(第1の実施形態)
以下、本発明のヒートシンクにおける第1の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図1は、本発明の第1の実施形態に係るヒートシンクの斜視図、図2は、図1のヒートシンクの裏側の様子を示す斜視図、図3は、本実施の形態に係るヒートシンクに使用される放熱部材の斜視図、図4は、図3のA−A線における断面図、図5(a)は、図1のヒートシンクを構成するファンの裏側の様子を示す斜視図、図5(b)は、図5(a)のファンと、図3の放熱部材との配置関係を示す模式図である。
図1に示すように、ヒートシンク1は、主に、放熱部材10とこの放熱部材10に向けて送風するファン20とで構成されており、ファン20は、放熱部材10の上方に配置されている。このヒートシンク1の裏側には、図2に示すように、例えば、パーソナルコンピュータに使用されるCPUのような発熱体13が配置されるようになっている。この発熱体13は、後記するように放熱部材10を構成するベース板11の裏側の面における略中央に取り付けられるようになっている。なお、本実施形態における発熱体13は、ベース板11の板面にヒートスプレッダ12を介して取り付けられており、ベース板11及びヒートスプレッダ12は、シリコーングリス等の熱伝導グリス(図示せず)で密着している。以下に、放熱部材10及びファン20の順番で説明する。
(放熱部材)
放熱部材10は、図3に示すように、ベース板11と、このベース板11上に形成された放熱フィン集合体14と、シュラウド板18とを備えている。
ベース板11は、その平面形状が矩形の板状体であって、例えば、銅のような熱伝導性が良好な材料で形成されている。
放熱フィン集合体14は、複数枚の放熱フィン15が相互に間隔をあけてベース板11上に立設されることによって形成されたものであり、その外形が略直方体に形成されている。この放熱フィン集合体14を構成する放熱フィン15は、略矩形の板状体であって、図4を併せて参照すると明らかなように、その中央部にスリット16が形成されている。このスリット16は、放熱フィン15の上端縁、つまりベース板11の反対側からベース板11に向けて切り込まれるように形成されており、スリット16の平面形状は矩形になっている。このような放熱フィン15の材料としては、熱伝導性が良好であってその加工が容易なものであれば特に制限はないが、中でもアルミニウム及び銅が好ましい。
図3に示すように、この放熱フィン集合体14の上面には、溝部17が形成されている。この溝部17は、複数の放熱フィン15がベース板11上に立設されることによって各放熱フィン15のスリット16が相互に連なって形成されたものである。つまり、前記したようにスリット16が放熱フィン15の中央部に形成されていることから、この溝部17は、放熱フィン集合体14の上面の中央部を通るように延びている。
シュラウド板18は、図3に示すように、第1シュラウド板18aと第2シュラウド板18bとで構成されている。第1シュラウド板18a及び第2シュラウド板18bのそれぞれは、放熱フィン集合体14の両端に配置された放熱フィン15のそれぞれを覆うように配置されている。これら第1シュラウド板18a及び第2シュラウド板18bは、矩形の板状体である。そして、これら第1シュラウド板18a及び第2シュラウド板18bは、放熱フィン集合体14の両端に配置された放熱フィン15と間隔をあけて配置されると共に、両端の放熱フィン15の板面と平行になるようにベース板11上に立設されている。その結果、第1シュラウド板18a及び第2シュラウド板18bは、放熱フィン集合体14の溝部17の両端をその板面で塞ぐようになり、当該溝部17は、第1シュラウド板18aの板面と第2シュラウド板18bの板面との間で延びるようになっている。このような第1シュラウド板18aと第2シュラウド板18bの材料としては、特に制限はないが、本実施形態の第1シュラウド板18a及び第2シュラウド板18bは、放熱フィン15と同じ材料、つまりアルミニウム又は銅が使用されている。
(ファン)
ファン20は、公知の構造を有するものでよく、本実施形態でのファン20は、図1に示すように、ケーシング23に収納された軸流ファン21と、この軸流ファン21を回転させるモータ(図示せず)と、ケーシング23を放熱部材10の上方に固定する支持部材30とを備えている。このファン20は、ベース板11上で放熱フィン集合体14を挟む位置に配置されている。
ケーシング23は、軸流ファン21を回転可能に収納する空間が形成された箱状体であり、その上面には、軸流ファン21の回転軸21aの上部を支える円形の上部支持部24と、この上部支持部24の周囲で開口する吸気口25とが形成されている。ケーシング23の下面には、図5(a)に示すように、軸流ファン21の回転軸21aの下部を支える円形の下部支持部26と、この下部支持部26の周囲で開口する排気口27とが形成されている。そして、排気口27の周囲には、この排気口27を囲い込むようにフード23aが形成されている。このフード23aは、図2に示すように、ファン20が放熱部材10の上方に配置された際に、放熱フィン集合体14の上方を囲い込むように配置される。
支持部材30は、図5(a)に示すように、ファン20を構成するケーシング23の縁部を貫通する4本のボルトで構成されており、図1を併せて参照すると明らかなように、各ボルトの先端は、ベース板11と螺合している。このような支持部材30によってファン20のケーシング23は、放熱フィン集合体14の上面に対して5mm程度の間隔をおいて配置されるようになっている。
そして、このようにケーシング23が配置されることによって、図5(b)に示すように、軸流ファン21の回転中心Pが放熱フィン集合体14の上面の中央部と向き合うようになっており、軸流ファン21の外縁の回転軌跡ETが第1シュラウド板18a及び第2シュラウド板18bの上方を少なくとも掠めるようになっている。
次に、本実施形態に係るヒートシンクの作用について適宜図面を参照しながら説明する。参照する図面において、図6は、本実施形態に係るヒートシンクにおける風の流れを示す模式図であり、図6(a)は、図1中、Bで示す方向から見たときの風の流れを示す図、図6(b)は、図6(a)中、Cで示す方向から見たときの風の流れを示す図である。なお、図6(a)及び図6(b)中、支持部材30及びフード23aは省略している。
図6(a)に示すように、本実施の形態に係るヒートシンク1では、発熱体13がベース板11の裏側の面、つまり放熱フィン集合体14が形成された面の反対側の面における中央部に取り付けられると、発熱体13からの熱Qは、ベース板11を介して放熱フィン15に伝導する。この際、放熱フィン集合体14の中央部に位置する放熱フィン15の熱分布率が高まる。
その一方で、このヒートシンク1では、図1に示すように、ファン20を構成する軸流ファン21が回転軸21a周りに回転すると、ファン20は吸気口25から空気を吸い込むと共に、図5(a)に示す排気口27から空気を排出する。その結果、図6(a)に示すように、ファン20は、放熱部材10の上方からこの放熱部材10に向けて風Wを送り込む。
