JP4465097B2 - 凝集性微粒子分散液の製造法 - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、チタンブラック等の凝集性微粒子分散液の製造方法に関するものである。特に、高度な微分散性を有すると共に分散安定性が高い凝集性微粒子分散液を、比較的簡単な処理にて得ることのことのできる技術に関するものである。
【0002】
【従来の技術】
チタンブラックは、特に高抵抗性等の性能を求められる場合における遮光成分、着色成分として各種組成物に添加されて使用されている。
【0003】
しかしながら一般に、チタンブラックのよう固体微粒子、特にその一次粒子径がサブミクロン以下である微粒子、の多くは、粒子間の凝集力に比べて他の物質、例えば、水、有機溶剤あるいは有機高分子といったものとの親和力が弱く、二次凝集を生じやすい。従って、上記したような各種組成物においてより優れた特性を得ようとする場合、これら凝集性微粒子をマトリックス中にいかに均一に分散させるかが問題となる。
【0004】
この問題を解決するために、凝集性微粒子の表面を各種の界面活性剤や樹脂で被覆して、固体状または液状の媒体との親和力を高めることにより、固体微粒子を均一に混合または分散する方法が数多く検討されている。
【0005】
例えば、カーボンブラックに関して、重合性単量体をカーボンブラック共存中で重合させたり、反応性ポリマーをカーボンブラック表面にグラフト化させることによりカーボンブラックグラフトポリマーを得る方法が知られており、重合性単量体ないし反応性ポリマーの種類を適当に選択することにより、親水性および/または親油性を適宜、変えることができるため、近年注目を浴びているが、チタンブラックに関しては十分な成果が報告されていない。
【0006】
一方、このような二次凝集を起こす固体微粒子の分散液を得るのに、分散媒液に適当な分散安定剤を添加し、物理的な攪拌によって分散処理を行なうことも公知の技術である。均一な分散には、巨視的混合と同時に小規模な乱れ運動に基づく微視的混合も考慮する必要があり、従来、このような分散液を得る装置としては、被処理流体を収容するベッセルの形状、攪拌子の形状、数および配置位置あるいはその回転速度、邪魔板ないし仕切板の配置の有無、さらに、ベッセル内部に導入されるボールないしビーズといった分散媒体の使用、その形状、材質等において、それぞれ工夫を凝らした各種の湿式分散処理装置ないし湿式粉砕処理装置が提唱されている。
【0007】
このなかで、一般に、攪拌子と分散媒体を併用するタイプのものは、比較的良好な分散状態を形成できるものとして現在多くの分野で使用されている。このタイプに属する分散処理装置としては、例えば特公昭59−22577号、特公平2−27018号公報等に開示がある。
【0008】
しかしながら、このような湿式分散処理装置ないし湿式粉砕処理装置を用いての凝集性微粒子の分散液の調製は、該処理装置にて常温下で固体微粒子を分散媒液と攪拌混合して行なわれるものであり、攪拌混合によって生じる物理的な外力によって分散状態を形成しているものであるために、得られる分散液の安定性は十分なものとは言えず、また分散処理に長持間を要するといった問題があった。
【0009】
また、カーボンブラックは遮光性が他の有機顔料に比べて高いものの、導電性を有し、遮光性を挙げるため感光性樹脂中にカーボンブラックをあまり多く添加すると、形成された被膜自体も導電性を有してしまう。そのため、これらの材料を用いて各種電子デバイス等を製造した場合、電極と導通、または該被膜を通じて電界が動作する等の不具合が生じてしまうため、さらに厚い絶縁性の膜あるいは電界遮断膜を形成する必要があるという欠点が生じていた。
【0010】
