JP4476410B2 - 水性樹脂組成物および積層体の製法 - Google Patents

水性樹脂組成物および積層体の製法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、食品等の包装用フィルムや容器等に使用されるガスバリアー性に優れた水性樹脂組成物およびそれを用いた積層体の製法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エチレン−ビニルエステル共重合体、特にエチレン−酢酸ビニル共重合体を鹸化したエチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOHと略記する)は、酸素等のガスバリア−性や耐油性、耐薬品性に優れているため、包装材料素材や、プラスチック成形物、金属表面、紙、木材等の保護被覆用材料として重用されている。
【0003】
特に内容物の酸化防止あるいは香りの保持が必要とされる食品包装用のフィルム、シート、積層物、中空容器等、あるいは各種バルーン類においては高度のガスバリア−性が要求されている。また軟質塩化ビニルからなる塩ビ壁紙、塩ビレザー、シート等では可塑剤のブリードを防止する被覆材が要求されている。そこでガスバリア−性、保香性、および耐油、耐薬品性能を高度に満たす素材の探求が広く実施されている。
【0004】
一般にEVOH層を形成する方法としては、溶融成形あるいは射出成形による方法やEVOHフィルムをラミネートする方法等が広く実施されている。一方、EVOHの溶液もしくはエマルジョン液を塗布し、乾燥する方法が提案されている。この方法は、従来法と比較し膜厚の薄い皮膜が形成できること、中空容器等の複雑な形状の物にも容易に皮膜が形成できることなどから注目される。しかしながらかかる方法によって製造されたEVOH膜は厚みが薄いために十分なバリアー性が得られず、薄膜化というメリットを十分に生かしきれなかった。さらに、コート法には他に、溶解に有機溶剤が必要である、溶液の安定性が悪く、高濃度の溶液が得られない、長期保管ができない、コート時にむらや欠陥が発生しやすいといった欠点を有しており、現実にはほとんど実用化できていない。
【0005】
前者に対する解決策として膨潤性板状フィロケイ酸塩等の添加が提案されている(特開平5−086241)。また、後者についてはエチレンを含まないポリビニルアルコールの使用による解決が試みられているが、これは、水分の存在によるバリアー性の低下が著しく、使用可能な製品はごく一部の食品に限られているのが実状である。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記のような従来技術の欠点を解消するために創案されたものであり、コート液安定性に優れた水性樹脂組成物、およびそれを用いたガスバリアー性、特に中高湿度下におけるガスバリアー性に優れた積層体の製法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
上記目的は、特定のエチレン含量のEVOH水溶液および水膨潤性フィロケイ酸塩からなる樹脂組成物(ただし、該樹脂組成物の層を少なくとも一層有する被覆プラスチックフィルムを除く。)を提供することによって達成される。
【0008】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を具体的に説明する。本発明で用いるEVOHとは、酢酸ビニルとエチレンを共重合したポリマーをけん化したものを指す。本発明においてはかかるEVOH中のエチレン含量が3〜8モル%である必要がある8モル%を越えた場合、コート液にアルコールの添加が必要になるため取り扱い性が低下する上溶媒間の蒸発速度の差が原因となる表面荒れなどの問題が発生しやすい、溶液の安定性が悪くなり長期保存が困難になるなどの弊害が起こり、さらに、得られる皮膜のバリアー性もあまり良好ではない。3モル%未満では、吸湿によるバリアー性の低下が著しく、本発明の目的を達することができない。
【0009】
また本発明で用いるEVOHのけん化度は80モル%(本発明でいうケン化度はビニルエステル成分のケン化度を示す)以上が好ましく、90モル%以上がより好ましく、95モル%以上が好ましい。けん化度があまり低い場合、樹脂自身のバリアー性が低下するため、樹脂組成物となった状態でも十分なバリアー性を維持できない場合もある。
【0010】
また、重合度は特に制限はないが、塗膜強度の点から100以上が望ましい。重合度の上限は特に制約はないが、あまり大きすぎるものは、その溶液粘度が高くなるため通常3000、好ましくは2000以下のものが使用される。ここでEVOHの重合度は1モル/リットルのチオシアン酸アンモニウムを含有する水/フェノール系混合溶剤(重量比15/85)中、30℃で測定した固有粘度より求められる。
