JP4474018B2 - ガラス流出装置 - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、光学用途に用いるガラスゴブ(ガラス塊)を溶融ガラス流から分離切断して作る際のガラス流出装置に関するものであり、特に、円形あるいは球形以外の立体形状、例えば、直方体などの一定方向に長尺である形状のガラスゴブを得る際に、切断痕、脈理、泡などの光学的欠陥を発生させずに、そのガラスゴブを得るための、ガラス流出装置に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
近年、高精度な光学レンズの製造方法として、プレス成形によって、レンズを成形する方法が実用化されている。これによれば、非球面ガラスレンズやプリズムが安価に製造可能である。このプレス成形で使用するガラス素材としては、冷間で、一度、球面や平面に研磨もしくは切断したものを使用する場合もあるが、更なるコストダウンのためには、溶融ガラス流から分離して得た、所定の重量のガラスゴブを使用するのが有効である。
【0003】
従来、溶融ガラス流からガラスゴブを得るために、一対の切断刃を用いて、流出口から流下するガラス流を切断する方法が一般的に用いられてきた。この方法では、ゴブ表面に切断痕が残るので、押圧成形によってレンズを作るには、成形前に、予め切断痕を除去するための前加工、例えば、研削・研磨工程などが必要とされ、製造時間とコストが増大するという問題があった。
【0004】
これに対して、ガラス流から切断痕(シャーマーク)のないガラスゴブを得る方法として、特公昭51−24525号公報に所載の方法が知られている。ここには、オリフィスと、成形されるガラスゴブの表面との位置関係を、所定に維持しながら、成形型を徐々に降下させ、所望量のガラスが成形型内に入った後、成形型を急速に下降させて、ガラス流を括れさせ、自然に切断する方法が開示されている。
【0005】
また、同様の方法は、特開平2−34525号公報にも開示されている。また、本発明者らによっても、特開平7−300319号公報において、切断刃を使わず、切断痕を残さずに、ガラスゴブを得る方法が提案されている。これは、流出口から流下する溶融ガラス流を受け部材で受け、所定の重量に達した所で、前記の受け部材を2段階の下降速度で下降させて、ガラス流が冷えて固まらない内にガラス流を分離切断するというものである。
【0006】
すなわち、前記受け部材を第一の下降速度で下降させて、ガラス流に括れ部を生じさせた後に、前記受け部材を前記第一の下降速度より遅い第二の下降速度で下降させ(場合によっては、第二の下降速度は実質的にゼロとする)、その時点で、前記括れの箇所で、ガラスの自重とその表面張力により、ガラス流を分離切断するというものである。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】
ここで、光学素子としてよく知られている形状には、カメラなどの撮影用レンズで用いられる外周が円形のレンズがある。また、光ファイバーの接続用に球形のレンズが使用されることがある。
【0008】
押圧成形によって、これらの円形あるいは球形のレンズを得るには、プレス成形用素材としてのガラスゴブの形状も、レンズ形状に近似した円形あるいは球形であることが望ましい。しかるに、前述の公報記載のガラス流の切断方法によれば、ガラス流出ノズル先端の流出口の断面形状には、特に断わりがなく、ノズル同様に、円形の断面形状と考えられるので、必要とされる円形あるいは球形のガラスゴブを比較的容易に得ることができる。
【0009】
すなわち、ガラスをゴブ成形型に鋳込んだ後、成形型を下降させて、ガラス流を引き伸ばして切断する時に、引き伸ばされたガラスは、ごく細い糸状になり、容易に溶けて、吸収されるので、突起状に残ったり、成形の結果において、脈理や泡などの光学的な欠陥を発生させないゴブを得ることができる。
