JP3986064B2 - ガラス塊の製造方法、及び光学素子の製造方法 - Google Patents

ガラス塊の製造方法、及び光学素子の製造方法 Download PDF

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、高品質かつ質量精度の高いプレス成形用プリフォームに好適なガラス塊を溶融ガラスから成形する方法、および前記ガラス塊を再加熱し、プレス成形する光学素子の製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
溶融ガラスをノズルから流出して受け型で受けて成形し、プレス成形用プリフォームを製造する方法が知られている。このような方法の一例は特許文献1に示されている。上記方法では、ノズルから滴下しようとする溶融ガラスの先端部を支持し、所定質量のガラスが分離するタイミングで受け型を溶融ガラスの流下速度よりも速く降下する。溶融ガラス先端部は受け型上に載ったままノズルから分離し、受け型上に上記質量の溶融ガラスを得る。それからガラスを成形しつつ冷却してプリフォームとする。この方法では受け型とノズル先端との距離を調整するなどしてプリフォームの質量を変えることができる。
【0003】
特許文献1に開示されている方法とは別に、ノズルから自然滴下したガラス滴を受け型で受けて成形方法もある。
【0004】
【特許文献1】
特開平8−81228
【0005】
【発明の解決しようとする課題】
特許文献1に記載の方法は、複数の受け型で流出するガラスを順次受けに行く方法なので、プリフォームの質量を所定質量に精密に揃えるには、ガラスを受ける時の各受け型の高さを精密に調整しなければならない。また受け型上のガラスは型に接する面から熱を奪われ、上部は新たにノズルから高温のガラスが供給されるので、1つのガラス塊中のガラスの粘性が不均一になる。そのため、温度変化に対する粘度変化が大きなガラス(所謂、足の短いガラス)では良好な形状のプリフォームができないという問題が発生する。さらにガラス内部での対流により脈理が発生しやすくなるという問題も生じる。
【0006】
自然滴下したガラス滴を成形する方法は、特許文献1に記載の方法に比べガラスの流出条件を一定に制御すればガラス滴の質量を一定に揃えることができる。しかし、ガラスが滴下するタイミングはノズル先端のガラスに働く重力と表面張力とのバランスにより決まる。具体的には、ノズル先端の液滴状の溶融ガラスの直径をD、表面張力の大小を示すパラメータをγ、質量加速度をgとすると滴下時のガラス質量Mは、Mg=γπDでほぼ決まる。したがって、上記重力よりも表面張力が小さくなる質量のプリフォームを作ることは困難であり、質量設定の自由度が低いという難点がある。
【0007】
このような状況のもと、溶融ガラスから、良好な形状及び高品質を有するガラス製プリフォームを質量設定の自由度が高く、しかも設定された質量に対して高い精度で成形する技術が求められる。
【0008】
本発明は上記要求に応えるべくなされたもので、良好な形状、高品質、任意質量及び高い質量精度を有するガラス塊を製造する方法、ならびに前記方法によって作られたガラス塊をプレス成形する光学素子の製造方法を提供することを目的とする。
【0009】
【課題を解決するための手段】
上記課題を解決するための本発明は、以下の通りである。
(1)ノズルから流出する溶融ガラスからガラス塊を成形するガラス塊の製造方法であって、
流出する溶融ガラスがノズルから滴下する前に、ノズルから流出する溶融ガラスの下端部に支持部材を接触させ、次いで支持部材を前記溶融ガラスの下端部から溶融ガラスの流出速度より高速で、支持部材と溶融ガラスの下端部とが一時的に非接触になるように、下方に移動させて、所定質量のガラス塊を前記ノズルより前記支持部材上に滴下させることを特徴するガラス塊の製造方法。