このようにして放熱部材10に向けて風Wが送り込まれると、風Wは放熱フィン集合体14に形成された溝部17内に入り込む。この際、軸流ファン21は、図5(b)に示すように、その外縁の回転軌跡ETが第1シュラウド板18a及び第2シュラウド板18bの上方を少なくとも掠めるように配置されていると共に、溝部17が放熱フィン集合体14の上面の中央部に形成されているので、溝部17には、効率的に風Wが送り込まれる。
その一方で、図6(a)を参照すると明らかなように、このヒートシンク1では、溝部17が第1シュラウド板18a及び第2シュラウド板18bの板面の間で延びているため、溝部17に入り込んだ風Wは、第1シュラウド板18a及び第2シュラウド板18bによって、溝部17の両端から放熱部材10の外側に向けて逃げ出ることが妨げられる。
また、このヒートシンク1では、図5(a)を参照すると明らかなように、風Wを送り出す排気口27が下部支持部26周りに形成されており、ファン20が放熱フィン集合体14に向けて送り出す風の量は、排気口27付近では多いが、下部支持部26で遮蔽される回転中心P近傍では、殆どない。
その結果、このヒートシンク1では、図6(a)に示すように、溝部17に入り込んだ風Wが第1シュラウド板18a及び第2シュラウド板18bで遮蔽されること、及び排気口27付近の風Wの量と回転中心P付近での風Wの量とに差異があることによって、溝部17に入り込んだ風Wは、第1シュラウド板18a側及び第2シュラウド板18b側のそれぞれから放熱フィン集合体14の中央部に向かう方向に溝部17を伝って流れていく。また、風Wは、図6(a)に示すように、溝部17を伝って流れていく間に放熱フィン15の間に流れ込んでいく。そして、第1シュラウド板18a側及び第2シュラウド板18b側から流れてきた風Wは、溝部17の中央部、つまり放熱フィン集合体14の中央部でぶつかり合う。その結果、溝部17の中央部でぶつかり合った風Wは、図6(b)に示すように、放熱フィン集合体14の中央部に位置する放熱フィン15の間に流れ込んでいく。
このようなヒートシンク1によれば、ファン20から放熱部材10に送り込まれた風Wが、溝部17を伝って放熱フィン集合体14の中央部まで流れ込み、そして、その中央部で放熱フィン15の間に入り込むため、放熱フィン集合体76(図17(b)参照)に溝部がない従来のヒートシンク71(図17(b)参照)と比較して、発熱体13からの熱Qによって熱分布率が高い放熱フィン集合体14の中央部に位置する放熱フィン15が効率よく冷却される。したがって、本実施形態に係るヒートシンク1によれば、発熱体13を効率よく冷却することができる。
次に、本発明のヒートシンクにおける第2の実施形態乃至第8の実施形態について詳細に説明する。なお、以下に説明する第2の実施形態乃至第8の実施形態に係るそれぞれのヒートシンクは、第1の実施形態に係るヒートシンクと放熱部材のみが相違していると共に、ファンが第1の実施形態と同様に構成されており、そして放熱部材に対するファンの配置が第1の実施形態と同様であるので、以下の第2の実施形態乃至第8の実施形態では、放熱部材についてのみ詳細に説明する。
(第2の実施形態)
本発明のヒートシンクにおける第2の実施形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図7(a)は、第2の実施形態に係るヒートシンクに使用される放熱部材の斜視図、図7(b)は、図7(a)中、D1−D1線における模式断面図、図7(c)は、図7(a)中、D2−D2線における模式断面図である。
図7(a)に示すように、第2の実施形態に係るヒートシンクに使用される放熱部材10の放熱フィン集合体14には、その溝部17を挟む両側に、第1凹部40a及び第2凹部40bが形成されている。そして、第1凹部40a及び第2凹部40bのそれぞれは、溝部17に接続されており、第1凹部40a、第2凹部40b及び溝部17は、放熱フィン集合体14に相互に一体となった空間を形成している。なお、ここでの溝部17は、特許請求の範囲(請求項3)にいう「溝部」に相当すると共に、特許請求の範囲(請求項7)にいう「空気流通路」に相当する。
第1凹部40aは、放熱フィン集合体14の第1シュラウド板18a寄りに形成されており、第2凹部40bは、放熱フィン集合体14の第2シュラウド板18b寄りに形成されている。第1凹部40a及び第2凹部40bは、図7(b)及び図7(c)に示すように、溝部17が延びる方向から見た断面形状が、逆三角形になっており、第1凹部40a及び第2凹部40bのそれぞれには、溝部17に接続される側と反対の側に、溝部17に向けて下り勾配のスロープ41が形成されている。
次に、この放熱部材10を備えたヒートシンクの作用について説明する。このような放熱部材10にファン20(図1参照)から風が送り込まれると、第1の実施形態と同様にして(図6(a)参照)、溝部17に風Wが入り込むと共に、溝部17に入り込んだ風Wは、第1シュラウド板18a側及び第2シュラウド板18b側から放熱フィン集合体14の中央部に向かう方向に溝部17を伝って流れていく。また、風Wは、第1の実施形態と同様にして(図6(a)参照)、溝部17を伝って流れていく間に放熱フィン15の間に流れ込んでいくと共に、第1シュラウド板18a側及び第2シュラウド板18b側から流れてきた風Wは、溝部17の中央部でぶつかり合う。そして、ぶつかり合った風Wは、第1の実施形態と同様にして(図6(b)参照)、放熱フィン集合体14の中央部において放熱フィン15の間に流れ込んでいく。
そして、本実施形態における放熱部材10を使用したヒートシンクでは、図7(a)、図7(b)及び図7(c)に示すように、放熱フィン集合体14に第1凹部40a及び第2凹部40b並びに溝部17が形成されているため、ファン20(図1参照)から送り込まれた風は、これら第1凹部40a及び第2凹部40b並びに溝部17に入り込む。つまり、このヒートシンクでは、放熱部材10が風Wを受けた際に、放熱フィン集合体76(図17(b)参照)に溝部がない従来のヒートシンク71(図17(b)参照)と比較して、放熱部材10からその外方向に逃げ出る風Wの量が低減される。
また、本実施形態における放熱部材10を使用したヒートシンクでは、放熱フィン集合体14の上面に形成された第1凹部40a及び第2凹部40bで風を受け入れるため、溝部17のみで風を受け入れる放熱部材10(図3参照)を使用した第1の実施形態でのヒートシンク1(図1参照)と比較して、溝部17への風Wの流入量が多くなる。
また、本実施形態における放熱部材10を使用したヒートシンクでは、第1凹部40a及び第2凹部40bが溝部17を挟んで形成されているので、例えば、溝部17の片方側に並べて第1凹部40a及び第2凹部40bが放熱フィン集合体14に形成された放熱部材と比較して、第1凹部40a及び第2凹部40bをより大きく形成することができる。その結果、この放熱部材10では、より多くの風Wを受け止めることができるようになるため、発熱体13(図1参照)の冷却効率が高まる。
