JP4469103B2 - ゴルフクラブヘッド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、構え易さを向上しうるゴルフクラブヘッドに関する。
【0002】
【従来の技術及び発明が解決しようとする課題】
図6(A)〜(C)に示すように、例えばドライバー等のゴルフクラブは、初心者ゴルファや多くのアベレージゴルファにとっては打球時にフェース面fがスクエア(フェース面fが目標飛球線Aに対して直角)な状態にまで戻りきらず、フェース面fが開いた状態でボールbを打撃することが多く、ボールを掴まえるのが難しい。フェース面fが開いた状態で打撃を行った場合、打球はスライス回転のサイドスピンにより矢印B方向(右打ちの場合、右方向)にそれる。このようなミスショットには、近年のヘッドの大型化によるシャフト軸中心からヘッドの重心までの重心距離の増大や、シャフト長尺化、さらにはゴルファの技量などが影響している。
【0003】
上述のようなミスショットを軽減するために、図4、図5に示す如く、フェース面fに比較的大きなフック角βを設けフェース面fを最初から閉じた状態に設計することが行われている。フック角βは、ゴルフクラブヘッドaのシャフト中心線CLを第1の垂直面VP1内に配しかつこのヘッドのライ角αで水平面HPに対して傾けるとともにソール部gを水平面HPに載置した状態において、前記フェース面fのフェース巾W及びフェース高さHの中間となるフェース中央点Cを通りフェース面fに直交するフェース中央法線N1を含む中央の垂直面VPCと、前記フェース中央点Cを通り前記第1の垂直面VP1と直角な第2の垂直面VP2とがなす角度で表される。
【0004】
また従来のゴルフクラブヘッドaは、フェース面fの上縁faについても、フック角βに合わせて左を向くように構成されている。すなわち、前記第2の垂直面VP2が、前記フェース面fの上縁faに交わるフェース上縁中央点Eを通りフェース面fに直交するフェース上縁法線N2を含む上縁の垂直面VPEは、前記中央の垂直面VPCとほぼ平行に設定されている。
【0005】
しかしながら、前記フック角βが大きくなると、フェース面f、フェース面の上縁faがいずれも大きく左方向を向くため、実際の目標飛球線方向とのずれが生じるため、構えた際に違和感が生じやすい。また目標飛球線方向にフェース面fを合わせるための基準がとりづらく構え難くもなる。また多くのゴルファは、フェース面fを目標飛球線に合わせる際、最も目立ちやすいフェース面fの上縁fa、中でもフェース上縁中央点E付近を目標飛球線方向に対してスクエアに向けることもあることが判明した。しかし、フェース上縁中央点E付近を目標飛球線方向にスクエアに合わせると、フック角βを有するたフェース面fをわざわざ開いて構えることとなり、スライスの改善が全く図れない。
【0006】
本発明は、以上のような問題点に鑑み案出なされたもので、構えやすくかつスライスし難いゴルフクラブヘッドを提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明のうち請求項1記載の発明は、ボールを打撃するフェース面を具えるゴルフクラブヘッドであって、該ヘッドのシャフトが装着されるシャフト装着軸線を第1の垂直面内に配しかつこのヘッドのライ角αで水平面に対して傾けるとともに、前記フェース面のフェース巾及びフェース高さの中間となるフェース中央点を通りフェース面に直交するフェース中央法線を含む中央の垂直面と、前記フェース中央点を通り前記第1の垂直面と直角な第2の垂直面とがなす角度をヘッドのフック角βに合わせてヘッドを配したヘッド基準状態の平面視において、前記第2の垂直面が前記フェース面の上縁と交わるフェース上縁中央点を通りフェース面に直交するフェース上縁法線を含む上縁の垂直面は、打球方向に向かって前記中央の垂直面よりもトウ側に傾き、かつこの上縁の垂直面と前記中央の垂直面とがなす角度θを0.5〜5゜とし、しかも前記上縁の垂直面と前記第2の垂直面とがなす角度δは1.5゜以下であることを特徴とする。
【0008】
