JP3701460B2 - ゴルフクラブ - Google Patents

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Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、ボールの方向安定性の向上、及び、飛距離のアップとその安定化を図ったゴルフクラブに関する。
【0002】
【従来の技術】
通常、ウッドヘッド及びアイアンヘッドを含めたゴルフクラブヘッドには、ボールを打ち易いだけでなく、ボールの方向安定性及びボールの飛距離のアップとその安定化が求められている。
【0003】
また、従来のゴルフクラブヘッドでは、そのスイートスポットの高さが比較的高い値(約23mm以上)に設定されていると共に、重心アングルが比較的小さい値(約5〜15°)の範囲に設定されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、一般プレーヤーにとって飛距離と方向性の両方を正確に出すことは困難であり、特に、フェース面の平らなミドルアイアンからロングアイアンにおいては、例えばボールが上がらなかったり、スライスやフックが発生し易いため、上述したような正確性を出すことがより一層困難となっている。また、バルジやロールが付いたフェース面のように方向性等を調整することができないため、正確性を出すことが更に困難となっている。
【0005】
具体的には、スイートスポットが高いと、インパクト時において、ボールがスイートスポット位置よりも低い位置でボールがフェースから離れてしまう。この結果、ヘッドの運動エネルギーを効率よくボールに伝達することができなくなってしまうため、ボールが上がり難くなるだけでなく、ボールの飛距離が低下すると共に方向性が安定しなくなってしまう。
【0006】
また、重心アングルが小さいと、スイング中のヘッドの返りが不充分になるため、スイングコントロールがし難く(ボールを打ち難く)なると共に、打球の方向性が悪くなって、例えばスライスの原因となる。
【0007】
本発明は、このような課題を解決するために成されており、その目的は、ボールの方向安定性の向上及び飛距離のアップとその安定化を容易に実現することが可能なボールを打ち易いゴルフクラブを提供することにある。
【0008】
【課題を解決するための手段】
このような目的を達成するために、本発明のゴルフクラブは、シャフトと、シャフトの先端に設けられたヘッドと、を備えており、ヘッドの重心からフェース部のフェース面に垂線を立てたときに垂線とフェース面との交点としてスイートスポットが規定される、ゴルフクラブであって、ソール部を地面に接地した状態において地面からスイートスポットまでの高さとして規定されているスイートスポットの高さを10mm以上且つ23mm以下に設定すると共に、シャフトを回転フリーの状態に支持したときに水平基準面から垂直方向に延出しヘッドの重心を通過する垂線とヘッドのフェース面との間に形成される傾斜角度として規定される重心アングルを20°以上且つ35°以下に設定することを特徴とすることにより、スイートスポットの高さを従来技術よりも比較的低くすると共に、重心アングルを従来技術よりも比較的大きくする。
【0009】
【発明の実施の形態】
以下、本発明のゴルフクラブについて添付図面を参照して説明する。
図1(a)には、ウッドタイプのゴルフクラブ1が示されており、このゴルフクラブ1は、シャフト3と、このシャフト3の基端に設けられたグリップ5と、シャフト3の先端に設けられたウッドヘッド7とから構成されている。
【0010】
図1(b)には、アイアンタイプのゴルフクラブ9が示されており、このゴルフクラブ9は、シャフト11と、このシャフト11の基端に設けられたグリップ13と、シャフト11の先端に設けられたアイアンヘッド15とから構成されている。
【0011】
本発明は、上述したウッドヘッド7及びアイアンヘッド15を改良することによって、ボールを打ち易いだけでなく、ボールの方向安定性及びボールの飛距離のアップとその安定化を図ることを目的としている。
【0012】
このような目的を実現するため、本発明では、スイートスポットの高さを従来技術よりも比較的低くすると共に、重心アングルを従来技術よりも比較的大きくするといった2つの技術を適用している。
【0013】
以下、その一例として、中空金属製のアイアンヘッド15を用いて上述した2つの技術について、図2〜図6を参照しつつ説明する。
図2に示すように、アイアンヘッド15は、シャフト11(図1(b)参照)の先端が嵌着されるネック部17と、このネック部17から延出したクラウン部19と、このクラウン部19に対向したソール部21と、スイートスポットが形成されるフェース部23と、このフェース部23に対向したバック部25とから構成されている。