【0010】
一方、円形あるいは球形以外の長尺形状の光学素子として、例えば、レーザービームプリンターにおいて、レーザービームの断面ビーム径を一定にするために使われる、トーリックレンズ(fθレンズ)のような、一定方向に長尺である形状の光学素子が知られている。
【0011】
このような長尺形状のレンズを、前述同様に、押圧成形によって得る場合も、プレス成形用素材としてのゴブ形状は、できるだけ、その長尺形状に近い形状であることが望ましいことになる。
【0012】
しかしながら、前述の公報に記載の、ガラス流の切断方法によって、円形の断面形状の流出口からガラスを流出して、長尺形状のゴブを得ようとすると、新たに、ゴブ成形型を長尺方向に移動するための装置を設けて、受け型の上で、一定方向にガラス流を延長させなければならなかった。
【0013】
本発明は、上記事情に基づいてなされたもので、その目的とするところは、切断痕、脈理、泡がなく、光学的品質の良好なガラスゴブ、特に、円形あるいは球形以外の立体形状、例えば、直方体などの長尺形状のガラスゴブを、特別な移動装置などを用いることなく、しかも、容易に得るためのガラス流出装置を提供するにある。
【0014】
【課題を解決するための手段】
この目的達成のため、本発明では、ノズルから流出する溶融ガラス流をゴブ成形型で受け、その成形型で一定重量のガラス溜りを受けた後に、前記ガラス流に括れを生じさせ、その後、前記ガラス流と前記ガラス溜りとを分離切断して長尺形状のガラスゴブを製造する装置であって、ノズル流出口の水平断面形状が、一定の方向に長尺となる断面形状としたことを特徴とする。
【0015】
このような構成により、流出ガラスの受け型を、成形すべきガラスゴブの長尺形状に合わせ、特別な移動装置を用いて、移動制御することなく、しかも、長尺形状のガラスゴブを、切断痕、脈理、泡がなく、光学的品質の良好な状態で容易に得ることができる。
【0016】
なお、本発明の実施の形態として、ノズル流出口の下端縁部あるいは下端縁部の一部が水平面に関して、下方に突出していること、また、下方に突出したノズル流出口の下端縁部の、下方に突出している部分が、前記一定方向の両側で、下向きの頂点を形成していること、更には、ノズル流出口の下端縁部の、下方に突出している部分が、前記ノズル流出口の長尺方向に亘って設けられていることが、ガラス流出装置において、それぞれ、有効である。
【0017】
これにより、ガラス流とガラス溜りとを分離・切断する際に生じる括れの位置が流出口の突起部付近に限定されて、括れの形状が長い薄板状にならずに、細い糸状になる。この結果、切断痕のない状態で、ガラス流の分離・切断が容易になる。
【0018】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)
本発明の第1の実施の形態での、ガラスゴブの製造方法を、図面を参照して説明する。なお、図1の(a)は、本発明で使用するガラス流出装置のノズル部分の概念図(立面図)であり、図1の(b)は、このノズル部分を下方から眺めた様子を示す底面図である。また、図2の(a)〜(e)は、この実施の形態における製造過程を、順次、図解したものである。
【0019】
図1において、符号1はガラス流出ノズルで、これは溶融ガラスの収容容器、所謂、溶融炉(図示せず)の下部に取付けられていて、先端の流出口2から溶融ガラス流3が流出されるようになっている。また、ノズル1と先端部5とは、スカート状の接合部4によって接合されている。
【0020】
また、図示しないが、流出ノズル1、接合部4、先端部5には、それぞれ、直接通電加熱用の電極が複数個、設けられており、それらの電極を通じて電流を流すことで、流出ノズルから先端部にかけての温度を調節できるようになっている。
