JP4464571B2 - エンジンの吸気マニホールド - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は,エンジンの吸気マニホールドに関し,特に,吸気入口を有する合成樹脂製の吸気分配箱と,この吸気分配箱の側壁に連設されて,各下流端をエンジンの複数の吸気ポートに連ねる複数の合成樹脂製の吸気分岐管とからなり,それら吸気分岐管の各上流端に形成したファンネル部を前記吸気分配箱内に配置したものゝ改良に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来,吸気入口を有する合成樹脂製の吸気分配箱と,この吸気分配箱の側壁に連設されて,各下流端をエンジンの複数の吸気ポートに連ねる複数の合成樹脂製の吸気分岐管とからなる,エンジンの吸気マニホールドを,吸気分配箱から複数の吸気分岐管に渡る分割面で振動溶着される一対のマニホールド半体で構成することは,既に知られている(例えば,特開平9−177624号公報参照)。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
ところが,上記のように,吸気マニホールドを,吸気分配箱から複数の吸気分岐管に渡る分割面で分割したものでは,各吸気分岐管が一般的に屈曲していることから,上記分割面は必然的に曲面となるため,その分割面での両マニホールド半体の振動溶着に際しては,種々の困難を伴うところである。その上,吸気分岐管の上流端に形成したファンネル部を吸気分配箱内に配置した形式の吸気マニホールドにあっては,それを上記のような分割面で分割すると,マニホールド半体の成形が容易ではない。
【0004】
本発明は,かゝる事情に鑑みてなされたもので,吸気分岐管の上流端に形成したファンネル部を吸気分配箱内に配置した形式の合成樹脂製の吸気マニホールドにおいて,各分割体の成形が容易であり,しかも分割体相互の振動溶着を容易,確実に行い得るようにすることを目的とする。
【0005】
【課題を解決するための手段】
上記目的を達成するために,本発明は,吸気入口を有する合成樹脂製の吸気分配箱と,この吸気分配箱の側壁に連設されて,各下流端をエンジンの複数の吸気ポートに連ねる複数の合成樹脂製の吸気分岐管とからなり,それら吸気分岐管の各上流端に形成したファンネル部を前記吸気分配箱内に配置した,エンジンの吸気マニホールドにおいて,前記吸気分配箱を,一平面上で互いに溶着される第1箱半体及び第2箱半体で構成すると共に,これら箱半体の一方に前記吸気入口を設け,また前記複数のファンネル部のそれぞれを,前記吸気分岐管の各上流端から前記第1箱半体の前記側壁に沿って折れ曲がる胴部と,その胴部の上流端に連続する環状の先端拡径部とで構成し,またこれら複数のファンネル部を,前記胴部及び前記先端拡径部の各半分を有して前記第1箱半体の前記側壁に一体成形される複数のファンネル部本体と,これらファンネル部本体に前記吸気分配箱内の一平面上で溶着されて,各ファンネル部の前記胴部及び前記先端拡径部の残余部分を構成する複数のファンネルセグメントとで構成し,前記ファンネル部本体における各先端拡径部を前記第1箱半体の前記側壁に連続させたことを第1の特徴とする。
【0006】
この第1の特徴によれば,吸気マニホールドの各構成部材の成形を容易にすると共に,それらの溶着に際しては,全溶着面への加圧力の均等化を確実にして,溶着代の均一化を図り,溶着強度の安定化をもたらすことができ,これにより吸気マニホールドの生産性及び品質の向上を図ることができる。
【0007】
また本発明は,第1の特徴に加えて,前記複数のファンネルセグメントに,これらを互いに一体に連結する連結体を一体に成形したことを第2の特徴とする。
【0008】
この第2の特徴によれば,複数のファンネルセグメントを連結体と共に一挙に成形し得ると共に,これらのファンネル部本体への振動溶着を容易に行うことができる。
【0009】
さらに本発明は,第1の特徴に加えて,前記第1及び第2箱半体を相互に溶着する平面と,前記ファンネル部本体及びファンネルセグメントを相互に溶着する平面とを一平面上に配置したことを第3の特徴とする。
【0010】
この第3の特徴によれば,吸気マニホールドの生産性を一層高めることができる。
【0011】
なお,実施例における吸気分配箱の前壁60′は,本発明の側壁に対応する。
【0012】
【発明の実施の形態】
本発明の実施例の形態を,添付図面に示す本発明の一実施例に基づいて以下に説明する。
【0013】
