JP4469354B2 - 溶接熱影響部の靭性に優れる引張強さ780MPa級高強度鋼材の製造方法 - Google Patents

溶接熱影響部の靭性に優れる引張強さ780MPa級高強度鋼材の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、建築、造船、橋梁および土木等の各分野に用いられる、溶接熱影響部の靭性に優れる引張強さ780MPa級高強度鋼材に関する製造方法に関するものである。
近年、船舶や建築物等の鋼構造物の大型化に伴い、使用される鋼材の高強度化が進行している。高強度鋼材を使用することで、鋼材の使用量を減らすことができるため、構造物内の空間の拡大や重量の低減といったメリットが得られる。
従来、高強度鋼材を製造するにあたっては、実製造上で安定的に強度と靭性を得るために、加速冷却による焼入れを行った後に焼戻し熱処理を行う方法にて製造するのが一般的である。例えば、特許文献1には、鋼板を圧延後、オンラインで焼入れし、その後オフラインで焼戻し熱処理を行う発明が開示されている。また、特許文献2には、鋼板を圧延後、焼入れし、その後オンラインで焼戻し熱処理を行う発明が開示されている。
また、生産性向上のために、焼戻し熱処理自体を省略する製造プロセスの開発も行われている。例えば、特許文献3には、高強度鋼材を製造する方法において、熱間圧延をAr3点以上、800℃以下で終了し、その後450℃以上、540℃以下の温度範囲まで加速冷却を行う発明が開示されている。また、特許文献4には、高強度鋼材を製造する方法において、1020℃未満、920℃超の範囲で累積圧下率が15%以下となるように圧延を行い、920℃以下、860℃以上の範囲で累積圧下率が20%以上、50%以下となるように圧延を行い、その後800℃以上から加速冷却を行い、700℃以下、600℃以上の範囲で加速冷却を停止する発明が開示されている。また、特許文献5および6には、熱間圧延をAr3点以上で終了し、その後平均冷却速度20℃/秒で冷却を行う発明が開示されている。また、特許文献7には、高強度鋼材を製造する方法において、1000℃以上、1250℃範囲で累積圧下率が30%以上の圧延を行い、仕上圧延をAr3点以上で行う発明が開示されている。
さらに、焼戻し熱処理だけでなく、加速冷却も省略し、熱間圧延ままで高強度鋼材を製造する方法の開発も行われている。例えば、特許文献8には、高強度鋼材を製造する方法において、熱間圧延を600℃超、700℃未満にて終了する発明が開示されている。また、特許文献9には、高強度鋼材を製造する方法において、熱間圧延を800℃以上で終了する発明が開示されている。また、特許文献10には、高強度鋼材を製造する方法において、Ar1+10℃以上、Ar3−10℃以下で累積圧下率16%以上、30%以下の圧延を行い、さらにAr1+10℃以上、Ar1+50℃以下の範囲で仕上圧延を行ない、その後空冷する発明が開示されている。また、特許文献11には、高強度鋼材を製造する方法において、熱間圧延を950℃以上で終了する発明が開示されている。また、特許文献12には、高強度鋼材を製造する方法において、オーステナイト部分再結晶温度域で全圧下量の50%以上を熱間圧延し、その後冷却する発明が開示されている。
特開平05−171272号公報 特開2002−317227号公報 特許第2776174号公報 特開2005−126819号公報 特開2004−052063号公報 特開2004−084019号公報 特開2003−147477号公報 特公昭62−001457号公報 特開平08−144019号公報 特開平08−188823号公報 特開平10−219390号公報 特開2005−226158号公報
