JP4474907B2 - 炭酸固化体の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、CaO含有廃材(例えば、コンクリート廃材)や鉄鋼製造プロセスで発生したスラグなどのような粉粒状の未炭酸化Ca含有原料を炭酸ガスと接触させ、炭酸化反応によって生成した炭酸カルシウムを主たるバインダーとして固結させた炭酸固化体の製造方法に関するものである。
鉄鋼製造プロセスで発生するスラグの利材化方法の一つとして、粉粒状のスラグをこれに含まれる未炭酸化Ca(CaO及び/又はCa(OH))を利用して炭酸固化させることにより、ブロック化された炭酸固化体を得る方法が知られている(例えば、特許文献1)。この方法では、例えば、水分を添加した粉粒状のスラグを型枠に充填し、このスラグ充填層に炭酸ガスを吹き込むことによってスラグに含まれる未炭酸化Caに炭酸化反応を生じさせ、この炭酸化反応で生成した炭酸カルシウムを主たるバインダーとしてスラグ充填層を固結させ、ブロック化された炭酸固化体を得るものである。
特開平11−71160号公報
このような炭酸固化体の製造技術は、スラグやその他のCaO含有廃材を原料として利用できるため、資源のリサイクル化という観点から非常に有用なものである。また、製造された炭酸固化体は旧来のコンクリート製品に代わる製品として、路面敷設用や建築用などの土木・建築材料、藻礁用や魚礁用などの水中沈設用材料をはじめとする様々な用途への利用が期待でき、特に藻礁用や魚礁用などの水中沈設用材料としては、海藻類の生育や水中生物の棲息に好ましい環境を提供するという面で、コンクリート製品に較べて優れた性能を有することが判っている。
しかし、上述のようにして製造される炭酸固化体は、使用するスラグなどの原料の粒度分布や成分などによっては十分な強度(圧縮強度)が得られない場合があり、このため搬送中や使用中に亀裂を生じるなどの問題を生じることがある。
したがって本発明の目的は、このような従来技術の課題を解決し、未炭酸化Ca含有原料を炭酸化反応により固結させた炭酸固化体の製造方法において、原料の粒度分布や成分などに拘りなく、高い強度を有する炭酸固化体を安定して製造することができる炭酸固化体の製造方法を提供することにある。
スラグなどの粉粒状の未炭酸化Ca含有原料(以下、“スラグ”を例に説明する)の充填層を炭酸ガス(CO)と接触させ、炭酸化反応によって生成した炭酸カルシウム(CaCO)を主たるバインダーとして固結させることにより炭酸固化体を製造する場合において、スラグ中の未炭酸化CaとCOとの反応は、各スラグ粒子の周囲に存在する水を介して進行するものと考えられている。すなわち、スラグ粒子の表面に存在する水(表面付着水)にスラグ粒子間を流れるCOが溶解するとともに、スラグ側からはCaイオンが溶出し、この水に溶解・溶出したCOとCaイオンとが反応(炭酸化反応)することにより、スラグ粒子表面にCaCOが析出するものと考えられる。そして、このスラグ粒子表面に析出したCaCOがスラグ粒子どうしを結合する主たるバインダーとなってスラグ充填層の全体が固結(炭酸固化)するものである。
本発明者らは、このような原理でスラグ充填層の炭酸固化が生じることを前提に、供給されたCOとスラグ中の未炭酸化Caとを水を介して効率的に反応させ、スラグ粒子どうしを結合する十分な量のCaCOを生成させることができる方法を見出すべく検討を行った。スラグ中の未炭酸化CaとCOとを水を介して効率的に反応させるには、スラグ粒子の表面に水が存在し且つスラグ粒子間にCOの通り路となる間隙が適切に確保されること、換言すれば、スラグ充填層内ではスラグ粒子に表面付着水が存在し且つそれ以外のスラグ粒子間の間隙にはなるべく水が存在しないことが必要であると考えられる。
そこで、このような水の存在形態の下で炭酸化反応を生じさせることができる具体的な方法について検討した結果、水分を含んだスラグ充填層の内部を一旦減圧し、しかる後、スラグ充填層に炭酸ガス存在下で炭酸化反応を生じさせる方法、或いはスラグ充填層の内部に水を十分に含ませた後、スラグ充填層の内部を減圧してその水の一部を排出し、しかる後、スラグ充填層に炭酸ガス存在下で炭酸化反応を生じさせる方法が非常に有効であることを見出した。また、スラグ充填層を炭酸固化させて得られた炭酸固化体について、上記と同様に、水分を含んだ炭酸固化体の内部を一旦減圧し、しかる後、炭酸固化体に炭酸ガス存在下で再炭酸化反応を生じさせること、或いは炭酸固化体の内部に水を十分に含ませた後、炭酸固化体の内部を減圧してその水の一部を排出し、しかる後、炭酸固化体に炭酸ガス存在下で再度炭酸化反応を生じさせることにより、炭酸固化体の強度が効果的に高められることを見出した。
本発明はこのような知見に基づきなされたもので、その特徴は以下の通りである。
[1]粉粒状の未炭酸化Ca含有原料を炭酸化反応で固結させた炭酸固化体の製造方法であって、
水分を含んだ未炭酸化Ca含有原料の充填層に炭酸ガス存在下で炭酸化反応を生じさせることにより、充填層を固結させて炭酸固化体とし、次いで、該炭酸固化体の内部に水を含ませた後、炭酸固化体内部を減圧することにより前記水の一部を排出し、しかる後、前記炭酸固化体に炭酸ガス存在下で再度炭酸化反応を生じさせることを特徴とする炭酸固化体の製造方法。
[2]粉粒状の未炭酸化Ca含有原料を炭酸化反応で固結させた炭酸固化体の製造方法であって、
未炭酸化Ca含有原料の充填層内部に水を含ませた後、充填層内部を減圧することにより前記水の一部を排出し、しかる後、前記充填層に炭酸ガス存在下で炭酸化反応を生じさせることにより、充填層を固結させて炭酸固化体とし、次いで、該炭酸固化体の内部に水を含ませた後、炭酸固化体内部を減圧することにより前記水の一部を排出し、しかる後、前記炭酸固化体に炭酸ガス存在下で再度炭酸化反応を生じさせることを特徴とする炭酸固化体の製造方法。
[3]上記[1]又は[2]の製造方法において、未炭酸化Ca含有原料の充填層又は未炭酸化Ca含有原料の充填層を炭酸化反応で固結させた炭酸固化体を水に浸漬することにより、充填層又は炭酸固化体の内部に水を含ませた後、充填層又は炭酸固化体の内部を減圧することを特徴とする炭酸固化体の製造方法。
[4]上記[1]又は[2]の製造方法において、未炭酸化Ca含有原料の充填層又は未炭酸化Ca含有原料の充填層を炭酸化反応で固結させた炭酸固化体に散水することにより、充填層又は炭酸固化体の内部に水を含ませた後、充填層又は炭酸固化体の内部を減圧することを特徴とする炭酸固化体の製造方法。
