JP4487417B2 - 水系感光性樹脂組成物及びこれを用いた感光性樹脂版 - Google Patents

水系感光性樹脂組成物及びこれを用いた感光性樹脂版 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、各種印刷用樹脂版に好適な水系感光性樹脂組成物及びこれを用いた感光性樹脂版に関する。特に、硬化物の耐水性、耐溶剤性及び可とう性が要求される場合に適した水系感光性樹脂組成物及びこれを用いた感光性樹脂版に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、印刷分野において、ゴム版等に代わり、感光性樹脂版が広く使われてきている。感光性樹脂版は印刷のスピードアップ、印刷精度の向上、低コスト、作業環境の改善と言った特徴を有し、書籍印刷、新聞印刷、段ボール印刷、シールラベル印刷等に適している。
【0003】
このような感光性印刷版としては、例えば、凸版、PS版、フレキソ版等各種のものがよく知られており、それに用いられる感光性樹脂組成物には、有機溶剤系及び水系、そして有機溶剤可溶、アルコール可溶及びアルカリ可溶のものがある。環境保全、作業環境改善等の見地からアルカリ可溶の水系のものが要求されつつある。
【0004】
印刷版用水系感光性樹脂組成物としては、ヒドロキシ基含有重合体とウレタン結合を有するアクリル酸又はメタクリル酸誘導体及び重合開始剤からなる組成物(特開昭50−122301号公報)、特定の変性ポリアミド樹脂と重合性モノマー及び光開始剤からなる組成物(特開昭56−154731号公報)、特定のビニルアルコール系重合体、尿素誘導体、不飽和アクリルウレタン系オリゴマー及び光開始剤からなる組成物(特開平4−240855号公報)、ポリビニルアルコール、ウレタン化ポリカーボネート、疎水性ポリマー、重合性モノマー及び光開始剤からなる組成物(特開平8−328249号公報)等が提案されている。しかし、これらの組成物はいずれも多くの親水性成分を含んでいるため、それを用いた印刷版は湿度の影響を受けやすく、吸湿によって凸状に反ったり、一方、乾燥によって割れ安くなったりして、印刷時に安定した印刷物が得られないという問題があった。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記の欠点を解決しようとするもので、各種印刷用樹脂版に好適な、硬化物の耐水性及び耐溶剤性に優れ、しかも、冬季の乾燥期においても割れることのない可とう性に優れる水系感光性樹脂組成物及びこれを用いた感光性樹脂版を提供するものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】
本発明は、分子中にアニオン性親水基と、下記式で表される疎水性ポリオキシアルキレン構造とを含有し、かつ分子の末端に光硬化性のエチレン性不飽和基を有するウレタンオリゴマーであって、下記式で表されるポリオキシアルキレン構造を有するジオール化合物を75〜95重量%含有するジオール化合物とポリイソシアネートとの反応によって得られたウレタンオリゴマー(A)を含有する水系分散体からなる水系感光性樹脂組成物に関する。
−(CHO−
(式中、nは3以上の整数を表わす。)
【0007】
また、本発明は、上記ウレタンオリゴマー(A)のアニオン性親水基が、活性水素を有しないアミノ基で中和されたカルボキシル基である前記水系感光性樹脂組成物に関する。
【0008】
また、本発明は、下記式で表わされるポリオキシアルキレン構造の数平均分子量が100〜10,000である前記水系感光性樹脂組成物に関する。
−(CHO−
(式中、nは3以上の整数を表わす。)
【0009】
また、本発明は、さらに光重合開始剤を含有する前記水系感光性樹脂組成物に関する。
【0010】
また、本発明は、さらに水溶性ポリマー(B)を含有する前記水系感光性樹脂組成物に関する。
また、本発明は、前記水系感光性樹脂組成物を乾燥してなる感光性樹脂版に関する。
【0011】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳しく説明する。なお、以下の記載において、(メタ)アクリル酸とはアクリル酸及びそれに対応するメタクリル酸を意味し、(メタ)アクリレートとはアクリレート及びそれに対応するメタクリレートを意味し、(メタ)アクリロイル基とはアクリロイル基及びそれに対応するメタクリロイル基を意味する。
