JP7117993B2 - Frp引抜成形体、及びその製造方法 - Google Patents
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Description
本発明の第一実施形態について図1~図3に基づいて説明する。なお図中、符号1で指示するのものは、4軸強化繊維層であり、符号2で指示するものは、光ファイバである。また符号Eで指示するものは、FRP引抜成形体である。
[1]FRP引抜成形体の基本構成について
まずFRP引抜成形体Eの基本構成について説明する。本実施形態では、連続繊維状の強化繊維材料の繊維間にマトリックス樹脂である熱硬化性樹脂を含浸・熱硬化させてFRPを構成すると共に、図1及び図2に示すように、連続繊維を直交する2方向、及びそれらの中間の2方向に配列した4軸強化繊維層1を複数層形成して、これら積層された異なる4軸強化繊維層1・1の間に光ファイバ2を挟み込んでFRP引抜成形体Eを構成している。
[2-1]強化繊維材料の種類
次に上記FRP引抜成形体Eの各構成要素について説明する。まず上記強化繊維材料に関しては、本実施形態では炭素繊維とガラス繊維を併用しており、具体的には4軸強化繊維層1の光ファイバ2の長さ方向と同じ方向に配列した連続繊維に炭素繊維を使用し、光ファイバ2の長さ方向と異なる向きに配列された連続繊維にガラス繊維を使用している。これにより光ファイバ2の長さ方向を軸方向としたときのFRP引抜成形体Eの曲げ剛性を確保しつつコスト低減が図れる。
また上記強化繊維材料に用いる炭素繊維としては、本実施形態では、フィラメント径が3~12μm(好ましくは5~7μm)の炭素繊維を5000~50000本(好ましくは12000~15000本)束ねて糸状(トウ)にした炭素繊維束11を使用しているが、炭素繊維の本数は炭素繊維束11の太さに応じて適宜変更することができる。また本実施形態では、PAN系の炭素繊維を使用しているが、ピッチ系の炭素繊維を使用することもできる。
また上記強化繊維材料の繊維体積含有率(Vf)については、45%~70%(好ましくは50%~70%)となるようにするのが好ましい。なお繊維体積含有率が45%よりも小さいと連続繊維が均一に分散せず、FRP引抜成形体Eの強度にバラツキが生じ易く、また金型に硬化したマトリックス樹脂が付着する等の成形不良も起こり易くなる。また繊維体積含有率が70%よりも大きいと、マトリックス樹脂の割合が少なくなって樹脂が繊維間に充分に含浸しないため成形体自体を製造することが難しくなる。
[3-1]連続繊維の配向・配置
また上記4軸強化繊維層1の連続繊維の配向に関しては、本実施形態では、図2に示すように一方向の連続繊維を光ファイバ2の長さ方向と同じ方向(0°方向)に配列して0°繊維層11を形成すると共に、この0°繊維層11と直交する方向(90°方向)、及びそれらの中間の二方向(45°方向、-45°方向)にそれぞれ連続繊維を配列して、90°繊維層12、45°繊維層13および-45°繊維層14を形成している。
また上記4軸強化繊維層1においては、光ファイバ2の長さ方向と同じ方向(0°方向)に配列した連続繊維の割合を、それ以外の連続繊維との体積比で35%~85%(好ましくは45%~85%)とするのが好ましい。これは0°方向の連続繊維の割合が35%よりも小さいと光ファイバ2の長さ方向(軸方向)の圧縮弾性率が低下するためである。一方、85%よりも大きいと異方向の連続繊維の量が過小となって圧縮弾性率が低下するだけでなく、穴開け等を行ったときに裂け易くなるなど、加工性も悪化し易くなる。
また本実施形態では、上記4軸強化繊維層1の材料として、図2に示すように0°繊維層11、45°繊維層13、90°繊維層12および-45°繊維層14から成る4層の積層シートをステッチ糸Sで縫着して一体化したものを使用しているが、連続繊維の繊維束を4方向に織って製織した4軸織物を使用することもできる。なおステッチ糸Sの素材に関しては、本実施形態ではポリエステル素材の糸を使用しているが、ポリアミド樹脂を被覆したガラス繊維等、他の素材から成る糸を使用することもできる。
