JP4474443B2 - 形状測定装置および方法 - Google Patents

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Description

本発明は、レンズやミラーなど光学素子、および光学素子を製作するための型の表面形状を、ナノメートルオーダーの高精度で測定する接触式プローブを有する形状測定方法および装置に関する。特に傾斜角度が急峻な形状、例えば90度の壁にも対応できる形状測定装置に利用できる。
一般に、レンズやミラーなどの形状を測定する接触式形状測定方法および装置は、次のように構成されている。
図8は、特登録03272952(特許文献1)に開示されている第1の従来例である。図8において接触プローブは、板ばねなどによりプローブ保持手段に対して軸方向に移動可能に支持され、その変位が一定になるように制御されている。この時のプローブ保持手段の位置および姿勢を、レーザ測長器(干渉計とも呼ばれる)を用いて測定し、それらのデータを演算することにより、接触プローブの変位を求めている。
また図9は、特登録03063290(特許文献2)に開示されている第2の従来例である。図9では、軸方向に移動可能に支持された接触式プローブの軸方向の変位を測定すると共に、軸方向と直行する方向の変位を測定する変位センサーを設け、接触式プローブの傾斜も測定して補正している。
また図10(a)、(b)は、特開2005−037197(特許文献3)に開示されている第3の従来例である。図10(a)、(b)では、接触式プローブの軸方向と直行する方向の変位を測定する変位センサー5が設けられている。また、接触式プローブの接触によって被測定物体表面に生じる水平方向接触力を推定する手段と、接触式プローブの接触によって被測定物体表面に生じる鉛直方向接触力を検出する手段とが記載されている。更に、被測定物体表面の各測定位置における傾斜角度情報を検出する手段と、倣い動作時に前記被測定物体表面上で発生する垂直抗力が一定になるように、前記軸方向接触力を制御することが記載されている。
尚、このような形状測定装置は、他の文献では輪郭測定装置と呼ばれる場合がある。また、接触式プローブは、他の文献で触針、触針子、フィーラーなどと呼ばれる場合があるが、本明細書ではプローブに統一して説明する。また、レーザ測長器はナノメートルオーダーで長さを測定する装置であるが、その測定原理から干渉計とも呼ばれる。本明細書では主に干渉計と表現した。
特登録03272952 特登録03063290 特開2005−037197
前記従来の技術によれば、以下のような課題がある。
(1)急傾斜面では接触式プローブの走査速度を安定させることが困難
前述の従来例1、2、3では、接触式プローブを鉛直方向に制御しながら被測定面上を走査させる方法である。つまり、接触式プローブが受ける接触力によるフィードバック制御は鉛直方向だけであった。しかしながら傾斜面における接触式プローブを走査する方向には、必ず鉛直方向成分が含まれるため、走査速度は接触式プローブの追従制御の制御偏差によって必ず影響をうける。この影響は、傾斜角度が急峻になればなるほど顕著となり、接触式プローブの走査速度を安定させることが困難となる。傾斜角度θが90度の鉛直面の場合、接触力を一定にしようとする制御系の制御偏差により、走査速度が変化する。その結果、測定精度の低下やプローブの走査速度を上げられないといった問題が生じる。すなわち急傾斜面ではプローブの走査が困難となる。
(2)急傾斜面では接触式プローブの接触力の制御が困難
前述の特許文献3で用いられている図10(b)を用いて説明する。図10(b)には、接触式プローブで傾斜角度θの被測定物に接触している図が示されている。ここで、鉛直方向の接触力をNz、水平方向の接触力をNx、被測定物表面法線方向の接触力をNnとしている。従来例1では、図10(b)における鉛直方向の接触力Nzが一定になるように、接触式プローブを鉛直方向に制御している。また、従来例3では被測定物表面法線方向の接触力Nnが一定になるように、接触式プローブを鉛直方向に制御している。
しかしながら、傾斜角度θが急峻になればなるほど、接触式プローブの鉛直方向の移動量に対する、NzやNnの変化量が小さくなる。そのため、急傾斜面において接触式プローブを被測定面に追従するように制御することが困難となり、測定精度の低下や、走査速度が上げられないといった問題が生じていた。特に傾斜角度θが90度の鉛直面の場合では、接触式プローブを鉛直方向に移動させても、鉛直方向の接触力Nzおよび被測定物表面法線方向の接触力Nnは変化しないため、接触式プローブを被測定面に追従ように制御することは不可能であった。