また請求項2記載の発明は、前記角度θが1〜3゜であることを特徴とする請求項1記載のゴルフクラブヘッドである。
【0009】
また請求項3記載の発明は、前記角度δは0.5〜1.5度である請求項1又は2記載のゴルフクラブヘッドであり、請求項4記載の発明は、前記角度δが0ではなく、かつ、前記上縁の垂直面は、第2の垂直面よりもヒール側に配される請求項1乃至3のいずれかに記載のゴルフクラブヘッドである。
【0010】
【発明の実施の形態】
以下本発明の実施の一形態を図面に基づき説明する。
図1は本実施形態のゴルフクラブヘッド(以下、単に「ヘッド」ということがある。)1のフェース面側からみたヘッド基準状態(後述)の正面図、図2はその平面図をそれぞれ示し、本例では右打ち用のものを例示している。
【0011】
図において、本実施形態のヘッド1は、内部に中空部(図示省略)を有する例えばドライバー、フェアウエイウッドを含むウッド型のものとして構成されており、ボールを打撃するフェース面2を前面に有するフェース部3と、ヘッド1の上面をなすクラウン部4と、前記フェース面2の下縁2bに連なりヘッド底面をなすソール部5と、前記クラウン部4とソール部5との間を継ぐサイド部6とを有するとともに、クラウン部4のヒールh側にシャフトSが差し込まれる本例では筒状のシャフト差込部7を突設形成したものを例示している。
【0012】
前記ヘッド内部の中空部は、完全に中空である場合の他、例えば合成樹脂材料、発泡体、流動体を充填することや、その他の重量調整材などを適宜配置することができる。またヘッド1は、前記シャフト差込部7の中心線7Cによって、後に差し込まれるシャフトSの軸中心線であるシャフト装着軸線CLを実質的に特定しうる。また本例のヘッド1は、例えばステンレス、アルミ合金、チタン、チタン合金、あるいはその他の各種の金属材料、さらには繊維強化プラスチックなど種々の材料の1種以上を用いて鍛造、鋳造、プレスといった種々の加工法を用いて形成することができる。
【0013】
また本実施形態のヘッド1は、例えばヘッド体積が250〜500cm3 程度、より好ましくは280〜450cm3 程度をなす。また本例のヘッド1は、ヘッド重心Gからシャフト装着軸線までの最短長さである重心距離GLが28〜40mm程度をなし、打球時にフェース面2が戻り難い大型ヘッドからなるものを例示している。また本実施形態のフェース面2は、フェースバルジ、フェースロールなどによって滑らかな3次元曲面で形成されたものを例示している。
【0014】
図1、図2に示す前記ヘッド基準状態とは、先ず該ヘッド1の前記シャフト装着軸線CLを第1の垂直面VP1内に配しかつこのヘッド1のライ角αで水平面HPに対して傾けている。ライ角αは各ヘッドを製造する際に該ヘッド毎に与えられる角度である。なお限定はされないが、ライ角αを正しく設定すると、多くのゴルフクラブヘッドは、フェース面2に形成されたスコアラインSCが水平となる。また、ライ角αの値は、クラブのロフト角や装着されるシャフトの長さなどに応じて種々設定されるが、例えばウッド型のゴルフクラブヘッドの場合には、概ね55〜60゜程度に設定される。
【0015】
またヘッド基準状態では、前記フェース面2のフェース巾W及びフェース高さHの中間となるフェース中央点Cを通りフェース面2に直交するフェース中央法線N1を含む中央の垂直面VPCと、前記フェース中央点Cを通り前記第1の垂直面VP1と直角な第2の垂直面VP2とがなす角度をヘッドのフック角βに合わせてヘッド1を配している。前記フェース巾Wは、フェース面2のトウt、ヒールh方向の前記第1の垂直面VP1に沿って測る水平方向の最大長さであり、また前記フェース高さHは、フェース巾Wの中央部分でのフェース面2の上縁2a、下縁2b間の垂直高さである。
【0016】
前記フック角βは、ライ角αと同様、各ヘッドを製造する際に該ヘッド毎に与えられている寸法値である。またフック角βの値は、ヘッドの重心距離などに応じて種々設定されるが、例えば0.5〜 5.0゜程度、より好ましくは2.0〜4.0゜程度とすることが望ましい。
【0017】
