JP4460393B2 - 炭素繊維強化プラスチック成形体 - Google Patents
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Description
なお、炭素繊維の体積分率とは、炭素繊維強化プラスチックの全体体積に対する、炭素繊維の体積割合である。
なお、後記する実施形態では、炭素繊維束を撚った後に、配列し(第1工程)、合成樹脂を含浸し(第2工程)、成形する(第3工程)場合について説明する。
参照する図面において、図1(a)は本実施形態に係る炭素繊維強化プラスチック成形体(以下、CFRP成形体とする)の斜視図であり、図1(b)は図1(a)に示すCFRP成形体のX−X断面の拡大図である。図2(a)は撚り前の1本の炭素繊維束(以下、CF束とする)の斜視図であり、図2(b)は撚り直後の螺旋状を呈する螺旋CF束の斜視図であり、図2(c)は変形後の螺旋CF束の斜視図である。図3は、本実施形態に係るCFRP成形体の製造方法の工程図である。図4は、撚り機によるCF束の撚り状況を示す斜視図である。
なお、図1(a)、(b)においては、螺旋状の螺旋CF束の配列状況をわかりやすく示すため、図2(c)における螺旋CF束に略外嵌する、断面が楕円の柱体(以下、仮想螺旋CF束とする)を想定し、この仮想CF束を図1(a)、(b)において実線で描いている。また、図1(a)では、仮想CF束間の硬化した合成樹脂(マトリックス)を省略している。
図1(a)に示すように、本実施形態に係るCFRP成形体1は、板状を呈している。CFRP成形体1は、4層(段)で積層した4つの炭素繊維束配列体10(以下、CF束配列体とする)と、CF束配列体10を形成する螺旋CF束13(図2(c)参照)間に合成樹脂が硬化してなるマトリックス20とを含んで構成されている。
各層におけるCF束配列体10は、面方向に、螺旋CF束13(図2(c)参照)が所定間隔(d1)で配列して構成されている。そして、最上面側のCF束配列体10の螺旋CF束13の向き(後記する仮想螺旋CF束13Aの向き)を基準(0°)とした場合、厚さ方向において下面側に向かって、螺旋CF束13が0°/90°/90°/0°で配向するように、4つのCF束配列体10、10…が、4層で積層している。すなわち、本実施形態に係る螺旋CF束13は、面方向および厚さ方向に所定に配列しているのみで、織られていない。なお、前記所定間隔(d1)は、単位面積当たりのCFの量(目付量)に基づいて決定される。
したがって、図1(b)に示すように、厚さ方向の中央を対称面(軸)Qとして、螺旋CF束13の配向は対称となっており、CFRP成形体1の強度が高められている。
図2(c)に示す螺旋CF束13は、後記するCFRP成形体1の製造方法で詳細に説明するように、図2(a)に示す直線状のCF束11が所定回数で撚られ、図2(b)に示すように、撚り直後の螺旋CF束(以下、「撚り直後螺旋CF束12」という)となった後、これに含浸された合成樹脂の重さ等により押し潰され、変形したものである。
なお、CF束11の長径d2は、一般にCF束11の幅と称され、CF束11の短径d3は、一般にCF束11の厚さと称される。これに対応して、仮想螺旋CF束13Aの長径d5は幅と称され、短径d6は厚さと称される。また、短径d6方向が、CFRP成形体1(図1(a)、(b)参照)の厚さ方向に対応する。
なお、螺旋CF束13は、「撚り直後螺旋CF束12」がその径方向に変形したものであるため、螺旋CF束13のピッチは、「撚り直後螺旋CF束12」のピッチと同じとなる。
マトリックス20は、一般には、熱硬化性樹脂またはその変性体が硬化したものである。熱硬化樹脂としては、例えば、不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ビニルエステル樹脂、熱硬化性アクリル樹脂、フェノール樹脂などが挙げられる。
続いて、CFRP成形体1の製造方法について、主に図2〜図4を参照して説明する。
CFRP成形体1の製造方法は、CF束11(図2(a)参照)に撚りを入れる撚り工程と、撚ったCF束11(つまり「撚り直後螺旋CF束12」(図2(b)参照))を所定に配列する第1工程と、所定に配列した「撚り直後螺旋CF束12」に、未硬化の合成樹脂を含浸させる第2工程と、圧縮成形すると共に合成樹脂を硬化させる第3工程とを含んでいる。