また上記4軸繊維強化層1の数については、本実施形態では光ファイバ2の両側に8層ずつ(全16層)形成しているが、FRP引抜成形体Eの寸法・形状に合わせて適宜変更できる。また4軸繊維強化層1・1の外側または内側に補強層としてUDシート(炭素繊維束の向きを同じ方向に揃えてシート化したもの)やストランドを挿入して0°方向の繊維量を増やすこともできる。
また本実施形態では、上記FRP引抜成形体Eのマトリックス樹脂に、ビニルエステル樹脂を使用しているが、その他の熱硬化性樹脂を採用することもでき、例えばエポキシ樹脂や不飽和ポリエステル樹脂、フェノール樹脂、シアネートエステル樹脂、ポリイミド樹脂などを採用することもできる。
また上記FRP引抜成形体Eの物性値については、充分な曲げ剛性を得るために光ファイバ2の長さ方向(軸方向)の圧縮弾性率を35GPa~600GPa(好ましくは100GPa~600GPa)となるようにするのが好ましい。特にFRP引抜成形体Eを建築材料(構造材料)に使用する場合には、軸方向の圧縮・引張強度だけでなく高い座屈強度や曲げ強度の条件を満たすため、圧縮弾性率を大きくする必要がある。
また上記光ファイバ2に関しては、コアとクラッドから成る石英ファイバを使用しているが、導光性および耐熱性を有するものであれば、プラスチックファイバを使用することもできる。また光ファイバ2の本数については、FRP引抜成形体Eの大きさや形状、用途に応じて複数本挿入することもできる。
[1]熱硬化性樹脂の含浸工程
次に上記FRP引抜成形体Eの製造方法について図3に基いて簡単に説明する。まず第一のステップとして、強化繊維材料である連続繊維を直交する2方向、及びそれらの中間の2方向に配列したシート群F・Fを複数セット用意し、これらのシート群F・Fを引取り機Hで引き取りながら液状の熱硬化性樹脂R中に浸漬する。なお図3においては、連続繊維シート群F・Fの数を2セットに省略して説明する。
その後、上記熱硬化性樹脂を含浸させたシート群F・Fを引き取りつつ、異なるシート群F・Fの間に光ファイバ2を挿入して、これらシート群F・Fと光ファイバ2を成形装置Mの加熱された金型内に導入し、引抜成形により光ファイバ2を挟み込んだ状態で複数セットのシート群F・Fを加熱圧縮して熱硬化性樹脂を硬化させる。これによりFRP引抜成形体Eを連続的に製造することが可能となる。
次に本発明の効果の実証試験について説明する。本試験では、強化繊維材料の繊維体積含有率(Vf)及び0°繊維層の体積比(全繊維層に対する0°繊維層の割合)が異なるFRP引抜成形体のサンプルを複数作製し、これら各サンプル(下記の実施例1~3及び比較例1~6)の成形性(成形が可能であったか)を評価すると共に、成形が可能であったサンプルについて、光ファイバの長さ方向の圧縮弾性率を測定(ASTM D6641)することにより剛性の評価を行った。
本実施例では、第一実施形態の構成から成るFRP引抜成形体において、4軸強化繊維層の繊維体積含有率(Vf)を70%とし、0°繊維層の体積比を85%としてのサンプルの作製を行った。その結果、サンプルの成形性は良好で、圧縮弾性率は595GPaであった。
本参考例では、第一実施形態の構成から成るFRP引抜成形体において、4軸強化繊維層の繊維体積含有率(Vf)を45%とし、0°繊維層の体積比を30%としてのサンプルの作製を行った。その結果、サンプルの成形性は良好で、圧縮弾性率は37GPaであった。
本実施例では、第一実施形態の構成から成るFRP引抜成形体において、4軸強化繊維層の繊維体積含有率(Vf)を55%とし、0°繊維層の体積比を70%としてのサンプルの作製を行った。その結果、サンプルの成形性は良好で、圧縮弾性率は143GPaであった。
本実施例では、第一実施形態の構成から成るFRP引抜成形体において、4軸強化繊維層の繊維体積含有率(Vf)を35%とし、0°繊維層の体積比を25%としてのサンプルの作製を行った。その結果、サンプルは成形できたが圧縮弾性率は18GPaに留まった。