[5]上記[1]〜[4]のいずれかの製造方法において、炭酸化Ca含有原料の充填層又は未炭酸化Ca含有原料の充填層を炭酸化反応で固結させた炭酸固化体の内部を減圧する工程では、充填層又は炭酸固化体の内部を0.8気圧以下に減圧することを特徴とする炭酸固化体の製造方法。
以上述べた本発明法によれば、原料の粒度分布や成分などに拘りなく、高い強度を有する炭酸固化体を安定して製造することができる。このため搬送中や使用中に炭酸固化体に亀裂を生じるようなことも確実に防止することができる。
以下、本発明法の詳細について説明する。
本発明は、粉粒状の未炭酸化Ca含有原料の充填層を炭酸固化させる場合に適用してもよいし、或いはこの炭酸固化体の強度向上を図るために再炭酸化する場合に適用してもよい。
本発明は、未炭酸化Ca含有原料の充填層を炭酸化反応で固結させ、若しくは未炭酸化Ca含有原料の充填層を炭酸化反応で固結させた炭酸固化体に再度炭酸化反応を生じさせる、炭酸固化体の製造方法である。
先に述べたように、スラグなどの粉粒状の未炭酸化Ca含有原料(以下、“スラグ”を例に説明する)を炭酸化反応により固結させて炭酸固化体を製造する際のスラグ中の未炭酸化CaとCOとの反応は、スラグ粒子の表面に存在する水(表面付着水)にスラグ粒子間を流れるCOが溶解するとともに、スラグ側からはCaイオンが溶出し、この水に溶解・溶出したCOとCaイオンとが反応(炭酸化反応)することにより、スラグ粒子表面にCaCOが析出するものであると考えられる。
特許文献1などに示される従来技術では、スラグに適量の水分(例えば、含水率5〜10%程度)を添加した状態で炭酸化処理が行われているが、その際の水分添加の方法は、単純にスラグと水を混合するだけであるため、スラグ充填層内での水の分布状態が不均一となる。この結果、水の多いところではCOの通り路が十分に確保されないためCOが十分に流れず、このため炭酸化反応が生じにくく、また、僅かに炭酸化反応が生じる場所もCaイオンが溶け込んだ水の表面部分(すなわち、スラグ粒子表面から離れた場所)であるため、生成するCaCOはスラグ粒子どうしの結合に寄与できないものと考えられる。一方、水が少ないところではCOの通り路が十分に確保されるためCOは流れるが、肝心の水分が少ないため、スラグから溶出するCaイオンが少なく、この場合も炭酸化反応が生じにくくなるものと考えられる。そして、これら結果、得られる炭酸固化体は炭酸化不足により強度不足を生じたり、強度のばらつきが大きいものとなってしまう。
そこで、本発明の製造方法の一形態では、スラグ充填層(炭酸固化体を再炭酸化させて強度向上を図る場合には“炭酸固化体”。なお、以下は“スラグ充填層”を例に説明する。)内での水の分布状態を均一化するため、水分を含んだスラグ充填層の内部を一旦減圧する処理を行う。このような減圧処理を行うことにより、スラグ充填層内の水の分布状態が均一化すると考えられる原理を、図1(模式図)に基づいて説明する。
図1(a)は、適量の水(通常、炭酸化処理に必要且つ十分な量若しくはそれに近い量の水)を含んだスラグ充填層(例えば、水を添加して混合したスラグを型枠に装入して構成されたスラグ充填層)の内部を示している。この状態でのスラグ粒子の間隙部分は、間隙の大きさや表面張力等の影響により水の存在状態にばらつきがあり、COの通り路を塞ぐように水が多量に存在する部分と、炭酸化反応に必要な量の水(スラグ粒子の表面付着水)が十分に存在していない部分とがある。そして、この状態でスラグ充填層内部を減圧すると、部分的に偏在していた水が引かれて移動し、表面付着水量が少なかったスラグ粒子の表面に付着する。この結果、スラグ粒子の間隙部分での水の存在状態が均一化され、図1(b)に示すように、各スラグ粒子に表面付着水が均一に存在し且つスラグ粒子間にCOの通り路となる間隙が適切に確保された状態がスラグ充填層全体に実現することになる。なお、上記減圧によりスラグ充填層内に存在する水のうちの一部が充填層外に排出される場合もある。
そして、以上のように減圧処理によって水(間隙水)の分布状態が適正化されたスラグ充填層に炭酸ガス存在下で炭酸化反応を生じさせることにより、スラグ充填層全体で効率的且つ均一に炭酸化反応が進行し、この結果、生成したCaCOによるスラグ粒子間の結合力が大幅に向上し、高い強度を有する炭酸固化体を安定的に得ることができる。ここで、炭酸ガス存在下で炭酸化反応を生じさせるのに実際に使用するガスは、炭酸ガス又は炭酸ガス含有ガスである。
また、スラグ充填層を炭酸化反応で固結させた炭酸固体化の強度を向上させるため、炭酸固化体に再度炭酸化反応(再炭酸化)を生じさせる場合の原理も上記と同様である。
この場合、再炭酸化の対象となるのは従来法や上述した方法などによって得られた炭酸固化体である。スラグなどの粉粒状の未炭酸化Ca含有原料の充填層を炭酸化反応により固結させた炭酸固化体は全体に微細な貫通気孔を有しており、その内部に水を含ませる(浸透させる)ことができる。この炭酸固化体に対して、強度向上を目的として再炭酸化を行うものであるが、この際、炭酸固化体内での水の分布状態を均一化するため、炭酸固化体の内部を減圧する処理を行う。
この場合に、炭酸固化体内の水の分布状態が均一化すると考えられる原理は、先に述べたスラグ充填層の場合と同様である。すなわち、図1(a)が適量の水(通常、炭酸化処理に必要且つ十分な量若しくはそれに近い量の水)を含んだ炭酸固化体の内部を示すものとすると、この状態でのスラグ粒子の間隙部分は、間隙の大きさや表面張力等の影響により水の存在状態にばらつきがあり、COの通り路を塞ぐように水が多量に存在する部分と、炭酸化反応に必要な量の水(スラグ粒子の表面付着水)が十分に存在していない部分とがある。そして、この状態で炭酸固化体内部を減圧すると、部分的に偏在していた水が引かれて移動し、表面付着水量が少なかったスラグ粒子の表面に付着する。この結果、スラグ粒子の間隙部分での水の存在状態が均一化され、図1(b)に示すように、各スラグ粒子に表面付着水が均一に存在し且つスラグ粒子間にCOの通り路となる間隙が適切に確保された状態が炭酸固化体全体に実現することになる。なお、上記減圧により炭酸固化体内に存在する水のうちの一部が外部に排出される場合もある。