図2(a)に示すように、単繊維が所定数で束ねられてなる直線状のCF束11の一端を固定したまま、CF束11の他端を所定回数にて回転させて、CF束11に撚りを入れ、図2(b)に示すように、「撚り直後螺旋CF束12」とする(図3、S101)。さらに説明すると、CF(CF束11)はある程度の剛性を有するため、前記回転により、CF束11は螺旋状となる。
したがって、撚れられた螺旋状を呈する「撚り直後螺旋CF束12」は、直線状のCF束11に対して、外形は大きくなり、嵩高くなる。なお、「撚り直後螺旋CF束12」の螺旋状態は、例えば治具などを使用して維持する。
この場合において、撚る回数が5回/mより少ないと、CF束11が十分に螺旋状とならず、嵩高くならないからである。一方、撚る回数が30回/mより多いと、「撚り直後螺旋CF束12」の表面が毛羽立ち、つまり「撚り直後螺旋CF束12」を構成する単繊維が部分的に破断し、CFが有する弾性率などの特性が失われるからである。この場合においては、撚り回数は10〜30回/mに設定することが最適である。
ここで、図4を参照して、直線状のCF束11を撚って、「撚り直後螺旋CF束12」とする撚り機30について説明する。
図4に示すように、撚り機30は、直線状のCF束11が巻装された送り側のボビン31と、巻き取り側のボビン32と、ボビン32を矢印A2の向きで回転させるモータ33と、巻き取り側のボビン32を回転自在に軸支するアーム34と、CF束11に撚りを入れるためにアーム34を矢印A1の方向に回転させる回転手段(図示しない)とを備えている。そして、送り側のボビン31は、図示しないアームにより、所定位置で回転自在に軸支されている。また、送り側のボビン31と巻き取り側のボビン32とは、所定の間隔d7(例えば5m)を隔てて配置されている。
また、アーム34の回転回数は、例えば、CF束11を構成する単繊維の本数と、間隔d7に基づいて決定される。
なお、アーム34を回転させずに、送り側のボビン31を回転させる構成や、送り側、巻き取り側を共に回転させる構成としてもよい。
そして、「撚り直後螺旋CF束12」を、撚られたまま所定間隔d1で配列し、図1(a)に示す第4層(段)目のCF束配列体10を構成する。次いで、第3層目のCF束配列体10、第2層目のCF束配列体10、第1層目のCF束配列体10を、順次にCFが前記配向となるように積層する(図3、S102)。
このようにCF束配列体10…を4層(段)に重ねたものに、後記実施例で説明するSMC含浸機などを使用し、未硬化の合成樹脂を含浸させる(図3、S103)。
この合成樹脂の含浸において、合成樹脂の粘度は、100〜20000mPa・sに設定する。合成樹脂の粘度が100mPa・sより低いと、つまり、合成樹脂の流動性が高すぎると、配列する「撚り直後螺旋CF束12」間に良好に充填されず、一方、合成樹脂の粘度が20000mPa・sより高いと、合成樹脂をCF束配列体10に含浸しにくくなる場合があるからである。さらに、合成樹脂の粘度を、500〜10000mPa・sに設定することで、より好適に「撚り直後螺旋CF束12」間に合成樹脂を含浸(充填)させることができる。
合成樹脂は、一般には、前記した熱硬化性樹脂またはその変性体を使用する。
次いで、合成樹脂が充填された4層構造のCF束配列体10を、所定の金型を使用し、所定圧力で圧縮成形する。この圧縮成形において、ヒータなどにより前記金型を所定温度、所定硬化時間(成形時間)にて加熱し、合成樹脂を硬化させて、マトリックス20を成形する。
さらに説明すると、断面が円形を呈する「撚り直後螺旋CF束12」は、合成樹脂の含浸、圧縮成形により、CFRP成形体1の厚さ方向に押し潰され、変形するものの、CFが所定の剛性を有するため、断面が楕円形(長径d5、短径d6)を呈する螺旋CF束13となる。この螺旋CF束13の短径d6(厚さ)は、直線状のCF束11の短径d3(厚さ)より大きい関係となっている。
(1−1)CF束の撚り
長径d2(幅)が8mm、短径d3(厚さ)が0.1mmのCF束11(東邦テナックス社製、HTA−S12K−F202、フィラメント12000本(いわゆる12K))を使用して、次の表2に示すように、1m当たりの撚り回数を0回(比較例1)、5回(実施例1)、10回(実施例2)、20回(実施例3)、30回(実施例4)、40回(比較例2)として、4層構造のCFRP成形体1を作製した。
そして、撚り回数と、螺旋CF束13の短径d6(厚さ)および螺旋CF束13の外観について検討した。螺旋CF束13の短径d6(厚さ)を表2および図5に、その外観を表2に示す。