本実施例では、第一実施形態の構成から成るFRP引抜成形体において、4軸強化繊維層の繊維体積含有率(Vf)を35%とし、0°繊維層の体積比を90%としてのサンプルの作製を行った。その結果、サンプルは成形できたが圧縮弾性率は102GPaに留まった。
本実施例では、第一実施形態の構成から成るFRP引抜成形体において、4軸強化繊維層の繊維体積含有率(Vf)を75%とし、0°繊維層の体積比を25%としてのサンプルの作製を行った。その結果、サンプルの成形を良好に行うことができなかった。
本実施例では、第一実施形態の構成から成るFRP引抜成形体において、4軸強化繊維層の繊維体積含有率(Vf)を75%とし、0°繊維層の体積比を90%としてのサンプルの作製を行った。その結果、サンプルの成形を良好に行うことができなかった。
本実施例では、第一実施形態の構成から成るFRP引抜成形体において、4軸強化繊維層の繊維体積含有率(Vf)を70%とし、0°繊維層の体積比を90%としてのサンプルの作製を行った。その結果、サンプルは成形できたが圧縮弾性率は540GPaに留まった。
本参考例では、第一実施形態の構成から成るFRP引抜成形体において、4軸強化繊維層の繊維体積含有率(Vf)を70%とし、0°繊維層の体積比を25%としてのサンプルの作製を行った。その結果、サンプルは成形できたが圧縮弾性率は35GPaに留まった。
11 0°繊維層
12 90°繊維層
13 45°繊維層
14 -45°繊維層
2 光ファイバ
E FRP引抜成形体
S ステッチ糸
R 液状の熱硬化性樹脂
F 連続繊維のシート群
M 成形装置
H 引取り機
Claims (6)
- 連続繊維状の強化繊維材料の繊維間にマトリックス樹脂である熱硬化性樹脂を含浸・熱硬化させて成るFRP引抜成形体であって、
前記強化繊維材料である連続繊維を直交する2方向、及びそれらの中間の2方向に配列した4軸強化繊維層(1)を複数備えると共に、積層された異なる4軸強化繊維層(1)(1)の間に光ファイバ(2)を挟み込んで構成され、
前記4軸強化繊維層(1)における光ファイバ(2)の長さ方向と同じ方向に配列された連続繊維の割合が、それ以外の連続繊維との体積比で45%~85%であり、
強化繊維材料の繊維体積含有率が45%~70%であることを特徴とするFRP引抜成形体。 - 4軸強化繊維層(1)の一方向の連続繊維が、光ファイバ(2)の長さ方向と同じ方向に配列されており、かつ、この連続繊維の材料に炭素繊維が使用されていることを特徴とする請求項1記載のFRP引抜成形体。
- 4軸強化繊維層(1)における光ファイバ(2)の長さ方向と異なる向きに配列された連続繊維にガラス繊維が使用されていることを特徴とする請求項2記載のFRP引抜成形体。
- 4軸強化繊維層(1)の光ファイバ(2)の長さ方向と同じ方向に配列された連続繊維が成形体の表面側に配置されていることを特徴とする請求項1~3の何れか一つに記載のFRP引抜成形体。
- 成形体本体の光ファイバ(2)の長さ方向の圧縮弾性率が35GPa~600GPaであることを特徴とする請求項1~4の何れか一つに記載のFRP引抜成形体。
- 強化繊維材料である連続繊維を直交する2方向、及びそれらの中間の2方向に配列したシート群を少なくとも複数セット使用し、光ファイバの長さ方向と同じ方向に配列された連続繊維の割合が、それ以外の連続繊維との体積比で45%~85%となるようにすると共に、これらのシート群を引取り機で引き取りながら液状の熱硬化性樹脂中に浸漬し、更に浸漬後は異なるシート群の間に光ファイバを挿入しつつ、これらシート群と光ファイバを成形装置の加熱された金型内に導入して、光ファイバを挟み込んだ状態で複数セットのシート群を加熱圧縮して熱硬化性樹脂を硬化させることで、強化繊維材料の繊維体積含有率が45%~70%のFRP引抜成形体とすることを特徴とするFRP引抜成形体の製造方法。
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