JP4473780B2 - 出隅役物用成形材料のプレス成形方法 - Google Patents

出隅役物用成形材料のプレス成形方法 Download PDF

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本発明は、建物の壁や天井等における出隅部に用いられる出隅役物を形成する成形材料の表面に凹凸模様を成形する際に用いられるプレス成形方法に関するものである。
セメント系成形材料によって出隅役物を作製するにあたっては、断面L字形の出隅形状に成形材料を成形し、この出隅形状の成形材料の出隅側の各外面に凹凸模様をプレス成形した後、この成形材料を養生・硬化することによって行なわれている(例えば、特許文献1参照。)。
図7は凹凸模様3をプレス成形する方法の一例を示すものであり、まず図7(a)のように上面が断面三角形状の出隅形状に形成される下型10の上にセメント系などの成形材料1を押出して、成形材料1を断面L字形の出隅形状に成形し、次に、プレス面に模様賦型用凹凸11を設けて形成した成形型2を用い、図7(b)のように出隅形状の成形材料1の各外面1aに成形型2を押し当てて、図7(c)のように成形材料1の各外面1aに凹凸模様3を成形し、この後に、成形型2を成形材料1から離型させることによって、行なうようにしてある。
ここで、上記のように成形型2で凹凸模様3をプレス成形するにあたって、図8のように成形型2を単に鉛直上下方向に移動させてプレス成形や離型を行なう場合には、成形材料1に成形される凹凸模様3から模様賦型用凹凸11が抜ける抜け角θを確保する必要があるために、成形材料1に形成される凹凸模様3に制約があり、意匠性に限界がある。
そこで図7のものでは、出隅形状に成形される成形材料1の出隅側の各外面1aに対応する二つの成形型2を用い、図7(b)のように各成形型2を成形材料1の各外面1aに対して垂直な方向で移動させてプレス成形し、また図7(d)のように各成形型2を成形材料1の各外面1aに対して垂直な方向で移動させて離型するようにしている。このようにすることによって、成形型2の模様賦型用凹凸11に精度良く適合した凹凸模様3を成形材料1に形成することができると共に、成形された凹凸模様3が崩れるようなことなく、成形型2を成形材料1から離型することができるものである。
特開平3−178404号公報
しかし、上記のように二つの成形型2を用いて成形材料1の各外面1aをプレス成形するにあたっては、各成形型2の対向する端部が離れた状態から突き合わされるようになりつつプレス成形が行なわれるが、このように各成形型2の端部が突き合わされる際に、出隅の頂部の部分の成形材料1が押し出されて、図7(c)のように各成形型2の端部間にバリ12が生じることになる。従って、このバリ12を除去する仕上げ工程が必要になり、生産性の問題が生じるものであった。このバリ12の発生は、特にセメント系の成形材料1、さらにはセメント系中空押出しの成形材料1に顕著であり、生産性の向上を図るうえで解決が望まれているものであった。
本発明は上記の点に鑑みてなされたものであり、バリの除去を行なう必要がなく、しかも抜け角を確保する必要がなくて成形材料に様々な凹凸模様をシャープに形成する成形を行なうことができる出隅役物用成形材料のプレス成形方法を提供することを目的とするものである。
本発明の請求項1に係る出隅役物用成形材料のプレス成形方法は、成形材料1を出隅形状に成形し、この成形材料1の出隅側の二つの外面1aに対応する二つの成形型2を用いて、成形材料1の各外面1aに凹凸模様を成形するようにした出隅役物用成形材料のプレス成形方法であって、上記成形材料1として弾性限界応力が0.001〜0.2MPaであるものを用いると共に、上記二つの成形型2を断面L字形に配置して一体化し、この状態でプレスを行なった後に、各成形型2を成形材料1の各外面1aに対して垂直な方向に移動させて離型することを特徴とするものである。
請求項2の発明は、請求項1において、振動を加えながらプレスを行なうことを特徴とするものである。
請求項3の発明は、請求項1又は2において、真空吸引しながらプレスを行なうことを特徴とするものである。