図1は船外機の全体側面図,図2は図1の要部縦断面図,図3は図2の2−2線断面図,図4は図3において吸気系を取り除いた状態を示す平面図,図5は図2の2−2線断面図,図6は図3の6−6線断面図,図7は図5の7−7線断面図,図8は図7に対応した吸気マニホールドの分解図,図9は吸気マニホールドにおけるファンネルセグメント群の斜視図,図10は図7の10−10線断面図,図11は図7の11−11線断面図,図12は図7は12−12矢視図,図13は図2の13−13線断面図,図14は図2の14−14線断面図,図15は燃料供給系の全体図,図16は燃料レールの縦断面図である。
【0014】
尚,以下の説明において,前後左右とは,船外機Oが取り付けられる船体Hを基準にして言うものとする。
【0015】
図1及び図2において,船外機Oは,マウントケース1,このマウントケース1の下端面に結合されるエクステンションケース2,及びこのエクステンションケース2の下端面に結合されるギヤケース3を備えており,マウントケース1の上端面にV型6気筒水冷式4サイクルエンジンEがクランク軸4を縦置きにして搭載される。
【0016】
クランク軸4の下端には,フライホイール5と共に駆動軸6が連結される。このクランク軸4は,エクステンションケース2の内部を下方に延び,その下端はギヤケース3の内部に設けた前,後進切換機構7を介して水平方向のプロペラ軸8に接続され,このプロペラ軸8の後端にプロペラ9が固着される。後進切換機構7の前部には,それを作動するためのチェンジロッド10が連結される。
【0017】
マウントケース1にアッパマウントゴム11を介して連結される左右一対のアッパアーム12と,エクステンションケース2にロアマウントゴム13を介して連結される左右一対のロアアーム14との間にスイベル軸15が固定され,このスイベル軸15を回転自在に支持するスイベルケース16が,船体HのトランサムHaに装着されるスターンブラケット17に水平方向のチルト軸18を介して上下揺動可能に支持される。
【0018】
またマウントケース1には,エンジンEの下部を囲むブラケット20が複数のステー21を介して取り付けられ,このブラケット20に合成樹脂製で環状のアンダカバー22が固着される。このアンダカバー22は,エンジンEの下部からエクステンションケース2の上部までの区間の周囲を覆うもので,その上端に,エンジンEを上方から覆うエンジンフード33が着脱可能に取り付けられる。このエンジンフード33及びアンダカバー22とにより,エンジンEを収容するエンジンルーム23が画成される。またアンダカバー22は,エクステンションケース1の上部外周面との間に環状の空室24を画成する。アンダカバー22は,空室24を大気に開放する切欠き22aを前部に有しており,前記アッパアーム12は,この切欠き22aを通して配設される。
【0019】
図2〜図4に示すように,エンジンEは,縦置きのクランク軸4を支持するクランクケース25と,このクランクケース25から後方に向かってV字状に広がる左右一対のバンク26L,26Rとを有しており,クランクケース25の下面が前記マウントケース1の上部取り付け面1a(図14参照)にボルト結合される。上部取り付け面1aはマウントケース1において,他の上面より1段高く,且つ前方にオフセットして形成され,これにより左右のバンク26L,26Rとマウントケース1との間に補機設置スペース27が画成される。
【0020】
図5及び図6に示すように,各バンク26L,26Rは,上下に配列する複数本(図示例では3本)のシリンダボア28L,28Rを備える。また左右のバンク26L,26Rは,クランクケース25の後端面にボルト結合され,上記左右のシリンダボア28L,28Rを有するシリンダブロック28と,このシリンダブロック28の,シリンダボア28L,28Rがそれぞれ開口する左右の後端面にボルト結合される一対のシリンダヘッド29L,29Rと,これらシリンダヘッド29L,29Rに形成される動弁室を閉じるべく,シリンダヘッド29L,29Rの後端面に結合される一対のヘッドカバー30L,30Rとから構成される。
【0021】
図4において,各シリンダボア28L,28Rに摺動自在に嵌装されるピストン31L,31Rは,それぞれコンロッド32L,32Rを介して前記クランク軸4に連接される。
【0022】
マウントケース1の下部取り付け面1bには,エクステンションケース2内に配置されるオイルパン35が結合される。
【0023】
また左右のシリンダヘッド29L,29Rには,クランク軸4と平行な動弁用のカム軸36L,36Rがそれぞれ回転自在に支持される。クランク軸4の上端には小径の第1駆動プーリ37が,また左右のカム軸36L,36Rの上端には従動プーリ38L,38Rがそれぞれ固着され,これら駆動及び従動プーリ37,38L,38Rに1本のタイミングベルト39が巻き掛けられ,クランク軸4の回転時,第1駆動プーリ37が各従動プーリ38L,38R,したがってカム軸36L,36Rを2分の1の減速比をもって駆動するようになっている。上記プーリ37,38L,38R間には,タイミングベルト39を誘導するアイドルプーリ40,40′と,タイミングベルト39を誘導しながらそれに張りを付与するテンショナプーリ41が配置される。