また、前述の従来例1では、プローブの制御をZスライドが担っている。Zスライドは被測定エリア全域をカバーする可動領域が必要なので、構造的に大きくなることから、高い剛性は望めず、固有振動数は低くなる。この影響は前述した接触力を一定にする制御ループ内に現れ、制御ゲインを高くできない原因となる。その結果、プローブが追従できる周波数は低く制限されるため、走査速度を上げられないといった問題を生じる。
本発明は、前記従来技術の有する未解決の課題に鑑みてなされたものであり、非常に急峻な面に対してもプローブを追従させることができる形状測定方法および装置を提供することである。また接触力ベクトルと直交する向きに走査することにより、垂直面にも対応できる形状測定方法および装置を提供することである。その結果として、従来技術では難しかった急峻な傾斜面、例えば鉛直面を高精度かつ高速に測定可能にすることである。
本発明は、接触式プローブを被測定物に接触させつつ前記被測定物の表面を走査させるとともに接触式プローブの位置を計測することで前記被測定物の形状を測定する形状測定装置において、
次元方向に移動可能プローブ持手段と、
前記プローブ支持手段に対して弾性支持された接触式プローブと、
接触式プローブの位置および姿勢を計測する計測手段と、
計測した接触式プローブの位置または姿勢から前記被測定物に対して接触式プローブが受ける接触力を演算する演算手段
を有し、
前記被測定物の形状を測定する際に、演算された前記接触力の方向に沿って前記プローブ持手段を移動させて前記接触式プローブの位置または姿勢を変化させることで、前記接触力の大きさを目標値に近づけることを特徴とする形状測定装置である。
また本発明にかかる形状測定方法は、三次元方向に移動可能なプローブ支持手段に弾性支持された接触式プローブを被測定物に接触させつつ前記被測定物の表面を走査させるとともに前記接触式プローブの位置を計測することで前記被測定物の形状を測定する形状測定方法において、
前記接触式プローブの位置および姿勢を測定して、計測した接触式プローブの位置または姿勢に基づいて接触力を演算する工程と、
前記被測定物の表面形状を測定する際に、演算された前記接触力の方向に沿って前記プローブ支持手段を移動させて前記接触式プローブの位置または姿勢を変化させることで、前記接触力の大きさを目標値に近づける工程と、
を有することを特徴とする形状測定方法である。
本発明は、接触式プローブを接触力ベクトルの方向に制御することで、急傾斜面でもプローブの接触力の制御を可能としている。また、接触力ベクトルに直交する方向にプローブを走査するので、急傾斜面でもプローブの走査が可能となる。また高速移動が可能な微動テーブルが接触力制御を担うので、プローブの被測定面への追従性が向上し、測定時間を短縮できる。
本発明を実施するための最良の形態を、図面を用いて説明する。
(実施例1)
図1は本発明の実施例1の形状測定装置の模式図である。形状測定装置を設置する床1の上に除振台2a、2bを設け、その上に計測ベース3を設ける。この構造により、床面の微小振動は減衰し、計測ベース3までは伝わらない。なお、ベースは被測定物と位置の基準である参照ミラーとを固定する部材である。本測定装置ではこの3つの参照ミラーに対して被測定物表面上の点の位置を測定するものである。
計測ベース3は箱状の構造物であり、計測の基準となるため線熱膨張係数の小さな材料、例えば低熱膨張鋳鉄などの材料を用いて製作する。図ではコの字の形に示してあるが紙面に垂直な方向に壁や柱を取り付け、箱状の構造物とすることにより、剛性を向上させることができる。この計測ベース3に被測定物4を搭載し、さらに水平方向の測定基準であるX基準ミラー5、および図示しないY基準ミラーを保持し、鉛直方向の測定基準であるZ基準ミラー7を保持する。これら基準ミラーは後述するレーザ測長器(干渉計とも呼ばれる)で距離を測定するときの位置基準となるものである。そして被測定物の表面上の点を位置基準であるX、Y、Zの3つのミラーを位置基準にして測定することがこの測定装置の目的である。
次にプローブを搬送する走査軸について説明する。床1に固定して除振台8a、8bを設置し、その上に走査軸ベース9を設ける。走査軸ベース9に固定して図中のX方向に移動可能にX軸スライド10と、X軸モータ11を設ける。またX軸スライド10に固定してY方向に移動可能にY軸12と、Y軸モータ13を設け、Y軸スライド12に固定してZ方向に移動可能にZ軸スライド14と、Z軸モータ15を設ける。この機構により、Z軸スライド14はXYZの方向に3次元方向に移動可能となる。プローブのプローブ保持手段17をZ軸14に固定して設け、板ばね18によって支持したプローブシャフト19を設ける。板ばねは例えば1枚または2枚の薄い金属性の板で、図のように片持ち梁の構造でも両片持ち梁の構造でも良い。プローブシャフト19は線熱膨張係数の小さい材料で製作し、測定時の安定性を確保する。
