JP4486341B2 - 燃料電池用電解質膜の製造方法および燃料電池用電解質膜の製造装置 - Google Patents
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Description
燃料電池用電極−膜接合体100は、負極側拡散層101に負極側下地層102を積層し、負極側下地層102に負電極層103を積層し、負電極層103に電解質膜104を積層し、電解質膜104に正電極層105を積層し、正電極層105に正極側下地層106を積層し、正極側下地層106に正極側拡散層107を積層したものである。
図9(a)〜(f)は従来の電解質膜を備えた燃料電池用電極−膜接合体の製造方法を説明する図である。
(a)において、負極側拡散層101側に負極のワニス状電極層103を塗布することで負極側の積層体107を形成する。
ワニス状電極層103とは、電極触媒などを塗布用有機溶媒に混合してワニス状にしたものである。
(c)において、正極側拡散層107側に正極のワニス状電極層105を塗布することで正極側の積層体109を形成する。
ワニス状電極層105とは、電極触媒などを塗布用有機溶媒に混合してワニス状にしたものである。
(e)において、負極側の積層体107と正極側の積層体109との間に電解質膜104を挟み込む。
(f)において、正・負極側の積層体109,107間に電解質膜104を挟み込んだものを加熱圧着(いわゆる、ホットプレス)する。
この燃料電池用電極−膜接合体100によれば、製造の際に、正・負極の電極層109,107から塗布用有機溶媒を除去することで、発電性能の向上を図ることが可能になる。
このため、燃料電池用電極−膜接合体100は、電解質膜104内に塗布用有機溶媒111を含んでおり、そのことが燃料電池用電極−膜接合体100の発電性能を妨げる要因になっていた。
燃料電池用電極−膜接合体100の加熱圧着時間を長くすることで、電解質膜104内から塗布用有機溶媒111を除去することが可能になる。
しかし、加熱圧着時間を長くすると、燃料電池用電極−膜接合体100の生産性を高めることが難しくなる。
しかし、燃料電池用電極−膜接合体100への圧着力を高めると、正・負極の電極層105,103が押し潰される虞がある。
正・負極の電極層105,103が押し潰されると、燃料電池用電極−膜接合体100の発電性能を高め難くなる虞がある。
しかし、塗布用有機溶媒111の沸点が、電解質膜の固体高分子の分解温度より高い場合には、塗布用有機溶媒111の沸点まで温度を上昇すると、固体高分子が分解してしまう。
しかし、未乾燥状態の電解質膜104を、例えば水槽内に配置し、水に浸漬しても、水は未乾燥状態の電解質膜104内に進入し難い。
このため、電解質膜104内の溶媒111と水を置換させて、電解質膜104内から所望量の溶媒111を除去するまでに多くの時間がかかり、そのことが生産性を高める妨げになっていた。
ここで、一般に気体は分子のエネルギーが大きいため、物質への浸透・拡散性が液体に比べて大きい。よって、電解質膜内に蒸気を良好に導くことができる。
これにより、溶媒の沸点温度が水の沸点温度より高い場合でも、溶媒をその沸点温度まで上昇させなくても、電解質膜内の溶媒を蒸気で好適に除去することが可能になる。
しかし、環境温度を、炭化水素系固体高分子の分解温度より高くすると、炭化水素系固体高分子が分解してしまう。
これにより、炭化水素系固体高分子を分解させずに、電解質膜内から溶媒を除去することができる。
しかし、溶媒をその沸点温度まで上昇させなくても、蒸気を電解質膜内まで導くことで、電解質膜内の溶媒を蒸気で好適に除去することができる。
このため、N−メチル・2・ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトンは、電解質膜の溶媒として用いやすい。
請求項3は、前記乾燥した電解質膜の高分子重量を100%として、この電解質膜に残存する前記溶媒を重量比で0.1%以下に抑えることを特徴とする。
電解質膜に残存する溶媒を0.1%以下と微量に抑えることで、溶媒が電解質膜から流出しても、燃料電池用電極−膜接合体の内部に大きな寸法変化が起こることを防止する。
これにより、燃料電池用電極−膜接合体の内部に剥離や割れが発生することを防いで、燃料電池用電極−膜接合体の発電性能を保つことができる。
