JP4460004B2 - システインシンターゼ遺伝子及びその用途 - Google Patents

システインシンターゼ遺伝子及びその用途 Download PDF

Info

Publication number
JP4460004B2
JP4460004B2 JP2007539392A JP2007539392A JP4460004B2 JP 4460004 B2 JP4460004 B2 JP 4460004B2 JP 2007539392 A JP2007539392 A JP 2007539392A JP 2007539392 A JP2007539392 A JP 2007539392A JP 4460004 B2 JP4460004 B2 JP 4460004B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
yeast
polynucleotide
seq
amino acid
protein
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2007539392A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2008529477A (ja
Inventor
嘉宏 中尾
由紀子 児玉
朋子 下永
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Suntory Holdings Ltd
Original Assignee
Suntory Holdings Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Suntory Holdings Ltd filed Critical Suntory Holdings Ltd
Publication of JP2008529477A publication Critical patent/JP2008529477A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP4460004B2 publication Critical patent/JP4460004B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Classifications

    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12NMICROORGANISMS OR ENZYMES; COMPOSITIONS THEREOF; PROPAGATING, PRESERVING, OR MAINTAINING MICROORGANISMS; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING; CULTURE MEDIA
    • C12N9/00Enzymes; Proenzymes; Compositions thereof; Processes for preparing, activating, inhibiting, separating or purifying enzymes
    • C12N9/88Lyases (4.)
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12CBEER; PREPARATION OF BEER BY FERMENTATION; PREPARATION OF MALT FOR MAKING BEER; PREPARATION OF HOPS FOR MAKING BEER
    • C12C11/00Fermentation processes for beer
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12CBEER; PREPARATION OF BEER BY FERMENTATION; PREPARATION OF MALT FOR MAKING BEER; PREPARATION OF HOPS FOR MAKING BEER
    • C12C12/00Processes specially adapted for making special kinds of beer
    • C12C12/002Processes specially adapted for making special kinds of beer using special microorganisms
    • C12C12/004Genetically modified microorganisms
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12CBEER; PREPARATION OF BEER BY FERMENTATION; PREPARATION OF MALT FOR MAKING BEER; PREPARATION OF HOPS FOR MAKING BEER
    • C12C12/00Processes specially adapted for making special kinds of beer
    • C12C12/002Processes specially adapted for making special kinds of beer using special microorganisms
    • C12C12/006Yeasts
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12GWINE; PREPARATION THEREOF; ALCOHOLIC BEVERAGES; PREPARATION OF ALCOHOLIC BEVERAGES NOT PROVIDED FOR IN SUBCLASSES C12C OR C12H
    • C12G1/00Preparation of wine or sparkling wine
    • C12G1/02Preparation of must from grapes; Must treatment and fermentation
    • C12G1/0203Preparation of must from grapes; Must treatment and fermentation by microbiological or enzymatic treatment
    • CCHEMISTRY; METALLURGY
    • C12BIOCHEMISTRY; BEER; SPIRITS; WINE; VINEGAR; MICROBIOLOGY; ENZYMOLOGY; MUTATION OR GENETIC ENGINEERING
    • C12GWINE; PREPARATION THEREOF; ALCOHOLIC BEVERAGES; PREPARATION OF ALCOHOLIC BEVERAGES NOT PROVIDED FOR IN SUBCLASSES C12C OR C12H
    • C12G3/00Preparation of other alcoholic beverages
    • C12G3/02Preparation of other alcoholic beverages by fermentation

Landscapes

  • Life Sciences & Earth Sciences (AREA)
  • Chemical & Material Sciences (AREA)
  • Organic Chemistry (AREA)
  • Engineering & Computer Science (AREA)
  • Health & Medical Sciences (AREA)
  • Microbiology (AREA)
  • Genetics & Genomics (AREA)
  • Bioinformatics & Cheminformatics (AREA)
  • Wood Science & Technology (AREA)
  • Zoology (AREA)
  • Biochemistry (AREA)
  • General Health & Medical Sciences (AREA)
  • General Engineering & Computer Science (AREA)
  • Molecular Biology (AREA)
  • Biotechnology (AREA)
  • Food Science & Technology (AREA)
  • Biomedical Technology (AREA)
  • Medicinal Chemistry (AREA)
  • Mycology (AREA)
  • Micro-Organisms Or Cultivation Processes Thereof (AREA)
  • Measuring Or Testing Involving Enzymes Or Micro-Organisms (AREA)
  • Enzymes And Modification Thereof (AREA)