プローブシャフト19の上端に固定してZ方向および、横方向、すなわちXY方向にミラー面を持つ3面ミラー20を設け、他端に被測定物と接触する先端球21を設ける。また、プローブの下端の横方向、すなわちXY方向の変位を測定する小型ミラー22をプローブシャフトに固定して設ける。一方、プローブ保持手段17にはプローブの位置姿勢を測定するための干渉計をZ軸方向に2個配置する。まず、X方向の移動量を測定する干渉計Xp1、Xp2をプローブ保持手段17に固定して設け、それぞれ、プローブシャフトに固定した3面ミラー20、および、小型ミラー22との距離を測定する。図示していないが、Y方向についても同様に、2個の干渉計Yp1、Yp2によってプローブシャフトに固定した3面ミラー20、および、小型ミラー22との距離を測定する。また、Z方向を測定する干渉計Zpをプローブ保持手段17に固定して設け、プローブの3面ミラー20とのZ方向の距離を測定する。このZp干渉計の上面に小型ミラー23を設ける。Z軸14に固定して、小型ミラー23とZ基準ミラー7との距離を測定するZ軸用干渉計Z1を設ける。このZ軸用干渉計の測定軸はプローブの軸、そして先端球21の中心を通るように配置する。
また、プローブ保持手段17には、X基準ミラー5との距離を2箇所で測定するための小型ミラー24a、24bを設け、この距離を測定するためのX軸用干渉計X1、X2をZ軸14に固定して設ける。図示していないが、Y方向についても同様、Y軸用干渉計Y1、Y2をZ軸14に固定して設ける。レーザ測長器(干渉計とも呼ばれる)で測定した距離を干渉計と同じ記号で表す。例えば、干渉計X1で測定した距離をX1などと表す。また、横方向の干渉計を設置する高さ方向の間隔を次の記号で表す。
L1 干渉計X1とX2との間隔(不図示の干渉計Y1とY2との間隔)
L2 干渉計X2とXp1との間隔(不図示の干渉計Y2とYp1との間隔)
L3 干渉計Xp1とXp2との間隔(不図示の干渉計Yp1とYp2との間隔)
L4 干渉計Xp2とプローブ先端球21の中心位置との間隔(不図示の干渉計Yp2とプローブ先端球21の中心位置との間隔)
次に制御系について説明する。図1において、中カッコ{ }は1次元の配列データを表す。例えば3次元的な位置ベクトルや方向ベクトルもこの記号を用いて表す。また、配列データの要素を表す時にはサフィックスに番号をつける。例えば{P}の要素はP、Pなどと表す。
プローブに取り付けたミラーとの距離をプローブ保持手段17から測定する5つの干渉計Xp1、Xp2、Yp1、Yp2、Zpをプローブ位置姿勢計算手段25に導き、プローブ先端球21の中心位置およびプローブ姿勢を表すベクトル{P}を計算する。{P}の要素は、3次元的なX、Y、Z座標および、姿勢を表す3つの回転角、θx(X軸まわりの回転角度)、θy(Y軸まわりの回転角度)、θz(Z軸まわりの回転角度)の合計6個である。幾何学的な考察から次の式で計算できる。
まず、XYZ位置については(式1)〜(式3)で計算できる。
=Xp1+(Xp2−Xp1)*(L3+L4)/L3 (式1)
=Yp1+(Yp2−Yp1)*(L3+L4)/L3 (式2)
=−Zp (式3)
また、姿勢を表す3つの回転角については(式4)〜(式6)で計算できる。
=(Yp2−Yp1)/L3 (式4)
=−(Xp2−Xp1)/L3 (式5)
=0 (式6)
符号については、干渉計の取り付け向き、座標系の取り方によって決まる。PはZ軸まわりの回転角度だが、この実施形態では測定していないので、ゼロとする。
{P}を接触力計算手段26に導き、あらかじめ求めておいた剛性Kx、Ky、Kzと、プローブ位置姿勢計算手段25が(式1)〜(式3)を用いて計算するプローブ先端球の中心位置とから接触力ベクトル{Fn}を計算する。
次に、第2の測定手段の測定結果とあらかじめ求めておいたプローブの前記弾性支持の剛性から、プローブが被測定物から受ける接触力ベクトル(方向と大きさ両方)を計算する接触力ベクトル計算手段について、説明する。
図2に傾斜面に接触した時の接触式プローブの模式図を示す。(a)はプローブが被測定面に接触する前のプローブを表す。(b)はプローブが被測定面に接触し、接触力{Fn}を受けて位置姿勢がずれたときのプローブを表す。説明の簡単のため、Y方向の記述は省略するが、一般性に問題はない。ここで、記号を次のように定義した。なお、プローブの剛性はあらかじめ次のようにして求めておく。
Kz プローブのZ方向剛性