また、本実施形態における放熱部材10を使用したヒートシンクでは、図7(b)及び図7(c)に示すように、第1凹部40a及び第2凹部40bに受け入れられる風Wは、スロープ41に沿うように流れて溝部17に効率よく導かれる。
また、本実施形態における放熱部材10を使用したヒートシンクでは、図7(b)及び図7(c)に示すように、風Wは、スロープ41に沿って流れる際に放熱フィン15間に流れ込むと共に、溝部17の壁面に突き当たった風Wの一部は、放熱フィン15間に流れ込む。
したがって、このような放熱部材10を使用したヒートシンクによれば、第1の実施形態に係るヒートシンク1と同様に、風Wが、熱分布率の高い放熱フィン集合体14の中央部に溝部17を伝って導かれるので、放熱フィン集合体76(図17(b)参照)-に溝部がない従来のヒートシンク71(図17(b)参照)と比較して、発熱体13(図1参照)の冷却効率が高まる。
また、この放熱部材10を使用したヒートシンクによれば、第1シュラウド板18a及び第2シュラウド板18bによって放熱部材10の外方向に逃げ出る風Wの量が低減されるので、従来のヒートシンク71(図17(b)参照)と比較して、発熱体13(図2参照)の冷却効率が高まる。
また、この放熱部材10を使用したヒートシンクによれば、第1凹部40a及び第2凹部40b並びにスロープ41によって溝部17に流れ込む風Wの量が多くなるので、第1の実施形態に係るヒートシンク1(図1参照)と比較して、発熱体13(図2参照)の冷却効率がさらに高まる。
(第3の実施形態)
本発明のヒートシンクにおける第3の実施形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図8(a)は、第3の実施形態に係るヒートシンクに使用される放熱部材の斜視図、図8(b)は、図8(a)中、E1−E1線における模式断面図、図8(c)は、図8(a)中、E2−E2線における模式断面図である。
図8(a)に示すように、第3の実施形態に係るヒートシンクに使用される放熱部材10の放熱フィン集合体14には、その中央部で溝部17を介して向き合うようにして第1凹部40a及び第2凹部40bが形成されている。そして、第1凹部40a及び第2凹部40bのそれぞれは、溝部17に接続されており、第1凹部40a、第2凹部40b及び溝部17は、相互に一体となった空間を放熱フィン集合体14に形成している。なお、ここでの溝部17は、特許請求の範囲(請求項3)にいう「溝部」に相当すると共に、特許請求の範囲(請求項7)にいう「空気流通路」に相当する。
第1凹部40a及び第2凹部40bは、図8(b)及び図8(c)に示すように、放熱フィン15の板面に沿う方向から見た断面形状が、逆三角形になっている。そして、第1凹部40aには、第1シュラウド板18a側から第2シュラウド板18b側に向けて下り勾配のスロープ41が形成されており、第2凹部40bには、第2シュラウド板18b側から第1シュラウド板18a側に向けて下り勾配のスロープ41が形成されている
次に、この放熱部材10を備えたヒートシンクの作用について説明する。このような放熱部材10にファン20(図1参照)から風Wが送り込まれると、第1の実施形態と同様にして(図6(a)参照)、溝部17に風Wが入り込むと共に、溝部17に入り込んだ風Wは、第1シュラウド板18a側及び第2シュラウド板18b側から放熱フィン集合体14の中央部に向かう方向に溝部17を伝って流れていく。また、風Wは、第1の実施形態と同様にして(図6(a)参照)、溝部17を伝って流れていく間に放熱フィン15の間に流れ込んでいく。
そして、本実施形態における放熱部材10を使用したヒートシンクでは、図8(a)に示すように、放熱フィン集合体14に第1凹部40a及び第2凹部40b並びに溝部17が形成されているため、ファン20(図1参照)から送り込まれた風Wは、第1凹部40a及び第2凹部40b並びに溝部17に受け止められる。つまり、このヒートシンクでは、放熱部材10が風Wを受けた際に、放熱フィン集合体76(図17(b)参照)に溝部がない従来のヒートシンク71(図17(b)参照)と比較して、放熱部材10からその外方向に逃げ出る風Wの量が低減される。
また、本実施形態における放熱部材10を使用したヒートシンクでは、図8(b)及び図8(c)に示すように、第1凹部40a及び第2凹部40bに受け入れられる風Wは、スロープ41に沿うように流れる。そして、風Wは、スロープ41に沿って流れる際に放熱フィン15間に流れ込んでいく。
したがって、このような放熱部材10を使用したヒートシンクによれば、第1シュラウド板18a及び第2シュラウド板18bによって放熱部材10からその外方向に逃げ出る風Wの量が低減されるので、従来のヒートシンク71(図17(b)参照)と比較して、発熱体13(図1参照)の冷却効率が高まる。
また、この放熱部材10を使用したヒートシンクによれば、風Wが第1凹部40a及び第2凹部40bに形成されたスロープ41並びに溝部17を伝って流れる間に放熱フィン15間に流れ込むので、発熱体13(図1参照)の冷却効率が高まる。
(第4の実施形態)
本発明のヒートシンクにおける第4の実施形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図9(a)は、第4の実施形態に係るヒートシンクに使用される放熱部材の斜視図、図9(b)は、図9(a)中、F1−F1線における模式断面図、図9(c)は、図9(a)中、F2−F2線における模式断面図である。
図9(a)に示すように、第4の実施形態に係るヒートシンクに使用される放熱部材10の放熱フィン集合体14には、第2の実施形態における放熱部材10と同様に、溝部17(空気流通路)を挟む両側に、第1凹部40a及び第2凹部40bが形成されている。つまり、第1凹部40aは、第1シュラウド板18aから第2シュラウド板18b側に向けて広がるように形成されており、第2凹部40bは、第2シュラウド板18bから第1シュラウド板18a側に向けて広がるように形成されている。
第1凹部40a及び第2凹部40bは、図9(b)及び図9(c)に示すように、放熱フィン15の板面に沿う方向から見た断面形状が、逆三角形になっている。そして、第1凹部40aには、第1シュラウド板18a側から第2シュラウド板18b側に向けて下り勾配のスロープ41が形成されており、第2凹部40bには、第2シュラウド板18b板側から第1シュラウド板18a側に向けて下り勾配のスロープ41が形成されている
次に、この放熱部材10を備えたヒートシンクの作用について説明する。このような放熱部材10にファン20(図1参照)から風が送り込まれると、第1の実施形態と同様にして(図6(a)参照)、溝部17に風Wが入り込むと共に、溝部17に入り込んだ風Wは、第1シュラウド板18a側及び第2シュラウド板18b側から放熱フィン集合体14の中央部に向かう方向に溝部17を伝って流れていく。また、風Wは、第1の実施形態と同様にして(図6(a)参照)、溝部17を伝って流れていく間に放熱フィン15の間に流れ込んでいくと共に、第1シュラウド板18a側及び第2シュラウド板18b側から流れてきた風Wは、溝部17の中央部でぶつかり合う。そして、ぶつかり合った風Wは、第1の実施形態と同様にして(図6(b)参照)、放熱フィン集合体14の中央部において放熱フィン15の間に流れ込んでいく。