【0012】
本発明における水系感光性樹脂組成物は、分子中にアニオン性親水基と、下記式で表される疎水性ポリオキシアルキレン構造を有し、かつ分子の末端に光硬化性のエチレン性不飽和基を有するウレタンオリゴマー(A)を主成分とする水分散体である。
−(CHO−
(式中、nは3以上の整数を表わす。)
【0013】
また、上記ウレタンオリゴマー(A)のアニオン性親水基が、活性水素を有しないアミノ基で中和されたカルボキシル基であることが好ましい。
【0014】
また、上記ウレタンオリゴマー(A)の前記疎水性ポリオキシアルキレン構造は、数平均分子量が好ましくは100〜10,000の下記式で表されるオキシアルキレン基を繰り返し単位として含有するジオール化合物とポリイソシアネートとの反応によって分子中に導入される。そのジオール化合物の使用量は上記ウレタンオリゴマーを構成する全ジオール成分に対して75〜95重量%とする。
−(CHO−
(式中、nは3以上の整数を表わす。)
【0015】
上記ウレタンオリゴマー(A)は、種々の公知の方法で合成することができる。例えば、1分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を有するジオール化合物(a)、下記式で表される疎水性ポリオキシアルキレン構造を有するジオール化合物(b)、その他のジオール又はポリオール(c)、1分子中に少なくとも2個のイソシアネート基を有するポリイソシアネート化合物(d)及び1分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有するヒドロキシ化合物(e)を構成成分として反応させて得ることができる。
−(CHO−
(式中、nは3以上の整数を表わす。)
【0016】
上記ウレタンオリゴマーを構成する(a)成分の1分子中に少なくとも1個のカルボキシル基を有するジオール化合物としては、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)プロピオン酸、2,2−ビス(2−ヒドロキシエチル)プロピオン酸、2,2−ビス(3−ヒドロキシプロピル)プロピオン酸、2,3−ジヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸、2,2−ビス(ヒドロキシメチル)ブタン酸、2,2−ビス(2−ヒドロキシエチル)ブタン酸、2,2−ビス(3−ヒドロキシプロピル)ブタン酸、2,3−ジヒドロキシブタン酸、2,4−ジヒドロキシ−3,3−ジメチルブタン酸、2,3−ジヒドロキシヘキサデカン酸、ビス(ヒドロキシメチル)酢酸、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)酢酸、4,4−ビス(4−ヒドロキシフェニル)ペンタン酸、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、酒石酸等が挙げられ、また無水マレイン酸、無水フタル酸、無水トリメリット酸等の多塩基酸と、グリセリン、ペンタエリトリトール等のポリオールとのエステル化反応により得られる化合物等も挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。
【0017】
また、上記のカルボキシル基を有するジオール化合物とその他のジオール化合物を縮合反応してなる共重合物を使用することができる。例えば、上記のカルボキシル基を有するジオール化合物とラクトン類を適当な触媒等により開環重合したもので、市販品としてはプラクセル205A、210A、220A、205BA、210BA、220BA(ダイセル化学工業株式会社製商品名)等が挙げられるが、特にこれらに限定するものではない。これらは単独で又は2種類以上を組合せて使用される。
【0018】
前記(a)成分の使用量は、ウレタンオリゴマーを構成する全ジオール成分に対して5〜20重量%であることが好ましく、10〜15重量%であることがより好ましい。(a)成分の使用量は、5重量%未満では、親水性としての効果が低く、ウレタンオリゴマー水分散体の安定性が劣ったり、水溶性ポリマーとの相溶性が劣る傾向にある。一方、20重量%を超えると、硬化物が湿度の影響を受けやすい傾向にある。
【0019】
