JP4474060B2 - D−アロ−5−イノソースとその製造法およびアロ−イノシトール、d−アロ−3−イノソースまたはd−キロ−イノシトールの製造法 - Google Patents

D−アロ−5−イノソースとその製造法およびアロ−イノシトール、d−アロ−3−イノソースまたはd−キロ−イノシトールの製造法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は医薬等の原料として価値の高い新規物資D−アロ−5−イノソース(D-allo-5-Inosose)に関する。また、本発明は安価なエピ−イノシトール(epi- Inositol)から、微生物の作用下にD−アロ−5−イノソースを一段階で製造する方法に関する。さらに本発明はD−アロ−5−イノソースを還元して、医薬等の原料として有望なアロ−イノシトール(allo-Inositol)を効率良く製造する方法に関し、またアロ−イノシトールを原料として、医薬等の原料として価値の高いD−アロ−3−イノソース(D-allo-3-Inosose)を効率よく製造する方法に関する。さらに、本発明はD−アロ−3−イノソースを還元して医薬品として有望なD−キロ−イノシトール(D-chiro-Inositol)を効率よく製造する方法に関する。
【0002】
なお、エピ−イノシトールは次の平面式(A)
Figure 0004474060
または次の立体構造式(A’)
Figure 0004474060
で表される既知の物質である。
【0003】
また、本発明による新規物質、D−アロ−5−イノソースは次の平面式(I-1)
Figure 0004474060
または次の平面式(I-I’)
Figure 0004474060
または次の立体構造式(I-2)
Figure 0004474060
または次の立体構造式(I-2’)
Figure 0004474060
で表される新規の物質である。
【0004】
さらに、アロ−イノシトールは次の平面式(B)
Figure 0004474060
または次の立体構造式(B’)
Figure 0004474060
で表される既知の物質である。
【0005】
また、D−アロ−3−イノソースは次の平面式(C)
Figure 0004474060
または次の立体構造式(C’)
Figure 0004474060
で表される既知の物質である。
【0006】
また、D−キロ−イノシトールは次の平面式(D)
Figure 0004474060
または、次の立体構造式(D’)
Figure 0004474060
で表される既知の物質である。
【0007】
【従来の技術】
イノソース(Inososes, 別名ではPentahydroxycyclohexanonesまたは Alicyclic ketohexoses)は、一般的には、イノシトールの微生物的酸化〔A. J. Kluyver & A. Boezaardt: 「Rec. Trav. Chim.」 58巻、956頁(1939)〕、酵素的酸化〔L. Anderson 等:「Arch. Biochem. Biophys.」 78巻、518頁(1958)〕、白金触媒を用いた空気酸化〔K. Heyns and H. Paulsen:「Chem. Ber.」 86巻、 833頁(1953)〕、硝酸等の酸化剤による酸化〔T. Posternak:「Helv. Chim. Acta」19巻、 1333頁(1936)〕によって合成されることが知られている。
【0008】
イノシトールのうち、エピ−イノシトールの微生物的酸化あるいは酵素的酸化で生成するイノソースは、これまでL−エピ−2−イノソース(別名L−エピ−イノソース−2)がある〔WO 00/75355号公報〕のみである。エピ−イノシトールを酸化してD−アロ−5−イノソースを生成する微生物はこれまで報告されていない。また、アロ−イノシトールの微生物的酸化あるいは酵素的酸化でD−アロ−3−イノソースを生成する微生物あるいは酵素はこれまで報告例がない。
【0009】
イノシトールは、シクロヘキサンから誘導される6価アルコールの総称であり、イノシトールには9種の立体異生体が存在する。天然産イノシトールにはミオ−イノシトール、D−キロ−イノシトール、L−キロ−イノシトール、ムコ−イノシトール、シロ−イノシトールの5種が見出されている。
【0010】
D−キロ−イノシトールは、9種類存在するイノシトール立体異性体の一つで、その製造方法については次の(a)〜(d)などが知られている。
(a) カスガマイシンを分解して、その構成成分であるD−キロ−イノシトールを得る方法(強酸による加水分解法(米国特許第5,091,596号)、アセチル化した後に分解する方法(米国特許第5,463,142号)、強酸性イオン交換樹脂による加水分解法(米国特許第5,714,643号))。
(b) グルクロン酸を原料として10段階以上の化学合成ステップを経て、D−キロ−イノシトールを得る方法(米国特許第5,406,005号)。
(c) ブーゲンビリアなどの植物中に含まれるピニトールを、脱メチル化してD−キロ−イノシトールを調製する方法(米国特許第5,827,896号)。
(d) アグロバクテリウム属細菌により、ミオ−イノシトールから、D−キロ−イノシトール、L−キロ−イノシトール、シロ−イノシトール、ネオ−イノシトールの混合物の状態で製造する方法(特開平9-140,388)。
【0011】
しかしながら、上記(a)〜(c)のD−キロ−イノシトールを製造する方法は、いずれも工業的規模で製造する方法としては操作の煩雑さ、あるいはコスト面で問題があり、必ずしも満足し得るものではない。また、(d)の方法は4種のイノシトール立体異性体の混合物が生成するため、特にD、Lイノシトールの分離が困難で精製操作が煩雑である。更に、D−キロ−イノシトールの最終的な収率は 1 %以下であり、低収率である。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は有用な新規物質としてD−アロ−5−イノソースを提供することにある。本発明の別の目的は、安価に製造可能となったエピ−イノシトール(WO 00/75355号公報)を原料として、D−アロ−5−イノソース、アロ−イノシトール、D−アロ−3−イノソースを順次経由して、医薬品として有望な、光学純度の高いD−キロ−イノシトール(D-chiro-Inositol)を効率よく安価に製造する新規な方法を提供することにある。
【0013】
D−キロ−イノシトールは近年、インシュリン非依存性糖尿病の治療剤として(WO 90/10439号公報)あるいは多嚢胞性卵巣症候群の治療剤として(The New England Journal of Medicine、340:1314-1320、1999)有効であることが示され、注目されている。
【0014】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、上記目的を達成するために鋭意検討を重ねてきた。その結果、先の研究においては、ミオ−イノシトールをL−エピ−2−イノソースに変換する酸化能をもつ微生物として、例えばキサントモナス・エスピーAB10119株あるいはシュードモナス・エスピーAB10215株(PCT/JP00/03687号の国際公開WO 00/75355号公報)の菌体をアロ−イノシトールに作用させると、アロ−イノシトールから定量的にD−アロ−3−イノソースが生成することを見出すことができ、またこのD−アロ−3−イノソースを水素化ホウ素ナトリウムで還元すると、高収率でD−キロ−イノシトールが生成することを見出した。
【0015】
また、D−キロ−イノシトールの合成原料となるアロ−イノシトールの安価な製造法の研究の過程においては、今回は、エピ−イノシトールに、ミオ−イノシトールをL−キロ−1−イノソースに変換する酸化能をもつ微生物として例えばキサントモナス・エスピーAB10198株あるいはスフィンゴモナス・エスピーAB10233株(特願2000-186337号明細書参照)の菌体を作用させると、エピ−イノシトールから定量的にD−アロ−5−イノソースが生成することを見出すことができ、また、このD−アロ−5−イノソースを水素化ホウ素ナトリウムで還元すると、高収率でアロ−イノシトールが生成し且つエピ−イノシトールが副生することを見出した。前記の研究で見出されたエピ−イノシトールの微生物的酸化による変換の生成物の一つは、核磁気共鳴スペクトルの解析によりD−アロ−5−イノソースと判明し、該物質は新規物質と判明した。
【0016】
また、アロ−イノシトール及びD−キロ−イノシトールの生成収率を向上させる研究の過程で、微生物酸化及び水素化ホウ素ナトリウムでの還元をアロ−イノシトール及びD−キロ−イノシトールのそれぞれの製造工程において二回繰り返すことにより、アロ−イノシトール及びD−キロ−イノシトールの生成収率がともに約1.5倍向上できることを見出した。前記の諸知見を得て発明を完成するに至った。
【0017】
アロ−イノシトールの合成原料となるエピ−イノシトールは、安価且つ大量に入手可能なミオ−イノシトールを、微生物的酸化と適当な還元剤による還元との組合せで処理することによって、安価に製造可能となっている(PCT/JP00/03687号の国際公開WO 00/75355号公報参照)。
【0018】
従って、第1の本発明によると下記の式(I)
Figure 0004474060
で表されるD−アロ−5−イノソースが新規物質として提供される。
【0019】
式(I)のD−アロ−5−イノソースは下記の物理化学的性状を有する。
(1)外 観: 白色粉末
(2)分子式: C6H10O6
(3)分子量: 178
(4)比旋光度: -16° (c 1.0、H2O、27℃)
(5)H-NMR(300MHz、D2O):
δ(ppm):3.49(dd, 1H, J1,2=3.3Hz, J1,6=10.5Hz、1-H)、3.95(m, 2H, 2-H)、3.78(t, 1H, J3,2=J3,4=3.3Hz, 3-H)、3.68(dd, 1H, J4,3=3.3Hz, J4,2=1.6Hz, 4-H)、3.76(d, 1H, J6,1=10.5Hz, 6-H)
(6)13C-NMR(75.5MHz、D2O)
δ(ppm):71.9(d、C-1)、75.1(d、C-2)、67.4(d、C-3),77.6(d、C-4)、95.8(s、C-5)、71.5(d、C-6)
(7)溶解性: 水、ジメチルスフォオキシドに可溶である。メタノール、エタノール、アセトンに不溶である。
【0020】
上記のアロ−5−イノソースの製法として、基本的には、第2の本発明によると、エピ−イノシトールをD−アロ−5−イノソースへ変換できる酸化能を有する微生物を、エピ−イノシトールに作用させて、前記エピ−イノシトールをD−アロ−5−イノソースへ変換させてD−アロ−5−イノソースを生成し、さらにD−アロ−5−イノソースを回収することからなることを特徴とする、D−アロ−5−イノソースの製造方法が提供される。この方法では、微量のL−エピ−2−イノソースが副生されることもある。
【0021】
第2の本発明方法に用いられる微生物は、グラム陰性細菌であるシュードモナダセア(Pseudomonadaceae)科のキサントモナス(Xanthomonas)属またはシュードモナス(Pseudomonas)属の細菌、あるいはアセトバクテラセア(Acetobacteraceae)科のアセトバクター(Acetobacter)属またはグルコノバクター(Gluconobacter)属の細菌、あるいはリゾビアセア(Rhizobiaceae)科のアグロバクテリウム(Agrobacterium)属の細菌、あるいはエンテロバクテリアセア(Enterobacteriacea)科のエンテロバクター(Enterobacter)属、セラチア(Serratia)属またはエルシニア(Yersinia)属の細菌、あるいはパスツレラセア(Pasteurellaceae)科のパスツレラ(Pasteurella)属またはヘモフィルス(Haemophilus)属の細菌であることができ、また好ましくは、本発明者らにより分離された新微生物であるキサントモナスsp. AB10198株またはスフィンゴモナスsp. AB10233株であることができる。
【0022】
上記のAB10198株およびAB10233株の菌学的物質は特願2000-186337号明細書に記載される。なお、前記のAB10198株およびAB10233株の菌学的性質の詳細を後記の表1a、表1b、表1cに記載する。
なお、これら菌株の同定の当たっては、新細菌培地学講座(第2版、近代出版)、医学細菌同定の手引き(第2版、近代出版)、細菌学実習提要(丸善)に準じて実験を行い、そして得られた実験結果を「Bergey's Manual of Systematic Bacteriology)1巻、1984年及び「Microbiology and Immunology」34巻、99頁、1990年、「International J. Systematic Bacteriology」45巻、334頁、1995年等に掲載されている最近の学術論文を参考に判断して、細菌の同定を行った。
【0023】
Figure 0004474060
【0024】
Figure 0004474060
【0025】
Figure 0004474060
【0026】
AB10198株の主な性状は、次のとおりである。すなわち、本菌株はコロニーが黄色の色素を帯びるグラム陰性の桿菌で、大きさは0.3〜0.5×0.5〜1.6μm。本菌株はカタラーゼ陽性、オキシダーゼ陰性であり、グルコースを好気的に分解し酸を生成する。本菌株は栄養要求性があり、最少培地にメチオニンを添加すると本菌株は良好に生育する。本菌株の細胞のユビキノン分子種はQ8で、DNAのGC含量は65%であった。
【0027】
これらの菌学的性質を総合して、本菌株はAB10198株は、キサントモナス(Xanhtomonas)属に属する菌株であると判断した。「Bergey's Manual of Systematic Bacteriology)1巻、199頁、1984年によると、キサントモナス属細菌には5種のスペシーズ(キサントモナス・カンペストリス;キサントモナス・フラガリアエ;キサントモナス・アルブリネンス;キサントモナス・アキソノポディス;キサントモナス・アメリザ)が知られている。AB10198株の菌学的性状を上記の既知のスペシーズと比較検討した結果、AB10198株はキサントモナス・カンペストリスに最も近縁の種とであると考えられた。しかし、本菌株の菌学的性質はキサントモナス・カンペストリスに完全には一致しなかったので、本AB10198株を公知のものと区別するため、キサントモナス・エスピーAB10198株と命名し、工業技術院生命工学工業技術研究にFERM P-17893として、寄託した(寄託日は2000年6月12日)。
【0028】
また、AB10233株の主な性状は次のとおりである。本菌株はコロニーが淡黄色の色素を帯びるグラム陰性の桿菌で、大きさは0.4〜0.8×0.4〜1.6μm。本菌株はカタラーゼ陽性、オキシダーゼ陰性であり、グルコースを好気的に分解し酸を生成する。最少培地での本菌株の生育は良好で、栄養要求性が無い。細胞のユビキノン分子種はQ10で、DNAのGC含量は64%であった。また、菌体脂肪酸に2−ヒドロキシ−テトラデカン酸を有し、更に菌体脂質としてスフィンゴ脂質を有していた。これらの菌学的性質を総合すると、本菌株は「Microbiology and Immunology」34巻、99頁、1990年、「International J. Systematic Bacteriology」45巻、334頁、1995年等に記載されているスフィンゴモナス(Sphingomonas)属に最も近縁な細菌であると考えられる。スフィンゴモナス属は上記論文(「Microbiology and Immunology」34巻、99頁、1990年)において初じめて新属として提唱され、現在まで少くとも12新種が提案されている。しかし、AB10233株は、その菌学的性質においてそれらに完全には合致しなかったので、本菌株を公知のものと区別するため、スフィンゴモナス・エスピーAB10233と命名し、工業技術院生命工学工業技術研究所にFERM P-17894として寄託した(寄託日は2000年6月12日)。