本発明の請求項1に係る出隅役物用成形材料のプレス成形方法によれば、成形材料に凹凸模様をプレス成形する際に、バリが発生するのを防止することができるものであり、成形材料を養生・硬化した後にバリの除去を行なう仕上げ工程を不要にして、生産性を高めることができるものである。また、成形材料の弾性限界応力は0.001〜0.2MPaであるので、成形型のプレス面に設けた模様賦型用凹凸の隅々に成形材料が流動して充填されるので、成形材料にシャープな凹凸模様を容易に形成することができるものである。さらに、離型する際には、各成形型は成形材料の各外面に対して垂直な方向に移動させるので、抜け角を確保する必要がなくて、意匠を施す場合の制約がなくなり、様々な凹凸模様を成形材料に形成することができるものである。
請求項2の発明によれば、成形材料の流動性がさらに高まり、よりシャープな凹凸模様を成形することができるものである。
請求項3の発明によれば、成形材料が吸引されることによって、成形型のプレス面に設けた模様賦型用凹凸の隅々に成形材料が行き渡るので、深彫りで、よりシャープな凹凸模様を成形することができるものである。
以下、本発明の実施の形態を説明する。
図1は本発明の実施の形態の一例を示すものであり、具体的には、本発明で使用するプレス成形機の一例を示すものである。このプレス成形機は、上面が断面三角形状の出隅形状に形成される下型10と、二つの成形型2とで形成されている。このうち下型10は、基台4上に設けた二列のローラコンベア5上に載置してあり、図5の矢印で示すように、基台4の長手方向に搬送できるようにしてある。一方、二つの成形型2はそれぞれ、出隅形状に成形される成形材料1の出隅側の各外面1aに対応しており、各成形型2のプレス面2aには模様賦型用凹凸(図示省略)が設けてある。また、後述するように、二つの成形型2は、断面L字形に配置されて一体化された状態でプレス方向に移動することができると共に(図1〜図2参照)、分割して移動することができるようにしてある(図3〜図4参照)。また、基台4の下部にはアジャストボルトで脚部19を複数形成し、水平出しを行なうことができるようにしてある。
図1〜図4(正面図)及び図5(側面図)に示すように、基台4上に設けた二列のローラーコンベア5を挟んで、基台4上には二組の支柱6が立設してあり、各組の支柱6の上部には支持板7が架設してある。この支持板7の面は鉛直方向に平行であり、また、この支持板7には、上に凸状の円弧状スリット8が左右対称に二つ穿設してある。各円弧状スリット8の一端(以下「始端8a」という。)は最も高い位置にあり、他端(以下「終端8b」という。)は始端8aから45°下方に移動した位置にある。なお、終端8bの位置はこれに限定されるものではなく、作製する出隅役物のなす角度に応じて適宜変更可能であるが、以下では便宜上、終端8bの位置は円弧状スリット8に沿って始端8aから45°下方に移動した位置として説明する。また、各円弧状スリット8には可動軸9が挿通されており、この可動軸9は、駆動手段(図示省略)によって円弧状スリット8の両端間(始端8aと終端8bとの間)を自由に移動できるようにしてある。各可動軸9の一端にはそれぞれシリンダー13が固定されており、可動軸9が円弧状スリット8の始端8aにある場合(図1及び図2参照)には、このシリンダー13のピストン14は鉛直下方(図1の矢印の向き)に前進させることができるようにしてあり、また、可動軸9が円弧状スリット8の終端8bにある場合(図3及び図4参照)には、このシリンダー13のピストン14は鉛直方向に対して上方に45°傾いた向き(図3の矢印の向き)に後退させることができるようにしてある。また、各ピストン14の先端はそれぞれ成形型2に軸支してあり、可動軸9が円弧状スリット8の両端間を移動しても成形型2は傾かないようにしてある。そして、図1に示すように、二つの可動軸9がいずれも各円弧状スリット8の始端8aにある場合には、二つの成形型2を断面L字形に配置して一体化することができるようにしてある。ここで、図6に示すように、二つの成形型2の突き合わせ面2b(当接面)のうち一方の面には嵌合凸部17が設けてあり、他方の面には嵌合凹部18が設けてあって、これらを嵌合することによって、二つの成形型2が位置ずれしないで一体化できるようにしてある。さらに、図6に示すものでは、二つの成形型2の突き合わせ面2bのうち一方の面に凹溝15を形成し、この凹溝15にシールパッキン16を嵌めて、二つの成形型2を一体化した場合に両者の密着性をより高く得られるようにしてある。