しかしながら、上記の特許文献1に記載の発明では、鋼板の製造過程においてオフラインでの焼戻し熱処理が必要であり、そのために生産性の低下が避けられないという問題がある。また、特許文献2に記載の発明では、誘導加熱による急速加熱を行うことでオンラインでの焼戻し熱処理を実現しており、強度範囲によらず生産性向上が図れる点において有利であるが、紹介されている誘導加熱炉の導入に非常に大きな設備投資が必要であるという問題がある。また、特許文献3に記載の発明では、実施例によると、80k級の強度を得るためにはC量を0.10%添加する必要があり、そのために溶接熱影響部の靭性が低下すると考えられる。また、C量が多いために、加速冷却の冷却速度や停止温度の変動により鋼板の強度が大きく変動することが予想され、実製造プロセスへの適用は困難と考えられる。また、特許文献4に記載の発明では、加速冷却の冷却速度や停止温度の変動による強度の変化を抑えるために、C量を0.03%以上、0.07%以下に制限しており、加速冷却を用いる場合は高い生産性で製造が可能であるが、該当成分系で加速冷却を用いない場合は、熱間圧延の仕上温度を低くする必要があり、生産性が低下するという問題がある。また、特許文献5に記載の発明では、C量を0.03%以下に制限する等、合金元素を低減しており、溶接熱影響部の靭性では有利と考えられるが、20℃/秒以上の平均冷却速度による加速冷却が可能な、板厚20mm以下の鋼板を対象としており、さらに厚い板厚のもの、および、オンラインでの加速冷却を行うと形状が悪化するために加速冷却が実製造上困難になると思われる板厚10mm程度以下の薄手材に対しては、適用できないプロセスである。また、特許文献6に記載の発明では、熱間圧延後の加速冷却を20℃/秒以上の平均冷却速度で行うことを規定しており、特許文献5と同様の問題を抱えている。また、特許文献7に記載の発明では、C量を0.05%以上に規定しており、溶接熱影響部の靭性が低下すると思われる。また、特許文献8に記載の発明では、C量を0.03%未満に規定しており、溶接熱影響部の靭性には優れると思われるが、合金添加量が低く、また熱間圧延を800℃以上で終了していることもあり、780MPa級の強度は得られていない。また、特許文献9に記載の発明では、C量を0.10%以上、0.20%以下に規定しており、C量が多いために溶接熱影響部の靭性が低下することや、Mo量を0.10%以上、0.80%以下、Bを0.0005%以上、0.0015%以下添加することを規定して、必要以上に焼入れ性を高めており、Ar3点が低くなるために、鋼板の温度が2相域温度に下がるのを待つ時間が長くなり、生産性が必要以上に低下するという問題がある。また、特許文献10に記載の発明では、C量を0.10%以上、0.20%以下に規定しており、溶接熱影響部の靭性が低下すると思われる。また、熱間圧延を950℃以上で終了することを規定しており、そのために、焼戻し熱処理を行わず熱間圧延ままとする場合は、必要以上にYSが低くなるという問題がある。また、特許文献11に記載の発明では、熱間圧延後に冷却を行うとあるが、この冷却に関しては、実施例によると、全て加速冷却を用いなければ実現不可能な冷却速度で行われており、空冷では充分な強度は得られないと考えられる。また、特許文献12に記載の発明では、強度確保のためにNi量を0.40%以上、Cr量を0.30%以上、且つMoを0.10%以上、とそれぞれ規定しており、合金コストが高いという問題がある。
そこで、本発明は、上記の問題点を有利に解決して、従来に無い低合金成分且つ高い生産性にて、溶接熱影響部の靭性に優れる引張強さ780MPa級高強度鋼材の製造方法を提供することを目的とするものである。
本発明者らは、引張強さ780MPa級高強度鋼材を製造方法に関し、熱間圧延後に空冷することで高い生産性を確保できる製造方法について、実験と解析を通して鋭意研究開発を重ねてきた。その結果、鋼のYSおよびTSを支配する因子を明確化し、従来と比べて高い生産性、低合金成分にて、高強度鋼材を製造するための知見を得た。
すなわち、引張強さ780MPa級以上の高強度鋼材を製造するにあたり、熱間圧延ままで650MPa以上の高いYSをも同時に実現するためには、Ar3点前後の温度における制御圧延による、フェライトまたはベイナイト組織の細粒化強化だけでなく、Ar3点以下でのフェライト、ベイナイト、およびパーライト等の変態後の組織を圧延することによる加工強化の方が、実製造上、コスト的に有利である。
加速冷却を用いない熱間圧延ままの製造プロセスで高強度鋼を製造する際には、空冷の冷却速度でもベイナイト・マルテンサイト変態による組織強化を得るために、焼入れ性を高める合金元素を大量に添加することや、析出強化や固溶強化を利用するための合金元素を大量に添加することが行われてきた。これらの指針により、確かに高いTSを実現することは可能であるが、このような高合金組成の鋼を熱間圧延すると、島状MAが製造鋼中に多量に生成するためにYSが低下して必要以上に低降伏比となる。そのため、YSを確保するために必要以上の合金元素の添加が必要になっていた。また、焼入れ性を高める合金元素を多量に添加する程Ar3変態点が下がるため、熱間圧延プロセスにおける効果的な強度確保手法である、細粒化強化や二相域圧延による加工強化を利用する際には、鋼片の温度低下を待つ時間が長くなり、生産性の点でも問題となっていた。その他、圧延温度の低下に伴い、鋼材の音響異方性が増大するという問題もある。