Description

本発明は、システインシンターゼ遺伝子及びその用途に関し、特に、香味に優れた酒類を製造する醸造酵母、該酵母を用いて製造した酒類、その製造方法などに関する。さらに具体的には、本発明は、醸造酵母のシステインシンターゼであるYgr012wpをコードする遺伝子YGR012W、特にビール酵母に特徴的なnonScYGR012W遺伝子またはScYGR012W遺伝子の発現量を高めることによって、製品の香味を向上させた酵母、当該酵母を用いた酒類の製造方法などに関する。
市販されているピルスナータイプの淡色ビールの製造に用いられているビール酵母は主発酵工程中に硫化水素を生成する特性を有する。この硫化水素はビールの品質上好ましくない若ビール臭の原因のひとつであり、これを閾値以下に低減するための対策として後発酵ないし貯酒期間の延長が行なわれている。
ビール中の硫化水素低減のために従来から硫化水素生成に影響する因子に関する研究 (Jangaard, N. O., Gress, H. S. and Coe, R. W. ; Amer. Soc. Brew.Chem. Proc., p46, 1973;Kuroiwa, Y. and Hashimoto, N. ; Brew. Dig., 45,44, 1970;Hysert, D. W. and Morrison, N. M. ; J. Amer. Soc. Brew. Chem., 34, 25, 1976)や、突然変異法あるいは細胞融合法を用いた硫化水素低生成酵母の育種研究 (Molzahm, S. W. ; J. Amer. Soc. Brew. Chem., 35, 54, 1977)が報告されている。
これらの方法はいずれも単に酵母の硫化水素生成量を減少させるだけでなく、酵母の他の醸造特性(発酵速度、ビール香味)にまで影響するため、ビール醸造用酵母として好適な酵母は現在まで得られていない。近年、遺伝子操作技術を利用した醸造用酵母の育種も行なわれるようになり、特開平5−244955号公報ではシスタチオニンβ−シンターゼをコードするDNA断片を導入したビール酵母が硫化水素生成を低減させることが開示されている。しかしながら低減の程度は軽微で、形質転換株の硫化水素の生成量はなお親株の生成量の60〜80%程である。
酵母の物質代謝において、硫化水素は培地中から取り込まれた硫酸イオン(SO4 2- )が還元される過程で生成する。この代謝系はメチオニンやシステインなどの含硫アミノ酸生合成経路であり、各段階の酵素及びその遺伝子(MET17遺伝子)について詳細な報告がある (Tabor, H. and Tabor, C. W. (eds.) ; Methods in Enzymology Vol. 17B, Academic Press, London, 1971;Jakoby, W.B. and Griffith, O. W. (eds.) ; Methods in Enzymology Vol. 143, AcademicPress, London, 1987)。
O−アセチルホモセリンサルフハイドリレースは、硫化水素から硫黄原子をO−アセチルホモセリンに転移する酵素であり、MET17遺伝子によってコードされている。当該酵素はまた、O−アセチルセリンに硫黄原子を転移する活性も持っている。サッカロミセス・セレビシエX2180−1A由来のMET17遺伝子を構成的に発現させたビール酵母株では、親株の2%程度に硫化水素生成量が減少することが報告されている(特開平7−303475号公報)。
また、システインシンターゼは、硫化水素から硫黄原子をO-アセチル-L-セリンに転移する酵素である。この遺伝子は、他の微生物では同定されているが、サッカロミセス・セレビシエでは同定されていない。
近年、多数のゲノムが決定され、決定された全塩基配列に基づき、遺伝子の同定、公知の遺伝子との比較による機能推定が行われている。また、多数の生物ゲノム塩基配列に存在する遺伝子を比較解析することにより、オーソログ遺伝子(2つの生物種に存在する遺伝子が、共通の祖先種では同一な遺伝子であり、現在の機能も同一の場合にそれぞれの遺伝子)の推定が行われており、微生物ゲノムのオーソログ解析により、サッカロミセス・セレビシエのシステインシンターゼをコードする遺伝子はYGR012Wと推測されている(R. L. Tatusov., M. Y. Galperin., D. A. Natale., E. V. Koonin.; Nucleoc. Acids. Research., 28, 33, 2000)。しかしながら、本遺伝子機能は実験的に確かめられておらず、また硫化水素生成量との関係も明らかとなっていない。
上述のとおり、製品中の硫化水素生成量を低減させるために、変異株の取得が行なわれているが、その結果予期せぬ発酵遅延や、好ましくない香味成分の増加が認められる場合もあり、実用酵母とするには問題があった。このことから、発酵速度や製品の品質を損なうことなく、硫化水素生成量が低減された酵母の育種方法が望まれていた。
本発明者らは、上記課題を解決するため鋭意検討を重ねた結果、ビール酵母からシステインシンターゼをコードする遺伝子を同定・単離することに成功した。また、得られた遺伝子を酵母に導入し発現させた形質転換酵母を作製し、硫化水素生成量が低減することを確認して、本発明を完成した。
すなわち本発明は、ビール酵母に存在する新規なシステインシンターゼ遺伝子、該遺伝子がコードするタンパク質、該遺伝子の発現が調節された形質転換酵母、該遺伝子の発現が調節された酵母を用いることによる製品中の硫化水素生成量の制御方法などに関する。本発明は、具体的には、次に示すポリヌクレオチド、該ポリヌクレオチドを含有するベクター、該ベクターが導入された形質転換酵母、該形質転換酵母を用いる酒類の製造方法などを提供する。
(1)以下の(a)〜(f)からなる群から選択されるポリヌクレオチド:
(a)配列番号:1の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(b)配列番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(c)配列番号:2のアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつシステインシンターゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(d)配列番号:2のアミノ酸配列に対して60%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつシステインシンターゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(e)配列番号:1の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつシステインシンターゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;及び
(f)配列番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつシステインシンターゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
(2)以下の(g)〜(i)からなる群から選択される上記(1)に記載のポリヌクレオチド:
(g)配列番号:2のアミノ酸配列又は配列番号:2のアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつシステインシンターゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(h) 配列番号:2のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつシステインシンターゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;及び
(i)配列番号:1の塩基配列からなるポリヌクレオチド、又は配列番号:1の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつシステインシンターゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
