JP4485679B2 - 抗原特異的t細胞の操作において有用な組換えmhc分子 - Google Patents
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Description
優先権の主張
本特許出願は、それぞれ1997年9月16日および1997年10月10日出願の本願と同時係属の米国仮特許出願第60/064552号および60/064555号からの優先権を主張し、これらの開示を参照として本明細書に組み込む。
【0002】
発明の背景
哺乳動物において特定の抗原に対する免疫反応は、T細胞へのその抗原の提示によって開始される。抗原は、主要組織適合(MHC)複合体に関連してT細胞に提示される。MHC複合体は抗原提示細胞(APC)の表面上にあり、MHCの3次元構造は提示される抗原がうまく納まる溝または裂け目を有する。T細胞上の適当な受容体が、必要な共刺激シグナルの存在下でAPC上のMHC/抗原複合体と相互作用すると、T細胞が刺激され、細胞傷害性T細胞の機能誘導、B細胞の機能誘導およびサイトカイン産生促進を含む、よく特徴付けられた免疫系活性化事象カスケードの様々な局面を誘発する。
【0003】
哺乳動物には、MHC分子の2つの基本的クラス、MHCクラスIおよびMHC IIがある。いずれのクラスも2つの別々の蛋白質の結合により形成された大きな蛋白質複合体である。各クラスには、複合体を細胞膜に固定する膜貫通ドメインが含まれる。MHCクラスI分子は2つの非共有結合した蛋白質、すなわちα鎖とβ2ミクログロブリンとから形成されている。α鎖は3つの別個のドメイン、α1、α2およびα3を含む。α1およびα2ドメインの3次元構造は、抗原がT細胞への提示のために入り込む溝を形成する。α3ドメインは、α鎖をAPCの細胞膜に固定する膜貫通Ig折り畳み構造様ドメインである。MHCクラスI複合体は抗原と結合すると(適当な共刺激シグナル存在下で)、特異的に認識するいかなる細胞も死滅させるはたらきをするCD8細胞傷害性T細胞を刺激する。
【0004】
非共有結合してMHCクラスII分子を形成する2つの蛋白質は、αおよびβ鎖と命名されている。α鎖はα1およびα2ドメインを含み、β鎖はβ1およびβ2ドメインを含む。抗原が入り込む裂け目は、α1およびβ1ドメインの相互作用によって形成される。α2およびβ2ドメインは、αおよびβ鎖をAPCの細胞膜に固定する膜貫通Ig折り畳み構造様ドメインである。MHCクラスII複合体は抗原と結合すると(適当な共刺激シグナル存在下で)CD4 T細胞を刺激する。CD4 T細胞の主な機能は、炎症反応を開始し、免疫系の他の細胞を調節することである。
【0005】
MHC複合体を構成する様々な蛋白質をコードする遺伝子が、ヒトや他の哺乳動物で広く研究されている。ヒトでは、MHC分子(クラスIβ2-ミクログロブリンを除く)は、第6染色体に位置し、100以上の遺伝子を構成するHLA領域にコードされる。クラスI MHCα蛋白質の遺伝子座が3つあり、HLA-A、-Bおよび-Cと命名されている。同様にクラスII MHCαおよびβ鎖の遺伝子座が3対あり、HLA-DR(AおよびB)、HLA-DP(AおよびB)、ならびにHLA-DQ(AおよびB)と命名されている。ラットでは、クラスIα遺伝子はRT1.Aと呼ばれている一方で、クラスII遺伝子はRT1.BαおよびRT1.Bβと呼ばれている。MHC複合体の構造、機能および遺伝学的特質についてのより詳細な背景情報は、JanewayおよびTraversによる免疫生物学:健康と疾病における免疫システム( Immunobiology: The Immune System in Health and Disease )、Current Biology Ltd./Garland Publishing, Inc. (1997)(ASBN 0-8153-2818-4)、およびBodmerら(1994)「HLA系因子命名法(Nomenclature for factors of the HLA system)」Tissue Antigens第44巻、1〜18ページ(定期的に更新)に見いだすことができる。
【0006】
MHC複合体が免疫認識誘発において重要な役割を果たすことから、免疫反応を調節するためにこれらの複合体を用いる方法が開発されるようになった。例えば、「自身の」抗原(自己抗原)を認識する活性化T細胞は、自己免疫疾患(慢性関節リウマチや多発性硬化症など)で重要な役割を果たすことが知られている。単離したMHCクラスII分子(適当な抗原をのせた)はMHCクラスII複合体を伴うAPCと置換することができ、抗原特異的T細胞に結合できるという知見に基づき、何人かの研究者が単離MHC/抗原複合体を自己免疫疾患の治療に用いることができると提唱している。したがって、米国特許第5194425号(Sharmaら)および第5284935号(Clarkら)は、特定の自己抗原をのせ、自己抗原と特異的に免疫反応するT細胞を除去するために毒素と結合させた、単離MHCクラスII複合体の使用を開示している。別の状況において、共刺激因子の非存在下における単離MHC II/抗原複合体とT細胞との相互作用によって、アネルギーとして知られる不応状態が引き起こされることが明らかにされている。(Quillら、J. Immunol.、138:3704〜3712(1987))。この知見に続き、Sharmaら(米国特許第5468481号および第5130297号)およびClerkら(米国特許第5260422号)は、このような単離MHC II/抗原複合体を、特定の自己抗原ペプチドに特異的に反応するアネルギー状態のT細胞系統に治療目的で投与することができると示唆している。
【0007】
特定の抗原を認識するT細胞の検出、定量および精製における単離MHC複合体の使用法が、診断および治療への応用のために研究されてきた。一例として、特定の自己抗原に特異的なT細胞を早期検出することによって、適当な治療法を早期に選択することが容易になると考えられる。また、抗原特異的T細胞を精製することができれば、養子免疫療法において非常に有用であると思われる。養子免疫療法は、癌患者からT細胞を除去し、インビトロでT細胞を増殖させ、次いで患者に細胞を再度導入するものである(米国特許第4690915号、Rosenbergら、New Engl. J. Med. 319:1676〜1680(1988)参照)。炎症性を有する癌特異的T細胞を単離し、増殖させることができれば、このようなアプローチの特異性と有効性を高めることができると考えられる。
【0008】
しかしながら、今日までのところ、単離MHC/抗原複合体を用いた抗原特異的T細胞の検出、定量または精製は、多くの理由がある中でもT細胞とこのような単離複合体との結合が一過性のものであり、したがってT細胞/MHC/抗原複合体が不安定であることから、大きな成功には至っていない。これらの問題を解決するために、Altmanら(Science 274、94〜96(1996)および米国特許第5635363号)は、大きく、共有結合した多量体構造のMHC/抗原複合体を用い、標的T細胞上の複数のT細胞受容体に同時に結合させることによってこの相互作用を安定化させる方法を提唱している。
【0009】
診断および治療上の応用例で単離MHC/抗原複合体を用いるという概念には大きな見込みがあるとはいうものの、これまでに報告された様々な方法の主な欠点は、複合体が大きく、その結果、生産や取り扱いが困難なことである。複合体は界面活性剤抽出によってリンパ球から単離可能であるが、このような方法は非効率的で少量の蛋白質しか得られない。様々なMHC複合体サブユニットをコードする遺伝子のクローニングによって、原核細胞での発現を通して個々のサブユニットの大量生産が容易になったが、個々のサブユニットの適当な高次構造を有するMHC複合体への組み立てが困難であることが立証されている。
【0010】
発明の概要
本発明は、MHC分子の抗原を結合する裂け目を決定するドメインだけを含む組換えポリペプチドを用いることにより、哺乳動物のMHC機能を模倣することができるという知見に基づいている。これらの分子は、抗原特異的T細胞の検出、定量および精製に有用である。本明細書において提供される分子はまた、臨床および検査上の応用例において、抗原特異的T細胞を検出、定量および精製するため、T細胞でアネルギーを誘導するため、同様に、T細胞を刺激するため、および抗原特異的T細胞が仲介する疾患を治療するためにも用いることができる。
【0011】
一例として、Altmanら(米国特許第5635363号)は、抗原特異的T細胞に結合させ、このT細胞を混合物から精製するために、α1、α2、β1およびβ2ドメインならびに結合したペプチド抗原を含むMHCクラスII複合体の多量体を利用しようとしているが、本発明者らはこのような抗原特異的T細胞の結合が、クラスII MHC分子の場合にはα1およびβ1ドメインだけを共有結合で(且つ抗原決定基に関連して)含むはるかに単純な単量体分子を用いて達成しうることを見いだした。便宜上、このようなMHCクラスIIポリペプチドを本明細書ではこの後「β1α1」と呼ぶ。MHCクラスI分子由来の等価の分子も本発明によって提供される。このような分子はクラスI分子のα1およびα2ドメインを共有結合で、且つ抗原決定基に関連して含む。このようなMHCクラスIポリペプチドを「α1α2」と呼ぶ。これらの2ドメイン分子は原核細胞または真核細胞中の組換え発現によって容易に産生し、容易に大量精製することができる。さらに、これらの分子はいかなる所望のペプチド抗原でも容易にのせることができ、一連の異なるT細胞特異性を有するMHC分子の産生を単純にする。
【0012】
無傷のMHC分子の一部である膜貫通Ig折りたたみ構造ドメインを欠いているにも関わらず、これらの2ドメインMHC分子は「全体の」MHC分子と構造的に類似の様式で再度折りたたまれ、ペプチド抗原と結合して安定なMHC/抗原複合体を形成することが明らかにされている。さらに、これらの2ドメインMHC/エピトープ複合体はエピトープ特異的にT細胞に結合し、インビトロでのエピトープ特異的T細胞増殖を阻害する。加えて、ミエリン塩基性蛋白質 (MBP)のアミノ酸69〜89位を含むMBPエピトープをのせたβ1α1分子をラットに投与すると、ラットの実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)の発症を抑制し、これを治療することが示されている。したがって、2ドメインMHC分子は、インビトロとインビボの両方で、T細胞活性化に対する強力でエピトープ特異的効果を示す。結果として、開示されるMHC分子はインビボとインビトロ両方の広範囲にわたる適用に有用である。
【0013】
これら2ドメイン分子の様々な処方物が本発明によって提供される。最も基本的な形では、2ドメインMHCクラスII分子は、α1ドメインのアミノ末端がβ1ドメインのカルボキシ末端に共有結合しており、ポリペプチドがα2またはβ2ドメインを含まない、哺乳動物MHCクラスII分子のα1およびβ1ドメインを含む。2ドメインMHCクラスI分子は、α2ドメインのアミノ末端がα1ドメインのカルボキシ末端に共有結合しており、ポリペプチドがMHCクラスIα3ドメインを含まない、哺乳動物クラスI分子のα1およびα2ドメインを含む。ほとんどの適用例で、これらの分子は共有結合または共有結合ではない相互作用によってペプチド抗原などの抗原決定基と結合している。特定の態様において、ペプチド抗原はクラスII分子のβ1ドメインまたはクラスI分子のα1ドメインのアミノ末端に共有結合している。2ドメイン分子はまた、蛍光標識などの検出可能マーカーまたはリシンAなどの毒性部分を含むこともできる。
【0014】
本発明はまた、2ドメインMHC分子をコードする核酸分子、ならびにこれらの分子を発現するために便宜的に用いることのできる発現ベクターも提供する。特定の態様において、核酸分子は2ドメインMHC分子と同じく抗原性ペプチドをコードする配列を含む。例えば、このような核酸分子の一つは式Pr-P-B-Aで表すことができ、ただしPrはP(ペプチド抗原をコードする配列)に機能的に結合されたプロモーター配列であり、BはクラスIα1またはクラスIIβ1ドメインであり、AはクラスIα2ドメインまたはクラスIIα1ドメインである。これらの核酸分子において、P、BおよびAはペプチドおよび2つのMHCドメインが一本のポリペプチド鎖として発現されるような単一のオープンリーディングフレームを含む。
【0015】
インビトロで、2ドメインMHC分子をT細胞を検出および定量し、T細胞機能を調節するために用いることができる。したがって、選択された抗原をのせたこのような分子は、その抗原に特異的なT細胞集団を検出、モニターおよび定量するために用いることができる。このようなことができる能力は、癌患者から採取した血液中の腫瘍抗原特異的T細胞の数、または自己免疫疾患をわずらう患者から採取した血液中の自己抗原特異的T細胞の数をモニターするなど、いくつかの臨床の場で有益である。これらの状況において、開示される分子は特定の治療法の進行をモニターする強力なツールである。抗原特異的T細胞をモニターし、定量する他に、開示される分子を、このような細胞を養子免疫療法用に精製するためにも用いることができる。したがって、開示される腫瘍抗原をのせたMHC分子を癌患者からの腫瘍抗原特異的T細胞を精製するために用いることもできる。これらの細胞を次いでインビトロで増殖させ、その後癌治療の一環として患者に戻すこともできる。毒性部分と結合させて、2ドメイン分子を特定の抗原特異性を有するT細胞を死滅させるために用いることもできる。または、これらの分子をこのようなT細胞でアネルギーを誘導するためにも用いることができる。
【0016】
また、2ドメイン分子を用いて、インビボで特定の抗原特異的T細胞を標的とすることもできる。一例として、ミエリン塩基性蛋白質 (MBP)の一部をのせ、多発性硬化症を患う患者に投与したβ1α1分子を用いて、MBP特異的T細胞のアネルギーを誘導し、したがって病気の症状を軽減することができる。または、このような分子を毒性部分と結合させて、疾患の原因となるT細胞をより直接的に死滅させてもよい。