さらに、先に述べたように、島状MAによる上降伏点の消失等の問題にあたっては、本発明者らの検討により、Ar3点が高い成分系である程、Ar3点以下での二相域圧延を行った際の上降伏点の回復が大きいことが分かっている。
本発明者らは、以上のような知見を基に、780MPa級以上の高強度鋼材を従来にない低合金系且つ高い生産性で製造するための成分系について詳細に検討を重ねた。その結果、引張強さ780MPa級高強度鋼材を加速冷却を用いない熱間圧延ままのプロセスにおいて製造するためには、従来の高強度鋼の成分設計とは異なり、焼入れ性を向上する元素の添加を極力避けてAr3点を上昇させること、および島状MAの生成を抑制すること、さらに、Ar3点以下での強化量を増大させるために、フェライトおよびベイナイト中での加工誘起析出の速度が速い合金元素を積極的に利用することが有効であるとの結論に至った。
本発明者らは、このような知見に従い、引張強さ780MPa級高強度鋼材において、Ar3点を従来の高強度鋼材が想定していないレベルまで高温化するための成分組成、熱間圧延の必要条件等、必要な特性を満足するための具体的要件を鋭意検討し、引張強さ780MPa級の強度を達成するのみならず、従来に無い低合金成分且つ高い生産性にて、良好な溶接熱影響部の靭性を得ることのできる本発明を成すに至った。
本発明の要旨は以下に述べる通りである。
(1) 質量%で、C:0.005%以上、0.030%未満、Si:0.05%未満、Mn:1.0%以上、2.5%以下、Nb:0.02%以上、0.08%以下、Al:0.001%以上、0.10%以下、N:0.0001%以上、0.01%以下を含有し、さらに、Cr:0.01%以上、2.0%以下、Ti:0.001%以上、0.05%以下、Cu:0.01%以上、2.0%以下、Mo:0.01%以上、1.0%以下、V:0.001%以上、0.050%以下、W:0.01%以上、3.0%以下の内の1種または2種以上を含有し、下記式1で表される溶接割れ感受性指数PCMが0.25以下であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼片を、1020℃以上、1300℃以下に加熱し、その後圧延するにあたり、1020℃以下、920℃超の範囲での累積圧下率を60%未満とし、Ar3点未満での累積圧下率を30%以上、95%以下となるように行い、圧延終了後冷却することを特徴とする、溶接熱影響部の靭性に優れる引張強さ780MPa級高強度鋼材の製造方法。
式1: PCM=[C]+[Si]/30+[Mn]/20+[Cu]/20+[Ni]/60+[Cr]/20+[Mo]/15+[V]/10+5[B]
なお、式1中の[ ]は各合金元素の添加量を質量%で表したものである。
) さらに、質量%で、Zr:0.001〜0.010、Ca:0.001〜0.010、Mg:0.001〜0.010、Hf:0.001〜0.010、REM:0.001〜0.010の内の1種または2種以上を含有することを特徴とする、上記(1)に記載の溶接熱影響部の靭性に優れる引張強さ780MPa級高強度鋼材の製造方法。
) さらに、Ac1点以下の温度で、焼戻し熱処理を行うことを特徴とする、上記(1)または(2)に記載の溶接熱影響部の靭性に優れる引張強さ780MPa級高強度鋼材の製造方法。
本発明によれば、溶接熱影響部の靭性に優れる引張強さ780MPa級の高強度鋼板を、合金元素の少ない経済的成分系と生産性の高い非調質の製造方法にて得ることが可能となり、その産業上の効果は計り知れない。
以下に、本発明における成分組成と圧延条件の限定理由について述べる。
まず、本発明においては、780MPa級の高強度鋼のYSおよびTSを確保するために、二相域圧延を積極的に利用することが目的であり、その加工誘起析出による強化、および生産性の向上を目的として、従来以上のAr3点の上昇、および成分組成と圧延条件を実現することが特徴である。
