JP4003881B2 - ガラス成形体の製造方法および光学素子の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、溶融ガラスから直接、質量精度の高い精密プレス成形用プリフォームなどのガラス成形体を製造する方法、ならびに前記方法により作製したプリフォームを用いて精密プレス成形し、光学素子を製造する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、精密プレス成形などに使用するプリフォームを成形する方法としては、例えば、流出パイプから流出する溶融ガラス流の先端を成形型で受け、成形型を降下して所定質量のガラスを切断刃を用いることなく分離し、精密プレス成形に使用されるプリフォームに成形する方法がある(例えば、特許文献1参照)。この方法は高品質のプリフォームを生産する方法として非常に優れているものである。
これまでの精密プレス成形ではレンズ面などの光学機能面は精密プレス成形により形成し、非光学機能面については研削加工、研磨加工によって作製するのが一般的であったが、近年、最終製品の非光学機能面も精密プレス成形によって形成する技術への需要が高まっている。この需要に対する要求に応えるためには精密プレス成形によって作製しようとする光学素子の体積にプリフォームの体積を精密に一致させること、すなわちプリフォームの質量精度をより高くすることが必要である。
ところで、上記特許文献1に記載の方法において、成形型を複数個用意して順次流出パイプの下方に運び、溶融ガラスを次々と受けて成形を行う場合、溶融ガラスの流出速度を一定に保つとともに、溶融ガラス流からプリフォーム1個分の溶融ガラス塊を分離するタイミングを精密に制御する必要がある。そのためには溶融ガラス流の先端を受けてから溶融ガラス塊を分離するまで、すべての成形型に同じ動きをさせなければならない。具体的には操業期間にわたり多数の成形型のすべてについて位置変動及び高さの変動を極めて低いレベルに抑えなければならず、装置の調整が極めて大変である。
【0003】
【特許文献1】
特開平2−34525号公報
【0004】
【発明の解決しようとする課題】
本発明は、このような事情のもとで高品質かつ高い質量精度のガラス成形体を製造する方法および高品質かつ高い質量精度のガラス成形体を作製し、前記ガラス成形体を加熱、精密プレス成形して光学素子を製造する方法を提供することを目的とするものである。
【0005】
本発明者は上記目的を達成するため鋭意検討を進めた結果、溶融ガラス塊の分離を各成形型を用いて行うのではなく、溶融ガラス塊の分離を行う機能を成形型から分け、支持体に持たせること、そして成形型から吹き出す気体を支持体により遮り、流出パイプ先端部に気体がかからないようにしたことで、その目的を達成し得ることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、
(1) 流出パイプより流下する溶融ガラス流の先端から所定量の溶融ガラス塊を分離、成形するガラス成形体の製造方法において、
流出パイプの下方に配した溶融ガラス支持体により溶融ガラス流の先端を受けて直接支持し、
この直接支持により溶融ガラス流の先端の粘度を上昇させた後、前記溶融ガラス支持体を鉛直下方に降下して溶融ガラス流の先端から所定量の溶融ガラス塊を分離し、
前記支持を取り除くことにより、鉛直下方に落下する溶融ガラス塊を成形型で受け、成形することを特徴とするガラス成形体の製造方法、
(2) 溶融ガラス支持体を用い、一定の流量で連続して流下する溶融ガラス流から、一定時間間隔で前記溶融ガラス塊を分離し、得られた溶融ガラス塊を次々と複数の成形型に分配する上記(1)項に記載のガラス成形体の製造方法、