【0029】
第2の本発明方法の第1の具体的方法として、第3の本発明においては、エピ−イノシトールをD−アロ−5−イノソースへ変換できる酸化能を有する微生物を、エピ−イノシトール並びに炭素源及び窒素源を含有する液体培地で好気的に培養し、その培養中において培養液内で該微生物をエピ−イノシトールに作用させて培養液中にD−アロ−5−イノソースを生成、蓄積させ、さらに培養液からD−アロ−5−イノソースを回収することを特徴とする、D−アロ−5−イノソースの製造方法が提供される。この第3の本発明方法を、以下、製造方法(A)という。
【0030】
第2の本発明方法の第2の具体的方法として、第4の本発明においては、エピ−イノシトールをD−アロ−5−イノソースへ変換できる酸化能を有する微生物を培地中で培養する工程と、得られた培養物から該微生物の菌体を分離する工程と、該菌体をエピ−イノシトールを含む緩衝液または液体培地に加える工程と、該緩衝液または液体培地中で該菌体をエピ−イノシトールと反応させ、得られた反応液中にD−アロ−5−イノソースを生成させる工程と、その反応液からD−アロ−5−イノソースを回収する工程を含むことを特徴とする、D−アロ−5−イノソースの製造方法が提供される。この第4の本発明方法を、以下、製造方法(B)という。
【0031】
製造方法(A)(第3の本発明方法)では、エピ−イノシトールを含む液体栄養培地に、所要の酸化能を有する微生物を接種して好気的に培養し、このことにより、D−アロ−5−イノソースを、生成蓄積させることができる。
【0032】
使用される液体培地の組成は、目的に達する限り何ら特別の制限はなく、D−アロ−5−イノソースへの変換されるエピ−イノシトールに加えて、炭素源、窒素源、有機栄養源、無機塩類等を含有する培地であればよい。合成培地・天然培地のいずれも使用できる。培地には、エピ−イノシトールを0.1%〜40%、より好ましくは20〜30%添加し、炭素源としては、グルコース、シュークロース、マルトースあるいは澱粉を0.1%〜20%、より好ましくは0.5〜5%添加し、窒素源としては、酵母エキス、ペプトン、カザミノ酸硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウムあるいは尿素等を0.01%〜5.0%、好ましくは0.5%〜2.0%添加するのが望ましい。
【0033】
その他必要に応じ、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、コバルト、マンガン、亜鉛、鉄、銅、モリブデン、リン酸、硫酸などのイオンを生成することができる無機塩類を培地中に添加することが有効である。培養液中の水素イオン濃度はpH4〜10、好ましくはpH5〜9に調整し培養すると、効率よくD−アロ−5−イノソースを得ることができる。
【0034】
使用微生物の培養条件は、菌株や培地の種類によっても異なるが、培養温度は5〜40℃、好ましくは20〜37℃であり、また、培養は液体培地を振とうしたり、液体培地中に空気を吹き込むなどして好気的に行えば良い。培養期間は、培養液中にエピ−イノシトールが完全に消失し、且つ、D−アロ−5−イノソースが最大の蓄積量を示すまで行えば良く、通常1〜14日、好ましくは3〜10日である。
【0035】
培養液から目的物のD−アロ−5−イノソースを採取する方法は、通常の水溶性中性物質を単離精製する一般的な方法を応用することができる。すなわち、培養液から菌体を除去した後、培養上清液を活性炭やイオン交換樹脂等で処理することにより、D−アロ−5−イノソースを回収することができ、それら以外の不純物をほとんど除くことができる。しかし、強塩基性陰イオン交換樹脂のOH型はD−アロ−5−イノソースを化学変化させるので使用することはできない。
【0036】
D−アロ−5−イノソースを専ら含む溶液を濃縮することによってD−アロ−5−イノソースを粉末として単離することができる。
【0037】
製造方法(B)(第4の本発明方法)では、所要の酸化能を有する微生物を培養し、培養物から分離して得られた菌体を、エピ−イノシトールを溶解、含有する緩衝液または液体培地中に添加し、その中で反応させ、エピ−イノシトールからD−アロ−5−イノソースを生成させるものである。
【0038】
菌体としては、製造方法(A)の過程で得た培養液から分離して集めた菌体を用いることができる。また、前記微生物を別途適当な培養条件で培養して得た菌体を用いてもよい。集菌は、培養液から遠心分離、濾過等公知の方法により行えばよい。
添加された菌体をエピ−イノシトールと反応させる反応媒質としては、液体培地、緩衝液などよりなる水性媒質が用いられる。液体培地としては、製造方法(A)におけるものと同様のものを用いてもよく、また別途に前記微生物を培養した液体培地をそのまま用いてもよい。緩衝液としては、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、グッド(Good’s)のCHES緩衝液等を10〜500mM、好ましくは20〜100mMの濃度で用いればよい。溶液中のエピ−イノシトールの濃度は0.1〜40%程度とするのが好ましい。
【0039】
菌体とエピ−イノシトールとの反応条件は、菌株や培地、緩衝液の種類によって異なるが、反応温度は5〜60℃、好ましくは10〜45℃であり、反応時間は1〜50時間、好ましくは3〜48時間であり、液体培地または緩衝液のpHは2〜10、好ましくは3〜9である。
反応終了後の反応液からの目的物質を回収する方法は、製造方法(A)と同様に行えばよい。
【0040】
さらに、アロ−イノシトールの新規な製法として、基本的には、第5の本発明においては、D−アロ−5−イノソースを溶解、含有する水性媒質に還元剤として水素化ホウ素アルカリ金属、水素化トリアルコキシホウ素アルカリ金属またはシアン化ホウ素アルカリ金属を添加する工程と、該還元剤で該水性媒質中のD−アロ−5−イノソースを還元する反応を行い、これによりアロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを該水性媒質内で生成する工程と、その得られた還元反応からアロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを回収する工程と、回収されたアロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを相互から分離する工程とを有することを特徴とする、アロ−イノシトールの製造方法が提供される。この第5の本発明方法を、以下、製造方法(C)という。
【0041】
製造方法(C)(第5の本発明方法)では、製造方法(A)あるいは製造方法(B)で得られたD−アロ−5−イノソースを、水性媒質例えば水に溶解し、水素化ホウ素ナトリウム等の水系で使用可能な還元剤を添加し、水性媒質中でD−アロ−5−イノソースを還元剤で還元させ、アロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを生成させるものである。
【0042】
水性媒質に溶解されるD−アロ−5−イノソースは0.1%〜60%濃度、好ましくは1%〜40%濃度とすることが望ましい。使用される還元剤は、水系中でD−アロ−5−イノソースをアロ−イノシトール及びエピ−イノシトールに還元できる還元剤として、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素カリウム、水素化トリメトキシホウ素ナトリウム、シアン化水素化ホウ素ナトリウムであるのが望ましい。この還元剤をD−アロ−5−イノソースの溶液に添加する工程を行う。次に還元反応の第2工程を行う。この反応は0℃〜室温で行う。還元反応の反応混合物のpHはpH 4〜pH 10、好ましくはpH 5〜pH8であるのが望ましい。D−アロ−5−イノソースの消失した時点または反応生成物の生成量が適当になった時点で反応を終了する。これによって、生成されたアロ−イノシトール及び副生されたエピ−イノシトールを含有する水溶液が還元反応の反応液として得られる(第2工程)。
【0043】
ここで得られた還元反応の反応液から、アロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを回収する第3の工程を次に行う。この第3の工程では、アロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを含有する還元反応液を、不望成分の除去の目的で強酸性陽イオン交換樹脂、例えばデュオライト(登録商標)C-20(H+型)を充填したカラムに通過させ、その通過液を集め、その後このカラムに脱イオン水を通過させ洗浄して洗浄液を集め、得られた通過液及び洗浄液を合併して弱塩基性陰イオン交換樹脂、例えばデュオライト(登録商標)A113(OH型)を充填したカラムに通過させ、その通過液を集め、その後このカラムに脱イオン水を通過させ洗浄して洗浄液を集め、得られた通過液及び洗浄液を合併してエピ−イノシトール及びアロ−イノシトールを含むがそれ以外の不純物をほとんど含まない水溶液を収得する。
【0044】
製造方法(C)の最終(第4)工程では、先の第3工程で回収されたアロ−イノシトール及びエピ−イノシトールの水溶液からアロ−イノシトールとエピ−イノシトールを別々に分離する。このためには、前記の水溶液を濃縮し、得られた濃縮液を、4級アミン基を交換基とするスチレン重合体よりなる強酸性陽イオン交換樹脂(ホウ酸型)、例えばデュオライト(登録商標)A113(ホウ酸型)のカラムに通して、カラム樹脂にアロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを吸着させ、ついでカラムを脱イオン水、ついで0.5M濃度のホウ酸水溶液で溶出する方法によって、エピ−イノシトールから目的のアロ−イノシトールを効率よく分離できることが本発明者等によって見出されている。このアロ−イノシトールを含む水溶液を濃縮、乾固することによって、純粋なアロ−イノシトールの粉末を得ることができる。
【0045】
さらに、エピ−イノシトールから出発してアロ−イノシトールを作る新規な製法として、第6の本発明においては、エピ−イノシトールをD−アロ−5−イノソースへ変換できる酸化能を有する微生物を、水性媒質中でエピ−イノシトールに作用させて、エピ−イノシトールの変換によりD−アロ−5−イノソースを該水性媒質中で生成する工程と、前記の工程で生成されたD−アロ−5−イノソースを含有する水性媒質から該微生物の菌体を除去して、得られたD−アロ−5−イノソースを含有するが菌体を含まない水性媒質を収得する工程と、菌体を含まない該水性媒質からD−アロ−5−イノソースを単離せずに、D−アロ−5−イノソースを含有する該水性媒質中に還元剤として水素化ホウ素アルカリ金属、水素化トリアルコキシホウ素アルカリ金属またはシアン化ホウ素アルカリ金属を添加する工程と、該水性媒質中で該還元剤でD−アロ−5−イノソースを還元する反応を行い、D−アロ−5−イノソースの還元によりアロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを生成する工程と、その得られた還元反応液からアロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを回収する工程と、回収されたアロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを相互から分離する工程とを有することを特徴とする、アロ−イノシトールの製造方法が提供される。この第6の本発明方法を、以下、製造方法(D)という。
【0046】
製造方法(D)(第6の本発明方法)では、簡略的に言えば、先ず製造方法(B)(第4の本発明方法)を行い、D−アロ−5−イノソースを含有する菌体反応液を得て、それから、製造方法(B)で得られたD−アロ−5−イノソース含有の菌体反応液から菌体を除き、次いで菌体を含まない反応液から、D−アロ−5−イノソースを単離することなしに、前記のD−アロ−5−イノソース含有反応液に直接、製造方法(C)で用いる還元剤と同様な水系で使用可能な還元剤を添加し、さらに還元反応を行うことにより、アロ−イノシトールを生成させるものである。
【0047】
製造方法(D)の第1工程では、製造方法(B)の方法に従ってエピ−イノシトールに菌体を反応させることによって、水性媒質中にD−アロ−5−イノソースを生成蓄積させる。この第1工程で得られたD−アロ−5−イノソースを含有の菌体反応液から遠心分離、濾過等の公知の手段により菌体を除去する工程を行う(第2工程)。次いで、このように菌体を除かれたD−アロ−5−イノソース含有の反応液に、還元剤としての水素化物を添加する第3工程を行う。次いでD−アロ−5−イノソースの還元反応を行い、これによりアロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを生成する工程が行われる(第4工程)。還元反応の条件は製造方法(C)と同様に行えばよい。反応液からアロ−イノシトールとエピ−イノシトールを収得する工程(第5工程)及びアロ−イノシトールをエピ−イノシトールから分離する第6工程は、製造方法(C)の第3工程及び第4工程に準じて行うことができる。
【0048】
なおアロ−イノシトールを効率よく生産させる条件を検討する中で、エピ−イノシトールをD−アロ−5−イノソースに変換する酸化能力を有する細菌株が、D−アロ−5−イノソースの還元により生成するアロ−イノシトールに対して反応しない性質を利用して、製造方法(D)の第2工程で分離、回収した菌体を、D−アロ−5−イノソースの還元により副生成されたエピ−イノシトールに再度作用させ、D−アロ−5−イノソースと不反応のアロ−イノシトールとの混合物の溶液を生成させ、さらにこの溶液から遠心分離、濾過等の手段により菌体を除去して得られた混合溶液に再度、還元剤としての水素化物を添加して、D−アロ−5−イノソースの還元反応を行い、これにより高濃度のアロ−イノシトールを生成する工程から成る多段階の方法を行うことができること、そしてこの方法が製造方法(D)の変法として利用できることが判明した。これにより、製造方法(D)に比べて約1.5倍のアロ−イノシトールを反応溶液中に生成蓄積させることができることが知見された。
【0049】
