JP4472694B2 - 直進型研磨方法 - Google Patents

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Description

本発明は、金属(鉄鋼・非鉄金属)や非金属(セラミック・ガラス・プラスチック)等の
研磨加工(abrasive finishing)に関するものである。
遊離砥粒を分散させた研磨剤を介して工作物とラップ(lap)を擦り合わせて研磨するラッ
ピング(lapping)や金属よりも軟らかいポリシャ(polisher)と呼ばれる工具を用いて研磨
するポリシング(polishing)等の研磨加工は、機械加工の最終仕上げ工程に用いる加工法
であり、近年の機器の高品位化に伴い、重要性を増している加工法である。
研磨加工には、片面、両面、曲面等多くの加工作業があるが、基本的に、図10に示すよ
うに、研磨定盤(surface plate)10上(ポリシングの場合は、定盤上に貼られたポリシ
ャ11上)に、キャリア13等で保持されてnの速度で回転するホルダ14内に収容され
た工作物3を圧力Pで押しつけ、研磨定盤10上(ポリシングの場合はポリシャ11上)
に遊離砥粒12を含む研磨液15を滴下しながら研磨定盤10をNの速度で回転し、その
回転と工作物3の回転との相対運動により、工作物3の表面を遊離砥粒12で除去し、表
面を高平滑にしていく加工法である。ポリシャとしては、不織布やスエ−ドタイプ(sued
e-type)のプラスチックが用いられることが多い。この研磨加工における現状の最高研磨
速度は2m/s程度であると考えられる。
しかし、回転型研磨定盤を用いる研磨加工では、通常、いわゆるバッチ加工方式となり、
工作物の着脱は、研磨定盤を一度停止してから行わなければならず、工作物の着脱に要す
る時間が必要になる。また、工作物の両面研磨加工を行うために、工作物を連続的に装置
に送り込み、自動的に研磨加工するシステムを構築することが難しく、特に、大量生産の
場合に、研磨加工の能率向上が課題になっている。
さらに、回転型研磨定盤上で加工するため、研磨定盤の直径は少なくとも、工作物の2倍
以上必要であり、大きな工作物に対しては大きな研磨定盤が必要で、研磨装置のための大
きな設置面積が必要になる。さらに、回転軸を横軸方向として、回転面を垂直方向とした
回転型両面研磨定盤を製作するのは、原理的に工作物を支持するのが難しいため実現困難
であり、装置周辺の空間を十分に利用することが難しい。このようなことから、よりコン
パクトで、工作物を連続的に装置に送り込むことができる自動研磨加工システムが容易に
構築でき、装置周辺の空間も十分に使用できる新しい概念の研磨加工法の開発が、強く期
待されている。
本発明は、現在の回転型研磨定盤を用いる回転型研磨加工法では実現が難しい、コンパク
トで、工作物を連続的に装置に送り込むことができる自動研磨加工システムの構築が容易
にでき、装置周辺の空間も有効に使用できる新しい概念の研磨加工方法を提供する。
すなわち、第一の本発明は、平行に隣接し、互いに反対方向に直線運動を行う1組の平行
平面定盤の両方に、工作物を押しつけることにより、工作物に回転運動のための偶力(cou
ple of forces)を与え、その回転と直線運動をする該1組の定盤との相対運動により、工
作物を砥粒で研磨する直進型研磨方法、である。この方法において、1組の平行平面定盤
を別の1組の平行平面定盤と対向させて、その間に工作物を挟んで片面又は両面を研磨す
ることができる。
また、第二の本発明は、直線運動を行う単一の平面定盤の表面の摩擦係数を直線運動方向
に対して直角方向に異ならせ、該平面定盤に工作物を押しつけることにより、工作物に回
転運動のための偶力を与え、その回転と直線運動をする該単一の平面定盤との相対運動に
より、工作物を砥粒で研磨する直進型研磨方法、である。この方法において、平面定盤を
別の平面定盤と対向させて、その間に工作物を挟んで片面又は両面を研磨することができ
