JP4470137B2 - 燃料噴射弁 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は気体または液体の燃料をエンジンに供給するために用いられる電磁駆動の燃料噴射弁に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
エンジンの運転状態に応じて電子式制御装置から送られる電気信号の通電時に電磁力による開き動作を弁体に行なわせ、非通電時に戻しばねのばね力による閉じ動作を弁体に行なわせることにより気体燃料または液体燃料を断続的に噴射する燃料噴射弁において、エンジンに供給する燃料流量を正確に制御するためには電気信号のオン・オフに弁体が鋭敏に応答すること、および閉弁時に弁体が弁座に完全に着座すること、が必要である。
【0003】
そのために、戻しばねを円板状の板ばねとし、その外側周縁部を固定して中心に可動鉄心と弁体とを固着させ、可動鉄心および弁体が摺動部分をもたずに浮遊状態で往復動するようにして応答性の改善を図ったものが、例えば特開平9−79107号公報に記載されている。また、弁体の当り面および弁座のシート面の少なくとも一方をゴムまたは合成樹脂で作り、弁体が弁座に着座したときゴムまたは合成樹脂を圧縮変形させること、および弁座のシート部を弁体に向かって突出した形状とし、ゴムまたは合成樹脂が圧縮変形することによって完全に着座し燃料の流れを遮断させること、は周知の手段である。
【0004】
図3は前記の弁体と弁座の主要部分を示す縦断面図であって、板ばね51の中心に可動鉄心52と弁体53とが一体に固着されている。弁体53の弁座55と向かい合った端面にはゴムまたは合成樹脂で作られた薄板状の弾性部片54が焼付け、接着などにより積層されていて、その表面が当り面を形成している。一方、弁座55の弁体53と向かい合った面の中心部には弁通孔56を囲んだ環突起57が突出形成されていて、その端面はシート面を形成している。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】
前記の弾性部片54は閉弁時に弁座55の環突起57に接触した後に食込んで圧縮変形し、開弁時に環突起54から離れて原形状に復元する、という動作を繰り返すため、長期間使用すると次第に劣化して弾性力を低下し、圧縮永久歪みを生じて原形状に完全復元しなくなる。このため、弁体53のストロークが大きくなって応答性の低下や燃料流量の増加を招くばかりか、弾性力の低下が進行すると亀裂の発生、一部剥離などの破損状態に至り、閉弁時に燃料の流れを遮断できなくなる、という心配がある。
【0006】
本発明は閉弁時に燃料の流れを完全に遮断して制御性の向上を計るために設けた弾性部材が、長期間使用すると圧縮永久歪みを生じて応答性の低下や燃料流量の増加を招くばかりか、完全閉弁機能を失うに至る心配がある、という前記課題を解決するためになされたものであって、圧縮永久歪みを一定値以上増大させず、従って応答性の低下や燃料流量の増加を最小限にとどめて燃料流量制御に対する信頼性を損わないものとすることを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明は可動鉄心と一体に動作する弁体が電気信号の通電時に電磁力によって弁座から離れる開き動作を行ない、非通電時に戻しばねのばね力によって弁座に着座する閉じ動作を行なう燃料噴射弁であって、弁座の弁体と向かい合った面に弁通孔を囲んだ環突起が設けられ、環突起の先端面が弁体の端面に形成されている当り面を着座させるシート面を形成していて、当り面およびシート面の少なくとも一方が弾性材料で作られているものがもっている前記課題を、次のようにすることによって解決した。
【0008】
即ち、弁体の当り面外側方および弁座の環突起外側方の互いに向かい合った部分が金属で作られており、そしてこの向かい合い部分は閉弁時に弾性部材の圧縮永久歪みが一定値以内のときは互いに接触しないが一定値に達したとき互いに接触して弁体のストロークを制限するストッパとして働くものとした。
【0009】
弾性部材は閉弁の都度圧縮変形し、長期間使用すると弾力性が次第に低下して圧縮永久歪みを生じるようになるが、これが一定値に達するまでは食込みによって弁通孔を閉止し燃料流れを遮断させる。圧縮永久歪みが一定値となったとき弁体と弁座のストッパ部分が互いに接触して弁体のそれ以上の閉じ動作を阻止し、弾性部材にそれ以上の圧縮永久歪みを生じさせることなく、従って弾性力をそれ以上に低下させることなく弁通孔閉止作用を行なわせ、亀裂の発生や一部剥離などの破損状態に至らせることなく長期間に亘って燃料流れを安定よく且つ確実に遮断することができる。
【0010】
また、圧縮永久歪みが小さい段階でストッパ部分が互いに接触するように設定することにより、応答性の遅れや燃料流量の増加を許容範囲内の最小限にとどめて制御に対する信頼性を損わせない、という目的が容易に達成される。
