以下に、本発明を具体化した実施形態を図面(図1〜図5)に基づいて説明する。図1は種子消毒設備を示す平面図、図2は1つの処理ラインでの作業手順を示す説明図、図3は種子消毒設備の全体回路図、図4は温浴槽の側断面図、図5は制御手段としてのコントローラの機能ブロック図である。
まず最初に、種子消毒設備1の概要について説明する。
種子消毒設備1は、多数本の支柱と、隣り合う支柱の上端間に架設された横梁や当該横梁間に架設された横桟等からなるフレームとにより、骨組が構成されている。種子消毒設備1は、温水が貯留される上向き開口略箱型の温浴槽2と、冷水が貯留される上向き開口略箱型の冷浴槽3と、水切り用の作業台4とを平面視で一列状(直列状)に並べた処理ラインLを複数列(実施形態では5列)備えている。これら各処理ラインLは平面視で並列状に配置されている。図1では、各処理ラインLに対して、下から上に向かう順に符号La〜Leを付している。
実施形態の各処理ラインLでは、図1の右側から温浴槽2、冷浴槽3、作業台4の順に並んでいる。各処理ラインLの最後尾(図1で各作業台4の左側)には、当該各処理ラインLの方向と交差する方向に延びるエンドレスベルト式の払い出しコンベヤ5が設けられている。
フレームのうち処理ラインL群及び払い出しコンベヤ5の上方箇所には、平面視で複数の閉ループを組み合わせた形状に形成された断面略I字型の吊りレール6が取り付けられている。この吊りレール6は、各処理ラインLに沿って延びるラインレール部7(実施形態では5本)と、これら各ラインレール部7の一端部(図1では右端部)間を繋ぐ搬入レール部8と、払い出しコンベア5に沿って延びると共に各ラインレール部7の他端部(図1では左端部)間を繋ぐ搬出レール部9と、搬出入両レール部8,9間を接続する待機レール部10とにより構成されている。
吊りレール6には、当該吊りレール6に沿って移動(走行)可能なランナー12と電動式チェーンブロック13とを有する多数個の搬送装置11が吊り掛けられている。
ランナー12には、これに取り付けられた転動ローラ(図示せず)を回転駆動させるための正逆回転可能な走行用モータ14と、吊りレール6における各浴槽2,3、作業台4及び払い出しコンベヤ5の直上箇所に付した停止位置マーク(図示せず)を検出するための停止位置センサ15とを備えている。なお、停止位置マークは、吊りレール6のうち籾袋投入位置IN(図1及び図2参照)に対応する箇所(待機レール部10と搬入レール部8とが交差する箇所)にも配置されている。
各ランナー12の搬送方向(図1の矢印C方向参照)前面には、光型や超音波型等の非接触式の近接センサ16が、発光(発信)部と受光(受信)部とを搬送方向前方に向けた状態で設けられている。近接センサ16は、搬送方向前側の所定距離内に他のランナー12が存在するか否かを感知するように構成されている。
チェーンブロック13には、チェーン17を巻き取るドラム(図示せず)を回転駆動させるための正逆回転可能な昇降用モータ18と、チェーン17の巻取り・繰出し量を検出するためのロータリエンコーダ19とを備えている(図5参照)。
なお、各ランナー12に対するチェーンブロック13の取付け位置は、チェーンブロック13が平面視で各浴槽2,3、作業台4及び払い出しコンベア5の略中心部を通過するように設定されている。また、詳細には図示していないが、フレーム及び吊りレール6には各搬送装置11に給電するためのトロリー線等を備えている。
種籾を詰めた籾袋Aを収容するためのコンテナ20は、金属パイプ又は棒材で上下面開口のカゴ状に形成されている。コンテナ20の下面開口部には、観音開き式に開閉可能な一対の底蓋21,21が装着されている。コンテナ20の上端に設けられた複数本の吊り棒22は、チェーンブロック13におけるチェーン17の下端側に配置されたシーブ23に対して溶接等で一体に固着されている。チェーンブロック13で吊り上げたコンテナ20の重心を安定させるために、吊り棒22群のシーブ23に対する固定位置は平面視でコンテナ20の中心部に位置するように設定されている。コンテナ20の大きさは、例えば必要性、用途、各浴槽2,3の大きさ等に応じて設定すればよい。