本実施形態のヘッド1は、このヘッド基準状態の平面視において、前記第2の垂直面VP2が前記フェース面2の上縁2aと交わるフェース上縁中央点Eを通りフェース面2に直交するフェース上縁法線N2を含む上縁の垂直面VPEは、打球方向に向かって前記中央の垂直面VPCよりもトウt側に傾いている。そして、この上縁の垂直面VPEと前記中央の垂直面VPCとがなす角度θを0.5〜5゜としている。
【0018】
前記フェース面2の上縁2aは、クラウン部4との境界Kをなすが、例えば図3(A)に断面で示すように、この境界Kが明瞭なエッジDによって形成されている場合にはフェース面2の上縁2aを該エッジDにより特定し、図3(B)に断面で示すように、前記境界Kが円弧Rをなす場合には、該円弧Rのフェース面2側の端点Reを連続して継ぐことによりフェース面2の上縁2aを特定しうる。なおフェース面2の上縁2aは、図2の平面視において、滑らかな曲線として把握されるように形成されている。
【0019】
前記上縁の垂直面VPEは、前記の如く多くのゴルファが目標飛球線方向Aに揃える基準となる。このため、上縁の垂直面VPEが、打球方向に向かって前記中央の垂直面VPCよりもトウt側に傾き、かつ該上縁の垂直面VPEと前記中央の垂直面VPCとがなす角度θを0.5〜5゜とすることにより、上縁の垂直面VPEを目標飛球線方向Aに合わせて構えると、フェース中央点Cは目標飛球線方向Aに対して0.5〜5゜の角度で左を向くため、フェース面2のフック角βが適切に維持させて構えさせることができる。従って、本実施形態のヘッド1では、スライスを抑制するのに役立つ。
【0020】
このように前記角度θは、上縁の垂直面VPEを目標飛球線方向Aに合わせて構えた際の実質的なフック角となるが、該角度θが0.5゜未満であると、この実質的なフック角が小さくなるため、打球がスライスし易くボールの掴まりが悪くなる傾向があり、逆に5゜を超えると、フェース中央点Cが過度に左を向く傾向があり、構えた際に違和感を生じやすくなる。このような観点より、前記角度θは、より好ましくは1〜3゜とするのが特に望ましい。なお前記角度θの調節は、フェース面2の上縁2a付近でフェース面2の曲面の曲率を部分的に違えることなどにより、容易に実現することができる。
【0021】
また本発明のヘッド1は、前記ヘッド基準状態において、前記上縁の垂直面VPEと前記第2の垂直面VP2とがなす角度δを1.5゜以下、好ましくは0.5〜1.5゜としている。このように前記角度δを限定することにより、フェース面2の上縁中央点E付近の輪郭が、シャフト装着軸線CLを含む第1の垂直面VP1とほぼ平行に近い状態に近づくため、構えた際の違和感がより少なくなり、スライスを減じて打球の方向安定性をさらに向上するのに役立つ。本実施形態では、上縁の垂直面VPEと第2の垂直面VP2とが同一面(δ=0゜)をなし、前記フック角βと前記角度θとが実質的に同じ値となるものを示すが、この態様に限定されることなく、種々の範囲で前記角度δを設定することができる。また前記角度δが0°以外のとき、上縁の垂直面VPEは、フェース面2の打球方向において前記第2の垂直面VP2よりもトウt側、ヒールh側のいずれにあっても良いが、好ましくはボールの掴まり易さをゴルファにイメージさせるために、ヒール側に配しやや左を向かせるのが望ましい。
【0022】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はウッド型のゴルフクラブヘッドに限定されるものではなく、ウッド型とアイアン型の中間的な形状を具えたいわゆるユーティリティ型のヘッドなどにも好適に用いることができる。
【0023】
【実施例】
表1に示す仕様により前記角度θ、δを違えた複数のウッド型のゴルフクラブヘッドを試作した。各ヘッドは、いずれも6Al−4Vチタン合金を精密ロストワックス製法で製造してなり、ヘッド体積を305cm3 、ヘッド質量188g、ロフト角11度、ライ角56度に設定した。そして、各ヘッドにそれぞれ同一のシャフトを装着したウッド型ゴルフクラブを製造し、構え易さを評価するとともに試打テストを行った。