【0011】
尚、弁体および弁座のストッパ部分の少なくとも一方を表面硬化処理しておくことにより、これらが接触するようになったとき弁体のストローク増大が完全に阻止され、更に長期間に亘る安定した燃料流量制御が可能となる。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態を図1に基いて説明すると、コイル1を保持して外ケース3に内装されたコイルホルダ2の中心に固定鉄心5が基端を外ケース3の外部に突出させた貫通状態で保持されている。また、コイルホルダ2の先端前方にはスペーサプレート6,板状の戻しばね7,弁座ホルダ8が外側周縁部を互いに重ね合わせて配置されており、これらは外ケース3の先端部を折り曲げて形成したかしめ部4に外側周縁部を挟み込むことによってスペーサプレート6をコイルホルダ2に隣接させた状態で固定されている。
【0013】
戻しばね7の中心にはその基端側表面に重ねた筒部片11に載せた可動鉄心12と、先端側表面に重ねた弁体14とが配置されており、弁体14の中心に突設した軸片15が戻しばね7,筒部片11,可動鉄心12に挿通され軸端の拡開部15aによってこれらを一体に固着している。
【0014】
スペーサプレート6は環状であって、その中心孔に可動鉄心12が緩く嵌め込まれており、固定鉄心5の先端面と向かい合った可動鉄心12の基端面にはゴムなどの弾性材料で作られた薄板状の緩衝層13が焼付けなどによって積層されている。この緩衝層13は、コイル1への電気信号通電時に形成される磁気回路によって可動鉄心12が固定鉄心5に吸引されたときの衝突音低減と所定の開放電圧確保に役立つ。
【0015】
弁座ホルダ8は燃料通孔9を有するとともに中心に弁体14と反対の方向へ突出させた噴射筒10を有しており、噴射筒10に弁座20を嵌装固定して保持している。
【0016】
弁体14は金属製であって、その弁座20と向かい合った面の中心部には、ゴムまたは合成樹脂で作られた円形平板状の弾性部材16が焼付け、接着などの適宜手段によって重ね固着されているとともに、その外側方には先端面を弾性部材16の表面である当り面17よりも前方に位置させた環状の突出片18が一体成形により形成されている。
【0017】
弁座20は金属製であって、その弁体14と向かい合った面の中心部には、弁通孔21の入口を囲んだ環突起22が一体成形により突出形成されており、その先端面は当り面17を着座させるシート面23を形成しているとともに、環突起22の外側方の平面部分は突出片18の先端面を接触させる受部24を形成している。突出片18は、閉弁時に弾性部材16が環突起22に食込んで生じた圧縮変形が開弁時に完全復元する状態を繰り返しているときは閉弁時に受部24に接触しないように僅かな隙間を有している。
【0018】
長期間使用して弾性部材16が劣化により弾性力を低下し圧縮永久歪みを生じて当り面17が後退したとき、弁体14は閉弁時にこの圧縮永久歪みによって減少した厚み分に加えてこれより更に弾性部材16を圧縮変形されるストロークを行なうこととなり、弁体14のストロークが次第に増大する。弁体14のストロークが増大すると、閉弁時における突出片18と受部24との微小隙間は更に小さくなって接触するに至り、以後はこれらが接触した位置に弁体14が停止してそれ以上の閉弁方向ストロークは阻止される。
【0019】
即ち、突出片18と受部24とは弾性部材16の圧縮永久歪みが一定値以内のときは互いに接触しないが、一定値となったとき接触して弁体14のストロークを制限するストッパ25を形成するものである。従って、圧縮永久歪みが小さい段階でこれらが接触するように寸法を設定することにより、弁体14のストローク増大に伴う応答性の低下や燃料流量の増加を許容範囲内の最小限にとどめることができる。また、ストッパ25は弾性部材16の環突起22への食込みを弾性変形の範囲内に制限し、弾性部材16の劣化を大幅に遅延することができる。
【0020】
尚、突出片18および受部24の互いに向かい合った表面の両方またはいずれか一方は浸炭処理、窒化処理または浸炭窒化処理による表面硬化処理を施すことがある。このようにすると、これらが接触する閉弁時の衝撃で表面が変形し弁体14のストローク増大防止機能を低下させる、という心配が解消され、更に長期間に亘る安定した燃料流量制御が可能となる。
【0021】
図1の実施の形態において、所定圧力に調整された燃料は弁座ホルダ8の先端側空間に送入され、これより燃料通孔9を通って弁座ホルダ8の基端側空間に入り、弁体14が弁座20から離れた開弁時に弁通孔21から噴射筒10を通ってエンジンの吸気管路内に噴射される。戻しばね7は円板状の板ばねに複数個の通孔を設けたもの、またはばね線材を少しの隙間を与えてうず巻き状態に巻いて板状に形成したものであり、通孔や隙間は戻しばね7の両側の空間を連通して圧力差を生じさせない構造となっていて、電気信号の非通電時に弁体14を適確に閉じ方向へ動作させることができる。