Kx プローブのX方向剛性
Kr プローブの回転方向剛性
δz プローブ先端球のZ方向変位
δx プローブ先端球のX方向変位
θ プローブの角度変位
W 被測定物の表面
{Fn} 接触力ベクトル
{e} 接触力ベクトルの方向の単位ベクトル.つまり{e}={Fn}/|{Fn}|
F0 目標接触力
{F1} 接触力偏差ベクトル
{D} 接触力に関するXYZ方向の制御量
{S} 走査に関するXYZ方向の制御量
Kzについてはプローブ先端球にZ方向の力を加え、その時のZ方向の移動量から求めることができる。Kxについてはプローブ先端球にX方向の力を加え、その時のX方向の移動量から求めることができる。第2の測定手段から、プローブの位置姿勢を測定し、それを使ってプローブ先端球の位置δz、δxを計算する。具体的な測定手段の構成と計算法については実施形態の項目で説明する。この測定値δz、δxと、あらかじめ求めておいたプローブの剛性Kx、Kzを用い、接触力ベクトル{Fn}は次のように計算できる。
{Fn}のX方向成分をKxδxとする、{Fn}のZ方向成分をKzδzとする。また、説明のために接触力ベクトル{Fn}の方向の単位ベクトルを{e}とする。つまり{e}={Fn}/|{Fn}|。ここで、|{Fn}|は接触力ベクトル{Fn}の大きさを表す。この接触力ベクトル{Fn}を接触力偏差計算手段27に導き、あらかじめ定めておいた接触力の目標値F0を用いて、接触力偏差ベクトル{F1}を計算する。なお、接触力の目標値であるF0はあらかじめコントローラ32に記憶しておく。
次に、接触力ベクトルと直交する走査方向を計算する走査方向計算する手段について図3も使って説明する。接触式プローブの走査は被測定面前面を網羅するようにつづれおり状やうずまき状などの軌跡で行う。この時、プローブの位置姿勢は測定するので、ここでは軌跡を正確に目標軌道にあわせこむ必要はない。むしろ走査方向が接触力ベクトル、図中{Fn}に直交する方向になっていることが肝要である。走査方向{S}を接触力ベクトルと直交する方向とすれば、従来技術の課題であった急傾斜面、あるいは鉛直面であっても被測定面にそった走査が可能となる。
次に、接触力ベクトルの大きさが一定になるように、接触力ベクトルの方向に、前記XYZスライドの移動量を調節する接触力フィードバック制御手段について説明する。前述した接触力ベクトル{Fn}とあらかじめ定めておいた目標の接触力の大きさF0と比較し、接触力偏差ベクトル{F1}を計算する。具体的には次式でこれを計算する。
{F1}={Fn}*(|{Fn}|−F0)/|{Fn}|=(|{Fn}|−F0){e} (式7)
この接触力偏差ベクトルの大きさをゼロにするため、前記XYZスライドを接触力{Fn}の方向に移動させる。この量、すなわちXYZの制御量を{D}と表す。XYZ軸が{D}に従って動くことにより、プローブ保持手段が動き、プローブが動き、接触力偏差ベクトル{F1}をゼロに制御することができる。ここで、非測定面は急斜面、あるいは鉛直面であっても、接触力を測定し、その方向に制御量をとっているので制御可能である。また、{F1}をゼロに制御することは、(式1)より、接触力ベクトル{Fn}の大きさを目標値であるF0に制御することを意味している。
これにより、被測定物の形状が急傾斜面や鉛直面の場合でも、接触力の方向にXYZスライドを制御することが可能になり、被測定面に対して高精度に追従制御可能である。
次に、その接触力の制御をしながら同時に、前記走査方向に従って前記XYZスライドを移動させる方法を図3も参照しながら説明する。接触力の制御は接触力{Fn}の方向にXYZスライドを制御することによって実現することを述べた。この接触力のフィードバック制御をかけている状態でXYZスライドを前述した走査方向{S}に走査させる。前述したように走査方向は接触力ベクトル{Fn}と直交するように決めていたので、{S}の方向に移動しても接触力{Fn}の制御系には影響しないので、それぞれ独立に制御系を構成できる。その結果、接触力を制御しながら、走査を行うことが可能となる。
この接触力偏差ベクトル{F1}を接触力に関する制御量計算手段28に導き、接触力に関する制御量{D}を計算する。制御量{D}はコントローラ32によって制御するスイッチ回路34に導き、そのまま{D}を出力するか、ゼロを出力するかを切り替える。{D}を出力する場合は接触力を一定にする制御をかける場合を意味し、ゼロを出力する場合はこの制御を行わないことを意味する。なお、コントローラ32は形状測定装置全体を制御するコンピュータである。