実施形態のコンテナ20には、チェーンブロック13による昇降操作だけで両底蓋21,21を開き動させる機構が取り付けられている。詳細は図示していないが、例えば以下に説明するような機構を採用すればよい。
すなわち、一方の底蓋21の自由端部には、他方の底蓋21の自由端部に形成された穴状又は突起状の係止部に係脱するラッチ爪を前記係止部との係合方向に付勢されるように取り付ける。底蓋21には、下向きに突出した開放ピンを上下に出没可能に設ける。そして、開放ピンの没入動(押し込み動)に連動して、ラッチ爪が係合解除されるように構成する。
このように構成すると、通常は、ラッチ爪が係止部に係合していて両底蓋21,21が開くことはないが、例えば払い出しコンベヤ5等にコンテナ20を着地させることにより開放ピンを上向きに押し込むと、ラッチ爪が外れて両底蓋21,21を開き動させることができる。作業者が両底蓋21,21を閉じると、ラッチ爪が係止部に蹴り込み係合するので、両底蓋21,21をコンテナ20の下面開口部を覆った状態で回動不能に保持することができる。
図3に示すように、種子消毒設備1は上向き開口略箱型の貯留槽51も備えている。当該貯留槽51は、その最大貯留容積が各温浴槽2の最大貯留容積に温浴槽2の数を乗じた値よりも大きくなるように設定されている。従って、実施形態の貯留槽51は、単体の温浴槽2の5個分以上の貯留能力を有している。
貯留槽51には、水タンクや水道管等の水供給源Wに連通する給水管52と、1本の供給管路53とが接続されている。供給管路53の中途部には、フィルタ部材としてのサンドフィルタ54(砂ろ過器)が設けられている。供給管路53のうち貯留槽51と反対側の端部からは、複数の送り管路25(実施形態では5本)が分岐して延びている。当該送り管路25はそれぞれ対応する温浴槽2に連通接続されている(図3及び図4参照)。
各送り管路25中には、温浴槽2に向かって順に、温浴槽2に注水するための注水ポンプP1と、貯留槽51からの水を加熱する加熱手段の一例としての給湯器Bとが設けられている。なお、給湯器B等の加熱手段は送り管路25中に設けるに限らず、温浴槽2に対して直接配管する構成のものであってもよい。
各温浴槽2の側面上部には、第1戻り管路の一例としての温水オーバーフロー管路55が接続されている。籾袋A入りコンテナ20の浸漬により温浴槽2の上限水位を超過した分の温水は、温水オーバーフロー管路55を介して温浴槽2外に排出される。従って、籾袋A入りコンテナ20を温浴槽2内の温水に浸漬した状態(図4参照)であっても、温浴槽2内の水位は温水オーバーフロー管路55の高さ以下に維持される。
また、各温浴槽2には、温浴槽2内に向けて開口した温水排出管路56も連通接続されている。当該各温水排出管路56は、例えば種子消毒設備1の運転終了時等に温浴槽2内に貯留された温水を槽外に排出するためのものである。これら各温水排出管路56も、第1戻り管路の一例に相当する。各温水排出管路56中には、可変式の温水排出バルブ46が設けられている。
全ての温水オーバーフロー管路55及び全ての温水排出管路56は、供給管路53と別個に貯留槽51に接続された温水回収管路57に接続されている。温水回収管路57の中途部には、前述した超過分の温水を集積して一時的に貯留する温水中間貯留槽58が設けられている。これにより、温水回収管路57は、温水中間貯留槽58を仲介として2つに分かれている。温水回収管路57のうち温水中間貯留槽58より下流側には、温水中間貯留槽57内の一時貯留水を貯留槽51に戻すための還水ポンプP2が設けられている。
以上の構成から明らかなように、実施形態では、貯留槽51、供給管路53、各送り管路25、各温浴槽2、各温水オーバーフロー管路55、各温水排出管路56、温水中間貯留槽58及び温水回収管路57が水を循環させ得る閉回路となっている。