従って、第7の本発明においては、エピ−イノシトールをD−アロ−5−イノソースへ変換できる酸化能を有する微生物を培地で培養する工程と、得られた培養物から該微生物菌体を分離する工程と、該菌体を、エピ−イノシトールを含む緩衝液または液体培地よりなる水性媒質に添加する工程と、該水性媒質中で菌体をエピ−イノシトールに作用させて、エピ−イノシトールの変換によりD−アロ−5−イノソースを生成する工程と、前記の工程で生成されたD−アロ−5−イノソースを含有する水性媒質から該微生物の菌体を分離、回収して、得られたD−アロ−5−イノソースを含有するが菌体を含まない水性媒質を収得する工程と、菌体を含まない該水性媒質からD−アロ−5−イノソースを単離せずに、D−アロ−5−イノソースを含有する該水性媒質中に還元剤として水素化ホウ素アルカリ金属、水素化トリアルコキシホウ素アルカリ金属またはシアン化ホウ素アルカリ金属を添加する工程と、該水性媒質中で、該還元剤でD−アロ−5−イノソースを還元する反応を行い、この還元反応によりアロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを該水性媒質内で生成する工程と、その得られた還元反応液からアロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを単離せずに、前記の工程で分離、回収された菌体をその還元反応液に添加する工程と、該反応液中のエピ−イノシトールにその添加菌体を作用させてD−アロ−5−イノソースを再び生成し、これにより再び生成されたD−アロ−5−イノソースと不反応のアロ−イノシトールと添加菌体とを含有する水性媒質を収得する工程と、前工程からの水性媒質から該添加菌体を除去する工程と、こうして、D−アロ−5−イノソースと不反応のアロ−イノシトールを含有する菌体を含まない水性媒質を収得する工程と、菌体を含まない該水性媒質からD−アロ−5−イノソースを単離せずに、水性媒質中に前記と同じ還元剤を添加する工程と、該水性媒質内で、該還元剤でD−アロ−5−イノソースを還元する反応を行い、D−アロ−5−イノソースの還元反応により、エピ−イノシトールとアロ−イノシトールを該水性媒質内で生成してエピ−イノシトールおよびアロ−イノシトールを高い濃度で含む還元反応液を得る工程と、その還元反応液から、アロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを回収する工程と、回収されたアロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを相互から分離する工程とを有することを特徴とする、アロ−イノシトールの製造方法が提供される。この第7の本発明方法を以下、製造方法(E)という。
【0050】
製造方法(E)においては、その各工程は、前記の製造方法(B)〜(D)における対応する工程と同様に実施できる。
【0051】
さらに、D−アロ−3−イノソースの新規な製法として、第8の本発明においては、アロ−イノシトールをD−アロ−3−イノソースへ変換できる酸化能を有する微生物を、アロ−イノシトールに作用させて、前記アロ−イノシトールをD−アロ−3−イノソースへ変換させてD−アロ−3−イノソースを生成させ、さらにD−アロ−3−イノソースを回収することからなることを特徴とする、D−アロ−3−イノソースの製造方法が提供される。この第8の本発明方法を製造方法(F)という。
【0052】
製造方法(F)では、(第8の本発明方法)に使用できるところのアロ−イノシトールをD−アロ−3−イノソースへ変換できる酸化能を有する微生物は、グラム陰性細菌であるシュードモナダセア(Pseudomonadaceae)科のキサントモナス(Xanthomonas)属またはシュードモナス(Pseudomonas)属の細菌、あるいはアセトバクテラセア(Acetobacteraceae)科のアセトバクター(Acetobacter)属または、グルコノバクター(Gluconobacter)属の細菌、あるいはリゾビアセア(Rhizobiaceae)科のアグロバクテリウム(Agrobacterium)属の細菌、あるいはエンテロバクテリアセア(Enterobacteriacea)科のエンテロバクター(Enterobacter)属、セラチア(Serratia)属またはエルシニア(Yersinia)属の細菌、あるいはパスツレラセア(Pasteurellaceae)科のパスツレラ(Pasteurella)属またはヘモフィルス(Haemophilus)属等の細菌であることができる。この微生物は、キサントモナス・エスピーAB10119株(FERM BP-7168)あるいはシュードモナス・エスピーAB10215株(FERM BP-7170)であるのが好ましく、その菌学的性質はPCT出願、PCT/JP00/03687号の国際公開WO 00/75355号公報に記載される。これらAB10119株およびAB10215株は日生研ブダペスト条約の規約下に寄託されている。
【0053】
第8の本発明方法(製造方法(F))の第1の具体的方法として、第9の本発明においては、アロ−イノシトールをD−アロ−3−イノソースへ変換できる酸化能を有する微生物を、アロ−イノシトール並びに炭素源及び窒素源を含有する液体培地で好気的に培養し、その培養液中において該微生物をアロ−イノシトールに作用させて培養液中にD−アロ−3−イノソースを生成、蓄積させ、さらにこれを回収することを特徴とする、D−アロ−3−イノソースの製造方法が提供される。この第9の本発明方法を以下、製造方法(G)という。
【0054】
第8の本発明方法の第2の具体的方法としては、第10の本発明においては、アロ−イノシトールをD−アロ−3−イノソースへ変換できる酸化能を有する微生物を、培地で培養する工程と、得られた培養物から該微生物の菌体を分離する工程と、該菌体をアロ−イノシトールを含む緩衝液または液体培地に加える工程と、該緩衝液または液体培地中でアロ−イノシトールと反応させ、得られた反応液中にD−アロ−3−イノソースを生成させる工程と、さらにこれを回収する工程を含むことを特徴とする、D−アロ−3−イノソースの製造方法が提供される。この第10の本発明方法を以下、製造方法(H)という。
【0055】
前記の製造方法(F)では、製造方法(C)あるいは製造方法(D)あるいは製造方法(D)または(E)の変法等の方法で得られたアロ−イノシトールに、アロ−イノシトールをD−アロ−3−イノソースに変換できる酸化微生物を作用させることにより、D−アロ−3−イノソースを生成させることができる。
【0056】
前記の製造方法(G)(第9の本発明方法)で用いられる液体培地の組成は、目的に達する限り何ら特別の制限はなく、D−アロ−3−イノソースへ変換されるアロ−イノシトール(原料)を含み、またこれに加えて、炭素源、窒素源、有機栄養源、無機塩類等を含有する培地であればよい。合成培地・天然培地のいずれも使用できる。培地には、アロ−イノシトールを0.1%〜40%、より好ましくは20〜30%添加し、炭素源としては、グルコース、シュークロース、マルトースあるいは澱粉を0.1%〜20%、より好ましくは0.5〜5%添加し、窒素源としては、酵母エキス、ペプトン、カザミノ酸、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、硝酸アンモニウムあるいは尿素等を0.01%〜5.0%、好ましくは0.5%〜2.0%添加するのが望ましい。
【0057】
その他必要に応じ、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、コバルト、マンガン、亜鉛、鉄、銅、モリブデン、リン酸、硫酸などのイオンを生成することができる無機塩類を培地中に添加することが有効である。培養液中の水素イオン濃度はpH4〜10、好ましくはpH5〜9に調整し培養すると、効率よくD−アロ−3−イノソースを得ることができる。
【0058】
微生物の培養条件は、菌株や培地の種類によっても異なるが、培養温度は5〜40℃、好ましくは20〜37℃であり、また、培養は液体培地を振とうしたり、液体培地中に空気を吹き込むなどして好気的に行えば良い。培養期間は、培養液中にアロ−イノシトールが完全に消失し、且つ、D−アロ−3−イノソースが最大の蓄積量を示すまで行えば良く、通常1〜14日、好ましくは3〜10日である。
【0059】
生成されたD−アロ−3−イノソースを含有する培養液から目的物を採取する方法は、通常の水溶性中性物質を単離精製する一般的な方法を応用することができる。すなわち、培養液から菌体を除去した後、培養上清液を活性炭やイオン交換樹脂等で処理することにより、D−アロ−3−イノソースを回収でき、それ以外の不純物をほとんど除くことができる。しかし、強塩基性陰イオン交換樹脂のOH型はD−アロ−3−イノソースを化学変化させるので使用することはできない。
【0060】
より具体的には、D−アロ−3−イノソースが蓄積した培養上清液を、不望成分の除去の目的で強酸性陽イオン交換樹脂、例えばデュオライト(登録商標)C-20(H型)を充填したカラムに通過させ、その通過液を集め、その後このカラムに脱イオン水を通過させ洗浄して洗浄液を集め、得られた通過液及び洗浄液を合併して弱塩基性陰イオン交換樹脂、例えばデュオライト(登録商標)A368S(遊離塩基型)を充填したカラムに通過させ、その通過液を集め、その後このカラムに脱イオン水を通過させ洗浄して洗浄液を集め、得られた通過液及び洗浄液を合併して、D−アロ−3−イノソースを含むがそれ以外の不純物をほとんど含まない水溶液を収得する。この溶出液を濃縮することによってD−アロ−3−イノソースを粉末として単離することができる。
【0061】
前記の製造方法(H)(第10の本発明方法)では、所要の酸化能を有する微生物を培養し、菌体を分離、回収、回収された菌体を、アロ−イノシトールを含有する緩衝液または液体培地中に添加し、そして反応させ、アロ−イノシトールからD−アロ−3−イノソースを生成させるものである。
【0062】
菌体としては、製造方法(G)の過程で得た培養液から分離して集めた菌体を用いてもよい。また、前記微生物を別途適当な培養条件で培養して得た菌体を用いてもよい。集菌は、培養液から遠心分離、濾過等公知の方法により行えばよい。
【0063】
菌体をアロ−イノシトールを反応させる反応媒質としては、液体培地、緩衝液などが用いられる。液体培地としては、製造方法(A)におけるものと同様のものを用いてもよく、また別途に前記微生物を培養した液体培地をそのまま用いてもよい。緩衝液としては、リン酸緩衝液、トリス緩衝液、グッド(Good’s)のCHES緩衝液等を10〜500mM、好ましくは20〜100mMの濃度で用いればよい。反応媒体としての溶液中のアロ−イノシトールの濃度は0.1〜40%程度とするのが好ましい。
【0064】
反応条件は、菌株や培地、緩衝液の種類によって異なるが、反応温度は5〜60℃、好ましくは10〜45℃であり、反応時間は1〜50時間、好ましくは3〜48時間であり、液体培地または緩衝液のpHは2〜10、好ましくは3〜9である。
反応終了後の反応液からの目的のD−アロ−3−イノソースを単離する方法は製造方法(G)と同様に行えばよい。
【0065】
さらに、前記の製造方法(F)〜(H)で得られたD−アロ−3−イノソースを、水中で水素化ホウ素ナトリウム等の水系で使用可能な還元剤で還元させると、D−キロ−イノシトールを生成させることができる。
【0066】
従って、アロ−イノシトールから出発してD−キロ−イノシトールを作る新規な製法として、基本的には、第11の本発明においては、アロ−イノシトールをD−アロ−3−イノソースへ変換できる酸化能を有する微生物を、水性媒質中でアロ−イノシトールに作用させて、アロ−イノシトールのD−アロ−3−イノソースへの変換によりD−アロ−3−イノソースを生成する工程と、前記の工程で生成されたD−アロ−3−イノソースを含有する反応液の水性媒質から該微生物の菌体を除去して、生成されたD−アロ−3−イノソースを含有するが菌体を含まない水性媒質を収得する工程と、菌体を含まない該水性媒質からD−アロ−3−イノソースを単離せずに、該水性媒質中に還元剤として水素化ホウ素アルカリ金属、水素化トリアルコキシホウ素アルカリ金属またはシアン化ホウ素アルカリ金属を添加する工程と、その水性媒質中で、該還元剤でD−アロ−3−イノソースを還元する反応を行い、これによりD−キロ−イノシトール及びアロ−イノシトールを該水性媒質内で生成する工程と、その還元反応液からD−キロ−イノシトール及びアロ−イノシトールを回収する工程と、回収されたD−キロ−イノシトール及びアロ−イノシトールを相互から分離する工程とを有することを特徴とする、D−キロ−イノシトールの製造方法が提供される。この第11の本発明方法を以下、製造方法(I)という。
【0067】
上記の製造方法(I)においては、アロ−イノシトールに微生物を作用させてD−アロ−3−イノソースを生成する第1工程は、前記の製造方法(G)または(H)におけるアロ−イノシトールに微生物を作用させる工程と同様に行うことができる。得られたD−アロ−3−イノソースを含有する培養液または反応液から微生物の菌体を分離、除去する第2工程は、遠心分離、瀘過等の公知方法で行い得る。次いで、得られたD−アロ−3−イノソースを含有する水性媒質に還元剤を添加する第3工程を行う。それに続く第4工程としては、還元剤でD−アロ−3−イノソースを還元する反応を行うが、この際の反応(水性)媒質に含有されたD−アロ−3−イノソースは0.1%〜60%濃度、好ましくは1%〜40%濃度とすることが望ましい。使用される還元剤は、水系中でD−アロ−3−イノソースをD−キロ−イノシトールに還元できる還元剤として、例えば、製造方法(C)に示した水素化物であるのが望ましい。還元反応の温度は0℃〜室温で行う。還元反応の反応混合物のpHはpH4〜pH10、好ましくはpH5〜pH8であるのが望ましい。D−アロ−3−イノソースの消失した時点または反応生成物の生成量が適当になった時点で反応を終了する。これによって、生成されたD−キロ−イノシトール及びアロ−イノシトールを含有する水溶液が還元反応の反応液として得られる(第4工程)。
【0068】
ここで得られた還元反応の反応液からD−キロ−イノシトール及びアロ−イノシトールを回収する第5の工程を次に行う。この第5の工程では、D−キロ−イノシトール及びアロ−イノシトールを含有する反応溶液を、不望成分の除去の目的で強酸性陽イオン交換樹脂、例えばデュオライト(登録商標)C-20(H型)を充填したカラムに通過させ、通過液を集め、その後このカラムに脱イオン水を通過させ洗浄して洗浄液を集め、得られた通過液及び洗浄液を合併して弱塩基性陰イオン交換樹脂、例えばデュオライト(登録商標)A113(OH型)を充填したカラムに通過させ、通過液を集め、その後このカラムに脱イオン水を通過させ洗浄して洗浄液を集め、得られた通過液及び洗浄液を合併してD−キロ−イノシトール及びアロ−イノシトールを含みそれ以外の不純物をほとんど含まない水溶液を収得する。
【0069】
上記の製造方法(I)の最終の第6工程では、先の第5工程で回収されたD−キロ−イノシトール及びアロ−イノシトールの水溶液からD−キロ−イノシトール及びアロ−イノシトールを別々に分離する。このためには、前記の水溶液を濃縮し、得られた濃縮液を、スルフォン酸基を交換基とするスチレン重合体よりなる強酸性陽イオン交換樹脂(カルシウム型)、例えばダイアイオン(登録商標)UBK520M(カルシウム型)のカラムを通して、カラムにD−キロ−イノシトール及びアロ−イノシトールを吸着させ、ついでカラムを脱イオン水で溶出する方法によって、D−キロ−イノシトールをアロ−イノシトールから効率よく分離できる。このD−キロ−イノシトールを含む水溶液を濃縮し、エタノール水など結晶化することによって、純粋なD−キロ−イノシトールの結晶を得ることができる。
【0070】
D−キロ−イノシトールを効率よく生成させる条件を検討する中で、アロ−イノシトールをD−アロ−3−イノソースに変換する能力を有する前記の細菌株が、D−アロ−3−イノソースの還元により生成したD−キロ−イノシトールに反応しない性質を利用して、前記の製造方法(H)あるいは製造方法(I)の第2工程で分離、回収した菌体を、D−アロ−3−イノソースを還元して副生成するアロ−イノシトールに再度作用させ、D−アロ−3−イノソースと未反応のアロ−イノシトールの混合溶液を生成させ、遠心分離、濾過等の手段により菌体を除去して得られた混合溶液に再度還元剤としての水素化物を添加して、D−アロ−3−イノソースの還元反応を行い、これにより高濃度のアロ−イノシトールを生成する工程を行うことができることが見出され、このことを前記の製造方法(I)の変法として利用できることが判明した。これにより、製造方法(I)の約1.5倍のD−キロ−イノシトールを反応溶液中に生成蓄積させることができることが見出された。
【0071】