【0017】
本発明のこれらおよび他の局面を、以下の項でより詳細に記述する。
【0018】
配列表
添付の配列表には下記の配列が含まれる。
配列番号:1: 一本鎖β1α1発現カセットの核酸。
配列番号:2: 配列番号:1に示す構築物によってコードされるアミノ酸配列。
配列番号:3: 配列番号:1に示す発現カセットへの挿入に適した抗原/リンカーインサートの核酸配列。
配列番号:4: 配列番号:3に示す配列によってコードされるアミノ酸配列。
配列番号:5および7: 発現カセットのための抗原をコードする他の配列と、配列番号:6および8はそれぞれ配列番号:5および7に示す配列によってコードされる抗原の配列。
配列番号:9〜20および28〜29は、β1α1発現カセットの成分を増幅するために用いるPCRプライマーを示す。
配列番号:21は、図11に示す例示的なα1およびα2ドメインを示す。
配列番号:22〜24は、図10に示す例示的なβ1およびα1ドメインを示す。
配列番号:25〜27、および30は、本発明の様々な局面で用いられるペプチド配列を示す。
【0019】
発明の詳細な記載
1. 定義
本発明の様々な態様の検討を容易にするために、下記の用語の定義および略語の説明を提供する。
【0020】
単離(された):「単離(された)」核酸は、その核酸が天然に生じる生物の細胞における他の核酸配列、すなわち他の染色体ならびに染色体外DNAおよびRNAから実質的に分離または精製されている。「単離(された)」という用語はしたがって、標準的な核酸精製法によって精製された核酸を含む。この用語はまた、宿主細胞中で組換え発現によって調製された核酸ならびに化学的に合成された核酸も含む。
【0021】
cDNA(相補的DNA):内部の非コードセグメント(イントロン)および転写を決定する調節配列を欠いたDNA片。cDNAは実験室で細胞から抽出したメッセンジャーRNAから逆転写によって合成される。
【0022】
ORF(オープンリーディングフレーム):終結コドンを持たない、アミノ酸をコードする一連のヌクレオチドトリプレット(コドン)。これらの配列は通常、ポリペプチドに翻訳できる。
【0023】
検出可能な標識またはレポーター分子。典型的な標識には、放射性同位体、リガンド、化学発光物質、および酵素が含まれる。標識法および様々な目的のために適当な標識を選択する際の手引きが、例えばSambrookら(1989)およびAusubelら(1987)に述べられている。
【0024】
プライマーは短い核酸で、好ましくはヌクレオチド15個以上の長さのDNAオリゴヌクレオチドである。プライマーは、核酸ハイブリダイゼーションによって相補的な標的DNA鎖にアニールしてプライマーと標的DNA鎖とのハイブリッドを形成し、次いでDNAポリメラーゼ酵素により標的DNA鎖に沿って伸長することができる。プライマー対は、例えばポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または他の当技術分野において公知の核酸増幅法による核酸配列の増幅のために用いることができる。
【0025】
プローブおよびプライマーの調製法および使用法は、例えばSambrookら(1989)、Ausubelら(1987)、およびInnisら(1990)に記載されている。PCRプライマー対は、例えばPrimer(バージョン0.5、(c)1991、Whitehead Institute for Biomedical Research、マサチューセッツ州ケンブリッジ)などのこの目的のためのコンピュータープロラムを利用することによって、既知の配列から誘導することができる。
【0026】
精製(された):精製(された)という用語は絶対的な純度を要求するものではない。むしろ、相対的な用語として意図されている。したがって、例えば、精製された組換えMHC蛋白質調製物は、含まれる組換えMHC蛋白質が細胞内の元の環境にある蛋白質に比べて純度が高いものである。組換えMHC蛋白質の調製物は一般には、組換えMHC蛋白質が調製物の全蛋白質含量の少なくとも50%を示すように精製される。しかし、特定の適用にはより高度に精製された調製物が要求されることもある。例えば、そのような適用例に対しては、MHC蛋白質が全蛋白質含量の少なくとも75%、または少なくとも90%を構成する調製物を用いることができる。
【0027】
機能的に結合された:第一の核酸配列が第二の核酸配列と機能的関係に置かれている場合、第一の核酸配列は第二の核酸配列に機能的に結合されている。例えば、プロモーターがコード配列の転写または発現に影響をおよぼす場合、プロモーターはコード配列に機能的に結合される。一般に、機能的に結合されたDNA配列は隣接しており、2つの蛋白質コード領域を連結する必要がある場合はオープンリーディングフレームを配列する。
【0028】
組換え:組換え核酸またはポリペプチドは、天然には生じない配列を有するもの、または2つ以上の本来は分離している配列セグメントの人工的連結によって作られた配列を有するものである。この人工的連結は化学的合成によって達成されることが多く、またはより一般的には核酸の単離セグメントの人工的操作、例えば遺伝子工学的方法によって達成される。
【0029】
哺乳動物:この用語には、ヒトおよびヒト以外の哺乳動物の両方が含まれる。同様に、「患者」という用語には、ヒトおよび獣医学的対象の両方が含まれる。
【0030】
β1α1ポリペプチド:MHCクラスII分子の共有結合したα1およびβ1ドメインを含む、組換えポリペプチドである。適当な配座を確保するために、このようなポリペプチドはβ1ドメインのカルボキシ末端がα1ドメインのアミノ末端に共有結合するような配向を取る。
【0031】
β1α1遺伝子:β1α1ポリペプチドをコードする核酸配列に機能的に結合されたプロモーター領域を含む組換え核酸配列。
【0032】
α1α2ポリペプチド:MHCクラスI分子の共有結合したα1およびα2ドメインを含むポリペプチドである。このようなポリペプチドの配向はα1ドメインのカルボキシ末端がα2ドメインのアミノ末端に共有結合するかたちである。α1α2ポリペプチドは、全体のクラスIα鎖よりも短いものを含み、通常はα鎖のα3ドメインのほとんどまたはすべてを欠いている。
【0033】
α1α2遺伝子:α1α2ポリペプチドをコードする核酸配列に機能的に結合されたプロモーター領域を含む組換え核酸配列。
【0034】
ドメイン:ポリペプチドまたは蛋白質のドメインは、特定の機能に一致させることができるアミノ酸配列の独立した部分である。例えば、MHCクラスII分子を構成するαおよびβポリペプチドは、それぞれ2つのドメインα1、α2およびβ1、β2を持つことが認められている。同様に、MHCクラスI分子のα鎖は、3つのドメインα1、α2およびα3を持つことが認められている。これら各分子の様々なドメインは一般に、連結しているアミノ酸配列によって結合される。組換え分子に組み込むために特定のドメインの配列を選ぶ場合、完全なドメインを組み込むことが好ましい。これを確実に行うために、ドメインの配列をリンカーの一部、または隣接ドメインの同等の部分を含むように伸長してもよい。例えば、HLA-DR Aのα1ドメインを選ぶ場合、選んだ配列は一般にα鎖のアミノ酸残基1から完全なα1ドメインにわたって伸長し、およそアミノ酸残基76〜90(α1とα2ドメインの間、α1ドメインのカルボキシ末端)に位置するリンカー配列の全部または一部を含むことになる。しかし、様々なMHC分子ドメインの正確なアミノ酸番号は、哺乳動物の種に応じて変化し、種内の遺伝子のクラス間で異なる。アミノ酸番号に基づく正確な構造決定よりも、特定のドメインのアミノ酸配列を選ぶ際に重要なことはドメイン機能の維持である。さらに、当業者であれば、ドメイン機能は選んだドメインの完全なアミノ酸配列よりも幾分少ないものを用いても、同様に維持されうることを理解すると思われる。例えば、α1ドメインのアミノ末端またはカルボキシ末端のいずれかで、いくつかのアミノ酸が欠けてもドメイン機能に影響をおよぼさないこともある。しかし一般的には、ドメイン配列のいずれかの末端で削られるアミノ酸の数は10以下で、より一般的には5以下である。特定の選択されたドメインの機能活性は、以下で詳細に説明するとおり、抗原特異的T細胞増殖解析法を用いて、本発明によって提供される2ドメインMHCポリペプチド(すなわち、クラスIIβ1α1またはクラスIα1α2ポリペプチド)に関連して評価することができる。例えば、特定のβ1ドメインを試験するために、β1α1分子を産生するようにこれを機能的α1ドメインに連結し、次いで前述の解析法で試験してもよい。生物学的に活性なβ1α1またはα1α2ポリペプチドは抗原特異的T細胞の増殖を少なくとも約50%阻害し、したがって成分ドメインが機能性であることを示す。一般には、このようなポリペプチドは本解析システムにおいてT細胞の増殖を少なくとも75%、時には約90%以上阻害する。
【0035】
配列同一性:アミノ酸配列間の類似性は、配列間の類似性によって表され、配列同一性とも呼ばれる。配列同一性は、同一性(または類似性もしくは相同性)のパーセンテージによって評価されることが多い。パーセンテージが高いほど2つの配列の類似性が高い。MHCドメインポリペプチドの変異体は、標準的方法を用いてアラインメントした場合、比較的高度の配列同一性を有することになる。(「MHCドメインポリペプチド」とは、MHCクラスIIポリペプチドのα1もしくはβ1ドメインまたはMHCクラスIポリペプチドのα1もしくはα2ドメインを意味する)。
【0036】
比較のための配列アライメントの方法は、当技術分野ではよく知られている。Altschulら(1994)は、配列アライメント法および相同性計算の詳細な考察を提示している。NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschulら、1990)は配列分析プログラムblastp、blastn、blastx、tblastnおよびtblastxと関連して用いるために、National Center for Biotechnology Information(NCBI、メリーランド州ベゼスタ)を含むいくつかの供給源から、およびインターネット上で入手可能である。http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/でアクセス可能である。このプログラムを用いてどのように配列同一性を決定するかの説明は、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/blast_help.htmlに示されている。
【0037】
MHCドメインポリペプチドの変異体は一般に、NCBI Blast 2.0、デフォルトパラメーターに設定されたギャップドblastpを用い、本来のMHCドメインポリペプチドのアミノ酸配列との全長アライメントにより計算して少なくとも50%の配列同一性を有していることを特徴とする。参照配列に対するさらに高い類似性を有する蛋白質は、この方法によって評価すると、少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも90%または少なくとも95%の配列同一性などの、漸増する同一性パーセンテージを示すことになる。完全な配列よりも短いものを配列同一性について比較する場合、変異体は一般に10〜20のアミノ酸のショートウィンドウにより少なくとも75%の配列同一性を有することになり、参照配列に対するその類似性に応じて少なくとも85%または少なくとも90%もしくは95%の配列同一性を有することもある。このようなショートウィンドウによって配列同一性を決定する方法は、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/blast_FAQs.htmlに説明されている。MHCドメインポリペプチドの変異体は、本来のポリペプチドの生物活性も保持している。本発明の目的のために、この活性は、下記に詳細に記述されるとおり、変異体ドメインを適当なβ1α1またはα1α2ポリペプチドに組み込み、インビトロで得られたポリペプチドの抗原特異的T細胞の増殖を阻害する能力を調べることによって、都合よく評価される。
【0038】
リンカー配列:リンカー配列は2つのポリペプチドドメインを共有結合により連結するアミノ酸配列である。リンカー配列は、本発明の組換えMHCポリペプチドに含まれて、連結されたポリペプチドドメインに回転の自由を与え、それにより適当なドメインの折りたたみ構造とドメイン間およびドメイン内結合を促進することができる。一例として、Ag-β1-α1(Ag=抗原)を含む組換えポリペプチドにおいて、リンカー配列はAgとβ1ドメインとの間およびβ1とα1ドメインとの間の両方に提供されうる。一般にアミノ酸2個から25個までの長さのリンカー配列は、当技術分野において周知で、Chaudharyら(1989)によって記載されているグリシン(4)-セリンスペーサー(GGGGSx3)を含む。
【0039】
本発明の組換えMHCクラスIα1α2ポリペプチドは、α1ドメインのカルボキシ末端とα2ドメインのアミノ末端を連結する共有結合を含む。本来のMHCクラスIα鎖のα1およびα2ドメインは一般に、アミノ酸リンカー配列によりこの配向で共有結合されている。この本来のリンカー配列が組換え構築物において維持されてもよい。または、組換えリンカー配列をα1とα2ドメインの間に(本来のリンカー配列の代わりに、またはそれに加えて)導入することもできる。
【0040】