なお、例えば、この実施の形態では、流出ノズル1は、内径:12mm、長さ:1000mmであり、接合部4の長さは40mmで、下部に続く先端部5に近づくほど、全体として、一定方向に広がる、長尺形状になっている。また、先端部5は、側面から見ればストレート形状をしており、その長さは15mmである。先端部5の流出口2の水平方向の断面形状は、内寸で8mm×40mmの長方形をしている。また、ノズル、接合部、流出口は、いずれも白金などの貴金属で作られていて、いずれも肉厚が1mmである。
【0021】
次に、本発明の特徴である、流出口2の下端縁部の形状について説明する。図1の(b)で示すように、下方から眺めると長方形をしているが、図1の(a)で示すように、側面から眺めると2つの長辺6a,6bは下向きの二等辺三角形(底辺42mm、高さ4mm)で、その頂点8a,8bが流出口の最下点となり、長辺方向に亘って傾斜しており、残る2つの短辺側7a,7bは平坦面となっている。
【0022】
符号9は、ガラス流3を受けるためのゴブ成形型であり、適当な駆動装置(図示せず)により、流出ガラスを受ける位置とプレス成形装置(図示せず)との間で、ゴブ成形型9を、上下および水平方向に動かすことができる。また、ゴブ成形型9には、ガラス流から分離切断されたガラスゴブの下面を所要の形状に成形するための、ガラス接触面10が形成されている。なお、この実施の形態では、成形型9の材料に、高密度カーボンを用いており、そのガラス接触面10は研磨仕上げをしてある。また、ゴブ成形型の接触面10は、内寸が8mm×40mm×深さ16mmの直方体の窪みからなり、ガラスとの接触面については、研磨仕上げを施したものを使用した。
【0023】
次に、図1に示すガラス流出装置を使用して、光学素子用のガラスゴブを製造する工程を、図2(a)〜(e)を用いて具体的に説明する。なお、ここで製造されるガラスゴブの材料には、室温での比重が約3.0であり、温度が1200℃の時に粘度が101.6 (dPa・s)、1000℃の時に102.2 (dPa・s)、890℃の時に102.9 (dPa・s)、610℃の時に107.6 (dPa・s)、498℃の時に1013(dPa・s)となるような特性を持ったバリウムホウケイ酸塩系のガラスを用いている。
【0024】
まず、前記のガラス原料を、前述のガラス収容容器に投入し、溶融、清澄(脱泡)した後、攪拌均質化を継続しながら、温度:960℃に調整した。次に、流出ノズル1と接合部4は850℃、先端部5は1050℃とした。この時のガラス流出量は、87g/分であった。また、ガラス流3の水平断面形状は、流出口2の水平方向の断面形状に、ほぼ類似の長尺形状を有していた。
【0025】
この状態のもとで、図2の(a)に示すように、ゴブ成形型9を流出口2の直下にもって行き、更に、図2の(b)のように、成形型9を流出口2に接近させ、ガラス流3を受ける。次に、成形型9上に溶融ガラスが十分溜まって、ガラス溜り11が形成されたところで、図2の(c)に示すように、平均120mm/秒の速度で、成形型9を28mm下降させて、ガラス流に括れ12を発生させる。
【0026】
この状態で、成形型の位置(高さ)を0.3秒保つと、図2(d)に示すように、括れは、ガラスの表面張力とガラス溜り11の自重により分離切断される。切断直後には、切断痕13a,13bが発生するが、この切断痕は、ガラスの熱と表面張力により、ガラス流3とガラスゴブ14に吸収されて消滅する(図2の(e)参照)。
【0027】
この一連の操作に10秒を要し、得られたガラスゴブの重量は、14.5gであった。このガラスゴブの形状は、ほぼ直方体の長尺形状をしており、寸法はおよそ8mm×40mm×15.5mmで、稜線は多少の丸みを帯びていた。また、切断痕がなく、脈理、泡も認められず、外観も含めて、光学的に良好な品質を有しており、例えば、トーリックレンズをプレス成形で作る際の素材として好適であった。
【0028】
なお、本発明を実施するに当たって、流出ノズルや接合部、先端部の大きさ、更に、ガラス材料の種類に制限がないことはいうまでもない。
【0029】