本発明において感光性ウレタンオリゴマーを構成する(b)成分の分子中に疎水性ポリオキシアルキレン構造を有するジオール化合物としては、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、2−メチル−1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、ポリ1,2−ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、エチレングリコール−プロピレングリコール・ブロックコポリマー、エチレングリコール−テトラメチレングリコールコポリマー、メチルペンタンジオール変性ポリテトラメチレングリコール、プロピレングリコール変性ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加体、水添ビスフェノールAのプロピレンオキシド付加体、ビスフェノールFのプロピレンオキシド付加体、水添ビスフェノールFのプロピレンオキシド付加体等が挙げられるが、その中でも数平均分子量100〜10,000の下記式で表されポリオキシアルキレン基を繰り返し単位として含有するジオール化合物が好適である。
−(CHO−
(式中、nは3以上の整数を表わす。)
【0020】
(b)成分のジオール化合物の使用量は上記ウレタンオリゴマーを構成する全ジオール成分に対して75〜95重量%であり、80〜90重量%であることが好ましい。使用量が75重量%未満の場合、その疎水性効果が十分に得られず、硬化物が湿度の影響を受けやすい。一方、使用量が95重量%を超える場合、ウレタンオリゴマー水分散体の安定性が劣ったり、水溶性ポリマーとの相溶性が劣る。
【0021】
上記ウレタンオリゴマーを構成する(c)成分のその他のジオール又はポリオールとしては、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、ビスフェノールA、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加体、水添ビスフェノールA、水添ビスフェノールAのエチレンオキシド付加体、ビスフェノールF、ビスフェノールFのエチレンオキシド付加体、水添ビスフェノールF、水添ビスフェノールFのエチレンオキシド付加体等が挙げられるが、特にこれらに限定するものではない。これらは、単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0022】
その使用量は上記ウレタンオリゴマーを構成する全ジオール成分に対して20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがさらに好ましい。使用量が20重量%を超えると、硬化物が湿度の影響を受けやすい傾向がある。
【0023】
上記ウレタンオリゴマーを構成する(d)成分のポリイソシアネート化合物としては、トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、イソフォロンジイソシアネート、水素添加されたトリレンジイソシアネート、水素添加されたキシリレンジイソシアネート、水素添加されたジフェニルメタンジイソシアネート、ノルボルネンジイソシアネート等のジイソシアネート、さらには上記したジイソシアネートの重合体、又は、ジイソシアネートの尿素変性体、ビュレット変性体等が挙げられるが、特にこれらに限定するものではない。これら化合物を単独であるいは混合して用いることができる。
【0024】
上記ウレタンオリゴマー(A)を構成する(e)成分の1分子中に少なくとも1個のエチレン性不飽和基を有するヒドロキシ化合物としては、光重合可能なエチレン性不飽和基を1分子中に少なくとも1個有するヒドロキシ化合物であれば特に制限されるものではないが、ヒドロキシ基を有する単官能性又は多官能性のアクリレート系化合物を好ましく用いる。これらは、単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0025】