(2)滴下したガラス塊を支持部材上で、または支持部材からガラス成形部に移して、球状のガラス塊とすることを特徴とする(1)に記載の製造方法。
(3)ノズルから流出する溶融ガラスからガラス塊を成形するガラス塊の製造方法であって、
流出する溶融ガラスがノズルから滴下する前に、ノズルから流出する溶融ガラスの下端部に支持部材を接触させ、次いで支持部材を前記溶融ガラスの下端部から溶融ガラスの流出速度より高速で、支持部材と溶融ガラスの下端部とが一時的に非接触になるように、下方に移動させて、所定質量のガラス塊を前記ノズルよりガラス塊成形型のガラス成形部上に滴下させ、ガラス成形部において球状のガラス塊とすることを特徴するガラス塊の製造方法。
(4)前記ガラスは、軟化点温度と転移点温度の差が100℃以内であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の製造方法。
(5)前記ガラス塊がプレス成形用プリフォームであることを特徴とする上記(1)〜(4)のいずれかに記載のガラス塊の製造方法。
(6)上記(5)に記載の製造方法により作製したプレス成形用プリフォームを加熱軟化しプレス成形することを特徴とする光学素子の製造方法。
【0010】
【発明の実施の形態】
本発明は、ノズルから流出する溶融ガラスからガラス塊を成形するガラス塊の製造方法である。
図1は本発明の実施の一形態で使用するガラス塊成形装置を示す概略図である。まず、溶融炉(図示せず)で溶けて清澄、均質化されたガラス(溶融ガラス)を、図1の(a)に示すように、温度調整された白金または白金合金製のノズル1より一定流量で連続して流下する。このときの好ましいガラスの粘度は3〜100dPa・s、より好ましい粘度は3〜80dPa・sである。
【0011】
本発明のガラス塊の製造方法は、流出する溶融ガラスがノズルから滴下する前に、ノズルから流出する溶融ガラスの下端部に支持部材を接触させ、次いで支持部材を前記溶融ガラスの下端部から溶融ガラスの流出速度より高速で、支持部材と溶融ガラスの下端部とが一時的に非接触になるように、下方に移動させて、所定質量のガラス塊を前記ノズルより前記支持部材上に滴下させるか、または所定質量のガラス塊を前記ノズルよりガラス塊成形型のガラス成形部上に滴下させることを特徴する。
図1の(b)に示すように、ノズル1の直下に配置した支持部材2に、ノズル1から流出する溶融ガラス3の下端部に支持部材2を接触させる。支持部材2は、溶融ガラスに接触しても融着しない温度に保たれた耐熱性材料からなるものであることが好ましい。支持部材の材料には、例えば、ステンレスなどの耐熱性金属を用いることが好ましい。ノズル1の先端より流下する溶融ガラス3の下端部は支持部材に接触し、支持部材に接触した溶融ガラスは、溶融ガラスの温度より低い温度に設定された支持部材によって下端部から冷却される。
【0012】
溶融ガラスは連続流下するのでノズル先端の溶融ガラスの量は連続的に増加するが、支持部材との接触によって溶融ガラスは下端部から熱が奪われるので、支持部材と接触させずに流下する場合よりもガラス粘度は速く上昇する。また溶融ガラス下端部が支持部材により支持されるので、ガラス質量が表面張力で支えられる質量を超えても、ガラスの滴下は生じず、より大きなガラス塊の形成も可能である。
【0013】
支持部材上に流下した溶融ガラス量が、所定量に達したところで、支持部材を、溶融ガラスの下端部から溶融ガラスの流出速度より高速で下方に移動させる。その結果、所定質量のガラス塊をノズルよりガラス塊成形型のガラス成形部上に滴下させることができる。