【0024】
クランク軸4の上端には,また,第1駆動プーリ37の直上に同軸配置される大径の第2駆動プーリ42が固着され,この第2駆動プーリ42と,クランクケース25の前面に取り付けられる発電機45の従動プーリ43との駆動ベルト44が巻き掛けられ,クランク軸4の回転時,第2駆動プーリ42が従動プーリ43,したがって発電機45を増速駆動するようになっている。
【0025】
図2及び図3に示すように,タイミングベルト39及び駆動ベルト39を上方から覆うベルトカバー46がシリンダブロック28及びクランクケース25の上面に固着される。
【0026】
図1で符号19は,エンジンEの排気ポートに連なる排気管で,その下流端はエクステンションケース2内に開放される。この排気管19からエクステンションケース2内に排出された排ガスは,前記プロペラ9のボス部の中空部を通過して水中に排出される。
【0027】
次に,エンジンEの吸気系について図2,図3,図5〜図13により説明する。
【0028】
図2及び図3において,エンジンフード33の後面上部に第1空気取り入れ口47が設けられ,この第1空気取り入れ口47に連通して,下端をエンジンルーム23の下部に開放する偏平な通風ダクト49がエンジンフード33の後壁内面に沿って配設される。またエンジンフード33の前面下部に第2空気取り入れ口48が設けられ,この第2空気取り入れ口48から発電機45の上部に至る通風路50を形成する隔壁64がエンジンフード33の前壁内面に取り付けられる。
【0029】
前記ベルトカバー46の上面には,箱型の吸気サイレンサ51が一体に形成される。この吸気サイレンサ51後壁に左右一対の入口52,52と,これら入口52,52の間に配置される出口53とが設けられており,その出口53には,スロットルボディ54の吸気道54aの上流端が接続される。その吸気道54aには,船体Hに設けられるアクセルレバー(図示せず)に連動するスロットル弁55が軸支される。
【0030】
図5〜図7において,前記スロットルボディ54の吸気道54aの下流端に連なる吸気マニホールドMiが左右のバンク26L,26R間の谷間56に臨んで配設される。また上記谷間56には,左バンク26Lのシリンダヘッド29Lに形成された複数の吸気ポート57Lに接続する複数の左吸気管58Lと,右バンク26Rのシリンダヘッド29Rに形成された複数の吸気ポート57Rに接続する複数の右吸気管58Rとが,各上流端を後方へ向けるようにして配設される。複数の左吸気管58Lの上流端には,これらを相互に連結する左連結フランジ59Lが一体に形成され,複数の右吸気管58Rの上流端には,これらを相互に連結する右連結フランジ59Rが一体に形成される。
【0031】
吸気マニホールドMiは合成樹脂製であって,上下方向に長く且つ前後方向に偏平な形状を持つ吸気分配箱60を備え,これは左右のバンク26L,26Rの両後面を跨ぐように配置される。この吸気分配箱60の前壁60′上部には,中心部に吸気入口61を有する連結フランジ62が形成され,吸気分配箱60内には上下方向に延びる隔壁64が設けられ,これによって吸気分配箱60の内部は,それぞれ吸気入口61に連通する左分配室63L及び右分配室63Rに区画される。隔壁64には,吸気入口61に流入した空気を左右の分配室63L,63Rに分流させる誘導壁67が連設される。
【0032】
また吸気分配箱60の前記谷間56に臨む前壁60′には,左右の分配室63L,63Rを左右の吸気管58L,58Rにそれぞれ連通する複数の左吸気分岐管65L及び右吸気分岐管65Rが一体に成形される。左右の複数の吸気分岐管65L,65Rの下流端には,これらを相互に連結する1個の連結フランジ66一体に成形され,これが前記左右の吸気管58L,58Rの連結フランジ59L,59Rにボルト結合される。
【0033】
左吸気分岐管65Lの上流端には,吸気分配箱60の前壁60′に沿って左向きに折れ曲がる胴部65f′を有して,その上流端に連続する環状の先端拡径部65f″が吸気分配箱60内で左向きに開口するファンネル部65fが形成され,また右吸気分岐管65Rの上流端には,吸気分配箱60の前壁60′に沿って右向きに折れ曲がる胴部65f′を有して,その上流端に連続する環状の先端拡径部65f″が吸気分配箱60内で右向きに開口するファンネル部65fが形成される。各ファンネル部65fは,対応する吸気分岐管65L,65Rの有効管長を確保しながら,その管路抵抗の軽減に寄与する。
【0034】