分子中に1個のエチレン性不飽和基を有するヒドロキシ化合物としては、例えば、2−ヒドロキエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールモノ(メタ)アクリレート、エチレングリコール−プロピレングリコール・ブロックコポリマーモノ(メタ)アクリレート、エチレングリコール−テトラメチレングリコールコポリマーモノ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性モノ(メタ)アクリレート(商品名プラクセルFAシリーズ、プラクセルFMシリーズ:ダイセル化学社製)等を挙げることができるが、特にこれらに限定するものではない。また、1分子中に2個以上のエチレン性不飽和基を有するヒドロキシ化合物としては、例えば、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート等を使用することができる。
【0026】
また、本発明におけるウレタンオリゴマー(A)を合成する際、必要に応じ、さらに光重合性単量体を含有させることができる。
【0027】
この光重合性単量体としては、例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、イソブチルアクリレート、エチルヘキシルアクリレート、イソデシルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、ステアリルアクリレート、ラウリルアクリレート、トリデシルアクリレート、エトキシエチルアクリレート、メトキシエチルアクリレート、グリシジルアクリレート、ブトキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−メトキシエトキシアクリレート、2−エトキシエトキシエチルアクリレート、メトキシジエチレングリコールアクリレート、エトキシジエチレングリコールアクリレート、メトキシジプロピレングリコールアクリレート、オクタフルオロペンチルアクリレート、N,N−ジメチルアミノエチルアクリレート、N,N−ジエチルアミノエチルアクリレート、アリルアクリレート、1,3−ブタンジオールアクリレート、1,4−ブタンジオールアクリレート、1,6−ヘキサンジオールアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ヒドロキシピバリン酸エステルネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパンジアクリレート、3−メチルペンタンジオールアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、ペンタエリスリトールアクリレート、ペンタエリスリトールヘキサアクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタアクリレート、α,ω−テトラアリルビストリメチロールプロパンテトラヒドロフタレート、2−ヒドロキシエチルアクリロイルフォスフェート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ジアクリロイルオキシエチルフォスフェート、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、N−ビニルカプロラクタムなどが挙げられる。これら光重合性単量体から選ばれる1種又は2種以上のものを使用するのが好ましい。
【0028】
これらの光重合性単量体は、上記ウレタンオリゴマー(A)の合成の際、好ましくは全配合成分に対して0〜50重量%配合され、より好ましくは20重量%以内で配合され、特に好ましくは1〜20重量%で配合される。この量が50重量%を超えると水分散性及び貯蔵安定性が低下したり、また、未露光の状態で樹脂版表面のタックが大きくなる傾向にある。
【0029】
上記ウレタンオリゴマー(A)の合成方法については、特に制限はなく、例えば、前記各成分を一括仕込みにより同時に反応させることもできるが、反応の制御が容易なことから、(d)成分のポリイソシアネート化合物を滴下する方法が好ましい。反応温度は40〜100℃程度、好ましくは60〜80℃であり、反応の完結は、IR測定により2230cm−1のNCO特性吸収帯の痕跡がなくなるまで保温を持続することにより達成できる。反応促進のためにジブチル錫ラウレート等の錫系、トリエチルアミン等のアミン系等の公知のウレタン化触媒を使用するのが好ましい。また、ウレタン化反応に際し不飽和基含有成分の重合を防止するため、ハイドロキノン、メトキシフェノール、フェノチアジンなどの重合防止剤を反応系に対して10〜5,000ppm、好ましくは50〜2,000ppm使用したり、エアーシールを行うのがよい。また、反応系の粘度が高くなり撹拌ができなくなることを防ぐため、前記光重合性単量体の存在下にウレタン化反応を行なうことができる。