まず、本発明における熱間圧延条件について述べる。
本発明では、鋼片を1020℃以上1300℃以下に加熱し、その後圧延する。1020℃未満のオーステナイト中で長時間保持するとNbやTiが粗大析出してしまい、強度上昇に寄与しなくなるロスが大きくなるので、下限を1020℃とした。一方、本発明鋼の用途及び成分系から考えて、1300℃を超える温度で加熱する必要はなく、また1300℃を超える温度での加熱では不必要に鋼材表面の酸化を助長するので、上限を1300℃とした。
本発明では、Ar3点以下での圧延による加工誘起析出の最大限の利用を目指すため、フェライトおよびベイナイト中での析出が最も速いNbを析出強化元素として利用する。
フェライト、ベイナイト、またはオーステナイト中におけるNbの析出は、熱間圧延を行うによって促進される。しかし、高温のオーステナイト中での粗圧延中にNbの析出が起こると、この析出物は急速に粗大化し、鋼板製造後の強度上昇には寄与しない無駄な析出となることが、特許文献4に記載の発明により明らかにされている。従って、このオーステナイト中での粗大析出によるロスを最小限に抑えるためには、920℃超、1020℃以下の温度範囲での圧延を極力行わないことが好ましい。ところが、本発明では、焼入れ性の低下と溶接熱影響部の靭性向上のために特許文献4に記載の発明よりCの成分範囲を低く制限している。そのため、本発明では、Nb−Cの溶解度積から決まるオーステナイト中での固溶限界温度が低下しており、その結果、920℃超、1020℃以下での圧延も許容されるが、その許容される累積圧下量の上限は60%未満である。
Ar3点未満の温度域での圧下に関しては、その圧下量が大きい程強度が上昇するが、累積圧下量30%未満では650MPa以上のYSが得られないこと、および、95%超では強化が飽和することから、累積圧下量を30%以上、95%以下と規定する。
なお、本発明では、このAr3点以下の圧延による加工強化が大きく得られるように成分設計されているので、圧延後は空気中での放冷で構わないが、さらにこの後に加速冷却を行っても本発明の趣旨を損なうものではない。
この際、C含有量が少なく、NbもしくはTiの析出強化を利用しており、さらに島状MAの生成量が少ないため、本発明鋼は水冷停止400〜650℃の広い範囲で、YSおよびTSが安定する結果が得られる。但し、この加速冷却の停止温度は、強度上昇を得るために650℃以下に設定する必要がある。
さらに、熱間圧延後、空気中での放冷を行った後もしくは加速冷却を行った後に、焼戻し熱処理過程を行うことによりさらに強度を上昇させ、安定化することも可能である。この焼戻し熱処理の温度は、安定的な強度の確保の観点から、Ac1点以下に制限する必要がある。
以下に、本発明における成分組成の限定理由について述べる。
Cは、Ar3点の高温化のため、溶接部HAZ靭性の向上のため、および、オーステナイト中におけるNbの粗大析出を抑制するために、添加量を0.030%未満に抑える必要がある。なお、C添加量を0.005%未満に抑えると、Nb等の他の合金元素と形成する炭化物の析出量が低下し強度が不足するために、0.005%以上の添加が必要である。
Siは、島状MAの生成を促進しYSを下げるために、添加量を0.05%未満に制限する必要がある。より好ましくは積極的に添加せず、不可避不純物レベルとすることである。
Mnは、強度上昇に有効な元素であり、TSを確保するために1.0%以上の添加を行うが、Ar3点を低下させるので添加量を抑えることが望ましいため、2.5%以下と限定する。
Nbは、フェライトまたはベイナイト中での析出が速いために、Ar3点以下での加工誘起析出を得るために有効であり、また組織の細粒化にも寄与する。これらの効果を得るためには0.02%以上の添加が必要であるが、0.08%超の添加では溶接部HAZ靭性を著しく低下させること、および強化が鈍くなるので、上限を0.08%に制限する。
Alは、脱酸および加速冷却前のオーステナイト粒径の細粒化等に有効な元素であり、さらに、Ar3点を高温化する効果もあるため、0.001%以上を添加する必要があるが、0.10%を超えて添加すると粗大な酸化物の形成により延性・靭性を大きく低下させるため、0.001〜0.10%の範囲内とする。