(3) 溶融ガラス支持体を相互に離間、密着する複数の割部材で構成し、前記割部材を密着した状態において、前記割部材同士が密着する境界部分で溶融ガラス流の先端を受けて支持し、前記割部材を相互に離間することにより溶融ガラス塊を鉛直下方へ落下させる上記(1)または(2)項に記載のガラス成形体の製造方法、
(4) 溶融ガラス塊を落下させた後、直ちに割部材を相互に密着させるとともに、成形型上において溶融ガラス塊に風圧を加えて浮上させながらガラス成形体を成形する上記(3)項に記載のガラス成形体の製造方法、
(5) 成形型の中心に溶融ガラス塊を落下させる上記(1)〜(4)項のいずれか1項に記載のガラス成形体の製造方法、
(6) 溶融ガラス支持体を冷却しながら溶融ガラス塊の分離、ガラス成形体の成形を行う上記(1)〜(5)項のいずれか1項に記載のガラス成形体の製造方法、
(7) 粘度が0.5〜50dPa・sの溶融ガラスを流下させる上記(1)〜(6)項のいずれか1項に記載のガラス成形体の製造方法、
(8) Nb2O5含有燐酸塩ガラス、TiO2含有燐酸塩ガラス、BaO含有燐酸塩ガラス、Li2O含有燐酸塩ガラス、Na2O含有燐酸塩ガラス、K2O含有燐酸塩ガラス、B2O3およびLa2O3含有ガラス、B2O3、La2O3およびWO3含有ガラス、B2O3、SiO2およびBaO含有ガラス、B2O3、SiO2、TiO2およびWO3含有ガラス、SiO2、アルカリ金属酸化物および弗素含有ガラス、アルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物含有弗燐酸塩ガラス、アルカリ金属酸化物およびZnO含有弗燐酸塩ガラスのいずれかを用いる上記(1)〜(7)項のいずれか1項に記載のガラス成形体の製造方法、
(9) ガラス成形体が精密プレス成形用プリフォームである上記(1)〜(8)項のいずれか1項に記載のガラス成形体の製造方法、
(10) ガラス製プリフォームを加熱、軟化し、精密プレス成形する工程を備える光学素子の製造方法において、前記プリフォームを上記(9)項に記載の製造方法により作製することを特徴とする光学素子の製造方法、
(11) 光学素子の全面を精密プレス成形により形成する上記(10)項に記載の光学素子の製造方法、
(12) プレス成形型にプリフォームを導入し、プレス成形型と前記プリフォームをともに加熱し、精密プレス成形する上記(10)または(11)項に記載の光学素子の製造方法、および
(13) プレス成形型の温度よりも高温に予熱されたプリフォームをプレス成形型に導入して精密プレス成形する上記(10)または(11)項に記載の光学素子の製造方法、
を提供するものである。
【0006】
【発明の実施の形態】
最初に、本発明のガラス成形体の製造方法に関する実施の形態について説明する。
まず、清澄、均質化した溶融ガラスを用意し、温度制御された、例えば白金合金製の流出パイプから一定の流出速度で連続して溶融ガラスを流下させる。そして流出パイプの下方で待機する溶融ガラス支持体の上面で流下する溶融ガラス流の先端を受けて直接支持する。つまり、溶融ガラス流の先端と溶融ガラス支持体が接触した状態で上記支持を行う。溶融ガラス支持体は、複数の割部材から構成され、各割部材が相互に離間したり密着する機能を備えていることが好ましい。溶融ガラス流の先端を受ける際には各割部材を相互に密着させ、割部材の境界部分で溶融ガラス流の先端を受けて支持するのがよい。この状態で前記支持体と溶融ガラス流の先端は直接接触しているため、流出時の粘度が低いガラスであっても溶融ガラス流の先端の粘度が上昇し、割部材間に侵入することがない。また割部材との接触で溶融ガラス塊の粘性が上昇するので、以下に説明する成形型に溶融ガラス塊を移す際に発生しやすいガラスの折れ込みを効果的に防止することも可能となる。割部材は溶融ガラスとの融着を防止するとともに上記効果を得やすくするため、冷却することが好ましい。冷却方法としては割部材を水冷する方法、割部材を空冷する方法、割部材表面を黒色として放射率を高める方法、前記方法の組合せなどを例示することができる。割部材を水冷や空冷する場合、割部材内部に流路を設け、その中に冷却水や冷却ガスを流せばよい。また、溶融ガラス支持体の材料としては耐熱性の金属、カーボン、セラミックスなどを例示することができる。なかでも耐熱性、熱伝導性を考慮すると耐熱性ステンレス鋼が好ましい。