そして、以上のように減圧処理によって水(間隙水)の分布状態が適正化された炭酸固化体に炭酸ガス存在下で再度炭酸化反応を生じさせることにより、炭酸固化体全体で効率的且つ均一に炭酸化反応が進行し、この結果、新たに生成したCaCOによりスラグ粒子間の結合力が大幅に向上し、炭酸固化体の強度を顕著に高めることができる。ここで、再炭酸化される炭酸固化体は、既に炭酸化反応によって生成したCaCOによって固結しているが、スラグ中には未だ炭酸化していないCaが相当量含まれており、また、各スラグ粒子の全表面が析出したCaCOで覆われている訳ではないので、上記再炭酸化の際にもスラグ粒子から表面付着水にCaイオンが溶出し、炭酸化反応が進行することになる。
また、本発明では、スラグ充填層を炭酸固化させるに当たり、上述した減圧処理でスラグ充填層内部の水(間隙水)の分布状態を均一化した上で炭酸化を行い、これにより得られた炭酸固化体をさらに再炭酸化するとともに、この際にも、上述した減圧処理で炭酸固化体の水(間隙水)の分布状態を均一化した上で再炭酸化を行うようにすることができる。すなわち、この製造方法では、水分を含んだスラグ充填層内部を減圧処理した後、スラグ充填層に炭酸ガス存在下で炭酸化反応を生じさせることによりスラグ充填層を固結させ、さらに、このようにして得られた炭酸固化体内部に必要に応じて水(炭酸化反応に必要な水)を含ませた後、炭酸固化体内部を減圧処理し、しかる後、炭酸固化体に炭酸ガス存在下で再度炭酸化反応を生じさせるものであり、これにより、特に高い強度を有する炭酸固化体を得ることができる。
次に、本発明の製造方法の他の形態について説明する。
この形態では、スラグ充填層(炭酸固化体を再炭酸化させて強度向上を図る場合には“炭酸固化体”。なお、以下は“スラグ充填層”を例に説明する。)内での水の分布状態を均一化するため、スラグ充填層の内部に水を十分に含ませた後、スラグ充填層の内部を減圧してその水の一部(すなわち、スラグ粒子の表面付着水以外の余分な水)を排出する処理を行う。このような処理を行うことにより、スラグ充填層内の水の分布状態が均一化すると考えられる原理を、図2(模式図)に基づいて説明する。
図2(a)は、スラグ充填層内部に水を十分に含ませた状態を示している。この状態ではスラグ粒子の間隙の多くに水が存在するとともに、その間隙水中に気泡が存在している。この気泡はスラグ充填層に水を含ませる際に充填層内に閉じ込めたれた気泡であり、このような気泡はスラグ充填層全体に広く存在している。そして、この状態でスラグ充填層内部を減圧すると、図2(b)に示すように間隙水中の気泡が大きく膨張し、この気泡が間隙水をスラグ充填層外部に押し出し、最終的には図2(c)に示すように、スラグ粒子表面に付着した水(表面付着水)を残して間隙水の大部分がスラグ充填層の外に流出する。つまり、炭酸化反応に不必要なだけでなく、スラグ充填層内でのCOの通過を阻害する間隙水の大部分がスラグ充填層内部から除かれる。この結果、各スラグ粒子に表面付着水が均一に存在し且つスラグ粒子間にCOの通り路となる間隙が適切に確保された状態がスラグ充填層全体に実現することになる。
そして、以上のような処理によって水(間隙水)の分布状態が適正化されたスラグ充填層に炭酸ガス存在下で炭酸化反応を生じさせることにより、スラグ充填層全体で効率的且つ均一に炭酸化反応が進行し、この結果、生成したCaCOによるスラグ粒子間の結合力が大幅に向上し、高い強度を有する炭酸固化体を安定的に得ることができる。ここで、炭酸ガス存在下で炭酸化反応を生じさせるのに実際に使用するガスは、炭酸ガス又は炭酸ガス含有ガスである。
また、スラグ充填層を炭酸化反応で固結させた炭酸固体化の強度を向上させるため、炭酸固化体に再度炭酸化反応(再炭酸化)を生じさせる場合の原理も上記と同様である。
この場合、再炭酸化の対象となるのは従来法や上述した方法などによって得られた炭酸固化体である。スラグなどの粉粒状の未炭酸化Ca含有原料の充填層を炭酸化反応により固結させた炭酸固化体は全体に微細な貫通気孔を有しており、その内部に水を含ませる(浸透させる)ことができる。この炭酸固化体に対して、強度向上を目的として再炭酸化を行うものであるが、この際、炭酸固化体内での水の分布状態を均一化するため、炭酸固化体の内部に水を十分に含ませた後、炭酸固化体の内部を減圧してその水の一部(すなわち、スラグ粒子の表面付着水以外の余分な水)を排出する処理を行う。
この場合に、炭酸固化体内の水の分布状態が均一化すると考えられる原理は、先に述べたスラグ充填層の場合と同様である。すなわち、図2(a)が炭酸固化体内部に水を十分に含ませた状態を示すものとすると、この状態ではスラグ粒子の間隙の多くに水が存在するとともに、その間隙水中に気泡が存在している。そして、この状態で炭酸固化体内部を減圧すると、図2(b)に示すように間隙水中の気泡が大きく膨張し、この気泡が間隙水を炭酸固化体外部に押し出し、最終的には図2(c)に示すように、スラグ粒子表面に付着した水(表面付着水)を残して間隙水の大部分が炭酸固化体の外に流出する。つまり、炭酸化反応に不必要なだけでなく、炭酸固化体内でのCOの通過を阻害する間隙水の大部分が炭酸固化体内部から除かれる。この結果、各スラグ粒子に表面付着水が均一に存在し且つスラグ粒子間にCOの通り路となる間隙が適切に確保された状態が炭酸固化体全体に実現することになる。
そして、以上のような処理によって水(間隙水)の分布状態が適正化された炭酸固化体に炭酸ガス存在下で再度炭酸化反応を生じさせることにより、炭酸固化体全体で効率的且つ均一に炭酸化反応が進行し、この結果、新たに生成したCaCOによりスラグ粒子間の結合力が大幅に向上し、炭酸固化体の強度を顕著に高めることができる。ここで、再炭酸化される炭酸固化体は、既に炭酸化反応によって生成したCaCOによって固結しているが、スラグ中には未だ炭酸化していないCaが相当量含まれており、また、各スラグ粒子の全表面が析出したCaCOで覆われている訳ではないので、上記再炭酸化の際にもスラグ粒子から表面付着水にCaイオンが溶出し、炭酸化反応が進行することになる。
また、本発明では、スラグ充填層を炭酸固化させるに当たり、上述した方法でスラグ充填層内部の水(間隙水)の分布状態を均一化した上で炭酸化を行い、これにより得られた炭酸固化体をさらに再炭酸化するとともに、この際にも、上述した方法で炭酸固化体の水(間隙水)の分布状態を均一化した上で再炭酸化を行うようにすることができる。すなわち、この製造方法では、スラグ充填層内部に水を含ませた後、このスラグ充填層内部を減圧することによりその水の一部(すなわち、スラグ粒子の表面付着水以外の余分な水)を排出し、しかる後、スラグ充填層に炭酸ガス存在下で炭酸化反応を生じさせることによりスラグ充填層を固結させ、さらに、このようにして得られた炭酸固化体内部に水を含ませた後、炭酸固化体内部を減圧することによりその水の一部(すなわち、スラグ粒子の表面付着水以外の余分な水)を排出し、しかる後、炭酸固化体に炭酸ガス存在下で再度炭酸化反応を生じさせるものであり、これにより、特に高い強度を有する炭酸固化体を得ることができる。