図3,図7〜図9及び図10において,前記吸気入口61を有する連結フランジ62は多角形(図示例では方形)をなしており,その各角部前面にはナット68が埋設される。この連結フランジ62の前端面に,前記スロットルボディ54の下流端に形成した連結フランジ69が重ねられ,この連結フランジ69を貫通する複数本のボルト70を上記ナット68に螺締することにより,両連結フランジ62,69が相互に結合される。
【0035】
連結フランジ62の前端面には複数の肉抜き凹部71が形成されると共に,その背面には,吸気分配箱60の外面に延びる複数の補強リブ72が一体に形成される。こうすることにより,連結フランジ62の軽量化を図りつゝ連結フランジ62の頸部を補強することができ,特に,上記補強リブ72を埋設ナット68との対応位置に配置することは,連結フランジ62の,スロットルボディ54との連結部を効果的に補強する上で有効である。
【0036】
吸気分配箱60の内部を左右の分配室63L,63Rに区画する前記隔壁64には,両分配室63L,63R間を直接連通する1又は複数の弁孔74が設けられ,この弁孔74を開閉する1又は複数の開閉弁75が軸支される。
【0037】
而して,エンジンEの運転中,第1空気取り入れ口47に流入した空気は,通風ダクト49を下降してエンジンルーム23の下部に解放され,そして上部の吸気サイレンサ51の左右の入口52,52に向かう。そのとき,その空気中に含まれる水滴は分離して落下するので,吸気サイレンサ51への水滴の浸入を防ぐことができる。
【0038】
一方,発電機45の駆動中,その内部では冷却ファンが回転するので,第2空気取り入れ口48に流入した空気は,通風路50を上昇して,発電機45上部の冷却風入口76に入り,その内部を冷却した後,下部の冷却風出口77から流出し,その後,この空気も前記吸気サイレンサ51の左右の入口52,52に向かう。
【0039】
左右の入口52,52に流入した空気は,吸気サイレンサ51内で合流し,出口53を出て,スロットルボディ54の吸気道54aを通り,吸気分配箱60の吸気入口61に向かう。その際,吸気道54aでは,スロットル弁55の開度により,エンジンEの吸気量が制御される。
【0040】
エンジンEの低速運転域では,吸気分配箱60内の開閉弁75は閉じておくものであって,吸気入口61に流入した空気は,上下に延びる左右の分配室63L,63Rに分流する。そして,左分配室63Lに分流した空気は,複数の左吸気分岐管65Lの各ファンネル部65fに更に分流し,左吸気管58Lを経て左バンク26Lの吸気ポート57Lを通り,対応するシリンダボア27Lに吸気される。また右分配室63Rに分流した空気は,複数の右吸気分岐管65Rにの各ファンネル部65fに更に分流し,右吸気管58Rを経て右バンク26Rの吸気ポート57Rを通り,対応するシリンダボア27Rに吸気される。
【0041】
ところで,エンジンEの低速運転域では,左右の吸気分岐管65L,65Rのファンネル部65fが開口する左分配室63L及び右分配室63Rは,上部の吸気入口61との連通部を除いて,閉じ状態の開閉弁75により遮断されているから,左右のファンネル部65fと吸気入口61との間には,実質上独立した二本の管路が存在することになって,左右の分配室63L,63Rの上流端から左右の吸気ポート57L,57Rの下流端に至る有効吸気管路は比較的長いものとなる。その結果,吸気脈動効果や慣性効果を有効に利用して,低速運転域での吸気充填効率の向上をもたらし,低速出力性能を高めることができる。
【0042】
一方,エンジンEの高速運転域では,吸気分配箱60内の開閉弁75は開くものであって,これにより左右の分配室63L,63Rは弁孔74を介して相互に連通して大容量の1個のサージタンクを構成し,このサージタンクに左右の吸気分岐管65L,65Rのファンネル部65fが開口するので,左右の吸気分岐管65L,65Rの上流端から左右の吸気ポート57L,57Rの下流端に至る有効吸気管路は比較的短いものとなる。その結果,吸気抵抗の減少と吸気脈動効果の利用とにより,高速運転域での吸気充填効率の向上をもたらし,高速出力性能を高めることができる。
【0043】
図11において,吸気分配箱60の底面には燃料溜まりが凹部78として設けられる。一方,最下部のファンネル部65fには,その内面を上記凹部78に連通すべく下方に延びる燃料吸い上げ孔79が設けられる。このようにすると,エンジンEの運転中,吸気の吹き返し現象により吸気分配箱60の底部,即ち燃料溜まり凹部78に燃料が溜まっても,最下部のファンネル部65fに吸気負圧が発生したとき,その負圧の作用により燃料吸い上げ孔79が上記燃料を吸い上げることになり,対応するシリンダボア28L又は28Rに供給されるので,燃料のロスを防ぐことができる。
【0044】