そして、本実施形態における放熱部材10を使用したヒートシンクでは、図9(a)に示すように、放熱フィン集合体14に第1凹部40a及び第2凹部40b並びに溝部17が形成されているため、ファン20(図1参照)から送り込まれた風Wは、第1凹部40a及び第2凹部40b並びに溝部17に受け止められる。つまり、このヒートシンクでは、放熱部材10が風Wを受けた際に、放熱フィン集合体76(図17(b)参照)に溝部がない従来のヒートシンク71(図17(b)参照)と比較して、放熱部材10からその外方向に逃げ出る風Wの量が低減される。
そして、本実施形態における放熱部材10を使用したヒートシンクでは、図9(a)に示すように、放熱フィン集合体14に第1凹部40a及び第2凹部40bが形成されているため、第2実施形態における放熱部材10と同様に、溝部17のみで風を受け入れる放熱部材10(図3参照)を使用した第1の実施形態に係るヒートシンク1(図1参照)と比較して、溝部17への風の流入量が多くなる。
また、本実施形態における放熱部材10を使用したヒートシンクでは、図9(b)及び図9(c)に示すように、第1凹部40a及び第2凹部40bに受け入れられる風Wは、スロープ41に沿うように流れる。そして、風Wは、スロープ41に沿って流れる際に放熱フィン15間に流れ込んでいく。
したがって、このような放熱部材10を使用したヒートシンクによれば、第1の実施形態に係るヒートシンク1と同様に、風Wが、熱分布率の高い放熱フィン集合体14の中央部に溝部17を伝って導かれるので、放熱フィン集合体76(図17(b)参照)に溝部がない従来のヒートシンク71(図17(b)参照)と比較して、発熱体13(図1参照)の冷却効率が高まる。
また、この放熱部材10を使用したヒートシンクによれば、第1シュラウド板18a及び第2シュラウド板18bによって放熱部材10の外方向に逃げ出る風Wの量がさらに低減されるので、従来のヒートシンク71(図17(b)参照)と比較して、発熱体13(図2参照)の冷却効率が高まる。
また、この放熱部材10を使用したヒートシンクによれば、第1凹部40a及び第2凹部40b並びにスロープ41によって溝部17に流れ込む風Wの量が多くなるので、第1の実施形態に係るヒートシンク1(図1参照)と比較して、発熱体13(図2参照)の冷却効率が高まる。
また、この放熱部材10を使用したヒートシンクによれば、風Wが第1凹部40a及び第2凹部40bに形成されたスロープ41並びに溝部17を伝って流れる間に放熱フィン15間に流れ込むので、発熱体13(図1参照)の冷却効率が高まる。
(第5の実施形態)
本発明のヒートシンクにおける第5の実施形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図10(a)は、第5の実施形態に係るヒートシンクに使用される放熱部材の斜視図、図10(b)は、図10(a)中、G1−G1線における模式断面図、図10(c)は、図10(a)中、G2−G2線における模式断面図である。
図10(a)に示すように、第5の実施形態に係るヒートシンクに使用される放熱部材10の放熱フィン集合体14は、第1シュラウド板18a側に形成された第1凹部40aと、第2シュラウド板18b側に形成された第2凹部40bとを備えている。そして、第1凹部40aと第2凹部40bとの間には、第1凹部40a及び第2凹部40bを繋ぐ溝部17が形成されている。なお、ここでの溝部17は、特許請求の範囲(請求項3)にいう「溝部」に相当すると共に、特許請求の範囲(請求項7)にいう「空気流通路」に相当する。
この溝部17は、放熱フィン集合体14の中央部を通るように第1凹部40a及び第2凹部40bの間で延びている。そして、溝部17の底部と第1凹部40a及び第2凹部40bの底部とは、図10(b)及び図10(c)に示すように、ベース板11からの高さが同じになっている。
第1凹部40a及び第2凹部40bのそれぞれには、図10(b)及び図10(c)に示すように、放熱フィン15の両端側から第1凹部40a及び第2凹部40bのそれぞれの底部に向かって下り勾配の第1スロープ41a及び第2スロープ41bが形成されている。なお、本実施形態での第1スロープ41aは、第2スロープ41bと比較して、傾斜面の長さ(高低方向の長さ)が長くなるように形成されており、第1凹部40a及び第2凹部40bのそれぞれにおける第1スロープ41a及び第2スロープ41bの形成位置は、溝部17の延びる方向に対して左右入れ違いになるように形成されている。
次に、この放熱部材10を備えたヒートシンクの作用について説明する。このような放熱部材10にファン20(図1参照)から風が送り込まれると、図10(b)及び図10(c)に示すように、放熱フィン集合体14の上面に形成された第1凹部40a及び第2凹部40bに受け入れられる。そして、受け入れられた風Wは、第1凹部40a及び第2凹部40bのそれぞれの第1スロープ41a及び第2スロープ41bに沿うように流れて溝部17に向かって流れていく。このとき風Wの一部は、第1スロープ41a及び第2スロープ41bに沿って流れていく間に放熱フィン15間に流れ込んでいく。その一方で、第1スロープ41a及び第2スロープ41bに沿って流れる風Wは、溝部17に入り込むと共に、溝部17を伝って放熱フィン集合体14の中央部に流れ込んでいく。そして、第1凹部40a及び第2凹部40bのそれぞれから放熱フィン集合体14の中央部に流れ込んだ風Wは、相互にぶつかり合うことによって放熱フィン集合体14の中央部近傍における放熱フィン15間に流れ込んでいく。
また、本実施形態における放熱部材10を使用したヒートシンクでは、ファン20(図1参照)からの風Wが、前記したように第1凹部40a及び第2凹部40bに受け入れられる。その結果、この本実施形態における放熱部材10を使用したヒートシンクでは、放熱部材10が風Wを受けた際に、放熱フィン集合体76(図17(b)参照)に溝部がない従来のヒートシンク71(図17(b)参照)と比較して、放熱部材10からその外方向に逃げ出る風Wの量が低減される。
したがって、このような放熱部材10を使用したヒートシンクによれば、第1の実施形態に係るヒートシンク1と同様に、風Wが、熱分布率の高い放熱フィン集合体14の中央部に溝部17を伝って導かれるので、放熱フィン集合体76(図17(b)参照)に溝部がない従来のヒートシンク71(図17(b)参照)と比較して、発熱体13(図1参照)の冷却効率が高まる。
また、この放熱部材10を使用したヒートシンクによれば、第1シュラウド板18a及び第2シュラウド板18bによって放熱部材10の外方向に逃げ出る風Wの量が低減されるので、従来のヒートシンク71(図17(b)参照)と比較して、発熱体13(図2参照)の冷却効率が高まる。