以上述べた本発明法における原料充填層又は炭酸固化体の「減圧処理(図1及び図2のいずれの場合も含む)−炭酸化処理」は、これを複数回繰り返して実施してもよい。この場合、例えば最初に図2の原理に基づく「減圧処理−炭酸化処理」を行い、次いで、図1の原理に基づく「減圧処理−炭酸化処理」を行うようにすることもできる。
次に、以上述べた本発明法における好ましい製造条件について説明する。
粉粒状の未炭酸化Ca含有原料を炭酸化反応によって固結させることにより炭酸固化体を製造する方法にあって、未炭酸化Ca含有原料中に含まれる未炭酸化Ca、すなわちCaO及び/又はCa(OH)は、少なくとも固体粒子の組成の一部として含まれるものであればよく、したがって、鉱物としてのCaO、Ca(OH)の他に、2CaO・SiO、3CaO・SiO、ガラスなどのように組成の一部として固体粒子中に存在するものも含まれる。
粉粒状の未炭酸化Ca含有原料としては、例えば、コンクリートや鉄鋼製造プロセスで発生したスラグなどが挙げられる。この未炭酸化Ca含有原料の種類などについては、後に詳述する。
粉粒状の未炭酸化Ca含有原料の粒度に特別な制限はないが、COとの接触面積を確保して反応性を高めるためにはある程度粒度が細かい方が好ましく、具体的には実質的に(すなわち、不可避的に含まれる粒度の大きい固体粒子を除き)20mm以下、特に望ましくは5mm以下の粒度のものが好ましい。
本発明法において、未炭酸化Ca含有原料の充填層又はこれを炭酸固化させて得られた炭酸固化体に水を含ませる方法は任意であり、例えば、原料充填層又は炭酸固化体を水中に浸漬する方法(原料充填層の場合には、型枠などの充填層保持容器ごと水中に浸漬させる)、原料充填層又は炭酸固化体に散水する方法などにより、それらに水を含ませることができる。また、予め十分に水を含ませた未炭酸化Ca含有原料を型枠などの容器に装入するようにしてもよい。
原料充填層又は炭酸固化体の内部を減圧する方法も任意であり、例えば、原料充填層を形成すべき型枠を気密にできるようにし、この型枠に真空ポンプを備えた排気(吸引)機構を接続し、この排気機構により型枠内部(すなわち、原料充填層又は炭酸固化体の内部)を減圧するようにしてもよい。また、型枠などから取り出した炭酸固化体を別に用意した気密容器に収容し、この気密容器内を上記のような排気(吸引)機構により減圧するようにしてもよい。
上記減圧工程での減圧の程度にも特別な制限はないが、原料充填層又は炭酸固化体の内部の水を速やかに移動させ或いは余分な水を速やかに排出させるためには、原料充填層又は炭酸固化体の内部を0.8気圧以下、より望ましくは0.2気圧以下に減圧することが好ましい。
炭酸化処理される原料充填層又は炭酸固化体中の含水率は、原料充填層又は炭酸固化体内部の空隙率(気孔率)などによっても異なるが、通常は1〜7%、好ましくは2〜5%程度とするのが適当である。また、粒径が実質的に3mm以下の未炭酸化Ca含有原料を用いる場合には、一般に3〜11%、好ましくは5〜9%程度の含水率とするのが適当である。したがって、減圧処理により原料充填層又は炭酸固化体中の水の一部を排出させる場合には、減圧処理後の含水率が上記の範囲になるよう、減圧処理前の含水率、減圧の程度、原料充填層又は炭酸固化体内部の空隙率(気孔率)などを調整することが好ましい。
原料充填層又は炭酸固化体に炭酸ガス存在下で炭酸化反応を生じさせるには、通常、上記型枠又は気密容器内に炭酸ガス又は炭酸ガス含有ガス(以下、単に“炭酸ガス”という)を供給し、原料充填層又は炭酸固化体の内部に炭酸ガスを吹き込むか、或いは原料充填層又は炭酸固化体を気密容器の炭酸ガス雰囲気内に置き、原料充填層又は炭酸固化体の内部に炭酸ガスを浸透させる。
未炭酸化Ca含有原料としては、先に述べたように少なくとも組成の一部として未炭酸化Caを含むものであれば特に制限はないが、未炭酸化Caの含有率が高く、しかも資源のリサイクルを図ることができるという点で、鉄鋼製造プロセスで発生するスラグ、コンクリート(例えば、廃コンクリート)などが特に好ましい。一般に、鉄鋼製造プロセスで発生するスラグのCaO濃度は約13〜55mass%、また、コンクリート(例えば、廃コンクリート)のCaO濃度は約5〜15mass%(セメント中のCaO濃度:50〜60mass%)であり、また、これらは入手も容易であるため、未炭酸化Ca含有原料として極めて好適な素材であるといえる。したがって、未炭酸化Ca含有原料の少なくとも一部が、また特に望ましくは主たる原料がスラグ及び/又はコンクリートであることが好ましい。
鉄鋼製造プロセスで発生するスラグとしては、高炉徐冷スラグ、高炉水砕スラグなどの高炉系スラグ、予備処理、転炉、鋳造などの工程で発生する脱炭スラグ、脱燐スラグ、脱硫スラグ、脱珪スラグ、鋳造スラグなどの製鋼系スラグ、鉱石還元スラグ、電気炉スラグなどを挙げることができるが、これらに限定されるものではなく、また、2種以上のスラグを混合して用いることもできる。
また、鉄鋼製造プロセスで発生するスラグには相当量の鉄分(粒鉄などの鉄分)が含まれており、このようなスラグをそのまま使用すると、この鉄分の分だけ原料中でのCaO濃度が低下するため、スラグとしては地金(鉄分)回収処理を経たスラグを用いることが好ましい。この地金(鉄分)回収処理は、スラグ中に含まれている鉄分を鉄鋼製造プロセスにリサイクルするために一般に行われているもので、通常、スラグはこの地金回収を行うために粉砕処理され、磁気選別などの手段によりスラグ中に含まれる鉄分の相当量が回収除去される。
また、コンクリートとしては、例えば、建築物や土木構造物の取壊しなどにより生じた廃コンクリートなどを用いることができる。
また、未炭酸化Ca含有材としては、上記のスラグやコンクリート以外に、モルタル、ガラス、アルミナセメント、CaO含有耐火物などが挙げられ、これらの1種以上を単独でまたは混合して、或いはスラグ及び/又はコンクリートと混合して使用することもできる。