(3)配列番号:1の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有する上記(1)に記載のポリヌクレオチド。
(4)配列番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有する上記(1)に記載のポリヌクレオチド。
(5)DNAである、上記(1)〜(4)のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
(6)上記(1)〜(5)のいずれかに記載のポリヌクレオチドにコードされるタンパク質。
(7)上記(1)〜(5)のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含有するベクター。
(7a)以下の(x)〜(z)の構成要素を含む発現カセットを含む上記(7)に記載のベクター:
(x)酵母細胞内で転写可能なプロモーター
(y)該プロモーターにセンス方向またはアンチセンス方向で結合した、上記(1)〜(5)に記載のポリヌクレオチド;及び
(z)RNA分子の転写終結およびポリアデニル化に関し、酵母で機能するシグナル。
(8)以下の(j)〜(l)からなる群から選択されるポリヌクレオチドを含有するベクター:
(j)配列番号:6のアミノ酸配列又は配列番号:6のアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつシステインシンターゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
(k) 配列番号:6のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつシステインシンターゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;及び
(l)配列番号:5の塩基配列からなるポリヌクレオチド、又は配列番号:5の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつシステインシンターゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
(9)上記(7)又は(8)に記載のベクターが導入された酵母。
(10)上記(7)又は(8)に記載のベクターを導入することによって、硫化水素生成能が低減された上記(9)に記載の酵母。
(11)上記(6)に記載のタンパク質の発現量を増加させることによって硫化水素生成能が低減された上記(10)に記載の酵母。
(12)上記(9)〜(11)のいずれかに記載の酵母を用いた酒類の製造方法。
(13)醸造する酒類が麦芽飲料である上記(12)に記載の酒類の製造方法。
(14)醸造する酒類がワインである上記(12)に記載の酒類の製造方法。
(15)上記(12)〜(14)のいずれかに記載の方法で製造された酒類。
(16)配列番号:1又は配列番号:5の塩基配列を有するシステインシンターゼ遺伝子の塩基配列に基づいて設計したプライマーまたはプローブを用いて、被検酵母の硫化水素生成能について評価する方法。
(16a)上記(16)に記載の方法によって、硫化水素生成能が低い酵母を選別する方法。
(16b)上記(16a)に記載の方法によって選別された酵母を用いて酒類(例えば、ビール)を製造する方法。
(17)被検酵母を培養し、配列番号:1又は配列番号:5の塩基配列を有するシステインシンターゼ遺伝子の発現量を測定することによって、被検酵母の硫化水素生成能を評価する方法。
(18)被検酵母を培養して、上記(6)に記載のタンパク質を定量または配列番号:1もしくは配列番号:5の塩基配列を有するシステインシンターゼ遺伝子の発現量を測定し、目的とする硫化水素生成能に応じた前記タンパク質量または前記遺伝子発現量の被検酵母を選択する、酵母の選択方法。
(18a)被検酵母を培養して、硫化水素生成能またはシステインシンターゼ活性を測定し、目的とする硫化水素生成能またはシステインシンターゼ活性の被検酵母を選択する、酵母の選択方法。
(19)基準酵母および被検酵母を培養して配列番号:1もしくは配列番号:5の塩基配列を有するシステインシンターゼ遺伝子の各酵母における発現量を測定し、基準酵母よりも該遺伝子が高発現である被検酵母を選択する、上記(18)に記載の酵母の選択方法。
(20)基準酵母および被検酵母を培養して各酵母における上記(6)に記載のタンパク質を定量し、基準酵母よりも該タンパク質量の多い被検酵母を選択する、上記(18)に記載の酵母の選択方法。即ち、複数の酵母を培養して各酵母における上記(6)に記載のタンパク質を定量し、その中で該タンパク質量の多い被検酵母を選択する、上記(18)に記載の酵母の選択方法。
(21)上記(9)〜(11)に記載の酵母、上記(18)〜(20)に記載の方法により選択された酵母のいずれかの酵母を用いて酒類製造のための発酵を行い、硫化水素生成量を調節することを特徴とする、酒類の製造方法。
本発明者らは、酵母のシステインシンターゼ活性を増大させることによって、さらに効率よく硫化水素を低減させることが可能であると考えた。このような着想に基づいて研究を重ね、特開2004-283169に開示の方法で解読したビール酵母ゲノム情報を基に、ビール酵母特有のシステインシンターゼをコードするnon-ScYGR012W遺伝子を単離・同定した。この塩基配列を配列番号:1に示す。またこの遺伝子によりコードされるタンパク質のアミノ酸配列を配列番号:2に示す。さらに、ビール酵母のシステインシンターゼをコードするScYGR012W遺伝子も単離・同定した。この塩基配列を配列番号:5に示す。またこの遺伝子によりコードされるタンパク質のアミノ酸配列を配列番号:6に示す。
1.本発明のポリヌクレオチド
まず、本発明は、(a)配列番号:1又は配列番号:5の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;及び(b)配列番号:2又は配列番号:6のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドを提供する。ポリヌクレオチドはDNAであってもRNAであってもよい。
本発明で対象とするポリヌクレオチドは、上記のビール酵母由来のシステインシンターゼ遺伝子をコードするポリヌクレオチドに限定されるものではなく、このタンパク質と機能的に同等なタンパク質をコードする他のポリヌクレオチドを含む。機能的に同等なタンパク質としては、例えば、(c)配列番号:2又は配列番号:6のアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつシステインシンターゼ活性を有するタンパク質が挙げられる。
このようなタンパク質としては、配列番号:2又は配列番号:6のアミノ酸配列において、例えば、1〜100個、1〜90個、1〜80個、1〜70個、1〜60個、1〜50個、1〜40個、1〜39個、1〜38個、1〜37個、1〜36個、1〜35個、1〜34個、1〜33個、1〜32個、1〜31個、1〜30個、1〜29個、1〜28個、1〜27個、1〜26個、1〜25個、1〜24個、1〜23個、1〜22個、1〜21個、1〜20個、1〜19個、1〜18個、1〜17個、1〜16個、1〜15個、1〜14個、1〜13個、1〜12個、1〜11個、1〜10個、1〜9個、1〜8個、1〜7個、1〜6個(1〜数個)、1〜5個、1〜4個、1〜3個、1〜2個、1個のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつシステインシンターゼ活性を有するタンパク質が挙げられる。上記アミノ酸残基の欠失、置換、挿入および/または付加の数は、一般的には小さい程好ましい。また、このようなタンパク質としては、(d)配列番号:2又は配列番号:6のアミノ酸配列と約60%以上、約70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上、99.9%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつシステインシンターゼ活性を有するタンパク質が挙げられる。上記相同性の数値は一般的に大きい程好ましい。