なお、表2の外観の欄において、「○」は螺旋CF束13の周面が毛羽立たず、CF束の破断が確認されなかったことを示し、「×」がCFが部分的に破断し、螺旋CF束13の周面に毛羽立ちが確認されたことを示す。また、螺旋CF束13の短径d6は、作製したCFRP成形体1を適宜に切断し、その切断面から測定した。螺旋CF束13の長径d5も同様である。
表2および図5から明らかなように、長径d2(幅)が8mm、短径d3(厚さ)が0.1mmの直線状のCF束11を使用した場合、撚り回数が20回/mまでは、撚り回数の増加に対して、螺旋CF束13の短径d6(厚さ)が線形的に増加し、その後略一定(d6=0.43〜0.44)となることがわかった。また、撚り回数が40回/mになると(比較例2)、螺旋CF束13の周面に毛羽立ちが観察され、CFが部分的に破断することが確認された。
したがって、長径d2が8mm、短径d3が0.1mmで、12000本の単繊維が束ねられてなる直線状のCF束11に撚りを入れる場合、螺旋CF束13の短径d6が約2倍となる5回/m(実施例2)から、約4倍となる30回/m(実施例4)の範囲内で撚りを入れることが好ましいと考えられる(好適範囲)。
次に、本発明に係るCFRP成形体1(実施例5)と、比較例に係るCFRP成形体(比較例3、4)を作製し、CFの体積分率などの比較検討を行った。なお、この検討においては、CFRP成形体1の厚さが約1.5mmとなるように設定した。
(2−1−1)CF束の撚り
実施例1〜4と同じ長径d2(幅)が8mm、短径d3(厚さ)が0.1mmで、12000本の単繊維が束ねられてなるCF束11(東邦テナックス社製、HTA−S12K−F202、フィラメント12000本(12K))に、20回/mで撚りを入れ、螺旋径d4が2.4mmの「撚り直後螺旋CF12」を複数準備した(図2(b)参照)。
LIBA社製のマルチアクシャル機を使用し、「撚り直後螺旋CF12」を所定間隔d1で配列して、4層目のCF束配列体10を構成し、この上に第3層目、第2層目、第1層目のCF束配列体10を順に重ねた。なお、この「撚り直後螺旋CF12」の配列において、1軸あたりの目付量を212.5g/m2とし、「撚り直後螺旋CF12」を上から0°/90°/90°/0°の向きで配向させた。
月島機械社製のSMC(Sheet Molding Compound)含浸機を使用して、室温(25℃)で、粘度2800mPa・sの未硬化の不飽和ポリエステル樹脂を、2067g/m2の塗布量、ライン速度2m/min、塗布幅350mmとして、前記4層構造のCF束配列体10に、所定時間にて含浸させた。
その後、未硬化のポリエステル樹脂を含む4層構造のCF束配列体10を、290×290mmに裁断した。
次いで、川崎油工社製の圧縮成形機(100tプレス機)を使用し、開口300×300mmの金型キャビティの所定位置に、前記裁断した4層構造のCF束配列体10を載置し、不飽和ポリエステル樹脂を硬化させながら、圧縮成形した。この圧縮成形において、金型温度は120℃、型締め時間(硬化時間、成形時間)は2min、型締め圧力は10MPaとした。
そして、所定時間経過後、金型から離型し、CFRP成形体1を得た。
なお、含浸した不飽和ポリエステル樹脂の重さ、圧縮成形などにより、「撚り直後螺旋CF12」は押し潰されて厚さ方向に変形し、螺旋CF13となった。この螺旋CF13の長径d5(幅)は4.0mm、短径d6(厚さ)は0.43mmであった。つまり、螺旋CF束13の短径d6は、直線状のCF束11の短径d3より、大きいことが確認された。
得られたCFRP成形体1について、厚さ(t1)、密度、CFの体積分率Vf、曲げ弾性率を測定した。
CFRP成形体1の厚さ(t1)は、ミツトヨ社製のシネックスゲージ547−321で測定した。
CFRP成形体1の密度は、電子計り(MIRAGE社製SD−120L)を使用して、CFRP成形体1の空中での重量(空中重量m)と、水中での重量(水中重量m1)とを測定し、アルキメデス法による次の式(1)に従って算出した。
また、これとは別に、硬化した不飽和ポリエステル樹脂とCFの密度を、それぞれ求めた。
次いで、前記切り出し片を200mLのトールビーカに入れ、濃硫酸(大成化学社製、純度95%)を50mL注いだ後、ヒータで加熱して前記切り出し片中の硬化した不飽和ポリエステル樹脂(つまり、マトリックス20)を溶解させた。樹脂が完全に溶解した後、過酸化水素水(関東化学社製)を60mL注いだ。その後、アスピレータで吸引しながら、前記切り出し片に含まれていたCFを、計量済のガラスフィルタによって分別ろ過した。さらに、分別したCFを蒸留水およびアセトンで洗浄した。