また、この放熱部材10を使用したヒートシンクによれば、第1凹部40a及び第2凹部40b並びに第1スロープ41a及び第2スロープ41bによって溝部17に流れ込む風Wの量が多くなるので、第1の実施形態に係るヒートシンク1(図1参照)と比較して、発熱体13(図2参照)の冷却効率がさらに高まる。
(第6の実施形態)
本発明のヒートシンクにおける第6の実施形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図11(a)は、第6の実施形態に係るヒートシンクに使用される放熱部材の斜視図、図11(b)は、図11(a)中、H−H線における模式断面図である。
第6の実施形態に係るヒートシンクに使用される放熱部材10は、図11(a)及び図11(b)に示すように、第2の実施形態での放熱部材10(図7(a)参照)において、溝部17に代えて後記する空気流通路50を形成した他は第2の実施形態での放熱部材10と同様に構成されている。
本実施形態における放熱部材10は、図11(a)及び図11(b)に示すように、放熱フィン集合体14の中央部で第1凹部40a及び第2凹部40bを連通するように空気流通路50が形成されている。この空気流通路50は、第2の実施形態における放熱部材10の溝部17に対応するものであり、第1凹部40a及び第2凹部40bの間で延びている。この空気流通路50は、図11(b)に示すように、放熱フィン集合体14の中央部で放熱フィン15を貫くようなトンネル状に形成されている。この空気流通路50は、その延びる方向から見た断面形状が矩形になっている。
次に、この放熱部材10を備えたヒートシンクの作用について説明する。このような放熱部材10にファン20(図1参照)から風Wが送り込まれると、図11(b)に示すように、放熱フィン集合体14の上面に形成された第1凹部40a及び第2凹部40bに受け入れられる。そして、受け入れられた風Wは、第1凹部40a及び第2凹部40bのそれぞれでスロープ41に沿うように流れて空気流通路50に向かう。このとき風Wの一部は、スロープ41に沿って流れていく間に放熱フィン15の間に流れ込んでいく。その一方で、スロープ41に沿って流れる風Wは、空気流通路50に入り込むと共に、空気流通路50を伝って放熱フィン集合体14の中央部に流れ込んでいく。そして、第1凹部40a及び第2凹部40bのそれぞれから放熱フィン集合体14の中央部に流れ込んだ風Wは、相互にぶつかり合うことによって放熱フィン集合体14の中央部近傍における放熱フィン15間に流れ込んでいく。
また、本実施形態における放熱部材10を使用したヒートシンクでは、ファン20(図1参照)からの風Wが、前記したように第1凹部40a及び第2凹部40bに受け入れられる。その結果、この本実施形態における放熱部材10を使用したヒートシンクでは、放熱部材10が風Wを受けた際に、放熱フィン集合体76(図17(b)参照)に空気流通路がない従来のヒートシンク71(図17(b)参照)と比較して、放熱部材10からその外方向に逃げ出る風Wの量が低減される。
したがって、このような放熱部材10を使用したヒートシンクによれば、第1の実施形態に係るヒートシンク1と同様に、風Wが、熱分布率の高い放熱フィン集合体14の中央部に空気流通路50を伝って導かれるので、放熱フィン集合体76(図17(b)参照)に空気流通路がない従来のヒートシンク(図17(b)参照)と比較して、発熱体13(図2参照)の冷却効率が高まる。
また、この放熱部材10を使用したヒートシンクによれば、第1シュラウド板18a及び第2シュラウド板18bによって放熱部材10の外方向に逃げ出る風Wの量が低減されるので、従来のヒートシンク71(図17(b)参照)と比較して、発熱体13(図2参照)の冷却効率がさらに高まる。
また、この放熱部材10を使用したヒートシンクによれば、第1凹部40a及び第2凹部40b並びにスロープ41によって空気流通路50に流れ込む風Wの量が多くなるので、第1の実施形態に係るヒートシンク1と比較して、発熱体13(図2参照)の冷却効率がさらに高まる。
(第7の実施形態)
本発明のヒートシンクにおける第7の実施形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図12(a)は、第7の実施形態に係るヒートシンクに使用される放熱部材の斜視図、図12(b)は、図12(a)中、J1−J1線における模式断面図、図12(c)は、図12(a)中、J2−J2線における模式断面図である。
第7の実施形態に係るヒートシンクに使用される放熱部材10は、図12(a)、図12(b)及び図12(c)に示すように、第6の実施形態における放熱部材10(図11(a)参照)において、第1凹部40a及び第2凹部40bのそれぞれに後記する庇部51が形成されている他は第6の実施形態における放熱部材10と同様に構成されている。
本実施形態における放熱部材10は、図12(a)、図12(b)及び図12(c)に示すように、第1凹部40a及び第2凹部40bのそれぞれに庇部51が形成されている。この庇部51は、スロープ41の反対側で第1凹部40a側及び第2凹部40b側に張り出すように放熱フィン集合体14の上面側に形成されたものである。
次に、この放熱部材10を備えたヒートシンクの作用について説明する。このような放熱部材10にファン20(図1参照)から風Wが送り込まれると、図12(b)及び図112(c)に示すように、放熱フィン集合体14の上面に形成された第1凹部40a及び第2凹部40bに受け入れられる。そして、受け入れられた風Wは、第1凹部40a及び第2凹部40bのそれぞれでスロープ41に沿うように流れて空気流通路50を介して放熱フィン集合体14の中央部に向けて送り込まれると共に、その風Wの一部は、第1凹部40a及び第2凹部40bの底部からスロープ41の反対側の壁面を伝い上がって庇部51に突き当たる。このとき風Wは、その一部がスロープ41、第1凹部40a及び第2凹部40bの底部及びスロープ41の反対側の壁面に沿って流れていく間に放熱フィン15間に流れ込んでいく。その一方で、第1凹部40a及び第2凹部40bのそれぞれから放熱フィン集合体14の中央部に流れ込んだ風Wは、相互にぶつかり合うことによって放熱フィン集合体14の中央部近傍における放熱フィン15間に流れ込んでいく。
また、本実施形態における放熱部材10を使用したヒートシンクでは、ファン20(図1参照)からの風Wが、前記したように第1凹部40a及び第2凹部40bに受け入れられる。その結果、この本実施形態における放熱部材10を使用したヒートシンクでは、放熱部材10が風Wを受けた際に、放熱フィン集合体76(図17(b)参照)に空気流通路がない従来のヒートシンク71(図17(b)参照)と比較して、放熱部材10からその外方向に逃げ出る風Wの量が低減される。
また、本実施形態における放熱部材10を使用したヒートシンクでは、第1凹部40a及び第2凹部40bに受け入れられた風Wは、第1凹部40a及び第2凹部40bの底部からスロープ41の反対側の壁面を伝い上がって庇部51に突き当たる。その結果、第1凹部40a及び第2凹部40bに受け入れられた風Wが、第1凹部40a及び第2凹部40b内に留められることによって、空気流通路50に流れ込む風Wの量が増大する。