請求項4は、炭化水素系固体高分子に溶媒を加えたものを塗布して電解質膜を得る燃料電池用電解質膜の製造装置であって、未乾燥状態の電解質膜を、前記炭化水素系固体高分子の分解温度を超えない温度で仮乾燥する仮乾燥手段と、前記仮乾燥した電解質膜の一方の面側に一方のノズルが設けられ、他方の面側に他方のノズルが設けられることで前記一方のノズルおよび前記他方のノズルが対向して配置され、前記炭化水素系固体高分子の分解温度を超えない温度で、前記一方のノズルおよび前記他方のノズルから前記一方の面および前記他方の面に蒸気をそれぞれ噴射することにより、前記電解質膜内に蒸気を導き、導いた蒸気で電解質膜内の前記溶媒を除去する溶媒除去処理をおこなう蒸気処理室と、前記溶媒を除去した電解質膜を、炭化水素系固体高分子の分解温度を超えない温度で乾燥する乾燥手段と、を備えたことを特徴とする。
請求項4によれば、前述した請求項1と同様に、電解質膜内の溶媒を蒸気で好適に除去することが可能になる。
請求項3に係る発明では、電解質膜に残存する溶媒を0.1%以下と微量に抑えることで、溶媒が電解質膜から流出しても、燃料電池用電極−膜接合体の内部に大きな寸法変化が起こることを防止する。
これにより、燃料電池用電極−膜接合体の内部に剥離や割れが発生することを防いで、燃料電池用電極−膜接合体の発電性能を保つことができるという利点がある。
請求項4に係る発明では、前述した請求項1と同様に、電解質膜内の溶媒を蒸気で好適に除去することが可能になるという利点がある。
図1は本発明に係る燃料電池用電解質膜を備えた燃料電池ユニットを示す分解斜視図である。
燃料電池ユニット10は、複数(2個)の燃料電池単体(セル)11,11で構成したものである。
この燃料電池単体11は、燃料電池用電極−膜接合体12の両側にそれぞれ負極側セパレータ13および正極側セパレータ14を備える。
負極側拡散層21および正極側拡散層27で燃料電池用電極−膜接合体12の両側を構成する。
また、正極側拡散層27に正極側セパレータ14を積層する。正極側セパレータ14の流路溝16を正極側拡散層27で覆い、正極側拡散層27および流路溝16で酸素ガス流路18を形成する。
このように、構成した燃料電池単体11を複数個(図1では2個のみを示す)備えることで、燃料電池ユニット10を構成する。
なお、燃料電池用電極−膜接合体12については図2で詳しく説明する。
燃料電池用電極−膜接合体12は、負極側拡散層21に負極側下地層22を積層し、負極側下地層22に負電極層23を積層し、負電極層23に電解質膜24を積層し、電解質膜24に正電極層25を積層し、正電極層25に正極側下地層26を積層し、正極側下地層26に正極側拡散層27を積層したものである。
負極側拡散層21は、撥水性処理を施すことで、水が液体状態のとき透過し難く、水が蒸気(水蒸気)状態のとき透過し易いように構成されている。
正極側拡散層27は、負極側拡散層21と同様に撥水性処理を施すことで、水が液体状態のとき透過し難く、水が蒸気(水蒸気)状態のとき透過し易いように構成されている。
正・負極側の拡散層21,27に撥水性処理を施すことで、正・負極側の拡散層21,27の隙間が気体の径より大きく液体の径より小さいため、上述の通り、正・負極側の拡散層21,27は、液体状態の水の透過を妨げるが、水蒸気の透過は妨げない。
正極側下地層26は、一例として粒状のカーボン31にバインダー(ポリテトラフルオロエチレンの骨格にスルホン酸を導入したもの)32を加えたものである。
正電極層25は、正極用の溶媒に触媒(電極粒)37を混合し、塗布後に溶媒を乾燥することで固化したものである。正電極層25の触媒37は、カーボン38の表面に触媒として白金39を担持したものである。
炭化水素系固体高分子の分解温度は、160〜200℃である。
NMP(N−メチル・2・ピロリドン)、DMAc(ジメチルアセトアミド)、DMSO(ジメチルスルホキシド)、DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)、γ−ブチロラクトンは、比較的入手が容易であり、電解質膜24の溶媒として用いやすい。
DMAc(ジメチルアセトアミド)は、沸点が165.5℃の溶剤である。
DMSO(ジメチルスルホキシド)は、沸点が189℃の溶剤である。
DMF(N,N−ジメチルホルムアミド)は、沸点が153℃の溶剤である。