従って、第12の本発明においては、アロ−イノシトールをD−アロ−3−イノソースへ変換できる酸化能を有する微生物を培地で培養する工程と、得られた培養物から該微生物菌体を分離する工程と、分離、回収された該菌体をアロ−イノシトールを含む緩衝液または液体培地よりなるの水性媒質中に添加する工程と、該水性媒質でアロ−イノシトールに作用させて、アロ−イノシトールのD−アロ−3−イノソースへの変換によりD−アロ−3−イノソースを生成する工程と、前記の工程で生成されたD−アロ−3−イノソースを含有する反応液の水性媒質から該微生物の菌体を分離、回収する工程と、こうして、D−アロ−3−イノソースを含有するが菌体を含まない水性媒質を収得する工程と、この工程で得た該水性媒質からD−アロ−3−イノソースを単離せずに、D−アロ−3−イノソースを含有する該水性媒質中に還元剤として水素化ホウ素アルカリ金属、水素化トリアルコキシホウ素アルカリ金属またはシアン化ホウ素アルカリ金属を添加する工程と、該還元剤でD−アロ−3−イノソースを還元する反応を行い、これによりD−キロ−イノシトール及びアロ−イノシトールを該水性媒質内で生成する工程と、その得られた還元反応液からD−キロ−イノシトール及びアロ−イノシトールを単離せずに、先の工程で回収された菌体を該還元反応液に添加する工程と、その還元反応液中のD−アロ−3−イノソースに添加された菌体を作用させ、D−アロ−3−イノソースを再び生成させる工程と、この工程で得られた再び生成されたD−アロ−3−イノソースと不反応のD−キロ−イノシトールを含有する水性媒質から、該微生物の菌体を除去して、生成されたD−アロ−3−イノソースと不反応のD−キロ−イノシトールとを含有するが菌体を含まない水性媒質を収得する工程と、菌体を含まない該水性媒質からD−アロ−3−イノソースを単離せずに、該水性媒質中に前記と同じ還元剤を添加する工程を該水性媒質中で、該還元剤でD−アロ−3−イノソースを還元してD−キロ−イノシトール及びアロ−イノシトールを生成する反応を行い、これにより、アロ−イノシトールとD−キロ−イノシトールを還元反応液中に生成する工程と、こうして得た高濃度でD−キロ−イノシトールとアロ−イノシトールを含む還元反応液から、D−キロ−イノシトール及びアロ−イノシトール及びを回収する工程と、回収されたD−キロ−イノシトール及びアロ−イノシトールを相互から分離する工程とを有することを特徴とする、D−キロ−イノシトールの製造方法が提供される。第12の本発明方法を以下、製造方法(J)という。
【0072】
さらに、第13の本発明においては、エピ−イノシトールをD−アロ−5−イノソースへ変換できる酸化能を有する微生物を、水性媒質中でエピ−イノシトールに作用させて、エピ−イノシトールの変換によりD−アロ−5−イノソース及びL−エピ−2−イノソースを生成する工程と、前記の工程で生成されたD−アロ−5−イノソースを含有する水性媒質から該微生物の菌体を除去して、得られたD−アロ−5−イノソースを含有するが菌体を含まない水性媒質を収得する工程と、菌体を含まないがD−アロ−5−イノソースを含む該水性媒質からD−アロ−5−イノソースを単離した後に、または単離せずに、D−アロ−5−イノソースを含有する水性媒質中に還元剤として水素化ホウ素アルカリ金属、水素化トリアルコキシホウ素アルカリ金属またはシアン化ホウ素アルカリ金属を添加する工程と、該水性媒質中で、該還元剤でD−アロ−5−イノソースを還元する反応を行い、これによりアロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを該水性媒質内で生成する工程と、こうして得られたアロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを含有する還元反応液の該水性媒質内にアロ−イノシトールをD−アロ−3−イノソースへ変換できる酸化能を有する微生物を添加する工程と、微生物を該水性媒質中でアロ−イノシトールに作用させて、アロ−イノシトールのD−アロ−3−イノソースへの変換によりD−アロ−3−イノソースを生成する工程と、前記の工程で生成されたD−アロ−3−イノソースと不反応のエピ−イノシトールを含有する反応液の水性媒質から該微生物の菌体を除去して、得られたD−アロ−3−イノソースと不反応のエピ−イノシトールとを含有する水性媒質を収得する工程と、該水性媒質からD−アロ−3−イノソースを単離した後に、または単離せずに、D−アロ−3−イノソースを含む水性媒質中に還元剤として上記と同じ還元剤を添加する工程と、その水性媒質中で、該還元剤でD−アロ−3−イノソースを還元する反応を行い、これによりD−キロ−イノシトールとアロ−イノシトールを該水性媒質内で生成する工程と、こうして得たその還元反応の反応液からD−キロ−イノシトールとアロ−イノシトールを回収する工程と、回収されたD−キロ−イノシトールとアロ−イノシトールを相互から分離する工程とを有することを特徴とする、D−キロ−イノシトールの製造方法が提供される。第13の本発明方法を以下、製造方法(K)という。
【0073】
さらにまた、第14の本発明においては、エピ−イノシトールをD−アロ−5−イノソースへ変換できる酸化能を有する微生物を培地で培養する工程と、得られた培養物から該微生物菌体を分離する工程と、分離、回収された該菌体をエピ−イノシトールを含む緩衝液または液体培地よりなる水性媒質中に添加する工程と、該水性媒質中で添加された菌体をエピ−イノシトールに作用させて、エピ−イノシトールの変換によりD−アロ−5−イノソースを生成する工程と、この工程で生成されたD−アロ−5−イノソースを含有する水性媒質から該微生物の菌体を分離、回収して、生成されたD−アロ−5−イノソースを含有する水性媒質を収得する工程と、該水性媒質からD−アロ−5−イノソースを単離せずに、D−アロ−5−イノソースを含有する該水性媒質中に還元剤として水素化ホウ素アルカリ金属、水素化トリアルコキシホウ素アルカリ金属またはシアン化ホウ素アルカリ金属を添加する工程と、該還元剤でD−アロ−5−イノソースを還元する反応を行い、D−アロ−5−イノソースの還元によりアロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを該水性媒質内で生成する工程と、その得られた還元反応液からアロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを単離せずに、先行の工程で分離、回収された菌体をその還元反応液中に添加する工程と、該還元反応液中で添加された菌体をエピ−イノシトールに作用させ、D−アロ−5−イノソースを再び生成して、ここで生成されたD−アロ−5−イノソースと不反応のアロ−イノシトールを含有する水性媒質を収得する工程と、該水性媒質から該微生物の菌体を除去して、D−アロ−5−イノソースと不反応のアロ−イノシトールを含有する水性媒質を収得する工程と、D−アロ−5−イノソースとアロ−イノシトールを含有する該水性媒質からD−アロ−5−イノソースを単離せずに、該水性媒質中に前記と同じ還元剤を添加する工程と、その水性媒質中で、該還元剤でD−アロ−5−イノソースを還元する反応を行い、D−アロ−5−イノソースの還元により、エピ−イノシトールとのアロ−イノシトールを生成して、エピ−イノシトールとアロ−イノシトールを高濃度で含む水性媒質を収得する工程と、前記されたアロ−イノシトールをD−アロ−3−イノソースへ変換できる酸化能を有する微生物を培養する工程と、得られた培養物から該微生物菌体を分離、回収する工程と、この工程で回収された、該菌体を、先の工程で得られたところのエピ−イノシトールとアロ−イノシトールを高濃度で含有した水性媒質中に添加する工程と、その水性媒質中で添加された菌体をアロ−イノシトールに作用させて、アロ−イノシトールのD−アロ−3−イノソースへの変換によりD−アロ−3−イノソースを生成して、ここで生成されたD−アロ−3−イノソースと不反応のエピ−イノシトールを含有する水性媒質を収得する工程と、この水性媒質から該微生物の菌体を分離、回収して、生成されたD−アロ−3−イノソースと未反応のアロ−イノシトールと不反応のエピ−イノシトールを含有する水性媒質を収得する工程と、該水性媒質からD−アロ−3−イノソースを単離せずに、D−アロ−3−イノソースとエピ−イノシトールを含有する該水性媒質中に還元剤として水素化ホウ素アルカリ金属、水素化トリアルコキシホウ素アルカリ金属またはシアン化ホウ素アルカリ金属を添加する工程と、該水性媒質中で該還元剤でD−アロ−3−イノソースを還元する反応を行い、D−アロ−3−イノソースの還元によりD−キロ−イノシトールとアロ−イノシトールを生成して、D−キロ−イノシトールとアロ−イノシトールと不反応のエピ−イノシトールを含有する水性媒質を収得する工程と、その得られた還元反応液からD−キロ−イノシトールとアロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを単離せずに、前記の工程の回収菌体(アロ−イノシトールをD−アロ−3−イノソースに変換できる酸化能を有する微生物の菌体)を該還元反応液に添加する工程と、その還元反応液中のアロ−イノシトールに添加菌体を作用させ、D−アロ−3−イノソースを再び生成して、ここで生成されたD−アロ−3−イノソースと不反応のD−キロ−イノシトールとエピ−イノシトールを含有する水性媒質を収得する工程と、水性媒質から該微生物の菌体を除去して、生成されたD−アロ−3−イノソースと不反応のD−キロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを含有する水性媒質を収得する工程と、該水性媒質からD−アロ−3−イノソースを単離せずに、該水性媒質中で前記と同じ還元剤を添加する工程と、該水性媒質中で、該還元剤でD−アロ−3−イノソースを還元する反応を行い、これにより、アロ−イノシトールとD−キロ−イノシトールを生成し、アロ−イノシトールとD−キロ−イノシトールを高濃度で含み且つ不反応のエピ−イノシトールを含む還元反応液を収得する工程と、この工程で得た還元反応液から、D−キロ−イノシトール及びアロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを回収する工程と、回収されたD−キロ−イノシトール及びアロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを相互から分離する工程とを有することを特徴とする、D−キロ−イノシトールの製造方法が提供される。第14の本発明方法を以下、製造方法(L)という。
【0074】
前記の製造方法(J)〜(L)では、エピ−イノシトールからD−アロ−5−イノソース、アロ−イノシトール、D−アロ−3−イノソースを経由して、D−アロ−5−イノソース、アロ−イノシトール、D−アロ−3−イノソースをそれぞれ単離することなしに、ワン・ポット法でD−キロ−イノシトールを生成させることができる。
【0075】
製造方法(J)〜(L)では、エピ−イノシトールに、エピ−イノシトールをD−アロ−5−イノソースに変換する能力を有する微生物を作用させる工程が行われる。これにより、水性媒質中にD−アロ−5−イノソースを蓄積させ、次いで、菌体を除く工程が行われる。その後、D−アロ−5−イノソースを単離することなしに、水系で使用できる適当な還元剤を作用させ、水性媒質中にD−アロ−5−イノソースからアロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを生成させ、再度、水性媒質中に蓄積しているエピ−イノシトールに前記の回収した菌体を作用させ、水性媒質中にD−アロ−5−イノソースを生成し、また未反応のアロ−イノシトールを蓄積させ、菌体を除菌後、再度、還元剤をD−アロ−5−イノソースに作用させ、高濃度のアロ−イノシトールを生成蓄積させる諸工程が行われるものである。この製造方法(J)〜(L)における微生物的変換及び化学的還元は、より具体的には前述の製造方法(B)及び製造方法(C)及び製造方法(D)及びその変法で説明したと同じ要領で行うことができる。
【0076】
こうして得られたアロ−イノシトール及びエピ−イノシトールの混合物を含む水性媒質に、アロ−イノシトールをD−アロ−3−イノソースに変換する酸化能力を有する微生物を作用させ、水性媒質中にD−アロ−3−イノソース及び不反応のエピ−イノシトールを蓄積させ、次いで、菌体を除いた後、D−アロ−3−イノソースを単離することなしに、適当な水系で使用できる還元剤を作用させ、水性媒質中にD−キロ−イノシトール及びアロ−イノシトール及び不反応のエピ−イノシトールを生成させる。その後再度、水性媒質中に蓄積しているアロ−イノシトールに前記の回収した菌体を作用させ、水性媒質中にD−アロ−3−イノソース及び不反応のD−キロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを生成させる。さらに、菌体を除菌後、再度還元剤をD−アロ−3−イノソースに作用させ、高濃度のD−キロ−イノシトールを生成蓄積させるものである。この際における微生物変換及び還元は、より具体的には前述の製造方法(F)〜(I)で説明したと同じ要領で行うことができる。
【0077】
さらに、上記のようにして得られたD−キロ−イノシトール及びアロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを含む水性媒質から、D−キロ−イノシトールを精製単離する。このためには、前記のこの水溶液を濃縮し、得られた濃縮液を、スルフォン酸基を交換基とするスチレン重合体よりなる強酸性陽イオン交換樹脂(カルシウム型)、例えばダイアイオン(登録商標)UBK520M(カルシウム型)のカラムを通して、カラムにD−キロ−イノシトール及びアロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを吸着させ、ついでカラムを脱イオン水で溶出することから成る方法によって、D−キロ−イノシトールを、アロ−イノシトール及びエピ−イノシトールから効率よく分離できる。このD−キロ−イノシトールを含む水溶液を濃縮し、エタノール水などで結晶化することによって、純粋なD−キロ−イノシトールの結晶を得ることができる。
【0078】
【発明の実施形態】
以下に、本発明の実施例について具体的に説明する。
【0079】
【実施例1】
製造方法(A)(第3の本発明方法)によるD−アロ−5−イノソースの生成
(1)種培養液の製造
ミオ−イノシトール 0.5%、グルコース 0.5%、酵母エキス 0.3%を含むpH未調整の液体培地100mlを、500ml容のバッフル付き三角フラスコに分注し、オートクレーブ滅菌した。その三角フラスコにスフィンゴモナス・エスピーAB10233株(FERM P-17894)あるいはキサントモナス・エスピーAB10198株(FERM P-17893)を接種し、27℃で24時間振とう培養した。この培養液を種培養液とした。
【0080】
(2)D−アロ−5−イノソースの生成(第1例)
エピ−イノシトール 12%、グルコース 2%、ミオ−イノシトール 0.5%、酵母エキス 0.6%を含むpH未調整の液体培地100mlを、500ml容のバッフル付き三角フラスコに分注し、オートクレーブ滅菌した。その三角フラスコに上記記載の方法で製造したスフィンゴモナス・エスピーAB10233株(FERM P-17894)の種培養液を2ml接種し、27℃で4日間振とう培養した。この培養液を遠心分離(8,000rpm、20分間)し、上清を培養上清液とした。
【0081】
この培養上清液を高速液体クロマトグラフィーにより下記の条件で分析したその結果、培養上清液中にはD−アロ−5−イノソースが113mg/ml(変換率95.2%)生成していることがわかった。この時の培養液中にはエピ−イノシトールは検出されなかった。
【0082】
なお、上記のD−アロ−5−イノソースの変換率は、次の計算式により求めた。
変換率(%)=〔培養上清液1ml中のD−アロ−5−イノソースのモル数÷培地1ml中のエピ−イノシトールのモル数〕×100
カラム:Sugar-Pak Ca (Short) : 7.8 × 150mm
カラム温度 : 80℃
検出器 : RI DETECTER ERC-7515A (ERMA CR.INC.)