一方、各処理ラインLの冷浴槽3には、水タンクや水道管等の水供給源Wに連通する給水管59と、第2戻り管路の一例としての冷水オーバーフロー管路60とが接続されている。この冷水オーバーフロー管路60の機能は前述した温水オーバーフロー管路55と同様である。また、各冷浴槽3には、第2戻り管路の一例として、冷浴槽3内に貯留された冷水を槽外に排出するための冷水排出管路61も連通接続されている。各冷水排出管路61中には、可変式の冷水排出バルブ48が設けられている。
全ての冷水オーバーフロー管路60及び全ての冷水排出管路61は、供給管路53及び温水回収管路57と別個に貯留槽51に接続された冷水回収管路62に接続されている。この冷水回収管路62の中途部には、籾袋A入りコンテナ20の浸漬により冷浴槽3の上限水位を超過した分の冷水を集積して一時的に貯留する冷水中間貯留槽63が設けられている。従って、冷水回収管路62も、温水回収管路57と同様に、冷水中間貯留槽63を仲介として2つに分かれている。
冷水回収管路62のうち冷水中間貯留槽63よりも下流側には、冷水中間貯留槽63内の一時貯留水を貯留槽51に戻すための還水ポンプP3が設けられている。また、冷水回収管路62のうち還水ポンプP3の下流側から分岐した分岐管路64には、還水ポンプP3で汲み上げた一時貯留水を冷水中間貯留槽63に逃がす(戻す)ためのリリーフ弁65が設けられている。冷水中間貯留槽63の側面上部には、排水用のオーバーフロー管路77が接続されている。冷水中間貯留槽63の上限水位を超過した分の冷水は、オーバーフロー管路77を介して、排水として外部に排出される。冷水中間貯留槽63には、水タンクや水道管等の水供給源Wに連通する給水管66も連通接続されている。
なお、貯留槽51及び冷水中間貯留槽63には、内部に貯留された水を排出するための排水管67が連通接続されている。
次に、図3及び図4等を参照しながら、貯留槽51及び各浴槽2,3の内部構成について説明する。
貯留槽51内には、水位検出手段の一例として、貯留槽51内の水位を検出するフロート式の水位センサ68が設けられている。実施形態では、後述するメインスイッチ41の入り操作と水位センサ68の検出値に基づいて、給水管52の中途部に設けられた可変式の開閉バルブ29を電磁ソレノイド等の開閉バルブ駆動回路30で開閉することにより、種子消毒設備1の運転開始時に、貯留槽51の上限水位まで自動的に水を溜めるように構成されている。
各処理ラインLの温浴槽2内には、側面視略L字型の放散管26が適宜本数配置されている(図4参照)。各放散管26の立状部分は、温浴槽2内へのコンテナ20の浸漬を妨げないように、温浴槽2の内側壁際で上向きに延びている。当該各立状部分には、給湯器Bで加熱された温水(蒸気)を放散するための多数個のノズル27が温浴槽2の内部に向かって開口するように形成されている。なお、放散管26を使用せず、温浴槽2の内壁から温水を直接吹き込む構成にしても差し支えない。
各温浴槽2には、温水を撹拌するための循環ポンプPCも連通接続されている。循環ポンプPCの吸引口75と吐出口76とは、高さ位置を変えて温浴槽2内に開口している。従って、循環ポンプPCを駆動させると、温浴槽2内の温水が上層と下層とで入れ替わるように強制的に循環する。これにより、給湯器Bで加熱された温水の熱が温浴槽2内の温水に対して均等に伝わり、その結果、温浴槽2の各部位で水温が均一化される。なお、吸引口75と吐出口76とは上下逆に配置してもよい。温水が平面視で旋回するように循環させてもよい。
各温浴槽2内には、内部に貯留された温水の水温を検出するための温度センサ28(図4参照)が設けられている。実施形態では、温度センサ28の検出値に基づいて、各温浴槽2に対する注水ポンプP1を駆動させると共に、各送り管路25のうち給湯器Bと温浴槽2との間に設けられた可変式の温水バルブ29の開閉度を電磁ソレノイド等の温水バルブ駆動回路30で調節することにより、各温浴槽2内の水温を自動的に調節するように構成されている。なお、各温浴槽2の近傍箇所には、報知手段の一例として、作業者の注意を喚起する警報ランプ34が配置されている(図5参照)。