【0014】
なお、ソール部21は、トウ部27側からヒール部29側に亘って全体的に凸状に湾曲しており、アドレス時に、そのトウ部27側及びヒール部29側が夫々地面(水平面)31から若干離間するように構成されている。
【0015】
このようなアイアンヘッド15において、スイートスポットの高さを従来技術よりも低くする技術としては、その重心を低くすることが挙げられる。
例えば図5に示すように、スイートスポットP1は、アイアンヘッド15の重心Gからフェース部23のフェース面に垂線33を立てたときに、この垂線33とフェース面との交点として規定される。そして、スイートスポットP1の高さは、アドレス時にソール部21を地面31に接地(載置)した状態において、この地面31からスイートスポットP1までの高さH1として規定される。
【0016】
従って、アイアンヘッド15の重心Gを低く(低重心化)することによって、スイートスポットP1の高さH1を低くすることができる。
ところで、例えば図5に示すように、フェース部23のフェース面には、ロフト角(特に図示しない)が施されているため、インパクト時において、ボール35が、フェース部23のフェース面に当たって、変形して、そして、フェース面から離れるまでに、ボール35は、フェース面に沿って約4mm程度移動することが多い。
【0017】
また、インパクト時にボール35がフェース面に当たる打点位置P2は、ボール35の中心Mからフェース面に接しているボール35の接点に垂線37を立てたときに、この垂線37と接点との交点として規定される。そして、打点位置P2の高さは、アドレス時にソール部21を地面31に接地(載置)した状態において、この地面31から打点位置P2までの高さH2として規定される。
【0018】
従って、インパクト時において、ボール35は、打点位置P2からスイートスポットP1に向かって若干移動した後、フェース面から離れることになる。
このようなインパクト時のボール35の移動量を考慮すると、スイートスポットP1は、ボールがフェース面から離れる位置の近傍に位置付けることが好ましい。即ち、ボール35がフェース面から離れる際に、このボール35がスイートスポットP1近傍に位置付けられていれば良い。
【0019】
そこで、このような位置にスイートスポットP1を位置付けるために、本発明のアイアンヘッド15には、低重心化処理が施されている。
低重心化処理としては、例えば図2(b)に示すように、クラウン部19の表面に上面視でV字状の凹溝19aを形成して、クラウン部19の軽量化を図ることによって、アイアンヘッド15の重心Gを全体的に低くする方法が挙げられる。
【0020】
また、例えば図2(c)並びに図3及び図4に示すように、アイアンヘッド15の内部のソール部21に重量体(例えば、タングステンなど)39を設置することによって、アイアンヘッド15の重心Gを低くする方法が挙げられる。
【0021】
この場合、重量体39は、ネジ螺合式によってソール部21に対して着脱可能に構成してもよいし、ソール部21に溶接や圧入接着しても良い。また、重量体39をソール部21と一体成形しても良い。
【0022】
また、重量体39を支持するために、幅広で且つ肉厚の補強用受け部21aをソール部21に形成することによって、低重心化を図ることも好ましい(図3及び図4参照)。
【0023】
また、例えば図3及び図4に示すように、フェース部23の厚さT1を出来る限り薄くしてフェース部23の軽量化を図ると共に、補強用受け部21aの厚さT2やソール部21の厚さT3を他の部分よりも厚くすることによって、低重心化を図ることも好ましい。
【0024】
なお、フェース部23の材料としては、例えばチタン合金やアモルファス金属等を適用することが可能であるが、比重が軽く且つ高強度の材料であればこれに限定されることはない。
【0025】
このような低重心化処理が施された状態において、一般的なボール35の直径が約42mm程度と仮定すると、打点位置P2の高さH2(図5参照)は、約14mm程度(ロフト角20°のとき、例えば、番手3番のロングアイアン)となる。また、ロフト角が大きくなるとH2は、少しずつ小さくなる。従って、スイートスポットP1の高さH1(図5参照)は、その一例として、10mm以上且つ18mm以下に設定することが好ましい。
【0026】
このようにスイートスポットP1の高さH1を設定することによって、ボール35がフェース面から離れる際に、このボール35をスイートスポットP1近傍に位置付けることが可能となる。この結果、アイアンヘッド15の運動エネルギーを効率よくボール35に伝達することが可能となるため、ボール35が上がり易くなるだけでなく、ボール35の飛距離のアップとその安定化を実現することが可能となる。