なお、システインシンターゼ活性は、例えば、J. Biol. Chem. 45: 28187-28192(1994)に記載の方法によって測定することができる。
また、本発明は、(e)配列番号:1又は配列番号:5の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつシステインシンターゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;及び(f)配列番号:2又は配列番号:6のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドの塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつシステインシンターゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチドも包含する。
ここで、「ストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド」とは、配列番号:1もしくは配列番号:5の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチド、又は配列番号:2もしくは配列番号:6のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドの全部または一部をプローブとして、コロニーハイブリダイゼーション法、プラークハイブリダイゼーション法またはサザンハイブリダイゼーション法などを用いることにより得られるポリヌクレオチド(例えばDNA)をいう。ハイブリダイゼーションの方法としては、例えばMolecular Cloning 3rd Ed.、Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons 1987-1997などに記載されている方法を利用することができる。
本明細書でいう「ストリンジェントな条件」は、低ストリンジェントな条件、中ストリンジェントな条件及び高ストリンジェントな条件のいずれでもよい。「低ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、32℃の条件である。また、「中ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、42℃の条件である。「高ストリンジェントな条件」は、例えば、5×SSC、5×デンハルト溶液、0.5%SDS、50%ホルムアミド、50℃の条件である。これらの条件において、温度を上げるほど高い相同性を有するポリヌクレオチド(例えばDNA)が効率的に得られることが期待できる。ただし、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響する要素としては温度、プローブ濃度、プローブの長さ、イオン強度、時間、塩濃度など複数の要素が考えられ、当業者であればこれら要素を適宜選択することで同様のストリンジェンシーを実現することが可能である。
なお、ハイブリダイゼーションに市販のキットを用いる場合は、例えばAlkphos Direct Labelling Reagents(アマシャムファルマシア社製)を用いることができる。この場合は、キットに添付のプロトコルにしたがい、標識したプローブとのインキュベーションを一晩行った後、メンブレンを55℃の条件下で0.1% (w/v) SDSを含む1次洗浄バッファーで洗浄後、ハイブリダイズしたポリヌクレオチド(例えばDNA)を検出することができる。
これ以外にハイブリダイズ可能なポリヌクレオチドとしては、FASTA、BLASTなどの相同性検索ソフトウェアにより、デフォルトのパラメータを用いて計算したときに、配列番号:2又は配列番号:6のアミノ酸配列をコードするポリヌクレオチドと約60%以上、約70%以上、71%以上、72%以上、73%以上、74%以上、75%以上、76%以上、77%以上、78%以上、79%以上、80%以上、81%以上、82%以上、83%以上、84%以上、85%以上、86%以上、87%以上、88%以上、89%以上、90%以上、91%以上、92%以上、93%以上、94%以上、95%以上、96%以上、97%以上、98%以上、99%以上、99.1%以上、99.2%以上、99.3%以上、99.4%以上、99.5%以上、99.6%以上、99.7%以上、99.8%以上、99.9%以上の同一性を有するポリヌクレオチドをあげることができる。
なお、アミノ酸配列や塩基配列の同一性は、カーリンおよびアルチュールによるアルゴリズムBLAST(Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 87, 2264-2268, 1990; Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 90, 5873, 1993)を用いて決定できる。BLASTのアルゴリズムに基づいたBLASTNやBLASTXと呼ばれるプログラムが開発されている(Altschul SF, et al: J. Mol. Biol. 215: 403, 1990)。BLASTNを用いて塩基配列を解析する場合は、パラメーターは、例えばscore=100、wordlength=12とする。また、BLASTXを用いてアミノ酸配列を解析する場合は、パラメーターは、例えばscore=50、wordlength=3とする。BLASTとGapped BLASTプログラムを用いる場合は、各プログラムのデフォルトパラメーターを用いる。
2.本発明のタンパク質
本発明は、上記ポリヌクレオチド(a)〜(l)のいずれかにコードされるタンパク質も提供する。本発明の好ましいタンパク質は、配列番号:2又は配列番号:6のアミノ酸配列において、1もしくは複数個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつシステインシンターゼ活性を有するタンパク質である。
このようなタンパク質としては、配列番号:2又は配列番号:6のアミノ酸配列において、上記したような数のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入および/または付加されたアミノ酸配列からなり、かつシステインシンターゼ活性を有するタンパク質が挙げられる。また、このようなタンパク質としては、配列番号:2又は配列番号:6のアミノ酸配列と上記したような相同性を有するアミノ酸配列を有し、かつシステインシンターゼ活性を有するタンパク質が挙げられる。
このようなタンパク質は、「モレキュラークローニング第3版」、「カレント・プロトコールズ・イン・モレキュラー・バイオロジー」、“Nuc. Acids. Res., 10, 6487 (1982)”、“Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 79, 6409 (1982)”、“Gene, 34, 315 (1985)”、“Nuc. Acids. Res., 13, 4431 (1985)”、“Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 82, 488 (1985)”等に記載の部位特異的変異導入法を用いて、取得することができる。
本発明のタンパク質のアミノ酸配列において1以上のアミノ酸残基が欠失、置換、挿入および/または付加されたとは、同一配列中の任意かつ1もしくは複数のアミノ酸配列中の位置において、1または複数のアミノ酸残基の欠失、置換、挿入及び/又は付加があることを意味し、欠失、置換、挿入及び付加のうち2種以上が同時に生じてもよい。
以下に、相互に置換可能なアミノ酸残基の例を示す。同一群に含まれるアミノ酸残基は相互に置換可能である。A群:ロイシン、イソロイシン、ノルロイシン、バリン、ノルバリン、アラニン、2-アミノブタン酸、メチオニン、o-メチルセリン、t-ブチルグリシン、t-ブチルアラニン、シクロヘキシルアラニン; B群:アスパラギン酸、グルタミン酸、イソアスパラギン酸、イソグルタミン酸、2-アミノアジピン酸、2-アミノスベリン酸; C群:アスパラギン、グルタミン; D群:リジン、アルギニン、オルニチン、2,4-ジアミノブタン酸、2,3-ジアミノプロピオン酸; E群:プロリン、3-ヒドロキシプロリン、4-ヒドロキシプロリン; F群:セリン、スレオニン、ホモセリン; G群:フェニルアラニン、チロシン。