【0007】
溶融ガラス流の先端を受けて支持した後、溶融ガラス支持体を鉛直下方に降下して所定量の溶融ガラス塊を分離する。溶融ガラス塊の量を一定にするため、溶融ガラス流の先端を受ける位置および溶融ガラス支持体の降下条件は一定とし、降下の周期も一定にするのがよい。前記降下の速度は溶融ガラス流の流出速度よりも大きくすることが望ましい。溶融ガラス支持体を鉛直下方に降下させると溶融ガラス流の先端と流出パイプ側の間にくびれが生じ、さらに降下を続けることによってくびれが大きくなり、先端が分離して溶融ガラス支持体上に所定量の溶融ガラス塊が得られる。次に割部材を相互に離間し、離間した割部材の間から溶融ガラス塊を鉛直下方に落下させる。
【0008】
ガラス流の分離が終了する前に割部材を離間させて溶融ガラス塊を落下させてもよい。但し粘性が大きいガラスでは、ガラスの切断速度が大きくなるので、切断部で糸引きが起こる危険性がある。
割部材の数は特に制限はなく、幾つでもよいが、上記一連の動作を確実かつ容易に行うという観点から、2つの割部材で溶融ガラス支持体を構成することが好ましい。その際、割部材を密着させた状態における割部材の境界は直線とすることが両部材を密着させる上から好ましい。また2つの割部材の上面を平面にするとともに、前記2つの上面がなす角度を90°〜180°、2つの割部材の境界を通る仮想的な平面に対し、上記2つの面が対称であることが望ましい。このような溶融ガラス支持体を使用することにより、溶融ガラス流の先端を安定して支持できるとともに、割部材を離間した際に溶融ガラス塊を鉛直下方に落下することができる。
なお前記降下の前に溶融ガラス支持体を溶融ガラス流の流出速度よりも小さな速度で鉛直下方に降下させてもよい。このような操作により、溶融ガラス溜まりに流出パイプ先端が埋もれ脈理が発生することを防止することができる。
【0009】
溶融ガラス支持体下方には成形型が待機し、自然落下する溶融ガラス塊を受け取る。溶融ガラスは流出パイプから流出し、成形型に落下するまで終始、鉛直下方に沿った経路をたどる。そのため溶融ガラス流、溶融ガラス塊に働く外力の水平方向成分を極小にすることができ、ガラス成形体に折れ込みなどの欠陥発生を防止することができる。
溶融ガラス塊を受けてガラス成形体に成形する成形型の底部にはガス噴出口が設けてあり、そこから成形型上のガラス(溶融ガラス塊およびガラス成形体を一括して呼ぶ。)に上向きの風圧を加えて浮上させるためのガスを噴出してガラスを浮上させながら成形を行う。なお、前記ガス(以下、浮上ガスという。)が流出パイプに吹きかかるとパイプや流下する溶融ガラス流の温度が低下したり、溶融ガラス流の流下を不安定にするため、溶融ガラス塊を落下した後、直ちに割部材を相互に密着して浮上ガスを遮ることが望ましい。なお浮上ガスとしては空気、不活性ガス、炭酸ガスなどを例示することができる。
なお、ガス噴出口は複数の細孔が選択的に開口されたものであってもよいし、1つの細孔であってもよい。選択的に開口した複数の細孔からガスを噴出する方法は、溶融ガラス塊には広い範囲にわたり上向きの風圧が加わるため、回転対称軸を一つ有し前記回転対称軸を含む断面における輪郭が外側に凸になっている回転体にガラスを成形する場合に好適である。この場合、成形型の凹部には凹部の中心に対して対称となるように複数の細孔を配することが好ましい。