【0030】
次いで、カルボキシル基を活性水素有しないアミノ基で中和し、アニオン性親水基を有するウレタンオリゴマーとすることが好ましい。また、カルボキシル基は完全中和することが好ましい。中和が不充分の場合、得られたウレタンオリゴマー水分散体の安定性が劣ったり、水溶性ポリマーとの相溶性が劣る傾向にある。
【0031】
中和に用いられる活性水素を有しないアミノ基を有する化合物としては、トリメチルアミン、トリエチルアミン、メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、ジエチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等の3級アミンが挙げられる。これらを単独で又は2種類以上を組合せて中和に使用する。また、カルボキシル基の中和はウレタンオリゴマーの製造途中に行なってもよく、また製造終了後に行なってもよい。
【0032】
次いで、中和したウレタンオリゴマーに水を加えて分散を行ない、水分散体とする。また、水の代わりにメタノール、エタノール等の低分子量アルコールの水溶液を使用してもよい。分散方法は特に制限はなく、例えば、中和したウレタンオリゴマーを撹拌しながら水又は低分子量アルコール水溶液を加えることによりできる。上記水又は低分子量アルコール水溶液の量は、得られる水分散体の固形分濃度が30〜50重量%程度になるように加えることが好ましい。
【0033】
本発明の水系感光性樹脂組成物に含有される水溶性ポリマーとしては、例えばポリビニルアルコール、セルロース誘導体、ポリビニルピロリドン、ポリスチレン−マレイン酸塩等が挙げられるが、比較的安価の点で、ポリビニルアルコールが好ましい。これらは単独で又は2種以上を組合せて使用される。これらの水溶性ポリマーは前記水分散体と相溶する。
【0034】
水溶性ポリマーの使用量は、ウレタンオリゴマー(A)に対して30〜300重量%が好ましく、50〜200重量%がより好ましい。使用量が30重量%未満の場合、未露光の状態で樹脂版表面のタックが大きくなる傾向にある。一方、使用量が300重量%を超えると感光性及び現像性が低下したり、硬化物が湿度の影響を受けやすい傾向にある。
【0035】
また、本発明の水系感光性樹脂組成物には光重合開始剤を含有させることが好ましく、使用できる光重合開始剤としては、例えば、カルボニル系の光重合開始剤、例えば、ベンゾフェノン、ジアセチル、ベンジル、ベンゾイン、ω−ブロモアセトフェノン、クロロアセトン、アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトン、p−ジメチルアミノアセトフェノン、p−ジメチルアミノプロピオフェノン、2−クロロベンゾフェノン、p,p′−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ミヒラーケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、メチルベンゾイルホルメート、2,2−ジエトキシアセトフェノン、4−N,N′−ジメチルアセトフェノン類等、スルフィド系の光重合開始剤、例えば、ジフェニルジスルフィド、ジベンジルジスルフィド等、キノン系の光重合開始剤、例えば、ベンゾキノン、アントラキノン等、アゾ系の光重合開始剤、例えば、アゾビスイソブチロニトリル、2,2′−アゾビスプロパン、ヒドラジン等、スルホクロリド系の光重合開始剤、例えば、チオキサントン等、過酸化物系の光重合開始剤、例えば、過酸化ベンゾイル、ジ−t−ブチルペルオキシド等、その他o−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル等が挙げられる。これらのうち2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン等が溶解性の面で好ましい。これらは、単独で用いてもよく2種以上併用してもよい。光重合開始剤の使用量は、全組成物の固形分総量に対して、1〜10重量%であることが好ましく、3〜5重量%がより好ましい。この使用量が1重量%未満では光硬化性が不充分な傾向があり、10重量%を超えると硬化物の物性が全般的に低下する傾向がある。
