット状のものを、船上クレーンにより水中に次々と設置していく方法を示している。
図4は重りブロックへの水域環境保全材料の嵌め込み例を示したもので、石炭溶融灰や製鋼スラグを含有させたコンクリートブロック5の嵌め込み凹部6に水域環境保全材料1が嵌め込まれたユニット状のものを船上クレーンにより水中に次々と設置していく。なお、石炭溶融灰や製鋼スラグを含有させたコンクリートブロックの嵌め込み凹部への水域環境保全材料の嵌め込み方法は、予め重りブロックに形成しておいた凹部に水域環境保全材料を嵌め込む他、重りブロックのコンクリートがフレッシュな状態において、水域環境保全材料の一部を埋没させる方法等がある。
2.ユニット方式
水域環境保全材料1を、漁礁のようにして水中に設置する場合を図5に示す。即ち、図示のように、シート状材料11の四隅に設けられた重りブロック12に建てた柱材13を梁材14で繋いだ台枠ユニット15を用い、シート状材料11上に多数の水域環境保全材料1を並べておく。こうしてシート状材料11上に多数の水域環境保全材料が並べられた台枠ユニット15を船上クレーンにより水中に設置する。
シート状材料は、作業性が確保に可能な柔らかさを有するものであれば材質は問わないが、ジオグリッドを用いるとよい。ジオグリッドとは、耐久性に優れた高強度ポリエステル繊維を格子状に繊編し、アクリル系樹脂を含浸しコーティングしたものであり、特に縦横方向に均一な引張強度98kN/m(10tf/m)を具備する超強度のコスモグリッド(登録商標;技術審査証明書第1205号)がある。
なお、重りブロック12としては、単体方式と同様、鉄イオン供給源となる石炭溶融灰や製鋼スラグを含有させたコンクリートブロックが好適である。また、重りブロック12の他、単体方式で説明した鉄材を用いても良い。
図6はユニット方式の他の例を示したもので、鉄網等による籠16内に多数の割石、捨石による重り17を詰め込むとともに、図7に示すように、その重り17の間に一つあるいは複数の水域環境保全材料1を詰め込んでおく。こうして内部に多数の重り17とともに水域環境保全材料1が詰め込まれた籠16を船上クレーンにより水中に設置する。
なお、重り17としては、割石、捨石の代わりに鉄イオン供給源になる石炭溶融灰や製鋼スラグを含有させたコンクリートブロックの塊や鉄くず等でも良い。籠16についても、鉄網の他、ジオグリッド等を用いても良い。また、籠16内に詰め込んだ多数の重り17の上に複数の水域環境保全材料1を並べる他、籠の上面に一つ又は複数の水域環境保全材料を取りつけても良い。
3.ロール方式
水域環境保全材料1を適当な間隔を開けて水中に設置していく場合を図8に示す。即ち、図示のように、作業船21において、帯状のシート材料を巻きつけたロールシート30からシート31を引き出して、そのシート31上に重りブロック32及び水域環境保全材料1を並べていく。シート31上への重りブロック32及び水域環境保全材料1の設置は、船上クレーン23により行い、特に水域環境保全材料1については、台船25上に大量に積み込まれた水域環境保全材料1の山から船上クレーン23により積み替えて行う。
こうして、重りブロック32と多数の水域環境保全材料1を並べたシート31を作業船21から繰り出して水中に設置していく。図中、22は送りローラである。なお、重りブロック32としては、鉄イオン供給源になる石炭溶融灰や製鋼スラグを含有させたコンクリートブロックが好適である。また、重りブロック32の他、ユニット方式と同様、単体方式で説明したような鉄材による重りを用いても良い。
ところで、以上の実施形態における水域環境保全材料としては、廃木材チップに石炭溶融灰又は製鋼スラグの少なくとも一方及び発酵促進剤を混合したものをココナッツ繊維からなる袋材に詰め込んだものの他、前述したようなさまざまな材料で構成される水域環境保全材料を用いることができる。また、水中設置作業についても、実施形態の手法に限らず、水域環境保全材料をまとめて水中に沈設して積み上げるようにしても良く、他の適宜の手法を用いても良いことは勿論である。
以下、本発明の効果について、具体的な実施例を挙げて説明する。先ず、本発明の実施例1について説明する。本実施例においては、腐植(廃木材を堆肥化したもの)と製鋼スラグとを容積比で50:50で混合したもの25kg、製鋼スラグ30kg、そして比較材として天然石材23kgを、それぞれ縦65cm、横45cmのココナッツ繊維製の袋材に投入し、投入口を綿糸で塞ぎ、水域環境修復材を作製した。そして、各水域環境修復材2体ずつを90分/水槽で水槽内の海水が循環する2000リットル水槽3つにそれぞれ投入し、1ヶ月経過の後に昆布の種苗糸の取り付け、海藻の着生状況の経時変化を観察した。なお、海水は、沖合250mから取り入れた。結果を下記表1に示す。
Figure 0004489043