【0027】
ところで、スイートスポットP1の高さH1を従来技術よりも比較的低くするだけでは、例えばスイートスポットP1よりも高い位置でボール35が打ち返された場合、ボール35は高く上がるが、その飛距離が低下してしまう。
【0028】
しかしながら、このような問題は、重心アングルを従来技術よりも比較的大きくして、スイング時のアイアンヘッド15の返りを向上させることによって解消することが可能である。
【0029】
図6には、重心アングルを測定するための装置が示されており、アイアンタイプのゴルフクラブ9のシャフト11を回転自在に支持する一対の支持部41と、重心アングルを測定する角度検出装置(図示しない)とを備えている。
【0030】
まず、シャフト11を一対の支持部41上に載置すると、シャフト11は回転フリー状態になるため、ゴルフクラブ9は、アイアンヘッド15の重心Gが重力によって引かれる方向に回転して安定する。
【0031】
この状態において、重心Gは、図6の(c)中に示されているように、装置の水平規準面S1から垂直方向に延出する垂線上に位置付けられる。
このとき、アイアンヘッド15のフェース部23のフェース面と上記垂線(図6の(c)では、より理解がし易いように上記垂線と平行な垂線S2が補助として使用されている)との間には、所定の傾斜角度θが形成され、この傾斜角度θを重心アングルθとして測定する。
【0032】
なお、重心アングルθは、例えばフォーティーン社製の重心アングル測定器(FG104RM)を用いても測定することができる。
重心アングルθは、重心Gの位置に応じて変化するため、重心アングルθを従来技術よりも比較的大きくするためには、重心G位置をアイアンヘッド15のバック部25側に接近させれば良い。
【0033】
そこで、重心G位置をバック部25側に接近させる方法としては、例えば図2(c)並びに図3及び図4に示された重量体39をソール部21のバック部25寄りに配置したり、例えば図3及び図4に示された補強用受け部21aの厚さT2を更に厚くする方法を適用することが可能である。この場合、より一層重心アングルθを増大させるために、補強用受け部21aの部分は、ヘッド本体材料よりも高比重の材料で形成(例えば、接着、溶接)するのが好ましい。
【0034】
更に、例えば図3(b)に示すように、打球面の強度アップのため、通常、バック部25の厚さT4とフェース部23の厚さT1との関係は、T1>T4となっているが、バック部25の厚さT4をフェース部23の厚さT1よりも大きく(T1≦T4)することによって、重心G位置をバック部25寄りにすることができる。
【0035】
また、例えば図2(c)に示すように、ヒール部29側の重量体39aの質量(39a)、体積(39a)、比重(39a)と、トウ部27側の重量体39bの質量(39b)、体積(39b)、比重(39b)との関係を夫々独立して以下のように設定する。
【0036】
質量(39a)>質量(39b)
体積(39a)>体積(39b)
比重(39a)>比重(39b)
このように夫々独立して、ヒール部29側の重量体39aの質量(39a)、体積(39a)、比重(39a)を大きく設定することによって、重心アングルθ(図6(c)参照)を大きくすることができる。
【0037】
そして、このような設定状態において、更に、トウ部27側の重量体39bの重心位置とシャフト軸を結んだ線K1と、フェース面のリーディングエッジの線K2との成す角θ´が、20°以上、好ましくは24°以上になるように、重量体39bの重心位置を調整することが好ましい。この結果、低重心化、重心アングルθの増大化、トウヒールバランス(スイートスポットの拡大)の3つの点をバランス良く満足したものとすることができる。
【0038】
このような重心G位置調整が成された状態において、重心アングルθは、その一例として、24°以上且つ35°以下に設定することが好ましい。
このように重心アングルθを設定することによって、スイング中のアイアンヘッド15の返りが良くなるため、スイングコントロールがし易く(ボール35を打ち易く)なると共に、打球の方向性を向上させることが可能となる。
【0039】
ところで、重心アングルθを従来技術よりも比較的大きくするだけでは、例えばアイアンヘッド15が返り過ぎた場合、低く且つ極端なフック気味に曲がるドロップボールが発生し易い。
【0040】
しかしながら、このような問題は、スイートスポットP1を従来技術よりも比較的低くすることによって解消され、その結果として、ボール35を高く上げて且つ飛距離を出すことができる。
【0041】