図1のスイッチ回路34の出力を加算回路33に接続し、コントローラ32から出力されるXYZ軸走査の制御量{S}を加え合わせ、XYZ軸の制御量を計算する。この加算回路33の出力をXYZ軸ドライバ35に接続する。XYZ軸ドライバ35は入力の制御量をXYZ軸の現在位置に加えて目標位置を計算し、XYZ軸をその目標位置に移動させる。
スイッチ回路が[D}を出力する場合、すなわち接触力のフィードバック制御を行う場合は、制御量{D}は加算回路33を通り、XYZ軸ドライバ35を介してXYZ軸を移動させる。その結果、Z軸に固定されているプローブ保持手段17を3次元的に{D}の方向に移動させる。するとプローブ保持手段に接続されているプローブ19、およびその先端球21も{D}の方向、すなわち接触力偏差{F1}をゼロに近づける方向に移動する。この接触力のフィードバック制御系により、接触力偏差{F1}がゼロ、従って接触力ベクトル{Fn}の大きさを目標の接触力F0に制御することができる。また、以上のフィードバック制御は接触力ベクトルの方向がどの方向を向いていても成り立つので、被測定面の向きも限定しない。つまり鉛直面を含む急傾斜面に対応できる制御系を構成できる。また、図3に示すように、2つの制御量{D}と{S}は直行する方向なので互いに影響しあうことが無いことから、それぞれ独立に制御系を構成できる。
一方、スイッチ回路34がゼロを出力する場合は、コントローラ32から出力されるXYZ軸の走査方向{S}のみによってXYZ軸を制御する。この制御はプローブが被測定面に接触していない時に、XYZ軸の位置を動かす時に必要となる。
プローブ保持手段17の位置姿勢を測定する5軸のレーザ測長器(干渉計)X1、X2、Y1、Y2、Z1をプローブ保持手段位置計算手段30に導き、プローブ先端球21の中心位置での位置姿勢を表すベクトル{Q}を計算する。{Q}の要素は、3次元的なX、Y、Z座標および、姿勢を表す3つの回転角、θx(X軸まわりの回転角度)、θy(Y軸まわりの回転角度)、θz(Z軸まわりの回転角度)の合計6個である。幾何学的な考察から次の式で計算できる。
まず、XYZ位置については次の式で計算できる。
=X1+(X2−X1)*(L1+L2+L3+L4)/L1 (式8)
=Y1+(Y2−Y1)*(L1+L2+L3+L4)/L1 (式9)
=−Z1 (式10)
また、姿勢を表す3つの回転角については次の式で計算できる。
=(Y2−Y1)/L3 (式11)
=−(X2−X1)/L3 (式12)
=0 (式13)
なお符号については、干渉計の取り付け向き、座標系の取り方によって決まる。QはZ軸まわりの回転角度だが、この実施形態では測定していないので、ゼロとした。
{Q}をプローブ先端球位置計算手段31に導き、プローブ先端球の位置{R}を次の式によって計算する。
=P+Q (式14)
=P+Q (式15)
=P+Q (式16)
この位置は先端球の位置を参照ミラーを位置基準として測定した形状測定結果になる。このプローブ先端球位置{R}をコントローラ32に接続する。前述したようにコントローラ32は本形状測定装置全体を制御するコンピュータであり、測定結果である{R}はこのコンピュータ内に保存される。
図4に動作フローを示す。初期状態として、スイッチ回路34はゼロを出力する状態となっており、プローブは被測定物の上空に退避しているものとする。
まず被測定物4を計測ベース3にセットする。
次に、X軸とY軸を最初の測定位置に移動させる次に、コントローラ32はスイッチ回路34を位置制御、すなわちゼロを出力する状態にセットし、XY軸に目標位置{S}を出力する。この目標位置{S}はあとで走査の目標位置としても使用する。移動中に被測定物とプローブの衝突を防止するためZ軸は動かさず、XY軸のみ動かす(ステップ101)。
次に、Z軸をプローブが被測定物に接触するまで下げる。次にコントローラ32は接触力{Fn}を監視しながらZ軸を下げる。プローブの先端球21が被測定物4に接触すると、接触力{Fn}が発生するので、接触力を検出したらZ軸を停止する。(ステップ102)すなわち、プローブの位置姿勢測定手段Xp1、Xp2、Yp1、Yp2、Zpからプローブ先端球の位置{P}を(式2)から計算する。また、あらかじめ求めておいたプローブの剛性から接触力{Fn}を計算する。
次に、スイッチ回路34を切り替え、XYZ軸を用い接触力が一定になるように制御する。(ステップ103)コントローラ32はスイッチ回路34を接触力制御、すなわち{D}を出力する状態に切り替える。すなわち、接触力{Fn}と目標の接触力F0との差{F1}を(式1)から計算し、これから接触力に関する制御量{D}を計算する。次に、{D}に従ってXYZ軸のドライバ35を介してXYZ軸の位置を制御する。以上のようにXYZ軸を動作させることにより、接触力{Fn}の大きさを目標の接触力F0に制御できる。