る。
上記の各方法において、円板状のサブキャリアで固定された工作物を、円板状穴を持つ長
尺の板状のキャリアで保持し、キャリアを研磨の進行につれて徐々に一方向へ引き出しな
がら、連続的に研磨加工することができる。
また、上記の各方法において、平面定盤に代えて工作物支持台上を通過するベルト型のポ
リシャを用いることができる。
また、第一の本発明の方法は、平行に隣接する1組の平行平面定盤、該定盤を互いに反対
方向に直線運動を行なわせる手段、該定盤に工作物を押しつける手段とからなる直進型研
磨装置を用いて行うことができる。この装置において、1組の平行平面定盤が別の1組の
平行平面定盤と対向してその間に工作物を挟むように配置することができる。
上記の装置において、研磨中に連続的に研磨装置に工作物を供給、排出する長尺の板状の
キャリアを供えることができる。また、板状キャリア内に、平行平面定盤の隣接中心線上
、又は、隣接中心線上から離れた位置に回転中心を有する円形の工作物保持用サブキャリ
ア穴を供えることができる。さらに、板状キャリア内に、円形、正方形、長方形、多角形
等の工作物保持穴を有し、その回転中心が平行平面定盤の隣接中心線上にある円板状サブ
キャリア穴を供えることができる。
さらに、第二の本発明の方法は、表面の摩擦係数を直線運動方向に対して直角方向に異な
らせた、直線運動を行う単一の平面定盤、該平面定盤に工作物を押しつける手段とからな
る直進型研磨装置を用いて行うことができる。この装置において、平面定盤が別の平面定
盤と対向してその間に工作物を挟むように配置することができる。
また、上記の各装置において、平面定盤に代えて工作物支持台とその上を通過する1組の
ベルト型のポリシャとを組み合わせることができる。
本発明の方法によれば、直線運動を行う平面定盤により与えた偶力により工作物を回転
させながら研磨するので、一方向の研磨条痕がつかず、そのような方向性のない粗さ約1
.5nm以下(数原子間隔以下)の良好な仕上面を得ることができる。工作物が回転し
ないと、平面定盤の運動方向への方向性のある10nmを越える粗さの条痕が形成される
。よって、本発明の方法によれば、研磨条痕が付かない超平滑面を得ることができる。
本発明の直型研磨加工方法は、次のような効果がある。
1)回転型研磨加工方法よりも、省スペ−スの研磨装置の製作が可能である。
2)従来の回転型研磨定盤を使用した研磨法では実現が難しかった、工作物を連続的に装
置に送り込む自動研磨加工システムの構築が可能である。
3)回転面が垂直方向の縦型の両面自動研磨システムの製作が可能であり、装置周辺の空
間を有効に利用できる。
図1に示すポリシングの場合の例に基づいて、本発明の直型研磨加工方法の原理を説明
する。本発明によるポリシング方法は、平行に隣接した1組のポリシャ11を平行平面定
盤A,Bとして用いる。1組のポリシャ11は、隣接中心線を挟んで、互いに反対方向に
Vの速度で直線運動を行う。1組のポリシャ11の両方に接触させるように、回転に対す
る拘束がほとんど無いホルダ14内に収容された工作物3を圧力Pで押しつける。これに
より、工作物3に回転運動のための偶力を与える。ポリシャ11上には遊離砥粒を含む研
磨液を供給する。そして、工作物3の回転と直線運動するポリシャ11の相対運動により
、工作物3の表面を遊離砥粒で除去し、表面を高平滑にする。
本発明の方法は、基本的に工作物の回転を定盤やポリシャの運動方向や表面構造を利用し
て行う方法であるが、モ−タ等からの動力によって工作物を回転させ、定盤やポリシャと
の相対運動を調整して、研磨することも出来る。この方法を用いる研磨装置では、1組の
ポリシャ11の各幅を加えた幅が工作物3の直径よりも幾分か大きくなれば、研磨加工が
出来るので、回転型研磨定盤よりもスペ−スが小さくてすむ。
また、この方法で工作物の両面をポリシング加工する場合は、図2に示すように、互いに
Vの速度で反対方向に直線運動を行う2組の平行平面ポリシャ11間に挟んで工作物3を