このようにスイートスポットP1の高さH1を従来技術よりも比較的低くする技術と、重心アングルθを従来技術よりも比較的大きくする技術との間には、お互いの欠点を補い合うことができる関係を有している。
【0042】
そこで、双方の技術の利点のみを抽出してアイアンヘッド15を形成すれば、ボール35を打ち易いだけでなく、ボール35の方向安定性及びボール35の飛距離のアップとその安定化を図ることができる。
【0043】
即ち、その一例として、スイートスポットP1の高さH2を10mm以上且つ23mm以下に設定すると共に、重心アングルθを20°以上且つ35°以下に設定することが好ましい。
【0044】
なお、上述した実施の形態の技術の適用範囲は、アイアンヘッド15に限定されることは無く、ウッドヘッド7にも適用することができる。そして、これらゴルフクラブヘッド7,15には、各々、番手に対応したロフト角が形成されているため、ロフト角に応じて最適化したスイートスポットP1の高さH1と重心アングルθとの関係は、相対的に変化させる必要がある。
【0045】
そこで、以下の表には、その一例として、フェース面の平らなアイアンゴルフクラブのロフト角と、このロフト角に対して最適なスイートスポットP1の高さH1と重心アングルθとの関係を示す。
【0046】
【表1】
Figure 0003701460
【0047】
このように本発明によれば、ボール35の方向安定性の向上及び飛距離のアップとその安定化を容易に実現することが可能なボール35を打ち易いゴルフクラブヘッド7,15を備えたゴルフクラブ1,9を提供することができる。
【0048】
以下、ロングアイアンを使用するとスライスの出易いプレーヤーを対象に、重心アングルの変化による球筋(打球方向)の安定性をテスト評価したところ、以下の表のような結果が得られた。
【0049】
なお、テスト条件としては、
・3番アイアンクラブ相当
・重心アングル:5°、10°、15°、20°、25°
・上記重心アングル毎に、1人10球、計50球とし、10人のスライス傾向プレーヤーに対して実施
【0050】
【表2】
Figure 0003701460
【0051】
このテスト評価から明らかなように、ロングアイアンを使用するとスライス傾向にあった比較的スイングの安定したプレーヤーの場合、従来使用したことのない重心アングルの大きなクラブを使用することによって、打球の方向性を安定化できることが分かった
【0052】
【発明の効果】
本発明によれば、ボールの方向安定性の向上及び飛距離のアップとその安定化を容易に実現することが可能なボールを打ち易いゴルフクラブを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のゴルフクラブの斜視図であって、(a)は、ウッドタイプのゴルフクラブの斜視図、(b)は、アイアンタイプのゴルフクラブの斜視図。
【図2】(a)は、アイアンヘッドをトウ側から見た図、(b)は、アイアンヘッドをバック部側から見た図、(c)は、アイアンヘッドをソール部側から見た図。
【図3】(a)は、フェース部を一部切り欠いて内部を露出した状態のアイアンヘッドの部分断面図、(b)は、図2(b)のL1−L1線に沿う断面図。
【図4】(a)は、図3(a)のL2−L2線に沿う断面図、(b)は、図3(a)のL3−L3線に沿う断面図。
【図5】インパクト時若しくはアドレス時のアイアンヘッドとボールとの位置関係を示す図。
【図6】重心アングルを測定するための装置を示す図であって、(a)は、一対の支持部によってシャフトが回転自在に支持された状態を示す図、(b)は、装置のアイアンヘッド側の部分を示す図、(c)は、フェース部のフェース面と垂線との間に重心アングルが形成されている状態を示す図。
【符号の説明】
15 アイアンヘッド
23 フェース部
P1 スイートスポット
H1 スイートスポットの高さ

Claims (1)

  1. シャフトと、シャフトの先端に設けられたヘッドと、を備えており、ヘッドの重心からフェース部のフェース面に垂線を立てたときに垂線とフェース面との交点としてスイートスポットが規定される、ゴルフクラブであって、
    ソール部を地面に接地した状態において地面からスイートスポットまでの高さとして規定されているスイートスポットの高さを10mm以上且つ23mm以下に設定すると共に、
    シャフトを回転フリーの状態に支持したときに水平基準面から垂直方向に延出しヘッドの重心を通過する垂線とヘッドのフェース面との間に形成される傾斜角度として規定される重心アングルを20°以上且つ35°以下に設定することを特徴とするゴルフクラブ。
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