具体的には、図1の(c)に示すように、支持部材1をガラス3下端部から鉛直下方に引き離すと支持部材の支持がなくなるとともにガラスの粘度が低下するので滴下がおこる。支持部材を引き離すタイミングを調整することによりガラス滴下のタイミングを調整することができるので、滴下するガラスの質量設定を支持部材の引き離しのタイミングによって調整できる。また、支持部材を引き離すタイミングを遅らせることで、自然滴下によって得られるガラス塊よりも大きい質量のガラス塊も得られる。さらに、支持部材で溶融ガラス下端部を受けるとき、ノズルと支持部材の距離に多少ばらつきがあっても、支持部材の引き離しのタイミングが一定であれば滴下するガラスの質量は一定になるという利点もある。
【0014】
溶融ガラスは、支持部材との接触によって冷却されるが、支持部材との接触による冷却は、ガラスにガスを吹き付けて冷却する手法と違い、ノズル温度を一定に保つことができるため、ガラスの流下速度を一定に保つことができるという利点がある。ガスを吹き付けて冷却する手法ではガラスとともにノズルにもガスが吹き係るためノズル温度を一定に保つことが難しいが、支持部材との接触による冷却では、ノズルへの影響は殆どない。支持部材との接触による冷却をより積極的に行うため、例えば、支持部材中に冷媒、例えば、水を循環させることもでき、溶融ガラスと接触する支持部材の温度は、例えば、30〜500℃とすることが好ましく、30〜300℃とすることがより好ましい。また、支持部材のガラス受け面は鏡面仕上げされていることが好ましく、その形状は平坦または溶融ガラスを受ける部分に窪みを設けたものが好ましい。
【0015】
尚、支持部材の引き離しによって、支持部材との接触が解除されると同時に、ガラス下端部の温度は、ガラス塊のその他の部分の熱が伝播してほぼ瞬時に上昇し、その結果、滴下するガラス塊の粘度(温度)は均一化する。支持部材上で溶融ガラスは自重により扁平形状になるが、引き離し操作によって、上記のようにほぼ瞬時に粘度が均一化するため、ノズル先端から分離したガラス塊は球状、あるいは液滴状に戻り、滴下する。したがって、滴下したガラス塊の形状はほぼ球状であり、球状のガラス塊を容易に成形することができる。
【0016】
図1の(b)に示す状態において、支持部材をガラス下端部との接触を保ったままの状態で、溶融ガラスの流出に合わせて鉛直下方に徐々に移動することで、溶融ガラスのノズル外周への濡れ上がりを防止することもできる。ノズル外周へのガラス濡れ上がりを防止することで、ガラス塊の質量変動や脈理発生を回避できるという利点がある。
【0017】
図1の(c)における支持部材の下方への移動は、支持部材をノズル鉛直下方に引き離すことにより行うことが好ましい。これにより、ガラス滴下時にガラス滴とノズルとの間でガラスが糸を引いても、その糸が切れガラス滴に取り込まれるためガラス塊に欠陥が発生するのを回避できるという利点がある。
【0018】
図1の(c)に示すように、引き離し操作(図中の▲1▼)後、支持部材2はノズル1から滴下してくるガラス3との接触を開始するために例えば、水平方向に退避する(図中の▲2▼)退避中にガラス塊は滴下し、支持部材の下方に待機する、ガラス塊成形型5のガラス成形部6に受けられる。ガラス塊3が滴下した後、支持部材2は、図1の(d)に示すように、▲1▼及び▲2▼の動作によりノズル1の下方に待機し、再度、所定質量のガラスを受ける。支持部材2の動作は、▲2▼(上方への移動)及び▲1▼(水平方向の移動)の順でも良い。
【0019】
図1の(c)の引き離し操作(図中の▲1▼)において、支持部材を引き離す距離は短すぎると滴下がおきず、長すぎると滴下距離が長くなって支持部材で受ける際の衝撃が大きくなり、良好な形状のガラス塊を成形するためには好ましくない。したがって、引き離し距離は2〜20mmの範囲とすることが好ましい。
【0020】
引き離し操作(図中の▲1▼)においては、支持部材と溶融ガラスの下端部とが一時的に非接触になるように、支持部材を下方に移動させる。そのため、支持部材の下降速度は下降中に引き離したガラスと再度接触しない速度にする。そのような支持部材の下降速度は、例えば、10〜50mm/秒の範囲である。
【0021】