【0011】
ビニルエステルとしてはギ酸ビニル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、安息香酸ビニル、三フッ化酢酸ビニル、ピバリン酸ビニル等のエチレンと共重合可能で該共重合体をけん化することによりビニルアルコールに変換可能なモノマーが使用できるが、特に酢酸ビニルが好ましい。
【0012】
溶剤としては、水が使用されるが、本発明の目的を阻害しない範囲において、例えば撥水など塗工上の問題を解消するために、水に少量のメチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、ブチルアルコール等の1価アルコール、エチレングリコール、プロピレングリコール等の2価アルコール、グリセリン等の3価アルコール、フェノール、クレゾール等のフェノール類、エチレンジアミン、トリメチレンジアミン等のアミン類、ジメチルスルホキシド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等を混合したものを用いることもできる。
【0013】
このようにして得られたEVOH水溶液に水膨潤性フィロケイ酸塩を配合せしめることにより、特に低湿度下におけるガスバリヤー性の優れた水性樹脂組成物を得ることができる。なお、水膨潤性フィロケイ酸塩はEVOH溶液の製造中に加えられても良いし、また製造後に加えられてもよい。水膨潤性フィロケイ酸塩の代表的な構造は、[Si−O四面体のシート状構造]と[Al−OまたはMg−Oの八面体のシート状構造]との層状の重なりを1つの単位(以下フレークと記す)として構成される層状フィロケイ酸塩である。そして、水膨潤性フィロケイ酸塩の1単位であるフレークのサイズは、およそ平均粒径10μm以下、フレーク間の間隔(底面間隔y)がおよそ2nm以下を有するものである。本発明でいう水膨潤性フィロケイ酸塩の膨潤性とは、かかるフィロケイ酸塩を水中に浸漬した場合フレーク間に水を配位し、吸収・膨潤し、場合によってはフレークあるいはその一部が分散しコロイドを生成する性質を言う。
【0014】
水膨潤性フィロケイ酸の塩原料としてはスメクタイトやバーミキュライトなどの粘土鉱物、さらには合成マイカであり、前者のスメクタイトの具体例としてモンモリロナイト、バイデライト、ノントロナイト、サポナイト、ヘクトライト、ソーコナイト、スチーブンサイトなどが例示される。これらは天然のものであっても、合成されたものでもよい。これらの中でもスメクタイト、とくにその中でもモンモリロナイトが好ましい。さらに、かかるモンモリロナイトは、Si原子4個に対しナトリウム原子を0.15個以上、好ましくは0.2個以上、より好ましくは0.25個以上、最適には0.3個以上の比率で含んでいることが好ましい。かかるモンモリロナイトは例えば、原料のモンモリロナイトをシュウ酸ナトリウム、炭酸ナトリウム等の水溶液中に分散し、分散液の上澄みのみを収集、乾燥するなどの方法で得ることができる。また、EVOH溶液と該フィロケイ酸塩からなる組成物を得るにあたり、該フィロケイ酸塩が予め水系ゾルのコロイド状態であることは好ましい。また、該フィロケイ酸塩は単独で用いられても、2種類以上が混用されてもよい。
【0015】
EVOH水溶液と該フィロケイ酸塩からなる水性樹脂組成物を得る方法についても特に制限はないが、配合して得られた水性樹脂組成物を塗布、乾燥して得られる皮膜において、光学顕微鏡観察(倍率10倍)による観察からフィロケイ酸塩の凝集物あるいは局所的な塊状物がほとんど皆無とみなされる状態でEVOH溶液中に分散していることが好適である。
【0016】
上記の分散状態を得る方法としては、例えば水膨潤性フィロケイ酸塩を水の存在下に混合したフィロケイ酸塩の水分散液とEVOH水溶液とを撹拌下に配合する方法、水膨潤性フィロケイ酸塩を水の存在下に混合したフィロケイ酸塩の水分散液中にEVOHを溶解する方法等が挙げられる。
【0017】
本発明におけるEVOH水溶液(EVOH固形分)と水膨潤性フィロケイ酸塩(固形分)との配合割合としては、該水溶液のEVOH固形分99.95〜3重量%に対し、水膨潤性フィロケイ酸塩0.05〜97重量%の範囲、好適には0.1〜80重量%、さらに好適には1〜50重量%の範囲から選ばれる。水膨潤性フィロケイ酸塩無機物の割合が0.05重量%より小さいと、該水性樹脂組成物を塗布、乾燥して得られる皮膜層のガスバリヤー性の改良効果が低いため好ましくない。一方、97重量%を越えると該皮膜層が脆くなり使用条件が制限される。