上記表1に示すように、比較例である試験No.3の天然石材では、昆布の苗の成長はわずかであり、約1ヶ月以降の成長に変化が見られなかった。次に、実施例の試験No.2の腐植と製鋼スラグの混合では、種苗糸取りつけから約1ヶ月以降に昆布が急激に成長し、密生した。また、試験No.1の製鋼スラグのみの場合においても、比較例には種苗糸取りつけから約1ヶ月以降に、比較例では見られない昆布の成長が見られた。
次に、本発明の実施例2について説明する。本実施例においては、前述の実施例1で用いたものと同じ水域環境修復材をそれぞれ10体ずつ用意し、幅2m、長さ3m、高さ1mの籠マット(籠は鉄製)の中に天然石材とともに詰め、北海道内の海域に投入した。なお、水域環境修復材は、籠マットに詰めた天然石材の上面に、短辺方向に2個、長辺方向に5個並べた状態で設置した。海中投入後80日における海藻着生状況の観察結果を下記表2に示す。
Figure 0004489043
上記表2に示すように、比較例である試験No.3の天然石材では海藻の付着が見当たらなかった。次に、実施例の試験No.1及びNo.2は共に、海藻の根付けと繁殖が見られ、その全長は10〜15cm程度に達していた。
次に、本発明の実施例2について説明する。本実施例においては、実施例1及び実施例2で用いたものと同じ水域環境修復材をそれぞれ1体ずつ用意し、ブイとロープで岩手県内の海域の所定の水深に設置した。設置後44日、69日、135日経過後の海藻着生状況の観察結果を下記表3に示す。
Figure 0004489043
上記表3に示すように、比較例である試験No.3の天然石材には、褐藻がわずかに着生したのみであったのに対し、実施例ではワカメの着生も見られた。なお、試験No.1では特に効果が大きく、ワカメの全長、付着数ともに大きかった。
本発明の水域環境保全材料は、鉄分が不足した底泥、水底凹部、養浜、干潟、浅場、藻場、漁場などの水域を保全するために用いられる。本発明によって水域環境の向上が図られ、豊かな自然環境が創設される。
覆砂、水底凹部埋め戻し、養浜、干潟、浅場、藻場、アマモ場、漁場において、水域環境保全材料が配置された状態を示す概念図である。 (a)及び(b)は本発明を実施する水中設置作業の具体例として単体方式を示す概略斜視図であり、(a)は水域環境保全材料一個の設置方法を示し、(b)は二個の水域環境保全材料を同時に設置する方法を示す。 単体方式に重りブロックを用いた例を示した概略斜視図である。 重りブロックへの水域環境保全材料の嵌め込み例を示した概略斜視図である。 ユニット方式による設置方法を示した概略斜視図である。 ユニット方式の他の例を示した概略斜視図である。 図6の石籠の縦断面図である。 ロール方式による設置方法を示した概略斜視図である。
符号の説明
1 水域環境保全材料
2 重り
3 船上クレーン
5 重りブロック
6 嵌め込み凹部
11 シート状材料
12 重りブロック
13 柱材
14 梁材
15 台枠ユニット
16 籠
17 重り
21 作業船
22 送りローラ
23 船上クレーン
25 台船
30 ロールシート
31 シート
32 重りブロック

Claims (12)

  1. 透水性を有する袋材に、二価鉄含有物質と腐植含有物質とが詰め込まれていることを特徴とする水域環境保全材料。
  2. 透水性を有する袋材に、二価鉄含有物質と発酵後に腐植を含有する物質とが詰め込まれていることを特徴とする水域環境保全材料。
  3. 前記袋材には、更に、発酵促進材が詰め込まれていることを特徴とする請求項2に記載の水域環境保全材料。
  4. 前記発酵後に腐植を含有する物質が、廃木材チップであることを特徴とする請求項2又は3に記載の水域環境保全材料。
  5. 前記二価鉄含有物質が、製鋼スラグ又は石炭溶融灰であることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の水域環境保全材料。
  6. 前記透水性を有する袋材が、植物繊維からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の水域環境保全材料。
  7. 前記植物繊維が、ココナッツ繊維であることを特徴とする請求項6に記載の水域環境保全材料。
  8. 重りが取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の水域環境保全材料。
  9. 更に、籠状の容器に詰め込まれていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の水域環境保全材料。
  10. シート状の材料に取り付けられていることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の水域環境保全材料。
  11. 前記シート状の材料が帯状であることを特徴とする請求項10に記載の水域環境保全材料。
  12. 請求項1乃至11のいずれか1項に記載の水域環境保全材料を使用することを特徴とする水域環境保全方法。
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