支持部材2の下方には上部にガラス塊を収容、成形する凹状のガラス成形部6が設けられたガラス塊成形型5が待機している。ガラス塊3は待機中のガラス塊成形型5に投下され(図1の(d))、ガラス塊成形型上で所定形状に成形される。
【0022】
図2にガラス塊成形装置全体の概略図を示す。
ガラス塊成形型5はインデックステーブル6上に設けられ、テーブルのインデックス回転により断続的に移動する。尚、テーブル6は連続的に回転するものであってもよく、その場合、テーブル6回転速度は、均一であっても周期的に変化しても良い。ガラス塊は、この移動の間に、ガラス転移温度近傍まで冷却され、その後、ピックアンドプレイスユニット9により吸引され、型から取り出されてパレット10上に搬送される。なおパレット10は、ガラス塊3のヒートショックによる破損を防ぐため上部からヒーター11で加熱され、ガラス塊の徐冷に適した温度に維持されることが好ましい。
【0023】
図2に示す装置では、インデックステーブル6上に複数個のガラス塊成形型5が等間隔に配置されている。テーブルのインデックス回転によりガラス塊成形型は順次ガラス投入位置(図2のインデックステーブル6の左側)に移送され、前記のようにして支持部材2からガラス塊3を受ける。
【0024】
ガラス塊成形型5にガラス塊3を移した後、支持部材2は鉛直上方に移動してノズル先端の溶融ガラス下端部に接触し、上記操作を繰り返す(図1の(d))。その間、テーブルのインデックス回転によりガラス塊成形型5はガラス投入位置から搬出するとともに、次のガラス塊成形型がガラス投入位置に搬入される。
【0025】
インデックステーブル上に配置されるガラス成形部の数は、例えば、6〜48の範囲とすることができる。またガラス成形部は上記テーブルの回転軸を中心とした円周上に等間隔に配置することか適当である。この円周の直径は、例えば、300〜500mmの範囲とすることができるが、これに限定されるものではない。
【0026】
上記方法によれば、前述のように、ガラス塊の質量精度を上げる目的で、テーブル上のすべてのガラス塊成形型の高さを精密調整する必要がない。そのため、少ない負担で高い質量精度のガラス塊を生産することができるという利点がある。
【0027】
支持部材の上昇、下降、支持部材からガラス塊成形型へのガラスの投入、テーブルのインデックス回転、ガラス塊成形型からのガラス塊の取り出しといった各操作はシーケンサによって制御され、各操作は一定周期で繰り返され、次々と一定質量のガラス塊を成形していくことができる。
【0028】
本発明の製造方法で得られるガラス塊は、質量精度が高い上、脈理や変形の発生を防止することができるので、プレス成形用プリフォームとしても好適である。ガラス塊をプリフォームとして使用する場合、パレット上で徐冷されたガラス塊を室温まで冷却し、必要に応じて洗浄及び乾燥し、さらに必要に応じてプレス時の離型性を向上させるための膜を表面に設けることができる。特に、光学素子をプレス成形する場合は、最終製品において所望の光学特性が得られるように調合されたガラス原料を溶融し、清澄、均質化して光学ガラスからなるプリフォームを成形することが好ましい。
【0029】
光学素子を作るためのプレス成形プリフォームのような高品質な表面を有するガラス塊を成形するには、成形中にガラスとガラス成形部がなるべく接触しないようにすることが望ましい。そのため、ガラス成形部6に細孔を設けたガラス塊成形型、底部がガス噴出口からなるガラス成形型(ベンチュリー管という、図1中の7)、またはガラス成形部を多孔質体で構成したガラス塊成形型を使用し、細孔、ガス噴出口、または多孔質体からガスを噴出してガラスに風圧を加えて浮上させながら成形(浮上成形という。)することが好ましい。なお、ガラス成形部6に投入されるガラス塊3は支持部材2上で再度冷却され、ある程度粘度が上昇しているので、上記のようにガスを噴出してガラスに風圧を加えて浮上させる場合にも、ガス噴出を妨げることがない、とう利点がある。したがって、ガラス塊のガラス成形部の中央への投入が容易にできる。