【0018】
前記水性樹脂組成物には粘度を低下させる目的で水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硝酸ナトリウムなどのアルカリ金属化合物、水酸化カルシウム、塩化カルシウム、酢酸カルシウム、硫酸カルシウム、硝酸カルシウムなどのアルカリ土類金属化合物、その他の電解質を0.01〜0.5重量%(対EVOH)配合してもよい。配合は、EVOH溶液と無機物とを配合する前でも後でもよい。
【0019】
前記水性樹脂組成物を基材表面に塗布する方法としては、キャスティングヘッドからの吐出、ロールコート、エアナイフコート、グラビアロールコート、ドクターロールコート、ドクターナイフコート、カーテンフローコート、スプレー、ワイヤーバー、ロッドコート、浸漬、刷毛塗りなど任意の手段が例示される。このように塗布された基材を熱処理する方法としては乾熱処理法、たとえば赤外線照射法、熱風乾燥法などが例示される。これらの赤外線照射、熱風乾燥などはそれぞれ単独で使用してもよいし、また併用することもできる。熱処理温度は80℃以上であることが重要で、100℃以上が好ましく、110℃以上がより好ましく、120℃以上が特に好ましい。また、200℃以下が好ましく、190℃以下が好ましく、180℃以下が最も好ましい。また熱処理の時間は5秒〜10分が好ましく、さらに好適には30秒〜7分である。なお、熱処理中は、諸条件、たとえば温度条件をコントロールすること、たとえば最初は低温で処理し、徐々に温度を上昇させる、あるいはいったん低温で乾燥して、保管しておき、別途熱処理を行うなどその方法は自由である。このような熱処理を施すことにより特にガスバリヤー性の優れた皮膜が基材表面に形成される。
【0020】
基材表面には、ドライラミネーション法などにより接着剤を予め塗布乾燥、すなわちアンカーコートすることは好ましい。ドライラミネーション用接着剤としては層間接着力が充分であれば特に限定されるものではない。例えばポリウレタン系、ポリエステル系のドライラミネート用接着剤が挙げられる。また、基材表面にコロナ放電処理、スパッタリング処理、高周波処理、火災処理、クロム酸処理、溶剤エッチング処理などや、これらを組み合わせた表面処理を施しても構わない。また塗布は1回でも良いし、複数回でも良い。
【0021】
基材としては次のものが挙げられる。熱可塑性樹脂のフィルム、例えば、プロピレンのホモポリマーを主成分とする二軸延伸フィルム、ε−カプロラクタムのホモポリマーおよびヘキサメチレンジアミンおよびメタキシリレンジアミンなどのジアミン成分とアジピン酸を主原料として得られるポリアミドを主成分とする二軸延伸フィルム、エチレングリコールとテレフタル酸やナフタレンジカルボン酸を主原料として得られるポリエステルを主成分とする二軸延伸フィルム、ビスフェノールAとホスゲンなどの炭酸誘導体を主原料として得られるポリカーボネートよりなるフィルム、塩化ビニルを主原料とし、塩化ビニル、アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸エステル等を共重合させたポリ塩化ビニリデンよりなる二軸延伸フィルム、スチレンのホモポリマーおよびスチレンを主原料としブタジエン、アクリロニトリル、等を共重合させたポリスチレンの二軸延伸フィルム、圧延または二軸延伸高密度ポリエチレンフィルム等が挙げられる。
【0022】
また、上記フィルム以外の基材として、各種成形品(シート、カップ、ボトルなど)も好適なものとして挙げられ、また繊維集合体(紙、不織布、織布、ファイブラスケーシングなど)、無機物(セメントなど)、金属、ポリ塩化ビニル樹脂製壁紙、写真印画紙なども挙げられる。
【0023】
また前記水性樹脂組成物を塗布、熱処理したあとの皮膜の厚さは、30μm以下であることが好ましく、さらに好適には10μm以下、最適には3μm以下である。30μm以上になると均一な特性を持つ皮膜を得にくい、乾燥に時間がかかるなどの問題が発生することがある。
【0024】
さらに、上記方法で得られた基材と前記水性樹脂組成物からなる皮膜形成層を含む積層構造体には、さらに他の層を従来公知の方法で積層しさらに多層にすることができる。これらの方法として例えば、押出ラミネーション法、ドライミネーション法等が挙げられる。
【0025】