置く。そして、ポリシャ11を金属やセラミック等で製作した工作物支持台(図示せず)
を介して、圧力Pで上下から押し付け、ポリシャ11の表面に工作物3の表面を接触させ
ることにより工作物3に回転運動のための偶力を与え、ポリシャ11上には遊離砥粒を含
む研磨液を供給する。これにより、工作物3の上下の表面を遊離砥粒で除去し、表面を高
平滑にする。ポリシャ11は、ベルト型のポリシャを用いることにより連続的に研磨位置
にポリシャ11を供給することができる。
さらに、図2に示す方法において、図3に示すように、円板状穴を工作物保持穴として持
つ長尺の板状のキャリア13に工作物3を保持し、キャリア13を研磨の進行につれて徐
々にいずれか一方向へ引き出すように移動するようにすれば、工作物の両面研磨加工の連
続的な自動化も可能になる。加えて、図3に示すような回転面が水平方向の横型の両面研
磨加工方法を、回転面が垂直方向の縦型の両面研磨加工方法にすることも容易に可能であ
り、装置周辺の空間を有効に利用した、両面研磨加工システムも出来る。
図1から図3に示した研磨方法で、キャリア13の工作物保持穴が1組の平行平面定盤
,Bの隣接中心線上にある場合は、磁気ディスク基板のように中心穴がある工作物では
問題がないが、シリコンウエハ−のように中心穴がない工作物では、中心部がポリシャ
11と接触しないので、中心部は研磨が出来ない。そこで、図4に示すように、1組の平
行平面定盤A,Bの隣接中心線上から離れた位置に、回転中心を有する円形穴を有するサ
ブキャリア13Aを、板状のキャリア13内に入れることにより、工作物3の全面が研磨
できる。
サブキャリア13A内の穴の形状は、円形以外に正方形、長方形、多角形等でも研磨が可
能である。また、穴のない円形工作物の場合には、サブキャリア13Aを用いずに、キャ
リア13内の工作物の穴中心を、隣接中心線上から離れた位置にすることでも、工作物3
の全面の研磨が可能となる。
また、サブキャリア13Aの回転中心の周りに、図5に示すように、サブキャリア13A
の回転中心から離れた位置に、2個以上の工作物保持穴をもつサブキャリア13Aを用い
れば、工作物穴の有無に関わらず、工作物3の表面の全面の研磨が出来る。この方法は、
大量の工作物を研磨するのに適している。
図6、図7は、本発明の研磨方法及びその実施に用いる装置の別の実施形態を示す概念図
である。直線運動を行う直型定盤の表面の摩擦力を直線運動方向に対して直角方向に異
ならせ、該直型定盤に工作物を押しつけることによって工作物に回転運動のための偶力
を与えることができる。
この方法によるポリシング加工は、図6に示すように、上下1組の平面定盤として、互い
にVの速度で反対方向に直線運動を行うベルト型のポリシャ11,11間に挟んでキャリ
ア13に保持した工作物3を置き、ポリシャ11,11を圧力Pで上下から押し付け、ポ
リシャ11,11の表面に工作物3の表面を接触させて片面又は両面研磨を行う方法であ
る。
ポリシャの長さ方向中心線の左右でポリシャの表面状態が違うようにして、摩擦力が異な
るようにする。例えば、長さ方向中心線に対して片側のポリシャ11表面に円形状穴や直
線状の溝をつけることにより、該片側の工作物とポリシャ11との接触面積を小さくす
ることにより、他方の側より摩擦力を小さくすることが出来る。また、ポリシャ11表面
の硬度のような機械的特性をポリシャ11の長さ方向中心線の左右で変えることによって
も、左右での工作物とポリシャ11との接触状態が変わるので、左右での摩擦力を変え
、偶力を与えることが可能である。
こうすることにより、工作物3に回転運動のための偶力を与える。ポリシャ11上には遊
離砥粒を含む研磨液を供給する。そして、工作物3の回転と直線運動するポリシャ11の
相対運動により、工作物3の上下表面を遊離砥粒で除去し、高平滑にしていく。この方法
は、図7に示すように、Vの速度で同方向に直線運動を行うベルト型ポリシャ11、11
を用いても同様に研磨を行うことができる。