注入量 : 20μl
溶媒 : 水
溶出時間 : D−アロ−5−イノソース ; 12.0分
【0083】
(3)D−アロ−5−イノソースの単離
実施例1(2)で得た培養上清液を、強酸性陽イオン交換樹脂デュオライト(登録商標)C-20(H型)20mlを充填したカラム(内径1.5cm、長さ30cm)に通過させ、その後このカラムに20mlのイオン交換水を通過させて洗浄した。この通過液及び洗浄液を、弱塩基性陰イオン交換樹脂デュオライト(登録商標)368S(遊離塩基型)40mlを充填したカラム(内径1.5cm、長さ30cm)に通過させ、その後このカラムに40mlのイオン交換水を通過させて洗浄した。
【0084】
こうして得られた通過液及び水洗浄液を減圧下で濃縮し、さらに凍結乾燥を行った。その結果、高純度のD−アロ−5−イノソースの白色粉末を9.9g得た。この時の精製品回収収率は87.6%、エピ−イノシトールからのD−アロ−5−イノソースの全回収率は83.4%であった。
【0085】
なお、上記D−アロ−5−イノソースの精製品回収率及びエピ−イノシトールからの全回収率は次式により求めた。
精製品回収率(%)=〔精製単離したD−アロ−5−イノソース÷培養上清液100ml中の精製前のD−アロ−5−イノソース〕×100
全回収率(%)=〔精製単離したD−アロ−5−イノソースのモル数÷培地に添加したエピ−イノシトールのモル数〕×100
【0086】
D−アロ−5−イノソースは下記の物理化学的性状を有する。
(1)外 観: 白色粉末
(2)分子式: C6H10O
(3)分子量: 178
(4)比旋光度: −16°(c 1.0、H2O、27℃)
(5)1H-NMR(300MHz、D2O)
δ(ppm):3.49(dd, 1H, J1,2=3.3Hz, J1,6=10.5Hz、1-H)、3.95(m, 2H, 2-H) 、3.78(t, 1H, J3,2=J3,4=3.3Hz, 3-H)、3.68(dd, 1H, J4,3=3.3Hz, J4,2=1.6Hz、4-H)、3.76(d, 1H, J6,1=10.5Hz, 6-H)
(6)13C-NMR(75.5MHz、D2O)
δ(ppm):71.9(d, C-1)、75.1(d, C-2)、67.4(d, C-3)、77.6(d, C-4)、95.8(s, C-5)、71.5(d, C-6)
(7)溶解性:水、ジメチルスルフォキシドに可溶である。メタノール、エタノール、アセトンに不溶である。
【0087】
【実施例2】
製造方法(A)(第3の本発明方法)によるD−アロ−5−イノソースの生成(第2例)
エピ−イノシトール 8%、グルコース 0.5%、ミオ−イノシトール 0.5%、酵母エキス 0.45%、KH2PO4 0.02%、K2HPO4 0.18%を含むpH未調整の液体培地100mlを、500ml容のバッフル付き三角フラスコに分注し、オートクレーブ滅菌した。その三角フラスコに実施例1 (1)記載の方法で製造したキサントモナス・エスピーAB10198株(FERM P-17893)の種培養液を2ml接種し、27℃で4日間振とう培養した。この培養液を遠心分離(8,000rpm、20分間)し、上清を培養上清液とした。
【0088】
この培養上清液を高速液体クロマトグラフィーにより下記の条件で分析したその結果、培養上清液にはD−アロ−5−イノソースが76mg/ml(変換率96.5%)生成していることがわかった。この時の培養液中にエピ−イノシトールは検出されなかった。なお、上記のD−アロ−5−イノソースの変換率の計算は、実施例1(2)に準じた。
【0089】
また、生成したD−アロ−5−イノソースの単離は実施例1(3)に準じて行い、D−アロ−5−イノソースの白色粉末6.5gを得た。この時のD−アロ−5−イノソースの精製品回収率及びエピ−イノシトールからの全回収率はそれぞれ85.0%、82.0%であった。
【0090】
なお、上記のD−アロ−5−イノソースの精製品回収率及びエピ−イノシトールからの全回収率は実施例1(3)に示した計算式から求めた。
【0091】
【実施例3】
製造方法(B)(第4の本発明方法)によるD−アロ−5−イノソースの製造例
(1)菌体の生産
ミオ−イノシトール 0.5%、グルコース 0.5%、酵母エキス 0.4%、K2HPO4 0.18%、KH2PO4 0.02%を含むpH未調整の液体培地4Lを、500ml容のバッフル付き三角フラスコに分注し、オートクレーブ滅菌した。各々の三角フラスコの培地にスフィンゴモナス・エスピーAB10233株(FERM P-17894)を接種し、27℃で3日間振とう培養した。この培養液を遠心分離して得られた菌体を、0.05M リン酸緩衝液(pH7.0) 200mlで洗浄後、再び遠心分離し、洗浄菌体16g(湿重量)を得た。
【0092】
(2)D−アロ−5−イノソースの生成
上記により得られた洗浄菌体の全部を、エピ−イノシトール16gを溶解、含有した0.05M リン酸緩衝液(pH6.0) の400ml(エピ−イノシトール濃度は40mg/ml)中に加え、27℃、24時間スターラーで攪拌しながら反応させた。反応終了後、反応液を液体クロマトグラフィーにより分析したところ、D−アロ−5−イノソースが36mg/ml(変換率95.0%)生成、蓄積していた。
【0093】
なお、上記のD−アロ−5−イノソースの変換率は、次式より求めた。
変換率(%)=〔反応終了後の反応液1ml中のD−アロ−5−イノソースのモル数÷反応前の緩衝液1ml中のエピ−イノシトールのモル数〕×100
【0094】
(3)D−アロ−5−イノソースの単離
実施例3(2)で得た反応液から菌体を遠心分離で除去した。得られた反応液上清液のうちの100mlを、強酸性陽イオン交換樹脂デュオライト(登録商標)C-20(H型)20mlを充填したカラム(内径1.5cm、長さ30cm)に通過させ、その後このカラムに20mlの脱イオン水を通過させて洗浄した。この通過液及び洗浄液を、弱塩基性陰イオン交換樹脂デュオライト(登録商標)368S(遊離塩基型)40mlを充填したカラム(内径1.5cm、長さ30cm)に通過させ、その後このカラムに40mlの脱イオン水を通過させて洗浄した。
こうして得られた通過液及び水洗浄液中には、上記D−アロ−5−イノソース以外の不純物はほとんど存在していなかった。
【0095】
上記により得たD−アロ−5−イノソース水溶液を減圧下で濃縮し、さらに凍結乾燥を行った。その結果、高純度のD−アロ−5−イノソースの白色粉末を2.3g得た。この時のD−アロ−5−イノソースの精製品回収収率は61.2%、エピ−イノシトールからのD−アロ−5−イノソースの全回収率は58.1%であった。
【0096】
なお、上記D−アロ−5−イノソースの精製品回収率は次式により求めた。
精製品回収率(%)=〔精製品として単離したD−アロ−5−イノソース量÷反応液100ml中に含まれた精製前のD−アロ−5−イノソース量〕×100
また、上記L−エピ−2−イノソースのエピ−イノシトールからの全回収率は次式により求めた。
全回収率(%)=〔精製品として単離したD−アロ−5−イノソースのモル数÷反応前の溶液に添加したエピ−イノシトールのうち溶液100mlに含まれる該物質のモル数〕×100
【0097】
【実施例4】
製造方法(C)(第5の本発明方法)によるアロ−イノシトールの製造例
(1)アロ−イノシトールの生成(第1例)
実施例2の方法に準じて調製したD−アロ−5−イノソースの4gを脱イオン水100mlに溶かした。得られた水溶液に、水素化ホウ素ナトリウム0.26gを徐々に加えた。還元終了後、反応液を高速液体クロマトグラフィーにより下記の条件で分析した。その結果、還元反応後の反応液は、主に生成したアロ−イノシトールの2.1gを含有し、副生成物として、エピ−イノシトールの1.9gを含有していることがわかった。アロ−イノシトールとエピ−イノシトールの合計還元収率は98.5%であり、D−アロ−5−イノソースからのアロ−イノシトールの還元収率は51.9%であった。
【0098】
高速液体クロマトグラフィーの分析条件は以下の通りである。
Figure 0004474060
【0099】
上記のD−アロ−5−イノソースからのアロ−イノシトール及びエピ−イノシトールの合計還元収率は次式により求めた。
アロ−イノシトール及びエピ−イノシトールの合計還元収率(%)=〔還元反応後のアロ−イノシトールのモル数とアロ−イノシトールのモル数の合計÷還元反応前のD−アロ−5−イノソースのモル数〕×100
また、上記のD−アロ−5−イノソースからのアロ−イノシトールの還元収率は次式により求めた。
アロ−イノシトール還元収率(%)=〔還元反応後のアロ−イノシトールのモル数÷還元反応前のD−アロ−5−イノソースのモル数〕×100
【0100】
(2)アロ−イノシトールの単離
前項(1)で得た還元反応後の反応液を、強酸性陽イオン交換樹脂デュオライト(登録商標)C-20(H型)20mlを充填したカラム(内径1.5cm、長さ30cm)に通過させ、その後このカラムに20mlの脱イオン水を通過させて洗浄した。この通過液及び洗浄液を、強塩基性陰イオン交換樹脂デュオライト(登録商標)A-113 (OH型)40mlを充填したカラム(内径1.5cm、長さ30cm)に通過させ、その後このカラムに40mlの脱イオン水を通過させて洗浄した。
【0101】
こうして得られた通過液及び水洗浄液を合併して得られた水溶液は、主生成物としてアロ−イノシトールと、副生成物であるエピ−イノシトールを含有するが、これら以外の不純物をほとんど含有しなかった。
【0102】
上記により得たアロ−イノシトールとエピ−イノシトールの水溶液を減圧下で20mlまで濃縮し、その濃縮液を強酸性陽イオン交換樹脂デュオライト (登録商標)A116(ホウ酸型)100mlを充填したカラム(内径3cm、長さ30cm)に通過させ、その後このカラムに脱イオン水を通過させ、次いで0.5Mホウ酸水を通過させて溶出した。該カラムの脱イオン水による溶出液及び0.5Mホウ酸水による溶出液はアロ−イノシトールのみが含まれていた。脱イオン水及びホウ酸水で溶出された両方の水溶液を濃縮乾固させ、この乾固物にメタノールを過剰量加え、加温しつつ減圧濃縮させた。ホウ酸をメタノールとともに共沸除去した。この操作で高純度のアロ−イノシトールの白色粉末を1.4g得た(精製回収率69.0%)。この時のD−アロ−5−イノソースからのアロ−イノシトールの全回収率は35.8%であった。
【0103】
なお、上記アロ−イノシトールの精製回収率は次式により求めた。
精製品回収率(%)=〔精製単離したアロ−イノシトール量÷反応液100ml中の精製前のアロ−イノシトール量〕×100
また、上記アロ−イノシトールのD−アロ−5−イノソースからの全回収率は次式により求めた。
全回収率(%)=〔精製単離したアロ−イノシトールのモル数÷反応前の溶液に添加したD−アロ−5−イノソースのモル数〕×100
【0104】
【実施例5】
製造方法(E)(第7の本発明方法)によるアロ−イノシトールの製造例
(1)アロ−イノシトールの生成
(i) 実施例3の(1)、(2)の方法を反復した。これで得たD−アロ−5−イノソース含有の反応液上清液のうちの100mlを分取した。これを5M塩酸にてpHを6に調整後、水素化ホウ素ナトリウム0.26gを徐々に加え還元反応を行った。還元終了後、反応液を高速液体クロマトグラフィーにより実施例4(1)に記載した条件で分析した。その結果、還元反応後の反応液は、生成したアロ−イノシトールの2.1gを含有し、副生成物として、エピ−イノシトールの1.8gを含有していることがわかった。アロ−イノシトールとエピ−イノシトールの合計還元収率は97.0%であった。D−アロ−5−イノソースからのアロ−イノシトールの還元収率は52.5%であった。
【0105】
(ii) この還元反応液を5M塩酸にてpH6に調整後、この溶液に対して実施例3(3)で分離、回収したAB10233株菌体の4分の1量を再度添加し、この微生物を27℃で24時間エピ−イノシトールに反応させた。反応終了後、反応液から除菌し、反応液上清液を高速液体クロマトグラフィーにより実施例1(1)に記載した条件で分析した。その結果、反応終了後の上清溶液中には、未反応のアロ−イノシトール2.1gと、エピ−イノシトールから再び生成されたD−アロ−5−イノソース1.7g含まれていた。還元反応での副生成物であるエピ−イノシトールのD−アロ−5−イノソースへの変換率は94%であった。
(iii) 次に、上記(ii)の反応終了後の反応上清液を1M水酸化ナトリウムにてpH6に調整後、この溶液に水素化ホウ素ナトリウム0.12gを徐々に加え、再び還元反応を行った。還元終了後、反応液を高速液体クロマトグラフィーにより実施例4(1)に記載した条件で分析した。その結果、還元終了後の反応溶液中には、アロ−イノシトール3gを含有し、副生成物のエピ−イノシトールは0.8g含有していることがわかった。この時のアロ−イノシトールとエピ−イノシトールの合計還元収率は96.5%であった。
全体を通して、D−アロ−5−イノソースからアロ−イノシトールへの全反応収率は75.0%であった。
【0106】
D−アロ−5−イノソースからのアロ−イノシトール及びエピ−イノシトールの合計還元収率及びD−アロ−5−イノソースからのアロ−イノシトールの還元収率は実施例4(1)に示した式により求めた。但し、前項(iii)における2回目の還元収率は、反応液中含まれているアロ−イノシトール量から未反応のアロ−イノシトール量を減じた値から求めた。
【0107】
D−アロ−5−イノソースの変換率は、実施例1(1)に示した式より求めた。
【0108】
また、アロ−イノシトールの全反応収率は次式により求めた。
アロ−イノシトールの全反応収率=〔最終の還元反応終了液中のアロ−イノシトールのモル数÷反応開始前の溶液中のD−アロ−5−イノソースのモル数〕×100
【0109】
(2)アロ−イノシトールの単離