詳細は図示していないが、各処理ラインLの冷浴槽3の構成は、基本的に温浴槽2と同様である。但し、各冷浴槽3内の放散管は給水管59からの冷水を冷浴槽3内に供給するものである。各冷浴槽3内には、水位検出手段の一例として、フロート式の冷浴槽水位センサ71が設けられている(図5参照)。実施形態では、後述するメインスイッチ41の入り操作と冷浴槽水位センサ71の検出値に基づいて、給水管59の中途部に設けられた可変式の冷水バルブ72を電磁ソレノイド等の冷水バルブ駆動回路73で開閉することにより、種子消毒設備1の運転開始時に、各冷浴槽3の上限水位まで自動的に水を溜めるように構成されている。
次に、図5等を参照しながら、種子消毒設備1における制御システム関連の構成について説明する。
種子消毒設備1における籾袋投入位置INの近傍箇所には、搬送装置11の駆動制御や水温制御等を司る制御ボックス35が配置されている(図1参照)。この制御ボックス35の一側面には、液晶モニタ等の表示部37、各種操作スイッチ類、及び報知手段の一例としての警報ブザー38等を有する制御盤36が取り付けられている。当該制御ボックス35内には、制御手段の一例としてのコントローラ40が配置されている。
このコントローラ40は、貯留槽51、浴槽2,3及び搬送装置11等に設けられたセンサやスイッチ等からの制御情報に基づいて各コンテナ20を各浴槽2,3に適宜時間だけ浸漬するように各搬送装置11の駆動を制御する機能や、前記制御情報に基づいて各バルブ29,31,72、各ポンプP1〜P3、PC及び給湯器B等の駆動を制御する機能を有するものである。
詳細は図示していないが、コントローラ40は、各種演算処理や制御を実行する中央処理装置(CPU)の他、制御プログラムやデータを記憶させるための読出し専用メモリ(ROM)、制御プログラムやデータを一時的に記憶させるための随時読み書き可能メモリ(RAM)、タイマ機能としてのクロック、センサやアクチュエータ等との間でデータ(制御情報)のやり取りをするための入出力インターフェイス等を備えている。
コントローラ40の入力インターフェイスには、各ランナー12に設けられた停止位置センサ15及び近接センサ16、各チェーンブロック13に設けられたロータリエンコーダ19、各温浴槽2内に配置された温度センサ28、籾袋投入位置INで待機している搬送装置11が通過するラインレール部7を選択するための複数個(ラインレール部7の数と同じ、実施形態では5個)の選択スイッチ39、種子消毒設備1全体の電源を入り切り操作するためのメインスイッチ41、使用するラインレール部7の数を予め設定するためのライン設定器42、及び各温浴槽2内の水温を予め設定するための温度設定器43、貯留槽51内に配置された水位センサ68、温水排出管路56及び冷水排出管路61の排出バルブ46,48を開き動させるための排出スイッチ69、各冷浴槽3内に配置された冷浴槽水位センサ71等がそれぞれ接続されている。
なお、制御盤36に設けられた各種操作スイッチ類の中には、前述した選択スイッチ39、メインスイッチ41、ライン設定器42及び排出スイッチ69等が含まれる。各選択スイッチ39は、警報ランプ34と同様に、各温浴槽2の近傍箇所に配置してもよい。
他方、出力インターフェイスには、各搬送装置11における走行用モータ14のモータ駆動回路44及び各昇降用モータ18のモータ駆動回路45、液晶モニタ等の表示部37、各警報ランプ34及び警報ブザー38、電磁ソレノイド等からなる開閉バルブ駆動回路30、温水バルブ駆動回路32、冷水バルブ駆動回路73、温水排出バルブ駆動回路47及び冷水排出バルブ駆動回路49等がそれぞれ接続されている。
次に、種子消毒設備1による種子消毒作業の一例について説明する。
作業者は、種子消毒作業に先立ち、ライン設定器42の設定操作により、消毒すべき種籾の量に応じて使用ライン数を設定しておく(図1では3列のラインレール部7(処理ラインLa〜Lc)を使用する設定となっている)。また、温度設定器43の設定温度をT℃(例えば60℃等)に設定しておく。