このような不具合を解決するため、特開平1−141963号公報には、チタンの酸化物もしくは酸窒化物を用いた被覆組成物が提案されている。この組成物は、体積抵抗率が106Ω・cm以上であるとされているものの、チタンの酸化物もしくは酸窒化物を含む組成物は、オーミックな挙動を示さず、印加電圧が高いほどその体積抵抗率が低くなる傾向がある。測定器の印加電圧は極めて低いものであり、液晶表示装置等のデバイスに印加される電圧、すなわち、3〜30Vでの体積抵抗率は、これより低くなり、最悪の場合絶縁破壊を起こす虞れがあるという問題点を有している。また該組成物中におけるチタン酸化物ないし酸窒化物の分散安定性が不良であり、特にアルカリ現像を可能とするためにアルカリバインダーを配合した場合において、強い凝集性を示すという問題も生じていた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】
従って、本発明は、着色成分ないし遮光成分として各種組成物に添加することのできる凝集性微粒子分散液の製造方法を提供することを目的とするものである。本発明はまた、高度な微分散性を有すると共に分散安定性が高く、各種組成物に添加した際に極めて良好な特性、特に電気的高抵抗性、高遮光性等を発揮できる凝集性微粒子分散液の製造方法を提供することを目的とする。本発明はさらに、比較的簡単な処理にて分散特性の改善された凝集性微粒子分散液を得ることのことのできる製造方法を提供することを目的とするものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】
上記諸目的は、(1) ベッセル内部に、回転撹拌子と複数の粒状メディアを配してなる撹拌装置内に、溶媒、該溶媒に溶解性ないし自己分散性のポリマー成分、および凝集性微粒子を少なくとも有してなる被処理液を装填し、凝集性微粒子を被処理液中に分散処理するに際し、
前記撹拌装置として、被処理液流入部と、粒状メディアは通過できないが被処理液は通過できる被処理液排出部とを有し、前記撹拌子が内部に位置するまたは壁面の一部を構成する篭体内に、前記粒状メディアを配してなるミルを用い、かつ
前記ミルのベッセル内に位置する前記篭体の流入部において、撹拌子の回転により発生する負圧により被処理液と共に空気が吸引され、空気泡を巻き込んだ状態で被処理液が前記篭体内に吸引される条件下で撹拌処理を行うことを特徴とする凝集性微粒子分散液の製造方法により達成される。
【0013】
本発明はまた、(2) 前記凝集性微粒子が、色材であることを特徴とする上記(1)に記載の製造方法を示すものである。
【0014】
本発明はさらに、(3) 前記凝集性微粒子が、チタンブラックであることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の製造方法を示すものである。
【0015】
本発明はさらに、(4) 前記凝集性微粒子が、絶縁性物質で表面処理されたチタンブラックであることを特徴とする上記(1)または(2)に記載の製造方法を示すものである。
【0016】
本発明はさらに、(5) 粒状メディアの平均粒子径が、0.05〜20mmである上記(1)〜(4)のいずれか1つに記載の製造方法を示すものである。
【0017】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を実施形態に基づき詳細に説明する。
【0018】
本発明において、処理対象となる凝集性微粒子としては、特に限定されるものではなく、公知の種々の無機ないし有機の微粒子が含まれるが、特にその一次粒子径がサブミクロン以下であり、通常、二次凝集体として存在するような微粒子に対して特に有効な技術である。処理対象となる凝集性微粒子として、その種類的な面から、具体的にそのいくつかを例示すると、カーボンブラック、チタンブラック、チタンイエロー、酸化亜鉛、酸化クロム、シリカ、アルミナ、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーンなどがある。また、これらの凝集性微粒子つぃては、その微粒子表面に何らかの処理、疎水化、絶縁化、帯電化等の各種処理を施されたものも含まれる。なお、本発明は、このような凝集性微粒子の均一分散体を形成する方法に係わるものであるから、処理対象となる凝集性微粒子が例えば、色材である場合に特に有用である。色材としては任意の顔料が使用できるが、例えば、従来より、安定な均一分散体を得ることが困難とされていた、チタンブラックに対しても有効な技術である。
