JP4485378B2 - 土壌採取装置及び採取方法 - Google Patents

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本発明は、筒状のサンプラーを地中に貫入して土壌試料を採取する土壌採取技術に関する。
サッカー場などの芝や改良した土壌を管理するには、芝根の生育状況や改良土壌の状態を観察することが必要であり、そのためには土壌試料を採取することが必要不可欠である。その土壌試料の採取に当たっては、地中にある状態のまま構造が崩れないようにして土壌をサンプリングしなければならず、そのための土壌採取の手法がたとえば特許文献1〜11に開示されている。これら特許文献に開示された装置は、採取した土壌試料を取り出しやすいように筒状のサンプラーを縦割りに分割可能に構成したものである。
実開昭47−036185号 実開昭53−075186号 特開2001−003348号 特開2001−329527号 特開2003−096759号 特開昭57−110935号 特開2002−322894号 特開2004−137820号 特開2000−314127号 特開2002−061162号 特開2004−278147号
上記従来技術は、土壌試料の取り出しやすさという点では優れているが、特許文献1〜5の場合は採取した土壌試料の保持性の点で改善の余地が残されている。すなわち、土壌採取に当たっては、地中にあった構造(層)が崩れないようにそのまま保持して取り出すことが必須条件であるが、当該文献に開示されている分割式に構成された筒状のサンプラーはいずれも寸胴形状で土壌の保持力が弱いことから、地中より抜き出す時に土壌構造が崩れたり、採取した土壌がこぼれ落ちるといった不具合が見受けられる。
そこで、特許文献6〜8のように先端部に弁機構を設けたもの、あるいは、特許文献9,10のように先端に回転式の蓋を設けたもの、さらには、特許文献11のように先端部の土を硬化させて蓋とするものが提案されている。しかし、弁機構の場合は抜き出し時に弁が閉まるかどうかが不安定で確実性に難があり、回転式蓋の場合は蓋を回転させるための長いロッドや蓋の耐久性、重量の点で難がある。且つ、サンプラーは土中でしかもそれ相当の圧力下で動作しなければならないので、弁や回転軸等の機構を設けるのは極力避けるべきである。一方、土硬化式の場合は、特別な硬化剤を使用しなければならず、コスト的に不利であるし、土壌汚染の試料採取などでは硬化剤そのものを使用できない。
本発明はこの点に着目したもので、サンプラー内に採取した土壌試料をより確実に保持でき、簡単な構造で正確な土壌試料を得ることのできる土壌採取装置を提案する。
本発明の土壌採取装置は、縦割りにした複数の分割片を突き合わせて構成される筒状のサンプラーを含む土壌採取装置であって、分割片を突き合わせて筒状にした時に先端へ向かって広がる隙間が当該分割片の突き合わせ端部間に形成されるようにしてあり、該分割片を突き合わせて構成した筒状のサンプラーを先端側から地中へ貫入した後、その分割片を縮径方向に締め付けて当該サンプラーを先細り状態にしつつ抜き出すようになっていることを特徴とする。
この土壌採取装置によれば、地中へ貫入したサンプラーを抜き出す時に、分割片を縮径方向に締め付けると、該分割片の突き合わせ端部間に形成されていた隙間が閉まるように作用し、先端へ向かってサンプラーが縮径して先細り状態になり、内部に採取した土壌をしっかり保持し抜き出すことができる。したがって、サンプラー内に採取した土壌試料が崩れたりこぼれたりし難くなり、地中構造を維持したままの確実な採取を実現することができる。しかも、地中に存在するのは分割片だけであり、弁機構や回転式蓋といった機構を持たず、硬化剤などの特殊薬品を使用することもない。
この土壌採取装置では、抜き出し時に分割片を縮径方向へ締め付ける手段として、地表上で各分割片を締め付けるクランプを一つ以上含むようにすると良い。このクランプはたとえば、サンプラーを所定長さ引き出す都度に追加していくようにして使用することができる。
また好適には、分割片を縮径方向に締め付けた時に、対向した突き合わせ端部どうしを互いに当接させるように案内する案内部材を、分割片の外側面又は内側面にあてがうようにすると、対向した突き合わせ端部どうしの合わせずれが防止され、サンプラーのよじれ等を防ぐことができるので良い。