γ−ブチロラクトンは、沸点が204℃の溶剤である。
すなわち、溶媒41は、炭化水素系固体高分子の分解温度160〜200℃より沸点が高い。
そこで、図3〜図5の製造方法で電解質膜24に残存する溶媒41を除去することにした。
以下、燃料電池用電解質膜24の製造方法を図3〜図5に基づいて説明する。
(a)において、炭化水素系固体高分子にN−メチル・2・ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトンから選択した少なくとも一種の溶媒41を加えたものをシート状に塗布して電解質膜24とする。
具体的には、炭化水素系固体高分子の分解温度は160〜200℃、加熱温度は50〜150℃である。
未乾燥状態の電解質膜24をヒータ45で加熱することで、未乾燥状態の電解質膜24から溶媒のうちの一部を矢印bの如く蒸発させて、未乾燥状態の電解質膜24を仮乾燥する。
(a)において、仮乾燥した電解質膜24を蒸気処理室46内の処理位置、すなわち上蒸気噴射手段47と下蒸気噴射手段48との間に配置する。
配置完了後、上蒸気噴射手段47のノズル47a…から蒸気(水蒸気)を矢印cの如く、仮乾燥した電解質膜24に向けて噴射する。
この際、蒸気処理室46内が、炭化水素系固体高分子の分解温度160〜200℃を超えない高温雰囲気70〜150℃に設定されている。
同様に、下蒸気噴射手段48のノズル48a…から噴射した蒸気が、電解質膜24の表面24bに矢印dの如く到達し、蒸気が、電解質膜24内に矢印fの如く良好に進入する。
この際に、電解質膜24内に進入した蒸気が、電解質膜24内に水49として残留する。
但し、温度は、炭化水素系固体高分子の分解温度160〜200℃より低く抑える必要がある。
これにより、炭化水素系固体高分子を分解させずに、電解質膜24内から溶媒を除去することができる。
(a)において、仮乾燥状態の電解質膜24をヒータ51で矢印hの如く加熱する。このときの乾燥温度を、炭化水素系固体高分子の分解温度を超えない温度に設定する。また、この加熱温度は、溶媒41の沸点より低い温度である。
具体的には、炭化水素系固体高分子の分解温度は160〜200℃、乾燥温度は50〜150℃である。
仮乾燥状態の電解質膜24をヒータ51で加熱することで、仮乾燥状態の電解質膜24を本乾燥する。
ここで、図4(b)で説明したように、電解質膜24内に残存していた溶媒41のうち、殆どの量が電解質膜24内から除去されている。
よって、電解質膜24内から水49を除去することで、電解質膜24の炭化水素系高分子中には僅かな溶媒41のみが残存する。
具体的には、電解質膜24内の溶媒41の残存量を0.1%と微量に抑えることができる。
なお、溶媒41の残存量は、電解質膜24の高分子重量を100%として、重量比で示したものである。
しかし、蒸気を電解質膜24内まで導くことで、電解質膜24内の溶媒41を蒸気で好適に除去することができる。
このため、N−メチル・2・ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトンは、電解質膜24の溶媒41として用いやすい。
ここで、一般に気体は分子のエネルギーが大きいため、物質への浸透・拡散性が液体に比べて大きい。よって、電解質膜24内に蒸気を良好に導くことができる。
このように、電解質膜24内の溶媒を蒸気で好適に除去することで、生産性を維持しながら、発電性能を高めることができる。
この溶媒41の場合、図3〜図5に示す水蒸気処理を採用しなくても、仮乾燥や乾燥の際に、加熱温度を、溶媒41の沸点まで高めて、電解質膜24内の溶媒41を比較的好適に除去することは可能である。
そこで、炭化水素系固体高分子の分解温度160〜200℃より沸点が低い溶媒41を使用したの場合でも、図3〜図5に示す水蒸気処理を採用することで、電解質膜24内の溶媒41を円滑に除去し、生産性を維持しながら、発電性能を高めるようにした。
図6(a),(b)は本発明に係る電解質膜を備えた燃料電池用電極−膜接合体の使用例を説明する図である。
(a)において、負電極層23内の水素イオン(H+)が電解質膜24を透過して正電極層25側に矢印kの如く流れる。この水素イオン(H+)が正電極層25の酸素(O2)と反応して生成水(H2O)が生成される。