その後、残存するCFをガラスフィルタと共に恒温槽に入れ、100℃、2時間にて乾燥した後、CFとガラスフィルタの合計質量を測定した。
不飽和ホ゜リエステル樹脂の質量=[CFRP成形体の質量]−[CFの質量] …(3)
不飽和ホ゜リエステル樹脂の体積=[不飽和ホ゜リエステル樹脂の質量]/[不飽和ホ゜リエステル樹脂の密度] …(5)
次に、CFRP成形体1について、曲げ試験を行い、曲げ弾性率を測定した。
具体的には、「JISK7074:炭素繊維強化プラスチックの曲げ試験方法」に準拠して、得られたCFRP成形体1をダイヤモンドカッタで切り出し、幅15mm×長さ100mmの曲げ試験片を作製した。そして、この曲げ試験片について、曲げ試験機(島津製作所社製オートグラフAG5000E)を使用し、4点曲げ試験を実施した。なお、試験速度は5mm/min、下支点のスパンは板厚(CFRP成形体の厚さt1)×40mmに設定した。
次いで、測定された荷重−変位曲線から、曲げ弾性率をJISK7074に準拠し、B法計算式で算出した。算出した曲げ弾性率を表3に示す。
断面が楕円形(長径d2=8mm、短径d3=0.18mm)であるCF束211を使用し、このCF束211を撚らずに、従来の多軸積層法でCFRP成形体201を作製した(図7参照)。さらに説明すると、前記断面が楕円形のCF束211を0°/90°/90°/0°で配向させたものを1層とし、対称面Pで対称となるように重ねて2層とした。そして、これに不飽和ポリエステル樹脂を含浸させた後、圧縮成形してCFRP成形体201を得た。そして、実施例5と同様に、各種測定を行った。結果を表3に示す。
CF束が0°/90°の配向で織られ、未硬化のエポキシ樹脂を含むプリプレグ102(東邦テナックス社製プリプレグW3101/Q112J)を、300×300mmで裁断した。そして、この裁断したプリプレグを7枚重ね合わせた(図6参照)。この重ね合わせにおいて、プリプレグを構成するCF束の配向軸が、厚さ方向において±1°以下となるようにした。
次いで、オートクレーブにより熱処理して成形し、CFRP成形体101を得た。なお、硬化温度は130℃、硬化時間は2時間、圧力は0.49MPaとした。
そして、得られたCFRP成形体101について、実施例5と同様に、各種測定を行った。結果を表3に示す。
表3から明らかなように、実施例5におけるCFの体積分率Vfは、比較例3および比較例4に対して低いことが確認された。すなわち、本発明に係るCFRP成形体の製造方法によれば、安価なCFRP成形体を得ることができることが確認された。
また、本発明に係る実施例5は、比較例3および比較例4に対して密度が低い、つまり嵩高いことが確認された。すなわち、同体積で比較した場合、実施例5は、比較例3および比較例4に対して、約1割軽量となることがわかった。
さらに、本発明に係る実施例5は、プリプレグを重ねて製造する比較例4に対して、CFの体積分率が約1/2であるにも関わらず、炭素繊維の特性が良好に維持され、曲げ弾性率が高いことが確認された。
10 CF束配列体
11 CF束
12 撚り直後螺旋CF束
13 螺旋CF束
13A 仮想螺旋CF束
20 マトリックス
d2 CF束の長径(幅)
d3 CF束の短径(厚さ)
d4 撚り直後の螺旋CF束の螺旋径
d5 変形後の螺旋CF束の長径(幅)
d6 変形後の螺旋CF束の短径(厚さ)
Claims (3)
- 炭素繊維が束ねられてなる複数の炭素繊維束が所定に配列し、当該炭素繊維束の間に合成樹脂が硬化してなるマトリックスを含んでなる炭素繊維強化プラスチック成形体であって、
前記炭素繊維束は、幅よりも厚さが小さい状態に束ねられた前記炭素繊維束を撚ることで螺旋状に形成された螺旋炭素繊維束からなり、
前記螺旋炭素繊維束は、軸方向からみて円形又は楕円形の中空部を有することを特徴とする炭素繊維強化プラスチック成形体。 - 前記炭素繊維束は、単繊維が6000〜48000本で束ねられてなり、5〜30回/mのピッチで螺旋状であることを特徴とする請求項1に記載の炭素繊維強化プラスチック成形体。
- 前記炭素繊維の体積分率は、5〜50%であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の炭素繊維強化プラスチック成形体。
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