【0019】
以下、凝集性微粒子としてチタンブラックを処理する場合を例にとり、本発明を説明するが、上記したように、本発明がこのようなチタンブラック分散体のみに限定されるものではない。
【0020】
本発明で用いるチタンブラックは、低次酸化チタンや酸窒化チタン等を意味する。このうち低次酸化チタンとしては、例えば、特開昭49−5432号公報に記載された、二酸化チタンと金属チタン粉末を真空もしくは還元雰囲気中で、550〜1100℃の温度で加熱して得られる。TinO2n-1(nの正の整数)で示される黒色系の化合物や、特開昭64−11572号公報に記載された、含水二酸化チタンと金属チタン粉末を、珪素、アルミニウム、ニオブ、タングステン等を含む化合物からなる焼成処理補助剤の存在下、不活性雰囲気中で加熱して得られる化合物が挙げられる。又、酸窒化チタンとしては例えば、特開昭60−65069号公報や特開昭60−200827号公報に記載された、二酸化チタンや水酸化チタンの粉末をアンモニア存在下、550〜950℃程度の温度で還元して得られる黒色系の化合物が挙げられる。その他に、特開昭61−201610号公報に記載された、バナジウムを二酸化チタン等に付着させ、アンモニア存在下、750〜875℃で還元して得られる黒色系の化合物も挙げられる。
【0021】
さらにチタンブラックとしては、絶縁性物質で表面処理をされたようなものも含まれる。これは公知の技術を用いて実施できるが、具体例としてシリカを用いた場合について述べる。まず第一工程として色材を、水にビーズミルを用いて1時間半分散し、水性スラリーを得る。次に第二工程として、色材の水性スラリーにケイ酸ナトリウム溶液を加える。第三工程として上記溶液をホモジナイザーを用いて良く攪拌し、色材を粉砕する。第四工程では上記溶液を加熱する。第五工程ではケイ酸ナトリウム溶液と硫酸を加えてホモジナイザーを用いて良く攪拌する。これによりシリカ被覆が出来上がる。最終工程で顔料を濾過して取り出し、乾燥させる。
【0022】
本発明に係る凝集性微粒子分散液の製造方法は、ベッセル内部に、回転撹拌子と複数の粒状メディアを配してなる撹拌装置内に、溶媒、該溶媒に溶解性ないし自己分散性のポリマー成分、および凝集性微粒子を少なくとも有してなる被処理液を装填し、凝集性微粒子を被処理液中に分散処理するに際し、
前記撹拌装置として、被処理液の流入部と、粒状メディアは通過できないが被処理液は通過できる被処理液の排出部とを有し、前記回転撹拌子が内部に位置するまたは壁面の一部を構成する篭体内に、前記粒状メディアを配し(さらに、この篭体をベッセル内に配し)てなるミルを用い、かつ、
前記ミルのベッセル内に位置する前記篭体の流入部において、回転撹拌子の回転により発生する負圧により被処理液と共に空気が吸引され、空気泡を巻き込んだ状態で被処理液が前記篭体内に吸引される条件下で撹拌処理を行うことを特徴とするものである。
【0023】
液体中の凝集性微粒子の分散処理に用いられ得る湿式分散処理装置としては、各種の形態のものが知られるが、本発明においては、球状メディアを分散媒体として有する湿式分散処理装置として、上記したような装置構成を有するミルを用いることができる。かかるミルとしては、上記したような装置構成を有し、かつ本発明の作用効果を奏することができるものであれば特に制限されるべきものではなく、例えば、バスケットミルタイプ、SCミルタイプ、縦型ビズミルタイプ、横型ビーズミルタイプなどのものを用いることができる。特に、バスケットミルタイプのものは、縦型ビーズミル、横型ビーズミル等のその他の湿式ビーズミルと比較して、より生産効率および作業性良く分散処理を行うことができ、かつ分散処理条件の変更が比較的容易である点で好適なものの1つと言える。
