JP4469064B2 - 成分傾斜複合材料の製造方法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、工業分野、建築・土木分野の広い分野で、成形材料、塗膜材料、電子・電気材料等として有用な架橋重合性化合物と金属酸化物からなる成分傾斜複合体の製造法に関する。
【0002】
【従来の技術】
架橋重合性樹脂は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、或いはメラミン樹脂のような熱硬化型樹脂、フェノール樹脂のような湿気及び熱硬化型樹脂、不飽和ポリエステルのような空気及び熱硬化型樹脂、アクリレート化合物やマレイミド化合物のような光硬化型樹脂があり、塗料、接着・封止剤、電子・電気材料基板などとして広く利用されている。
【0003】
架橋重合性樹脂が塗料等に用いられる場合、高い表面硬度を持つことが重要であり、粒状、或いは繊維状のシリカ、ガラスなどの無機材料、無機充填剤と複合化することによって、高硬度化する方法は一般に良く知られている。しかし、これら方法では透明性が失われるという問題や、無機充填材料と樹脂との親和性が十分ではなく、逆に強度が低下する問題があった。
【0004】
特開平9−216938号公報、特開平8−100107号公報等には、無機材料源として、シリコンアルコキシドなどの金属アルコキシドを使用することにより、透明性や樹脂との親和性の低下を改善する方法が開示されている。しかし、この方法でも十分な表面硬度を付与させる場合には、無機材料を多く添加する必要があり、コスト的な問題が生じたり、或いは、クッラクが発生し、かえって硬化物が脆くなるという問題があった。
【0005】
特開平8−16523号公報では表面部分にシリカなど金属酸化物濃度の高い層を形成させることによって、十分な表面硬度を持ち、クラックの発生と脆性化を押さえる方法が開示されている。この方法は、架橋重合性化合物と金属アルコキシドとを含む溶液を塗布した後、高湿度の雰囲気下に保持することにより、表面部に高い金属酸化物層を形成させる方法である。
【0006】
しかし、この方法は、長時間高湿度雰囲気下で保持する必要があることから生産性が低いという問題がある上に、得られる傾斜複合体は、表面部の金属酸化物濃度が十分高いものを得ることが困難であったり、塗膜表面部に模様が付きやすく外観不良の複合体となり易いなどの問題があった。
【0007】
また、特開平9−328557号公報、特開平9−278938号公報、特開平9−87526号公報には、熱可塑性樹脂や半硬化させた架橋重合性樹脂を金属アルコキシドを含む溶液に浸漬することによって、表面部分に高濃度の金属酸化物層を形成させる方法が開示されている。しかし、この方法では金属アルコキシド溶液のライフタイムが短いために、安定的に同一濃度傾斜を持つ複合体が製造できないという問題、更に、頻繁に新鮮な金属アルコキシド溶液と交換しなければならないために、コスト的な問題があった。
【0008】
【発明が解決しようとする課題】
本発明が解決しようとする課題は、複合体表面の外観が良好で、表面部に高い金属酸化物濃度を持つ、架橋重合性化合物の硬化物と金属酸化物とからなる金属酸化物の成分傾斜複合体の簡便な製造方法を提供することである。
【0009】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは上記課題を解決するため鋭意検討した結果、架橋重合性化合物と金属アルコキシドを含む溶液を賦形し、賦形物または賦形物の半硬化物を水溶液に接触させて一定時間保持した後、架橋重合性化合物を硬化させることによって、表面部に高い金属酸化物濃度を持つ樹脂複合体が得られることを見出し、本発明を完成するに到った。
【0010】
即ち、本発明は、
(1)架橋重合性化合物と金属アルコキシドとを含む均質溶液を賦形し、賦形物を水溶液に接触させて一定時間保持した後、架橋重合性化合物を硬化させることを特徴とする、架橋重合性化合物の硬化物と金属酸化物とからなり、金属酸化物濃度が厚み方向で連続的に変化している成分傾斜複合体の製造方法と、
【0011】
(2)架橋重合性化合物と金属アルコキシドとを含む均質溶液を賦形し、賦形物を半硬化させ、更に半硬化した賦形物を水溶液に接触させて一定時間保持した後、架橋重合性化合物を硬化させることを特徴とする、架橋重合性化合物の硬化物と金属酸化物からなり、金属酸化物濃度が厚み方向で連続的に変化している成分傾斜複合体の製造方法と、
【0012】
(3)複合体表面部に高い金属酸化物濃度を持ち、内部に向かって、金属酸化物濃度が連続的に減少していることを特徴とする(1)又は(2)に記載の成分傾斜複合体の製造方法と、
【0013】
(4)金属アルコキシドとして、シリコンアルコキシドを用いることを特徴とする(1)〜(3)のいずれか1つに記載の成分傾斜複合体の製造方法と、
【0014】
(5)架橋重合性化合物が、一分子中に2〜6個の(メタ)アクリル基を有する光架橋重合性化合物であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1つに記載の成分傾斜複合体の製造方法と、
【0015】