反応溶液中のアロ−イノシトールの単離は、実施例4(2)の方法に準じて行った。この操作で高純度のアロ−イノシトールの白色粉末を2.1g得た(精製回収率72.0%)。この時のD−アロ−5−イノソースからのアロ−イノシトールの全回収率は53.5%であった。
なお、上記アロ−イノシトールの精製回収率及び反応開始前のアロ−イノシトールからの全回収率は実施例4(2)に示したにより求めた。
【0110】
【実施例6】
製造方法(G)(第9の本発明方法)によるD−アロ−3−イノソースの製造例
(1)D−アロ−3−イノソースの生成(第1例)
アロ−イノシトール 4.0%、グルコース 1.0%、酵母エキス 0.7%を含むpH未調整の液体培地100mlを500ml容のバッフル付き三角フラスコに分注し、オートクレーブ滅菌した。この三角フラスコの培地にキサントモナス・エスピーAB10119株(FERM BP-7168)を接種し、27℃で5日間振とう培養した。培養液を遠心分離(8,000rpm、20分間)し、上清を培養上清液とした。
【0111】
この培養上清液を下記に示した高速液体クロマトグラフィーにより分析した。その結果、培養上清液中にはD−アロ−3−イノソースが3.8g(アロ−イノシトールからD−アロ−3−イノソースへの変換率93.0%)生成していることがわかった。この時の培養液中にはアロ−イノシトールは検出されなかった。
【0112】
なお、上記のD−アロ−3−イノソースの変換率は、次式により求めた。
変換率(%)=〔培養上清液1ml中のD−アロ−3−イノソースのモル数÷培地1ml中のアロ−イノシトールのモル数〕×100
高速液体クロマトグラフィーの分析条件は以下の通りである。
Figure 0004474060
【0113】
(2)D−アロ−3−イノソースの単離
実施例6(1)で得た培養液から菌体を遠心分離で除去し、上清液を、強酸性陽イオン交換樹脂デュオライト(登録商標)C-20(H型)20mlを充填したカラム(内径1.5cm、長さ30cm)に通過させた。その後このカラムに20mlの脱イオン水を通過させて洗浄した。この通過液及び洗浄液を、弱塩基性陰イオン交換樹脂デュオライト(登録商標)368S(遊離塩基型)40mlを充填したカラム(内径1.5cm、長さ30cm)に通過させ、その後このカラムに40mlの脱イオン水を通過させて洗浄した。
【0114】
こうして得られた通過液及び水洗浄液中には上記D−アロ−3−イノソース以外の不純物はほとんど存在していなかった。
【0115】
上記により得たD−アロ−3−イノソース水溶液を減圧下で20mlまで濃縮し、エタノールを60ml加え結晶化した。その結果、純粋なD−アロ−3−イノソースの無色結晶を2.6g得た。この時の精製品回収収率は68.0%、エピ−イノシトールからのD−アロ−3−イノソースの全回収率は65.3%であった。
【0116】
なお、上記D−アロ−3−イノソースの精製品回収率は次式により求めた。
精製品回収率(%)=〔精製単離したD−アロ−3−イノソース量÷培養上清液100ml中の精製前のD−アロ−3−イノソース〕×100
また、上記D−アロ−3−イノソースの全回収率は次式により求めた。
全回収率(%)=〔精製単離したD−アロ−3−イノソースのモル数÷培地100ml中に添加したアロ−イノシトールのモル数〕×100
【0117】
【実施例7】
製造方法(G)(第9の本発明方法)によるD−アロ−3−イノソースの生成(第2例)
アロ−イノシトール 4.0%、グルコース 1.0%、酵母エキス 0.7%を含むpH未調整の液体培地100mlを500ml容のバッフル付き三角フラスコに分注し、オートクレーブ滅菌した。この三角フラスコの培地にシュードモナス・エスピー AB10215 (FERM BP-7170)を接種し、27℃で5日間振とう培養した。培養液を遠心分離(8,000rpm、20分間)し、上清を培養上清液とした。
【0118】
この培養上清液を下記に示した高速液体クロマトグラフィーにより分析した。その結果、培養上清液中にはD−アロ−3−イノソースが3.7g(アロ−イノシトールからD−アロ−3−イノソースへの変換率91.5%)生成していることがわかった。この時の培養液中にはアロ−イノシトールは検出されなかった。
【0119】
また、生成したD−アロ−3−イノソースの単離は実施例6(2)に準じて行い、D−アロ−3−イノソースの無色結晶2.4g得た。このときの精製品回収率及びエピ−イノシトールからの全回収率は60.1%であった。
【0120】
【実施例8】
製造方法(H)(第 10 の本発明方法)によるD−アロ−3−イノソースの製造例
(1)菌体の生産
アロ−イノシトール 0.5%、グルコース2%、酵母エキス2%を含むpH未調整の液体培地4Lを500ml容のバッフル付き三角フラスコに100mlずつ分注し、オートクレーブ滅菌した。各々の三角フラスコにキサントモナス・エスピーAB10119株(FERM BP-7168)を接種し、27℃で3日間振とう培養した。この培養液を遠心分離して得られた菌体を、0.05M リン酸緩衝液(pH 6.0)200mlで洗浄後、再度遠心分離し、洗浄菌体20g(湿重量)を得た。
【0121】
(2)D−アロ−3−イノソースの生成
上記により得られた全洗浄菌体の全部を、アロ−イノシトール16gを溶解、含有した0.05M リン酸緩衝液(pH 6.0) 400ml (アロ−イノシトール濃度40mg/ml)中に加えた。27℃、24時間スターラーで攪拌しながら微生物をアロ−イノシトールに反応させた。反応終了後、反応液から除菌した。得られた上清液を液体クロマトグラフィーにより分析したところD−アロ−3−イノソースが37.4mg/ml(変換率94.5%)生成、蓄積していた。この時の反応液中にはアロ−イノシトールは検出されなかった。
【0122】
なお、上記のD−アロ−3−イノソースの変換率は、次式により求めた。
変換率(%)=〔反応終了液1ml中のD−アロ−3−イノソースのモル数÷反応前の溶液1ml中のアロ−イノシトールのモル数〕×100
【0123】
(3)D−アロ−3−イノソースの単離
実施例8(2)で得た反応液から菌体を遠心分離で除去し、そして得られた上清液のうちの100mlを、強酸性陽イオン交換樹脂デュオライト(登録商標)C-20(H型)20mlを充填したカラム(内径1.5cm、長さ30cm)に通過させた。その後このカラムに20mlの脱イオン水を通過させて洗浄した。この通過液及び洗浄液を、弱塩基性陰イオン交換樹脂デュオライト(登録商標)368S(遊離塩基型)40mlを充填したカラム(内径1.5cm、長さ30cm)に通過させ、その後このカラムに40mlの脱イオン水を通過させて洗浄した。
こうして得られた通過液及び水洗浄液中には上記D−アロ−3−イノソース以外の不純物はほとんど存在していなかった。
【0124】
上記により得たD−アロ−3−イノソース水溶液を減圧下で20mlまで濃縮し、エタノールを60ml加え結晶化操作を行った。その結果、純粋なD−アロ−3−イノソースの無色結晶を2.4g得た。この時の精製品回収収率は63.0%、アロ−イノシトールからのD−アロ−3−イノソースの全回収率は59.5%であった。
【0125】
なお、上記D−アロ−3−イノソースの精製回収率は次式により求めた。
精製品回収率(%)=〔精製単離したD−アロ−3−イノソース量÷反応液100ml中の精製前のD−アロ−3−イノソース〕×100
また、上記D−アロ−3−イノソースのアロ−イノシトールからの全回収率は次式により求めた。
全回収率(%)=〔精製単離したD−アロ−3−イノソースのモル数÷反応前の溶液に添加したアロ−イノシトールのうち100mlに含まれる該物質のモル数〕×100
【0126】
【実施例9】
製造方法(I)(第 11 の本発明方法)によるD−キロ−イノシトールの製造例
(1)D−キロ−イノシトールの生成
実施例8(1)〜(2)の方法を反復した。濃縮によりD−アロ−3−イノソースの4gを含む水溶液100mlを得た。この水溶液に水素化ホウ素ナトリウム0.26gを徐々に加えた。還元終了後、反応液を高速液体クロマトグラフィーにより下記の条件で分析した.その結果、還元反応後の反応液は、生成したD−キロ−イノシトールの2.0gを含有し、副生成物として、アロ−イノシトールの1.9gを含有していることがわかった。D−キロ−イノシトールとアロ−イノシトールの合計還元収率は98.3%であった。D−アロ−3−イノソースからのD−キロ−イノシトールの還元収率は49.4%であった。
【0127】
高速液体クロマトグラフィーの分析条件は以下の通りである。
Figure 0004474060
【0128】
D−キロ−イノシトール及びアロ−イノシトールの合計還元収率(%)=〔還元反応後のD−キロ−イノシトールのモル数とアロ−イノシトールのモル数の合計÷還元反応前のD−アロ−3−イノソースのモル数〕×100
また、上記のD−アロ−3−イノソースからのアロ−イノシトールの反応収率は次式により求めた。
反応収率(%)=〔還元反応後のD−キロ−イノシトールのモル数÷還元反応前のD−アロ−3−イノソースのモル数〕×100
【0129】
(2)D−キロ−イノシトールの単離
前項(2)で得た還元反応後の反応液を、強酸性陽イオン交換樹脂デュオライト(登録商標)C-20(H型)20mlを充填したカラム(内径1.5cm、長さ30cm)に通過させた。その後このカラムに20mlの脱イオン水を通過させて洗浄した。この通過液及び洗浄液を、強塩基性陰イオン交換樹脂デュオライト(登録商標)A-113(OH型)40mlを充填したカラム(内径1.5cm、長さ30cm)に通過させ、その後このカラムに40mlの脱イオン水を通過させて洗浄した。
こうして得られた通過液及び水洗浄液を合併して得られた水溶液は、D−キロ−イノシトールと副生成物であるアロ−イノシトールを含有するが、これら以外の不純物をほとんど含有しなかった。
【0130】
上記により得たD−キロ−イノシトールとアロ−イノシトールの水溶液を減圧下で20mlまで濃縮し、その濃縮液を強酸性陽イオン交換樹脂ダイアイオン (登録商標)UBK520M(Ca2+型)のカラム250mlを充填したカラム(内径3cm、長さ50cm)に通過させ、その後このカラムに脱イオン水を通過させて溶出した。該カラムの溶出液は所望なD−キロ−イノシトールを含む画分と、アロ−イノシトールを含む画分とに分け集めた。D−キロ−イノシトールを含む画分にはアロ−イノシトールは含まれていなかった。D−キロ−イノシトールを含む画分を20mlまで濃縮し、エタノールを60ml加え結晶化させた。この操作で高純度のアロ−イノシトールの無色結晶を1.4g得た(精製品回収率67.5%)。この時のD−アロ−3−イノソースからのD−キロ−イノシトールの全回収率は33.8%であった。
【0131】
なお、上記D−キロ−イノシトールの精製品回収率及び全回収率は次式により求めた。
精製品回収率(%)=〔精製単離したD−キロ−イノシトール量÷反応液100ml中の精製前のD−キロ−イノシトール量〕×100
全回収率(%)=〔精製単離したD−キロ−イノシトールのモル数÷反応前の溶液に添加したD−アロ−3−イノソースのモル数〕×100
【0132】
【実施例10】
製造方法(J)(第 12 の本発明方法)によるD−キロ−イノシトールの製造例
(1)D−キロ−イノシトールの生成
(i) 実施例8(1)、(2)の方法を反復した。これで得たD−アロ−3−イノソース含有の反応液の上清液のうち100mlを分取し、5M塩酸にてpHを5に調整後、水素化ホウ素ナトリウム0.26gを徐々に加えた。還元終了後、反応液を高速液体クロマトグラフィーにより実施例7(1)に記載した条件で分析した。その結果、還元反応後の反応液は、生成したD−キロ−イノシトール1.9gを含有し、副生成物として、アロ−イノシトールの1.9gを含有していることがわかった。D−キロ−イノシトールとアロ−イノシトールの合計還元収率は99.0%であった。D−アロ−3−イノソースからのD−キロ−イノシトールの還元収率は49.5%であった。
【0133】
(ii) この還元反応液を5M塩酸にてpH6に調整後、この溶液に、実施例8(2)で分離回収したAB10119株菌体の4分の1量を再度添加した。27℃で24時間、攪拌しながら微生物をアロ−イノシトールに反応させた。反応終了後、反応液から除菌した。得られた上清液を高速液体クロマトグラフィーにより実施例9(1)に記載した条件で分析した。その結果、反応終了後の反応溶液中には、未反応のD−キロ−イノシトール1.9gとD−アロ−5−イノソース1.8g含まれていた。還元反応での副生成物であるアロ−イノシトールのD−アロ−3−イノソースへの変換率は95%であった。
【0134】
(iii) 次に、このD−キロ−イノシトールとD−アロ−5−イノソースを含む反応上清液を1M塩酸にてpH5に調整後、この溶液に水素化ホウ素ナトリウム0.12gを徐々に加え、再度還元反応を行った。還元終了後、反応液を高速液体クロマトグラフィーにより実施例9(1)に記載した条件で分析した。その結果、還元終了後の反応溶液中には、D−キロ−イノシトール2.8gを含有し、副生成物のアロ−イノシトールは0.9g含有していることがわかった。この時のD−キロ−イノシトールとアロ−イノシトールの合計還元収率は98.5%であった。
全体を通して、D−アロ−3−イノソースからD−キロ−イノシトールへの全反応収率は74.1%であった。
【0135】
D−アロ−3−イノソースからのD−キロ−イノシトール及びアロ−イノシトールの合計還元収率及びD−アロ−5−イノソースからのアロ−イノシトールの還元収率は実施例7(1)に示した式により求めた。但し、2回目の還元収率は、反応液中含まれているD−キロ−イノシトール量から未反応のアD−キロ−イノシトール量を減じた値から求めた。
【0136】
D−アロ−3−イノソースの変換率は、実施例6(1)に示した式より求めた。
【0137】
また、アロ−イノシトールの全反応収率は次式により求めた。
D−キロ−イノシトールの全反応収率=〔最終反応終了液のD−キロ−イノシトールのモル数÷反応開始前の溶液中のD−アロ−3−イノソースのモル数〕×100