したがって、このような放熱部材10を使用したヒートシンクによれば、第1の実施形態に係るヒートシンク1と同様に、風Wが、熱分布率の高い放熱フィン集合体14の中央部に空気流通路50を伝って導かれるので、放熱フィン集合体76(図17(b)参照)に空気流通路がない従来のヒートシンク71(図17(b)参照)と比較して、発熱体13(図1参照)の冷却効率が高まる。
また、この放熱部材10を使用したヒートシンクによれば、第1シュラウド板18a及び第2シュラウド板18bによって放熱部材10の外方向に逃げ出る風Wの量が低減され、さらには庇部51によって空気流通路50に流れ込む風Wの量が増大するので、従来のヒートシンク71(図17(b)参照)と比較して、発熱体13(図2参照)の冷却効率が高まる。
また、この放熱部材10を使用したヒートシンクによれば、第1凹部40a、第2凹部40b、スロープ41及び庇部51によって空気流通路50に流れ込む風Wの量が多くなるので、第1の実施形態に係るヒートシンク1と比較して、発熱体13(図2参照)の冷却効率がさらに高まる。
(第8の実施形態)
本発明のヒートシンクにおける第8の実施形態について適宜図面を参照しながら詳細に説明する。図13は、第8の実施形態に係るヒートシンクに使用される放熱部材の斜視図である。
第8の実施形態に係るヒートシンクに使用される放熱部材10は、図13に示すように、第2の実施形態における放熱部材10(図7(a)参照)において、第1シュラウド板18a及び第2シュラウド板18bをそれぞれ複数枚配置した他は第2の実施形態における放熱部材10と同様に構成されている。
このような放熱部材10を使用したヒートシンクによれば、第2の実施形態に係るヒートシンク1と同様に、風が、熱分布率の高い放熱フィン集合体14の中央部に溝部17を伝って導かれるので、放熱フィン集合体76(図17(b)参照)に溝部がない従来のヒートシンク(図17(b)参照)と比較して、発熱体13(図1参照)の冷却効率が高まる。
また、この放熱部材10を使用したヒートシンクによれば、放熱部材10が第1凹部40a及び第2凹部40bで風を受け止めるため、従来のヒートシンク71(図17(b)参照)と比較して、放熱部材10の外方向に逃げ出る風Wの量が低減される。その結果、この放熱部材10を使用したヒートシンクによれば、従来のヒートシンク71(図17(b)参照)と比較して、発熱体13(図2参照)の冷却効率が高まる。
また、この放熱部材10を使用したヒートシンクによれば、第1凹部40a及び第2凹部40b並びにスロープ41によって溝部17に流れ込む風Wの量が多くなるので、第1の実施形態に係るヒートシンク1と比較して、発熱体13(図2参照)の冷却効率がさらに高まる。
(ヒートシンクにおける放熱性能の評価試験)
次に、本発明に係るヒートシンクにおける放熱性能の評価試験を行ったので、その結果を以下に示す。
この評価試験では、第1の実施形態乃至第8の実施形態における放熱部材10に、3000回転/分の回転速度でその最大送風量が1.06m3/分のファン20が組み付けられたヒートシンクについてその放熱性能を評価した。なお、ここでは、図2に示すように、フード23aを有するファン20が支持部材30(4本のボルト)で放熱部材10に取り付けられたヒートシンクが想定されている。この放熱性能の評価試験では、放熱部材10の熱抵抗(℃/W)をシュミレーションによって解析した。そして、ここでは放熱部材10と大気との間の熱抵抗(℃/W)を解析した。また、発熱体13として消費電力が90WのCPUを使用した場合が想定されている。
そして、この評価試験では、図2に示すように、ベース板11の裏側に発熱体13が熱伝導グリス(熱伝導率3.5W/m℃、厚み0.16mm)及び銅製のヒートスプレッダ12(縦31mm×横31mm×厚み1mm)を介して取り付けられた場合を想定して解析が行われた。
この評価試験では、アルミニウム製の放熱フィン15(幅65mm×高さ37mm×厚み0.6mm)が銅製のベース板11(縦69mm×横83mm×厚み4mm)上に1.2mmの間隔で42枚立設された放熱フィン集合体14と、この放熱フィン集合体14の両端に1.2mmの間隔をあけて配置されたアルミニウム製の第1シュラウド板18a及び第2シュラウド板18b(幅65mm×高さ37mm×厚み0.6mm)とを備えた第1の実施形態乃至第8の実施形態の放熱部材10(図3、図7(a)、図8(a)、図9(a)、図10(a)、図11(a)、図12(a)及び図13参照)における熱抵抗(℃/W)が解析された。なお、第8の実施形態の放熱部材10(図13参照)における第1シュラウド板18a及び第2シュラウド板18bの枚数は、それぞれ4枚とした。また、第8の実施形態では、ファン20(図1参照)が、放熱部材10の最も外側に配置された第1シュラウド板18a及び第2シュラウド板18bの上方を軸流ファン21の外縁の回転軌跡ET(図5(b)参照)が掠めるように配置された。
また、この評価試験では、比較例として、図17(a)及び図17(b)に示すような従来のヒートシンク71に使用される放熱部材71bの熱抵抗が併せて解析された。この比較例で使用された放熱部材71bは、図3に示す第1の実施形態での放熱部材10において、放熱フィン集合体14に溝部17が形成されていない他は第1の実施形態の放熱部材10と同様に構成されている。なお、この比較例の放熱部材71bの評価試験では、実施例1乃至実施例8の放熱部材10に取り付けたファン20(図1参照)と同様のものが放熱部材71bに取り付けられた場合を想定している。
以上のような評価試験で解析された第1の実施形態乃至第8の実施形態における放熱部材10及び比較例の放熱部材の熱抵抗(℃/W)を表1に示す。なお、表1中の「熱抵抗(℃/W)の比」は、前記した従来のヒートシンクに使用される放熱部材71b(図17(a)及び図17(b)参照)の熱抵抗(℃/W)を「1」とした場合の、第1の実施形態乃至第8の実施形態における放熱部材10の熱抵抗(℃/W)の相対値である。また、表1中の最高温度(℃)は、第1の実施形態乃至第8の実施形態における放熱部材10及び比較例の放熱部材71b(図17(b)参照)の最高温度を示している。
表1から明らかなように、第1の実施形態乃至第8の実施形態における放熱部材10は、従来のヒートシンクに使用される放熱部材71b(図17(b)参照)(比較例)と比較して、熱抵抗(℃/W)及び放熱部材10における最高温度(℃)が低く、放熱性能に優れていることが判明した。また、第1の実施形態乃至第8の実施形態における放熱部材10では、放熱フィン集合体14に溝部17、第1凹部40a及び第2凹部40bのいずれかが形成されることによって、その放熱フィン15の放熱面積が、従来のヒートシンクに使用される放熱部材71b(図17(b)参照)(比較例)と比較して低減されている。それにもかかわらず第1の実施形態乃至第8の実施形態における放熱部材10の放熱性能が従来の放熱部材71bと比較して優れているのは、ファン20からの風Wが放熱フィン集合体14の中央部に向けて効率的に送り込まれているためと考えられる。