そして、このような土壌採取装置においては、好ましくは、貫入時に地表でサンプラーの内部に位置し、抜き出し時に頭部を引っ張ることで分割片の後端部に形成されたフランジに係止し、これによりサンプラーを地中から抜き出すための係止具を含むようにする。より好ましくは係止具は、頭部に把持手段が形成された円錐形状のものとすると、分割片後端のフランジと係止して抜き出し力を伝達するときに、各分割片先端側を互いに相手側へ締め付ける方向の力(つまり縮径方向の力)、言い換えると、分割片後端部を離間させる方向の力が加わるので良い。把持手段は、フックを掛け止めるリングとしておけば簡単な構造で済み強度も高い。このように係止具を円錐形状とする他にも、フランジの係止具と係止する部分に、オーバーハングの傾斜面(すなわち下側よりも上側が張り出している傾斜面)を形成するようにしても同等の機能を得ることができる。
またさらに、貫入時に地表でサンプラーを囲繞する囲繞治具を含むようにし、貫入時に分割片が拡開しないように径を規制するようにしておくと好ましい。係止具がある場合、貫入時には囲繞治具の内側に係止具を置いておき、貫入されるサンプラーの内部に係止具が位置するようにする。当該囲繞治具は、少なくとも二つの分割部材をボルト等でつなぎ合わせて構成するものとすることができ、この場合は採取現場で内径を適宜調整し得る。
このような土壌採取装置の分割片先端には、掘削用のカッターを形成しておくのが、地中への貫入しやすさを考えると好ましい。
以上の土壌採取装置を使用した土壌採取方法は、囲繞治具及びその内側の係止具を地表に配置する第1工程と、該囲繞治具内に分割片を配置し、係止具を内部に位置させた筒状のサンプラーを組み立てる第2工程と、該サンプラーを地中へ貫入させる第3工程と、貫入後のサンプラーの地表上へ出ている部分にクランプを適用して分割片を縮径方向へ締め付ける第4工程と、係止具の頭部を引っ張ってサンプラーを抜き出す第5工程と、クランプを外し、分割片を分離して中身を取り出す第6工程と、を順次行うことを特徴とする。
特に第3工程は、各分割片の後端部を順番に打撃していくようにすると、貫入させるための力を抑えることができる。また第5工程は、所定長さサンプラーを抜き出したところで前のクランプよりも先端寄りにクランプを追加するようにすると、より土壌の保持力が高くなるので好ましい。これはさらに、部品点数削減のため、前のクランプよりも後端寄りに既に適用してあるクランプを先端寄りに使い回す手法とすることも可能である。
本発明によれば、筒状のサンプラーを構成する分割片について、その突き合わせ端部間に先端へ向かって広がる隙間が形成されるようにし、サンプラーの抜き出し時にその隙間を利用してサンプラーを先細り状態にしつつ抜き出すようにしたことにより、当該サンプラーの適宜な先細り状態によって保持力を高めることに成功している。したがって、サンプラー内に採取した土壌試料を確実に保持できるようになり、弁や蓋などの機構や硬化剤等を使用することなく、簡単な構造で正確な土壌試料を得ることのできる土壌採取装置が提供される。
図1〜図9に、本発明の好適な実施形態を例示している。
この土壌採取装置1は、サンプラー2を、縦割りにした二片の分割片3,4を突き合わせて筒状とすることによって構成している。サンプラー2は、筒状であれば四角柱状などでもよいが、本例では円筒状にしてある。
各分割片3,4は半円状で雨樋のような形状をしており、両者を突き合わせることで円筒状のサンプラー2が構成される。その分割片3,4の突き合わせ端部3a,4a(縁部)の間には、先端へ向かって徐々に広がる隙間5がそれぞれ形成されている。すなわち、互いに向き合った突き合わせ端部3a,4aは、先端に向かうにつれ、互いに離間する方向へ傾斜しており、先端に向けて隙間5の幅が広くなっている。本例では突き合わせ端部3a,4aを傾斜させることで隙間5を形成しているが、階段状等その他の形状で、先端へ向け広がる隙間5を形成することもできる。
また、本例の場合、対向した突き合わせ端部3a,4aを外側から覆うようにして、分割片3,4の外側面に、所定長さの長尺板とした案内部材6があてがわれている。案内部材6は両方とも、分割片3に長辺を溶接することで延設されており、突き合わせ端部3a,4aの外側に接して案内し、対向した突き合わせ端部3a,4aどうしが互いに当接するように案内して合わせずれを防止する役割を持つ。なお、案内部材は分割片の内側面に設けても、あるいは部分的なものでも同様の機能を得られる。