(6)架橋重合性化合物が、熱硬化型化合物を用いることを特徴とする(1)〜(4)のいずれか1つに記載の成分傾斜複合体の製造方法、及び
【0016】
(7)架橋重合性化合物と金属アルコキシドを含む賦形物が球状体であることを特徴とする(1)〜(5)のいずれか1つに記載の成分傾斜複合体の製造方法とを含むものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
本発明は、架橋重合性化合物の硬化物と金属酸化物からなり、厚み方向で金属酸化物濃度が連続的に変化している成分傾斜複合体の製造方法に関する。本発明の製造方法により得られる成分傾斜複合体の構造は、複合体の厚み方向で金属酸化物濃度が連続的に変化している形態のものであり、特に、複合体表面部に高い金属酸化物濃度を持ち、内部に向かって、金属酸化物濃度が減少していく形態を含むものである。但し、本発明により得られる成分傾斜複合体には架橋重合体と金属酸化物以外に、重合開始剤や硬化剤などの本発明の製造過程で使用する架橋重合体以外の成分をマイナー成分として含有する場合もある。
【0018】
本発明の成分傾斜複合体の金属酸化物濃度とその傾斜の度合いは、使用する目的や、複合体の形状、厚みなどにより異なるが、傾斜複合体として、複合体中に含まれる金属酸化物の濃度の最大値が5〜100重量%、最小値が0〜40重量%であり、且つ、最大値と最小値の比(最大濃度/最小濃度)が1.3以上、好ましくは1.5以上、より好ましくは2以上の複合体である。
【0019】
本発明の製造方法で得られる成分傾斜複合体は、フィルム状、塗膜状、板状、シート状、薄膜状、繊維状、球状の形態が可能である。フィルム状、板状、シート状、塗膜状物の場合、膜厚は3mm以下、特に1mm以下が好ましい。厚みが厚くなると、架橋重合性化合物が活性エネルギー線架橋重合性化合物であり、硬化方法が活性エネルギー線の照射である場合には、架橋重合体の架橋密度が低下し、十分な強度が得られなくなり好ましくない。また、球状物は同じ理由で、直径3mm以下、特に直径1mm以下が好ましい。
【0020】
本発明の製造方法は、
(1)架橋重合性化合物と金属アルコキシドを含む溶液を賦形し、賦形物を水溶液に接触させて一定時間保持した後、熱或いは光照射などによって、架橋重合性化合物を架橋硬化させるか、あるいは(2)架橋重合性化合物と金属アルコキシドを含む溶液を賦形し、架橋重合性化合物を半硬化させ、更に半硬化させた賦形物を水溶液に接触させて一定時間保持した後、熱或いは光照射などによって、架橋重合性化合物を架橋硬化させるものである。
【0021】
本発明に使用される架橋重合性化合物は、熱、湿気、空気、或いは活性エネルギー線などにより架橋重合する化合物であるが、熱及び活性エネルギー線により架橋硬化する化合物が好ましく用いられる。熱により架橋重合する熱架橋重合性化合物としては、ビスフェノール型、クレゾールノボラック型、フェノールノボラック型、フタル酸型などのグリシジルエーテル、グリシジルアミン、或いはグリシジルエステル型のエポキシ樹脂;
【0022】
レゾール型やノボラック型のフェノール樹脂;多塩基酸と多価アルコールにより得られる反応性ポリエステル樹脂であるアルキッド樹脂;不飽和ポリエステル樹脂;ポリイミド;メラミン樹脂や尿素樹脂などのようなアミノ樹脂;ヒドロキシ基、グリシジル基、アミノ基、或いはカルボキシル基など有する熱硬化性アクリル樹脂;ジアリル酸フタレート樹脂などが挙げられる。これらは単独で用いられることもあるが、例えば、メラミン樹脂とアルキッド樹脂、エポキシ樹脂とフェノール樹脂などのように複数種類を用いることも可能である。
【0023】
更に、これら熱架橋重合性化合物はレゾール型フェノール樹脂のように単独で架橋硬化するものもあるが、エポキシ樹脂におけるアミン化合物や酸無水物など、尿素樹脂やメラミン樹脂におけるホルムアルデヒトなど、不飽和ポリエステルやジアリル酸フタレート樹脂における過酸化物などのように、架橋・硬化剤を必要とするものがあり、通常の使用法で用いられる硬化剤を併用しても構わない。
【0024】
活性エネルギー線により架橋重合する架橋重合性化合物(以後、この化合物を「活性エネルギー線架橋重合性化合物」と称する場合がある)は、活性エネルギー線の照射により硬化して架橋重合体となる化合物であればよく、ラジカル重合性、アニオン重合性、カチオン重合性等任意のものであってよい。活性エネルギー線架橋重合性化合物は、重合開始剤の非存在下で架橋重合するものに限らず、重合開始剤の存在下でのみ活性エネルギー線により架橋重合するものも使用することができる。
【0025】
活性エネルギー線架橋重合性化合物としては、重合性の炭素−炭素二重結合を分子内に2つ以上有するものが好ましく、中でも、反応性の高い(メタ)アクリル系化合物やビニルエーテル類、また光重合開始剤の不存在下でも硬化するマレイミド系化合物が好ましい。
【0026】
活性エネルギー線架橋重合性化合物は、単独で用いることもでき、2種類以上を混合して用いることもできる。この場合、活性エネルギー線架橋重合性化合物は、単独では本発明の複合体を形成し得ず、他の成分と混合使用した場合にのみ可能なもの、例えば固体状の化合物、であっても良い。また、硬度、反応性などを制御するために、単独では架橋重合体を与えない単官能の活性エネルギー線重合性化合物を混合使用することも可能である。