【0024】
そして、本発明は、上記したような構成を有するミルにより撹拌処理を行うにおいて、空気泡を巻き込んだ状態で被処理液が前記篭体内に流入する条件とする。すなわち、その詳細な理由は明らかではないが、バスケットミルタイプなどの上記構成を有するミルを用いた撹拌処理において、このように前記篭体の流入部で空気泡を巻き込む状態で被処理液が前記篭体内に流入していると、被処理液中の凝集性微粒子に、粒状メディアによる適度な剪断力が与えられ、凝集性微粒子の良好な微分散化が達成できるものである。一方、前記篭体の流入部で実質的に空気泡を巻き込まない状態で被処理液が前記篭体内に流入していると、ベッセル内部において被処理液の循環がうまく行われないためか、処理途中において被処理液が増粘し、分散処理の中断を余儀なくされてしまう恐れがある。
【0025】
このような被処理液の上記構成を有するミルのベッセル内の篭体の流入部への流入状態は、撹拌装置におけるベッセルの大きさとこのベッセル内部に配される前記篭体の大きさとの関係、ベッセル内部に保持される被処理液に対する前記篭体の配置位置(深さ等)、回転撹拌子の羽根、ピン等の形状および数、回転撹拌子の回転速度、被処理液の粘度等によって影響を及ぼされるが、これらを適宜調整することによって所期の流入状態を形成し得る。
【0026】
また、空気を吸引させる方法としては、例えば、(1)以下、図1で説明するように、ベッセル内の被処理液の液面から篭体の流入部までの距離を小さくすることで、撹拌子の回転により発生する負圧により被処理液と共に該液面が低下し大気中から自然に空気が吸引される(取り込まれる)ようにしてもよいし、(2)ポンプ等から空気導入管を通じて篭体の流入部近傍に空気を送り込むようにし、撹拌子の回転により発生する負圧により被処理液と共にこの空気が吸引されるようにしてもよいなど、特に制限されるべきものではない。
【0027】
上記(1)の場合には、負圧(による液面低下現象等)を利用して空気が吸引されやすいように、篭体の流入部はミル(ベッセル内)の上部側(さらに、篭体の上部側)に位置させることが望ましい。
【0028】
一方、上記(2)の場合には、空気導入管の吹出口を任意の位置に設定できることから、篭体の流入部の位置は特に限定されるものではなく、ミル(ベッセル内)の上部側(さらに、篭体の上部側)でもよいし、ミル(ベッセル内)の側面側、下面側ないしはその双方等(さらに、篭体の側面側、下面側ないしはその双方等)の何れであってもよい。さらに、篭体の流入部および排出部がミル(ベッセル内)の左右(さらに、篭体の左右)に位置するようにしてもよい。
【0029】
上記(1)の方が、装置構成が簡略化でき、また撹拌子の回転を利用して効率よく空気を吸引できる仕組みである点でも有利である。
【0030】
また、上記(2)の装置構成で使用するポンプや空気導入管に関しては、特に制限されるべきものではなく、使用する被処理液への影響や該被処理液に対する耐性等、さらには温度などの使用条件を勘案して、従来公知のものから適宜選択すればよい。
【0031】
また、篭体の排出部における、粒状メディアは通過できないが被処理液は通過できるようにするための装置構成としては、従来公知の固−液分離技術を利用することができるものであり、排出部の開口面を覆うように金網を設置してもよいし、多孔板などを用いることもできるなど、特に制限されるべきものではない。
【0032】
一方、流入部を篭体の上部側以外に設ける場合には、該流入部についても、粒状メディアは通過できないが被処理液は通過できるようにするための装置構成として、従来公知の固−液分離技術を利用した上記金網や多孔板等を設ける必要がある。また、流入部を篭体の上部側に設ける場合であっても、粒状メディアは通過できないが被処理液は通過できるようにするのが望ましいと言える。
【0033】