【0010】
一方、成形型の凹部の中心に細孔を1つ設けてガスを噴出することにより、成形型の凹部内でガラスを回転させながら成形することができる。この方法は球状のガラス成形体を成形する場合に適している。
成形型の材質としては、ステンレス鋼などの耐熱性金属、カーボンなどを用いることができる。また成形型に移された溶融ガラス塊は流出時よりも低温になっているが、依然として高温であり、融着のおそれがある。そのため成形型の温度を300℃以下にコントロールして確実に融着を防止することが好ましい。また、融着を防止するために成形型の溶融ガラス塊に接触する面にはダイヤモンド様カーボン膜などの膜を設けることが望ましい。
【0011】
また、溶融ガラス支持体の溶融ガラスに接触する面にも、融着を防止するためにダイヤモンド様カーボン膜などの膜を設けることが望ましい。さらに、上記面を鏡面仕上げすることが望ましい。溶融ガラス支持体を離間させて、溶融ガラス塊を落下させる際、割部材表面でガラスの融着が発生したり、溶融ガラスの滑りが悪い場合は、溶融ガラス塊に働く外力の水平方向成分が大きくなり、ガラス成形体に折れ込みなどの欠陥が発生する危険性が増える。したがって融着防止と滑り向上の目的で、割部材表面にダイヤモンド様カーボンをコーティングすること、割部材を冷却すること、割部材表面を研磨することが特に好ましい。
また、ガラスの折れ込み防止をより確実に行う上から、溶融ガラス塊を成形型の中心に落下させることが好ましく、上記の手段がポイントとなる。
次々と分離、落下する溶融ガラス塊を受けるため、溶融ガラス支持体の下方に複数の成形型を順次移送する。具体的にはターンテーブル上に複数の成形型を等間隔に配置し、溶融ガラス塊の落下時に空の成形型が待機するようにすればよい。このようにして複数の成形型に溶融ガラス塊を分配し、ガラス成形体を成形する。
成形されたガラス成形体は外力によって変形しない温度にまで成形型上で冷却してから取り出し、徐冷する。
【0012】
上記方法は折れ込みが発生しやすい流出粘度が低いガラスの成形にも適しており、流下時の粘度が0.5〜50dPa・sの溶融ガラスから質量精度の高い、高品質なガラス成形体を成形することもできる。
得られるガラス成形体の形状としては球状、回転対称軸を一つ有し前記回転対称軸を含む断面における輪郭が外側に凸になっている回転体などを例示することができる。
また光学ガラスからなるガラス成形体を製造することにより、ボールレンズや光学素子を精密プレス成形するためのプリフォームを作ることもできる。
【0013】
次に上記ガラス成形体の成形に好適なガラス材料について説明する。上記方法は流下時の粘度が0.5〜50dPa・sの範囲のものにも好適であることは既に説明したとおりであるが、流出、成形時にガラスの失透を防ぐためには流下時の溶融ガラスの温度を液相温度よりも高くすることが肝要である。ガラス成形体そのものを光学素子として使用する場合やガラス成形体を精密プレス成形用プリフォームとし、このプリフォームを用いて精密プレス成形により光学素子を製造する場合、分散を一定に保ちながら従来よりも高い屈折率のガラス材料が求められている。このような光学ガラスには失透を防止する上から流下時の粘度が0.5〜50dPa・sの範囲のものが多い。このような光学ガラスとしては、例えば、Nb2O5含有燐酸塩ガラス、TiO2含有燐酸塩ガラス、BaO含有燐酸塩ガラス、アルカリ金属酸化物含有燐酸塩ガラス、アルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物含有燐酸塩ガラス、B2O3およびLa2O3含有ガラス、B2O3、La2O3およびアルカリ金属酸化物含有ガラス、B2O3、La2O3およびWO3含有ガラス、B2O3、La2O3およびNb2O5含有ガラス、B2O3、SiO2およびBaO含有ガラス、B2O3およびBaO含有ガラス、B2O3、SiO2、TiO2およびWO3含有ガラス、SiO2、アルカリ金属酸化物および弗素含有ガラス、アルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物含有弗燐酸塩ガラス、アルカリ金属酸化物およびZnO含有弗燐酸塩ガラスなどがある。