次に、比較実験を試みた。ここで用いたガラス流出装置を図6に示す。なお、ノズルの流出口に下向きの突起を設ける際に、流出口の下端縁部の短辺側61a,61bを二等辺三角形(底辺10mm、高さ4mm)にしたことを除けば、それ以外のノズルの仕様やガラスゴブ製造条件は、基本的に第1の実施の形態と同じである。また、流出口の下端縁部の長辺側62a,62bは、水平面に沿っている。
【0030】
この比較実験において、成形型を下降させて括れ部を形成しようとすると、図7に示すように、引き伸ばされたガラス流64は、二等辺三角形の頂点63a,63bを結ぶ水平方向にわたって、横(長尺方向)に長い薄板状になってしまい、成形型で流出ガラスを受けた際、ガラス流66とゴブ67には、それぞれ、放熱によって急速に冷えたガラスが、薄板状に残ってしまった(符号64,65で図解する)。
【0031】
以上説明したように、本発明によれば、ノズルから流出する溶融ガラス流をゴブ成形型で受けて、一定重量のガラス溜りを形成した後、成形型を下降させて括れ部を生じさせ、その後、ガラス流とガラス溜りとを分離して、流出ガラスを括れさせ、これにより、自然に切断して、長尺形状のガラスゴブを製造する装置であって、そのノズル流出口の断面形状を長尺形状としている。これにより、水平断面が長尺形状のガラス流が容易に得られるようになる。
【0032】
また、第1の実施の形態においては、ノズル流出口の下端縁部の一部が下方に突出しており、流出口の下端縁部の一部は下向きの二等辺三角形の頂点を形成している。また、その、流出口の下端縁部の下方に突出した部分は、流出口断面の長手方向に設けられている。
【0033】
これにより、ガラス流とガラス溜りとを分離切断する際に生じる括れの位置が、流出口の突起部(前述の下方に突出した部分)付近に限定されて、括れの形状が、比較例のように、長い薄板状にならずに、細い糸状になり、この結果、切断痕の残らない状態で、ガラス流の分離・切断が容易にできる。
【0034】
従って、本発明では、新たに、長尺形状のゴブを得るために、通常のノズルの下において、成形型を、その長尺方向に移動するための装置を装備しなくても、切断痕、脈理、泡を発生させずに、円形あるいは球形以外の立体形状、例えば、平面視で、長方形などの、長尺形状のガラスゴブを容易に得ることができる。
【0035】
(第2の実施の形態)
次に、上述の第1の実施の形態における流出口の下端部の突起形状を、別の形状に変えたガラス流出装置を、第2の実施の形態として、以下に提示する。ここでは、第1の実施形態の場合と同様に、14.5gの長尺形状のガラスゴブを製造するための実施形態であって、使用したゴブ成形型や、溶融したガラス原料は第1の実施の形態の場合と同じものである。
【0036】
ここで使用した流出口端面の形状を、図3を参照して、説明する。下方から眺めた形状は、図3の(b)で示すように長方形をしており、流出口33の水平方向の断面形状については、第1の実施の形態と同じく、その内寸が8mm×40mmである。一方、側面から眺めると、図3の(a)で示すように、2つの長辺の中央部のみに、小さな下向きの突起31(ここでは、底辺:6mm、高さ:4mmの三角形)が設けられ、その頂点32a,32bが、流出口の最下点となり、残る2つの短辺側は、平坦面となっている。
【0037】
このノズルの構造を持ったガラス流出装置を用いて、長尺形状のゴブの製造について実験した。製造条件は、基本的に第1の実施の形態と同じであり、ガラス流出量を87g/分に設定し、10秒の間に一連の操作を終えて、14.5gのガラスゴブを得た。この時、ガラス流からゴブを分離切断するために、成形型を下降させてガラス流に括れ部を生じさせる時に、括れの位置が流出口の突起部31の直下付近に限定されて、括れの形状が、長い薄板状にならずに、細い糸状になり、この結果、ガラス流の分離切断を容易に行うことができた。
【0038】