【0024】
構え易さは、5名の右打ちゴルファ(ハンディキャップ3〜25)により各クラブで目標飛球線に対して実際に構えてもらい、そのときの目標の取り易さや構えた際の違和感などを総合的に評価し、5点満点で採点した。数値が大きいほど構えや易いことを示す。
【0025】
また試打テストは、前記5名のゴルファにより各クラブで5球づつ試打を行い、ボールが静止した位置から目標飛球線上までの最短距離である左右のずれ量を測定した。ずれ量は、目標飛球線に対して右方向へのずれを+値で、同左方向へのずれを−値で表示しており、いずれもn=5のずれ量を符号をそのまま用いて算術平均した値で表示している。テストの結果を表1に示す。
【0026】
【表1】
【0027】
テストの結果、実施例のクラブは、構え易くかつスライスし難いことが確認できる。すなわち、ゴルファーAないしEは、上縁の垂直面を目標飛球線方向に合わせて構えたつもりでも、実際には、前記角度θによってフェース面には実質的なフック角が与えられるため、フック角を有効に機能させスライスが防止され得る。これは前記角度θが大きいヘッドほど、打球が左方向にずれることからも確認できる。
【0028】
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のゴルフクラブヘッドは、フェース面の上縁中央点付近を目標飛球線方向に対してスクエアに構えた場合でも、フェース面のフェース中央点を目標飛球線方向に対して0.5〜5゜の角度θで左を向かせることができる。従って、自然に構えることができ、かつフェース面に実質的なフック角を与えることもできるため、スライスを防止するのに役立つ。
【0029】
また、ヘッド基準状態において、前記上縁の垂直面と前記第2の垂直面とがなす角度δを1.5゜以下とすることにより、フェース面の上縁中央点付近の輪郭をシャフト装着軸線にほぼ沿わせることができるため、構えた際の違和感をより効果的に減じうる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態を示すゴルフクラブヘッドの正面図である。
【図2】その平面図である。
【図3】(A)、(B)はフェース面の上縁を説明するヘッドの部分断面図である。
【図4】従来のゴルフクラブヘッドの正面図である。
【図5】その平面図である。
【図6】(A)〜(C)は、打球前後のヘッドの状態を示す平面概念図である。
【符号の説明】
1 ゴルフクラブヘッド
2 フェース面
2a フェース面の上縁
2b フェース部の下縁
3 フェース部
4 クラウン部
5 ソール部
Claims (4)
- ボールを打撃するフェース面を具えるゴルフクラブヘッドであって、
該ヘッドのシャフトが装着されるシャフト装着軸線を第1の垂直面内に配しかつこのヘッドのライ角αで水平面に対して傾けるとともに、
前記フェース面のフェース巾及びフェース高さの中間となるフェース中央点を通りフェース面に直交するフェース中央法線を含む中央の垂直面と、前記フェース中央点を通り前記第1の垂直面と直角な第2の垂直面とがなす角度をヘッドのフック角βに合わせてヘッドを配したヘッド基準状態の平面視において、
前記第2の垂直面が前記フェース面の上縁と交わるフェース上縁中央点を通りフェース面に直交するフェース上縁法線を含む上縁の垂直面は、打球方向に向かって前記中央の垂直面よりもトウ側に傾き、
かつこの上縁の垂直面と前記中央の垂直面とがなす角度θを0.5〜5゜とし、
しかも前記上縁の垂直面と前記第2の垂直面とがなす角度δは1.5゜以下であることを特徴とするゴルフクラブヘッド。 - 前記角度θが1〜3゜であることを特徴とする請求項1記載のゴルフクラブヘッド。
- 前記角度δは0.5〜1.5度である請求項1又は2記載のゴルフクラブヘッド。
- 前記角度δが0ではなく、かつ、前記上縁の垂直面は、第2の垂直面よりもヒール側に配される請求項1乃至3のいずれかに記載のゴルフクラブヘッド。
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