これらの材料は必要に応じて粉粒状に破砕処理され、原料として用いられる。
未炭酸化Ca含有原料は、その全量が未炭酸化Caを含む固体粒子である必要はない。すなわち、未炭酸化Ca含有原料に含まれる未炭酸化Caの炭酸化によって炭酸固化体のバインダーとして十分な量のCaCOが生成されるのであれば、未炭酸化Ca含有原料に未炭酸化Caを含まない固体粒子が含まれていてもよい。このような固体粒子としては、例えば、天然石、砂、可溶性シリカ、フライアッシュ、クリンカーアッシュ、金属(例えば、金属鉄、酸化鉄)などが挙げられる。
また、これらのうち金属鉄、酸化鉄、可溶性シリカなどは、本発明法により製造された炭酸固化体が水中沈設用材料として用いられる場合に、水中の硫黄や燐の固定剤、海藻類などの水生植物の栄養源などとして有効に作用する。また、これら以外にも任意の成分(粒子)を適量、すなわち炭酸固化体の強度低下などを招かない限度で含むことができる。
また、バインダーとなる成分として、例えば、セメントや水砕スラグ微粉末などを少量添加してもよい。
原料充填層又は炭酸固化体に炭酸化反応を生じさせるために使用される炭酸ガス又は炭酸ガス含有ガスとしては、例えば、一貫製鉄所内で排出される石灰焼成工場排ガス(通常、CO:25%前後)や加熱炉排ガス(通常、CO:6.5%前後)などが好適であるが、これらに限定されるものではない。また、ガス中のCO濃度が低すぎると処理効率が低下するという問題を生じるが、それ以外の問題は格別ない。したがって、CO濃度は特に限定しないが、効率的な処理を行うには3%以上のCO濃度とすることが好ましい。
また、炭酸ガスの供給量にも特別な制限はないが、一般的な目安としては0.004〜0.5m/min・t(原料ton)程度のガス供給量が確保できればよい。また、ガス供給時間(炭酸化処理時間)にも特別な制約はないが、目安としては炭酸ガスの供給量が未炭酸化Ca含有原料の重量の3%以上となる時点、すなわち、ガス量に換算すると原料1t当たり15m以上、好ましくは200m以上の炭酸ガスが供給されるまでガス供給を行うことが好ましい。
供給される炭酸ガス又は炭酸ガス含有ガスは常温でよいが、ガスが常温よりも高温であればそれだけ反応性が高まるため有利である。但し、ガスの温度が過剰に高いと原料充填層や炭酸固化体の水分を乾燥させたり、或いはCaCOがCaOとCOに分解してしまうため、高温ガスを用いる場合でもこのような分解を生じない程度の温度のガスを用いる必要がある。
また、炭酸ガス又は炭酸ガス含有ガスは原料充填層又は炭酸固化体の乾燥を防ぐために加湿した状態で原料充填層又は炭酸固化体に供給されることが好ましい。このため原料充填層又は炭酸固化体にガスを供給するに当たっては、炭酸ガス又は炭酸ガス含有ガスを一旦水中に吹き込んでHOを飽和させた後、原料充填層又は炭酸固化体に供給することが好ましく、これにより原料充填層又は炭酸固化体の乾燥を防止して炭酸化反応を促進させることができる。
次に、本発明の具体的な実施形態について説明する。
図3は本発明法の実施状況の一例を示すもので、原料充填層を形成する型枠を縦断面した状態を示している。
前記型枠1は実質的に気密にすることが可能な型枠であって、この例では、容器状の本体100とその上部を閉塞する蓋体101とから構成されている。前記本体100の底部にはガス給排気部2(ガス給排気用空間)が設けられるとともに、このガス給排気部2と本体100との間の隔壁には多数のガス通孔20が形成されている。前記ガス給排気部2には、ガス給排気管3が接続されるとともに、このガス給排気管3には、炭酸ガス又は炭酸ガス含有ガス(以下、総称して“炭酸ガス”という)を供給するためのガス供給管系4と、型枠1内の減圧を行うための吸引ポンプ6を備えた吸引管系5が接続されている。また、型枠1の上部には型枠内に供給されたガスの排気を行うための排気管7が接続されている。その他図面において、8〜10は各配管系に設けられた開閉弁である。
図3における本発明法の1つの実施形態(図1の作用を狙いとする実施形態)では、型枠1内にはスラグなどの粉粒状の未炭酸化Ca含有原料が装入され、適量の水(通常、炭酸化処理に必要且つ十分な量若しくはそれに近い量の水)を含んだ原料充填層Aが形成される。この水は、型枠1に装入される前の未炭酸化Ca含有原料に添加してもよいし、原料充填層Aに添加してもよい。
上記のように原料充填層Aを形成後、蓋体101を装着して型枠1を気密状態にし、しかる後、吸引管系5の吸引ポンプ6を用いた吸引により型枠1内から排気を行う。これにより原料充填層A(型枠)の内部が減圧され、原料充填層A内には先に述べたような水(間隙水)の適切な分布状態、すなわち、各原料粒子に表面付着水が均一に存在し且つ原料粒子間にCOの通り路となる間隙が適切に確保された状態が実現する。
次いで、開閉弁8,9の操作によって吸引管系5とガス供給管系4とを切り替え、ガス供給管系4から型枠1内に炭酸ガスを一定期間(例えば、数時間〜数百時間程度)供給する。炭酸ガスはガス給排気部2に導入された後、ガス通孔20から上方の原料充填層A内に吹き込まれる。原料充填層A内を通過する炭酸ガスの一部は、原料粒子からその表面付着水に溶出したCaイオンと反応し、原料粒子の表面にCaCOが析出し、これがバインダーとなって原料充填層Aが固結して炭酸固化体となる。炭酸ガスの残りは原料充填層Aを通過して排気管7から型枠1外に排出される。また、場合によっては、排気管7の開閉弁10を閉じた状態で原料充填層A内に炭酸ガスを供給するようにしてもよいが、その場合には、時々開閉弁10を開にして型枠1内に溜まったガスを放出し、型枠1内の炭酸ガス濃度が所定レベル以上に維持されるようにすることが好ましい。また、上記ガスの放出を型枠1内を減圧することによって行い、しかる後、所定濃度の炭酸ガスを導入するようにしてもよい。以上のような炭酸ガスの供給を一定期間行った後、脱型し、炭酸固化体を取り出す。なお、以上述べた「減圧処理−炭酸化処理」は、これを複数回繰り返して実施してもよい。
また、図3における本発明法の他の実施形態(図2の作用を狙いとする実施形態)では、まず、型枠1内に形成された原料充填層Aに十分な水を含ませるが、その方法としては、型枠1の上部を開放した状態で、型枠ごと水槽内の水に浸漬してもよいし、原材料充填層Aの上部から十分な量の水を散水してもよい。また、予め十分に水を含ませた未炭酸化Ca含有原料を型枠1内に装入するようにしてもよい。