このガラスゴブの形状は、第1の実施の形態で得られたのと同様に、ほぼ直方体の長尺形状をしており、切断痕がなく、脈理、泡も認められず、外観も含めて光学的に良好な品質を有しており、例えば、トーリックレンズをプレス成形で作る際の素材として好適であった。
【0039】
以上説明したように、本発明のガラス流出装置によれば、流出口の下端縁部の下方に突出した部分を、流出口の水平断面に関して、その比較的に長手の方向に設けることにより、ガラス流とガラス溜りとを分離切断する際に生じる括れの位置が、流出口の下向きの突起部付近に限定される。このため、括れの形状が比較例のように、長い薄板状にならず、細い糸状になり、禍根のないガラス流の分離切断を容易に行うことができる。
【0040】
従って、新たに、ゴブ成形型を長尺方向に移動するための特別な装置を装備しなくても、切断痕、脈理、泡を発生させずに、円形あるいは球形以外の立体形状、例えば、直方体などの長尺形状のガラスゴブを容易に製造することかできる。
【0041】
(第3の実施の形態)
次に、本発明に係わる第3の実施の形態を、図4に示すガラス流出装置について具体的に説明する。図4の(b)に示すように、ノズルの流出口43を、下方から眺めると、その水平方向の断面形状が、円弧の沿って湾曲した長尺形状をなしており、また、図4の(a)で示すように、流出口の長辺側の下端縁部に突起41が設けられていて、その突起形状は、第2の実施の形態の場合の形状に準じており、下向きの三角形(底辺:5mm、高さ:3mm)となっている。
【0042】
そして、その三角形の突起の頂点42(42a,42b)が流出口の下端縁部の最下点となり、残る流出口の下端縁部は水平面に沿う平坦面となっている。
【0043】
流出ノズル44は、内径:3.5mm、長さ:450mmで、先端部45の長さは20mmで、下に行くほど広がった形状をしている。先端の流出口43の水平方向の断面形状は、内寸で幅:4mm、また、湾曲に沿った長尺方向の長さ:25mmである。また、長尺方向の両端部には適当なRがついている(この実施の形態では、内寸で半径:2mmのR)。なお、ノズル、先端部、流出口は、いずれも、白金などの貴金属で作られていて、ここでは、いずれも、肉厚が0.8mmである。
【0044】
ガラス流を受けるためのゴブ成形型は、その図解を省略するが、流出口の断面形状に対応した、相似の長尺形状であって、その窪みの内寸は、幅:7mm、湾曲に沿った長尺方向の長さ:30mm、深さ:10mmである。なお、ゴブ成形型の材料は、高密度カーボンを用い、そのガラス接触面は、研磨仕上げをしてある。また、前述した実施の形態と同様に、ゴブ成形型は、適当な駆動装置(図示せず)により、上下、水平方向に動かすことができる。
【0045】
この実施の形態では、ガラスゴブの材料として、室温での比重が約3.5であり、その温度が1050℃の時に100.0 (dPa・s)、950℃の時に100.5 (dPa・s)、800℃の時に101.9 (dPa・s)、700℃の時に103.5 (dPa・s)、520℃の時に1013(dPa・s)となるような粘度特性を持ったランタンホウ酸塩系のガラスを用いた。
【0046】
まず、前記のガラス原料をガラス収容容器(図示せず)に投入し、溶融、清澄(脱泡)した後、攪拌均質化を継続しながら1000℃に調整した。この時の流出ノズル44の温度は950℃、先端部45の温度は1150℃に調整した。この時のガラス流出量は40g/分であった。また、ガラス流(図示せず)の水平断面形状は、流出口43の水平方向の断面形状に相似の、湾曲した長尺形状をなしている。
【0047】
この装置を用いて、湾曲した長尺形状のゴブの製造実験を行った。それには、第1の実施の形態と同様の、一連の操作を6秒の間に終えるのである。そして、4.0gのガラスゴブを得た。この時、ガラス流からゴブを分離切断するために、成形型を下降させて、ガラス流に括れ部を生じさせる時に、括れの位置が流出口の突起部41の直下付近に限定されて、括れの形状が、長い薄板状にならずに細い糸状になり、この結果、ガラス流の分離切断を容易に行うことができた。