【0030】
ガラス塊成形型には、ステンレスなどの耐熱性金属、カーボンなどを用いることができる。ガラス成形部に移されたガラスは流下時よりも低温になっているが、依然として融着のおそれがある温度にある。そのためガラス成形部の温度を300℃以下にして確実に融着を防止することが好ましい。さらに、融着を防止するため、ガラス成形部の表面にダイヤモンド・ライク・カーボン膜などの膜を設けてもよい。またガラス成形部は一つの成形型に複数箇所設けることもできる。その場合、ガラス成形部の移動は、インデックステーブルの回転による移動以外に、成形型の、例えば、回転によって行われる。
【0031】
図1には、平板状の支持部材2を示したが、支持部材は、平板状に限らない。例えば、図3に示す支持部材2は、3つのガラス受け面を備えており、底面が正三角形の三角柱形状をしている。この支持部材は三角柱の中心軸が水平に保たれた状態で上下方向動くとともに、中心軸のまわりに120°または120°の整数倍の角度だけ回転する機能を備えている。また支持部材の内部にはガラス融着防止のため冷却水を流し、支持部材に溶融ガラスが融着しないようにしている。支持部材の温度としては、前記のように、30〜500℃が好ましく、30〜300℃がより好ましい。また、ガラス受け面は鏡面仕上げされていることが好ましく、その形状は平坦または溶融ガラスを受ける部分に窪みを設けたものが好ましい。
【0032】
図3を用いて上記三角柱形状の支持部材の動作を説明する。
まず、3つあるガラス受け面うち第1のガラス受け面を上に向けて水平にした状態で支持部材2を鉛直上方に上昇し、ノズル1の先端に所定の距離まで近づけてから停止する(a)。それからノズルより流下する溶融ガラス3下端部が支持部材2のガラス受け面と接触する(b)。接触を継続する時間は、ガラス塊の設定質量により適宜選択することができる。前述のように、溶融ガラス3下端部が支持部材2のガラス受け面と接触している間、溶融ガラスのノズルへの濡れ上がり防止のため、支持部材2を溶融ガラスの流出に合わせてゆっくり下降してもよい。
【0033】
次に、ガラス受け面を水平に保ったまま支持部材を引き離し(図中の矢印方向)、ガラスと支持部材とは非接触状態となる(c)。その結果、溶融ガラス3下端部の温度が上昇し、かつ設定質量のガラス塊が滴下する。滴下するガラス塊を支持部材2で受ける(d)ことにより、ガラス塊3と支持部材2との接触開始から滴下までの時間が短い場合でも確実に滴下ガラス塊を受けることができる。
また(c)において支持部材2を鉛直下方に引き離すことにより、ノズル先端のガラスに横方向の力が加わらなくて済む。そのため、ガラス塊の変形を防止することができるとともに、ガラスの糸引きが生じてもガラス塊には欠陥部として残らないという利点がある。
【0034】
次いで支持部材を水平軸のまわり(前記垂直断面の正三角形の内心のまわり)に120°回転してガラス受け面上からガラス塊3をガラス塊成形型5に投下する(e)。
120°回転した支持部材は第2のガラス受け面が水平になっているが、その状態で上記のように上昇、ノズル先端に前記距離まで近づけられ、(a)の状態に戻り、上記工程(a)から(e)を繰り返す。このように支持部材を120°ずつ回転しながら次々と所定質量のガラス塊をガラス成形部に移し、ガラス塊の成形を行うことができる。
【0035】
上記支持部材の形状は正三角柱に限らず、正四角柱、正五角柱などの正多角柱でもよいし、平板でもよい。正n角柱(nは3以上の整数)の場合は支持部材の回転角は360°/nの整数倍、平板の場合は180°または360°とする。正多角柱の場合、側面をガラス受け面、平板の場合は表面とその裏面またはそのいずれか一方をガラス受け面として使用することができる。