上記のように原料充填層Aに水を十分に含ませた後、蓋体101を装着して型枠1を気密状態にし、しかる後、吸引管系5の吸引ポンプ6を用いた吸引により型枠1内から排気を行う。これにより原料充填層A(型枠)の内部が減圧され、原料充填層A内の空気及び水(間隙水)が原料充填層から押し出され、ガス通孔20、ガス給排気部2を経由して型枠1から排出される。この結果、原料充填層A内には先に述べたような水(間隙水)の適切な分布状態、すなわち、各原料粒子に表面付着水が均一に存在し且つ原料粒子間にCOの通り路となる間隙が適切に確保された状態が実現する。
次いで、開閉弁8,9の操作によって吸引管系5とガス供給管系4とを切り替え、ガス供給管系4から型枠1内に炭酸ガスを一定期間(例えば、数時間〜数百時間程度)供給し、原料充填層Aの炭酸化処理を行う。この炭酸化処理の条件や作用効果等は先に述べた実施形態と同様である。この炭酸化処理後、脱型し、炭酸固化体を取り出す。なお、以上述べた「減圧処理−炭酸化処理」は、これを複数回繰り返して実施してもよい。
以上のような各実施形態の製造方法により十分な強度を有する炭酸固化体が製造されるが、この炭酸固化体の強度をさらに高めるために、上記のような工程で得られた炭酸固化体をそのまま型枠1内に収納した状態で、或いは別の容器に移して再炭酸化を行うようにしてもよい。
その際、上記原料充填層Aを炭酸固化させる場合と同様に、(a)炭酸固化体の内部を一旦減圧処理し、しかる後、炭酸ガスを供給して再炭酸化を実施する方法、(b)炭酸固化体に十分な水を含ませた後、炭酸固化体の内部を減圧処理して余分な水を排出し、しかる後、炭酸ガスを供給して再炭酸化を実施する方法、のいずれかの方法を採ることが好ましい。
炭酸固化体を再炭酸化する場合、上記原料充填層を炭酸固化させる場合と同様に、炭酸固化体内に炭酸ガスを吹き込む方法と、炭酸固化体を炭酸ガス雰囲気内に置いて炭酸ガスを内部に浸透させる方法とがあり、本発明ではいずれの方法を用いてもよい。
図4は、本発明法において炭酸固化体内に炭酸ガスを吹き込む方法の実施状況の一例を示すものであって、処理容器を縦断面した状態を示している。処理容器の装置構成は、図3の実施形態とほぼ同様である。すなわち、処理容器1a(この容器は図3のような型枠であってもよい)は実質的に気密にすることが可能な容器であって、この例では、本体100aとその上部を閉塞する蓋体101aとから構成され、本体100aの底部には多数のガス通孔20aを有するガス給排気部2a(ガス給排気用空間)が設けられている。このガス給排気部2aには、ガス給排気管3aが接続されるとともに、このガス給排気管3aには、炭酸ガスを供給するためのガス供給管系4aと、処理容器1a内の減圧を行うための吸引ポンプ6aを備えた吸引管系5aが接続されている。また、処理容器1aの上部には処理容器1a内に供給されたガスの排気を行うための排気管7aが接続されている。その他図面において、8a〜10aは各配管系に設けられた開閉弁である。
図4における本発明法の1つの実施形態(図1の作用を狙いとする実施形態)では、前記処理容器内1aに、容器内壁面との間に大きな隙間を生じないように、粉粒状の未炭酸化Ca含有原料を炭酸固化させて得られた炭酸固化体Bが入れられる。これにより、処理容器底部のガス給排気部2aから導入された炭酸ガスを炭酸固化体内部(原料粒子間の間隙=貫通気孔)を通過するようにして流すことができる。炭酸固化体Bは適量の水(通常、炭酸化処理に必要且つ十分な量若しくはそれに近い量の水)を含んでいる。
上記のように処理容器1a内に炭酸固化体Bを入れた後、蓋体101aを装着して処理容器1aを気密状態にし、しかる後、吸引管系5aの吸引ポンプ6aを用いた吸引により処理容器1a内から排気を行う。これにより炭酸固化体B(処理容器)の内部が減圧され、炭酸固化体B内には先に述べたような水(間隙水)の適切な分布状態、すなわち、各原料粒子に表面付着水が均一に存在し且つ原料粒子間にCOの通り路となる間隙が適切に確保された状態が実現する。
次いで、開閉弁8a,9aの操作によって吸引管系5aとガス供給管系4aとを切り替え、ガス供給管系4aから処理容器1a内に炭酸ガスを一定期間(例えば、数時間〜数百時間程度)供給する。炭酸ガスはガス給排気部2aに導入された後、ガス通孔20aから上方の炭酸固化体B内に吹き込まれる。炭酸固化体B内を通過する炭酸ガスの一部は、原料粒子からその表面付着水に溶出したCaイオンと反応し、原料粒子の表面にCaCOが析出し、これがバインダーとなって炭酸固化体Bの固結状態がさらに高められる。炭酸ガスの残りは炭酸固化体Bを通過して排気管7aから処理容器1a外に排出される。また、場合によっては、排気管7aの開閉弁10aを閉じた状態で処理容器1a内に炭酸ガスを供給するようにしてもよいが、その場合には、時々開閉弁10aを開にして処理容器1a内に溜まったガスを放出し、処理容器1a内の炭酸ガス濃度が所定レベル以上に維持されるようにすることが好ましい。また、上記ガスの放出を処理容器1a内を減圧することによって行い、しかる後、所定濃度の炭酸ガスを導入するようにしてもよい。以上のような炭酸ガスの供給を一定期間行った後、処理容器1aから炭酸固化体Bを取り出す。なお、以上述べた「減圧処理−炭酸化処理」は、これを複数回繰り返して実施してもよい。
図4における本発明法の他の実施形態(図2の作用を狙いとする実施形態)では、上記実施形態と同様に、処理容器内1aに炭酸固化体Bが入れられる。この実施形態では、まず、炭酸固化体Bに十分な水を含ませるが、その方法としては、処理容器1aの上部を開放した状態で、処理容器ごと水槽内の水に浸漬してもよいし、炭酸固化体Bの上部から十分な量の水を散水してもよい。また、処理容器1aに入れる前に浸漬又は散水によって炭酸固化体Bに水を含ませるようにしてもよい。
上記のように炭酸固化体Bに水を十分に含ませた後、蓋体101aを装着して処理容器1aを気密状態にし、しかる後、吸引管系5aの吸引ポンプ6aを用いた吸引により処理容器1a内から排気を行う。これにより炭酸固化体B(処理容器)の内部が減圧され、炭酸固化体B内の空気及び水(間隙水)が炭酸固化体から押し出され、ガス通孔20a、ガス給排気部2aを経由して処理容器1aから排出される。この結果、炭酸固化体B内には先に述べたような水(間隙水)の適切な分布状態、すなわち、各原料粒子に表面付着水が均一に存在し且つ原料粒子間にCOの通り路となる間隙が適切に確保された状態が実現する。