この他の分子遺伝学において一般的に用いられる用語の定義は、Oxford University Press発行のBenjamin Lewin、Genes V、1994(ISBN 0-19-854287-9);Blackwell Science Ltd.発行のKendrewら編、The Encyclopedia of Molecular Biology、1994(ISBN 0-632-02182-9);およびVCH Publishers, Inc.発行のRobert A. Meyers編、Molecular Biology and Biotechnology: a Comprehensive Desk Reference、1995(ISBN 1-56081-569-8)に見いだすことができる。
【0041】
以下の項に、本発明の組換えMHC分子の設計、発現および使用についての詳細な手引きが提供される。特に記載がない限り、本発明においては分子生物学、生化学および免疫学の標準的方法が用いられる。このような標準的方法は、Sambrookら(1989)、Ausubelら(1987)、Innisら(1990)およびHarlowおよびLane(1988)に記載されている。本発明に関連する他の背景および技術的情報を提供するために、MHC分子の通常の処方物およびその使用に関する下記の米国特許が参照として本明細書に組み入れられる:第5130297号、第5194425号、第5260422号、第5284935号、第5468481号、第5595881号、第5635363号、第5734023号。
【0042】
2. 組換え MHC クラス II β 1 α 1 分子の設計
哺乳動物MHCクラスIIαおよびβ鎖蛋白質のアミノ酸配列、ならびにこれらの蛋白質をコードする核酸は、当技術分野において周知で、GenBankを含む多数の供給源から入手することができる。例示的配列が、Auffrayら(1984)(ヒトHLA DQα)、Larhammarら(1983)(ヒトHLA DQβ)、Dasら(1983)(ヒトHLA DRα)、Tonnelleら(1985)(ヒトHLA DRβ)、Lawranceら(1985)(ヒトHLA DPα)、Kellyら(1985)(ヒトHLA DPβ)、Syhaら(1989)(ラットRT1.Bα)、Syha-Jedelhauserら(1991)(ラットRT1.Bβ)、Benoistら(1983)(マウスI-Aα)、Estessら(1986)(マウスI-Aβ)に提示されている。
【0043】
本発明の組換えMHCクラスII分子は、MHCクラスIIα鎖のα1ドメインに共有結合したMHCクラスIIβ鎖のβ1ドメインを含む。このβ1およびα1ドメインは哺乳動物MHCクラスII蛋白質において明確に規定されている。一般に、α1ドメインは成熟α鎖のおよそ1位〜90位の残基を含むと考えられている。MHCクラスII蛋白質のα1とα2ドメインの間の本来のペプチドリンカー領域は、検討中の具体的なα鎖に応じて、α鎖のおよそ76位からおよそ93位のアミノ酸までである。したがって、α1ドメインはα鎖のおよそ1位〜90位のアミノ酸残基を含みうるが、当業者であれば、このドメインのC末端カットオフは必ずしも正確に規定されておらず、例えば、α鎖の70位〜100位のアミノ酸残基の間のどの点でも起こりうることを理解すると思われる。これらのパラメーター以外にも、哺乳動物の種や問題となる特定のα鎖によって、α1ドメインの組成も変わることがある。当業者であれば、アミノ酸配列の正確な数のパラメーターは、ドメイン機能の維持に比べて重要性がずっと低いことを理解すると思われる。
【0044】
同様に、β1ドメインは一般に成熟β鎖のおよそ1位〜90位の残基を含むと考えられている。MHCクラスII蛋白質のβ1とβ2ドメインの間のリンカー領域は、検討中の具体的なβ鎖に応じて、β鎖のおよそ85位からおよそ100位のアミノ酸までである。したがって、β1蛋白質はおよそ1位〜100位のアミノ酸残基を含みうるが、当業者であればやはり、このドメインのC末端カットオフは必ずしも正確に規定されておらず、例えば、β鎖の75位〜105位のアミノ酸残基の間のどの点でも起こりうることを理解すると思われる。これらのパラメーター以外にも、哺乳動物の種や問題となる特定のβ鎖によって、β1ドメインの組成も変わることがある。ここでも当業者であれば、アミノ酸配列の正確な数のパラメーターは、ドメイン機能の維持に比べて重要性がずっと低いことを理解すると思われる。ヒト、ラットおよびマウス由来の例示的なβ1α1分子を図10に示す。
【0045】
これらのドメインをコードする核酸分子は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による増幅などの標準的手段によって産生することができる。これらのドメインをコードするオープンリーディングフレームを増幅するためにプライマーを設計するための標準的なアプローチを用いることもできる。これらのドメイン増幅に適したライブラリには、例えば、問題となる哺乳動物種から調製したcDNAライブラリが含まれる。このようなライブラリは市販されているか、または標準的な方法によって調整することができる。したがって、例えば、β1およびα1ポリペプチドをコードする構築物を次の4つのプライマーを用いたPCRによって産生することができる。すなわち、β1コード領域の5'および3'末端に対応するプライマーB1およびB2と、α1コード領域の5'および3'末端に対応するプライマーA1およびA2である。α1およびβ1ドメインコード領域のPCR増幅に続き、これら増幅された核酸分子をそれぞれ標準的なクローニングベクターにクローニングしてもよく、または分子同士をライゲートし、次いで適当なベクターにクローニングしてもよい。2つのコード領域の簡便なクローニングを促進するために、制限エンドヌクレアーゼ認識部位をPCRプライマー中に設計することもできる。例えば、プライマーB2およびA1はそれぞれ、増幅および選択された制限酵素による消化の後に、増幅された断片同士が容易にライゲートできるような適当な部位を含むこともできる。加えて、プライマーB1およびA2はそれぞれ、選択されたベクターのポリリンカー部位へのクローニングを容易にするために制限酵素切断部位を含むことができる。2つのドメインコード領域のライゲーションは、コード領域が機能的に結合される、すなわちオープンリーディングフレームを維持するように実施する。増幅されたコード領域を別々にクローニングする場合、引き続き断片をクローニングベクターから遊離し、ライゲーションの準備としてゲル精製することができる。
【0046】
特定の態様において、ペプチドリンカーはβ1とα1ドメインとの間に提供される。一般に、このリンカーはアミノ酸2個から25個の長さで、各ドメインがその本来の配座に自由に折りたたまれるように、ドメイン間の柔軟性を与えるはたらきをする。このリンカー配列は、リンカー配列をコードするためのPCRプライマーを設計することによって簡便に提供される。したがって、前述の例において、リンカー配列はB2もしくはA1プライマーの一つ、またはこれらプライマーそれぞれの組み合わせによってコードされうる。
【0047】
3. 組換え MHC クラス I α 1 α 2 分子の設計
哺乳動物MHCクラスIα鎖蛋白質のアミノ酸配列、ならびにこれらの蛋白質をコードする核酸は、当技術分野において周知で、GenBankを含む多数の供給源から入手することができる。例示的配列が、Broningら(1995)(ヒトHLA-A)、Katoら(1993)(ヒトHLA-B、Steinleら(1992)(ヒトHLA-C)、Walterら(1995)(ラットIa)、Walterら(1994)(ラットIb)、Kressら(1983)(マウスH-2-K)、Schepartら(1986)(マウスH-2-D)、およびMooreら(1982)(マウスH-2-I)に提示されている。
【0048】
本発明の組換えMHCクラスI分子は、MHCクラスIα鎖のα2ドメインに共有結合したMHCクラスIα鎖のα1ドメインを含む。これら2つのドメインは哺乳動物MHCクラスI蛋白質において明確に規定されている。一般に、α1ドメインは成熟α鎖のおよそ1位〜90位の残基を含み、α2鎖はおよそ90位〜180位のアミノ酸残基を含むと考えられているが、やはりカットオフポイントは正確には規定されておらず、異なるMHCクラスI分子の間で変わることになる。MHCクラスIα蛋白質のα2とα3ドメインの間の結合は一般に、成熟α鎖の179位〜183位のアミノ酸領域で起こる。これらのパラメーター以外にも、哺乳動物の種や問題となる特定のα鎖によって、α1およびα2ドメインの組成も変わることがある。当業者であれば、アミノ酸配列の正確な数のパラメーターは、ドメイン機能の維持に比べて重要性がはるかに低いことを理解すると思われる。例示的なα1α2分子を図11に示す。
【0049】
α1α2構築物は、1位のアミノ酸と179位〜183位のアミノ酸との間の2ドメイン(α1とα2)領域をコードするリーディングフレームを増幅することによって最も簡便に構築することができるが、当業者であれば、これらの終点にはいくらかの変動が可能であることを理解すると思われる。このような分子には、α1とα2ドメインの間の本来のリンカー領域が含まれるが、必要に応じて、このリンカー領域を除去し、合成リンカーペプチドに置換することもできる。クラスIIβ1およびα1ドメインに関連して前述したとおり、MHCクラスIα1およびα2ドメインを増殖し、クローニングするために一般的考察が適用される。
【0050】
4. β 1 α 1 およびα 1 α 2 分子に対する抗原性ポリペプチドの遺伝的結合
本発明のクラスIIβ1α1およびクラスIα1α2ポリペプチドは一般に抗原性ペプチドと共に用いられる。クラスIまたはクラスII MHC分子と共有結合し、T細胞によって認識されるいかなる抗原性ペプチドも、この目的のために用いることができる。ミツバチ毒アレルゲン、チリダニアレルゲン、細菌によって産生される毒素(破傷風毒素など)および自己免疫疾患に関与するヒト組織抗原に由来する抗原性ペプチドを含む、いくつかの原料由来の抗原性ペプチドが詳細に特徴付けられている。このようなペプチドについての詳細な議論が、米国特許第5595881号、第5468481号および第5248935号に記載されている。例示的なペプチドには、慢性関節リウマチ(II型コラーゲン)、重症筋無力症(アセチルコリン受容体)、および多発性硬化症(ミエリン塩基性蛋白質)の病因において同定されたものが含まれる。
【0051】
当技術分野ではよく知られているとおり(例えば米国特許第5468481号参照)、APC表面のMHC複合体における抗原の提示は一般に、完全な抗原性ペプチドを必要としない。むしろ、β1とα1ドメイン(MHC IIの場合)またはα1とα2ドメイン(MHC Iの場合)の間の溝にあるペプチドは一般に、完全な抗原性ペプチドの小さい断片である。JanewayおよびTravers(1997)に論じられているとおり、MHCクラスI分子のペプチド溝に位置するペプチドは、結合ポケットのサイズによって制約を受けており、一般的にはアミノ酸8個〜15個の長さ、より一般的にはアミノ酸8個〜10個の長さである(しかし、考えられる例外については、Collisら、1994を参照のこと)。これとは対照的に、MHCクラスII分子のペプチド溝に位置するペプチドは、このような制約を受けないためにずっと大きいことが多く、一般的には少なくともアミノ酸13個の長さがある。MHC分子にのせるためのペプチド断片は、ペプチド合成機の使用などの標準的な手段によって調製することができる。
【0052】
本発明のβ1α1およびα1α2分子には、MHC分子へのペプチドの共有結合による方法を含む、いくつかの方法でペプチド抗原を「のせる」ことができる。これは、発現されたペプチドにおいて抗原性ペプチドドメインがβ1α1分子の場合にはβ1、またα1α2分子の場合にはα1のN末端に連結するように、選択されたペプチドをコードする核酸配列をMHC蛋白質をコードする構築物の5'末端に機能的に結合することによって簡便に達成することができる。この結果を得るための一つの便利な方法は、MHCコード領域を増幅するために用いるPCRプライマーに抗原をコードする配列を組み込むことである。一般に、リンカーペプチド配列をコードする配列は、抗原性ペプチドとMHCポリペプチドとをコードする分子の間に含まれることになる。前述のとおり、このようなリンカーペプチドの目的は、柔軟性を与え、ペプチドの適切な配座上の折りたたみを可能にすることである。抗原をMHCポリペプチドに連結するために、リンカーは抗原がMHCポリペプチドのペプチド溝に入り込めるだけの十分な長さがなくてはならない。ここでもまた、このリンカーはPCRプライマーに簡便に組み込むことができる。しかし、下記の実施例1に記載のとおり、抗原性ペプチドがMHCコード領域のちょうど5'末端にライゲートされる必要はない。例えば、抗原コード領域をMHCコード配列の5'末端の最初の数コドン(通常は最初の10コドン以内)に挿入してもよい。
【0053】
MHC分子への抗原性ペプチド連結のためのこの遺伝システムは、異なる抗原性ペプチドをのせたいくつかのMHC分子を産生しようとする際に特に有用である。前述のシステムによれば、MHCコード領域の5'末端(すなわち、β1α1をコードする構築物の場合にはβ1の5'末端で、α1α2をコードする構築物の場合にはα1の5'末端)に独特の制限酵素切断部位を持つ発現ベクターを構築することができる。このような構築物に関連して、各抗原コード領域が選択された制限酵素部位に隣接する、抗原性ペプチドをコードする配列のライブラリを作製する。次いで、特定の抗原のMHC分子への結合は、(a)抗原コード領域を選択された制限酵素によって遊離する、(b)MHC構築物を同じ制限酵素によって切断する、(c)抗原コード領域をMHC構築物にライゲートすることによって、簡便に実施される。このやり方で、短時間に多数のMHC-ポリペプチド構築物を作製し、発現させることができる。
【0054】