Nは、AlやNbと結合して、オーステナイト粒の微細化や、フェライトまたはベイナイト中での析出強化に有効な元素であるために0.0001%以上を添加するが、多量の添加では固溶N量を増加させ靭性を劣化させるので、上限を0.01%に限定する。
Crは、強度上昇に有効な元素であり、明瞭な強度上昇を得るためには0.01%以上の添加が必要である。しかし、2.0%超の添加は溶接部HAZ靭性を低下させるため、Crを添加する場合は0.01%以上、2.0%以下の範囲とする。
Tiは、フェライトまたはベイナイト中での析出が速いために、Ar3点以下での加工誘起析出を得るために有効であり、組織の細粒化強化にも大きく寄与し、さらに、強いフェライト安定化元素でありAr3点を高温化することにも寄与する。これらの効果を発揮するためには0.001%以上の添加が必要であるが、0.05%超の添加では溶接熱影響部の靭性を著しく低下させることや強化が飽和することのために、Tiを添加する場合は0.001%以上、0.05%以下の範囲とする。
Cuは、空冷の冷却速度では焼入れ性を大きく上昇させず、また、析出強化と固溶強化をもたらすために強度上昇に有効な元素である。これらの効果を発揮するためには0.01%以上の添加が必要であるが、2.0%超の添加では溶接熱影響部の靭性を低下させるため、Cuを添加する場合は0.01%以上、2.0%以下の範囲とする。
Moは、組織強化による強度上昇に有効であり、明瞭な強度上昇を得るためには0.01%以上の添加を必要とするが、1.0%を超えて添加すると、残留MAの生成によりYSを下げること、および溶接熱影響部の靭性を著しく低下させること等の問題があるために、Moを添加する場合は0.01%以上、1.0%以下の範囲とする。
Vは、析出強化による強度上昇に有効であり、明瞭な強度上昇を得るためには0.001%以上の添加を必要とするが、0.050%を超える添加では溶接部HAZ靭性を低下させるため、Vを添加する場合は0.001%以上、0.050%以下に限定する。
Wは、固溶強化や組織強化により強度上昇に有効な元素であり、この効果を得るためには0.01%以上の添加を必要とするが、3.0%を超えて添加するとコストが高くなるため、Wを添加する場合は0.01%以上、3.0%以下の範囲とする。
Zr、Ca、Mg、HfおよびREMに関しては、脱酸や靭性の向上のために添加を行うことができる。これらの効果を得るためには0.001%以上の添加が必要であるが、コストの問題から上限を0.010%と制限する。従って、Zr、Ca、Mg、Hf、およびREMを添加する場合は、0.001%以上、0.010%以下の範囲とする。
なお、本発明による成分系は、Cをはじめ焼入れ性に寄与する元素の添加を極力避けているため、溶接の際の熱影響の靭性についても非常に良好な結果を示すものとなっている。
本発明は、鋼成分を上記のように定めることにより、Ar3点温度を十分に高温化し、析出強化量とのバランスを取ることが可能となる。
また、溶接割れ感受性指数PCMも0.25%以下の水準に抑えており、溶接割れも防止される範囲となっている。
式1: PCM=[C]+[Si]/30+[Mn]/20+[Cu]/20+[Ni]/60+[Cr]/20+[Mo]/15+[V]/10+5[B]
なお、式1中の[ ]は各合金元素の添加量を質量%で表したものである。
表1に示す成分組成の溶鋼を真空溶解炉にて作製しインゴット形に鋳造した。表1の空欄は、その成分を添加していないことを示す。その鋼片を、適宜圧延、鍛造、もしくは切断して、厚さ60〜500mmのスラブを作製し、そのスラブに対して、表2に示す条件の熱間圧延、加速冷却、および焼戻し熱処理を行い、厚さ6〜50mmの厚鋼板とした。
Ar3点温度は圧延方法によっても若干変動するが、本実施例の範囲であれば鋼成分のみによってほぼ確定することができる。表2に示すAr3点温度は、実験データ及び文献から校正した次の式に基づいて計算している。
Ar3=910−310×[C]−80×[Mn]−15[Nb]−50×[Ni]−80×[Mo]−15×[Cr]−20×[Cu]−15×[W]−1050×[B]+24.6×[Si]+700×[P]+60×[Ti]+190×[V]+40×[Al]
なお、式中の[ ]は各合金元素の添加量を質量%で表したものである。
Figure 0004469354
Figure 0004469354