そして、本発明では次のようにしてプレス成形を行なう。まず、図1に示すように、上面が断面三角形状の出隅形状に形成される下型10の上にセメント系などの未硬化の成形材料1を押出す。このように出隅形状の下型10の上に成形材料1を押出すことによって、成形材料1は断面L字形の出隅形状に成形される。このとき、成形材料1としては、セメントを主原料とし、これに、シリカ、補強繊維、その他の混入物(例えば、増粘剤、軽量化材、粉体等)を配合(ドライブレンド)し、これに水(セメント100質量部に対して100〜150質量部)を加えて混練機で混合したものを用いることができるが、本発明では特に、各材料の配合を調整するなどして、弾性限界応力を0.001〜0.2MPaにした成形材料1を用いるようにしている。これは、後述するプレス成形の際に成形材料1の流動性を高く得ることができ、成形型2のプレス面2aに設けた模様賦型用凹凸の隅々に成形材料を充填させることができるからであるが、成形材料1の弾性限界応力が0.2MPaを超えている場合には、未充填部分が残ってしまい、模様賦形用凹凸に適合した凹凸模様を成形材料1に精度良く形成することができなくなる。なお、成形材料1の弾性限界応力を0.001MPa未満にするのは困難であるので、下限を0.001MPaとしている。
ここで、上記成形材料1を構成するセメント、シリカ、補強繊維、その他の混入物について、より詳細に説明する。
セメントとしては、ポルトランドセメント、高炉セメント、アルミナセメントなど公知のセメントを使用することができる。
また、セメントと混合するシリカとしては、比表面積の大きい粉末シリカを用いるのが、出隅役物の靱性向上の面で、好ましく、具体的には、比表面積が3000〜200000cm/gのものを用いるのが好ましい。また、セメント100質量部に対して、シリカは20〜120質量部の割合で含有されていることが好ましく、20質量部未満であると、作製される出隅役物の強度が低下し、逆に、120質量部を超えると、プレス成形に先立つ押出成形が困難となるおそれがある。
また、補強繊維としては、L材、N材、ラミー、リンターなどのパルプ繊維、ビニロン、ポリプロピレン等を用いることができる。補強繊維の含有量はセメント100質量部に対して5〜25質量部であることが好ましく、5質量部未満であると、出隅役物の強度が不十分となり、逆に、25質量部を超えると、成形が困難となるおそれがある。
また、その他の混入物としては、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等の増粘剤や、樹脂系の中空体、シラスバルーン、パーライト等の軽量化材や、フライアッシュ等の粉体等を必要に応じて含有させることができる。
そして、図1に示すように、成形材料1を断面L字形の出隅形状に成形すると共に、二つの可動軸9をいずれも各円弧状スリット8の始端8aに移動させて、二つの成形型2を断面L字形に配置して一体化する。この状態で、図1の矢印で示すように、二つのシリンダー13のピストン14を同時に鉛直下方に突出させて、図2に示すようにプレス成形すると、成形材料1の各外面1aに模様賦型用凹凸で凹凸模様(図示省略)を成形することができる。このプレス成形の際には常に二つの成形型2は対向する端部が突き合わされた状態を維持しているので、二つの成形型2の突き合わせ面2bの間に成形材料1が浸入するのを阻止することができ、バリが生じるのを防止することができるものである。しかも、上述したように、弾性限界応力が0.001〜0.2MPaである成形材料1を用いているので、模様賦型用凹凸の隅々にこの成形材料1が充填され、結果的にシャープな凹凸模様を容易に成形することができるものである。なお、プレス成形は0.49MPa(5kg/cm)以下の圧力で行なうことができる。
また、好ましくは、成形型2にバイブレーター(図示省略)を取り付けるなどして、振動を加えながらプレスを行なうのがよく、これにより、成形材料1の流動性がさらに高まることとなり、よりシャープな凹凸模様を成形することができるものである。なお、本発明では5000min−1以下(実質上の下限は1000min−1)の振動を加えながらプレスを行なうことができる。