図1は、本発明に係る凝集性微粒子の分散方法に用いることができる代表的な一実施形態であるバスケットミルタイプの湿式分散処理装置の構造を示す模式図である。本発明において用いられる湿式分散処理装置としては、上記したように、流入部6と、粒状メディア4は通過できないが被処理液5は通過できる排出部7とを有し、回転撹拌子3が内部に位置するまたは壁面の一部を構成する篭体2内に、複数の粒状メディア4を配してなり、さらに、この篭体2をベッセル1内部に配してなる構造を有するものであれば、その細部構造としては特に限定されるものではなく、一般にバスケットミルタイプとして知られる種々の態様(例えば特公平6−73620号、特公昭62−16687号公報、特開平1−210020号公報等)を用いることが可能である。また、例えば、ベッセル、篭体、攪拌子等の材質、形状ないし配置位置、粒状メディアの材質、形状および粒径等については、得ようとする分散液ないし処理される凝集性微粒子の化学的性質および比重、粒度等の物理的性質等に応じて、適宜最適なものが選択可能である。なお、本実施形態では、バスケットミルにおける篭体2の流入部6は、負圧を利用して空気を吸引する都合上、バスケットミル(ベッセル1内)の上部側(さらに、篭体2の上部側)に存在する必要があるが、排出部7の位置としては、バスケットミル(ベッセル1内)の側面側、下面側ないしはその双方等(さらに、該篭体2の側面側、下面側ないしはその双方等)の何れであってもよい。
【0034】
ベッセルとしては、アルミナ、ジルコニア、ステアタイト、窒化珪素、炭化珪素、タングステンカーバイト等の各種セラミックス、各種ガラス、鋼、クロム鋼、ハステロイ等のニッケル系合金などの各種金属等を一種あるいは2種以上用いて構成されるものなど、各種の様式のものとすることができる。
【0035】
また篭体、回転攪拌子を構成する材質としては、ベッセルと同様、アルミナ、ジルコニア、ステアタイト、窒化珪素、炭化珪素、タングステンカーバイト等の各種セラミックス、各種ガラス、鋼、クロム鋼、ハステロイ等のニッケル系合金などの各種金属等が適宜選択される。なお、この材質はベッセルの材質と異なっていても何等さしつかえない。
【0036】
また、回転撹拌子の形状としては、篭体の形状等にもよるが、例えば、円盤状(ディスク型)、ピン型以外に、ディスクタービン型、ファンタービン型、プロペラ型、螺旋軸翼型、螺旋帯翼型、ゲート型、アンカー型、円筒状、パドル型といった各種の形状のもの、さらにはこれらに通液性の孔を形成するなどの改良を付したものなどを、単一であるいは多段に配することが可能である。また、この攪拌子の形状に応じて、適当な形状を有する邪魔板ないし固定子を設けることが可能である。さらにこのような攪拌子を形成する回転軸は、ベッセルと共軸的に配するもののみならず、ベッセルの中心軸より変位させて、あるいは2軸もしくは多軸に配置することも可能である。
【0037】
さらに、粒状メディアとしては、処理される凝集性微粒子ないしポリマー溶液(溶媒および該溶媒に溶解性ないし自己分散性のポリマー成分を含む。以下同様。)の種類、ベッセルないし攪拌子の形態等に応じて、適宜変更可能であり、アルミナ、ジルコニア、ステアタイト、窒化珪素、炭化珪素、タングステンカーバイドなどの各種セラミックス、各種ガラス、鋼、クロム鋼、ハステロイ等のニッケル系合金などの各種金属から構成される球状、円筒状、回転楕円体状等の形状のものが用いられ得るが、このうち、特にアルミナ、ジルコニア、鋼およびクロム鋼などの材質から構成される球状のビーズで、通常、直径0.05〜20mm程度、より好ましくは0.1〜5mmのものが望ましい。
【0038】
このように本発明の製造方法により得られる凝集性微粒子分散液は、高度な微分散性を長期間にわたり安定して示すものであって、さらにこのような凝集性微粒子分散液を、例えば、着色剤ないしは遮光剤等として各種の組成物に添加した場合にあっても、凝集性微粒子をそのまま使用した場合ないしは、例えばポリマー溶液と単純に撹拌混合して調製した分散液を使用した場合に比べ、当該組成物における分散安定性低下、凝集による沈降、粘度上昇、色別れ等の特性の劣化が少なく、また薄膜上に展開した場合にあっても、基板に対する密着性、電気的高抵抗性、高遮光性、膜強度等の特性面に関して著しい改善を示すものである。