【0027】
活性エネルギー線架橋重合性化合物として好ましく使用することができる(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,8−オクタンジオールジ(メタ)アクリレート、2,2’−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリエチレンオキシフェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−(メタ)アクリロイルオキシポリプロピレンオキシフェニル)プロパン、
【0028】
ヒドロキシジピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジアクリレート、ビス(アクロキシエチル)ヒドロキシエチルイソシアヌレート、N−メチレンビスアクリルアミドの如き2官能単量体;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレート、カプロラクトン変性トリス(アクロキシエチル)イソシアヌレートの如き3官能単量体;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレートの如き4官能単量体;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレートの如き6官能単量体、などが挙げられる。
【0029】
また、活性エネルギー架橋重合性化合物として、架橋重合性の重合性オリゴマー(プレポリマーとも呼ばれる)を用いることもでき、例えば、重量平均分子量が500〜50000のものが挙げられる。そのような架橋重合性の重合性オリゴマーしては、例えば、エポキシ樹脂の(メタ)アクリル酸エステル、ポリエーテル樹脂の(メタ)アクリル酸エステル、ポリブタジエン樹脂の(メタ)アクリル酸エステル、分子末端に(メタ)アクリロイル基を有するポリウレタン樹脂などが挙げられる。
【0030】
マレイミド系の架橋重合性の活性エネルギー線架橋重合性化合物としては、例えば、4,4’−メチレンビス(N−フェニルマレイミド)、2,3−ビス(2,4,5−トリメチル−3−チエニル)マレイミド、1,2−ビスマレイミドエタン、1,6−ビスマレイミドヘキサン、トリエチレングリコールビスマレイミド、N,N’−m−フェニレンジマレイミド、m−トリレンジマレイミド、N,N’−1,4−フェニレンジマレイミド、N,N’−ジフェニルメタンジマレイミド、N,N’−ジフェニルエーテルジマレイミド、
【0031】
N,N’−ジフェニルスルホンジマレイミド、1,4−ビス(マレイミドエチル)−1,4−ジアゾニアビシクロ−[2,2,2]オクタンジクロリド、4,4’−イソプロピリデンジフェニル=ジシアナート・N,N’−(メチレンジ−p−フェニレン)ジマレイミドの如き2官能マレイミド;N−(9−アクリジニル)マレイミドの如きマレイミド基とマレイミド基以外の重合性官能基とを有するマレイミドなどが挙げられる。
【0032】
マレイミド系の架橋重合性オリゴマーとしては、例えば、ポリテトラメチレングリコールマレイミドカプリエート、ポリテトラメチレングリコールマレイミドアセテートの如きポリテトラメチレングリコールマレイミドアルキレート、などが挙げられる。
【0033】
活性エネルギー線架橋重合性化合物は、分子内に2〜6個の(メタ)アクリロイル基またはマレイミド基を有するものが好ましく、分子量(分子量分布を有するものである場合には平均分子量)が100〜1000の化合物であるものが好ましい。分子量がこの範囲を越えると、熱可塑性樹脂との相溶性に劣りがちである。しかしながら、これを越える分子量の化合物であっても、後述の単官能の活性エネルギー線重合性化合物を添加混合する事で使用することができる。(平均)分子量がこの範囲未満であると、揮発性が強まり作業環境の悪化をもたらす。
【0034】
単官能の活性エネルギー線重合性化合物として使用することができる単官能(メタ)アクリル系単量体としては、例えば、メチルメタクリレート、アルキル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、アルコキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシジアルキル(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、アルキルフェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、ノニルフェノキシポリプロピレングリコール(メタ)アクリレート、
【0035】
ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート、グリセロールアクリレートメタクリレート、ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート、2−アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルアクリレート、エチレンオキサイド変性フタル酸アクリレート、ω−アルコキシカプロラクトンモノアクリレート、2−アクリロイルオキシプロピルハイドロジェンフタレート、2−アクリロイルオキシエチルコハク酸、アクリル酸ダイマー、2−アクリロイスオキシプロピリヘキサヒドロハイドロジェンフタレート、フッ素置換アルキル(メタ)アクリレート、塩素置換アルキル(メタ)アクリレート、シラノ基を有する(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0036】
単官能の活性エネルギー線重合性化合物として使用できる単官能マレイミド系単量体としては、例えば、N−メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−ブチルマレイミド、N−ドデシルマレイミド、の如きN−アルキルマレイミド;N−シクロヘキシルマレイミドの如きN−脂環族マレイミド;N−ベンジルマレイミド;N−フェニルマレイミド、N−(アルキルフェニル)マレイミド、N−ジアルコキシフェニルマレイミド、N−(2−クロロフェニル)マレイミド、2,3−ジクロロ−N−(2,6−ジエチルフェニル)マレイミド、2,3−ジクロロ−N−(2−エチル−6−メチルフェニル)マレイミドの如きN−(置換又は非置換フェニル)マレイミド;
【0037】
N−ベンジル−2,3−ジクロロマレイミド、N−(4’−フルオロフェニル)−2,3−ジクロロマレイミドの如きハロゲンを有するマレイミド;ヒドロキシフェニルマレイミドの如き水酸基を有するマレイミド;N−(4−カルボキシ−3−ヒドロキシフェニル)マレイミドの如きカルボキシ基を有するマレイミド;N−メトキシフェニルマレイミドの如きアルコキシ基を有するマレイミド;N−[3−(ジエチルアミノ)プロピル]マレイミドの如きアミノ基を有するマレイミド;N−(1−ピレニル)マレイミドの如き多環芳香族マレイミド;N−(ジメチルアミノ−4−メチル−3−クマリニル)マレイミド、N−(4−アニリノ−1−ナフチル)マレイミドの如き複素環を有するマレイミド等が挙げられる。
【0038】
活性エネルギー線として紫外線、可視光線、赤外線などの光線を用いる場合には、光重合開始剤を併用することが好ましい。必要に応じて添加することができる光重合開始剤は、本発明で使用する光線に対して活性であり、活性エネルギー線架橋重合性化合物を架橋重合させることが可能なものであれば、特に制限がなく、例えば、ラジカル重合開始剤、アニオン重合開始剤、カチオン重合開始剤であって良い。
【0039】
そのような光重合開始剤としては、例えば、p−tert−ブチルトリクロロアセトフェノン、2,2′−ジエトキシアセトフェノン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オンの如きアセトフェノン類;ベンゾフェノン、4,4′−ビスジメチルアミノベンゾフェノン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−エチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンの如きケトン類;ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテルの如きベンゾインエーテル類;ベンジルジメチルケタール、ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトンの如きベンジルケタール類などが挙げられる。
【0040】
これら光重合開始剤の使用濃度は、活性エネルギー線架橋重合性化合物1000重量部に対して、0.01〜20重量部の範囲が好ましく、0.5〜10重量部の範囲が特に好ましい。但し、活性エネルギー線架橋重合性化合物が光重合開始剤を兼ねる場合や、活性エネルギー線架橋重合性化合物と共重合する光重合開始剤である場合にはこの限りではない。
【0041】
本発明で使用される金属アルコキシドは、下記の一般式1で示される金属アルコキシド系モノマーや、重合度2〜10程度のそれらの部分加水分解重縮合物体及び/又はそれらの混合物が用いられる。
(一般式1)
【0042】
【式1】
R4-nM(OR)n
【0043】
(式中、Mは珪素Si、Rは炭素数1〜6のアルキル基、nは3又は4の整数を表す。)
またMの金属原子として、珪素Si以外に、チタンTiが好ましく用いられ、それ以外にも錫Sn、アルミニウムAl、ジルコニウムZrであるものを単独または2種以上を混合して用いることもできる。
【0044】
本発明における、複合体中に含まれる金属酸化物の濃度は、通常2〜50重量%、特に5〜40重量%が好ましい。2重量%未満では本発明が目的とする複合化の効果が不十分となり、また、50重量%を越えると、複合体が脆くなったり、クラックが発生し易くなるため好ましくない。
【0045】