【0048】
この結果、切断痕がなく、脈理、泡も認められず、外観も含めて、光学的に良好な品質を有する、湾曲した長尺形状(幅:7mm、湾曲に沿った長尺方向の長さ:30mm、高さ:9mm)のガラスゴブが得られた。
【0049】
なお、ノズル流出口の断面形状は、上述のような連続曲線に沿って湾曲させた形状に限るものではなく、L字型、コの字型などに屈折させた形状にすることも可能で、この場合は、必要に応じて、ゴブ成形型の形状を、流出口の断面形状に合わせた相似の形状にすることで、屈曲形状のガラスゴブを製造することが可能である。
【0050】
また、流出口の下端縁部の下方に、突出した部分を設ける場合は、流出口の水平断面に関して、その比較的、長手の方向に設けることにより、ガラス流とガラス溜りとを分離切断する際に生じる括れの位置が、流出口の突起部付近に限定されて、括れの形状が、長い薄板状にならずに、細い糸状になり、この結果、ガラス流の分離、切断が容易になる。
【0051】
従って、新たに、ゴブ成形型を長尺方向に移動するための装置を装備しなくとも、切断痕、脈理、泡を発生させずに、円形あるいは球形以外の立体形状、例えば、湾曲(あるいは屈曲)した長尺形状のガラスゴブを容易に製造することができる。
【0052】
(第4の実施の形態)
ここで用いたガラス流出装置は、図5に示されている。ノズル52の仕様は、基本的に第3の実施の形態の場合と同様であるが、流出口51の下端縁部は、平坦(水平面)になっている。下方から眺めた流出口の形状は、図5の(b)で示すように長方形をしており、流出口の水平方向の断面形状は、内寸で6mm×10mmである。なお、スカート状の先端部53については、長さ:20mmであって、下方に向かっての広がり方が、第3の実施の形態とは若干異なる。
【0053】
また、ゴブ成形型(図示せず)は、高密度カーボン製で、内寸が7mm×12mm×深さ6mmの直方体の窪みを設けたもので、ガラスとの接触面については研磨仕上げを施したものを使用した。
【0054】
また、ガラスゴブの製造条件であるが、ノズルの温度を920℃、その先端部の温度を1130℃に設定しており、この時のガラス流出量は30g/分であった。このとき、ガラス流(図示せず)の水平断面形状は、流出口51の水平方向の断面形状に相似の長尺形状にしてある。
【0055】
次いで、5秒の間に一連の操作、すなわち、ゴブ成形型でガラス流を受けてガラス溜りを形成した後、成形型を下降させて、括れ部を形成し、その位置(高さ)で成形型を保持して、ガラス流を分離切断する操作を終えた。この結果、2.5gの、ほぼ直方体(7mm×12mm×高さ5mm)のガラスゴブが得られた。このガラスゴブには、切断痕がなく、脈理、泡も認められず、外観も含めて光学的に良好な品質を有していた。
【0056】
以上説明したように、本発明のガラス流出装置では、ノズルから流出する溶融ガラス流をゴブ成形型で受けて一定重量のガラス溜りを形成した後、成形型を下降させて、括れ部を生じさせ、その後、ガラス流とガラス溜りとを分離切断して、長尺形状のガラスゴブを製造する装置であって、そのノズルの流出口の断面形状を、長尺形状としている。これにより、水平断面が長尺形状のガラス流が容易に得られるようになる。
【0057】
従って、新たに、ゴブ成形型を長尺方向に移動するための装置を装備しなくとも、切断痕、脈理、泡を発生させずに、円形あるいは球形以外の立体形状、例えば、長尺形状のガラスゴブを容易に製造することができる。
【0058】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明によれば、