次いで、開閉弁8a,9aの操作によって吸引管系5aとガス供給管系4aとを切り替え、ガス供給管系4aから処理容器1a内に炭酸ガスを一定期間(例えば、数時間〜数百時間程度)供給し、炭酸固化体Bの再炭酸化処理を行う。この再炭酸化処理の条件や作用効果等は先に述べた実施形態と同様である。この再炭酸化処理後、処理容器1aから炭酸固化体Bを取り出す。なお、以上述べた「減圧処理−炭酸化処理」は、これを複数回繰り返して実施してもよい。
図5は、本発明法において炭酸固化体を炭酸ガス雰囲気内に置いて炭酸ガスを内部に浸透させる方法の実施状況の一例を示すもので、処理容器を縦断面した状態を示している。前記処理容器1bは実質的に気密にすることが可能な容器であって、この例では、本体100bとその上部を閉塞する蓋体101bとから構成されている。前記本体100bにはガス給排気管3bが接続されるとともに、このガス給排気管3bには、炭酸ガスを供給するためのガス供給管系4bと、処理容器1b内の減圧を行うための吸引ポンプ6bを備えた吸引管系5bとが接続されている。また、処理容器1bの上部には処理容器1b内に供給されたガスの排気を行うための排気管7bが接続されている。その他図面において、8b〜10bは各配管系に設けられた開閉弁である。
図5における本発明法の1つの実施形態(図1の作用を狙いとする実施形態)では、前記処理容器内1bに粉粒状の未炭酸化Ca含有原料を炭酸固化させて得られた炭酸固化体Bが入れられる。この炭酸固化体Bは適量の水(通常、炭酸化処理に必要且つ十分な量若しくはそれに近い量の水)を含んでいる。次いで、処理容器1bに蓋体101bを装着して処理容器1bを気密状態にし、しかる後、吸引管系5bの吸引ポンプ6bを用いた吸引により処理容器1b内から排気を行う。これにより炭酸固化体B(処理容器)の内部が減圧され、炭酸固化体B内には先に述べたような水(間隙水)の適切な分布状態、すなわち、各原料粒子に表面付着水が均一に存在し且つ原料粒子間にCOの通り路となる間隙が適切に確保された状態が実現する。
次いで、開閉弁8b,9bの操作によって吸引管系5bとガス供給管系4bとを切り替え、ガス供給管系4bから処理容器1b内に炭酸ガスを一定期間(例えば、数時間〜数百時間程度)供給する。処理容器1b内に供給された炭酸ガスの一部は炭酸固化体Bの表面から内部に浸透し、原料粒子からその表面付着水に溶出したCaイオンと反応し、原料粒子の表面にCaCOが析出し、これがバインダーとなって炭酸固化体Bの固結状態が高められる。炭酸ガスの残りは排気管7bから処理容器1b外に排出される。また、場合によっては、排気管7bの開閉弁10bを閉じた状態で処理容器1b内に炭酸ガスを供給するようにしてもよいが、その場合には、時々開閉弁10bを開にして処理容器1b内に溜まったガスを放出し、処理容器1b内の炭酸ガス濃度が所定レベル以上に維持されるようにすることが好ましい。また、上記ガスの放出を処理容器1b内を減圧することによって行い、しかる後、所定濃度の炭酸ガスを導入するようにしてもよい。以上のような炭酸ガスの供給を一定期間行った後、処理容器1bから炭酸固化体Bを取り出す。なお、以上述べた「減圧処理−炭酸化処理」は、これを複数回繰り返して実施してもよい。
図5における本発明法の他の実施形態(図2の作用を狙いとする実施形態)では、上記実施形態と同様に、処理容器内1bに炭酸固化体Bが入れられる。この実施形態では、まず、炭酸固化体Bに十分な水を含ませるが、その方法としては、処理容器1bの上部を開放した状態で、処理容器ごと水槽内の水に浸漬してもよいし、炭酸固化体1Bの上部から十分な量の水を散水してもよい。また、処理容器1bに入れる前に浸漬又は散水によって炭酸固化体Bに水を含ませるようにしてもよい。
上記のように炭酸固化体Bに水を十分に含ませた後、蓋体101bを装着して処理容器1bを気密状態にし、しかる後、吸引管系5bの吸引ポンプ6bを用いた吸引により処理容器1b内から排気を行う。これにより炭酸固化体B(処理容器)の内部が減圧され、炭酸固化体B内の空気及び水(間隙水)が炭酸固化体から押し出され、処理容器1bから排出される。この結果、炭酸固化体B内には先に述べたような水(間隙水)の適切な分布状態、すなわち、各原料粒子に表面付着水が均一に存在し且つ原料粒子間にCOの通り路となる間隙が適切に確保された状態が実現する。
次いで、開閉弁8b,9bの操作によって吸引管系5bとガス供給管系4bとを切り替え、ガス供給管系4bから処理容器1b内に炭酸ガスを一定期間(例えば、数時間〜数百時間程度)供給し、炭酸固化体Bの再炭酸化処理を行う。この再炭酸化処理の条件や作用効果等は先に述べた実施形態と同様である。この再炭酸化処理後、処理容器1aから炭酸固化体Bを取り出す。なお、以上述べた「減圧処理−炭酸化処理」は、これを複数回繰り返して実施してもよい。
本発明により得られる炭酸固化体の形状は任意であり、例えば断面形状が円形、楕円形、三角形、四角形以上の多角形、星形など、或いは全体形状が球形状、楕球形、四面体以上の多面体形、円錐体形、柱状形、テトラポット形など、任意の形状とすることができる。
また、本発明により得られる炭酸固化体は、漁礁・藻礁造成用石材、築磯用石材、水質浄化用石材、通水性舗装用石材、通水性被覆ブロック、埋設排水溝用ブロック、水耕栽培用ベース材、浄水用フィルター、給水用容器をはじめとする種々の用途に使用することができる。
[実施例1]
以下のような参考例、比較例の炭酸固化体を製造した。
参考例
最大粒度が3mmの製鋼スラグを水分8%となるように調湿し、これを気密にすることが可能な1m×1m×1mの型枠内に充填して適度に締め固めた後、型枠内を0.2atmまで減圧した。その後、炭酸ガスを30%含有する排ガスを7Nm/hrの供給量で3日間吹き込み、スラグ充填層を炭酸固化させて炭酸固化体を得た。この炭酸固化体の任意の箇所から直径100mm、長さ200mmの円柱状の炭酸固化体を5本切り出し、参考例の炭酸固化体I〜Iとした。
・比較例
最大粒度が3mmの製鋼スラグを水分8%となるように調湿し、1m×1m×1mの型枠内に充填して適度に締め固めた後、炭酸ガスを30%含有する排ガスを7Nm/hrの供給量で3日間吹き込み、スラグ充填層を炭酸固化させて炭酸固化体を得た。この炭酸固化体の任意の箇所から直径100mm、長さ200mmの円柱状の炭酸固化体を5本切り出し、比較例の炭酸固化体C〜Cとした。