また、本発明のタンパク質は、Fmoc法(フルオレニルメチルオキシカルボニル法)、tBoc法(t-ブチルオキシカルボニル法)等の化学合成法によっても製造することができる。また、アドバンスドケムテック社製、パーキンエルマー社製、ファルマシア社製、プロテインテクノロジーインストゥルメント社製、シンセセルーベガ社製、パーセプティブ社製、島津製作所社製等のペプチド合成機を利用して化学合成することもできる。
3.本発明のベクター及びこれを導入した形質転換酵母
次に、本発明は、上記したポリヌクレオチドを含有するベクターを提供する。本発明のベクターは、上記(a)〜(l)のいずれかに記載のポリヌクレオチド(DNA)を含有する。また、本発明のベクターは、通常、(x)酵母細胞内で転写可能なプロモーター;(y)該プロモーターにセンス方向またはアンチセンス方向で結合した、上記(a)〜(l)のいずれかに記載のポリヌクレオチド(DNA);及び(z)RNA分子の転写終結およびポリアデニル化に関し、酵母で機能するシグナルを構成要素として含む発現カセットを含むように構成される。本発明においては、後述するビールの醸造において、上記本発明のタンパク質を高発現させる場合は、上記(a)〜(l)のいずれかに記載のポリヌクレオチド(DNA)の発現を促進するようにこれらのポリヌクレオチドを該プロモーターに対してセンス方向に導入する。
酵母に導入する際に用いるベクターとしては、多コピー型(YEp型)、単コピー型(YCp型)、染色体組み込み型(YIp型)のいずれもが利用可能である。例えば、YEp型ベクターとしてはYEp24 (J. R. Broach et al., Experimental Manipulation of Gene Expression, Academic Press, New York, 83, 1983) 、YCp型ベクターとしてはYCp50 (M. D. Rose et al., gene, 60, 237, 1987) 、YIp型ベクターとしてはYIp5 (K. Struhl et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 76, 1035, 1979) が知られており、容易に入手することができる。
酵母での遺伝子発現を調節するためのプロモーター/ターミネーターとしては、醸造用酵母中で機能するとともに、もろみ中の成分に影響を受けなければ、任意の組み合わせでよい。例えばグリセルアルデヒド3リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子(TDH3)のプロモーター、3-ホスホグリセレートキナーゼ遺伝子(PGK1)のプロモーターなどが利用可能である。これらの遺伝子はすでにクローニングされており、例えばM. F. Tuite et al., EMBO J., 1, 603 (1982) に詳細に記載されており、既知の方法により容易に入手することができる。
形質転換の際に用いる選択マーカーとしては、醸造用酵母の場合は栄養要求性マーカーが利用できないので、ジェネチシン耐性遺伝子(G418r)、銅耐性遺伝子(CUP1)(Marin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81, 337 1984)、セルレニン耐性遺伝子(fas2m, PDR4)(それぞれ猪腰淳嗣ら, 生化学, 64, 660, 1992; Hussain et al., gene, 101, 149, 1991)などが利用可能である。
上記のように構築されるベクターは、宿主酵母に導入される。宿主酵母としては、醸造用に使用可能な任意の酵母、例えばビール、ワイン、清酒等の醸造用酵母等が挙げられる。具体的には、サッカロマイセス(Saccharomyces)属等の酵母が挙げられるが、本発明においては、ビール酵母、例えばサッカロマイセス パストリアヌス(Saccharomyces pastorianus)W34/70等、サッカロマイセス カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)NCYC453、NCYC456等、サッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)NBRC1951、NBRC1952、NBRC1953、NBRC1954等が使用できる。さらにウイスキー酵母、例えばサッカロマイセス セレビシエNCYC90等、ワイン酵母、例えば協会ぶどう酒用1号、同3号、同4号等、清酒酵母、例えば協会酵母 清酒用7号、同9号等も用いることができるが、これに限定されない。本発明においては、ビール酵母、例えばサッカロマイセス パストリアヌスが好ましく用いられる。
酵母の形質転換方法としては一般に用いられる公知の方法が利用できる。例えば、エレクトロポレーション法“Meth. Enzym., 194, p182 (1990)”、スフェロプラスト法“Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75 p1929(1978)”、酢酸リチウム法“J. Bacteriology, 153, p163(1983)”、Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 75 p1929 (1978)、Methods in yeast genetics, 2000 Edition : A Cold Spring Harbor Laboratory Course Manualなどに記載の方法で実施可能であるが、これに限定されない。
より具体的には、宿主酵母を標準酵母栄養培地(例えばYEPD培地“Genetic Engineering. Vo1.1, Plenum Press, New York, 117(1979)”等)で、OD600nmの値が1〜6となるように培養する。この培養酵母を遠心分離して集め、洗浄し、濃度約1〜2Mのアルカリ金属イオン、好ましくはリチウムイオンで前処理する。この細胞を約30℃で、約60分間静置した後、導入するDNA(約1〜20μg)とともに約30℃で、約60分間静置する。ポリエチレングリコール、好ましくは約4,000ダルトンのポリエチレングリコールを、最終濃度が約20%〜50%となるように加える。約30℃で、約30分間静置した後、この細胞を約42℃で約5分間加熱処理する。好ましくは、この細胞懸濁液を標準酵母栄養培地で洗浄し、所定量の新鮮な標準酵母栄養培地に入れて、約30℃で約60分間静置する。その後、選択マーカーとして用いる抗生物質等を含む標準寒天培地上に植えつけ、形質転換体を取得する。
その他、一般的なクローニング技術に関しては、「モレキュラークローニング第3版」、“Methods in Yeast Genetics、A laboratory manual (Cold Spring Harbor Laboratory Press、Cold Spring Harbor, NY)”等を参照することができる。
4.本発明の酒類の製法及びその製法によって得られる酒類
上述した本発明のベクターを製造対象となる酒類の醸造に適した酵母に導入し、その酵母を用いることによって所望の酒類でかつ硫化水素量が低減し、香味を増した酒類を製造することができる。また、下記の本発明の酵母の評価方法によって選択された酵母も同様に用いることができる。対象となる酒類としては、これらに限定されないが、例えば、ビール、発泡酒などのビールテイストドリンク、ワイン、ウイスキー、清酒などが挙げられる。
これらの酒類を製造する場合は、親株の代わりに本発明において得られた醸造酵母を用いる以外は公知の手法を利用することができる。したがって、原料、製造設備、製造管理等は従来法と全く同一でよく、硫化水素量を低減させた酒類を製造するためのコストを増加させることはない。つまり、本発明によれば、香味に優れた酒類を、既存の施設を用い、コストを増加させることなく製造することができる。