また各吸気分岐管65L,65Rから吸気分配箱60に逆流した燃料は,燃料溜まりとしての凹部78に確実に保持されるので,その燃料の飛散によるロスも防ぐことができる。
【0045】
さらに上下方向に配列した複数の吸気分岐管65L,65Rのうち,最下部の吸気分岐管のファンネル部65fに燃料吸い上げ孔79が設けられるので,最短の燃料吸い上げ孔79をもって,凹部78に溜まった燃料を吸い上げることができる。
【0046】
図12及び図13において,前記開閉弁75に固着した弁軸80は隔壁64に回転自在に支承される。この弁軸80の一端に固設された作動レバー81に,負圧アクチュエータ82の作動杆83が連結され,また作動レバー81は戻しばね84により開閉弁75の開き方向に付勢される。負圧アクチュエータ82のケーシング82aは吸気分配箱60の外壁に支持される。このケーシング82aの内部には,負圧室と大気室間を仕切るダイヤフラムが張設され,その負圧室に負圧が導入されると,ダイヤフラムが作動して作動杆83を牽引して,作動レバー81を開閉弁75の閉じ方向に回動するようになっている。
【0047】
負圧アクチュエータ82のケーシング82aには,上記負圧室に連なる負圧導入管85が突設され,これと負圧タンク86とを結ぶ負圧導管87の途中に制御弁90が介裝される。この制御弁90は電磁弁で構成され,図示しない電子制御ユニットによる制御により,エンジンEの低速運転域では励磁され,負圧導管85を導通状態にし,高速運転域で消磁されて負圧導管85を不通にすると共に,負圧アクチュエータ82の負圧室を大気に解放するようになっている。したがって,エンジンEの低速運転域では,負圧アクチュエータ82が作動して開閉弁75を閉じ,高速運転域になると,負圧アクチュエータ82が不作動状態となるので,開閉弁75は戻しばね84の付勢力で開くことになる。
【0048】
前記負圧タンク86には,前記吸気分配箱60の上部に形成した第1負圧取り出し管91に連なる負圧導管93が接続され,この負圧導管93の途中に,負圧タンク86から吸気分配箱60側への負圧の逆流を阻止するチェック弁94が介裝される。したがって,エンジンEの運転中,吸気分配箱60に発生する吸気負圧を負圧導管93及びチェック弁94を通して負圧タンク86に蓄えることができる。
【0049】
図2及び図4に示すように,上記負圧タンク86は,マウントケース1の後部上面と,左右のバンク26L,26Rとの間の前記補機設置スペース27に,後述する副燃料タンク121と共に配置される。
【0050】
再び図7〜図9において,前記吸気分配箱60は,鉛直方向の一平面Pにより分割される前側,即ちバンク26L,26R側の第1箱半体60Aと,後側の第2箱半体60Bとから構成され,これらは合成樹脂により個別に成形される。その際,第1箱半体60Aには吸気入口61を有する連結フランジ62が一体に成形される。また第1及び第2箱半体60A,60Bの相対向する内面には,複数の連結突起95,96が一体に成形される。第1及び第2箱半体60A,60Bの分割面は相互に振動溶着され,また連結突起95,96も同時に相互に振動溶着される。
【0051】
第2箱半体60Bの側壁中央部には開口部97が設けられ,この開口部97を閉じる蓋板98が合成樹脂により成形される。その際,蓋板98には,前記隔壁64の一半部が一体に成形され,この一半部に弁孔74が形成されると共に,それを開閉する前記開閉弁75が取り付けられる。蓋板98はボルト99で第2箱半体60Bに締結される。
【0052】
左右の各吸気分岐管65L,65Rの上流端には,第1箱半体60Aの前壁60′に沿って折れ曲がる胴部65f′,及び該胴部65f′の上流端に連続する環状の先端拡径部65f″の各半分を有して前記第1箱半体60Aに一体成形される複数のファンネル部本体100と,前記一平面Pでファンネル部本体100から分割されて各ファンネル部65fの前記胴部65f′及び前記先端拡径部65f″の残余部分を構成するファンネルセグメント101とが形成される。その際,前記ファンネル部本体100における各先端拡径部65f″は第1箱半体60Aの側壁60′に連続するように形成されると共に,全部のファンネルセグメント101には,前記隔壁64の一部を構成する連結体64aが一体に成形される。即ち,ファンネルセグメント101群と連結体64aとは一体に成形される。
【0053】
而して,吸気マニホールドMiの組み立てに当たっては,先ず,第1箱半体60Aの左右のファンネル部本体100群とファンネルセグメント101群とを平面Pで重ねて加圧し,相対的に振動させることにより相互に溶着し,次いで,第1箱半体60Aと第2箱半体60Bとを同じく平面Pで重ねて同様な振動溶着を行う。その後,第2箱半体60Bに蓋板98を合わせてボルト99で結合する。