【0138】
(2)D−キロ−イノシトールの単離
反応溶液中のD−キロ−イノシトールの単離は、実施例9(2)の方法に準じて行った。この操作で純粋なD−キロ−イノシトールの無色結晶を1.9g得た(精製回収率69.5%)。この時のD−アロ−3−イノソースからのD−キロ−イノシトールの全回収率は51.5%であった。
なお、上記アロ−イノシトールの精製回収率及び反応開始前のアロ−イノシトールからの全回収率は実施例9(2)に示したにより求めた。
【0139】
【実施例11】
製造方法(L)(第 14 の本発明方法)によるD−キロ−イノシトールの製造例
(i) 実施例2(1)の方法に準じて製造したスフィンゴモナス・エスピーAB10233株(FERM P-17894)の洗浄された静止菌体の5gを、エピ−イノシトールの4gを含む0.05Mリン酸緩衝液(pH 6.0) 100mlに添加し、27℃で24時間、攪拌しながら反応させた。反応終了後の反応液を実施例1(1)に示した条件で高速液体クロマトグラフィーで分析したところ、反応液中にD−アロ−5−イノソースが38mg/ml含まれていた(変換率97.0%)。
【0140】
(ii) この反応液を遠心分離により除菌し、上清液を得た。除菌により回収された菌体は、下記の2回目の菌体反応に用いた。
(iii) 前項(ii)で得たD−アロ−5−イノソース含有の反応上清液を1M水酸化ナトリウムにてpH6に調整後、この溶液に水素化ホウ素ナトリウム0.25gを徐々に加え還元反応を行った。還元終了後、生成されたアロ−イノシトールを含む反応液を高速液体クロマトグラフィーにより実施例4(2)に記載した条件で分析した。その結果、還元反応後の反応液には、生成したアロ−イノシトールの2.1gを含有し、副生成物として、エピ−イノシトールの1.8gを含有していることがわかった。アロ−イノシトールとエピ−イノシトールの合計還元収率は99.0%、D−アロ−5−イノソースからのアロ−イノシトールの還元収率は53.5%であった。
【0141】
(iv) この還元反応液を5M塩酸にてpH6に調整後、この溶液に、前項(ii)で回収した菌体を再度入れた。27℃で24時間微生物をエピ−イノシトールに反応させた。反応終了後の溶液中には、未反応のアロ−イノシトール2.1g、D−アロ−5−イノソース1.7g/ml含まれていた。
【0142】
(v) 次に、この反応液から菌体を除去した。得られた反応上清液を水酸化ナトリウムにてpH6に調整後、この溶液に水素化ホウ素ナトリウム0.12gを徐々に加えた。還元終了後の反応溶液中には、アロ−イノシトール2.9gを含有し、副生成物のエピ−イノシトールは0.8g含有していることがわかった。
【0143】
(vi) 次に、前項(v)で得たアロ−イノシトール及びエピ−イノシトール含有溶液を5M塩酸にてpH6に調整した。その後、この溶液に、実施例8(1)の方法に準じて調製したキサントモナス・エスピーAB10119株(FERM P-7168)の洗浄された静止菌体の4gを加えた。27℃で24時間、攪拌しながら反応させた。その結果、反応終了後の反応液には、D−アロ−3−イノソースが2.8g(変換率95.5%) 及び未反応のエピ−イノシトールが0.8g含まれていた。
【0144】
(vii) この反応液を遠心分離により除菌し、上清液を得た。回収された菌体は、下記の2回目の菌体反応に用いた。
(viii) 前項(vii)で得られたD−アロ−3−イノソース含有の反応上清液を1M塩酸にてpH5に調整後、この溶液に水素化ホウ素ナトリウム0.18gを徐々に加え還元反応を行った。還元終了後、反応液を高速液体クロマトグラフィーにより実施例9(2)に記載した条件で分析した。その結果、還元反応後の反応液には、生成したD−キロ−イノシトールの1.4gを含有し、副生成物として、アロ−イノシトールの1.4g、未反応のエピ−イノシトール0.8gを含有していることがわかった。
【0145】
(ix) 前項(viii)で得られた還元反応液を5M塩酸にてpH6に調整後、この溶液に、前項(vii)で回収した菌体を再度入れた。27℃で24時間微生物をエピ−イノシトールに反応させた。反応終了後の溶液中には、D−アロ−5−イノソース1.3g、未反応のD−キロ−イノシトール1.4g及びエピ−イノシトール0.8g、含まれていた。
【0146】
(x) 次に、前項(ix)で得た反応液から除菌し、得られた反応液上清液を1M塩酸にてpH5に調整後、この溶液に、水素化ホウ素ナトリウム0.1gを徐々に加えD−アロ−5−イノソースの還元反応を行った。還元終了後の反応溶液中には、D−キロ−イノシトールの2.0g、アロ−イノシトールの0.6g及びエピ−イノシトールの0.8gを含有していることがわかった。
【0147】
全体を通して、エピ−イノシトールからD−キロ−イノシトールへの全反応収率は49.6%であった。
D−キロ−イノシトールの全反応収率は次式により求めた。
D−キロ−イノシトールの全反応収率=〔最終反応終了液のD−キロ−イノシトールのモル数÷反応開始前の溶液中のエピ−イノシトールのモル数〕×100
【0148】
(2)D−キロ−イノシトールの単離
反応溶液中のD−キロ−イノシトールの単離は、実施例9(2)の方法に準じて行った。この操作で純粋なD−キロ−イノシトールの無色結晶を1.3g得た(精製回収率65.0%)。この時のエピ−イノシトールからのD−キロ−イノシトールの全回収率は32.3%であった。

Claims (20)

  1. 下記の式(I)
    Figure 0004474060
    で表される新規物質、D−アロ−5−イノソース。
  2. エピ−イノシトールをD−アロ−5−イノソースへ変換できる酸化能を有するキサントモナス(Xanthomonas)属あるいはスフィンゴモナス(Sphingomonas)属に属する微生物を、エピ−イノシトールに作用させて、前記エピ−イノシトールをD−アロ−5−イノソースへ変換させてD−アロ−5−イノソースを生成し、さらにD−アロ−5−イノソースを回収することからなることを特徴とする、D−アロ−5−イノソースの製造方法。
  3. 請求項2記載のエピ−イノシトールをD−アロ−5−イノソースへ変換できる酸化能を有するキサントモナス属あるいはスフィンゴモナス属に属する微生物がキサントモナス・エスピーAB10198株(FERM P-17893)あるいはスフィンゴモナス・エスピーAB10233株(FERM P-17894)である請求項2記載の方法。
  4. 請求項2記載のエピ−イノシトールをD−アロ−5−イノソースへ変換できる酸化能を有するキサントモナス属あるいはスフィンゴモナス属に属する微生物を、エピ−イノシトール並びに炭素源及び窒素源を含有する液体培地で好気的に培養し、その培養中において培養液内で該微生物をエピ−イノシトールに作用させて培養液中にD−アロ−5−イノソースを生成、蓄積させ、さらに培養液からD−アロ−5−イノソースを回収することを特徴とする、D−アロ−5−イノソースの製造方法。
  5. 請求項2記載のエピ−イノシトールをD−アロ−5−イノソースへ変換できる酸化能を有するキサントモナス属あるいはスフィンゴモナス属に属する微生物を培地中で培養する工程と、得られた培養物から該微生物の菌体を分離する工程と、該菌体をエピ−イノシトールを含む緩衝液または液体培地に加える工程と、該緩衝液または液体培地中で該菌体をエピ−イノシトールと反応させ、得られた反応液中にD−アロ−5−イノソースを生成させる工程と、その反応液からD−アロ−5−イノソースを回収する工程を含むことを特徴とする、D−アロ−5−イノソースの製造方法。
  6. 請求項または請求項記載の方法により培養液または反応液として得られた水性媒質中に生成、蓄積させたD−アロ−5−イノソースを回収するために、該水性媒質中から菌体の除去後に、イオン交換樹脂処理法、活性炭処理法または結晶化法に該水性媒質をかけることにより、高純度のD−アロ−5−イノソースを効率よく水性媒質中から回収することを特徴とする、請求項またはに記載の方法。
  7. D−アロ−5−イノソースを溶解、含有する水性媒質に還元剤として水素化ホウ素アルカリ金属、水素化トリアルコキシホウ素アルカリ金属またはシアン化ホウ素アルカリ金属を添加する工程と、該還元剤で該水性媒質中のD−アロ−5−イノソースを還元する反応を行い、これによりアロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを該水性媒質内で生成する工程と、その得られた還元反応からアロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを回収する工程と、回収されたアロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを相互から分離する工程とを有することを特徴とする、アロ−イノシトールの製造方法。
  8. 請求項2記載の、エピ−イノシトールをD−アロ−5−イノソースへ変換できる酸化能を有するキサントモナス属あるいはスフィンゴモナス属に属する微生物を、水性媒質中でエピ−イノシトールに作用させて、エピ−イノシトールの変換によりD−アロ−5−イノソースを該水性媒質中で生成する工程と、前記の工程で生成されたD−アロ−5−イノソースを含有する水性媒質から該微生物の菌体を除去して、得られたD−アロ−5−イノソースを含有するが菌体を含まない水性媒質を収得する工程と、菌体を含まない該水性媒質からD−アロ−5−イノソースを単離せずに、D−アロ−5−イノソースを含有する該水性媒質中に還元剤として水素化ホウ素アルカリ金属、水素化トリアルコキシホウ素アルカリ金属またはシアン化ホウ素アルカリ金属を添加する工程と、該水性媒質中で該還元剤でD−アロ−5−イノソースを還元する反応を行い、D−アロ−5−イノソースの還元によりアロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを生成する工程と、その得られた還元反応液からアロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを回収する工程と、回収されたアロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを相互から分離する工程とを有することを特徴とする、アロ−イノシトールの製造方法。
  9. 請求項2記載のエピ−イノシトールをD−アロ−5−イノソースへ変換できる酸化能を有するキサントモナス属あるいはスフィンゴモナス属に属する微生物を培地で培養する工程と、得られた培養物から該微生物の菌体を分離する工程と、該菌体を、エピ−イノシトールを含む緩衝液または液体培地よりなる水性媒質に添加する工程と、該水性媒質中で菌体をエピ−イノシトールに作用させて、エピ−イノシトールの変換によりD−アロ−5−イノソースを生成する工程と、前記の工程で生成されたD−アロ−5−イノソースを含有する水性媒質から該微生物の菌体を分離、回収して、得られたD−アロ−5−イノソースを含有するが菌体を含まない水性媒質を収得する工程と、菌体を含まない該水性媒質からD−アロ−5−イノソースを単離せずに、D−アロ−5−イノソースを含有する該水性媒質中に還元剤として水素化ホウ素アルカリ金属、水素化トリアルコキシホウ素アルカリ金属またはシアン化ホウ素アルカリ金属を添加する工程と、該水性媒質中で、該還元剤でD−アロ−5−イノソースを還元する反応を行い、この還元反応によりアロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを該水性媒質内で生成する工程と、その得られた還元反応液からアロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを単離せずに、前記の工程で分離、回収された菌体をその還元反応液に添加する工程と、該反応液中のエピ−イノシトールにその添加菌体を作用させてD−アロ−5−イノソースを再び生成し、これにより再び生成されたD−アロ−5−イノソースと不反応のアロ−イノシトールと添加菌体とを含有する水性媒質を収得する工程と、前工程からの水性媒質から該添加菌体を除去する工程と、こうして、D−アロ−5−イノソースと不反応のアロ−イノシトールを含有する菌体を含まない水性媒質を収得する工程と、菌体を含まない該水性媒質からD−アロ−5−イノソースを単離せずに、水性媒質中に前記と同じ還元剤を添加する工程と、該水性媒質内で、該還元剤でD−アロ−5−イノソースを還元する反応を行い、D−アロ−5−イノソースの還元反応により、エピ−イノシトールとアロ−イノシトールを該水性媒質内で生成してエピ−イノシトールおよびアロ−イノシトールを高い濃度で含む還元反応液を得る工程と、その還元反応液から、アロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを回収する工程と、回収されたアロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを相互から分離する工程とを有することを特徴とする、アロ−イノシトールの製造方法。
  10. アロ−イノシトールをD−アロ−3−イノソースへ変換できる酸化能を有するキサントモナス(Xanthomonas)属あるいはシュードモナス(Pseudomonas)属に属する微生物を、アロ−イノシトールに作用させて、前記アロ−イノシトールをD−アロ−3−イノソースへ変換させてD−アロ−3−イノソースを生成させ、さらにD−アロ−3−イノソースを回収することからなることを特徴とする、D−アロ−3−イノソースの製造方法。
  11. 請求項10記載のアロ−イノシトールをD−アロ−3−イノソースへ変換できる酸化能を有するキサントモナス属あるいはシュードモナス属に属する微生物がキサントモナス・エスピーAB10119株(FERM BP-7168)あるいはシュードモナス・エスピーAB10215株(FERM BP-7170)である請求項10に記載の方法。