また、これらの積層化にあたり層間には接着性樹脂の層をはさんで積層する通常の方法が採用される。接着性樹脂としては、実用段階でデラミネーションを起こさないものであればよく、特に限定はされないが、例えば不飽和カルボン酸またはその無水物をオレフィン系重合体(例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン等のポリオレフィン、オレフィンを主体とする共重合体)に化学的に(例えば付加反応、グラフト反応)結合させて得られる、カルボキシル基を含有する変性オレフィン系重合体が例示される。具体的には無水マレイン酸グラフト変性ポリエチレン、無水マレイン酸グラフト変性ポリプロピレン、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−エチルアクリレート共重合体、無水マレイン酸グラフト変性エチレン−酢酸ビニル共重合体から選ばれた1種または2種の混合物が挙げられる。また、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレートなどのグリシジル基を有する重合性不飽和化合物、メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン基を有する重合性不飽和化合物など、グリシジル基、アルコキシシラン基などの変性オレフィン系重合体が挙げられる。これらの官能基は複数組み合わせてもよい。具体的にはグリシジル変性ポリエチレン、グリシジル変性ポリプロピレン、グリシジル変性エチレン−アクリル酸エチル共重合体、グリシジル変性エチレン−酢酸ビニル共重合体、アルコキシシラン変性ポリエチレン、アルコキシシラン変性ポリプロピレン、アルコキシシラン変性エチレン−酢酸ビニル共重合体から選ばれた1種または2種の混合物が挙げられる。その他、多価カルボン酸、多価アルコール、ヒドロキシカルボン酸を構成成分としたポリエステル系樹脂も接着性樹脂として挙げられる。
【0026】
ドライラミネート法を採用する場合には、前述と同様のドライラミネート用接着剤が使用でき、特に限定されるものではない。
これらの方法により製造された該積層体(フィルム、シート等)から構成される容器(袋、カップ、チューブ、トレー、ボトル等)は一般食品包装用、医薬品包装用、レトルト食品包装用として極めて好適である。
【0027】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明するが、本発明はこれによってなんら制限を受けるものではない。
実施例1
エチレン含量8モル%、けん化度99.5モル%、重合度1000のEVOH8重量%、モンモリロナイト2重量%、水90重量%となるよう混合し2時間超音波洗浄機により超音波を当て、分散溶解させた後、更に90℃で加熱撹拌して未溶解部分を完全に溶解し、水性樹脂組成物を得た。なお、この時のモンモリロナイトは宮城産ベントナイトをシュウ酸カルシウム溶液で煮沸、精製して用いた。蛍光X線でみた、ケイ素原子4個に対するナトリウム原子の個数は0.32であった。この組成物を基材として二軸延伸ポリプロピレンフィルム(膜厚20μm、東京セロハン紙(株))のプライマー処理面にウレタン系アンカーコート剤(東洋モートン(株)AD335A/CAT10)を塗布したものを使用しグラビアコート法により塗布して110℃、5分間熱処理し多層フィルムを得た(EVOH層厚み3μm)。続いて該多層フィルムの酸素バリアー性(ModernControl社のOX−TRAN 10/50A使用、測定条件は20℃、85%RH)を測定したところ、11cc/m2・day・atmで、食品包装材として良好なバリアー性を示した(以下、酸素透過量の測定条件および単位は同一である)。また、該水性樹脂組成物の塗布、乾燥した層の表面および断面の光学顕微鏡観察(倍率10倍)からは、モンモリロナイトの凝集物あるいは局所的な塊状物はみとめられなかった。さらに、このコート液を40℃で保存したところ、1ヶ月後でもなんら問題なくコート可能であった。
【0028】
また、この多層フィルムの耐屈曲性試験を行った。耐屈曲性の試験は、ゲルボフレックステスター(理学工業株式会社製)を使用し12インチ×8インチの試料片を直径3.5インチの円筒状となし、両端を把持し、初期把持間隔7インチ、最大屈曲時の把持間隔1インチ、ストロークの最初の3.5インチで440度の角度のひねりを加え、その後の2.5インチは直線水平動である動作の繰り返し往復動を40回/分の速さで、20℃、65%RHの条件下に実施した。この往復動を100回繰り返して酸素透過量を測定したところ、11cc/m2・day・atmであった。
【0029】
実施例2