5.本発明の酵母の評価方法
本発明は、配列番号:1又は配列番号:5の塩基配列を有するシステインシンターゼ遺伝子の塩基配列に基づいて設計したプライマーまたはプローブを用いて、被検酵母の硫化水素生成能について評価する方法に関する。このような評価方法の一般的手法は公知であり、例えば、WO01/040514号公報、特開平8−205900号公報などに記載されている。以下、この評価方法について簡単に説明する。
まず、被検酵母のゲノムを調製する。調製方法は、Hereford法や酢酸カリウム法など、公知の如何なる方法を用いることができる(例えば、Methods in Yeast Genetics, Cold Spring Harbor Laboratory Press, p130 (1990))。得られたゲノムを対象にして、システインシンターゼ遺伝子の塩基配列(好ましくは、ORF配列)に基づいて設計したプライマーまたはプローブを用いて、被検酵母のゲノムにその遺伝子あるいはその遺伝子に特異的な配列が存在するか否かを調べる。プライマーまたはプローブの設計は公知の手法を用いて行うことができる。
遺伝子または特異的な配列の検出は、公知の手法を用いて実施することができる。例えば、特異的配列の一部または全部を含むポリヌクレオチドまたはその塩基配列に対して相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチドを一つのプライマーとして用い、もう一方のプライマーとしてこの配列よりも上流あるいは下流の配列の一部または全部を含むポリヌクレオチドまたはその塩基配列に対して相補的な塩基配列を含むポリヌクレオチドを用いて、PCR 法によって酵母の核酸を増幅し、増幅物の有無、増幅物の分子量の大きさなどを測定する。プライマーに使用するポリヌクレオチドの塩基数は、通常、10bp以上であり、15〜25bpであることが好ましい。また、挟み込む部分の塩基数は、通常、300 〜2000bpが適当である。
PCR 法の反応条件は、特に限定されないが、例えば、変性温度:90〜95℃、アニーリング温度:40〜60℃、伸長温度:60〜75℃、サイクル数:10回以上などの条件を用いることができる。得られる反応生成物はアガロースゲルなどを用いた電気泳動法等によって分離され、増幅産物の分子量を測定することができる。この方法により、増幅産物の分子量が特異部分のDNA 分子を含む大きさかどうかによって、その酵母の硫化水素能について予測・評価する。また、増幅物の塩基配列を分析することによって、さらに上記性能についてより正確に予測・評価することが可能である。
また、本発明においては、被検酵母を培養し、配列番号:1又は配列番号:5の塩基配列を有するシステインシンターゼ遺伝子の発現量を測定することによって、被検酵母の硫化水素生成能を評価することもできる。なお、システインシンターゼ遺伝子の発現量の測定は、被検酵母を培養し、システインシンターゼ遺伝子の産物であるmRNA又はタンパク質を定量することによって可能である。mRNA又はタンパク質の定量は、公知の手法を用いて行うことができる。mRNAの定量は例えばノーザンハイブリダイゼーションや定量的RT−PCRによって、タンパク質の定量は例えばウエスタンブロッティングによって行うことができる(Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons 1994-2003)。
さらに、被検酵母を培養して、配列番号:1又は配列番号:5の塩基配列を有するシステインシンターゼ遺伝子の発現量を測定し、目的とする硫化水素生成能に応じた前記遺伝子発現量の酵母を選択することによって、所望の酒類の醸造に好適な酵母を選択することができる。また、基準酵母および被検酵母を培養し、各酵母における前記遺伝子発現量を測定し、基準酵母と被検酵母の前記遺伝子発現量を比較して、所望の酵母を選択してもよい。具体的には、例えば、基準酵母および被検酵母を培養して配列番号:1又は配列番号:5の塩基配列を有するシステインシンターゼ遺伝子の各酵母における発現量を測定し、基準酵母よりも該遺伝子が高発現である被検酵母を選択することによって、所望の酒類の醸造に好適な酵母を選択することができる。
あるいは、被検酵母を培養して、硫化水素生成能の低い、あるいはシステインシンターゼ活性の高いまたは低い酵母を選択することによって、所望の酒類の醸造に好適な被検酵母を選択することができる。
これらの場合、被検酵母または基準酵母としては、例えば、上述した本発明のベクターを導入した酵母、上述した本発明のポリヌクレオチド(DNA)の発現が抑制された酵母、突然変異処理が施された酵母、自然変異した酵母などが使用され得る。硫化水素生成量は、例えば、Brauwissenschaft. 31. 1 (1978)、Applied. Environm. Microbiol. 66: 4421-4426 (2000)、J. Am. Soc. Brew. Chem. 53: 58-62 (1995)のいずれかに記載の方法によって測定することができる。システインシンターゼ活性は、例えば、J. Biol. Chem. 45: 28187-28192(1994)に記載の方法によって測定することができる。突然変異処理は、例えば、紫外線照射や放射線照射などの物理的方法、EMS(エチルメタンスルホネート)、N−メチル−N−ニトロソグアニジンなどの薬剤処理による化学的方法など、いかなる方法を用いてもよい(例えば、大嶋泰治編著、生物化学実験法39 酵母分子遺伝学実験法、p67-75、学会出版センターなど参照)。
なお、基準酵母、被検酵母として使用され得る酵母としては、醸造用に使用可能な任意の酵母、例えばビール,ワイン、清酒等の醸造用酵母等が挙げられる。具体的には、サッカロマイセス(Saccharomyces)属等の酵母が挙げられるが、本発明においては、ビール酵母、例えばサッカロマイセス パストリアヌス(Saccharomyces pastorianus)W34/70等、サッカロマイセス カールスベルゲンシス(Saccharomyces carlsbergensis)NCYC453、NCYC456等、サッカロマイセス セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)NBRC1951、NBRC1952、NBRC1953、NBRC1954等が使用できる。さらにワイン酵母、例えば協会ぶどう酒用1号、同3号、同4号等、清酒酵母、例えば協会酵母 清酒用7号、同9号等も用いることができるが、これに限定されない。本発明においては、ビール酵母、例えばサッカロマイセス パストリアヌスが好ましく用いられる。基準酵母、被検酵母は、上記酵母から任意の組み合わせで選択しても良い。
以下、実施例によって本発明の詳細を述べるが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
実施例1:新規システインシンターゼ遺伝子(nonScYGR012W)のクローニング
特開2004-283169に記載の比較データベースを用いて検索した結果、ビール酵母に特有の新規システインシンターゼ遺伝子、nonScYGR012Wを見出した(配列番号:1)。得られた塩基配列情報を基に、それぞれ全長遺伝子を増幅するためのプライマーnonScYGR012W_for(配列番号:3)/nonScYGR012W_rv(配列番号:4)を設計し、ゲノム解読株サッカロマイセス パストリアヌス バイヘンステファン34/70株(「W34/70株」と略記することがある。)の染色体DNAを鋳型としたPCRによってnonScYGR012Wの全長遺伝子を含むDNA断片(約1.3kb)を取得した。
上記のようにして得られたnonScYGR012W遺伝子断片を、TAクローニングによってpCR2.1-TOPOベクター(インビトロジェン社製)に挿入した。nonScYGR012W遺伝子の塩基配列をサンガーの方法 (F. Sanger, Science, 214, 1215, 1981) で分析し、塩基配列を確認した。
実施例2:ビール試醸中のnonScYGR012W遺伝子発現解析
ビール酵母サッカロマイセス パストリアヌスW34/70株を用いてビール試醸を行い、発酵中のビール酵母菌体から抽出したmRNAをビール酵母DNAマイクロアレイで検出した。