また、本発明には金属アルコキシドの重縮合反応の反応触媒として、酸性触媒若しくは塩基性触媒を併用することが可能である。酸性触媒としては、ギ酸、酢酸などの有機酸、塩酸などの無機酸が用いられ、また塩基性触媒としては、アンモニア、トリエチルアミン、ジメチルアミン、エチレンジアミン、ブチルアミンなどの塩基性物質が用いられる。いずれも、架橋重合性化合物の硬化反応を阻害しない範囲で、且つ出来るだけ少量用いるのが好ましい。通常、これらの反応触媒は金属アルコシキド100重量部に対して、10重量部以下、好ましくは5重量部以下が使用される。
【0046】
本発明の架橋重合性化合物と金属アルコキシドとを含む溶液(以後、この溶液を「ゾル溶液」と称する場合がある。)には、上記架橋重合性化合物、金属アルコキシド、必要に応じて、架橋重合性化合物の架橋・硬化剤や光反応開始剤及び/又は金属アルコキシドの反応触媒の他に、有機溶媒、或いは微量の水を含むことが可能である。
【0047】
有機溶媒は、架橋重合性化合物、金属アルコキシド、或いは、熱重合開始剤や光反応開始剤、金属アルコキシドの重合触媒や水を均質に混合するため、或いは、ゾル溶液を水溶液に接触させた後にゾル溶液内への水溶液の浸透を促進するために必要に応じて使用され、これらと相溶する有機溶媒が使用される。
【0048】
有機溶媒は使用する架橋重合性化合物や金属アルコキシドの種類により適宜選択すべきものであるので、一概には規定できないが、例えば、塩化メチレン、クロロホルム、トリクロロエタン、テトラクロロエタンの如き塩素系溶剤;アセトン、2−ブタノンの如きケトン系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチルの如きエステル系溶剤;ジエチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランの如きエーテル系溶剤;トルエン、キシレン、シクロヘキサンの如き炭化水素系溶剤;クロロフェノールの如きフェノール類;
【0049】
ジメチルホルムアミドやジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒;エタノール、プロパノールなどのアルコール類;ヘキサン、オクタンなどの脂肪族炭化水素類、或いはアニソール、シクロヘキサノンなどの有機溶媒や、或いはアセチルアセトン、2、4?ペンタジオンなどのジケトン系、アセト酢酸メチルやアセト酢酸エチルなどのケトンエステル、乳酸や乳酸メチルなどのヒドロキシカルボン酸、4-ヒドロキシ-4-メチル-2-ペンタノンなどのケトアルコール、モノエタノールアミンやシエタノールアミンなどのアミノアルコールなどの有機溶媒を単独、若しくは複数混合して用いることが可能である。
【0050】
これら有機溶媒の量はゾル溶液全体の70重量%以下、好ましくは50重量%以下用いられる。70重量%以上用いると、ゾル溶液を水溶液に接触させた場合、形状が大きく変化するなどの問題があり好ましくない。
【0051】
更に、ゾル溶液には、架橋重合性化合物と熱可塑性樹脂、或いは有機溶媒などの他に、例えば、色素、顔料、蛍光色素などの着色剤や紫外線吸収剤;酸化防止剤;熱可塑性樹脂;無機や有機の粉末などを含有することができる。色素、顔料等を含有する場合、着色した複合体を得ることができる。
【0052】
本発明のゾル溶液は、塗膜状、フィルム状(シート状、リボン状などを含む)、繊維状、注型物、含浸物など、任意の形状に賦形される。但し、架橋重合性化合物として活性エネルギー線架橋重合性化合物を使用し、活性エネルギー線で硬化させる場合には、活性エネルギー線で硬化可能な形状であることが必要である。例えば、活性エネルギー線が到達可能な厚みである必要があり、賦形物が被覆物で被われている場合には、被覆物は使用する活性エネルギー線を透過させるものである必要がある。賦形方法も任意であり、例えば、塗布、流延、浸漬、注型、含浸、押し出しなどであり得る。また、ゾル溶液の液滴を直接水溶液中に滴下し、球状の形態とすることも可能である。
【0053】
本発明の製造法では、ゾル溶液を水溶液に接触させる前に、ゾル溶液を半硬化させることが有効である。半硬化の度合いは、熱架橋重合性化合物を使用する場合は、加熱温度と加熱保持時間、活性エネルギー線架橋重合性化合物を使用する場合には、活性エネルギー線の強度と照射時間により制御できる。半硬化の度合いを規定することは困難であるが、液の流動性が失われているか、若しくは液の流動性が、水溶液との接触時に変形しない程度に十分に低い状態であれば良く、完全硬化の状態に比べて硬度が十分に低い状態である。
【0054】
本発明において、ゾル溶液、或いは半硬化させたゾル溶液と接触させる水溶液には、水、必要によっては、有機溶媒、金属アルコキシドの重縮合反応を促進する反応触媒を含むことが可能である。水溶液に含有させることのできる有機溶媒は、ゾル溶液中に水がスムーズに侵入させることを主目的としており、水溶性の有機溶媒が好ましく使用できる。
【0055】
例えば、メタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトンや2?ブタノンなどのケトン系溶媒、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶媒、或いは、酢酸エチルなどのエステル系溶媒などの溶媒が単独、或いは複数の混合溶媒として用いられる。水溶性有機溶媒の使用量は、目的により異なる。使用する有機溶媒量が少ない場合には、複合体表面部付近に高い濃度と高い傾斜を持つ複合体が得られ易く、反対に、使用する有機溶媒量が多い場合には、緩やかな濃度傾斜を持つ複合体が得られ易い。