次に、プローブを走査し、プローブ先端球の位置{R}を記憶する。(ステップ104)コントローラ32は接触ベクトル{Fn}に直交する走査方向を計算し、走査に関する制御量{S}を出力する。{S}は接触力制御に関する制御量{D}に加算され、XYZ軸のドライバ35を介してXYZ軸を移動させる。この走査を行いながら、プローブ先端球の位置{R}を式6で計算し、記憶する。
次に、すべての測定領域の走査が完了するまで104を繰り返す。(ステップ105)測定が完了したら次に進む。
次に、プローブを被測定物から退避させる。(ステップ106)測定領域の走査が完了したら、コントローラ32はスイッチ回路34を位置制御、すなわちゼロ出力に切り替える。次にZ軸を退避させ、被測定物とプローブを離す。
次に、被測定物を装置からとりはずし、測定を完了する。(ステップ107)
最後に前記、第1、第2の測定手段の信号から被測定面の形状を測定する。
第1の測定手段により、参照面を基準にしたプローブ保持手段の位置姿勢が求まり、さらに第2の測定手段により、プローブ保持手段を基準にしたプローブの位置姿勢が求まる。従って、これらの測定量から、参照面を基準にしたプローブの位置姿勢が求まる。このプローブの位置姿勢から、幾何学的な考察により、プローブ先端球の中心位置が計算できる。この位置は参照面が基準であるので、プローブ保持手段の位置姿勢誤差や、プローブの位置姿勢誤差に影響されず、高精度な測定装置が実現できる。このときの具体的な測定方法、計算方法、あるいは測定手段の構成については測定手段の取り付け寸法などによって変わるため実施形態のところで後述する。
以上説明した形状測定装置によれば、プローブと被測定物間の接触力の3次元的な接触力、すなわち接触力ベクトルを求め、これを一定に制御することによって、従来技術の課題を解決し、次の効果がある。
1)急傾斜面でもプローブの接触力のフィードバック制御が可能
被測定面は鉛直面であっても、接触力ベクトルの方向に制御をかけるので対応できる。
2)急傾斜面でもプローブの走査が可能
接触力ベクトルに直交する方向に走査ため、接触力のフィードバック制御に影響しない。
また、この方法によれば被測定物の斜角度についての制約はない。例えば鉛直面に対しても追従することができる。
また、一般にレーザ測長器は空気屈折率変化の影響を直接うけるので、波長トラッカーをこの構成に加えて、測定中の波長変動を補正し、測定精度を向上することも既存技術で可能である。また、本実施形態では、接触力計算手段26、プローブ位置姿勢計算手段25、接触力偏差計算手段27などを用いた。これらは計算処理なのでコンピュータ内のソフトウエアで構成しても同じことである。本明細書では、より動作を明確に記述できる表現方法を選んだ。また、Z方向を上下方向として説明してきたが、横に向きを変えても同じことである。また、第2の測定手段としてレーザ測長器を用いているが、他の測定センサー、例えば静電容量式の測長器を使っても同じことである。
なお、本実施形態では、接触式プローブを板ばねで支持する構成で説明したが、特登録03063290に開示されている空気膜を介して支持するエアーベアリングの構成でも、同じことである。
(実施例2)
本発明を実施できる第2の最良の形態を、図5を用いて説明する。第1の発明とは、微動テーブルの部分が異なるので、その異なる部分だけを説明する。微動テーブル16は、Z軸スライド14に、XYZ方向に移動可能に設けられている。プローブのプローブ保持手段17は微動テーブル16に固定して設けられている。
次に制御系について説明する。プローブに取り付けたミラーとの距離をプローブ保持手段17から測定する5つの干渉計Xp1、Xp2、Yp1、Yp2、Zpをプローブ位置姿勢計算手段25に導き、プローブ先端球21の中心位置およびプローブ姿勢を表すベクトル{P}を計算する。
スイッチ回路34の出力を微動テーブル用ドライバ29に接続し、その出力を微動テーブル16に接続し、微動テーブルを移動させる。このフィードバック制御により、微動テーブルが動き、それがプローブを動かし、接触力を制御する。
また、微動テーブル用ドライバの出力する、微動テーブルの位置を加算回路33に接続し、コントローラ32から出力されるXYZ軸走査の制御量{S}を加え合わせ、XYZ軸の制御量を計算する。この加算回路33の出力をXYZ軸ドライバ35に接続する。XYZ軸ドライバ35は入力の制御量をXYZ軸の現在位置に加えて目標位置を計算し、XYZ軸をその目標位置に移動させる。微動テーブルのストロークは小さいが、このXYZ軸の制御によって、微動テーブルの移動量を打ち消して常にゼロに、つまりストロークの範囲内になる。また、接触力を制御する微動テーブルの移動量が{D}であることを説明した。従ってXYZ軸の移動量は、これを打ち消す{D}と同じ方向となる。この接触力の制御によってXYZ軸が動く方向は、第1の実施形態の場合と同じである。