β1α1分子において抗原性ペプチドの単純な交換を可能にする発現カセットの例示的設計を図1に示す。図1Aは、抗原性ペプチドを持たない、ラットMHCクラスII RT1.B由来の基本型β1α1分子をコードする核酸配列を示す。β1ドメインの5位と6位(セリンとプロリン)の残基の間にあるペプチドおよびリンカー挿入部位の位置を黒塗りの逆三角形記号で示している。抗原コード領域を組み込むために、図1A構築物挿入部位の3'から追加の塩基を連結した図1Bに示す配列を含むPCRプライマーを、図1Aに示す構築物の3'末端から読むPCRプライマーと共に用いる。増幅により、β1α1構築物に組み込まれた図1Bに示す配列を含む(すなわち、β1α1配列の5位と6位アミノ酸残基をコードするコドンの間に位置する抗原性ペプチドおよびリンカー配列を持つ)生成物が得られる。図に示す例では、抗原性ペプチドはMBP-72-89抗原である。
【0055】
特に、MBP-72-89をコードする配列は独特のNcoIおよびSpeI制限酵素切断部位に隣接している。これらの酵素は、MBP-72-89コード領域を遊離し、他の抗原のコード領域、例えば図1Cおよび1Dに示すものと置き換えるために用いることができる。
【0056】
発現された、抗原を共有結合により連結したβ1α1ポリペプチドの構造を図2Bに示す。図2Aは、完全なRT1B分子(α1、α2、β1およびβ2ドメインを含む)の二次構造を示す。
【0057】
前述の説明のとおりに設計した発現カセットを含む核酸発現ベクターは、研究目的のために特に有用と考えられる。このようなベクターは一般に、抗原性ポリペプチドをコードする配列が共有結合されうるような、MHCコード領域の5'末端に提供される独特の制限酵素切断部位を有する2ドメインMHCポリペプチド(β1α1またはα1α2)をコードする配列を含む。このようなベクターは一般に、配列の高度の発現を提供するために、MHCコード領域の5'末端に機能的に結合されたプロモーターをも含む。
【0058】
β1α1およびα1α2分子は、ペプチドを結合せずに発現および精製することもでき(下記のセクション5で述べるとおり)、その場合、これらは「空」と呼ばれる。次いで空のMHC分子に、下記のセクション6に記載のとおり、選択されたペプチドをのせることができる。
【0059】
5. 組換えβ 1 α 1 およびα 1 α 2 分子の発現および精製
本発明のMHCポリペプチドをコードする核酸は、その最も基本的な形において、A-Bの構造を有する第一および第二の領域を含むが、ただしクラスI分子の場合には領域AはクラスIα1ドメインをコードし、領域BはクラスIα2ドメインをコードする。クラスII分子では、AはクラスIIβ1ドメインをコードし、BはクラスIIα1ドメインをコードする。リンカー配列が含まれる場合、核酸はB-L2-Aと表すことができ、ただしL2はリンカーペプチドをコードする核酸配列である。抗原性ペプチドがMHCポリペプチドに共有結合している場合、この複合体をコードする核酸分子はP-B-Aと表すことができる。コード配列がP-L2-B-L1-Aで表されるように、第二のリンカー配列が抗原性蛋白質と領域Bのポリペプチドとの間に提供されてもよい。いずれの場合にも、MHCポリペプチド(すなわち、L1、L2、B、AおよびP)を含む様々な核酸配列は、エレメントが単一のリーディングフレームに位置するように、機能的に結合される。
【0060】
これらのMHCポリペプチドを発現する核酸構築物は、プロモーター(Pr)、エンハンサーおよび3'調節領域などの調節エレメントを含んでいてもよく、その選択は蛋白質を発現する細胞の型に基づいて決定されることになる。プロモーター配列がオープンリーディングフレームに機能的に結合される場合、配列はPr-B-A、または(抗原コード領域が含まれる場合には)Pr-P-B-Aと表すことができ、ここでPrはプロモーター配列を意味する。プロモーター配列はこれらの配列のPまたはB成分に機能的に結合され、B-AまたはP-B-A配列は単一のオープンリーディングフレームを含む。この構築物を、選択した細胞型においてMHCポリペプチドを発現するのに適したベクター中に導入する。
【0061】
ポリペプチドの発現および精製のために多数の原核細胞および真核細胞システムが公知である。例えば、ポリペプチドをコードする構築物の上流に強力で調節されたプロモーターおよび有効なリボソーム結合部位を置くことによって、原核細胞中で異種ポリペプチドを産生することができる。適当なプロモーター配列には、β-ラクタマーゼ、トリプトファン(trp)、‘ファージT7およびλPLプロモーターが含まれる。細菌において異種蛋白質を産生するための方法およびプラスミドベクターがSambrookら(1989)に記載されている。大量のβ2m融合蛋白質を発現するのに適した原核細胞には、大腸菌および枯草菌が含まれる。しばしば、高レベルで発現された蛋白質が不溶性の封入体において認められる。これらの凝集体から蛋白質を抽出する方法がSambrookら(1989)(17章)に記載されている。原核細胞におけるMHCポリペプチドの組換え発現は、別法として融合蛋白質の最適な発現と精製のために設計された市販のシステムを用いて都合よく得ることもできる。このような融合蛋白質は、一般に精製を容易にする蛋白質タグを含む。このようなシステムの例には、pMAL蛋白質融合および精製システム(New England Biolabs, Inc.、マサチューセッツ州ベバリー)、GST遺伝子融合システム(Amersham Pharmacia Biotech, Inc.、ニュージャージー州ピスカタウェイ)、およびpTrcHis発現ベクターシステム(Invitrogen、カリフォルニア州カールスバッド)が含まれる。例えば、pMAL発現システムは、発現した蛋白質にマルトース結合蛋白質を付加するベクターを利用する。融合蛋白質は大腸菌中で発現され、これをアミロースカラムを用いて細胞粗抽出物から精製する。必要があれば、第Xa因子などの適当なプロテアーゼを用いた処理によって、マルトース結合蛋白質ドメインを融合蛋白質から切断することができる。次いで、第二のアミロースカラムを通すことによって、マルトース結合断片を調製物から除去することができる。
【0062】
MHCポリペプチドはまた、Invitrogen(カリフォルニア州カールスバッド)によって生産されているピヒア・パストリス(Pichia pastoris)、ショウジョウバエ(Drosophila)、バキュロウイルスおよびシンドビス発現システムを含む、真核細胞発現システムにおいても発現されうる。チャイニーズハムスター卵巣(CHO)、サル腎臓(COS)、HeLa細胞、スポドプテラ・フルジペルダ(Spodoptera frugiperda)、およびサッカロミセス・セレビジエ(Saccharomyces cerevisiae)などの真核細胞も、MHCポリペプチドを発現するために用いることができる。これらの細胞において用いるのに適した調節領域には、哺乳動物の場合にはCMV、アデノウイルスおよびSV40などからのウイルスプロモーターが含まれ、酵母細胞の場合には3-ホスホグリセリン酸キナーゼおよびアルコールデヒドロゲナーゼのプロモーターが含まれる。
【0063】
DNAの真核細胞、特にヒトまたは他の哺乳動物細胞への移入は、今日では通常の技法である。ベクターを純粋なDNAとして、例えばリン酸カルシウムもしくはリン酸ストロンチウムによる沈降、電気穿孔法、リポフェクション、DEAEデキストラン、微量注入法、プロトプラスト融合、または微量遺伝子銃によって、レシピエント細胞に導入する(トランスフェクション)。または、核酸分子をウイルスベクターを用いた感染によって導入することもできる。例えば、レトロウイルス、アデノウイルス、またはヘルペスウイルスを用いるシステムが開発されている。
【0064】
哺乳動物細胞で産生されたMHCポリペプチドを、蛋白質を上清中に遊離した後に抽出し、抗MHC抗体を用いて調製した免疫親和性カラムを用いて精製することもできる。または、MHCポリペプチドを、例えばb-グロビンとのキメラ蛋白質として発現させてもよい。その後、b-グロビンに対する抗体を用いてキメラ蛋白質を精製する。次いで、b-グロビン遺伝子とMHCポリペプチドをコードする核酸配列との間に設計した対応するプロテアーゼ切断部位を用いて、翻訳後に2つのポリペプチド断片をお互いに分離する。b-グロビンキメラ蛋白質生成のための一つの有用な発現ベクターはpSG5(Stratagene、カリフォルニア州ラホヤ)である。
【0065】
原核細胞においてMHCポリペプチドを発現させると、グリコシル化されていないポリペプチドを生じることになる。天然のグリコシル化標的部位でのポリペプチドのグリコシル化は、哺乳動物細胞などの適当な真核細胞発現システムでポリペプチドを発現させることにより達成することができる。
【0066】
発現した蛋白質の精製は、一般に6Mの尿素を含む塩基性溶液(一般にはpH10付近)中で実施する。次いで、精製した蛋白質の折りたたみは、中性pHの緩衝溶液(一般にはおよそpH7.4のリン酸緩衝食塩水(PBS))に対する透析によって達成される。
【0067】
6. 空のβ 1 α 1 およびα 1 α 2 分子への抗原の結合
β1α1およびα1α2分子を空の形(すなわち、抗原性ペプチドが結合していない状態)で発現および精製した場合、抗原性ペプチドを標準の方法を用いて分子にのせることができる。抗原性ペプチドをMHC分子にのせるための方法は、例えば、米国特許第5468481号に記載されている。このような方法には、精製したMHC分子と精製した抗原調製物との単純な共インキュベーションが含まれる。
【0068】
一例として、空のβ1α1分子(1mg/ml、40μM)を10倍過剰モル濃度のペプチド(1mg/ml、400μM)と室温で24時間インキュベートすることにより載せることができる。その後、余分な非結合ペプチドを、PBSに対して4℃で24時間透析することにより除去することができる。当技術分野において公知のとおり、β1α1へのペプチドの結合を、放射性標識したペプチドを用いたシリカゲル薄層クロマトグラフィ(TLC)によって定量することができる。このような定量に基づき、望ましい結果を得るために結合処理(loading)を変えることもできる(例えば、ペプチドの過剰モル濃度またはインキュベーションの時間を変えることにより)。
【0069】
7. その他の考察
a. 配列の変異
前述の記載は、天然のMHCクラスIおよびクラスII分子と、これらの分子の様々なドメインを例として用いているが、当業者であれば、これらの分子およびドメインの変異体を前述と同じ方法で作製し、使用できることを理解すると思われる。したがって、本明細書においてMHCポリペプチドまたは分子のドメイン(例えば、MHCクラスIIβ1ドメイン)への言及は、言及された分子の天然型、ならびに天然型アミノ酸配列に基づくが一つまたは複数のアミノ酸配列の変異を含む分子の両方を含む。このような変異ポリペプチドは、天然分子とのアミノ酸配列の同一性の程度においても定義することができる。一般に、MHCドメイン変異体は、天然のMHCドメインの配列と少なくとも80%の配列同一性を有する。より高度に保存された変異体は、天然の配列と少なくとも90%または少なくとも95%の配列同一性を有する。MHCドメインポリペプチドの変異体はまた、天然のポリペプチドの生物活性も保持する。本発明の目的のために、下記に詳細に記載するとおり、変異ドメインを適当なβ1α1またはα1α2ポリペプチドに組み込み、得られたポリペプチドのインビトロにおける抗原特異的T細胞増殖を阻害する能力を調べることによって、その活性が簡便に評価される。
【0070】
変異MHCドメインポリペプチドには、天然のMHCポリペプチド配列とアミノ酸配列が異なるが、特定の生物活性は保持している蛋白質が含まれる。このような蛋白質は、例えば部位特異的変異誘発またはポリメラーゼ連鎖反応によって、そのドメインをコードする分子の核酸配列を操作することにより産生することができる。最も単純な改変には、類似の生化学的性質を有するアミノ酸の一つまたは複数のアミノ酸との置換が含まれる。これらのいわゆる保存的置換基は、得られる蛋白質の活性に対して非常に小さい影響しか与えないと考えられる。表1は、蛋白質において元のアミノ酸と置き換えることができ、保存的置換基と考えられるアミノ酸を示す。
【0071】
【表1】
【0072】
生物学的機能または他の特徴における、より実質的な変化は、表1に示したものよりも保存性が低い置換基を選択する、すなわち、(a)置換部位におけるポリペプチド骨格構造、例えばシートもしくはらせん配座としての構造、(b)標的部位における分子の電荷もしくは疎水性、または(c)側鎖のかさ(bulk)の維持に対する影響により有意な差がある残基を選択することによって得ることができる。一般に蛋白質の性質において最大の変化を生じることが予想される置換基は、(a)疎水性残基、例えばロイシル、イソロイシル、フェニルアラニル、バリルまたはアラニルの代わりに親水性残基、例えばセリルまたはスレオニルが置換されている(もしくはその逆)、(b)システインまたはプロリンが任意の他の残基でもその代わりに置換されている(もしくはその逆)、(c)電気的陰性残基、例えばグルタミルまたはアスパルチルの代わりに電気的陽性側鎖を有する残基、例えばリシル、アルギニル、またはヒスチジルが置換されている(もしくはその逆)、(d)側鎖を持たない残基、例えばグリシンの代わりにかさ高い側鎖を有する残基、例えばフェニルアラニンが置換されている(もしくはその逆)ような置換基であると考えられる。これらのアミノ酸置換または欠失または付加の影響は、前述のT細胞増殖解析法の使用によって評価することができる。
【0073】
核酸レベルにおいて、当業者であれば、クラスIおよびII MHCドメインをコードする天然の核酸配列を発現ベクターにおいて使用することができるが、本発明はそのような配列に制限されないことを理解すると思われる。機能性MHCドメインをコードするいかなる配列も使用することができるが、核酸配列をそれが発現される生物のコドン使用頻度に適合するよう改変することもできる。