まず、各排水管67の排水弁が閉じていることを確認してから、作業者が制御盤36のメインスイッチ41を入り操作すると、コントローラ40から排出バルブ駆動回路47,49への指令により、温水排出管56及び冷水排出管61の排出バルブ46,48が閉じる。一方、コントローラ40から開閉バルブ駆動回路30への指令により、給水管52の開閉バルブ29が開き、冷水(例えば水道水等)が水供給源Wから給水管52を通じて貯留槽51内に導入される。
次いで、図3に一点鎖線で示すように、貯留槽51内の水位が所定の上限水位(この場合は温浴槽2の3個分以上の貯留水量となる水位)に到達したことを水位センサ68が検出すると、コントローラ40が開閉バルブ駆動回路30を介して開閉バルブ29を閉じる。これにより、使用ライン(この場合は処理ラインLa〜Lc)における全ての温浴槽2内の水位を温水オーバーフロー管路55の高さとなし得る相当量の水が、貯留槽51内に自動的に溜まる。
貯留槽51内に冷水を導入するときには、これに並行して、コントローラ40から冷水バルブ駆動回路73への指令で、各使用ラインにおける給水管59の冷水バルブ72も開き、冷水(例えば水道水等)が水供給源Wから給水管59を通じて冷浴槽3内に導入される。そして、各冷浴槽3内の水位が所定の上限水位(この場合は冷水オーバーフロー管路60の高さ)に到達したことを冷浴槽水位センサ71が検出すると、コントローラ40が冷水バルブ駆動回路73を介して冷水バルブ72を閉じ、各使用ラインの冷浴槽3内に所定量の冷水が自動的に溜まる。
貯留槽51内に所定量の水が溜まると、コントローラ40からの指令で各使用ラインの注水ポンプP1と給湯器Bとが駆動することにより、貯留槽51内の水は、供給管路53及び各送り管路25を通じて各給湯器Bに送られ加熱される。そして、各使用ラインにおける送り管路25の温水バルブ39が開き、給湯器Bで設定温度T℃よりも若干高い温度(例えば65℃程度)にまで加熱された温水が温浴槽2内に供給される。
その後、図3に実線で示すように、貯留槽51内の水位が所定の下限水位(この場合は温浴槽2の3個分の貯留水量を供給(排出)した後の水位)に到達したことを水位センサ68が検出すると、コントローラ40が温水バルブ駆動回路32を介して温水バルブ31を閉じ、各使用ラインの温浴槽2内に所定量の温水が自動的に溜まる。
以上の準備が終了した後、作業者は、籾袋投入位置INで待機している搬送装置11のチェーンブロック13に吊り掛けられたコンテナ20に対して、種籾を詰めた籾袋Aを収容する。
次いで、使用ライン(実施形態では処理ラインLa〜Lc)のうち任意のものの温浴槽2内の水温が設定温度域T±ΔT℃(例えば60±1℃等)であることを、当該温浴槽2に対応した温度センサ28が感知すると、コントローラ40は、この任意の1つの処理ラインLでの消毒作業が可能になったと判断して、温浴槽2の近傍箇所にある警報ランプ34を点灯又は点滅させると共に、警報ブザー38を断続的又は連続的に鳴動させる。
次いで、作業者が、前記温浴槽2の箇所に搬送装置11及びコンテナ20がないことを確認した上で、前記任意のラインレール部7(処理ラインL)に対応した選択スイッチ39を押下すると、この選択スイッチ39の押下により指定されたラインレール部7に向かって、籾袋投入位置INにある搬送装置11が発進する。なお、警報ランプ34及び警報ブザー38は選択スイッチ39の押下で停止する設定である。
搬送装置11が指定された処理ラインLのラインレール部7内に入って、温浴槽2の直上に位置する停止位置マークを停止位置センサ15で感知すると、当該搬送装置11は停止し、チェーンブロック13に吊り掛けられたコンテナ20を下降させて温浴槽2の温水中に適宜時間(例えば10分程度)だけ浸漬する。この際、コンテナ20を2〜3回程度上下に揺動させることにより、籾袋A内の種籾と温水とをなじませるようにするのが望ましい。