次に、接触力ベクトルの大きさが一定になるように、接触力ベクトルの方向に、前記微動テーブルの移動量を調節する制御力のフィードバック制御手段について説明する。また、微動テーブルの移動量が小さくなるように、前記XYZスライドの移動量を調節する位置のフィードバック制御手段について説明する。
微動テーブルはストロークは小さいがピエゾアクチュエータなどを用いて高剛性に構成できる。
第1の発明の場合と同様、接触力ベクトル{Fn}とあらかじめ定めておいた目標の接触力の大きさF0と比較し、接触力偏差ベクトル{F1}を計算する。この接触力偏差ベクトルの大きさをゼロにするため、前記微動テーブルを接触力{Fn}の方向に移動させる。この量、すなわちXYZの制御量を{D}と表す。
しかし微動テーブルはストロークが限られているため、このままでは使えない。そこで、微動テーブルの移動量が小さくなるようにXYZスライドの移動量を調節する。つまり、XYZスライドの移動量は微動テーブルの移動量を打ち消す。従ってXYZスライドの移動量も{D}の方向、すなわち、接触力ベクトル{Fn}と同じ方向であり、第1の発明の場合と同じである。
高速制御が可能な微動テーブルを用いて接触力の制御を行っているので、接触力の制御偏差を小さくすることができる。また、被測定物形状の急激な形状変化に対しても、微動テーブルを用いているため高速にプローブ位置を調節できる。
接触式プローブと被測定物の間に働く接触力を一定にする制御はプローブの追従性に影響するため、高速な制御が実用上は重要である。もしこの追従性能が悪いと、プローブの走査速度を上げられないからである。ところが従来技術の課題で述べたように、XYZ移動軸は大きな測定領域に対応するために大きな構造物になる場合も多い。大きな構造物は一般的に固有振動数を上げられず、制御帯域もその固有振動数で制約されてしまう。本発明は微動テーブルを使ってプローブの追従性を向上するものである。
本発明によれば、高速制御が可能な微動テーブルを用いて接触力の制御を行っているので、プローブの被測定面への追従性能が高い形状測定方法および装置を実現できる。
以上説明した実施例2に示した形状測定装置によれば、第1の実施形態の場合に加え、次の効果がある。微動テーブルはXYZスライドに比べて、ストロークが小さくてすむので高剛性が可能であり、従って微動テーブルで制御する接触力制御は、第1の実施形態で説明した構成よりも高速に走査することが可能である。従って第1の実施形態の場合よりも、測定時間が短くなり、測定にかかるコストを低減することができる。
(実施例3)
本発明の実施例3を、図6を用いて説明する。実施例3第2の形態に対し、プローブのZ方向の測定手段の構成が異なっており、この異なる部分だけを説明する。
干渉計Z1は参照ミラー7と、X、Y、Z方向に鏡面をもつ3面ミラー20との間の距離を直接測定する。プローブ先端球の位置を、式6で計算するのではなく、Z座標の計算を変更した次式で行う。Z座標であるRの部分だけが異なる。
=P+Q (式17)
=P +Q (式18)
=P (式19)
課題を解決するための手段の項目で述べたとおり、一般的に測定値にはランダムに変動する誤差がある。第1の測定手段で、参照面に対するプローブ保持手段の位置姿勢を測定し、第2の測定手段で、プローブ保持手段に対するプローブの位置姿勢を測定する。この2つの測定値からプローブの位置姿勢を演算すると、その計算値には第1と第2とで、2つのランダムな誤差が混入する。これに対し、本実施形態では、参照面に対するプローブの位置を直接測定するので、ランダムに変動する誤差は1つしか入らない。これにより、より高精度な測定装置を実現できる。
本発明を適用できる実施例を、図7を用いて説明する。図7に示した構成図は図6に対してプローブの位置姿勢を測定する手段の構成が異なる。図7ではプローブの姿勢を先端球21の反対側の3面ミラー20の変位Xpを測定することによって簡便に実現している。
プローブと被測定物との間の接触力により、プローブの位置姿勢が変化する。このうち、Z方向は、Zp干渉計が測定する。またZ軸まわりの回転角は測定に直接影響しないので測定する必要がない。残る成分は横方向の力である。接触力の作用点はほぼ先端球に固定して考えても良いので、先端球にかかる横方向の力と、プローブの先端球とは反対側の3面ミラーの変位の関係をあらかじめ有限要素法などで計算したり、実際に測定したりして求めておく。これにより、逆に3面ミラーの変位を測定することにより接触力、および先端での横方向変位を求めることが可能である。