【0014】
上記ガラス成形体の製造方法によれば、目的とするガラス成形体の質量に対し、実際に作製するガラス成形体の質量を±1%の範囲内に収めることができる。また、折れ込み泡、脈理、傷、失透などの欠陥のないガラス成形体を量産することもできる。なお、ガラス成形体を光学素子や精密プレス成形用プリフォームとして使用する上から、表面が滑らかなものが好ましく、全面が自由表面からなるガラス成形体が好ましい。
精密プレス成形用プリフォームを製造する場合、溶融ガラスから成形、徐冷して得られたプリフォームに必要に応じて洗浄及び乾燥処理を行う。また、離型作用やガラスがプレス成形型表面で広がりやすくなるように潤滑作用を有する膜を形成してもよい。
【0015】
次に光学素子の製造方法について説明する。本発明の光学素子の製造方法は、ガラス製プリフォームを加熱、軟化し、精密プレス成形する工程を備える光学素子の製造方法において、前記プリフォームを上記方法により作製することを特徴とするものである。上記光学素子としてはレンズ、プリズム、レンズ付きプリズム、回折格子、ポリゴンミラーなどを例示することができる。またレンズとしては球面レンズ、非球面レンズ、マイクロレンズ、ピックアップレンズ、レンズアレイなどを例示することができる。光学素子の光を屈折させたり、反射させたり、回折させたりする面、光学素子に光学的機能を付与する面を光学機能面と言うが、光学機能面をプレス成形によって形成するプレス成形を精密プレス成形と言う。この精密プレス成形はモールドオプティクス成形とも呼ばれる。
【0016】
質量精度が高いプリフォームを使用することにより、光学素子の全面を精密プレス成形により形成することもできる。光学素子全面を精密プレス成形により形成することにより、精密プレス成形品に研削、研磨などの機械加工を施こす必要がなくなる。レンズの光学機能面の周囲にある非光学機能面(レンズ周辺部と言う。)はレンズをホルダーに固定する場合に使用することがある。このレンズ周辺部をホルダーに固定する際の位置決めの基準として使用するには、レンズの光軸とレンズ周辺部の相対的位置関係ならびに角度が所定の関係に精度よく形成されることが肝要である。光学機能面とレンズ周辺部を精密プレス成形で同時に成形すれば、上記レンズの位置決め基準の機能をプレス成形と同時にレンズに付与することが可能である。
なお、光学素子の全面を精密プレス成形により形成する場合、使用する精密プレス成形用プルフォームの質量精度は目標値の±1%以内にすることが望ましい。
【0017】
次に精密プレス成形の態様について説明する。
第一の態様は、プレス成形型にプリフォームを導入し、プレス成形型と前記プリフォームをともに加熱し、精密プレス成形する方法である。この方法では、プレス成形型の温度、プリフォームの温度をともにプリフォームを構成するガラスが108〜1012dPa・sの粘度を示す温度にすることが好ましい。また、上記ガラスが1012dPa・sを超える粘度を示す温度にまで冷却してからプレス成形型から取り出すことが好ましく、上記ガラスが1014dPa・s以上の粘度を示す温度にまで冷却してからプレス成形型から取り出すことがさらに好ましく、1016dPa・s以上の粘度を示す温度にまで冷却してからプレス成形型から取り出すことがより一層好ましい。