麦汁エキス濃度 12.69%
麦汁容量 70L
麦汁溶存酸素濃度 8.6ppm
発酵温度 15℃
酵母投入量 12.8×106cells/mL

発酵液を経時的にサンプリングし、酵母増殖量(図1)、外観エキス濃度(図2)の経時変化を観察した。またこれと同時に酵母菌体をサンプリングし、調製したmRNAをビオチンラベルして、ビール酵母DNAマイクロアレイにハイブリダイズさせた。シグナルの検出はジーンチップオペレーティングシステム(GCOS;GeneChip Operating Software 1.0、アフィメトリクス社製)を用いて行った。nonScYGR012W遺伝子の発現パターンを図3に示す。この結果より、通常のビール発酵においてnonScYGR012W遺伝子が発現していることが確認できた。
実施例3:nonScYGR012W遺伝子高発現株の作製
実施例1に記載のnonScYGR012W/pCR2.1-TOPOを制限酵素SacIおよびNotI消化し、タンパク質コード領域全長を含むDNA断片を調製した。この断片を制限酵素SacIおよびNotI処理したpYCGPYNotに連結させ、nonScYGR012W高発現ベクターnonScYGR012W/pYCGPYNotを構築した。pYCGPYNotはYCp型の酵母発現ベクターであり、導入された遺伝子はピルビン酸キナーゼ遺伝子PYK1のプロモーターによって高発現される。酵母での選択マーカーとしてジェネチシン耐性遺伝子G418rを、また大腸菌での選択マーカーとしてアンピシリン耐性遺伝子Amprを含んでいる。
上述の方法で作製した高発現ベクターを用い、特開平07-303475に記載された方法でサッカロマイセス パストリアヌス バイヘンステファン34/70株を形質転換した。ジェネチシン300mg/Lを含むYPD平板培地(1%酵母エキス、2%ポリペプトン、2%グルコース、2%寒天)で形質転換体を選択した。
実施例4:ビール試験醸造における硫化水素生成量の解析
親株(W34/70株)ならびに実施例3で得られたnonScYGR012W高発現株株を用いた発酵試験を以下の条件で行った。

麦汁エキス濃度 12%
麦汁容量 1L
麦汁溶存酸素濃度 約 8ppm
発酵温度 15℃一定
酵母投入量 5g湿酵母菌体/L麦汁

発酵醪を経時的にサンプリングし、酵母増殖量(OD660)(図4)、エキス消費量の経時変化を調べた(図5)。発酵終了時における硫化水素の定量は、Takahashiら(Brauwissenschaft. 31. 1 (1978))の手法を参考にした。予め濃度既知の硫化水素を含む試料の測定を行い、検出された硫化水素のピーク面積から硫化水素の検量線を作成し、標準試料の分析条件と同一条件で発酵醪を測定して検出された硫化水素の面積と検量線の関係から硫化水素量を定量した(表1)。
表1.発酵終了時における発酵醪の硫化水素量
Figure 0004460004
表1に示されるように、発酵終了時における硫化水素生成量は親株の22.1ppbに対してnonScYGR012W高発現株では3.3ppbであった。これらの結果より、nonScYGR012W高発現によって硫化水素生成量が約85%減少することが明らかとなった。
実施例5:システインシンターゼ遺伝子(ScYGR012W)のクローニング
特開2004-283169に記載の比較データベースを用いて検索した結果、ビール酵母のシステインシンターゼ遺伝子、ScYGR012Wを見出した(配列番号:5)。得られた塩基配列情報を基に、それぞれ全長遺伝子を増幅するためのプライマーScYGR012W_for(配列番号:7)/ScYGR012W_rv(配列番号:8)を設計し、ゲノム解読株サッカロマイセス パストリアヌス バイヘンステファン34/70株の染色体DNAを鋳型としたPCRによってScYGR012Wの全長遺伝子を含むDNA断片(約1.2kb)を取得した。
上記のようにして得られたScYGR012W遺伝子断片を、TAクローニングによってpCR2.1-TOPOベクター(インビトロジェン社製)に挿入した。ScYGR012W遺伝子の塩基配列をサンガーの方法 (F. Sanger, Science, 214, 1215, 1981) で分析し、塩基配列を確認した。
実施例6:ビール試醸中のScYGR012W遺伝子発現解析
ビール酵母サッカロマイセス パストリアヌスW34/70株を用いてビール試醸を行い、発酵中のビール酵母菌体から抽出したmRNAをビール酵母DNAマイクロアレイで検出した。