【0074】
b. 検出可能マーカーの組込み
一定のインビボおよびインビトロにおける適用のために、本発明のMHC分子を検出可能な標識に結合することができる。放射性核種(例えば、インジウム111などのγ放出線源)、常磁性同位体、蛍光マーカー(例えば、フルオレセイン)、酵素(アルカリ性ホスファターゼなど)、補助因子、化学発光化合物および生物発光化合物を含む、広範にわたる検出可能な標識が公知である。このような標識のMHCポリペプチドへの結合は、標準的方法を用いて達成される。米国特許第5734023号は、このような標識を用いたMHCポリペプチド誘導体の標識に関する広汎な考察を含む。検出可能マーカーを、方向を特定した様式で(すなわち、無作為に結合するのでなく)MHC分子に共有結合させようとする場合、マーカーは一般に、N末端に連結されたペプチド抗原による干渉を最小限にするために分子のC末端に連結することになる。
【0075】
c. 毒性部分の結合
開示されるMHCポリペプチドの一定の使用、特に一定のT細胞集団の除去を意図したインビボでの治療への適用のために、このポリペプチドを毒性部分と結合させることができる。蛋白質毒素、化学療法剤、細胞毒性T細胞表面分子に対する抗体、リパーゼ、および「硬い」例えばβ放射線を放出する放射性同位体を含む、T細胞機能を破壊するのに適した多数の毒性部分が公知である。このような毒素、および毒素をMHC分子に結合させる方法の例が、米国特許第5284935号に記載されている。蛋白質毒素には、リシン、ジフテリアおよびシュードモナス毒素が含まれる。化学療法剤には、ドキソルビシン、ダウノルビシン、メトトレキセート、サイトトキシンおよびアンチセンスRNAが含まれる。イットリウム90、リン32、鉛212、ヨウ素131、またはパラジウム109などの放射性同位体も用いることができる。毒性部分を、方向を特定した様式で(すなわち、無作為に結合するのでなく)MHC分子に共有結合させようとする場合、毒性部分は一般に、N末端に連結されたペプチド抗原による干渉を最小限にするために分子のC末端に連結することになる。
【0076】
d. 薬学的製剤
動物への投与のために、本発明の精製したMHCポリペプチドを一般に薬学的に許容される担体に結合させる。一般に、担体の特性は使用する具体的な投与様式に応じて異なると考えられる。例えば、非経口製剤は通常、水、生理食塩水、緩衝塩類溶液、デキストロース水溶液、グリセロールなどの薬学的および生理学的に許容される液体を賦形剤として含む注射可能な液体を含む。固形組成物(例えば、粉末、丸剤、錠剤、またはカプセル型)では、通常の非毒性固形担体は、例えば、医薬品等級のマンニトール、ラクトース、デンプン、またはステアリン酸マグネシウムを含みうる。生物学的に中性の担体に加えて、投与される薬学的組成物は、例えば酢酸ナトリウムまたはモノラウリン酸ソルビタンといった、湿潤剤または乳化剤、保存剤、およびpH緩衝剤などの微量の非毒性補助物質を含みうる。
【0077】
当技術分野においては公知のとおり、蛋白質を主薬とする製剤は経口摂取では非効率的な送達しかされないことがある。しかし、薬学的蛋白質の丸剤形は、特に徐放性組成物として処方されている場合には、経口の代わりに皮下に投与することができる。徐放性製剤は、標的蛋白質を、コレステロールなどの生体適合性基質と組み合わせることによって製造することができる。もう一つの可能な蛋白質製剤投与法は、ミニ浸透圧ポンプの使用によるものである。この送達法においても、前述のとおり、生体適合性担体が用いられることになる。さらに別の可能な送達法には、吸入による深部肺送達(Edwardsら、1997;Service、1997)および経皮送達(Mitragotriら、1996)が含まれる。
【0078】
本発明のMHCポリペプチドはまた、核酸の形で細胞に送達され、続いて宿主細胞によって翻訳されうることも企図されている。これは、例えば、ウイルスベクターまたはリポソームを使用することによって実施することができると考えられる。リポソームはポリペプチドの直接送達にも用いることができると考えられる。
【0079】
本発明の薬学的組成物は、その意図された目的を達成するいかなる手段によっても投与することができる。選択されたMHCポリペプチドの投与量および投与計画は、主治医によって決定されることになる。治療上の適用における有効用量は、治療しようとする状態の性質および重篤度、選択されたMHCポリペプチドの種類、患者の年齢および状態、ならびに他の臨床上の因子に応じて異なると考えられる。一般に、用量の範囲は約0.1μg/kg体重〜約100mg/kg体重までである。他の適当な範囲には、約100μg/kg〜1mg/kg体重の用量が含まれる。投与スケジュールは、蛋白質に対する対象者の感受性など、いくつかの臨床上の因子に応じて1週間に1回から毎日まで変動しうる。投与スケジュールの例としては、3μg/kgを1週間に2回、1週間に3回もしくは毎日;7μg/kgの用量を1週間に2回、1週間に3回もしくは毎日;10μg/kgの用量を1週間に2回、1週間に3回もしくは毎日;または30μg/kgの用量を1週間に2回、1週間に3回もしくは毎日投与するものがある。
【0080】
8. 組換えβ 1 α 1 およびα 1 α 2 分子の例示的適用例
本発明のクラスIIβ1α1およびクラスIα1α2ポリペプチドは、広範なインビトロおよびインビボでの適用例において有用である。事実、これらのポリペプチドの生物活性の結果、無傷の精製MHC分子またはMHC分子を発現する抗原提示細胞の代わりに、多くの適用において用いることができる。
【0081】
開示されるポリペプチドのインビトロでの適用例には、抗原特異的T細胞の検出、定量および精製が含まれる。これらの目的のために様々な形態のMHC由来複合体を使用する方法は周知で、例えば米国特許第5635363号および第5595881号に記載されている。このような適用例において、開示されるポリペプチドは溶液中で遊離していてもよく、またはプラスチック製の皿、マイクロタイタープレート、メンブレン、またはビーズの表面などの固形支持体に結合していてもよい。典型的には、このような表面はプラスチック、ナイロンまたはニトロセルロースである。遊離溶液中のポリペプチドは、蛍光活性化細胞選択装置(FACS)などの適用例で有用である。抗原特異的T細胞の検出および定量のために、ポリペプチドは好ましくは蛍光マーカーなどの検出可能マーカーで標識される。
【0082】
検出、定量または他の操作をしようとするT細胞は概して、患者から採取した生体試料中に存在する。生体試料は一般に血液またはリンパであるが、リンパ節、腫瘍、関節などの組織試料である場合もある。試料中のT細胞を操作するために用いられる方法の正確な詳細は、実施しようとする操作の種類や、生体試料およびMHC分子両方の物理的形状に応じて異なることが理解されると思われる。しかし、一般的には、β1α1/ペプチド複合体またはα1α2/ペプチド複合体を生体試料に添加し、混合物を十分な時間(例えば約5分から最高で数時間)インキュベートして結合させる。MHC/ペプチド複合体に結合したT細胞の検出および定量は、MHC/ペプチドが蛍光標識を含む場合の蛍光顕微鏡法およびFACSを含む、いくつかの方法によって実施することができる。MHC/ペプチド複合体が固形支持体に結合している場合、ELISAおよびRIAなどの標準的なイムノアッセイも、T細胞-MHC/ペプチド複合体を定量するために用いることができる。抗原特異的T細胞集団の定量は、疾患の経過のモニターにおいて特に有用であると思われる。例えば、多発性硬化症の患者において、MBP反応性T細胞の数を減少させるために施した治療法の効果を、患者の体内に存在する該T細胞の数を定量するためにMHC/MBP抗原複合体を用いてモニターすることができる。同様に、癌患者における抗腫瘍T細胞の数を、MHC/腫瘍抗原複合体を用いて治療の経過を通して定量し、追跡することもできる。
【0083】
FACSは、T細胞-MHC/ペプチド複合体を生体試料から分離するためにも用いることができ、これは特定の抗原特異的T細胞集団を、濃縮させる目的などで試料から取り出す場合に特に有用であり得る。MHC/ペプチド複合体が磁気ビーズに結合されている場合、結合するT細胞集団はMiltenyiら(1990)によって記載されているとおりに精製することができる。一例として、養子免疫治療法の一環として、癌患者の血中の抗腫瘍T細胞をこれらの方法を用いて精製し、インビトロで増殖させ、患者に戻すこともできる。
【0084】
生体試料中の特定の抗原特異的T細胞集団を、試料を標的T細胞によって認識されるペプチドを含むMHC/ペプチド複合体と共にインキュベートすることによって、アネルギー状態にすることができる。したがって、これらの複合体が他の共刺激分子の非存在下でTCRに結合すると、T細胞でアネルギー状態が誘導される。このようなアプローチは、様々な自己免疫疾患などの標的T細胞集団が自己抗原を認識する状況において有用である。または、生体試料を毒性部分を結合したMHC/ペプチド複合体と共にインキュベートすることによって、標的T細胞集団を直接死滅させることもできる。
【0085】
T細胞を、本発明のポリペプチドによって抗原特異的に活性化することもできる。例えば、開示されている特定の抗原をのせたMHCポリペプチドを、プラスチック製の皿または磁気ビーズなどの固体表面に高密度で付着させることができる。T細胞を固体表面上のポリペプチドに曝露することにより、共刺激分子の非存在下にも関わらず、抗原特異的にT細胞を刺激し活性化することができる。この活性化に共刺激が不必要であるということは、MHC/ペプチド複合体に結合するT細胞上の十分な数のTCRに起因する可能性が高い。
【0086】
開示されるポリペプチドのインビボでの適用例には、抗原特異的T細胞によって媒介される状態の回復が含まれる。このような状態には、アレルギー、移植片拒絶反応ならびに多発性硬化症、慢性関節リウマチ、全身性エリテマトーデス、およびインスリン依存性真性糖尿病を含む自己免疫疾患が含まれる。他の研究者らが、これらの状態を治療するために用いることができる様々な形態のMHCポリペプチドについて記載しており、そのシステムで用いられる方法は本発明のMHCポリペプチドと同等に有用である。例示的方法が米国特許第5130297号、第5284935号、第5468481号、第5734023号および第5194425号に記載されている。一例として、自己反応性T細胞集団においてアネルギーを誘導するためにMHC/ペプチド複合体を患者に投与することができ、またはこれらのT細胞集団を毒性部分を結合したMHC/ペプチド複合体の投与によって処理することもできる。開示される分子はまた、癌および感染症などの特定の状態における免疫反応を増強するために用いることもできる。
【0087】
実施例
以下の実施例は本発明の特定の局面を例示するものである。
【0088】
実施例1: β 1 α 1 分子のクローニング、発現およびインビトロでの折りたたみ MHCクラスIIα1ドメインのアミノ末端がMHCクラスIIβ1ドメインのカルボキシ末端に遺伝的に連結された一本鎖のポリペプチド鎖をコードする原型の核酸構築物を作製した。ラットRT1Bαおよびβ鎖cDNAから作製した、この原型構築物の配列を図1Aに示す(配列番号:1)。
【0089】
cDNAをコードするRT1Bα1およびβ1ドメインを、Konrad Reske博士、ドイツ連邦共和国マインツからご供与いただいた、クローニングされたRT1.Bαおよびβ鎖cDNAコード配列(それぞれα6、β118)のPCR増幅によって調製した(Syhaら、1989;Syha-Jedelhauserら、1991)。β1合成のために用いたプライマーは5'-AATTCCTCGAGATGGCTCTGCAGACCCC-3'(XhoI 5'プライマー)(配列番号:9);5'-TCTTGACCTCCAAGCCGCCGCAGGGAGGTG-3'(3'ライゲーションプライマー)(配列番号:10)であった。α1合成のために用いたプライマーは5'-CGGCGGCTTGGAGGTCAAGACGACATTGAGG-3'(5'ライゲーションプライマー)(配列番号:11);5'-GCCTCGGTACCTTAGTTGACAGCTTGGGTTGAATTTG-3'(KpnI 3'プライマー)(配列番号:12)であった。用いた他のプライマーは5'-CAGGGACCATGGGCAGAGACTCCCCA-3'(NcoI 5'プライマー)(配列番号:13);および5'-GCCTCCTCGAGTTAGTTGACAGCTTGGGTT-3'(XhoI 3'プライマー)(配列番号:14)であった。第1段階はβ1およびα1ドメインをコードするcDNAの産生であった。PCRはTaqポリメラーゼ(Promega、ウィスコンシン州マディソン)を用い、鋳型としてβ118、プライマーとしてXhoI 5'プライマーおよび3'ライゲーションプライマー、ならびに鋳型としてα6 cDNA、プライマーとして5'ライゲーションプライマーおよびKpnI 3'プライマーを用い、94.5℃20秒の変性、55℃1.5分のアニーリング、および72℃1.5分の伸長を28サイクル行った。PCR産物をアガロースゲル電気泳動で単離し、Gene-Clean(Bio 101, Inc.、カリフォルニア州ラホヤ)を用いて精製した。
【0090】