【0056】
有機溶媒量は、通常、水溶液の全重量の50重量%以下、好ましくは40重量%以下が使用される。50重量%を越えると、ゾル溶液内に侵入する水の速度が速くなり、好ましい傾斜構造が得にくくなるため好ましくない。金属アルコキシドの重縮合反応を促進する反応触媒としては上述した酸触媒や塩基性触媒が使用され、いずれも、架橋重合性化合物の硬化反応を阻害しない範囲で且つ出来るだけ少量用いるのが好ましい。
【0057】
本発明の傾斜複合体は、ゾル溶液の賦形物、或いは半硬化させたゾル溶液の賦形物を水溶液と接触させて、保持することよって、賦形物の表面部分から水を侵入させ、金属アルコキシドの重縮合反応を進行させることによって得られる。ゾル溶液と水溶液の接触の方法は、例えば、ゾル溶液の賦形物を水溶液中に直接浸漬させる方法、ゾル溶液の賦形物に水溶液を塗布する方法、水溶液を含浸した紙、布、フィルターなどでゾル溶液の賦形物を覆う方法、ゾル溶液の賦形物に水溶液を吹き付ける方法などを挙げることができる。
【0058】
本発明の金属酸化物の濃度傾斜は、水溶液との接触時間、或いは塗布や吹き付ける場合には、塗布量、吹き付け量により制御される。接触時間はゾル溶液の成分や組成、水溶液中の有機溶媒量や触媒量などにより大きく異なり、一概には規定できないが、例えば、接触時間が短い場合には、複合体の表面部分と内部の金属酸化物濃度の比が大きいものが得られる傾向があり、反対に接触時間が長くなると、複合体の表面部分と内部の金属酸化物濃度の比が小さなものが得られる傾向がある。しかし、接触時間が短すぎると金属アルコキシドの縮重合反応が不十分となって、好ましくない。
【0059】
一方、水溶液の塗布量や吹き付け量も、ゾル溶液内の金属アルコキシドの種類や量、使用する触媒の種類や量、或いは目的により異なる。一般に、塗布量が少ない場合には、複合体の表面部分と内部の金属酸化物濃度の比が大きいものが得られる傾向があり、反対に、塗布量が多くなると、複合体の表面部分と内部の金属酸化物濃度の比が小さなものが得られる傾向がある。しかし、塗布量が少なすぎると金属アルコキシドの縮重合反応が不十分となって、好ましくない。
【0060】
本発明において、架橋重合性化合物を硬化、或いは半硬化させるには、使用する架橋重合性化合物に応じた方法で硬化させる。例えば架橋重合性化合物が熱架橋性の場合には加熱処理、活性エネルギー線架橋重合性化合物を使用する場合には活性エネルギー線を照射する。加熱処理する場合の温度は、使用する化合物の種類、或いは目的などにより異なるが、通常、室温から400℃の範囲で行う。また、熱架橋重合性化合物には、不飽和ポリエステルなどのように空気硬化するものやウレタン樹脂のように湿気硬化するものもあり、これらの方法で架橋硬化させることも可能であり、特に、部分架橋させる際の穏やかな架橋を行う場合には好ましい。
【0061】
活性エネルギー線としては、均一混合液を硬化させることが可能なものであれば任意であり、紫外線、可視光線、赤外線の如き光線;エックス線、ガンマ線の如き電離放射線;電子線、ベータ線、中性子線、重粒子線の如き粒子線が挙げられるが、取り扱い性や装置価格の面から光線が好ましく、紫外線が特に好ましい。全面照射の場合、紫外線強度は0.1〜1000mw/cm2であることが好ましい。また、球状樹脂の凝集体を得る場合等では、紫外線はレーザー光であることも好ましい。
【0062】
照射は、必要に応じて、パターニング照射であって良い。また、活性エネルギー線の照射は空気中で行っても良いが、硬化速度を向上させるため、或いは硬化を完全にするために窒素などの不活性ガス雰囲気下で照射することが好ましい。また、水溶液と接触させた状態で照射することも可能である。この場合には、水溶液中の酸素を除去することも好ましい。また、本発明では、金属アルコキシドの未反応部分の重合を進行させる目的で、最終工程として、400℃以下の温度で加熱処理をすることも可能である。
【0063】
【実施例】
実施例により本発明を具体的に説明する。
(実施例1)
活性エネルギー線架橋重合性化合物として、「ニューフロンティア BPE?4」(第一製薬工業株式会社製のエチレンオキサイド変性ビスフェノールAジアクリレート、以後、「BPE4」と省略する。)10g、光重合開始剤として、「イルガキュア184」(チバ・ガイギ?株式会社製の1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン)0.2g、「MS−51」(三菱化学株式会社製のテトラメトキシシランの部分重合物)2g、アンモニア水(25%水溶液)5mg、及びメタノール4gを用いて、均質ゾル溶液(1)を調製した。
【0064】
均質ゾル溶液(1)をガラス板状に塗布し、約75mW/cm2の紫外線を5秒間照射して、塗膜を半硬化させた。半硬化した塗膜は流動性は殆ど失われているが、非常に柔らかい状態であった。この半硬化させた塗膜を、(水:エタノール)=(10:2、重量比)の水溶液に5分間浸漬させた後、水溶液中で約75mW/cm2の紫外線を90秒間照射して複合体を得た。複合体を170℃で1時間熱処理を施し、約100μm厚の塗膜が得られた。塗膜は透明で外観良好であり、鉛筆硬度は「2H」で、堅い表面硬度を有するものであった。尚、「BPE4」単独硬化物の鉛筆硬度は「F」であった。