【0054】
このように,第1箱半体60Aと第2箱半体60B,ファンネル部本体100群とファンネルセグメント101群は,それぞれ一平面P上で振動溶着されるので,各部材の成形を容易にすると共に,それらの溶着に際しては,全溶着面への加圧力の均等化を確実にして,溶着代の均一化を図り,溶着強度の安定化をもたらすことができ,これにより吸気マニホールドMiの生産性及び品質の向上を図ることができる。また複数のファンネルセグメント101は,前記隔壁64の一部である連結体64aで相互に一体に連結されるので,ファンネルセグメント101群を前記連結体64aと共に一挙に成形し得ると共に,これらのファンネル部本体100群への振動溶着を容易に行うことができる。
【0055】
しかも前後方向に偏平な吸気分配箱60は左右のバンク26L,26Rの後端面に近接して配置され,また左右の吸気分岐管65L,65R群は左右のバンク26L,26R間の谷間56に突入するようにして配置されるので,両バンク26L,26Rとエンジンフード33の後側壁との間の狭小なスペースに吸気マニホールドMiを配置することができ,これによりエンジンルーム23のスペース効率の向上を図り,エンジンフード33の大型化を抑えることができる。
【0056】
また蓋板98と一体の隔壁64の一部に開閉弁75が軸支されるので,蓋板98と開閉弁75との組立体を構成した後,蓋板98を吸気分配箱60に固着することにより,開閉弁75付きの吸気分配箱60を能率良く組み立てすることができる。
【0057】
図11において,吸気分配箱60に上壁には,その内部に開口する負圧検出孔103が設けられ,これに吸気負圧センサ104が嵌装され,この吸気負圧センサ104が有する取り付け板104aがボルト105で吸気分配箱60の上壁に固着される。この負圧センサ104の出力端子には,エンジンの燃料噴射量や点火時期等を制御する電子制御ユニット(図示せず)に連なるリード線が接続される。したがって,吸気負圧センサ104で検知された吸気負圧は,燃料噴射量や点火時期等の制御に供される。
【0058】
而して,負圧検出孔103に嵌装された吸気負圧センサ104は,吸気マニホールドMi内に発生する吸気負圧を直接的に検知するので,エンジンの吸気負圧の変化に対する吸気負圧センサ104の応答性を高めることができる。その上,吸気マニホールドMi内はサージタンクとしての機能を持ち,エンジンの吸気脈動を平滑化するので,吸気負圧センサ104は正確な吸気負圧を検知することができる。しかも従来のような長い負圧導管は不要となるので,エンジンの組立性や整備性の向上をもたらすことができる。
【0059】
尚,吸気負圧センサ104に接続されるリード線は極めて細いので,これがエンジンの組立性及び整備性を損なうことはない。
【0060】
次に,図7,図14〜図16により燃料供給系について説明する。
【0061】
左右のバンク26L,26Rの吸気管58L,58Rに,対応するバンク26L,26Rの吸気弁に向かって燃料を噴射する電磁式の燃料噴射弁110L,110Rが取り付けられる。左側の複数の燃料噴射弁110Lには,それらに燃料を供給する縦長の左燃料レール110Lが装着され,また右側の複数の燃料噴射弁110Rには,それらに燃料を供給すべく縦長の右燃料レール111Rが装着され,左右の燃料レール111L,111Rは,下端において連通管112により相互に接続される。
【0062】
一方のヘッドカバー30Lには,カム軸6Lにより機械的に駆動される1次燃料ポンプ113が設置される。この1次燃料ポンプ113の吸入ポートに接続される第1燃料管114はジョイント115を介して,船体H側に設置される燃料タンク116から延出する燃料導出管117に接続される。第1燃料管114の途中には,その上流側から第1燃料フィルタ118及び第2燃料フィルタ119が順次介裝される。その第1燃料フィルタ118は,燃料から水分を除去し,第2燃料フィルタ119は,燃料からその他の異物を除去するものである。
【0063】
1次燃料ポンプ113の吐出ポートは,第2燃料管120を介して副燃料タンク121の燃料入口に接続される。副燃料タンク121内には,内部の燃料油面が所定レベル以上になると上記燃料入口を閉じる公知のフロート弁が設けられており,したがって,エンジンEの運転中,副燃料タンク121には,1次燃料ポンプ113により主燃料タンク116から汲み上げた燃料が一定量蓄えられる。この副燃料タンク121の一側に,該タンク121内の燃料を汲みだ出す2次燃料ポンプ122が取り付けられており,この2次燃料ポンプ122の吐出ポートは,第3燃料管123を介して右燃料レール110Lの上端に接続される。したがって,2次燃料ポンプ122から吐出された高圧の燃料は,右燃料レール110Rを上端側から満たし,次いで連通管112を経て左燃料レール110Lを下端側から満たし,各燃料噴射弁110L,110Rに供給する。このように,左右の燃料レール111L,111Rと連通管112とは,協働してU字状の燃料通路が形成されることになるから,該燃料通路には気泡が滞留し難くなり,各燃料噴射弁110L,110Rからの燃料噴射量の安定化を図ることができる。