次に、第2の実施形態の放熱部材10(図7(a)参照)に形成された第1凹部40a及び第2凹部40bの大きさを変化させた場合におけるその放熱部材10の熱抵抗(℃/W)の変化を前記シュミレーションによって解析した。
この解析で使用した第2の実施形態の放熱部材10の構成は、第1凹部40a及び第2凹部40bの大きさを除く他は前記放熱性能の評価試験で使用されたものと同様であり、42枚の放熱フィン15からなる放熱フィン集合体14と、この放熱フィン集合体14をその両端から挟み込む第1シュラウド板18a及び第2シュラウド板18bとを備えている。
この解析で使用された放熱部材10は、第1シュラウド板18aから第2シュラウド板18b側に向けて広がる第1凹部40aと、第2シュラウド板18bから第1シュラウド板18a側に向けて広がる第2凹部40bの大きさが段階的に広げられている。具体的には、第1凹部40aの大きさは、第1シュラウド板18aから第2シュラウド板18bに向けて並べられる図7(b)に示す形状の放熱フィン15の枚数を増加させることによって行われ、第2凹部40bの大きさは、第2シュラウド板18bから第1シュラウド板18aに向けて並べられる図7(c)に示す形状の放熱フィン15の枚数を増加させることによって行われた。なお、第1凹部40aと第2凹部40bの大きさが相互に等しくなるように、図7(b)に示す形状の放熱フィン15の枚数と図7(c)に示す形状の放熱フィン15の枚数とは同数とした。そして、前記した熱抵抗(℃/W)の解析は、次の放熱部材10(I)、放熱部材10(II)、放熱部材10(III)及び放熱部材10(IV)について行われた。
放熱部材10(I)は、第1凹部40a及び第2凹部40bが形成されていない第1の実施形態での放熱部材10(図3参照)と同様のものである。
放熱部材10(II)は、第1凹部40aが、図7(b)に示す放熱フィン15が第1シュラウド板18a側から9枚並べられて形成され、第2凹部40bが、図7(c)に示す放熱フィン15が第2シュラウド板18b側から9枚並べられて形成されている。
放熱部材10(III)は、第1凹部40aが、図7(b)に示す放熱フィン15が第1シュラウド板18a側から15枚並べられて形成され、第2凹部40bが、図7(c)に示す放熱フィン15が第2シュラウド板18b側から15枚並べられて形成されている。
放熱部材10(IV)は、第1凹部40aが、図7(b)に示す放熱フィン15が第1シュラウド板18a側から21枚並べられて形成され、第2凹部40bが、図7(c)に示す放熱フィン15が第2シュラウド板18b側から21枚並べられて形成されている。
また、ここでは、図14(a)に示す放熱部材10a(比較例)の熱抵抗(℃/W)が前記シュミレーションによって解析された。この放熱部材10aは、第1シュラウド板18aと第1シュラウド板18aとの間の全域にわたって凹部80が形成されたものである。この凹部80は、図14(a)中のK−K線における模式断面図である図14(b)に示すように、V字溝が形成された放熱フィン15がベース板11上に並べられて形成されたものである。この放熱部材10aは、第2の実施形態での放熱部材10(図7(a)参照)において、第1凹部40aを第1シュラウド板18aから第2シュラウド板18bまで広げると共に、第2凹部40bを第2シュラウド板18bから第1シュラウド板18aまで広げることによって得られるが、この放熱部材10aでは、第1凹部40a及び第2凹部40bの全体が溝部17によって繋げられるため、第1凹部40a及び第2凹部40bは消失している。
また、ここでは、図15(a)の斜視図に示す放熱部材10b(比較例)、図15(b)の斜視図に示す放熱部材10c(比較例)及び図15(c)の斜視図に示す放熱部材10d(比較例)の熱抵抗(℃/W)を前記シュミレーションによって解析した。
放熱部材10bは、放熱部材10(I)(第1の実施形態での放熱部材10(図3参照))において、第1シュラウド板18a及び第2シュラウド板18b(図3参照)に代えて図4に示す形状の放熱フィン15をそれぞれ使用したものである。
放熱部材10cは、第2の実施形態での放熱部材10(図7(a)参照)において、第1シュラウド板18aに代えて図7(b)に示す形状の放熱フィン15を使用すると共に、第2シュラウド板18bに代えて図7(c)に示す形状の放熱フィン15を使用したものであって、図7(b)に示す形状の放熱フィン15が15枚、図7(c)に示す形状の放熱フィン15が15枚ベース板11上に並べられたものである。つまり、図7(b)に示す形状の放熱フィン15及び図7(c)に示す形状の放熱フィン15が放熱部材10cの両端からその中央部に向かってそれぞれ16枚並べられている。そして、放熱部材10cの中央部には、12枚の放熱フィン15が配設されており、この放熱フィン15は、溝部17(図7(a)参照)を構成するスリットのみが形成されたものである。
放熱部材10dは、放熱部材10a(図14(a)参照)において、第1シュラウド板18a及び第2シュラウド板18b(図14(a)参照)に代えて図14(b)に示す形状の放熱フィン15をそれぞれ使用したものである。
以上のような放熱部材10(I)、放熱部材10(II)、放熱部材10(III)及び放熱部材10(IV)、並びに放熱部材10a、放熱部材10b、放熱部材10c及び放熱部材10dの熱抵抗(℃/W)の解析結果を図16のグラフに示す。なお、図16のグラフの縦軸は、前記放熱性能の評価試験に比較例として使用した従来のヒートシンク71に使用される放熱部材71b(図17(b)参照)の熱抵抗(℃/W)を「0」とした場合の、放熱部材10(I)、放熱部材10(II)、放熱部材10(III)及び放熱部材10(IV)、並びに放熱部材10a、放熱部材10b、放熱部材10c及び放熱部材10dの熱抵抗(℃/W)の相対的な熱抵抗(℃/W)、つまり熱抵抗差(℃/W)である。横軸は、第1凹部40a及び第2凹部40bを段階的に広げていく過程(図16中、実線で示している)において、第1凹部40aを形成する放熱フィン15の枚数、あるいはこの枚数に等しい第2凹部40bを形成する放熱フィン15の枚数を示している。図16中、横軸は、「第1凹部(または第2凹部)を形成する放熱フィンの枚数」と記す。
図16に示すように、第1凹部40a及び第2凹部40bを有する放熱部材10(II)、放熱部材10(III)及び放熱部材10(IV)は、従来のヒートシンクに使用される放熱部材71b(図17(b)参照)と比較して熱抵抗(℃/W)が低くなっている。放熱部材10(II)、放熱部材10(III)及び放熱部材10(IV)は、第1凹部40a及び第2凹部40bの大きさが広げられることによって、その放熱フィン15の放熱面積が、従来の放熱部材71b(図17(b)参照)と比較して低減されているが、それにもかかわらず放熱部材10(II)、放熱部材10(III)及び放熱部材10(IV)の熱抵抗(℃/W)が低くなっている。このことは、第1凹部40a及び第2凹部40bによってファン20(図1参照)からの風が受け止められると共に、第1シュラウド板18a及び第2シュラウド板18bによって放熱部材10(II)、放熱部材10(III)及び放熱部材10(IV)からその外方向に逃げ出る風の量が低減されたものと考えられる。