また、好ましくは、真空吸引しながらプレスを行なうのがよい。具体的には、成形型2として、内部がポーラスであって、プレス面2aに直径0.2〜1.0mmの微細孔(図示省略)がランダムに開口しているものを用い、プレス成形機の外部に設置した真空ポンプ(図示省略)を用いて上記微細孔を通して成形材料1を吸引することによって、プレスを行なう際に真空吸引することができる。このようにして成形材料が吸引されることによって、成形型のプレス面2aに設けた模様賦型用凹凸の隅々に成形材料1が行き渡るので、例えば20mm以下の深彫りで、よりシャープな凹凸模様を成形することができるものである。なお、プレス成形を行なう際に振動を加え、かつ、真空吸引するようにすると、一層効果的である。また、大気圧を0とすると、真空吸引は、成形材料1が−0.04〜−0.1MPaの圧力下に置かれるようにして、行なうことができる。
また、各成形型2のプレス面2aに設けた突片20によって、出隅役物の両側縁を成形することができるが、プレス成形の際には、上記突片20の先端と下型10との間に隙間を空けて、成形材料1の一部がこの隙間から逃げることができるようにしている。このように成形材料1の一部を逃がすことで、二つの成形型2の突き合わせ面2bの間に成形材料1が無理に浸入しないようにすることができ、バリが生じるのを一層確実に防止することができるものである。
上記のようにプレスを行なった後に、図2の矢印の向きに、二つの可動軸9をいずれも各円弧状スリット8の始端8aから終端8bに移動させると、図3に示す状態となる。そして、各成形型2を成形材料1の各外面1aに対して垂直な方向(図3の矢印の向き)に移動させて、図4に示すように離型することによって、プレス成形を完了することができるものである。このように、離型する際には、各成形型2は成形材料1の各外面1aに対して垂直な方向に移動させるので、図8に示す従来のものとは異なり、本発明では抜け角θを確保する必要がなくて、意匠を施す場合の制約がなくなり、様々な凹凸模様を成形材料1に形成することができるものである。また、このようにして成形された凹凸模様は、成形型2の模様賦型用凹凸に精度良く適合しており、成形型2を成形材料1から離型する際に崩れるようなこともないものである。この後、このプレス成形をした成形材料1は下型10と共に、図5の矢印で示すように、ローラーコンベア5で所定の位置まで搬送された後、養生・硬化することによって、断面L字形の出隅役物を得ることができるものである。また、このようにして作製された出隅役物を下型10から取り出した後、この下型10をローラーコンベア5で元の位置に戻すと共に、二つの可動軸9をいずれも図4の矢印の向きに円弧状スリット8の終端8bから始端8aに移動させると、図1に示す状態に戻る。この後は、上述した操作を繰り返し行なうことによって、出隅役物を連続して作製することができるものである。
以上説明したように、本発明では、二つの成形型2を用いてプレスを行なっているが、図7に示す従来のものとは異なり、二つの成形型2を一体化した状態でプレス成形しているので、バリの発生を未然に防止することができるものであり、成形材料1を養生・硬化した後にバリの除去を行なう仕上げ工程を不要にして、生産性を高めることができるものである。
本発明の実施の形態の一例を示すものであり、一工程の正面図である。 図1の工程に続く工程を示す正面図である。 図2の工程に続く工程を示す正面図である。 図3の工程に続く工程を示す正面図である。 本発明の実施の形態の一例を示すものであり、一工程の側面図である。 本発明で使用する成形型の一例の一部を拡大して示す断面図である。 従来例を示すものであり、(a)(b)(c)(d)はそれぞれ断面図である。 他の従来例を示す断面図である。
符号の説明
1 成形材料
1a 外面
2 成形型

Claims (3)

  1. 成形材料を出隅形状に成形し、この成形材料の出隅側の二つの外面に対応する二つの成形型を用いて、成形材料の各外面に凹凸模様を成形するようにした出隅役物用成形材料のプレス成形方法であって、上記成形材料として弾性限界応力が0.001〜0.2MPaであるものを用いると共に、上記二つの成形型を断面L字形に配置して一体化し、この状態でプレスを行なった後に、各成形型を成形材料の各外面に対して垂直な方向に移動させて離型することを特徴とする出隅役物用成形材料のプレス成形方法。
  2. 振動を加えながらプレスを行なうことを特徴とする請求項1に記載の出隅役物用成形材料のプレス成形方法。
  3. 真空吸引しながらプレスを行なうことを特徴とする請求項1又は2に記載の出隅役物用成形材料のプレス成形方法。
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