【0039】
本発明に係る凝集性微粒子分散液の製造方法において用いられるポリマー成分としては、用いられる溶媒に対し、溶解性ないしは自己分散性を有するものであれば、特に限定されるわけではないが、(メタ)アクリル系樹脂、特に(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーが好ましい。
【0040】
(メタ)アクリル系樹脂の成分であるアクリル系モノマーとしては、
【0041】
【化1】
【0042】
R1はHまたはCH3、R2はアルキル、分枝アルキルあるいは、フェニル、シクロヘキシル、テトラヒドロフルフリルメタクリレート等があるが、本発明に主に使用される樹脂の具体的な例としては、
【0043】
【化2】
【0044】
等が挙げられる。しかしこれらのものに限定されるものでないことは言うまでもなく、これらの中から必要により選ばれる数種類のモノマーにより合成される樹脂である。上記のアクリル系モノマーの他、次に挙げられるものも適宜選択して用いることが出来る。それらはジメチルアミノエチルメタクリレート、ベンジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリロニトリル、ビニルアセテート、Nービニルピロリドン、テトラヒドロフルフリルメタクリレート等である。
【0045】
またこのようなポリマーの平均分子量としては特に限定されるものではないが、例えば、(メタ)アクリル酸エステル系ポリマーの場合には数平均分子量が500〜50000程度、より好ましくは1000〜30000程度が適当である。
【0046】
また溶媒としては、特に限定されるものではなく、使用されるポリマーの種類に応じて、水溶性または非水溶性の各種のものを使用することができ、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、アリルアルコール等のアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノエチルエーテル、ポリエチレングリコールモノアリルエーテル、ポリプロピレングリコールモノアリルエーテル等のグリコールないしその誘導体類;グリセロール、グリセロールモノエチルエーテル、グリセロールモノアリルエーテル等のグリセロールないしその誘導体類;テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル類;メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン等のケトン類;流動パラフィン、デカン、デセン、メチルナフタレン、デカリン、ケロシン、ジフェニルメタン、トルエン、ジメチルベンゼン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、プロピルベンゼン、シクロヘキサン、部分水添されたトリフェニル等の炭化水素類、ポリジメチルシロキサン、部分オクチル置換ポリジメチルシロキサン、部分フェニル置換ポリジメチルシロキサン、フルオロシリコーンオイル等のシリコーンオイル類、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、ブロモベンゼン、クロロジフェニル、クロロジフェニルメタン等のハロゲン化炭化水素類、ダイルロル(ダイキン工業(株)製)、デムナム(ダイキン工業(株)製)等のふっ化物類、安息香酸エチル、安息香酸オクチル、フタル酸ジオクチル、トリメリット酸トリオクチル、セバシン酸ジブチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチル、(メタ)アクリル酸ドデシル等のエステル化合物類などが、適宜選択されて単独でもしくは複数組み合わせて使用される。