また、第1凹部40a及び第2凹部40bを形成する放熱フィン15の枚数が15枚を境に熱抵抗(℃/W)が上昇し始めるのは、第1凹部40a及び第2凹部40bが放熱フィン集合体14の中央部まで広がることによって、発熱体13からの熱Q(図6(a)参照)によって熱分布率が大きい中央部の放熱フィン15の放熱面積が低減されたことによるものと考えられる。
また、この解析では、第1シュラウド板18a及び第2シュラウド板18bを有する放熱部材10(I)、放熱部材10(II)、放熱部材10(III)及び放熱部材10(IV)、並びに放熱部材10a(以下、これを「シュラウド板を有するもの」と略記する)の熱抵抗(℃/W)(図16中、実線で示す)と、第1シュラウド板18a及び第2シュラウド板18bを有しない放熱部材10b、放熱部材10c及び放熱部材10d(以下、これを「シュラウド板を有しないもの」と略記する)の熱抵抗(℃/W)(図16中、点線で示す)とを比較したが、シュラウド板を有するものは、シュラウド板を有しないものに比べて、熱抵抗(℃/W)がはるかに小さいことが判明した。
また、図16に示すように、シュラウド板を有しないもの(比較例)の熱抵抗(℃/W)の変化を示すカーブ(図16中、点線で示す)は、上に凸状になっているのに対し、シュラウド板を有するもの(本発明)の熱抵抗(℃/W)の変化を示すカーブ(図16中、実線で示す)は、下に凸状になっている。このことは、シュラウド板を有しないもの(比較例)では、第1シュラウド板18a及び第2シュラウド板18bがないため、第1凹部40a及び第2凹部40bによって風を受け止めたとしても、受けた風が外方向に逃げ出ていくので、溝部17に風が流れ込み難くなっていることによるものと考えられる。これに対し、シュラウド板を有するもの(本発明)では、第1凹部40a及び第2凹部40bによって受け止めた風が、第1シュラウド板18a及び第2シュラウド板18bによって逃げ出ることが回避されるので、溝部17に効率的に風が流れ込むことによるものと考えられる。つまり、シュラウド板を有するもの(本発明)は、第1シュラウド板18a及び第2シュラウド板18bと、第1凹部40a及び第2凹部40bと、溝部17とが協働して相乗的に熱抵抗(℃/W)を低下させたものと考えられる。
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は前記実施形態には限定されない。例えば、前記実施形態では、第1シュラウド板18a及び第2シュラウド板18bを放熱フィン15と同じ材料で形成しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、第1シュラウド板18a及び第2シュラウド板18bが放熱フィン15と異なる材料で形成されていてもよい。
また、前記実施形態では、支持部材30が4本のボルトで構成されるものを示したが、本発明のヒートシンクはこれに限定されるものではなく、例えば、図17(a)に示すような板状体で構成される支持部材30(例えば、図17(a)中、支持板77を参照)を備えるものであってもよい。このような支持板77を支持部材30として備える本発明のヒートシンクは、支持板77が第1シュラウド板18a及び第2シュラウド板18bを兼ねるものであってもよい。つまり、本発明のヒートシンクは、例えば、図15(a)に示すような放熱部材10b及び図15(b)に示すような放熱部材10cを使用すると共に、図17(a)に示すような支持板77が、放熱部材10bにおける溝部17(図15(a)参照)並びに放熱部材10cにおける第1凹部40a及び第2凹部40b(図15(b)参照)の側端を塞ぐように、あるいは放熱部材10b及び放熱部材10cの両端に配置された放熱フィン15(図15(a)及び図15(b)参照)に対して所定の間隔をあけて配置されたものであってもよい。
また、前記実施形態では、ファン20として軸流ファン21が使用されているが、放熱部材10に風を送り込むものであれば特に限定されるものではなく、本発明は、例えば、シロッコファン等を備えたものであってもよい。
また、前記実施形態では、溝部17及び空気流通路50として、その断面形状が矩形のものが採用されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、断面形状が他の多角形や円形等の溝部17及び空気流通路50を採用するものであってもよい。
また、前記実施形態では、溝部17及び空気流通路50が放熱フィン15の板面に対して直交する方向に形成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、溝部17及び空気流通路50が放熱フィン15の板面に対して斜めに延びるように形成されたものであってもよい。
また、前記実施形態では、スロープ41(第1スロープ41a及び第2スロープ41bを含む)の傾斜面が平面になるように形成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、当該傾斜面が曲面で形成されていてもよい。
また、前記実施形態では、第1凹部40a及び第2凹部40bがそれぞれ1つずつ放熱フィン集合体14に形成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、第1凹部40a及び第2凹部40bがそれぞれ複数ずつ放熱フィン集合体14に形成されていてもよい。
また、前記実施形態では、溝部17及び空気流通路50が1本形成されているが、本発明はこれに限定されるものではなく、溝部17及び空気流通路50が複数本形成されていてもよい。
また、前記実施形態では、第1凹部40a及び第2凹部40bに形成されたスロープ41(第1スロープ41a及び第2スロープ41bを含む)が、溝部17に向かって下り勾配になっているもの、あるいは第1シュラウド板18a側及び第2シュラウド板18b側から放熱フィン集合体14の中央部に向かって下り勾配になっているもののいずれかであるが、本発明はこれに限定されるものではなく、スロープ41(第1スロープ41a及び第2スロープ41bを含む)が、溝部17に向かって下り勾配になっているもの、並びに第1シュラウド板18a側及び第2シュラウド板18b側から放熱フィン集合体14の中央部に向かって下り勾配になっているものを適宜組み合わせたものであってもよい。
また、第3の実施形態では、溝部17を介して向き合う第1凹部40a及び第2凹部40bが、放熱フィン集合体14の中央部に位置しているが、本発明はこれに限定されるものではなく、第1凹部40a及び第2凹部40bの形成される位置が、放熱フィン集合体14における溝部17が延びる方向に沿ってシフトしたものであってもよい。