エチレン含量3モル%、けん化度99.5モル%、重合度1000のEVOH8重量%、モンモリロナイト2重量%、水90重量%となるよう混合し、家庭用ミキサーで15分混合の後、未溶解分を90℃で加熱撹拌溶解し、水性樹脂組成物を得た。この組成物を基材として二軸延伸ポリプロピレンフィルム(膜厚20μm、東京セロハン紙(株))のプライマー処理面にウレタン系アンカーコート剤(東洋モートン(株)AD335A/CAT10)を塗布したものを使用し、バーコート法により塗布して110℃、5分間乾燥・熱処理し、多層フィルムを得た。酸素透過量は17cc/m2・day・atmで、食品包装材として良好なバリアー性を示した。また、該水性組成物の塗布、乾燥した層の表面および断面の光学顕微鏡観察(倍率10倍)からは、モンモリロナイトの凝集物あるいは局所的な塊状物はみとめられなかった。
実施例1と同様に耐屈曲性試験を行った。屈曲後の酸素透過量は18cc/m2・day・atmであった。
【0030】
比較例1
実施例1でモンモリロナイトの配合を行わなかった以外は実施例1と同様にして、多層フィルムを作製し測定を行った。酸素透過量は150cc/m2・day・atmであり、実施例1よりも一桁低いガスバリアー性であった。
実施例1と同様に耐屈曲性試験を行った。屈曲後の酸素透過量は150cc/m2・day・atmであった。
【0031】
比較例2
実施例2でモンモリロナイトの配合を行わなかった以外は実施例2と同様にして、多層フィルムを作製し測定を行った。酸素透過量は200cc/m2・day・atmであり、実施例2よりも一桁低いガスバリアー性に留まった。
実施例2と同様に耐屈曲性試験を行った。屈曲後の酸素透過量は190cc/m2・day・atmであった。
実施例1と比較例1および実施例2と比較例2を比較すると、本発明の積層構造体はでガスバリア性に優れた、耐屈曲性のある積層構造体であることがわかる。
【0032】
実施例3
実施例1でEVOHの配合量を9重量%モンモリロナイトの配合量を1重量%とした以外は実施例1と同様にして多層フィルムを作製し、測定を行った。酸素透過量は15cc/m2・day・atmであった。
実施例1と同様に耐屈曲性試験を行った。屈曲後の酸素透過量は15cc/m2・day・atmであった。
【0033】
比較例3
実施例1でモンモリロナイトの替わりに無機物としてコロイダルシリカ(日産化学工業(株)、スノーテックス)を配合する以外は実施例1と同様にして、多層フィルムを作製し、測定を行った。酸素透過量は170cc/m2・day・atmであり、実施例1よりも一桁低いガスバリアー性であった。
実施例1と同様に耐屈曲性試験を行った。屈曲後の酸素透過量は180cc/m2・day・atmであった。
【0034】
比較例4
実施例1のEVOHのエチレン含量を20モル%とした以外は実施例1と同様の試験を行った。しかし、組成物は水には溶解せず、コート液は得られなかった。
【0035】
比較例5
実施例1のEVOHのエチレン含量を20モル%とし、溶媒の水90重量%を、水30重量%、メタノール60重量%とした他は実施例1と同様の試験を行った。しかし、得られたフィルムは白濁し、良好なものとはならなかった。
【0036】
比較例6
実施例1のEVOHのエチレン含量を20モル%とし、溶媒の水90重量%を、水30重量%、イソプロパノール60重量%とした他は実施例1と同様の試験・測定を行った。酸素透過度は35cc/m2・day・atmであった。更に、このコート液を40℃で保存したが翌日にはゲル化し、コート不能となった。
【0037】
比較例7
実施例1のEVOHのエチレン含量を0モル%(酢酸ビニル重合体けん化物)とした以外は実施例1と同様の試験を行った。酸素透過度は、130cc/m2・day・atmであった。
比較例3〜7から、本発明の要件を満足しない場合は、良好なコート液安定性、良好なバリアー性が付与されないことが分かる。
【0038】
【発明の効果】
本発明によれば、コート液安定性に優れた水性樹脂組成物が得られ、さらにこれを各種基材上に塗布し、熱処理することにより、きわめて優れたガスバリアー性、とくに中高湿度下における優れたガスバリアー性を有し、かつ保香性、耐油・耐薬品性および耐屈曲性を有する積層体を得ることができる。このようにして得た積層体は、各種用途、とくに包装用として有用である。

Claims (3)

  1. エチレン含量3〜8モル%のエチレン−ビニルアルコール系共重合体水溶液および水膨潤性フィロケイ酸塩からなる樹脂組成物。ただし、該樹脂組成物の層を少なくとも一層有する被覆プラスチックフィルムを除く。
  2. 水膨潤性フィロケイ酸塩が、モンモリロナイトである請求項1記載の樹脂組成物
  3. モンモリロナイトが、ケイ素原子4個に対しナトリウム原子を0.15個以上含むモンモリロナイトである請求項2記載の樹脂組成物
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