第2段階において、これらの産物をプライマーを追加せずに混合し、94.5℃5分の熱変性後、94.5℃1分の変性、60℃2分のアニーリング、および72℃5分の伸長を2サイクル行った。第3段階において、アニーリングし、伸長した産物を94.5℃5分間熱変性させ、XhoI 5'プライマーおよびKpnI 3'プライマー存在下、94.5℃20秒の変性、60℃1分のアニーリングおよび72℃1分の伸長を26サイクル行った。最終PCR産物をアガロースゲル電気泳動によって単離し、Gene-Cleanによる精製を行った。これにより、β1α1分子をコードする656塩基対のcDNAが生成した。β1α1分子をコードするcDNAをクローニングベクターpCR2.1(Invitrogen、カリフォルニア州カールスバッド)中にInvitrogenの登録商標TAクローニングキットを用いてクローニングした。pCR2.1中のcDNAを鋳型として用い、NcoI 5'プライマーおよびXhoI 3'プライマーを用い、PCRを94.5℃20秒の変性、55℃1.5分のアニーリングおよび72℃1.5分の伸長28サイクルにて実施した。PCR産物を適当な制限酵素で切断し、pET21d+(Novagen、ウィスコンシン州マディソン;Studierら、1990)中に方向を特定してクローニングした。構築物をDNA塩基配列決定により確認した。これらの試験に用いるβ1α1分子は、β1ドメインQ12Rアミノ酸の置換を含む点で、野生型とは異なっている。
【0091】
ペプチド/リンカーカートリッジ(図1Aに示す)の挿入のために、下記のアプローチを用いた。210bpのペプチド/リンカーカートリッジを、XhoI 5'プライマーおよび配列:5'-GAAATCCCGCGGGGAGCCTCCACCTCCAGAGCCTCGGGGCACTAGTGAGCCTCCACCTCCGAAGTGCACCACTGGGTTCTCATCCTGAGTCCTCTGGCTCTTCTGTGGGGAGTCTCTGCCCTCAGTCC-3'(3'-MBP-72-89/リンカーライゲーションプライマー)(配列番号:15)および鋳型として元の完全長β118 cDNAを用いて増幅した。ペプチド/リンカーカートリッジcDNAのアニーリングのために5'末端に突出部分を持つ559bpのcDNAを、プライマー:5'-GCTCCCCGCGGGATTTCGTGTACCAGTTCAA-3'(5'ペプチド/リンカーライゲーションプライマー)(配列番号:16)、およびKpnI 3'プライマーおよび増幅用の鋳型として656bpのβ1a1 cDNAを用いて合成した。2つのcDNAのアニーリングおよび伸長を行った結果、完全長750bpのβ1a1/MBP-72-89構築物が得られた。NcoI 5'プライマーおよびXhoI 3'プライマーを用いたpET21d+(Novagen、ウィスコンシン州マディソン;Studierら、1990)にサブクローニングするために、β1a1およびβ1a1/MBP-72-89 cDNAの5'および3'末端の改変を行った。MBP-55-69/リンカーカートリッジを合成するために用いたプライマーは、5'-TATTACCATGGGCAGAGACTCCTCCGGCAAGGATTCGCATCATGCGGCGCGGACGACCCACTACGGTGGAGGTGGAGGCTCACTAGTGCCCC-3'(5'MBP-55-69プライマー)(配列番号:17)および5'-GGGGCACTAGTGAGCCTCCACCTCCACCGTAGTGGGTCGTCCGCGCCGCATGATGCGAATCCTTGCCGGAGGAGTCTCTGCCCATGGTAATA-3'(3'MBP-55-69プライマー)(配列番号:18)であった。これらをゲル精製し、アニーリングし、次いでNcoIおよびXhoIで消化したβ1a1/MBP-72-89へのライゲーションのためにNcoIおよびXhoIで切断して、β1a1/MBP-55-69共有結合構築物をコードするプラスミドを作製した。モルモットMBP-72-89/リンカーカートリッジを合成するために用いたプライマーは、5'-TATTACCATGGGCAGAGACTCCCCACAGAAGAGCCAGAGGTCTCAGGATGAGAACCCAGTGGTGCACTTCGGAGGTGGAGGCTCACTAGTGCCCC-3'(5'Gp-MBP-72-89プライマー)(配列番号:28)および5'-GGGGCACTAGTGAGCCTCCACCTCCGAAGTGCACCACTGGGTTCTCATCCTGAGACCTCTGGCTCTTCTGTGGGGAGTCTCTGCCCATGGTAAT-3'(3'Gp-MBP-72-89プライマー)(配列番号:29)であった。これらをゲル精製し、アニーリングし、次いでNcoIおよびXhoIで消化したβ1a1/MBP-72-89へのライゲーションのためにNcoIおよびXhoIで切断して、β1a1/Gp-MBP-72-89共有結合構築物をコードするプラスミドを作製した。CM-2/リンカーカートリッジを生成させるために用いたプライマーは、5'-TATTACCATGGGCAGAGACTCCAAACTGGAACTGCAGTCCGCTCTGGAAGAAGCTGAAGCTTCCCTGGAACACGGAGGTGGAGGCTCACTAGTGCCCC-3'(5'CM-2プライマー)(配列番号:19)および5'-GGGGCACTAGTGAGCCTCCACCTCCGTGTTCCAGGGAAGCTTCAGCTTCTTCCAGAGCGGACTGCAGTTCCAGTTTGGAGTCTCTGCCCATGGTAATA-3'(3'CM-2プライマー)(配列番号:20)であった。これらをゲル精製し、アニーリングし、次いでNcoIおよびXhoIで消化したβ1a1/MBP-72-89へのライゲーションのためにNcoIおよびXhoIで切断して、β1a1/CM-2共有結合構築物をコードするプラスミドを作製した。
【0092】
蛋白質発現を、細胞質中にジスルフィド結合を形成させるチオレドキシンレダクターゼ変異体(Dermanら、1993)を含む、いくつかの異なる大腸菌株で試験した。このような小分子では、蛋白質を6Mの尿素を含む緩衝液中で可溶化し、精製した後に折りたたみ構造に戻して、物質の最大収率は封入体から容易に得られることが明らかとなった。したがって、大腸菌株BL21(DE3)細胞をβ1α1をコードする配列を含むpET21d+構築物で形質転換させた。細菌をカルベニシリン(50μg/ml)を含むLuria-Bertani(LB)ブイヨンの1リットルの培養液中、37℃で対数中期(OD600=0.6〜0.8)まで増殖させた。0.5mMイソプロピルβ-D-チオガラクトシド(IPTG)の添加によって、組換え蛋白質の産生を誘導した。3時間インキュベーション後、細胞を遠心分離し、処理時まで-80℃で保存した。細胞のその後の操作はすべて4℃で行った。細胞ペレットを氷冷したPBS、pH7.4中に再度懸濁し、細胞懸濁液を塩/氷/水浴中で冷却しながら4x20秒超音波処理した。次いで、細胞懸濁液を遠心分離し、上清画分を流し、細胞ペレットを再懸濁して、PBS中で3回洗浄し、次いで20mMエタノールアミン/6M尿素、pH10に再懸濁して4時間放置した。遠心分離後、関心対象となる可溶化組換え蛋白質を含む上清を集め、精製まで4℃で保存した。組換えβ1α1構築物を精製し、XK26/20カラム(Pharmacia Biotech、ニュージャージー州ピスカタウェイ)中、Source 30Qアニオン交換媒質(Pharmacia Biotech)を用い、20mMエタノールアミン/6M尿素/1M NaCl、pH10による段階的勾配法を用いたFPLCイオン交換クロマトグラフィによって濃縮した。適当なサイズの均質なピークを集め、4℃、pH7.4でPBSに対して大量に透析し、Centricon-10メンブレン(Amicon、マサチューセッツ州ベバリー)を用いた遠心限外ろ過により濃縮した。蛋白質調製物から尿素を除去し、最終pHを低下させる透析段階の結果、発現された蛋白質が自然に再生した。均質に精製するために、仕上げ段階でHR16/50カラム(Pharmacia Biotech)中、Superdex 75媒質(Pharmacia Biotech)におけるサイズ排除クロマトグラフィーを用いた。精製蛋白質の最終収率は、細菌培養液1Lあたり15から30mgの間で変動した。
【0093】
分子の配座上の完全性はゲルシフト解析で検出されたシステインβ15とβ79の間のジスルフィド結合の存在によって示され、精製蛋白質が本物であることはRT1Bに特異的なOX-6モノクローナル抗体を用いたウェスタン法によって確認された(データは示していない)。円偏光二色性(CD)により、β1α1分子が非常に規則正しい二次構造を有することが明らかである。空のβ1α1分子は約30%のαらせん、15%のβ鎖、26%のβターン、および29%のランダムコイル構造を含む。X線結晶学によって調べたクラスII分子の二次構造との比較により、β1α1分子がすべてのクラスII抗原結合ドメインに共通のβシートプラットフォーム/アンチパラレルαらせん二次構造を有するという強力な証拠が得られる。さらに、熱変性により、分子の高度の協同性および安定性が明らかとなった(データは示していない)。
【0094】
実施例2: β 1 α 1 分子はエピトープ特異的に T リンパ球を結合する
前述のとおりに作製したβ1α1分子の有効性(T細胞結合特異性)を、実験的自己免疫脳脊髄炎(EAE)システムを用いて調べた。EAEは、ミエリン塩基性蛋白質(MBP)を含む中枢神経系ミエリン成分に特異的なCD4+ T細胞によって仲介される、麻痺性、炎症性で、時に脱髄性の疾患である。EAEはヒト脱髄性疾患MS(Paterson、1981)と類似の免疫学的異常を示し、ヒト疾患の前臨床治療法を試験する有用なモデルである(Weinerら、1993;Vandenbarkら、1989;Howellら、1989;Oksenbergら、1993;Yednockら、1992;Jamesonら、1994;Vandenbarkら、1994)。ルイスラットにおいて、優性の脳炎誘発MBPエピトープがペプチドの72〜89位に存在する(Bourdetteら、1991)。EAEの臨床徴候は第10〜11日に発症し、疾患は4〜8日間持続する。この期間中、侵襲性Tリンパ球の大部分はCNS中に局在する。
【0095】
材料と方法
精製したβ1α1分子にのせるための試験ペプチドおよび対照ペプチドを下記の通りに合成した。Gp-MBP-69-89ペプチド(GSLPQKSQRSQDENPVVHF)(配列番号:25)、ラット-MBP-69-89ペプチド(GSLPQKSQRTQDENPVVHF)(配列番号:30)、Gp-MBP-55-69ペプチド(SGKDSHHAARTTHYG)(配列番号:26)、および心ミオシンペプチドCM-2(KLELQSALEEAEASLEH(配列番号:27)(Wegmannら、1994)を固相法(Hashimら、1986)によって調製した。Gp-MBPペプチドはウシMBP配列(Vandenbarkら、1994;Martenson、1984)にしたがって番号を付けた。ペプチドをβ1α1と室温で24時間混合することにより、蛋白質:ペプチドモル比1:10でβ1α1上にのせ、その後はすべての操作を4℃で実施した。次いで透析またはCentricon-10メンブレンを用いた遠心限外ろ過で、遊離ペプチド濃度が2μM未満になるまで連続して希釈・濃縮することにより、遊離ペプチドを除去した。
【0096】
T細胞系統およびA1ハイブリドーマを下記の通りに調製した。短期Tリンパ球系統を、本来のラットリンパ節細胞またはVandenbarkら、1985)に記載のとおり12日前にGp-MBP/CFAで免疫化したラットからMBP-69-89により選択した。本試験で用いたラットVβ8.2+ T細胞ハイブリドーマC14/BW12-12A1(A1)は、以前にBurroesら、1996)によって記載されている。簡単に言うと、A1ハイブリドーマを、Gp-BP-72-89に特異的な脳炎誘発性LEW(RTl1) T細胞クローン(Whiteら、1989;Goldら、1991)をTCR(α/β)を持たない胸腺腫BW5147(Goldingら、1985)と融合することによって作製した。APC(放射線照射したルイスラット胸腺腫)存在下で抗原による刺激後、細胞増殖陽性のウェルをIL-2産生について試験紙、次いで限界濃度でサブクローニングした。A1ハイブリドーマは、APC存在下で最小エピトープMBP-72-89を含む全Gp-BPまたはGp-BP-69-89により刺激すると、IL-2を分泌する。
【0097】
二色免疫蛍光染色解析を、FACScan機器(Becton Dickinson、カリフォルニア州マウンテンビュー)上で登録商標CellQuestソフトウェアを用いて実施した。関連のないアイソタイプが対合する対照抗体を用いてクワドラント(quadrant)を決定した。ペプチドをのせた、またはのせていないβ1α1分子をA1ハイブリドーマと4℃で17時間インキュベートし(10μMのβ1α1/ペプチド)、3回洗浄し、蛍光色素(FITCまたはPE)を結合したラットクラスII特異的抗体(OX6-PE)、およびTCR Vβ8.2(PharMingen、カリフォルニア州サンディエゴ)で室温、15分間染色し、フローサイトメトリーで分析した。CM-2細胞系統を結合していないOX6で1時間ブロックし、洗浄し、次いでA1ハイブリドーマと同様に処理した。染色培地はPBS、2%ウシ胎仔血清、0.01%アジドであった。
【0098】
結果
エピトープ特異的結合を、β1α1分子に様々なペプチドをのせ、β1α1/ペプチド複合体をMBP-72-89ペプチドを認識するA1ハイブリドーマ、または心ミオシンCM-2-特異的細胞系統とインキュベートすることにより、評価した。図3Aに示すとおり、MBP-69-89ペプチドをのせたβ1α1構築物(β1α1/MBP-69-89)はA1ハイブリドーマに特異的に結合し、平均蛍光強度(MFI)0.8x103ユニットを示したのに対し、CM-2ペプチドをのせたβ1α1構築物(β1α1/CM-2)はハイブリドーマを染色しなかった。反対に、β1α1/CM-2はCM-2系統に特異的に結合し、MFIは1.8x103ユニットであったのに対し、β1α1/MBP-69-89複合体はCM-2系統を染色しなかった(図3B)。外因性的にペプチドをのせていないβ1α1構築物は、A1ハイブリドーマ(図3A)とCM-2系統(データは示していない)のいずれにも結合しない。したがって、結合したエピトープはβ1α1/ペプチド複合体の特異的結合の方向であった。