これらの厚鋼板について、JIS Z 2241に準拠の引張試験を行いYSおよびTS等を測定した結果を表2中に示す。引張試験片はJIS Z 2201に準拠の13B号もしくは10号試験片を用いた。また、これらの厚鋼板について、JIS Z 3158準拠の斜めy型溶接割れ試験を行った結果を表2中に示す。また、これらの厚鋼板について、入熱10kJ/mmのサブマージアーク溶接時の熱影響部1mm位置(HAZ1)に相当する熱サイクルを与えたJIS Z 2202に準拠の2mmVノッチ試験片もしくはサブサイズ2mmVノッチ試験片を用いて−5℃にてシャルピー試験を行った結果を表2中に示す。なお、各特性の目標値は、YSが650MPa、TSが780MPa、溶接熱影響部靭性が吸収エネルギー47J以上、溶接割れ試験は割れないことである。
表1、表2の結果から、本発明法に従った成分組成および製造方法は、YS、TS、溶接割れ、および溶接熱影響部靭性など、全て良好な結果を示すことがわかる。これに対し、本発明鋼の範囲を逸脱する比較鋼は、YS、TS、溶接割れ、および溶接熱影響靭性などの基本特性が少なくとも一つ以上不充分であることが分かる。
また、表1と表2の結果を、Ar3点以下の圧下量を横軸に、YSおよびTSを縦軸に取ってプロットした結果を図1に示す。図1中では、本発明鋼は丸、比較鋼は三角にてプロットをしているが、本発明鋼は全て目標の強度範囲を満たす。比較鋼の場合は、強度範囲を満たさないか、もしくは、強度範囲を満たすものの、溶接熱影響部の靭性が悪かったものか、または溶接割れを起こしたものである。
本発明の実施例による鋼材のAr3点以下の累積圧下率とYS、TSの関係を示す図である。

Claims (3)

  1. 質量%で、
    C :0.005%以上、0.030%未満、
    Si:0.05%未満、
    Mn:1.0%以上、2.5%以下、
    Nb:0.02%以上、0.08%以下、
    Al:0.001%以上、0.10%以下、
    N :0.0001%以上、0.01%以下
    を含有し、さらに
    r:0.01%以上、2.0%以下、
    Ti:0.001%以上、0.05%以下、
    Cu:0.01%以上、2.0%以下、
    Mo:0.01%以上、1.0%以下、
    V :0.001%以上、0.050%以下、
    W :0.01%以上、3.0%以下
    の内の1種または2種以上を含有し、下記式1で表される溶接割れ感受性指数P CM が0.25以下であり、残部がFeおよび不可避的不純物からなる成分組成を有する鋼片を、1020℃以上、1300℃以下に加熱し、その後圧延するにあたり、1020℃以下、920℃超の範囲での累積圧下率を60%未満とし、Ar 3 点未満での累積圧下率を30%以上、95%以下となるように行い、圧延終了後冷却することを特徴とする、溶接熱影響部の靭性に優れる引張強さ780MPa級高強度鋼材の製造方法。
    式1: P CM =[C]+[Si]/30+[Mn]/20+[Cu]/20+[Ni]/60+[Cr]/20+[Mo]/15+[V]/10+5[B]
    なお、式1中の[ ]は各合金元素の添加量を質量%で表したものである。
  2. さらに、質量%で、
    Zr:0.001〜0.010、
    Ca:0.001〜0.010、
    Mg:0.001〜0.010、
    Hf:0.001〜0.010、
    REM:0.001〜0.010
    の内の1種または2種以上を含有することを特徴とする、請求項1に記載の溶接熱影響部の靭性に優れる引張強さ780MPa級高強度鋼材の製造方法。
  3. さらに、Ac1点以下の温度で、焼戻し熱処理を行うことを特徴とする、請求項1または2に記載の溶接熱影響部の靭性に優れる引張強さ780MPa級高強度鋼材の製造方法。
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JP2008261011A (ja) * 2007-04-12 2008-10-30 Nippon Steel Corp 溶接熱影響部の靭性に優れる降伏応力470MPa以上引張強さ570MPa以上の高強度鋼材の製造方法

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