【0047】
本発明に係る凝集性微粒子分散液の製造方法においては、凝集性微粒子100質量部に対し、ポリマー成分5〜50質量部、より好ましくは10〜30質量部を添加することが好ましい。すなわち、ポリマーが5質量部未満であると、凝集性微粒子の表面性状を十分に改質することが困難となる虞れがあり、一方50質量部を越えると、凝集性微粒子とともに分散配合されるポリマーの量が多くなり、遮光性ないし着色性などといった本来的に要求される凝集性微粒子の特性を損なう虞れがあるためである。
【0048】
また溶媒量としては、ポリマーの種類によっても異なるが、ポリマー成分100質量部に対し、500〜5000質量部、より好ましくは1000〜4000質量部とすることが好ましい。溶媒量が500質量部未満であると、ポリマー溶液の粘度が高くなり撹拌による分散処理が困難となり、一方、溶媒量が5000質量部を超えると充分な撹拌力を与えてもポリマーによる凝集性微粒子の表面性状の改質が充分なものとならない虞れがあるためである。
【0049】
また、撹拌処理時における加熱温度としても、使用されるポリマーの種類等によっても左右されるため、一概には規定できないが、40〜150℃、好ましくは50〜120℃、より好ましくは60〜100℃程度が適当である。すなわち、加熱温度が極端に低いものであると、詳細な理由は明らかではないが、凝集性微粒子の表面性状の改質が充分なものとはならず、逆に150℃を越えると撹拌分散系の制御・維持が困難となるためである。
【0050】
さらに分散処理において、凝集性微粒子に加わる剪断応力としては、特に限定されるものではないが、102Pa以上、好ましくは103Pa以上、特に好ましくは104Pa以上とすることが望まれる。
【0051】
このように本発明の製造方法によって得られる凝集性微粒子分散液は、高度な微分散性を長期間にわたり安定して示すものである。例えば、その凝集性微粒子がチタンブラック等の色材である場合、当該分散液は、着色剤ないしは遮光剤等として各種の組成物に好適に使用され得る。例えば、その用途としては、各種樹脂組成物、被覆組成物、インキ、感熱転写インク、感熱転写用インクリボンコート剤、磁気記録媒体用バックコート剤、静電荷現像用トナー、塗料、高抵抗かつ遮光性を必要とする材料、液晶用カラーフィルターのブラックマトリクス、LSIあるいは超LSI等の集積回路の封止剤、人工大理石、プラスチックないしゴム成形材料、遮光性繊維等の着色剤あるいは遮光剤成分としての配合、ポリオレフィンやポリエステル等のプラスチックないしゴムの改質剤ないし充填剤としての配合、その他、潤滑剤、トラクションドライブ流体、電気粘性流体や非線形光学材料、電気抵抗調整、例えば帯電防止材料、複写機内の抵抗材料やPTC特性を利用した面状発熱体などにおいて用いられることができるが、もちろん上記に例示したものに何ら限定されるわけではない。
【0052】
そしてこのように、各種の組成物に添加した場合にあっても、凝集性微粒子をそのまま使用した場合ないしは、例えば、ポリマー溶液と単純に撹拌混合して調製した分散液を使用した場合に比べ、当該組成物における分散安定性低下、凝集による沈降、粘度上昇、色別れ等の特性の劣化が少なく、また薄膜上に展開した場合にあっても、基板に対する密着性、電気的高抵抗性、高遮光性、膜強度等の特性面に関して著しい改善を示すものである。
【0053】
【実施例】
以下、本発明を実施例に基づきより具体的に説明する。なお、以下の実施例および比較例中の「部」は、すべて質量による。
【0054】
実施例1
ベッセル内部に、回転撹拌子と複数の粒状メディアを配してなる撹拌装置として、流入部と、粒状メディアは通過できないが被処理液は通過できる排出部とを有し、前記回転撹拌子が内部に位置する篭体内に、粒状メディアを配し、さらに、この篭体をベッセル内に配してなるバスケットミルを使用し、凝集性微粒子の被処理液中への分散処理を行った(図1参照のこと)。