一部の生成水を電解質膜24内に導くことで、電解質膜24を湿潤状態に保つ。電解質膜24を湿潤状態に保つことで、燃料電池用電極−膜接合体12の発電性能を維持する。
電解質膜24内から多量の溶媒41が流出すると、電解質膜24に大きな寸法変化が起こり、燃料電池用電極−膜接合体12の内部で剥離や割れが発生する虞がある。
電解質膜24に残存する溶媒41を規定値(0.5%)以下と微量に抑えることで、溶媒41が電解質膜24から流出しても、燃料電池用電極−膜接合体12の内部に大きな寸法変化が起こることを防止する。
これにより、燃料電池用電極−膜接合体12の内部に剥離や割れが発生することを防いで、燃料電池用電極−膜接合体12の発電性能を保つことができる。
比較例の電解質膜152としては、図3〜図5の蒸気処理を施さないものを使用した。
(a)において、燃料電池用電極−膜接合体150を構成する負電極層151内の水素イオン(H+)が電解質膜152を透過して正電極層153側に矢印nの如く流れる。この水素イオン(H+)が正電極層153の酸素(O2)と反応して生成水(H2O)が生成される。
一部の生成水を電解質膜152内に導くことで、電解質膜152を湿潤状態に保つ。電解質膜152を湿潤状態に保つことで、燃料電池用電極−膜接合体150の発電性能を維持する。
このように、電解質膜152内から多量の溶媒154が流出するので、電解質膜152に大きな寸法変化が起こることが考えられる。
このため、電解質膜152と負電極層151との境界に剪断力が発生し、さらに負電極層151内にも剪断力が発生する。同時に、電解質膜152と正電極層153との境界に剪断力が発生し、さらに正電極層153内にも剪断力が発生する。
よって、燃料電池用電極−膜接合体150内に剥離や割れ155が発生することが考えられる。
これにより、燃料電池用電極−膜接合体150の発電性能が低下する虞がある。
Claims (4)
- 炭化水素系固体高分子に溶媒を加えたものを塗布して電解質膜を得る燃料電池用電解質膜の製造方法であって、
未乾燥状態の電解質膜を、前記炭化水素系固体高分子の分解温度を超えない温度で仮乾燥し、
この仮乾燥した電解質膜の両面から蒸気を良好に進入させるために、前記炭化水素系固体高分子の分解温度を超えない温度で電解質膜の両面にノズルから蒸気を噴射することにより、前記電解質膜内に蒸気を導き、導いた蒸気で電解質膜内の前記溶媒を除去し、
この溶媒を除去した電解質膜を、炭化水素系固体高分子の分解温度を超えない温度で乾燥することを特徴とする燃料電池用電解質膜の製造方法。 - 前記溶媒は、N−メチル・2・ピロリドン、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、N,N−ジメチルホルムアミド、γ−ブチロラクトンから選択した少なくとも一種であることを特徴とする請求項1記載の燃料電池用電解質膜の製造方法。
- 前記乾燥した電解質膜の高分子重量を100%として、この電解質膜に残存する前記溶媒を重量比で0.1%以下に抑えることを特徴とする請求項1または請求項2記載の燃料電池用電解質膜の製造方法。
- 炭化水素系固体高分子に溶媒を加えたものを塗布して電解質膜を得る燃料電池用電解質膜の製造装置であって、
未乾燥状態の電解質膜を、前記炭化水素系固体高分子の分解温度を超えない温度で仮乾燥する仮乾燥手段と、
前記仮乾燥した電解質膜の一方の面側に一方のノズルが設けられ、他方の面側に他方のノズルが設けられることで前記一方のノズルおよび前記他方のノズルが対向して配置され、前記炭化水素系固体高分子の分解温度を超えない温度で、前記一方のノズルおよび前記他方のノズルから前記一方の面および前記他方の面に蒸気をそれぞれ噴射することにより、前記電解質膜内に蒸気を導き、導いた蒸気で電解質膜内の前記溶媒を除去する溶媒除去処理をおこなう蒸気処理室と、
前記溶媒を除去した電解質膜を、炭化水素系固体高分子の分解温度を超えない温度で乾燥する乾燥手段と、
を備えたことを特徴とする燃料電池用電解質膜の製造装置。
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- 2003-10-22 JP JP2003362172A patent/JP4486341B2/ja not_active Expired - Lifetime
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