  12. 請求項10記載のアロ−イノシトールをD−アロ−3−イノソースへ変換できる酸化能を有するキサントモナス属あるいはシュードモナス属に属する微生物を、アロ−イノシトール並びに炭素源及び窒素源を含有する液体培地で好気的に培養し、その培養液中において該微生物をアロ−イノシトールに作用させて培養液中にD−アロ−3−イノソースを生成、蓄積させ、さらにこれを回収することを特徴とする、D−アロ−3−イノソースの製造方法。
  13. 請求項10記載のアロ−イノシトールをD−アロ−3−イノソースへ変換できる酸化能を有するキサントモナス属あるいはシュードモナス属に属する微生物を、培地で培養する工程と、得られた培養物から該微生物の菌体を分離する工程と、該菌体をアロ−イノシトールを含む緩衝液または液体培地に加える工程と、該緩衝液または液体培地中でアロ−イノシトールと反応させ、得られた反応液中にD−アロ−3−イノソースを生成させる工程と、さらにこれを回収する工程を含むことを特徴とする、D−アロ−3−イノソースの製造方法。
  14. 請求項12または請求項13記載の方法により培養液または反応液として得られた水性媒質中に生成、蓄積させたD−アロ−3−イノソースを回収するために、該水性媒質中から菌体を除去した後に、D−アロ−3−イノソースを含有する該水性媒質を、イオン交換樹脂処理法、活性炭処理法または結晶化法にかけることにより、高純度のD−アロ−3−イノソースを効率よく水性媒質中から回収することを特徴とする、請求項12または13に記載のD−アロ−3−イノソースの製造方法。
  15. 請求項10記載のアロ−イノシトールをD−アロ−3−イノソースへ変換できる酸化能を有するキサントモナス属あるいはシュードモナス属に属する微生物を、水性媒質中でアロ−イノシトールに作用させて、アロ−イノシトールのD−アロ−3−イノソースへの変換によりD−アロ−3−イノソースを生成する工程と、前記の工程で生成されたD−アロ−3−イノソースを含有する反応液の水性媒質から該微生物の菌体を除去して、生成されたD−アロ−3−イノソースを含有するが菌体を含まない水性媒質を収得する工程と、菌体を含まない該水性媒質からD−アロ−3−イノソースを単離せずに、該水性媒質中に還元剤として水素化ホウ素アルカリ金属、水素化トリアルコキシホウ素アルカリ金属またはシアン化ホウ素アルカリ金属を添加する工程と、その水性媒質中で、該還元剤でD−アロ−3−イノソースを還元する反応を行い、これによりD−キロ−イノシトール及びアロ−イノシトールを該水性媒質内で生成する工程と、その還元反応液からD−キロ−イノシトール及びアロ−イノシトールを回収する工程と、回収されたD−キロ−イノシトール及びアロ−イノシトールを相互から分離する工程とを有することを特徴とする、D−キロ−イノシトールの製造方法。
  16. 請求項10記載のアロ−イノシトールをD−アロ−3−イノソースへ変換できる酸化能を有するキサントモナス属あるいはシュードモナス属に属する微生物を培地で培養する工程と、得られた培養物から該微生物菌体を分離する工程と、分離、回収された該菌体をアロ−イノシトールを含む緩衝液または液体培地よりなる水性媒質中に添加する工程と、該水性媒質でアロ−イノシトールに作用させて、アロ−イノシトールのD−アロ−3−イノソースへの変換によりD−アロ−3−イノソースを生成する工程と、前記の工程で生成されたD−アロ−3−イノソースを含有する反応液の水性媒質から該微生物の菌体を分離、回収する工程と、こうして、D−アロ−3−イノソースを含有するが菌体を含まない水性媒質を収得する工程と、この工程で得た該水性媒質からD−アロ−3−イノソースを単離せずに、D−アロ−3−イノソースを含有する該水性媒質中に還元剤として水素化ホウ素アルカリ金属、水素化トリアルコキシホウ素アルカリ金属またはシアン化ホウ素アルカリ金属を添加する工程と、該還元剤でD−アロ−3−イノソースを還元する反応を行い、これによりD−キロ−イノシトール及びアロ−イノシトールを該水性媒質内で生成する工程と、その得られた還元反応液からD−キロ−イノシトール及びアロ−イノシトールを単離せずに、先の工程で回収された菌体を該還元反応液に添加する工程と、その還元反応液中のD−アロ−3−イノソースに添加された菌体を作用させ、D−アロ−3−イノソースを再び生成させる工程と、この工程で得られた再び生成されたD−アロ−3−イノソースと不反応のD−キロ−イノシトールを含有する水性媒質から、該微生物の菌体を除去して、生成されたD−アロ−3−イノソースと不反応のD−キロ−イノシトールとを含有するが菌体を含まない水性媒質を収得する工程と、菌体を含まない該水性媒質からD−アロ−3−イノソースを単離せずに、該水性媒質中に前記と同じ還元剤を添加する工程を該水性媒質中で、該還元剤でD−アロ−3−イノソースを還元してD−キロ−イノシトール及びアロ−イノシトールを生成する反応を行い、これにより、アロ−イノシトールとD−キロ−イノシトールを還元反応液中に生成する工程と、こうして得た高濃度でD−キロ−イノシトールとアロ−イノシトールを含む還元反応液から、D−キロ−イノシトール及びアロ−イノシトール及びを回収する工程と、回収されたD−キロ−イノシトール及びアロ−イノシトールを相互から分離する工程とを有することを特徴とする、D−キロ−イノシトールの製造方法。
  17. 請求項2記載のエピ−イノシトールをD−アロ−5−イノソースへ変換できる酸化能を有するキサントモナス属あるいはスフィンゴモナス属に属する微生物を、水性媒質中でエピ−イノシトールに作用させて、エピ−イノシトールの変換によりD−アロ−5−イノソースを生成する工程と、前記の工程で生成されたD−アロ−5−イノソースを含有する水性媒質から該微生物の菌体を除去して、得られたD−アロ−5−イノソースを含有するが菌体を含まない水性媒質を収得する工程と、菌体を含まないがD−アロ−5−イノソースを含む該水性媒質からD−アロ−5−イノソースを単離した後に、または単離せずに、D−アロ−5−イノソースを含有する水性媒質中に還元剤として水素化ホウ素アルカリ金属、水素化トリアルコキシホウ素アルカリ金属またはシアン化ホウ素アルカリ金属を添加する工程と、該水性媒質中で、該還元剤でD−アロ−5−イノソースを還元する反応を行い、これによりアロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを該水性媒質内で生成する工程と、こうして得られたアロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを含有する還元反応液の該水性媒質内にアロ−イノシトールをD−アロ−3−イノソースへ変換できる酸化能を有する微生物を添加する工程と、微生物を該水性媒質中でアロ−イノシトールに作用させて、アロ−イノシトールのD−アロ−3−イノソースへの変換によりD−アロ−3−イノソースを生成する工程と、前記の工程で生成されたD−アロ−3−イノソースと不反応のエピ−イノシトールを含有する反応液の水性媒質から該微生物の菌体を除去して、得られたD−アロ−3−イノソースと不反応のエピ−イノシトールとを含有する水性媒質を収得する工程と、該水性媒質からD−アロ−3−イノソースを単離した後に、または単離せずに、D−アロ−3−イノソースを含む水性媒質中に還元剤として上記と同じ還元剤を添加する工程と、その水性媒質中で、該還元剤でD−アロ−3−イノソースを還元する反応を行い、これによりD−キロ−イノシトールとアロ−イノシトールを該水性媒質内で生成する工程と、こうして得たその還元反応の反応液からD−キロ−イノシトールとアロ−イノシトールを回収する工程と、回収されたD−キロ−イノシトールとアロ−イノシトールを相互から分離する工程とを有することを特徴とする、D−キロ−イノシトールの製造方法。
  18. 請求項2記載のエピ−イノシトールをD−アロ−5−イノソースへ変換できる酸化能を有するキサントモナス属あるいはスフィンゴモナス属に属する微生物を培地で培養する工程と、得られた培養物から該微生物菌体を分離する工程と、分離、回収された該菌体をエピ−イノシトールを含む緩衝液または液体培地よりなる水性媒質中に添加する工程と、該水性媒質中で添加された菌体をエピ−イノシトールに作用させて、エピ−イノシトールの変換によりD−アロ−5−イノソースを生成する工程と、この工程で生成されたD−アロ−5−イノソースを含有する水性媒質から該微生物の菌体を分離、回収して、生成されたD−アロ−5−イノソースを含有する水性媒質を収得する工程と、該水性媒質からD−アロ−5−イノソースを単離せずに、D−アロ−5−イノソースを含有する該水性媒質中に還元剤として水素化ホウ素アルカリ金属、水素化トリアルコキシホウ素アルカリ金属またはシアン化ホウ素アルカリ金属を添加する工程と、該還元剤でD−アロ−5−イノソースを還元する反応を行い、D−アロ−5−イノソースの還元によりアロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを該水性媒質内で生成する工程と、その得られた還元反応液からアロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを単離せずに、先行の工程で分離、回収された菌体をその還元反応液中に添加する工程と、該還元反応液中で添加された菌体をエピ−イノシトールに作用させ、D−アロ−5−イノソースを再び生成して、ここで生成されたD−アロ−5−イノソースと不反応のアロ−イノシトールを含有する水性媒質を収得する工程と、該水性媒質から該微生物の菌体を除去して、D−アロ−5−イノソースと不反応のアロ−イノシトールを含有する水性媒質を収得する工程と、D−アロ−5−イノソースとアロ−イノシトールを含有する該水性媒質からD−アロ−5−イノソースを単離せずに、該水性媒質中に前記と同じ還元剤を添加する工程と、その水性媒質中で、該還元剤でD−アロ−5−イノソースを還元する反応を行い、D−アロ−5−イノソースの還元により、エピ−イノシトールとアロ−イノシトールを生成して、エピ−イノシトールとアロ−イノシトールを高濃度で含む水性媒質を収得する工程と、請求項記載のアロ−イノシトールをD−アロ−3−イノソースへ変換できる酸化を有するキサントモナス属あるいはシュードモナス属に属する微生物を培養する工程と、得られた培養物から該微生物菌体を分離、回収する工程と、この工程で回収された、該菌体を、先の工程で得られたところのエピ−イノシトールとアロ−イノシトールを高濃度で含有した水性媒質中に添加する工程と、その水性媒質中で添加された菌体をアロ−イノシトールに作用させて、アロ−イノシトールのD−アロ−3−イノソースへの変換によりD−アロ−3−イノソースを生成して、ここで生成されたD−アロ−3−イノソースと不反応のエピ−イノシトールを含有する水性媒質を収得する工程と、この水性媒質から該微生物の菌体を分離、回収して、生成されたD−アロ−3−イノソースと不反応のエピ−イノシトールを含有する水性媒質を収得する工程と、該水性媒質からD−アロ−3−イノソースを単離せずに、D−アロ−3−イノソースとエピ−イノシトールを含有する該水性媒質中に還元剤として水素化ホウ素アルカリ金属、水素化トリアルコキシホウ素アルカリ金属またはシアン化ホウ素アルカリ金属を添加する工程と、該水性媒質中で該還元剤でD−アロ−3−イノソースを還元する反応を行い、D−アロ−3−イノソースの還元によりD−キロ−イノシトールとアロ−イノシトールを生成して、D−キロ−イノシトールとアロ−イノシトールと不反応のエピ−イノシトールを含有する水性媒質を収得する工程と、その得られた還元反応液からD−キロ−イノシトールとアロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを単離せずに、前記の工程の回収菌体(アロ−イノシトールをD−アロ−3−イノソースに変換できる酸化能を有するキサントモナス属あるいはシュードモナス属に属する微生物の菌体)を該還元反応液に添加する工程と、その還元反応液中のアロ−イノシトールに添加菌体を作用させ、D−アロ−3−イノソースを再び生成して、ここで生成されたD−アロ−3−イノソースと不反応のD−キロ−イノシトールとエピ−イノシトールを含有する水性媒質を収得する工程と、水性媒質から該微生物の菌体を除去して、生成されたD−アロ−3−イノソースと不反応のD−キロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを含有する水性媒質を収得する工程と、該水性媒質からD−アロ−3−イノソースを単離せずに、該水性媒質中で前記と同じ還元剤を添加する工程と、該水性媒質中で、該還元剤でD−アロ−3−イノソースを還元する反応を行い、これにより、アロ−イノシトールとD−キロ−イノシトールを生成し、アロ−イノシトールとD−キロ−イノシトールを高濃度で含み且つ不反応のエピ−イノシトールを含む、還元反応液を収得する工程と、この工程で得た還元反応液から、D−キロ−イノシトール及びアロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを回収する工程と、回収されたD−キロ−イノシトール及びアロ−イノシトール及びエピ−イノシトールを相互から分離する工程とを有することを特徴とする、D−キロ−イノシトールの製造方法。
  19. D−アロ−5−イノソースまたはD−アロ−3−イノソースを還元する工程に用いられる還元剤は、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素リチウム、水素化ホウ素カリウム、水素化メトキシホウ素ナトリウムまたはシアン化水素化ホウ素ナトリウムである請求項151617または18に記載の方法。
  20. 用いる水性媒質は水であり、用いる還元剤が水素化ホウ素ナトリウムである請求項151617または18に記載の方法。
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