【0018】
第二の態様は、プレス成形型の温度よりも高温に予熱されたプリフォームをプレス成形型に導入して精密プレス成形する方法である。この態様において、プレス成形後、プリフォームを構成するガラスの粘度が1012dPa・sよりも高くなってから離型することが好ましい。
また、プリフォームを浮上させながら予熱することが好ましく、上記ガラスが105.5〜109dPa・sの粘度を示す温度にまで予熱することがより好ましい。また、プレス開始と同時又はプレスの途中からガラスの冷却を開始することが好ましい。
【0019】
上記プリフォームの予熱では、予熱温度をガラスが109dPa・s以下の粘度を示す温度とすることが好ましく、105.5〜109dPa・sの粘度を示す温度とすることがより好ましい。なお、プレス成形型の温度は上記ガラスが109dPa・sより高く1012dPa・s以下を示す温度とするのが好ましい。
上記第一の態様、第二の態様のいずれにおいても、SiC製、超硬合金製、耐熱性金属製などの型材を用い、成形面には必要に応じて炭素膜、貴金属膜などの離型膜を設けたプレス成形型を使用することができ、窒素、窒素と水素の混合ガス、不活性ガスなどの雰囲気中でプレス成形を行うことができる。プレス成形された光学素子には徐冷された後、必要に応じて反射防止膜などの光学薄膜を設けてもよい。
以上のように本発明の光学素子の製造方法によれば、高品質な精密プレス成形用プリフォームを使用するので表面欠陥、内部欠陥のない良好な光学素子を作製することができる。さらに、プリフォームの質量精度が高いので光学機能面以外の面に機械加工を施すことなく光学素子を作ることもできる。
【0020】
【実施例】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明は、これらの例によって、なんら限定されるものではない。
実施例1
最終的に所望の屈折率、分散、透過率などの光学特性が得られるように調合されたガラス原料を加熱溶融し、脱泡清澄、攪拌均質化して得られた溶融ガラスを温度制御された白金合金製ノズルから一定の流出速度で連続して流下する。この際のガラスの引き上げ量を10kg/日、流出速度を2.5mm/秒とした。
流下する溶融ガラス流は図1に示された製造工程図によりプレス成形用プリフォームに成形される。
本実施例で用いた溶融ガラス支持体は2つの平板状の割部材により構成され、溶融ガラス流の先端を受ける面は鏡面仕上げされており、上記割部材を相互に密着した状態で一つの平面を構成するようになっている。溶融ガラス支持体の内部には溶融ガラスとの融着を防ぐため水路を設けてあり、冷却水を流して水冷している。また溶融ガラス支持体の表面には、ダイヤモンド様カーボンをコーティングした。
まず溶融ガラス支持体を割部材を相互に密着させた状態で上昇し、溶融ガラス流の先端を受ける面と流出パイプ流出口から4mm下方まで動かした後停止させる。この状態で溶融ガラス流の先端を受ける面は水平状態(前記受ける面が溶融ガラス流に対し鉛直上方を向いた状態)に保たれる。次いで流下する溶融ガラス流の先端を密着した2つの割部材の境界部分で受けて支持する。時間と共に溶融ガラス支持体上で支持される溶融ガラスの大きさは大きくなるので0.5mm/秒の低速で前記支持体を鉛直方向に下げることで、溶融ガラスのパイプ先端外周への濡れ上がりや溶融ガラス流のくびれ部の固化を防止してもよい。