ここで、コンテナ20の浸漬により、温浴槽2内の水位が上限水位(温水オーバーフロー管路55の高さ)を超えると、この超過分の温水(オーバーフロー分の温水)は、温水オーバーフロー管55から温水回収管路57を経て、温水中間貯留槽58に一旦貯留される(図3参照)。温水中間貯留槽58内に一旦貯留された温水は、コントローラ40からの指令で還水ポンプP2を駆動させることにより、温水回収管路57を通じて適宜貯留槽51内に回収される(戻される)。
温浴槽2内の水温はコンテナ20の浸漬で設定温度域T±ΔT℃よりも低下するが、この水温調節は、貯留槽51から供給管路53及び各送り管路25を通じて給湯器Bに送られ加熱された水、すなわち温水を、温浴槽2内に追加供給することにより行われる。実施形態では、温浴槽2からのオーバーフロー分の温水が貯留槽51に回収されるので、種子消毒設備1の運転中は、貯留槽51内に比較的温かい水が溜まることになる。
これにより、温浴槽2内の水温調節のために、貯留槽51からの水を給湯器Bで加熱するにあたっては、水道水等の冷水ではなく、温浴槽2からの回収水を含む比較的温かい水を利用することができるから、給湯器Bでの加熱に要するエネルギーが少なくて済み、ランニングコストを低減することができると共に、省エネルギー化に貢献することができるのである。
また、各温水槽2からのオーバーフロー分の温水(回収水)を、種籾の滅菌消毒に再利用することができるから、この点でも、滅菌消毒に必要な水を節約して、ランニングコストの低減に寄与することができる。
温水への所定の浸漬時間が経過すると、搬送装置11はコンテナ20を上昇させてから冷浴槽20の箇所まで(冷浴槽3に対応した停止位置マークを停止位置センサ15で検出するまで)ラインレール部7に沿って移動し、次いで、コンテナ20を下降させて冷浴槽3の冷水中に適宜時間(例えば5分程度)だけ浸漬する。
このときも、コンテナ20の浸漬により、冷浴槽3内の水位が上限水位(冷水オーバーフロー管路60の高さ)を超えると、この超過分の水(オーバーフロー分の水)は、冷水オーバーフロー管60から冷水回収管路57を経て、冷水中間貯留槽63に一旦貯留される(図3参照)。
冷浴中間貯留槽63内の一時貯留水は、温浴槽2への水の追加供給等で貯留槽51内の水位が所定の下限水位に達した場合に、還水ポンプP3の駆動により冷水回収管路62を通じて貯留槽51内に回収される(戻される)。ここで、冷浴槽3に浸漬されるコンテナ20は既に温水中に浸漬済みであるから、前述したオーバーフロー分の水、すなわち冷水中間貯留槽63内の一時貯留水は、温度の低い冷水ではなく、コンテナ20の浸漬で比較的温かい水になっている。
これにより、温浴槽2内の水温調節のために、貯留槽51からの水を給湯器Bで加熱するにあたっては、冷浴槽3からの比較的温かい回収水をも利用することができるから、給湯器Bでの加熱に要するエネルギーを節約することができ、ランニングコストの低減に寄与することができる。
その後、搬送装置11は、再びコンテナ20を上昇させてから作業台4の箇所まで(作業台4に対応する停止位置マークを停止位置センサ15で検出するまで)ラインレール部7に沿って移動する。そして、作業台4の箇所で数分程度(例えば3〜4分)保持することにより籾袋Aの水切りが行われる。この際、コンテナ20は作業台4上に着地せず、宙吊りの状態となっている。
次いで、搬送装置11は、ラインレール部7から搬出レール部9に移動し、当該搬出レール部9の適宜箇所に付された停止位置マークの箇所で停止する。そして、コンテナ20を下降させて払い出しコンベヤ5上に着地させることにより、開放ピンが上向きに押し込まれてラッチ爪が係合解除する。
その後、このままコンテナ20を上昇させることにより、コンテナ20の両底蓋21,21が観音開き式に開き、コンテナ20内の籾袋Aが払い出しコンベヤ5上に載置される。このように、実施形態では、チェーンブロック13による昇降操作のみで、コンテナ20の両底蓋21,21を開いて籾袋Aを排出することができる。