このような分割片3,4の先端部には、掘削用のカッター3b,4bが形成されており、また後端部には、貫入時の打撃用にフラットな頭頂面をもつフランジ3c,4cが形成されている。フランジ3c,4cは肉厚の半円状で、突き合わせたとき中央部分に開口が形成されるようになっており、この開口を通して係止具7の把持手段7aが把持され、引っ張られた係止具7がフランジ3c,4cの肩部に係止する。なお本例のフランジ3c,4cは、複数のリブ3d,4dにより補強されている。
係止具7は、頭部にリング形の把持手段7aが形成された円錐体で、把持手段7aがフランジ3c,4c中央部分の開口を通して外へ突出することができ、これにより傾斜側面7bがフランジ3c,4cの肩部に係止する。このような係止具7は、サンプラー2の貫入時、囲繞治具8の内側に置かれることで、貫入されるサンプラー2の筒内に位置することになる。係止具としてはこの他にも玉形や角錐形とすることが可能であるが、抜き出し時の力のかかり具合や置いた時の安定性を考えると円錐形状が適している。また、係止具を円錐形状に作成する代わりに、係止具7が係止するフランジ3c,4cの係止部分に、オーバーハングの傾斜面、つまり下側よりも上側の方が張り出した傾斜面を形成することも可能である。
囲繞治具8は、半円の分割部材8a,8bをボルト9で互いに固定して環状にしたもので、貫入個所の地表に設置され、貫入されるサンプラー2を囲繞する。この囲繞治具8にて周囲を囲繞することにより径が制限され、貫入されるサンプラー2の分割片3,4が互いに開かないように規制される。本例のように分割部材8a,8bからなる構造とすることで、採取現場にて内径をサンプラー2の外径に適合させて調整することができる。また本例の場合、囲繞治具8の内周面に、分割片3,4の案内部材6を受け入れて摺動させられるよう溝8cが対向させて(180°)二個所に凹設されている。
以上の土壌採取装置1を使用した土壌試料の採取方法について、図4〜図9に工程を追って示し、順に説明する。
(1)環状にした囲繞治具8を貫入個所の地表に配置し、そして、囲繞治具8の内側中央に係止具7を配置する。
(2)配置した囲繞治具8内に分割片3,4を、先端部のカッター3b,4bを地面側にして突き立てて配置し、内部に係止具7を位置させた筒状のサンプラー2を組み立てる。この時、囲繞治具8のボルト9の締め具合により、内径を適宜調整することができる。また、調整後、囲繞治具8のボルト9を地表に固定するなどして、囲繞治具8の移動を防止すると良い。
(3)分割片3,4の後端面、すなわちフランジ3c,4cの頭頂面をハンマや油圧プレスにて打撃し、所定の深さまでサンプラー2を地中へ貫入させる。この時、二つの分割片3,4を順番に交互に打撃すれば、貫入のための力を抑えられる。
(4)サンプラー2の貫入が終わると、該貫入後のサンプラー2の地表上に出ている部分をクランプ10で挟み込んで、分割片3,4を縮径方向へ締め付ける。これにより、隙間5を閉めるように力が働いてサンプラー2に先細りの状態を与えることができ、土壌試料の保持力が高められる。クランプ10は、たとえば万力型のものを利用することができる。
(5)サンプラー2後端部のフランジ3c,4cの開口からフック11を挿入して係止具7の把持手段7aに掛け止め、当該フック11をチェンブロックや油圧装置にて引っ張る。すると、係止具7の傾斜側面7bがフランジ3c,4cの肩部に係止してサンプラー2が引っ張られ、地中から抜き出される。この時に、係止具7が円錐形状をしているため、フランジ3c,4cの開口を押し広げるように力が加わり、その結果、サンプラー2の先端側を縮径させる方向に力が加えられ、保持力を高めることに一役買っている。
(6)所定の長さサンプラー2を抜き出したところで一旦止め、この抜き出し作業で新たに露出した部分、つまり上記(4)で適用した前のクランプ10よりも先端寄りを、もう一つのクランプ10’で挟み込み、さらに縮径方向への締め付け力を加える。これにより、土壌試料の保持力をさらに高めることができる。
(7)再度、所定の長さサンプラー2を抜き出したところでまた一旦止め、上記(6)で適用した前のクランプ10’よりも先端寄りにクランプを追加する。この際、前のクランプ10’よりも後端寄りに既に適用してある、つまり前のクランプ10’の前に適用したクランプ10を使い回して追加する。以降、サンプラー2の抜き出しが終わるまで当該工程を繰り返していく。これによると、クランプ数は2個で済む。