【0065】
電子線マイクロアナライザー(EPMA)を用いて、複合体断面のシリカ濃度を測定したところ、塗膜表面付近でシリカ濃度が最大(約35重量%)となり、表面から約50μm内部で約4重量%になるまでシリカ濃度が連続的に減少し、それより内部ではシリカ濃度が約4重量%でほぼ一定となる形態の複合体であることが示された。
【0066】
尚、紫外線源はアイグラフィックス株式会社製の紫外線照射装置「UE031」(出力200Wのメタルハライドランプ使用)を使用した。EPMA測定は島津製作所株式会社製のEPM-810型を用いて、出力15kV-50nA、分解能1μm、毎分100μmのスキャン速度、検出はSiのKα線(7.126オームストロング)で行った。
【0067】
(実施例2)
熱架橋重合性化合物として、「エピクロン 850」(大日本インキ化学工業株式会社製のビスフェノールA型エポキシ樹脂)8gと、アミン系硬化剤、「エピクロン B-053」(大日本インキ化学工業株式会社製)2g、「MS-51」4g、トリエチルアミンを5mg、テトラヒドロフラン(THF)4g、及びメタノール1gを用いて、均質ゾル溶液(2)を調製した。
【0068】
均質ゾル溶液(2)をガラス板状に塗布した後、室温で約4時間保持し、均質透明な塗膜を得た。塗膜は部分的に硬化しているようで、表面は柔らかいが、流動性は見られなかった。この半硬化させた塗膜を、(水:アセトン:エタノール)=(10:2:1、重量比)の水溶液に20分間浸漬させた後、150℃で1時間熱処理した。複合体は膜厚約300μmであり、透明で良好な外観であった。表面硬度は35gf/μm2であった。尚、エポキシ樹脂単独硬化物の約18gf/μm2であった。
【0069】
EPMA測定で複合体断面のシリカ濃度を測定したところ、塗膜表面付近でシリカ濃度が最大(約45重量%)となり、表面から約100μm内部で約10重量%になるまでシリカ濃度が連続的に減少し、それより内部ではシリカ濃度が約10重量%でほぼ一定となる形態の複合体であることが示された。尚、表面硬度は島津製作所株式会社製の微小表面硬度計DUH?200を使用し測定した。
【0070】
(実施例3)
熱架橋重合性化合物として、「アクリディック A−405」(大日本インキ化学工業株式会社製のアクリル樹脂)6g、「スーパーベッカミン G−821−60」(大日本インキ化学工業株式会社製のブチル化メラミン樹脂)1.5gと、「MS−51」1g、トリエチルアミン5mg、テトラヒドロフラン(THF)4g、及びメタノール1gから均質ゾル溶液(3)を調製した。
【0071】
均質ゾル溶液(3)をガラス板状に塗布した後、室温で約4時間保持し、均質透明な塗膜を得た。塗膜を120℃で5分間保持して半硬化させ、半硬化させた塗膜を(水:THF:エタノール)=(10:2:1、重量比)の水溶液に60分間浸漬した後、150℃で1時間熱処理した。得られた複合体は膜厚約200μmであり、均質に乳白濁化していたが、外観は良好で、表面硬度は30gf/μm2であった。尚、アクリル−メラミン樹脂単独硬化物の表面硬度は約20gf/μm2であった。
【0072】
EPMA測定で複合体断面のシリカ濃度を測定したところ、塗膜表面付近でシリカ濃度が最大(約25重量%)となり、表面から約100μm内部で約5重量%になるまでシリカ濃度が連続的に減少し、それより内部ではシリカ濃度が約5重量%でほぼ一定となる形態の複合体であることが示された。
【0073】
(実施例4)
熱架橋重合性化合物として、「ベッコゾール 1343」(大日本インキ化学工業株式会社製のアルキッド樹脂)6g、「スーパーベッカミン G−821−60」2gと、「MS−51」2g、エチレンジアミン5mg、テトラヒドロフラン(THF)3gから均質ゾル溶液(4)を調製した。
【0074】
均質ゾル溶液(4)をガラス板状に塗布した後、室温で約4時間保持し、均質透明な塗膜を得た。塗膜を100℃で5分間保持し半硬化させた。この半硬化させた塗膜を、(水:THF:エタノール)=(10:2:1、重量比)の水溶液に60分間浸漬した後、150℃で1時間熱処理した。複合体は膜厚約200μmであり、均質に乳白濁化していたが、外観は良好であった。表面硬度は42gf/μm2であった。尚、アルキッド−メラミン樹脂単独硬化物の表面硬度は約18gf/μm2であった。
【0075】
EPMA測定で複合体断面のシリカ濃度を測定したところ、塗膜表面付近でシリカ濃度が最大(約60重量%)となり、表面から約70μm内部で約12重量%になるまでシリカ濃度が連続的に減少し、それより内部ではシリカ濃度が約12重量%でほぼ一定となる形態の複合体であることが示された。
【0076】
(実施例5)
熱架橋重合性化合物として、「プライオーフェン J?325」(大日本インキ化学工業株式会社製のフェノール樹脂)10gと、「MS-51」2g、エチレンジアミン5mgから均質ゾル溶液(5)を調製した。
【0077】