払い出しコンベヤ5上に載置された籾袋Aは、籾袋払い出し位置OUT(搬出レール部9と待機レール部10との交差箇所の下方、図1及び図2参照)にまで移送された後、作業者がパレットや台車等に人力で移動させて、催芽等の次工程に運ばれる。
コンテナ20から籾袋Aを排出した後、搬送装置11は搬出レール部9から待機レール部10に移動する。そして、吊りレール6における籾袋投入位置INに対応する箇所に付された停止位置マークを停止位置センサ15で検出することにより、搬送装置11は当該停止位置マークの箇所で停止し待機する。このとき、開放状態の両底蓋21,21は作業者が閉じるようにする。
なお、搬送装置11の移動の途次において、ランナー12に設けられた近接センサ16が搬送方向前側の所定距離内に他のランナー12が存在するのを感知した場合は、当該搬送装置11は一旦停止する。前記他のランナー12の存在がなくなれば、一旦停止していた搬送装置11は目指す停止位置マークの箇所に移動すべく復帰する。
このような処理サイクルを繰り返して、籾袋Aを収容したコンテナ20が吊り掛けられた各搬送装置11を搬入レール部8、各ラインレール部7、搬出レール部9及び待機レール部10に沿って循環移動させることにより、多数の籾袋Aを連続的に消毒処理することができる。
一連の種子消毒作業が終了した後は、作業者が制御盤36の排水スイッチ69を入り操作すると、コントローラ40からの指令で、温水排出管56及び冷水排出管61の排出バルブ46,48が開くと共に還水ポンプP2,P3を駆動させることにより、各浴槽2,3及び各中間貯留槽58,63内の水が2つの回収管路57,62を介して貯留槽51内に回収される。
従って、次回の作業時には、この貯留槽51内に貯留された水を、種籾の滅菌消毒に再利用することができるから、水の消費量が従来と比べて格段に少なくて済み、ランニングコストを大幅に低減することができる。
この場合、各浴槽2,3内の水中には、籾袋A入りコンテナ20の浸漬により排藁やごみ等の異物が混じっているため、この異物の混じった水が貯留槽51内に回収されて溜め込まれている。
この点、実施形態では、供給管路53の中途部にフィルタ部材としてのサンドフィルタ54を設けているので、貯留槽51からの水を供給管路53及び各送り管路25を通じて温浴槽2内に供給するに際して、排藁等の異物はサンドフィルタ54で確実に分離除去される。従って、異物をほとんど除去して清浄化した温水を各温浴槽2内に循環供給することができる。
また、給湯器B内の熱交換器に異物混じりの水を送り込むことがないから、当該熱交換器の故障を抑制してその寿命を長くすることができ、結果的に、給湯器Bの保守管理コスト(メンテナンスコスト)を低減することができる。
さらに、実施形態では、処理ラインLに対応した温浴槽2と冷浴槽3との組を並列状に複数列配置した上で、各オーバーフロー管路55,60を、各系統ごとの回収管路57,61でまとめて貯留槽51に接続し、各送り管路25についても、貯留槽51に接続された1つの供給管路53から分岐させているので、種籾の消毒処理を各処理ラインLで並行して且つ連続的に実行し得るものでありながら、滅菌消毒に必要な水を溜めておくための貯留槽51が1つあれば済み、設備導入コストや保守管理コストの抑制に寄与することができるのである。
本発明は、前述の実施形態に限らず、種籾以外の様々な種類の種子に対して広く適用でき、また、様々な態様に具体化することができる。
例えば加熱手段は、蒸気やヒータなど種々のものを使用できる。浴槽の数は必要に応じて設定したらよい。各処理ラインLには、温浴槽2の前に、予め種子を温めるための予備温浴槽を設けても差し支えない。各浴槽2,3の平面形状もコンテナ20の形状に合わせて設定すればよい。搬送装置は自動的に駆動する構成でもよいし、手動で操作する構成でもよい。
その他、各部の構成は図示の実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能である。