上記のように、支持部材が正三角柱の場合、ガラス塊の支持部材からガラス成形部への移動を角柱の回転のみで行うことができるが、正四角柱以上の場合も同様に、角柱の回転のみでガラス塊の支持部材からガラス成形部への移動を行うことができる。但し、支持部材が角柱の場合でも、平板状の場合と同様に、支持部材の移動を角柱の垂直及び水平移動を組合せて行うこともできる。
【0036】
本発明の製造方法で製造するガラス塊は、質量に特に制限はないが、例えば、500mg以下の範囲で設定することが好ましい。
【0037】
本発明のガラス塊の製造に使用するガラスは、ノズルから失透せずに一定流量で流出できるものであればよいが、本発明の製造方法は、軟化点温度と転移点温度の差が100℃以内のガラスからガラス塊を製造するのに好適である。このようなガラスは温度変化に対し粘性が激変する性質を有する。したがって、ノズルから流下する溶融ガラス流下端部を受け型で継続して受けつつ所定質量のガラスを分離する方法では、分離したガラスの粘度が不均一になり良好なガラス塊を得るのが難しくなる。それに対して、本発明の製造方法によれば、このようなガラスであっても支持部材を引き離すことによりガラス下端部の粘度が上昇し、粘度の不均一性による影響を低減することができ、また、支持部材の引き離しのタイミングにより滴下のタイミングを制御しやすい。
【0038】
ガラス塊の単位時間あたりの生産量は20〜100DPM(ノズル一本から1分あたりに生産される個数)が好ましく、20〜80DPMがより好ましい。
なお、本発明の方法において好ましいガラスの引き上げ量は1〜20kg/日であり、溶融ガラスの好ましい流出速度は1〜15mm/秒である。
【0039】
本発明の製造方法によれば、まず支持部材が所定質量のガラスを受けるので、ノズルからガラスを受けている間、ガラス塊成形型(インデックステーブルの回転)を停止させておく必要がない。したがって、本発明は、複数のガラス塊成形型を使用し、この成形型を移動させながら成形型上でガラス塊を成形する方法に好適である。
【0040】
また、支持部材を溶融ガラスから引き離すことにより、その間は、支持部材と溶融ガラスとの接触が減少し、あるは一時的に非接触状態になる。そのため、成形型で溶融ガラスを受ける場合に比べて、溶融ガラスとの接触時間が短かくなり、支持部材のガラス受け面に付着する溶融ガラスの揮発物量を低減することもできる。このような付着物が蓄積するとやがて付着物をガラスが取り込み、ガラス塊の品質を低下させることになる。しかし、支持部材の引き離し操作によって上記問題を解消することができる。
【0041】
支持部材として角柱の部材を使用する場合、ガラス塊のガラス成形部への投入をガラス成形部の移動を停止することなしに行うことができる。但し、ガラス成形部の移動速度をガラス塊の投入時には低下させることが好ましい。また、ガラス塊を移動中のガラス成形部に投入する際は、ガラス成形部の移動方向に沿って角柱の支持部材を回転させてガラス塊を投入することが好ましい。
【0042】
本発明では、前記ガラス塊がプレス成形用プリフォームであることができる。以下に、プレス成形用プリフォームの形状について説明する。
プリフォーム形状はプレス成形品の形状に応じて決められる。レンズのように軸対称の光学素子をプレス成形する場合、プリフォームも軸対称形状にすることが好ましい。例えば、球状、おはじき状(円盤状)などがある。また、プレス成形時にプレス成形型とプリフォームの間にガスが閉じ込められ、そのガスによってガラスの成形が妨げられるガストラップ不良と呼ばれる不具合が起きることがある。そこで、この点を考慮して、プリフォーム表面の曲率を、プレス成形型成形面の曲率よりもきつくする(大きくする)ことが好ましい。
【0043】
本発明は、上記本発明の製造方法により得られたガラス物品、好ましくはプリフォームを加熱軟化し、次いでプレス成形することを特徴とする光学素子の製造方法を包含する。