均質ゾル溶液(5)をガラス板状に塗布した後、室温で約1時間保持し、均質透明な塗膜を得た。塗膜を80℃で5分間保持し半硬化させた。この半硬化させた塗膜を、(水:エタノール)=(10:2、重量比)の水溶液に20分間浸漬させた後、150℃で1時間熱処理した。複合体は膜厚約200μmであり、無色透明でクラックもなく、良好な外観であった。表面硬度は58gf/μm2であった。尚、フェノール樹脂単独硬化物の表面硬度は約32gf/μm2であった。
【0078】
EPMA測定で複合体断面のシリカ濃度を測定したところ、塗膜表面付近でシリカ濃度が最大(約52重量%)となり、表面から約80μm内部で約8重量%になるまでシリカ濃度が連続的に減少し、それより内部ではシリカ濃度が約8重量%でほぼ一定となる形態の複合体であることが示された。
【0079】
(実施例6)
活性エネルギー線架橋重合性化合物として、「アロニックス M?325」(東亞合成株式会社製のカプロラクトン変性トリ(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、以後、「M325」と省略する。)10g、光重合開始剤として、「イルガキュア184」0.2g、「MS-51」(三菱化学株式会社製のテトラメトキシシランの部分重合物)3g、トリエチルアミン3mg、THF5gから均質ゾル溶液(6)を調製した。
【0080】
均質ゾル溶液(6)をガラス板状に塗布し、約75mW/cm2の紫外線を5秒間照射して、塗膜を半硬化させた。半硬化した塗膜は流動性は殆ど失われているが、非常に柔らかい状態であった。この半硬化させた塗膜を、(水:THF:エタノール)=(10:2:1、重量比)の水溶液に約10分間浸漬させた後、水溶液中で約75mW/cm2の紫外線を90秒間照射し、更に170℃で1時間熱処理した。
【0081】
約100μm厚の塗膜を得た。複合体は透明で良好であり、鉛筆硬度は「5H」で、堅い表面硬度を有するものであった。尚、「M325」単独硬化物の鉛筆硬度は「2H」であった。EPMAを用いて、複合体断面のシリカ濃度を測定したところ、塗膜表面付近でシリカ濃度が最大(約25重量%)、基板面で約3重量%になるまでシリカ濃度が連続的に減少している形態の複合体であることが示された。
【0082】
(比較例1)
「エピクロン 850」4gと、「エピクロン B-053」1g、「MS-51」8g、トリエチルアミンを10mg、THF5g、メタノール3g及び水2.3gから均質ゾル溶液(7)を調製した。この均質ゾル溶液(7)をガラス板状に塗布した後、室温で約4時間保持した後、150℃で1時間熱処理した。均質透明な複合体が得られたが複合体には無数のクラックが発生し、良好なものではなかった。EPMA測定で複合体断面のシリカ濃度を測定したところ、塗膜表面付近から基板面までのシリカ濃度はほぼ均一で、約42重量%であった。
【0083】
【発明の効果】
本発明は、成形材料、塗料、膜材料、電子・電気材料などとして、各種工業分野、建築・土木分野、医療用分野などの各分野で有用な、複合体表面の外観が良好で、表面部に高い金属酸化物濃度を持つ、複合体表面から厚み方向に向かって、金属酸化物濃度が連続的に変化する架橋重合性化合物の硬化物と金属酸化物とからなる成分傾斜複合体の簡便な製造方法を提供することができる。
Claims (7)
- 架橋重合性化合物と金属アルコキシドとを含む均質溶液を賦形し、賦形物を水溶液に接触させて一定時間保持した後、架橋重合性化合物を硬化させることを特徴とする、架橋重合性化合物の硬化物と金属酸化物とからなり、金属酸化物濃度が厚み方向で連続的に変化している成分傾斜複合体の製造方法。
- 架橋重合性化合物と金属アルコキシドとを含む均質溶液を賦形し、賦形物を半硬化させ、更に半硬化した賦形物を水溶液に接触させて一定時間保持した後、架橋重合性化合物を硬化させることを特徴とする、架橋重合性化合物の硬化物と金属酸化物からなり、金属酸化物濃度が厚み方向で連続的に変化している成分傾斜複合体の製造方法。
- 複合体表面部に高い金属酸化物濃度を持ち、内部に向かって、金属酸化物濃度が連続的に減少していることを特徴とする請求項1又は2に記載の成分傾斜複合体の製造方法。
- 金属アルコキシドとして、シリコンアルコキシドを用いることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の成分傾斜複合体の製造方法。
- 架橋重合性化合物が、一分子中に2〜6個の(メタ)アクリル基を有する光架橋重合性化合物であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の成分傾斜複合体の製造方法。
- 架橋重合性化合物が、熱硬化型化合物を用いることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の成分傾斜複合体の製造方法。
- 架橋重合性化合物と金属アルコキシドを含む賦形物が球状体であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の成分傾斜複合体の製造方法。
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