【0064】
燃料レール111L,111Rと第3燃料管123及び連通管112との各接続には,図16に示すようなジョイント125が用いられる。即ち,ジョイント125は中空円筒状をなしており,その両端部外周に一対のシール部材126,126′が装着される。その一方のシール部材126が燃料レール111L,111Rの端部の拡張孔127の内周面に密接するように,ジョイント125の一端部が該拡張孔127に嵌合され,また他方のシール部材126′が第3燃料管123及び連通管112の端部に接続した端末管128の内周面に密接するように,ジョイント125の他端部が該端末管128内に嵌合される。この端末管128は,取り付け板128aを有しており,これがボルト129により対応する燃料レール111L,111Rに固着される。このような接続構造を採用することにより,燃料レール111L,111Rと第3燃料管123及び連通管112との各接続を簡単,確実に行うことができる。
【0065】
左燃料レール111Lの上端は閉塞されると共に,その上端部に燃料圧力調整器130が付設される。この燃料圧力調整器130は,両燃料レール111L,111R内の圧力,即ち各燃料噴射弁110L,110Rの燃料噴射圧力を調整するもので,その余剰燃料出口管131には燃料戻し管132が接続され,この燃料戻し管132は副燃料タンク121に終端を開放する。したがって,燃料圧力調整器130により余剰とされた燃料は,燃料戻し管132を通して副燃料タンク121に戻される。燃料圧力調整器130は,上記燃料噴射圧力をエンジンEの吸気負圧,即ち負荷に応じて制御するための負圧室130aを有しており,これに負圧導管133を介して吸気分配箱60の前記第2吸気負圧取り出し管92(図11参照)に接続される。
【0066】
副燃料タンク121の天井壁には,その内部の燃料油面上空間に連通するエアベント管134が接続される。このエアベント管134は,一旦上方へ延び,エンジンEの上部で逆U字状に屈曲してから前記アンダカバー22内の環状空室24(図5参照)に開放され,このエアベント管134の上昇経路に濾材からなる燃料蒸気捕捉器135が介裝される。
【0067】
而して,副燃料タンク121内は,このエアベント管134を通して呼吸し,そのとき副燃料タンク121内で発生した燃料蒸気は,燃料蒸気捕捉器135で捕捉され,液化した燃料は副燃料タンク121へ戻る。
【0068】
副燃料タンク121及び2次燃料ポンプ122は,前記補機設置スペース27(図2及び図14参照)において,マウントケース1の上面に突設された複数の支柱136にブラケット137を介して支持され,その副燃料タンク121の後面に前記負圧タンク86がブラケット138を介して支持される。
【0069】
以上,本発明の実施例を詳述したが,本発明はその要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更を行うことが可能である。例えば,吸気マニホールドMiは,自動車用,その他のエンジンにも適用可能である。
【0070】
【発明の効果】
以上のように本発明の第1の特徴によれば,吸気入口を有する合成樹脂製の吸気分配箱と,この吸気分配箱の側壁に連設されて,各下流端をエンジンの複数の吸気ポートに連ねる複数の合成樹脂製の吸気分岐管とからなり,それら吸気分岐管の各上流端に形成したファンネル部を前記吸気分配箱内に配置した,エンジンの吸気マニホールドにおいて,前記吸気分配箱を,一平面上で互いに溶着される第1箱半体及び第2箱半体で構成すると共に,これら箱半体の一方に前記吸気入口を設け,また前記複数のファンネル部のそれぞれを,前記吸気分岐管の各上流端から前記第1箱半体の前記側壁に沿って折れ曲がる胴部と,その胴部の上流端に連続する環状の先端拡径部とで構成し,またこれら複数のファンネル部を,前記胴部及び前記先端拡径部の各半分を有して前記第1箱半体の前記側壁に一体成形される複数のファンネル部本体と,これらファンネル部本体に前記吸気分配箱内の一平面上で溶着されて,各ファンネル部の前記胴部及び前記先端拡径部の残余部分を構成する複数のファンネルセグメントとで構成し,前記ファンネル部本体における各先端拡径部を前記第1箱半体の前記側壁に連続させたので,吸気マニホールドの各構成部材の成形を容易にすると共に,それらの溶着に際しては,全溶着面への加圧力の均等化を確実にして,溶着代の均一化を図り,溶着強度の安定化をもたらすことができ,これにより吸気マニホールドの生産性及び品質の向上を図ることができる。