【0036】
【実施例】
次に、本発明を実施例及び比較例により詳細に説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。なお、以下において、「部」及び「%」は、特に断りのない限り、全て重量基準である。
【0037】
実施例1
攪拌機、温度計及び環流冷却器を備えたフラスコに、ポリテトラメチレングリコールPTG850SN(保土谷化学工業社商品名、平均分子量850)1742.5部、ジメチロールブタン酸 222.0部、2−ヒドロキシエチルアクリレート 243.6部、p−メトキシフェノール 2.28部、ジブチル錫ラウレート 2.28部、トリプロピレングリコールジアクリレート 381.4部、トリエチルアミン 75.75部を仕込み、空気気流下で攪拌しながら徐々に65℃まで昇温した。ノルボルネンジイソシアネート 927.0部を3時間かけてフラスコに均一滴下した。その際、フラスコ温度を65±3℃に保った。滴下終了後、トリプロピレングリコールジアクリレート 48.79部をフラスコに投入した。さらに攪拌しながら2時間保温した後、フラスコを75℃まで昇温し、さらに約4〜5時間保温して、IR測定で2230cm−1のイソシアネート基の吸収ピークが消失したことを確認した。フラスコを60℃まで冷却し、メタノール 14.40部を添加して30分間攪拌した。その後、トリエチルアミン75.75部を仕込み、60℃で15分間攪拌しながら中和した後、フラスコを60℃保温し、30重量%のメタノール水溶液 4473.3部を3時間かけて滴下し水分散を行った。ろ過して樹脂固形分45重量%のウレタンオリゴマーの水系分散体を得た。
【0038】
実施例2
攪拌機、温度計及び環流冷却器を備えたフラスコに、ポリテトラメチレングリコールPTG850SN(保土谷化学工業社商品名、平均分子量850)1742.5部、ジメチロールブタン酸 222.0部、2−ヒドロキシエチルアクリレート 243.6部、p−メトキシフェノール 2.28部、ジブチル錫ラウレート 2.28部、トリメチロールプロパントリアクリレート 381.4部、トリエチルアミン 75.75部を仕込み、空気気流下で攪拌しながら徐々に65℃まで昇温した。ノルボルネンジイソシアネート 927.0部を3時間かけてフラスコに均一滴下した。その際、フラスコ温度を65±3℃に保った。滴下終了後、トリメチロールプロパントリアクリレート 48.79部をフラスコに投入した。さらに攪拌しながら2時間保温した後、フラスコを75℃まで昇温し、さらに約4〜5時間保温して、IR測定で2230cm−1のイソシアネート基の吸収ピークが消失したことを確認した。フラスコを60℃まで冷却し、メタノール 14.4部を添加して30分間攪拌した。その後、トリエチルアミン75.75部を仕込み、60℃で15分間攪拌しながら中和した後、フラスコを60℃保温し、30重量%のメタノール水溶液 4473.3部を3時間かけて滴下し水分散を行った。ろ過して樹脂固形分45重量%のウレタンオリゴマーの水系分散体を得た。
【0039】
実施例3
攪拌機、温度計及び環流冷却器を備えたフラスコに、ポリテトラメチレングリコールPTG850SN(保土谷化学工業社商品名、平均分子量850)1742.5部、ジメチロールブタン酸 222.0部、2−ヒドロキシエチルアクリレート 121.8部、カプロラクトン変性モノアクリレートPCL FA3(ダイセル社商品名、平均分子量458)480.9部、p−メトキシフェノール2.64部、ジブチル錫ラウレート 2.64部、トリプロピレングリコールジアクリレート 441.4部、トリエチルアミン 75.75部を仕込み、空気気流下で攪拌しながら徐々に65℃まで昇温した。ノルボルネンジイソシアネート 927.0部を3時間かけてフラスコに均一滴下した。その際、フラスコ温度を65±3℃に保った。滴下終了後、トリプロピレングリコールジアクリレート 48.79部をフラスコに投入した。さらに攪拌しながら2時間保温した後、フラスコを75℃まで昇温し、さらに約4〜5時間保温して、IR測定で2230cm−1のイソシアネート基の吸収ピークが消失したことを確認した。フラスコを60℃まで冷却し、メタノール 14.40部を添加して30分間攪拌した。その後、トリエチルアミン75.75部を仕込み、60℃で15分間攪拌しながら中和した後、フラスコを60℃保温し、30重量%のメタノール水溶液4986.4部を3時間かけて滴下し水分散を行った。ろ過して樹脂固形分45重量%のウレタンオリゴマーの水系分散体を得た。