図6、図7には、直線運動型平面定盤を対向させて、その間に工作物を挟んで片面又は両
面研磨を行う態様を示しているが、Vの速度で直線運動を行う単一のポリシャに工作物を
押しつけることによって工作物に回転運動のための偶力を与え、その回転とポリシャの直
線運動との相対運動により研磨を行うこともできる。
以下に本発明の方法の実施例を図8を参照して示す。図8に示すように、工作物支持台上
を通過する1組の隣接したベルト型ポリシャA,Bを、それぞれモータM1とM2により
互いに逆方向に直線運動により循環させた。1組のポリシャの隣接中心線を挟む両側表面
上に、工作物として円板状の磁気ディスク基板を押しつけて、ポリシングを行った。砥粒
としては、アルミナ砥粒をベルト型ポリシャA,B上に一様に供給した。押しつけ圧力は
、3.7kPaであり、ポリシャの移動速度は、1.5m/sであり、ポリシャはスエ−ドタイプであ
る。磁気ディスク基板は、アルミニウムタイプであり、研磨時間は、5minとした。その結
果、磁気ディスク基板は偶力により少なくとも0.15m/s以上の速度で回転し、直線運動す
るポリシャA,Bとの相対運動により、砥粒が基板を研磨し、基板が平滑化された。
図9は、ポリシングにより得られた磁気ディスク基板の表面の平滑度を光干渉式高精度表
面測定器(WYKO)による三次元粗さ測定結果により示している。磁気ディスク基板表面は
、ポリシングにより非常にきれいに研磨され、Ra値で、約1.3nmの超平滑面に達しており
、本発明の直進型研磨方法の有効性が示されている。
本発明の直進型研磨方法の原理を示す模式図である。 本発明の直進型両面研磨方法の実施形態を示す模式図である。 本発明の直進型両面研磨方法による連続自動加工法を示す模式図である。 図3に示す連続自動加工法の変形態様を示す模式図である。 図3に示す連続自動加工法の別の変形態様を示す模式図である。 本発明の直進型両面研磨方法の別の実施形態を示す模式図である。 図6に示す直進型両面研磨方法の変形態様を示す模式図である。 実施例で用いた、直進型研磨装置の斜視図である。 実施例で研磨した磁気ディスク基板の光干渉式高精度表面測定器(WYKO)による三次元粗さ測定結果を示す図面代用写真である。 従来の研磨加工(ポリシング加工の例)の原理を示す模式図である。
3 工作物
10 研磨定盤
11 ポリシャ
12 遊離砥粒
13 キャリア
14 ホルダ
15 研磨液

Claims (6)

  1. 平行に隣接し、互いに反対方向に直線運動を行う1組の平行平面定盤の両方に、工作物を押しつけることにより、工作物に回転運動のための偶力を与え、その回転と直線運動をする該1組の定盤との相対運動により、工作物を砥粒で研磨する直進型研磨方法。
  2. 1組の平行平面定盤を別の1組の平行平面定盤と対向させて、その間に工作物を挟んで片面又は両面に研磨することを特徴とする請求項1記載の直進型研磨方法。
  3. 直進運動を行う単一の平面定盤の表面の摩擦係数を直進運動方向に対して直角方向に異ならせ、該平面定盤に工作物押しつけることにより、工作物に回転運動のための偶力を与え、その回転と直線運動をする該単一の平面定盤との相対運動により、工作物を砥粒で研磨する直進型研磨方法。
  4. 前記平面定盤を別の平面定盤と対向させて、その間に工作物を挟んで片面または両面を研磨することを特徴とする請求項3記載の直進型研磨方法。
  5. 円板状のサブキャリアで固定された工作物を、円板状穴を持つ長尺の板状のキャリアで保持し、キャリアを研磨の進行につれて徐々に一方向へ引き出しながら、連続的に研磨加工することを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載の直進型研磨方法。
  6. 請求項1ないし5のいずれかに記載の研磨方法において、平面定盤に代えて工作物支持台上を通過するベルト型のポリシャを用いることを特徴とする直進型研磨方法。
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