1.ノズルから流出する溶融ガラス流をゴブ成形型で受け、その成形型で一定重量のガラス溜りを受けた後に、前記ガラス流に括れを生じさせ、その後、前記ガラス流と前記ガラス溜りとを分離切断して長尺形状のガラスゴブを製造する装置であって、ノズル流出口の水平断面形状を長尺形状としているので、水平断面が長尺形状のガラス流が容易に得られる。
【0059】
従って、新たに、ゴブ成形型を長尺方向に移動するための装置を装備しなくとも、切断痕、脈理、泡を発生させずに、円形あるいは球形以外の立体形状、例えば、長尺形状のガラスゴブを容易に製造することができる。
【0060】
2.ノズルから流出する溶融ガラス流をゴブ成形型で受け、その成形型で一定重量のガラス溜りを受けた後に、前記ガラス流に括れを生じさせ、その後、前記ガラス流と前記ガラス溜りとを分離切断して、長尺形状のガラスゴブを製造する装置であって、ノズル流出口の水平断面形状を長尺形状として、ノズル流出口の下端縁部の一部が下方に突出しているので、ガラス流とガラス溜りとを分離切断する際に生じる括れの位置が、流出口の突起部付近に限定されて、括れの形状が長い薄板状にならずに、細い糸状になり、この結果、ガラス流の分離切断が容易になる。
【0061】
従って、切断痕、脈理、泡を発生させずに、円形あるいは球形以外の立体形状、例えば、長尺形状のガラスゴブを容易に製造することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係わる第1の実施の形態でのガラス流出装置を示す立面図(a)および底面図(b)である。
【図2】上記ガラス流出装置の使用態様を示す説明図である。
【図3】同じく、本発明に係わる第2の実施の形態を示す立面図(a)および底面図(b)である。
【図4】同じく、本発明に係わる第3の実施の形態を示す立面図(a)および底面図(b)である。
【図5】同じく、本発明に係わる第4の実施の形態を示す立面図(a)および底面図(b)である。
【図6】本発明との比較のために提示された立面図(a)および底面図(b)である。
【図7】上述の比較例で、ガラスゴブを成形した時の様子を示す立面図である。
【符号の説明】
1 流出ノズル
2 流出口
3 ガラス流
4 接合部
5 先端部
6 (6a,6b)流出口端面の長辺側
7 (7a,7b)流出口端面の短辺側
8 (8a,8b)流出口端面の下向きの頂点
9 ゴブ成形型
10 ガラス接触面
11 ガラス溜り
12 括れ
13 (13a,13b)切断痕
14 ガラスゴブ
31 下向きの突起
32 (32a,32b)突起の頂点
33 流出口
41 下向きの突起
42 (42a,42b)突起の頂点
43 流出口
44 流出ノズル
45 先端部
51 流出口
52 流出ノズル
53 先端部
61 (61a,61b)流出口端面の短辺側
62 (62a,62b)流出口端面の長辺側
63 (63a,63b)二等辺三角形の頂点
64 引き伸ばされたガラス流(薄板状に残ったガラス)
65 薄板状に残ったガラス
66 ガラス流

Claims (3)

  1. ノズルから流出する溶融ガラス流をゴブ成形型で受け、その成形型で一定重量のガラス溜りを受けた後に、前記ガラス流に括れを生じさせ、その後、前記ガラス流と前記ガラス溜りとを分離切断して長尺形状のガラスゴブを製造する装置であって、ノズル流出口の水平断面形状が、一定の方向に長尺となる断面形状であり、かつ、ノズル流出口の下端縁部あるいは下端縁部の一部が水平面に関して、下方に突出していることを特徴とするガラス流出装置。
  2. 請求項に記載のガラス流出装置において、下方に突出したノズル流出口の下端縁部の、下方に突出している部分が、前記一定方向の両側縁で、下向きの頂点を形成していることを特徴とするガラス流出装置。
  3. 請求項あるいはに記載のガラス流出装置において、ノズル流出口の下端縁部の、下方に突出している部分が、前記ノズル流出口の長尺方向に亘って設けられていることを特徴とするガラス流出装置。
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