本実施例によれば、さらに簡便にプローブの姿勢を測定することができるので、装置コストの軽減に有効である。また、本実施例ではXpの測定手段として、レーザ測長器(干渉計)を想定して説明したが、他の測定手段、例えば、静電容量変位計、うず電流変位計などの測定手段を用いても同じことである。
本発明を適用できる第1の最良の形態における形状測定装置の模式図である。 本発明の作用を示すための接触式プローブの模式図である。 本発明の作用を示すための接触力と走査方向を説明する図である。 本発明を適用できる最良の形態における動作を説明するフロー図である。 本発明を適用できる第2の最良の形態における形状測定装置の模式図である。 本発明を適用できる第3の最良の形態における形状測定装置の模式図である。 本発明を適用できる第1の実施例における形状測定装置の模式図である。 第1の従来技術における形状測定装置の模式図である。 第2の従来技術における接触式プローブの模式図である。 第3の従来技術における接触式プローブの模式図である。
符号の説明
1 床
2 除振台
3 計測ベース
4 被測定物
5 X基準ミラー
7 Z基準ミラー
8 除振台
9 走査軸ベース
10 X軸スライド
11 X軸モータ
12 Y軸スライド
13 Y軸モータ
14 Z軸スライド
15 Z軸モータ
16 微動テーブル
17 プローブ保持手段
18 板ばね
19 プローブシャフト
20 3面ミラー
21 先端球
22 プローブ用小型ミラー
23 Z距離測定用小型ミラー
24 X距離測定用小型ミラー
25 プローブ位置姿勢計算手段
26 接触力計算手段
27 接触力偏差計算手段
28 接触力に関する制御量計算手段
29 微動ステージ用ドライバ
30 プローブ保持手段位置姿勢計算手段
31 プローブ先端球位置計算手段
32 コントローラ
33 加算回路
34 スイッチ回路
35 XYZ軸ドライバ

Claims (6)

  1. 接触式プローブを被測定物に接触させつつ前記被測定物の表面を走査させるとともに接触式プローブの位置を計測することで前記被測定物の形状を測定する形状測定装置において、
    次元方向に移動可能プローブ持手段と、
    前記プローブ支持手段に対して弾性支持された接触式プローブと、
    接触式プローブの位置および姿勢を計測する計測手段と、
    計測した接触式プローブの位置または姿勢から前記被測定物に対して接触式プローブが受ける接触力を演算する演算手段
    を有し、
    前記被測定物の形状を測定する際に、演算された前記接触力の方向に沿って前記プローブ持手段を移動させて前記接触式プローブの位置または姿勢を変化させることで、前記接触力の大きさを目標値に近づけることを特徴とする形状測定装置。
  2. 前記プローブ支持手段は、三次元方向に移動可能なスライドと前記スライドに対して更に三次元方向に移動可能に前記スライドに保持されたテーブルとを有し、
    前記テーブルを移動させることで前記接触式プローブの位置を移動させて前接触力の大きさを目標値に近づけることを特徴とする請求項1記載の形状測定装置。
  3. 前記被測定物の形状を測定する際に、前記接触式プローブを前記接触力と直交する方向に移動させることで前記被測定物の表面を走査させることを特徴とする請求項1または2に記載の形状測定装置。
  4. 三次元方向に移動可能なプローブ支持手段に弾性支持された接触式プローブを被測定物に接触させつつ前記被測定物の表面を走査させるとともに前記接触式プローブの位置を計測することで前記被測定物の形状を測定する形状測定方法において、
    前記接触式プローブの位置および姿勢を測定して、計測した接触式プローブの位置または姿勢に基づいて接触力を演算する工程と、
    前記被測定物の表面形状を測定する際に、演算された前記接触力の方向に沿って前記プローブ支持手段を移動させて前記接触式プローブの位置または姿勢を変化させることで、前記接触力の大きさを目標値に近づける工程と、
    を有することを特徴とする形状測定方法。
  5. 前記接触力は、計測された前記接触式プローブの位置および姿勢と、あらかじめ求めておいた前記接触式プローブの剛性とから演算されることを特徴とする請求項4記載の形状測定方法。
  6. 前記被測定物の表面形状を測定する際に、
    前記接触式プローブを前記接触力と直交する方向に移動させることで前記被測定物の表面を走査させることを特徴とする請求項4または5記載の形状測定方法。
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