【0099】
実施例3: 蛍光標識に結合したβ 1 α 1 分子
β1α1/ペプチド分子とTCR(上で用いたOX-6など)との相互作用を視覚化する際に二次抗体の使用を避けるために、発色団と直接結合したβ1α1分子を作製した。登録商標Alexa-488色素(A488:Molecular Probes、オレゴン州ユージーン)はフルオレセインと類似のスペクトルを有するが、フルオレセイン結合体よりも明るく、光安定性の高い蛋白質結合体を生成する。図4に示すとおり、A488結合β1α1(色素/蛋白質のモル比=1)は、MBP-69-89をのせた場合、A1ハイブリドーマに結合した(MCI=300ユニット)が、空のβ1α1は結合しなかった。
【0100】
実施例4: β 1 α 1 分子はインビトロでエピトープ特異的 T 細胞増殖を阻害する
T細胞活性化に対する構築物の効果を評価するために、T細胞増殖解析を実施した。
【0101】
材料と方法
増殖解析を、以前に記載されている(Vandenbarkら、1985)とおり、96穴プレート中で実施した。簡単に言うと、ウェルごとに200μl中4x105個の細胞(臓器刺激解析)または2x104個のT細胞および1x106個の放射線照射APC(短期T細胞系統)を、刺激培地のみ、Con A、またはIL-2(20ユニット/ml)の追加あり、もしくは追加なしのウェル3つずつで、RPMIおよび1%ラット血清中、7%CO2、37℃でインキュベートした。培養液を3日間、最後の18時間は[3H]チミジン(0.5μCi/10μl/ウェル)存在下でインキュベートした。細胞をグラスファイバーフィルター上に回収し、液体シンチレーションにより[3H]チミジン]の取り込みを評価した。T細胞をβ1α1構築物(ペプチドをのせた、またはのせていない)で予備処理し、洗浄し、次いで前述のIL-2存在下または不在下での増殖解析に用いた実験もあった。3つのウェルから1分あたりの平均カウント±SDを計算し、群間の差をスチューデンツt検定によって求めた。
【0102】
結果
一定範囲の濃度(10nM〜20μM)のペプチドをのせたβ1α1複合体を、MBP-69-89ペプチド+APC(抗原提示細胞)で刺激する前に、MBP-69-89特異的T細胞系統と予備インキュベートした。図5に示すとおり、MBP-69-89特異的T細胞の10nM β1α1/MBP-69-89複合体とのと予備インキュベーションによって増殖が有意に阻害された(>90%)のに対し、20μM β1α1/MBP-55-69複合体との予備インキュベーションではわずかな(27%)阻害が認められたが、有意ではなかった。メカニズム上重要なことに、β1α1/MBP-69-89複合体によって阻害された反応は、T細胞系統刺激中に20ユニット/mlのIL-2を加えることによって完全に回復することができ(図5)、T細胞がβ1α1/MBP-69-89複合体への曝露によってアネルギー状態にされたことが示唆される。
【0103】
実施例5: 抗原をのせたβ 1 α 1 分子は EAE を抑制し、治療する
β1α1/MBP-69-89複合体の、ルイスラットにおけるEAE誘導を抑制する能力、ならびにすでに現れているEAEの徴候を治療する能力について評価した。
【0104】
材料と方法
8〜12週齢の雌のルイスラット(Harlan Sprague-Dawley, Inc.、インディアナ州インディアナポリス)を本試験の臨床実験に用いた。ラットをオレゴン州ポートランドの退役軍人病院動物管理施設(Veterans Affairs Medical Center Animal Care Facility)で、施設のガイドラインにしたがい、無菌状態で飼育した。25μgのモルモットミエリン塩基性蛋白質(GP-MBP)または200μgのGP-MBP-69-89ペプチドを、それぞれ100または400μgの結核菌株H37Ra(Difco、ミシガン州デトロイト)で補足した完全フロイントアジュバントに加えたものをラットに皮下注入することにより、活動性EAEを誘発した。2つの乳濁液によって誘発した臨床疾患の経過は本質的に同じで、発症日、持続期間、最大の重症度、および累積疾患指数が同じであった。下記の臨床評点スケールにしたがって、ラットの臨床徴候の変化を毎日評価した。すなわち、0=徴候なし、1=尾部弛緩、2=後肢脱力、3=対麻痺、および4=前肢脱力を伴う対麻痺、瀕死状態。各罹患ラットについてEAEの経過中毎日の障害スコアを合計することによって累積疾患スコアを得、各実験群について平均累積疾患指数(CDI)を計算した。
【0105】
不連続パーコール勾配法によって脊髄単核細胞を単離し、以前に記載されている(Bourdetteら、1991)とおりに計数した。細胞を、ラットCD4、CD8、CD11b、CD45ra、TCR Vβ8.2およびCD134(PharMingen、カリフォルニア州サンディエゴ)に特異的な蛍光色素(FITCまたはPE)結合抗体を用い、室温で15分間染色し、フローサイトメトリーで分析した。染色パーセントに脊髄あたりの全細胞数をかけることによって、脊髄あたりの陽性染色細胞数を計算した。対照およびβ1α1/MBP-69-89で防御したラットを臨床疾患のピーク時および回復時に屠殺し、脊髄を摘出し、10%緩衝ホルマリン中に固定した。脊髄をパラフィン包埋し、光学顕微鏡検査のために切片をルクソール・ファスト・ブルー-過ヨウ素酸シッフ-ヘマトキシリンで染色した。
【0106】
結果
CFA中MBPまたはMBP-69-89ペプチド注入後第3、7、9、11および14日に食塩水中300μgのβ1α1/MBP-69-89複合体を静脈内注入(i.v.)することにより、EAEの臨床(図6および表3)および組織学的(データは示していない)徴候の誘発が抑制された。同じ時間経過にしたがっての、わずか30μgのβ1α1/MBP-69-89複合体注入も同様に有効で、6匹のラットのうち4匹でEAEを完全に抑制し、他の2匹においても軽度の徴候が認められたにとどまった。2μgのMBP-69-89ペプチドだけ(30μgの複合体に含まれる遊離ペプチドの用量)、または300μgの空のβ1α1構築物を投与した、未治療の対照群のラットはすべて、同程度の麻痺性EAEを発症した(表2)。興味深いことに、300μgの対照β1α1/CM-2ペプチド複合体を注入すると、EAEの軽度(約30%)の抑制を示す(図6および表2)。疾患の経過に平行して、ラットは劇的な体重減少を示した(図6)が、β1α1/MBP-69-89複合体で治療したラットは実験経過中有意な体重減少を見せなかった。
【0107】
【表2】
ルイスラットにおけるβ1α1/ペプチド複合体のEAEに対する効果
aEAEはGp-BP/CFAまたはMBP-69-89/CFAのいずれかで誘発した。
b2つの実験から合わせた対照。
c値は平均±S.D.を表す。
*P≦0.05
**P≦0.01
【0108】
【表3】
対照およびβ1α1/MBP-69-89で防御されたラットにおけるEAEピーク時の浸潤性脊髄細胞の特徴分析
*細胞数/脊髄x10-3
【0109】
確立された疾患に対する構築物の効果を評価するために、ルイスラットを疾患発症第1日に300μgのβ1α1/MBP-69-89複合体で治療し、48および96時間後に追跡注入を行った。対照ラットにおけるEAEは完全な後肢麻痺まで進行したのに対し、治療したどのラットにおいても疾患の進行は見られなかった(図7)。治療群におけるEAEの軽度の経過(平均累積指数、MCI=3±0.13)は対照群のEAEの重度の経過(MCI=11.2±2.7)に比べて有意に低かった(p=0.013)が、疾患持続期間(6日)は両群で同じであった。
【0110】
脊髄組織切片に炎症性病変が全くない(データは示していない)ことと一致して、β1α1/MBP-69-89複合体によるEAEの抑制は活動性炎症細胞のCNSへの浸潤を本質的になくした。対照群および防御群の脊髄から、疾患のピーク時および回復時に単核細胞を単離し、FACS分析によって調べた。対照群の脊髄から臨床疾患ピーク時(第14日)に単離した単核細胞の合計数は、同じ時点で評価した防御群からのものよりも40倍高かった(表3)。さらに、防御群は対照群と比較して、脊髄の活性化(OX40+)、Vβ8.2+ T細胞が72%少なかった。
CD4+およびCD8+ T細胞、マクロファージおよびB細胞の数も、防御群では有意に減少した(データは示していない)。EAEから回復した後に単離した単核細胞の数は、防御群(0.64x105細胞/脊髄)では対照群(2.9x105細胞/脊髄)に比べて4.5分の1に減少した。また防御群のラットでは、疾患からの回復後に対照群ラットと比べて脊髄中の活性化(OX40+)、Vβ8.2+ T細胞が10分の1であった。
【0111】
β1α1/MBP-69-89複合体による治療は、MBP-69-89に対する遅延型過敏(DTH)反応を特異的に阻害した。図8Aに示すとおり、PPDによる攻撃から24時間後の耳の厚さの変化は、β1α1またはペプチドをのせたβ1α1で治療したラットでは影響を受けなかった。しかし、図8Bに示すとおり、β1α1単独またはCM-2との複合体で治療したラットはDTH反応に影響を受けなかったが、β1α1/MBP-69-89複合体で治療したラットはMBP-69-89に対するDTH反応の劇的な阻害を示した。
【0112】
β1α1/MBP-69-89複合体によるEAEの治療は、リンパ節(LN)T細胞反応の阻害も引き起こした。図9に示すとおり、抑制プロトコル(図6)で治療したラット由来のLN細胞は、MBPまたはMBP-69-89ペプチドに対して対照ラットの2〜4分の1に阻害された。LN T細胞のPPDに対する反応(CFA注入によって刺激)は治療群と対照群とで同じであったため、この阻害は抗原特異的であった。疾患発症後に治療したラットで試験したT細胞反応(図7)も、IL-2可逆的に阻害された。MBPおよびMBP-69-89ペプチドに対するLN細胞の反応は、低い抗原(Ag)濃度(4μg/ml)で最適(S.I=4〜5x)で、IL-2の追加によって2倍に増強することができた。これに対して、治療したラットでは反応が阻害され、最適LN細胞反応(±3x)にはより高いAg濃度(20〜50μg/ml)が必要であった。しかし、IL-2存在下では、Ag濃度を追加することなく対照ラットと同等のレベル(S.I.=6〜11x)まで反応を回復することができた。
【0113】
考察
下記の実施例は、2ドメインMHC分子の有効性を例示している。実験上の詳細はMHCクラスIIβ1α1ポリペプチドに関するものであるが、これらのデータはMHCクラスIα1α2ポリペプチドの応用も十分に支持することが理解されると思われる。
【0114】
提示された実施例において、MHCクラスIIβ1およびα1ドメインを含むポリペプチドが記載されている。これらの分子には、α2ドメイン、CD4に結合することが知られているβ2ドメイン、ならびに膜貫通および細胞質内配列が欠けている。β1α1構築物の小さいサイズと複雑性によって、細菌封入体から高収率で分子を発現し、精製することが可能となる。β1α1分子は、対立遺伝子特異的ペプチドエピトープが結合できるような形で再生し、水性緩衝液中で優れた溶解性を有することが明らかにされている。ペプチド抗原と複合体を形成すると、結合特異性がペプチド抗原によって決定され、T細胞に対するβ1α1/ペプチド複合体の直接検出をFACSによって視覚化することができる。β1α1/MBP-69-89複合体は、インビトロおよびインビボでT細胞活性化に対する強力且つ選択的阻害作用を示す。その単純さ、生化学的安定性、生物学的性質、およびヒトクラスII相同体との構造的類似性の故に、β1α1構築物はTCRリガンドの新しいクラスを産生するための鋳型の代表となる。
【0115】
MBP-72-89に特異的なA1ハイブリドーマを用いた直接結合試験で、β1α1/MBP-69-89によりMFIがバックグラウンドの10倍に上昇する明確な染色が見られ、β1α1/CM-2または「空」のβ1α1では染色されなかった。反対に、CM-2特異的細胞系統を用いた結合試験では、β1α1/CM-2による強力な染色が認められ、β1α1/MBP-69-89による染色は見られなかった。したがって、結合したエピトープがβ1α1/ペプチド複合体の特異的相互作用を方向付けた。抗原特異的T細胞の同定は、標識した抗イディオタイプT細胞受容体抗体を特異的マーカーとして用いる小数のシステムで可能であった(McHeyzerら、1995;MacDonaldら、1993;Walkerら、1995;Reinerら、1993)が、可溶性ペプチド-MHC複合体のT細胞抗原受容体からの解離速度が本質的に速い(Corrら、1995;Matsuiら、1994;Syulkevら、1994)ため、特異的T細胞をそのリガンドで染色する一般的アプローチは失敗に終わった。4ドメインの可溶性MHC分子を含む多量体ペプチド-MHC複合体が、抗原特異的Tリンパ球を染色するのに用いられており(Altmanら、1996)、単一のT細胞上の複数のT細胞受容体(TCR)に結合する能力を有するため、それに対応して多量体分子の解離速度が遅くなると考えられる。β1α1/ペプチド複合体による染色は特異的ではあるが、飽和までに約10時間のインキュベーション期間を要した(データは示していない)。β1α1/MBP-69-89複合体によるA1ハイブリドーマ、およびβ1α1/CM-2によるCM-2系統の非常に明るい染色パターンと、結合飽和状態に達するまでに必要な時間を併せ考えると、この分子がいったんTCRに結合すると非常に遅い解離速度を有することが示唆される。これらの複合体およびその改変体は、定量および回収を目的として抗原特異的T細胞を直接標識するのに非常に適していると思われる。
【0116】