【0022】
図2(A),(B)は弁体14と弁座20の異なる実施の形態を示す部分図であって、(A)は金属製の弁体14の弁座20と向かい合った面の中心部をそのまま当り面17Aとするとともにその外側方に環状の突出片18Aを一体成形により形成して有しているものとし、金属製の弁座20の弁通孔21Aの入口を囲んだ環突起22Aの先端部分をゴムまたは合成樹脂で作った環状の弾性部材16Aで形成してその先端面をシート面23Aとするとともに環突起22Aの外側方の平面部分を受部24Aとしたものである、また、(B)は金属製の弁体14の弁座20と向かい合った面を一つの平面に形成してその中心部に図1に示した形態と同様の弾性部材16Bを重ね固着してその表面を当り面17Bとするとともにその外側方を押当部18Bとし、金属製の弁座20の弁通孔21Bの入口を図1に示した形態と同じ環突起22Bで囲んでその先端面をシート面23Bとするとともに環突起22Bを囲んでその外側方に複数の柱状乃至ブロック状の受部片24Bを突出形成したものである。
【0023】
図2(A)に示したものは、弁座20の弾性部材16Aが閉弁時に弁体14の当り面17Aで押されて圧縮永久歪みを生じ、これが或る値となったとき突出片18Aが受部24Aに接触し、これらがストッパ25Aとなって弁体14のそれ以上の閉じ方向動作を阻止する。図2(B)に示したものは、弁体14の弾性部材16Bが閉弁時に環突起22Bに食込んで圧縮永久歪みを生じ、これが或る値となったとき当接部18Bが受部片24Bに接触し、これらがストッパ25Bとなって弁体14のそれ以上の閉じ方向動作を阻止する。
【0024】
本発明は前記実施の形態に限らず、弁体の当り面および弁座のシート面をともに弾性部材で作ったものについても適用され、また弾性部材の圧縮永久歪みが一定値となったときストッパとして働く部分は、弁体および弁座の両方に互いに向かい合わせて設けた突出部分によって形成するなど任意のものとすることができ、且つこれらの互いに接触する表面部分を硬化処理すれば信頼性を更に向上することが可能となる。
【0025】
【発明の効果】
以上のように、本発明によると閉弁時の燃料遮断性を良好にするため弁体および弁座のいずれかまたは両方に設けた弾性部材の圧縮永久歪みが一定値を越えないため、亀裂の発生や一部剥離を生じて完全閉弁機能を失うに至るという心配が完全に解消されるばかりか、弁体のストローク増大に伴う応答性の低下や燃料流量の増加を許容範囲内の最小限にとどめて燃料流量制御を長期間良好に維持し、高い信頼性を与えることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施の形態を示す一部拡大した縦断面図。
【図2】(A),(B)は本発明のそれぞれ異なる実施の形態を示す縦断面部分図。
【図3】従来例を示す縦断面部分図。
【符号の説明】
5 固定鉄心, 7 戻しばね, 12 可動鉄心, 14 弁体, 16,16A,16B 弾性部材, 17,17A,17B 当り面, 20 弁座,21,21A,21B 弁通孔, 22,22A,22B 環突起, 23,23A,23B シート面, 25,25A,25B ストッパ,
Claims (2)
- 可動鉄心と一体に動作する弁体が電気信号の通電時に電磁力によって弁座から離れる開き動作を行ない、非通電時に戻しばねのばね力によって前記弁座に着座する閉じ動作を行なう燃料噴射弁であって、前記弁座の前記弁体と向かい合った面に弁通孔を囲んだ環突起が設けられ、前記環突起の先端面が前記弁体の端面に形成されている当り面を着座させるシート面を形成していて、前記当り面およびシート面の少なくとも一方が弾性部材で作られているものにおいて、前記弁体の前記当り面外側方および前記弁座の前記環突起外側方の互いに向かい合った部分が金属で作られており且つ前記弁体または弁座の互いに向かい合った部分の前記弁座の弁通孔を囲んだ環突起の外側において前記弁座または弁体に互いに当接する環状の突出片が形成されており、そして前記向かい合い部分は閉弁時に前記弾性部が前記環突起に食込んで生じた圧縮変形が開弁時に完全復元する状態を繰り返している圧縮永久歪みが一定値以内のときは閉弁時に受部に接触しないように僅かな隙間を有して前記環状の突出片が前記弁体または弁座の互いに向かい合った部分に互いに接触しないが、前記圧縮永久歪みが一定値に達したとき互いに接触して前記弁体のストロークを制限するストッパとして働くようにされて圧縮永久歪みを一定値以上増大させない、ことを特徴とする燃料噴射弁。
- 前記環状の突出片が弁座側に形成されている請求項1に記載した燃料噴射弁。
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