【0071】
また本発明の第2の特徴によれば,第1の特徴に加えて,前記複数のファンネルセグメントに,これらを互いに一体に連結する連結体を一体に成形したので,複数のファンネルセグメントを連結体と共に一挙に成形し得ると共に,これらのファンネル部本体への振動溶着を容易に行うことができる。
【0072】
さらに本発明の第3の特徴によれば第1の特徴に加えて,前記第1及び第2箱半体を相互に溶着する平面と,前記ファンネル部本体及びファンネルセグメントを相互に溶着する平面とを一平面上に配置したので,吸気マニホールドの生産性を一層高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明の実施例に係る船外機の全体側面図。
【図2】 図1の要部縦断面図。
【図3】 図2の2−2線断面図。
【図4】 図3において吸気系を取り除いた状態を示す平面図。
【図5】 図2の2−2線断面図。
【図6】 図3の6−6線断面図。
【図7】 図5の7−7線断面図。
【図8】 図7に対応した吸気マニホールドの分解図。
【図9】 吸気マニホールドにおけるファンネルセグメント群の斜視図。
【図10】 図7の10−10線断面図。
【図11】 図7の11−11線断面図。
【図12】 図7は12−12矢視図。
【図13】 図2の13−13線断面図。
【図14】 図2の14−14線断面図。
【図15】 燃料供給系の全体図。
【図16】 燃料レールの縦断面図。
【符号の説明】
E・・・・・エンジン
Mi・・・・吸気マニホールド
O・・・・・船外機
P・・・・・平面
23・・・・エンジンルーム
57L,57R・・・吸気ポート
60・・・・吸気分配箱
60A・・・第1箱半体
60B・・・第2箱半体
60′・・・側壁(前壁)
61・・・・吸気入口
64a・・・連結体
65L,65R・・・吸気分岐管
65f・・・ファンネル部
65f′・・胴部
65f″・・先端拡径部
100・・・ファンネル部本体
101・・・ファンネルセグメント
Claims (4)
- 吸気入口(61)を有する合成樹脂製の吸気分配箱(60)と,この吸気分配箱(60)の側壁(60′)に連設されて,各下流端をエンジン(E)の複数の吸気ポート(57L,57R)に連ねる複数の合成樹脂製の吸気分岐管(65L,65R)とからなり,それら吸気分岐管(65L,65R)の各上流端に形成したファンネル部(65f)を前記吸気分配箱(60)内に配置した,エンジンの吸気マニホールドにおいて,
前記吸気分配箱(60)を,一平面(P)上で互いに溶着される第1箱半体(60A)及び第2箱半体(60B)で構成すると共に,これら箱半体(60A,60B)の一方に前記吸気入口(61)を設け,
また前記複数のファンネル部(65f)のそれぞれを,前記吸気分岐管(65L,65R)の各上流端から前記第1箱半体(60A)の前記側壁(60′)に沿って折れ曲がる胴部(65f′)と,その胴部(65f′)の上流端に連続する環状の先端拡径部(65f″)とで構成し,またこれら複数のファンネル部(65f)を,前記胴部(65a)及び前記先端拡径部(65b)の各半分を有して前記第1箱半体(60A)の前記側壁(60′)に一体成形される複数のファンネル部本体(100)と,これらファンネル部本体(100)に前記吸気分配箱(60)内の一平面(P)上で溶着されて,各ファンネル部(65f)の前記胴部(65f′)及び前記先端拡径部(65f″)の残余部分を構成する複数のファンネルセグメント(101)とで構成し,
前記ファンネル部本体(100)における各先端拡径部(65f″)を前記第1箱半体(60A)の前記側壁(60′)に連続させたことを特徴とする,エンジンの吸気マニホールド。 - 請求項1記載のエンジンの吸気マニホールドにおいて,
前記複数のファンネルセグメント(101)に,これらを互いに一体に連結する連結体(64a)を一体に成形したことを特徴とする,エンジンの吸気マニホールド。 - 請求項1記載のエンジンの吸気マニホールドにおいて,
前記第1及び第2箱半体(60A,60B)を相互に溶着する平面(P)と,前記ファンネル部(100)及びファンネルセグメント(101)を相互に溶着する平面(P)とを一平面(P)上に配置したことを特徴とする,エンジンの吸気マニホールド。 - 請求項1〜3の何れかに記載のエンジンの吸気マニホールドにおいて,
船外機(O)のエンジンルーム(23)に収容されることを特徴とする,エンジンの吸気マニホールド。
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