β1α1/ペプチド複合体は、T細胞に結合し、その機能を阻害する能力において非常に特異的であった。MBP特異的T細胞のインビトロでの増殖はβ1α1/MBP-69-89複合体によって>90%阻害され、インビボでは臨床および組織学的EAEのほぼ完全な阻害が認められた。
【0117】
β1α1/MBP-69-89で認められた最も重要な生物活性は、インビボでMBP-69-89特異的T細胞の脳炎誘発能をほぼ完全に除去する能力であった。EAE発症後に本複合体を注入すると、明らかにMBP-69-89特異的T細胞の全身活性化を直接阻害し、炎症細胞のCNSへの動員を妨害することによって、EAEの臨床および組織学的徴候をほぼ完全に抑制した。さらに、臨床徴候発症後にβ1α1/MBP-69-89を注入すると疾患の進行が阻止され、本分子構築物の治療上の可能性が示された。興味深いことに、すでに活性化されているT細胞に対する本複合体の効果は刺激を阻害するのみならず、抗原に対する感受性も低下させ、治療後の最適な活性化には抗原濃度を10倍に上げる必要があった。
【0118】
薬品工学および設計の観点から、この基本型分子は大きな躍進を意味する。EAEにおいて認められたβ1α1/MBP-69-89複合体の生物学的有効性により、CNS蛋白質を対象とする炎症T細胞に関与すると考えられる、多発性硬化症などの自己免疫疾患治療のためのヒト相同体を作製する鋳型として本構築物を使用する可能性が高まる。一つの候補分子は、疾患に関連するクラスIIアレルと、対照群に比べてMS患者群により高頻度で認められることが報告されている既知の免疫優性エピトープとの両方を含む、HLA-DR2/MBP-84-102である。しかし、複数のCNS蛋白質およびその成分エピトープに対するT細胞の反応が複雑であるために、より全般的な治療にはいくつかのMHC/Ag複合体の混合物が必要であると考えられる。本明細書において報告した新規β1α1/MBP-69-89複合体によって誘発された阻害の精度は、強力且つ選択的なヒト治療薬の開発における重要な第一歩である。この新しいクラスの試薬によって、標的自己抗原であることが疑われる物質に特異的なT細胞の頻度および普及率を直接定量し、次いで罹患患者においてこのようなT細胞を選択的に除去することができると考えられる。この検出および治療の過程を通して、疑われる各T細胞の特異性が発病におよぼす影響を初めて確立することができると考えられる。
【0119】
2ドメインクラスIIβ1α1およびクラスIα1α2分子の合成原理、およびこれらの分子を使用する方法について例示し、記載してきたが、本発明はその原理から逸脱することなく配置および詳細において改変可能であることが当業者には明白であると思われる。発明者らは、すべての改変が本明細書に記載の特許請求の範囲の精神および範囲内に含まれることを主張する。
【0120】
参考文献
【図面の簡単な説明】
【図1】 図1Aは、抗原コード領域を持たない典型的β1α1カセットの配列を示す図である。独特のNcoI、PstIおよびXhoI制限酵素切断部位を太字で示す。β1ドメインの終わりとα1ドメインの始まりを示している。図1Bは、図1Aに(黒塗りの逆三角形)で示した挿入部位で発現カセット中に取り込むことができるインフレーム抗原ペプチド/リンカー挿入配列の配列を示す図である。この配列は、ラットMBP 72-89抗原、埋め込まれたトロンビン切断部位を持つ柔軟なリンカー、および抗原コード領域を容易に交換するために用いることができる独特のSpeI制限酵素切断部位を含む。前述の実施例2は、MBP 72-89配列のスレオニン残基の代わりにセリンを有するモルモットからの等価のペプチド利用法について記述している。図1Cおよび1Dは、MBP-72-89抗原コード領域の代わりに発現カセット中に挿入することができる例示的なNcoI/SpeI断片を示す図である。図1CはMBP 55-69抗原を含み、図1DはCM-2抗原を含む。
【図2】 図2AおよびBは、β1α1分子の構造に基づくデザインを示す図である。A.脳炎誘発性MBP-69-89ペプチドをのせたラットクラスII RT1.B。B.MBP-69-89をのせた一本鎖β1α1分子。
【図3】 図3AおよびBは、ラットT細胞に結合している抗原特異的β1α1/ポリペプチド分子の直接検出を示す図である。A1 T細胞ハイブリドーマ(BV8S2 TCR+)およびCM-2細胞系統(BV8S2 TCR-)を様々なβ1α1構成物と共に4℃で17時間インキュべートし、洗浄し、OX6-PE(α-RT1.B)または対照PE-アイソタイプにより15分間染色し、次いでFACSで分析した。CM-2系統におけるI-Aのバックグラウンド発現を標識していないOX-6でブロックした。A.A1ハイブリドーマの染色を示すヒストグラム。B.CM-2細胞系統の染色を示すヒストグラム。
【図4】 図4はA488を結合したβ1α1/ポリペプチド分子のラットBV8S2 TCRへの結合を示すグラフである。β1α1分子にAlexa-488色素を結合し、MBP-69-89をのせ、A1 T細胞ハイブリドーマ(BV8S2 TCR+)と4℃で3時間インキュベートし、次いでFACSにより分析した。A488-β1α1(空)およびA488-β1α1/MBP-69-89を示す。
【図5】 図5はβ1α1/MBP-69-89複合体が抗原特異的増殖をIL-2可逆的に阻害することを示す棒グラフである。Gp-MBP/CFAで12日前に免疫化したラットのリンパ節細胞から得たMBP-69-89ペプチドにより選択した短期T細胞系統を、β1α1構成物で24時間前処理し、洗浄し、次いで細胞を20ユニット/mlのIL-2存在下および不在下で培養する増殖解析に用いた。細胞を3日間、最後の18時間は[3H]チミジン(0.5μCi/10μl/ウェル)存在下でインキュベートした。示した値は平均CPM±SEMである。バックグラウンドは210CPMであった。カラムa.IL-2不在の対照増殖解析。カラムb.20μMのβ1α1/MBP-55-69前処理。カラムc.10nMのβ1α1/MBP-69-89前処理。カラムd.10nMのβ1α1/MBP-69-89+IL-2増殖解析。実験は2回行ったが、1回の代表的実験の結果を示す。*は対照培養に対してβ1α1/MBP-69-89による有意(p<0.001)な阻害を示す。
【図6】 図6A〜Dは、実験的自己免疫脳脊髄炎からのβ1α1/MBP-69-89複合体による臨床的防御を示すグラフである。ルイスラットのグループ(n=6)に25μgのGp-MBP/CFAを注入して臨床的EAEを誘発した。疾病誘発後、第3、7、9、11および14日に、図に示すとおりラットにβ1α1/ペプチド複合体もしくはペプチド単独を投与、または未処置で放置した。図に示すとおり、A.未処置または2μgのMBP-69-89ペプチド単独。B.食塩水中300μgのβ1α1/(空)複合体。C.食塩水中300μgのβ1α1/CM-2複合体。D.食塩水中30μgのβ1α1/MBP-69-89複合体。300μgのβ1α1/ペプチド複合体処置に対して毎日の体重(グラム、右側のy軸)をプロットしている。実験は3回行ったが、1回の代表的実験の結果を示す。値は臨床疾病の各日における平均臨床スコア±SEMを示す。30μgの複合体は2μgの遊離ペプチドと等価である。
【図7】 図7は、定着したEAEのβ1α1/MBP-69-89複合体による治療を示すグラフである。ルイスラットのグループ(n=6)に25μgのGp-MBP/CFAを注入して臨床的EAEを誘発した。臨床徴候の発症日(第11日)、第13日および第15日に、ラットに300μgのβ1α1/MBP-69-89複合体(矢印で示す)を投与、または未処置で放置した。実験は2回行ったが、1回の代表的実験の結果を示す。値は臨床疾病の各日における平均臨床スコア±SEMを示す。
【図8】 図8AおよびBは、β1α1/MBP-69-89複合体がMBP 69-89に対するDTH反応を特異的に阻害することを示すグラフである。A.PPDによる攻撃後24時間における耳の厚みの変化。B.MPB-69-89による攻撃後24時間における耳の厚みの変化。値は平均スコア±SEMを示す。*は対照群と治療群の間の有意差を示す(p=0.01)。実験は2回行ったが、1回の代表的実験の結果を示す。
【図9】 図9は、300μgのβ1α1/MBP-69-89複合体で治療したルイスラットにおいて、MBP-69-89に対するT細胞の反応が阻害されたことを示すグラフである。対照群がEAEから回復した(第17日)後、リンパ節細胞を対照群および治療群から採取し、最適濃度のGp-MBP、Gp-MBP-69-89ペプチド、またはPPDで刺激した。*は対照群と治療群の間の有意差を示す(*p<0.05、**P<0.001)。治療群で、Gp MBPおよびMBP-69-89ペプチドでは阻害が認められたが、PPDに対しては見られなかったことに留意されたい。
【図10】 図10A〜Cは、例示的な(A)ヒト(DRAおよびDRB1 0101)、(B)マウス(I-EK)および(C)ラット(RT1.B)β1およびα1ドメインのアミノ酸配列を示す図である(ラットの配列の開始メチオニンおよびグリシン配列は翻訳開始の理由により構成物に含まれた)。
【図11】 図11は、ヒトMHCクラスI B*5301由来の例示的α1およびα2ドメインのアミノ酸配列を示す図である。
【配列表】
Claims (23)
- 共有結合された第一および第二のドメインを含む精製ポリペプチドであって、第一のドメインが哺乳動物MHCクラスIIβ1ドメインで、第二のドメインが哺乳動物MHCクラスIIα1ドメインで、第二のドメインのアミノ末端が第一のドメインのカルボキシ末端に共有結合しているポリペプチド。
- 第一のドメインと第二のドメインとの間の共有結合がペプチドリンカー配列によって提供される、請求項1記載のポリペプチド。
- 第一のドメインのアミノ末端に共有結合された、抗原決定基を含む第三のドメインをさらに含む、請求項1記載のポリペプチド。
- 抗原決定基がペプチド抗原である、請求項3記載のポリペプチド。
- 第一と第三のドメインの間の共有結合がペプチドリンカー配列によって提供される、請求項4記載のポリペプチド。
- 共有結合ではない相互作用によってポリペプチドに結合した抗原決定基をさらに含む、請求項1記載のポリペプチド。
- 抗原決定基がペプチド抗原である、請求項6記載のポリペプチド。
- ポリペプチドが共有結合した検出可能マーカーまたは毒性部分をさらに含む、請求項1記載のポリペプチド。
- MHCクラスIIα1ドメインのアミノ末端がMHCクラスIIβ1ドメインのカルボキシ末端に共有結合している、哺乳動物の分子のMHCクラスIIα1およびMHCクラスIIβ1ドメインを含む組換えポリペプチド。
- ポリペプチドが共有結合または共有結合ではない相互作用によってポリペプチドに結合した抗原決定基をさらに含む、請求項9記載の組換えポリペプチド。
- 抗原決定基がβ1ドメインのアミノ末端に共有結合している、請求項10記載の組換えポリペプチド。
- ポリペプチドが検出可能マーカーまたは毒性部分をさらに含む、請求項9記載の組換えポリペプチド。
- 請求項1記載のポリペプチドをコードする核酸分子。
- 請求項13記載の核酸分子を含むトランスジェニック細胞。
- 請求項13記載の核酸分子を含む核酸発現ベクター。
- Prはプロモーター配列であり、
Bは哺乳動物MHCクラスII分子のβ1ドメインをコードするコード配列であり、且つ
Aは哺乳動物MHCクラスII分子のα1ドメインをコードするコード配列である、式Pr-B-Aによって表される第一、第二および第三領域を含み、
PrがBに機能的に結合されており、BとAが単一のオープンリーディングフレームを含む、組換え核酸分子。 - Prはプロモーター配列であり、
Pはペプチド抗原をコードするコード配列であり、
Bは哺乳動物MHCクラスII分子のβ1ドメインをコードするコード配列であり、且つ
Aは哺乳動物MHCクラスII分子のα1ドメインをコードするコード配列である、式Pr-P-B-Aによって表される第一、第二、第三および第四領域を含み、
PrがPに機能的に結合されており、P、BおよびAが単一のオープンリーディングフレームを含む、組換え核酸分子。 - 生体試料において特定の抗原に特異的な受容体を有するT細胞の有無を検出または定量する方法であって、
β1ドメインのカルボキシ末端がα1ドメインのアミノ末端に共有結合している哺乳動物MHCクラスII分子の共有結合したα1およびβ1ドメインを含み、該α1およびβ1ドメインによって形成されたペプチドが結合する溝に結合した特定の抗原をさらに含む組換えポリペプチドと生体試料とを併せる段階、および
組換えポリペプチドと該T細胞との特異的結合の有無を検出または定量する段階を含む方法。 - 特定の抗原に特異的な受容体を有するT細胞を細胞混合物から分離する方法であって、
β1ドメインのカルボキシ末端がα1ドメインのアミノ末端に共有結合している哺乳動物MHCクラスII分子の共有結合したα1およびβ1ドメインを含み、該α1およびβ1ドメインによって形成されたペプチドが結合する溝に結合した特定の抗原をさらに含む組換えポリペプチドと細胞混合物とを併せる段階、および
組換えポリペプチドに結合した細胞を非結合細胞から分離する段階を含む方法。 - 請求項1記載のポリペプチドとMBP-69-89との複合体、および薬学的に許容される担体を含む薬学的組成物。
- T細胞を請求項3記載のポリペプチドと接触させる段階を含む、インビトロでT細胞の活性を阻害する方法。
- 抗原特異的T細胞に起因する疾患を治療するための、請求項3記載のポリペプチドを含む組成物。
- T細胞を請求項3記載のポリペプチドと接触させる段階を含む、インビトロでT細胞を活性化する方法。
Applications Claiming Priority (5)
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---|---|---|---|
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