【0055】
詳しくは、凝集性微粒子としてシリカ処理を施されたチタンブラック30部と、溶媒としてシクロヘキサノン68.5部と、該溶媒に溶解性ないし自己分散性のポリマー成分としてDisperbyk−180(ビックケミー製)3.0部とからなる被処理液をベッセルに仕込み、篭体内に粒状メディアとして1mmのジルコニア製ビーズを23kg充填したバスケットミルSS20Z(浅田鉄工製)を用い、周速10m/sで分散処理を行った。このときベッセル内の被処理液の液面から篭体上面の流入部までの深さを5cmとし、篭体内の回転撹拌子の回転により発生する負圧により被処理液と共に空気が篭体内に吸引されるようにした。これにより、空気泡を巻き込んだ状態で被処理液が篭体内に吸引される条件下で撹拌処理を行うようにした。7時間分散処理を行った後にジルコニア製ビーズと被処理液を分離して凝集性微粒子分散液(1)を得た。
【0056】
比較例1
実施例1において、ベッセル内の被処理液の液面から篭体上面の流入部までの深さを30cmとし、空気が篭体内に吸引されないようにした以外は、実施例1と同様の操作を行い、比較用凝集性微粒子分散液(C1)を得た。
【0057】
実施例2および比較例2
上記凝集性微粒子分散液(1)および比較用凝集性微粒子分散液(C1)の平均粒子径および粘度を測定したところ、凝集性微粒子分散液(1)は平均粒子径170nm、粘度11cPであったのに対し、比較用凝集性微粒子分散液(C1)では平均粒子径162nm、粘度18cPであった。さらにこれらの分散液を10日間室温にて静置した後、同様に平均粒子径および粘度を測定したところ、凝集性微粒子分散液(1)は平均粒子径173nm、粘度12cPであったのに対し、比較用凝集性微粒子分散液(C1)ではゲル化がおこり平均粒子径、粘度とも測定不能であった。
【0058】
【発明の効果】
以上述べたように、本発明の凝集性微粒子分散液の製造方法では、高度な微分散性を有すると共に分散安定性が高いなど分散特性の改善された凝集性微粒子分散液を比較的簡単な処理にて得ることができる。また、本発明の製造方法により得られた凝集性微粒子分散液は、高度な微分散性を長期間にわたり安定して示すものであって、例えば、着色剤ないしは遮光剤等として各種の組成物に添加して使用した場合に、凝集性微粒子の本来的に有する着色性、遮光性、低抵抗率等をその分散形態において如何なく発揮させることができるものである。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明に係る凝集性微粒子分散液の製造方法において、用いられる撹拌装置の概略構成を示す模式図である。
【符号の説明】
1…ベッセル、 2…篭体、
3…撹拌子、 4…粒状メディア、
5…被処理液、 6…流入部、
7…排出部。
Claims (3)
- ベッセル内部に、回転撹拌子と複数の粒状メディアを配してなる撹拌装置内に、溶媒、該溶媒に溶解性ないし自己分散性のポリマー成分、および凝集性微粒子を少なくとも有してなる被処理液を装填し、凝集性微粒子を被処理液中に分散処理するに際し、
前記撹拌装置として、流入部と、粒状メディアは通過できないが被処理液は通過できる排出部とを有し、前記撹拌子が内部に位置するまたは壁面の一部を構成する篭体内に、前記粒状メディアを配してなるミルを用い、かつ
前記ミルのベッセル内に位置する前記篭体の流入部において、撹拌子の回転により発生する負圧により被処理液と共に空気が吸引され、空気泡を巻き込んだ状態で被処理液が前記篭体内に吸引される条件下で撹拌処理を行うことを特徴とする凝集性微粒子分散液の製造方法。 - 前記凝集性微粒子が、色材であることを特徴とする請求項1に記載の製造方法。
- 粒状メディアの平均粒子径が、0.05〜20mmである請求項1または2に記載の製造方法。
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