以上のようにして得られた参考例と比較例の炭酸固化体I〜I、C〜Cについて、CO含有量(CaCO含有量から計算されるCO量)を測定するとともに、圧縮強度を測定した。その結果を表1に示すが、参考例の炭酸固化体は比較例に比べてCO吸収量が増大し、圧縮強度も増加していることが判る。
Figure 0004474907
[実施例2]
以下のような本発明例、比較例の炭酸固化体を製造した。
・本発明例
最大粒度が約10mmで、且つ粒度0.1mm以下の粒子の割合が約15mass%である粒度分布を持つスラグ(脱燐スラグ)を、1m×1m×1mの型枠内に充填して適度に締め固めた後、炭酸ガスを供給量6Nm/hrの割合で3日間吹込み、スラグ充填層を炭酸固化させて炭酸固化体を得た。
この炭酸固化体の任意の箇所から直径100mm,長さ200mmの円柱状の炭酸固化体を5本切り出した。これらを水槽内の水に浸漬して内部に水を十分に含ませた後、直ちに真空デシケータ内に装入して真空デシケータ(炭酸固化体)内を0.1atmまで減圧し、炭酸固化体の内部から余分な水分を排出した。次いで、真空デシケータ内に炭酸ガス(CO:50%)を供給量0.01Nm/hrの割合で7日間供給し、本発明例の炭酸固化体I〜Iを得た。
・比較例
最大粒度が約10mmで、且つ粒度0.1mm以下の粒子の割合が約15mass%である粒度分布を持つスラグ(脱燐スラグ)を、1m×1m×1mの型枠内に充填して適度に締め固めた後、炭酸ガスを供給量6Nm/hrの割合で5日間吹込み、スラグ充填層を炭酸固化させて炭酸固化体を得た。この炭酸固化体の任意の箇所から直径100mm,長さ200mmの円柱状の炭酸固化体を7本切り出し、比較例の炭酸固化体C〜Cを得た。
以上のようにして得られた本発明例と比較例の炭酸固化体I〜I、C〜Cについて、CO含有量(CaCO含有量から計算されるCO量)を測定した結果を図6に示す。これによれば、本発明例の炭酸固化体は、トータルの炭酸ガス供給量が比較例のものよりも少ないにも拘らず、比較例のものに較べてCO含有量が大幅に増加している。
本発明例の炭酸固化体Iと比較例の炭酸固化体Cについて、圧縮強度を測定した結果を図7に示す。なお、圧縮強度は試料の端面を研磨した後、アムスラー試験機により測定した。図7によれば、本発明例の炭酸固化体は比較例のものに較べて圧縮強度が飛躍的に増加していることが判る。
次に、本発明例の炭酸固化体Iと比較例の炭酸固化体Cを任意の位置で切断し、その切断面の粗さを測定した結果を図8に示す。これによれば、本発明例の炭酸固化体は比較例のものに較べて切断面の表面粗さがかなり小さくなっている。この理由は、比較例の炭酸固化体では、炭酸化反応によるCaCOの生成量が少ないため、切断時にスラグ粒子の一部が剥離し、表面が粗くなるのに対して、本発明例の炭酸固化体ではCaCOの生成量が多く、切断時にスラグ粒子の剥離が生じにくいためである。また、これら本発明例と比較例の炭酸固化体の切断面の顕微鏡拡大写真を図9に示す。これによれば、図9(a)に示す比較例に較べて、図9(b)に示す本発明例では気孔部の割合がかなり小さくなっており、CaCOの生成量が大幅に増加していることが判る。
本発明の一実施形態において、原料充填層又は炭酸固化体内での水の分布状態が均一化する原理を示す説明図 本発明の他の実施形態において、原料充填層又は炭酸固化体内での水の分布状態が均一化する原理を示す説明図 本発明の一実施形態を型枠を縦断面した状態で示す説明図 本発明の他の実施形態を処理容器を縦断面した状態で示す説明図 本発明の他の実施形態を処理容器を縦断面した状態で示す説明図 実施例2で得られた本発明例と比較例の炭酸固化体について、CO含有量を測定した結果を示すグラフ 実施例2で得られた本発明例と比較例の炭酸固化体について、圧縮強度を測定した結果を示すグラフ 実施例2で得られた本発明例と比較例の炭酸固化体について、切断面の粗さを測定した結果を示すグラフ 実施例2で得られた本発明例と比較例の炭酸固化体の切断面組織の微鏡拡大写真
符号の説明
1…型枠、1a,1b…処理容器、2,2a…ガス給排気部、3,3a,3b…ガス給排気管、4,4a,4b…ガス供給管系、5,5a,5b…吸引管系、6,6a,6b…吸引ポンプ、7,7a,7b…排気管、8,8a,8b,9,9a,9b,10,10a,10b…開閉弁、20,20a…ガス通孔、100,100a,100b…本体、101,101a,101b…蓋体、A…原料充填層、B…炭酸固化体

Claims (5)

  1. 粉粒状の未炭酸化Ca含有原料を炭酸化反応で固結させた炭酸固化体の製造方法であって、
    水分を含んだ未炭酸化Ca含有原料の充填層に炭酸ガス存在下で炭酸化反応を生じさせることにより、充填層を固結させて炭酸固化体とし、次いで、該炭酸固化体の内部に水を含ませた後、炭酸固化体内部を減圧することにより前記水の一部を排出し、しかる後、前記炭酸固化体に炭酸ガス存在下で再度炭酸化反応を生じさせることを特徴とする炭酸固化体の製造方法。
  2. 粉粒状の未炭酸化Ca含有原料を炭酸化反応で固結させた炭酸固化体の製造方法であって、
    未炭酸化Ca含有原料の充填層内部に水を含ませた後、充填層内部を減圧することにより前記水の一部を排出し、しかる後、前記充填層に炭酸ガス存在下で炭酸化反応を生じさせることにより、充填層を固結させて炭酸固化体とし、次いで、該炭酸固化体の内部に水を含ませた後、炭酸固化体内部を減圧することにより前記水の一部を排出し、しかる後、前記炭酸固化体に炭酸ガス存在下で再度炭酸化反応を生じさせることを特徴とする炭酸固化体の製造方法。
  3. 未炭酸化Ca含有原料の充填層又は未炭酸化Ca含有原料の充填層を炭酸化反応で固結させた炭酸固化体を水に浸漬することにより、充填層又は炭酸固化体の内部に水を含ませた後、充填層又は炭酸固化体の内部を減圧することを特徴とする請求項1又は2に記載の炭酸固化体の製造方法。
  4. 未炭酸化Ca含有原料の充填層又は未炭酸化Ca含有原料の充填層を炭酸化反応で固結させた炭酸固化体に散水することにより、充填層又は炭酸固化体の内部に水を含ませた後、充填層又は炭酸固化体の内部を減圧することを特徴とする請求項1又は2に記載の炭酸固化体の製造方法。
  5. 炭酸化Ca含有原料の充填層又は未炭酸化Ca含有原料の充填層を炭酸化反応で固結させた炭酸固化体の内部を減圧する工程では、充填層又は炭酸固化体の内部を0.8気圧以下に減圧することを特徴とする請求項1〜のいずれかに記載の炭酸固化体の製造方法。
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