所望質量の溶融ガラス塊が得られるだけの溶融ガラスが前記支持体上に溜まったら、前記支持体を割部材を密着させた状態で溶融ガラス流の流出速度よりも速い10mm/秒で鉛直下方に急降下して、ガラスの表面張力により生じた溶融ガラス流のくびれの部分から先端側を分離し、前記支持体上に所定質量の溶融ガラス塊を得る。次いで割部材を相互に離間し、2つの割部材の間から溶融ガラス塊を鉛直下方に落下させた。落下した溶融ガラス塊は前記支持体の下方に待機する成形型に落ち込み、成形型の底部から噴出するガス(窒素ガス)によって浮上しながらガラス成形体に成形される。溶融ガラス支持体から溶融ガラス塊を落下させた後、直ちに割部材を相互に密着した状態に戻す。この操作によって前記支持体がガスを遮り、流出パイプにガスが吹きかかるのを防止することができる。そして、前記支持体は溶融ガラス流の先端を受けるため再度上昇する。
成形型上で時間とともに冷却、固化したガラス成形体を吸引して成形型から取り出し、パレット上に移送し徐冷する。このようにして連続流出する溶融ガラスから所定質量のガラス成形体を次々と製造していく。このようにして、カッティングタイムを3.0秒に設定し、光学ガラスよりなる350±3mgの球状ガラス成形体を作製し、精密プレス成形用プリフォームとした。
精密プレス成形用プリフォームにはカンワレその他の傷、脈理、折れ込み、失透などの欠陥は認められなかった。また一つの割部材でガラス流を切断するため、複数の成形型でガラス流を切断する場合よりガラス流の切断精度が格段に向上すること、成形型から吹きかかる気体により流出パイプ先端の温度が変動することがないことから、質量精度も上記のように目標値の±1%以内に入る高いものであった。
本実施例において使用したガラスは表1に示す燐酸塩ガラス1〜3、B2O3−La2O3含有ガラス1〜3、SiO2、アルカリ金属酸化物および弗素含有ガラス、アルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物含有弗燐酸塩ガラス、B2O3−SiO2−BaO含有ガラス、B2O3−SiO2−TiO2−WO3含有ガラスである。
【0021】
【表1】
【0022】
なお、表1のガラス成分を示す欄における(Y2O3),(Nb2O5)は、ガラス成分としてY2O3およびNb2O5を含む場合、Y2O3を含み,Nb2O5を含まない場合、Y2O3を含まず,Nb2O5を含む場合、Y2O3もNb2O5も含まない場合があることを示すものである。
いずれのガラスにおいても上記のような良好な結果を得ることができた。
実施例2
図2に示す形状を有する溶融ガラス流を受ける割部材を用い、実施例1と同様に実施した。図2のように割部材にはテーパーが付けられ、割部材を密着させた状態の開き角は150°となっている。このテーパーを付けることで、溶融ガラスを受ける位置が更に安定し、溶融ガラス塊の落下位置の精度が向上した。
なお使用したガラスは実施例1で使用した各種ガラスと同じである。
実施例3
実施例1および実施例2で成形されたプリフォームを洗浄、乾燥した後、精密プレス成形を行って非球面レンズを作製した。上記プレス成形ではSiC製の型材表面に炭素膜を形成したプレス成形型を用い、雰囲気を窒素雰囲気とした。プレス成形は、プリフォームを635℃まで加熱し、60秒間、9.8MPaの圧力でプレスして行った。プレス成形後、非球面レンズをプレス成形型から取り出し徐冷した。得られたレンズは内部、表面とも良好な状態であった。レンズは芯取り加工を行う必要がなく、精密プレス成形によって形成されたレンズ周辺部をホルダーに固定する際に位置決め基準に使用できるものであった。このようにして得られた表面に反射防止膜を形成してもよい。
また、上記精密プレス成形では、プリフォームをプレス成形型に導入し、プリフォームとプレス成形型を同時に加熱してもよいし、予熱されたプレス成形型に加熱されたプリフォームを投入してプレスしてもよい。
本実施例は非球面レンズの製造方法に関するものであるが、その他の光学素子、例えばプリズムや回折格子などの製造にも適用できる。
【0023】
【発明の効果】
本発明のガラス成形体の製造方法によれば、高品質かつ高い質量精度のガラス成形体を作製することができる。