より具体的には、上記方法によって成形され、次いで徐冷された光学ガラスよりなるプレス成形用プリフォームを再度加熱し、プレス成形型でプレス成形することで光学素子を製造することができる。再加熱する前のプリフォームは、必要に応じて洗浄及び乾燥を行うことができ、また、離型作用やガラスがプレス成形型表面で広がりやすくなるよう潤滑作用を有する膜を形成してもよい。
【0044】
レンズ面などの光学機能面に機械加工を施さない場合、上記プレス成形には精密プレス成形法を適用することが好ましい。精密プレス成形法ではSiC製、超硬合金製、耐熱性金属製などの型材を用い、成形面には必要に応じて炭素膜、貴金属膜などの離型膜を設けたプレス成形型を使用し、窒素、窒素と水素の混合ガス、不活性ガスなどの雰囲気中でプレス成形を行うことができる。プレス成形された光学素子には徐冷された後、必要に応じて反射防止膜などの光学薄膜を設けてもよい。
【0045】
上記方法によって成形可能な光学素子として特に限定はないが、非球面レンズ、球面レンズ、シリンドリカルレンズ、マクロレンズ、レンズアレイなどの各種レンズやプリズム、ポリゴンミラー、回折格子などを例示できる。
【0046】
【実施例】
次に実施例により本発明をより具体的に説明する。
(実施例1)
最終的に所望の屈折率、分散、透過率などの光学特性が得られるように調合されたガラス原料を加熱溶融し、脱泡清澄、攪拌均質化して得られた溶融ガラスを温度制御された白金合金製ノズルから一定の流出速度で連続して流下する。このときのガラスの引き上げ量を10kg/日、流出速度を10mm/秒とした。
流下する溶融ガラス流は図3に示された装置によりプレス成形用プリフォームに成形される。
【0047】
本実施例で用いた支持部材は、一辺が20mmの正三角形を底面とするステンレス製の三角柱状のものである。支持部材には溶融ガラスとの融着を防ぐため、中心にφ8mmの穴を空け冷却水を流して水冷している。
【0048】
まず支持部材を上昇し、鏡面仕上げされたガラス受け面とノズル先端から3mm下方まで動かした後停止してする。この状態でガラス受け面は水平状態(ガラス受け面が鉛直上方を向いた状態)に保たれる。次いでガラス受け面上にノズルから流下する液滴状の溶融ガラスの下端部が載る。時間と共にガラス受け面上の溶融ガラスの大きさは大きくなるので1mm/秒の低速で支持部材を鉛直方向に下げることで、溶融ガラスのノズル先端外周への濡れ上がりを防止する。
【0049】
次に、支持部材を12mm/秒で鉛直下方に引き離してガラス下端部の冷却を終了する。冷却終了後、ノズル先端にはさらに溶融ガラスが供給されるので、ノズル先端のガラスの粘度が低下して球状に戻るとともに、質量の増加と粘度の低下によって下方で待機する支持部材のガラス受け面(冷却時にガラスと接触させていた面)上に滴下する。
【0050】
次いで支持部材を三角柱の中心軸のまわりに120°回転して、支持部材の下方に待機するガラス塊成形型(ベンチュリー管)の中央にガラスを投入する。ベンチュリー管の底部はガス噴出口になっており、そこから上方に吹き出す不活性ガスによってガラスが浮上成形される。
【0051】
このようにして次々と所定質量のガラスを滴下して球状のプレス成形用プリフォームに成形した。表1にカッティングタイム(滴下の周期)、冷却継続時間、プリフォーム質量と公差を示す。
【0052】
なお、上記プリフォームは、屈折率(nd)1.583、アッベ数(νd)59.5、ガラス転移点温度503℃、軟化点温度590℃、軟化点温度を転移点温度の差87℃の光学ガラスを用いて作製したが、屈折率(nd)1.806、アッベ数(νd)40.7、ガラス転移点温度545℃、軟化点温度620℃、軟化点温度を転移点温度の差75℃の光学ガラス、屈折率(nd)1.693、アッベ数(νd)53.2、ガラス転移点温度554℃、軟化点温度588℃、軟化点温度を転移点温度の差34℃の光学ガラスなどの精密プレス成形用光学ガラスを用いても良好な成形ができた。