【0040】
実施例4
攪拌機、温度計及び環流冷却器を備えたフラスコに、ポリテトラメチレングリコールPTG850SN(保土谷化学工業社商品名、平均分子量850)1742.5部、ジメチロールブタン酸 222.0部、カプロラクトン変性モノアクリレートPCL FA3(ダイセル社商品名、平均分子量458)480.9部、ペンタエリスリトールトリアクリレート 483.0部、p−メトキシフェノール 3.00部、ジブチル錫ラウレート 3.00部、トリプロピレングリコールジアクリレート 501.7部、トリエチルアミン 75.75部を仕込み、空気気流下で攪拌しながら徐々に65℃まで昇温した。ノルボルネンジイソシアネート 927.0部を3時間かけてフラスコに均一滴下した。その際、フラスコ温度を65±3℃に保った。滴下終了後、トリプロピレングリコールジアクリレート 48.79部をフラスコに投入した。さらに攪拌しながら2時間保温した後、フラスコを75℃まで昇温し、さらに約4〜5時間保温して、IR測定で2230cm−1のイソシアネート基の吸収ピークが消失したことを確認した。フラスコを60℃まで冷却し、メタノール 14.40部を添加して30分間攪拌した。その後、トリエチルアミン75.75部を仕込み、60℃で15分間攪拌しながら中和した後、フラスコを60℃保温し、30重量%のメタノール水溶液 5502.5部を3時間かけて滴下し水分散を行った。ろ過して樹脂固形分45重量%のウレタンオリゴマーの水系分散体を得た。
【0041】
比較例1
攪拌機、温度計及び環流冷却器を備えたフラスコに、ポリエチレングリコールPEG400(三洋化成社商品名、平均分子量400)600.0部、ポリテトラメチレングリコールPTG850SN(保土谷化学工業社商品名、平均分子量850)467.5部、ジメチロールブタン酸 222.0部、2−ヒドロキシエチルアクリレート243.6部、p−メトキシフェノール 1.61部、ジブチル錫ラウレート 1.61部、トリプロピレングリコールジアクリレート 268.68部、トリエチルアミン 75.75部を仕込み、空気気流下で攪拌しながら徐々に65℃まで昇温した。ノルボルネンジイソシアネート 927.0部を3時間かけてフラスコに均一滴下した。その際、フラスコ温度を65±3℃に保った。滴下終了後、トリプロピレングリコールジアクリレート 48.79部をフラスコに投入した。さらに攪拌しながら2時間保温した後、フラスコを75℃まで昇温し、さらに約4〜5時間保温して、IR測定で223cm−1のイソシアネート基の吸収ピークが消失したことを確認した。フラスコを60℃まで冷却し、メタノール 14.40部を添加して30分間攪拌した。その後、トリエチルアミン75.75部を仕込み、60℃で15分間攪拌しながら中和した後、フラスコを60℃保温し、30重量%のメタノール水溶液 3508.9部を3時間かけて滴下し水分散を行った。ろ過して樹脂固形分45重量%のウレタンオリゴマーの水系分散体を得た。
【0042】
比較例2
攪拌機、温度計及び環流冷却器を備えたフラスコに、ポリエチレングリコールPEG200(三洋化成社商品名、平均分子量200)300.0部、ポリテトラメチレングリコールPTG850SN(保土谷化学工業社商品名、平均分子量850)467.5部、ジメチロールブタン酸 222.0部、2−ヒドロキシエチルアクリレート243.6部、p−メトキシフェノール 1.31部、ジブチル錫ラウレート 1.31部、トリプロピレングリコールジアクリレート 218.58部、トリエチルアミン 75.75部を仕込み、空気気流下で攪拌しながら徐々に65℃まで昇温した。ノルボルネンジイソシアネート 927.0部を3時間かけてフラスコに均一滴下した。その際、フラスコ温度を65±3℃に保った。滴下終了後、トリプロピレングリコールジアクリレート 48.79部をフラスコに投入した。さらに攪拌しながら2時間保温した後、フラスコを75℃まで昇温し、さらに約4〜5時間保温して、IR測定で2230cm−1のイソシアネート基の吸収ピークが消失したことを確認した。フラスコを60℃まで冷却し、メタノール 14.40部を添加して30分間攪拌した。その後、トリエチルアミン75.75部を仕込み、60℃で15分間攪拌しながら中和した後、フラスコを60℃保温し、30重量%のメタノール水溶液 3080.3部を3時間かけて滴下し水分散を行った。ろ過して樹脂固形分45重量%のウレタンオリゴマーの水系分散体を得た。