また本発明の光学素子の製造方法によれば、高品質かつ研削、研磨加工が全く必要のない、研削、研磨加工を最小限にできる光学素子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例1におけるプレス成形用プリフォームの製造工程図である。
【図2】実施例2で用いた溶融ガラス流を受ける割部材の形状を示す説明図である。
Claims (13)
- 流出パイプより流下する溶融ガラス流の先端から所定量の溶融ガラス塊を分離、成形するガラス成形体の製造方法において、
流出パイプの下方に配した溶融ガラス支持体により溶融ガラス流の先端を受けて直接支持し、
この直接支持により溶融ガラス流の先端の粘度を上昇させた後、前記溶融ガラス支持体を鉛直下方に降下して溶融ガラス流の先端から所定量の溶融ガラス塊を分離し、
前記支持を取り除くことにより、鉛直下方に落下する溶融ガラス塊を成形型で受け、成形することを特徴とするガラス成形体の製造方法。 - 溶融ガラス支持体を用い、一定の流量で連続して流下する溶融ガラス流から、一定時間間隔で前記溶融ガラス塊を分離し、得られた溶融ガラス塊を次々と複数の成形型に分配する請求項1に記載のガラス成形体の製造方法。
- 溶融ガラス支持体を相互に離間、密着する複数の割部材で構成し、前記割部材を密着した状態において、前記割部材同士が密着する境界部分で溶融ガラス流の先端を受けて支持し、前記割部材を相互に離間することにより溶融ガラス塊を鉛直下方へ落下させる請求項1または2に記載のガラス成形体の製造方法。
- 溶融ガラス塊を落下させた後、直ちに割部材を相互に密着させるとともに、成形型上において溶融ガラス塊に風圧を加えて浮上させながらガラス成形体を成形する請求項3に記載のガラス成形体の製造方法。
- 成形型の中心に溶融ガラス塊を落下させる請求項1〜4のいずれか1項に記載のガラス成形体の製造方法。
- 溶融ガラス支持体を冷却しながら溶融ガラス塊の分離、ガラス成形体の成形を行う請求項1〜5のいずれか1項に記載のガラス成形体の製造方法。
- 粘度が0.5〜50dPa・sの溶融ガラスを流下させる請求項1〜6のいずれか1項に記載のガラス成形体の製造方法。
- Nb2O5含有燐酸塩ガラス、TiO2含有燐酸塩ガラス、BaO含有燐酸塩ガラス、Li2O含有燐酸塩ガラス、Na2O含有燐酸塩ガラス、K2O含有燐酸塩ガラス、B2O3およびLa2O3含有ガラス、B2O3、La2O3およびWO3含有ガラス、B2O3、SiO2およびBaO含有ガラス、B2O3、SiO2、TiO2およびWO3含有ガラス、SiO2、アルカリ金属酸化物および弗素含有ガラス、アルカリ金属酸化物およびアルカリ土類金属酸化物含有弗燐酸塩ガラス、アルカリ金属酸化物およびZnO含有弗燐酸塩ガラスのいずれかを用いる請求項1〜7のいずれか1項に記載のガラス成形体の製造方法。
- ガラス成形体が精密プレス成形用プリフォームである請求項1〜8のいずれか1項に記載のガラス成形体の製造方法。
- ガラス製プリフォームを加熱、軟化し、精密プレス成形する工程を備える光学素子の製造方法において、
前記プリフォームを請求項9に記載の製造方法により作製することを特徴とする光学素子の製造方法。 - 光学素子の全面を精密プレス成形により形成する請求項10に記載の光学素子の製造方法。
- プレス成形型にプリフォームを導入し、プレス成形型と前記プリフォームをともに加熱し、精密プレス成形する請求項10または11に記載の光学素子の製造方法。
- プレス成形型の温度よりも高温に予熱されたプリフォームをプレス成形型に導入して精密プレス成形する請求項10または11に記載の光学素子の製造方法。
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