【0053】
このようにして成形されたプレス成形用プリフォームにはカンワレ、脈理などの欠陥は認められなかった。また質量精度も精密プレス成形における要求を十分満たすものであった。
【0054】
【表1】
Figure 0003986064
【0055】
(実施例2)
実施例1で成形されたプリフォームを洗浄、乾燥した後、精密プレス成形を行って非球面レンズを作製した。上記プレス成形ではSiC製の型材表面に炭素膜を形成したプレス成形型を用い、雰囲気を窒素雰囲気とした。プレス成形後、非球面レンズを型から取り出し徐冷した。得られたレンズは内部、表面とも良好な状態であった。レンズは必要に応じて芯取り加工を施し、表面に反射防止膜を形成してもよい。
【0056】
本実施例は非球面レンズの製造方法に関するものであるが、その他の光学素子、例えばプリズムや回折格子などの製造にも適用できる。
【0057】
【発明の効果】
本発明のガラス塊の製造方法によれば、良好な形状、高品質、高い質量精度を有するガラス塊、特にプレス成形用プリフォームに好適なガラス塊を製造する方法を提供することができる。また、ガラス塊の質量設定の自由度を向上することもできる。さらに温度変化に対する粘度変化の大きなガラスでも良好な形状に成形することができる。
本発明の光学素子の製造方法によれば、良好な形状、高品質、高い質量精度のプリフォームが高生産性のもとに供給されるので、高生産性のもと光学素子を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明で使用するガラス塊成形装置を示す概略図である。
【図2】本発明で使用するガラス塊成形装置全体の概略図を示す。
【図3】本発明で使用するガラス塊成形装置を示す概略図である。

Claims (6)

  1. ノズルから流出する溶融ガラスからガラス塊を成形するガラス塊の製造方法であって、
    流出する溶融ガラスがノズルから滴下する前に、ノズルから流出する溶融ガラスの下端部に支持部材を接触させ、次いで支持部材を前記溶融ガラスの下端部から溶融ガラスの流出速度より高速で、支持部材と溶融ガラスの下端部とが一時的に非接触になるように、下方に移動させて、所定質量のガラス塊を前記ノズルより前記支持部材上に滴下させることを特徴するガラス塊の製造方法。
  2. 滴下したガラス塊を支持部材上で、または支持部材からガラス成形部に移して、球状のガラス塊とすることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
  3. ノズルから流出する溶融ガラスからガラス塊を成形するガラス塊の製造方法であって、
    流出する溶融ガラスがノズルから滴下する前に、ノズルから流出する溶融ガラスの下端部に支持部材を接触させ、次いで支持部材を前記溶融ガラスの下端部から溶融ガラスの流出速度より高速で、支持部材と溶融ガラスの下端部とが一時的に非接触になるように、下方に移動させて、所定質量のガラス塊を前記ノズルよりガラス塊成形型のガラス成形部上に滴下させ、ガラス成形部において球状のガラス塊とすることを特徴するガラス塊の製造方法。
  4. 前記ガラスは、軟化点温度と転移点温度の差が100℃以内であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の製造方法。
  5. 前記ガラス塊がプレス成形用プリフォームであることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 請求項5に記載の製造方法により作製したプレス成形用プリフォームを加熱軟化し、次いでプレス成形することを特徴とする光学素子の製造方法。
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