【0043】
上記水系分散体について次の評価を行った。
1)ウレタンオリゴマーの引っ張り強度と伸び率:
光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール(BDK)をウレタンオリゴマー固形分に対し2%添加した。この溶液をガラス板上に乾燥膜厚が約100μmになるように塗布し、80℃30分プレベークした後、80w/cm高圧水銀灯1灯、ランプ高さ15cm、コンベア速度10m/分で2回UV照射した。UV積算照射量500mJ/cmであった(測定機器: トプコン工業用UVチェッカーUV R−T35、測定波長範囲約300〜390nm)。
上記試験板を用いて10×50cmの測定用サンプルを作成した。テストスピード50mm/分、雰囲気温度23℃で引っ張り強度を測定した。
【0044】
2)水溶性ポリマーとの相溶性
ウレタンオリゴマー固形分100部に対して、水溶性ポリマーとしてポリビニルアルコールPVA−405(クラレ社商品名、ケン化度80.0〜83.0、重合度約500)を60部添加し、また、光重合開始剤としてベンジルジメチルケタール(BDK)を全固形分に対し2%添加した。その後、調製した感光性組成物を直径5cmのガラス皿に入れ、65℃で8時間乾燥した後、厚さ約1mmの樹脂版を得た。乾燥した樹脂版の外観を目視で観測した。
○ クリア、 △ 若干濁りあり、× 透明度低い又は白濁
【0045】
3)タック性
上記樹脂版のタック性を指触で評価した。
○ タックなし、△ 指紋痕が残る、× べた付く。
【0046】
4)光硬化性
上記樹脂版を80w/cm高圧水銀灯1灯、ランプ高さ15cm、コンベア速度10m/分で2回UV照射した。UV積算照射量500mJ/cmであった(測定機器: トプコン工業用UVチェッカーUV R−T35、測定波長範囲約300〜390nm)。照射した樹脂版の表面タックを指触で観測し光硬化性を評価した。
○ タックなく硬化性良好、△ ややタックあり、× タック大きい
【0047】
5)硬化後ワレ性
上記光硬化した樹脂版を100℃で60分加熱した後、折り曲げテストで評価した。
○ ワレなし、△ 部分的にワレ、× ワレ
【0048】
各項目の評価結果を表1に示した。
【表1】
Figure 0004487417
【0049】
【発明の効果】
本発明によれば、各種印刷用樹脂版に好適な水系感光性樹脂組成物及びこれを用いた感光性樹脂版、特に、硬化物の耐水性及び耐溶剤性、可とう性が要求される場合に適した水系感光性樹脂組成物及びこれを用いた感光性樹脂版を得ることができる。

Claims (6)

  1. 分子中にアニオン性親水基と、下記式で表される疎水性ポリオキシアルキレン構造とを含有し、かつ分子の末端に光硬化性のエチレン性不飽和基を有するウレタンオリゴマーであって、下記式で表されるポリオキシアルキレン構造を有するジオール化合物を75〜95重量%含有するジオール化合物とポリイソシアネートとの反応によって得られたウレタンオリゴマー(A)を含有する水系分散体からなる水系感光性樹脂組成物。
    −(CHO−
    (式中、nは3以上の整数を表わす。)
  2. ウレタンオリゴマー(A)のアニオン性親水基が、活性水素を有しないアミノ基で中和されたカルボキシル基である請求項1に記載の水系感光性樹脂組成物。
  3. 下記式で表わされるポリオキシアルキレン構造の数平均分子量が100〜10,000である請求項1又は2に記載の水系感光性樹脂組成物。
    −(CHO−
    (式中、nは3以上の整数を表わす)
  4. さらに光重合開始剤を含有する請求項1〜3何れかに記載の水系感光性樹脂組成物。
  5. さらに水溶性ポリマー(B)を含有する請求項1〜4何れかに記載の水系感光性樹脂組成物。
  6. 請求項1〜5何れかに記載の水系感光性樹脂組成物を乾燥してなる感光性樹脂版。
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