(8)サンプラー2を完全に抜き出した後、適当な所でクランプ10,10’を外し、分割片3,4を分離してサンプラー2を分解すれば、内部に採取されている、地中にあったままの構造の土壌試料を取り出すことができる。
本発明に係る土壌採取装置の斜視図。 図1のX−X断面で見たサンプラーの断面図。 図1のY−Y断面で見たサンプラーの断面図。 本発明の土壌採取装置を使用した土壌採取方法を説明する工程図。 図4に続く工程図。 図5に続く工程図。 図6に続く工程図。 図7に続く工程図。 図8に続く工程図。
符号の説明
1 土壌採取装置
2 サンプラー
3,4 分割片
3a,4a 突き合わせ端部
3b,4b カッター
3c,4c フランジ
3d,4d リブ
5 隙間
6 案内板
7 係止具
7a 把持手段
7b 傾斜側面
8 囲繞治具
8a,8b 分割部材
8c 溝
9 ボルト
10,10’ クランプ
11 フック

Claims (9)

  1. 縦割りにした複数の分割片を突き合わせて構成される筒状のサンプラーを含む土壌採取装置であって、
    前記分割片を突き合わせて筒状にした時に先端へ向かって広がる隙間が当該分割片の突き合わせ端部間に形成されるようにしてあり、該分割片を突き合わせて構成した筒状のサンプラーを先端側から地中へ貫入した後、前記分割片を縮径方向に締め付けて当該サンプラーを先細り状態にしつつ抜き出すようになっていることを特徴とする土壌採取装置。
  2. 抜き出し時に前記分割片を縮径方向へ締め付ける手段として、地表上で前記各分割片を締め付けるクランプを一つ以上含むことを特徴とする請求項1記載の土壌採取装置。
  3. 前記分割片を縮径方向に締め付けた時に、対向した前記突き合わせ端部どうしを互いに当接させるように案内する案内部材を、前記分割片の外側面又は内側面にあてがってあることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の土壌採取装置。
  4. 貫入時に地表で前記サンプラーの内部に位置し、抜き出し時に頭部を引っ張ることで前記分割片の後端部に形成されたフランジに係止し、これにより前記サンプラーを地中から抜き出すための係止具を含むことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の土壌採取装置。
  5. 貫入時に地表で前記サンプラーを囲繞する囲繞治具を含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の土壌採取装置。
  6. 前記分割片の先端に掘削用のカッターを形成してあることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の土壌採取装置。
  7. 縦割りにした複数の分割片を突き合わせて構成される筒状のサンプラーを含み、前記分割片を突き合わせて筒状にした時に先端へ向かって広がる隙間が当該分割片の突き合わせ端部間に形成されるようにしてあると共に、地表上で前記各分割片を縮径方向へ締め付けるクランプと、貫入時に地表で前記サンプラーの内部に位置し、抜き出し時に頭部を引っ張ることで前記分割片の後端部に形成されたフランジに係止し、これにより前記サンプラーを地中から抜き出すための係止具と、貫入時に地表で前記サンプラーを囲繞する囲繞治具と、を含む土壌採取装置を使用した土壌採取方法であって、
    前記囲繞治具及びその内側の前記係止具を地表に配置する第1工程と、該囲繞治具内に前記分割片を配置し、前記係止具を内部に位置させた筒状の前記サンプラーを組み立てる第2工程と、該サンプラーを地中へ貫入させる第3工程と、貫入後の前記サンプラーの地表上へ出ている部分に前記クランプを適用して前記分割片を縮径方向へ締め付ける第4工程と、前記係止具の頭部を引っ張って前記サンプラーを引き出す第5工程と、前記クランプを外し、前記分割片を分離して中身を取り出す第6工程と、を順次行うことを特徴とする土壌採取方法。
  8. 前記第3工程で、前記各分割片の後端部を順番に打撃していくことで前記サンプラーを地中へ貫入させることを特徴とする請求項7記載の土壌採取方法。
  9. 前記第5工程で、所定長さ前記サンプラーを抜き出したところで前の前記クランプよりも先端寄りに前記クランプを追加することを特徴とする請求項7又は請求項8記載の土壌採取方法。
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