麦汁エキス濃度 12.69%
麦汁容量 70L
麦汁溶存酸素濃度 8.6ppm
発酵温度 15℃
酵母投入量 12.8×106cells/mL

発酵液を経時的にサンプリングし、酵母増殖量(図6)、外観エキス濃度(図7)の経時変化を観察した。またこれと同時に酵母菌体をサンプリングし、調製したmRNAをビオチンラベルして、ビール酵母DNAマイクロアレイにハイブリダイズさせた。シグナルの検出はジーンチップオペレーティングシステム(GCOS;GeneChip Operating Software 1.0、アフィメトリクス社製)を用いて行った。ScYGR012W遺伝子の発現パターンを図8に示す。この結果より、通常のビール発酵においてScYGR012W遺伝子が発現していることが確認できた。
実施例7:ScYGR012W遺伝子高発現株の作製
実施例5に記載のScYGR012W/pCR2.1-TOPOを制限酵素SacIおよびNotI消化し、タンパク質コード領域全長を含むDNA断片を調製した。この断片を制限酵素SacIおよびNotI処理したpYCGPYNotに連結させ、ScYGR012W高発現ベクターScYGR012W/pYCGPYNotを構築した。pYCGPYNotはYCp型の酵母発現ベクターであり、導入された遺伝子はピルビン酸キナーゼ遺伝子PYK1のプロモーターによって高発現される。酵母での選択マーカーとしてジェネチシン耐性遺伝子G418rを、また大腸菌での選択マーカーとしてアンピシリン耐性遺伝子Amprを含んでいる。
上述の方法で作製した高発現ベクターを用い、特開平07-303475に記載された方法でサッカロマイセス パストリアヌス バイヘンステファン34/70株を形質転換した。ジェネチシン300mg/Lを含むYPD平板培地(1%酵母エキス、2%ポリペプトン、2%グルコース、2%寒天)で形質転換体を選択した。
実施例8:ビール試験醸造における硫化水素生成量の解析
親株(W34/70株)ならびに実施例7で得られたScYGR012W高発現株株を用いた発酵試験を以下の条件で行った。

麦汁エキス濃度 12%
麦汁容量 1L
麦汁溶存酸素濃度 約 8ppm
発酵温度 15℃一定
酵母投入量 5g湿酵母菌体/L麦汁

発酵醪を経時的にサンプリングし、酵母増殖量(OD660)(図9)、エキス消費量の経時変化を調べた(図10)。発酵終了時における硫化水素の定量は、Takahashiら(Brauwissenschaft. 31. 1 (1978))の手法を参考にした。予め濃度既知の硫化水素を含む試料の測定を行い、検出された硫化水素のピーク面積から硫化水素の検量線を作成し、標準試料の分析条件と同一条件で発酵醪を測定して検出された硫化水素の面積と検量線の関係から硫化水素量を定量した(表2)。
表2.発酵終了時における発酵醪の硫化水素量
Figure 0004460004
表2に示されるように、発酵終了時における硫化水素生成量は親株の22.1ppbに対してScYGR012W高発現株では2.6 ppbであった。これらの結果より、ScYGR012W高発現によって硫化水素生成量が約88%減少することが明らかとなった。
本発明の酵母を用いる酒類の製造法(本発明の酒類の製造方法)によれば、システインシンターゼにより硫化水素が速やかに消費されるため、ビール醸造および製品中の硫化水素濃度が低く抑えられ、香味に優れた酒類を製造することが可能となる。
図1は、ビール試験醸造における酵母増殖量の経時変化を示す図である。横軸は発酵時間を、縦軸はOD660の値を示している。 図2は、ビール試験醸造におけるエキス消費量の経時変化を示す図である。横軸は発酵時間を、縦軸は外観エキス濃度(w/w%)を示している。 図3は、ビール試験醸造中の酵母におけるnonScYGR012W遺伝子の発現挙動を示す図である。横軸は発酵時間を、縦軸は検出されたシグナル輝度を示している。 図4は、ビール試験醸造における親株、nonScYGR012W高発現株の酵母増殖量の経時変化を示す図である。横軸は発酵時間を、縦軸はOD660の値を示している。 図5は、ビール試験醸造における親株、nonScYGR012W高発現株のエキス消費量の経時変化を示す図である。横軸は発酵時間を、縦軸は外観エキス濃度(w/w%)を示している。 図6は、ビール試験醸造における酵母増殖量の経時変化を示す図である。横軸は発酵時間を、縦軸はOD660の値を示している。 図7は、ビール試験醸造におけるエキス消費量の経時変化を示す図である。横軸は発酵時間を、縦軸は外観エキス濃度(w/w%)を示している。 図8は、ビール試験醸造中の酵母におけるScYGR012W遺伝子の発現挙動を示す図である。横軸は発酵時間を、縦軸は検出されたシグナル輝度を示している。 図9は、ビール試験醸造における親株、ScYGR012W高発現株の酵母増殖量の経時変化を示す図である。横軸は発酵時間を、縦軸はOD660の値を示している。 図10は、ビール試験醸造における親株、ScYGR012W高発現株のエキス消費量の経時変化を示す図である。横軸は発酵時間を、縦軸は外観エキス濃度(w/w%)を示している。

Claims (19)

  1. 以下の(a)〜(d)からなる群から選択されるポリヌクレオチド:
    (a)配列番号:1の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
    (b)配列番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
    (c)配列番号:2のアミノ酸配列において、1〜15個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつシステインシンターゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;及び
    (d) 配列番号:2のアミノ酸配列に対して95%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつシステインシンターゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
  2. 以下の(g)〜(h)からなる群から選択される請求項1に記載のポリヌクレオチド:
    (g)配列番号:2のアミノ酸配列又は配列番号:2のアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつシステインシンターゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;及び
    (h) 配列番号:2のアミノ酸配列に対して97%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつシステインシンターゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
  3. 配列番号:1の塩基配列からなるポリヌクレオチドを含有する請求項1に記載のポリヌクレオチド。
  4. 配列番号:2のアミノ酸配列からなるタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有する請求項1に記載のポリヌクレオチド。
  5. DNAである、請求項1〜4のいずれかに記載のポリヌクレオチド。
  6. 請求項1〜5のいずれかに記載のポリヌクレオチドにコードされるタンパク質。
  7. 請求項1〜5のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含有するベクター。
  8. 以下の(j)〜(l)からなる群から選択されるポリヌクレオチドを含有するベクターが導入され、硫化水素生成能が低減された酵母
    (j)配列番号:2もしくは6のアミノ酸配列又は配列番号:2もしくは6のアミノ酸配列において、1〜10個のアミノ酸が欠失、置換、挿入および/または付加したアミノ酸配列からなり、かつシステインシンターゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;
    (k) 配列番号:2もしくは6のアミノ酸配列に対して90%以上の同一性を有するアミノ酸配列を有し、かつシステインシンターゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド;及び
    (l)配列番号:1もしくは5の塩基配列からなるポリヌクレオチド、又は配列番号:1もしくは5の塩基配列と相補的な塩基配列からなるポリヌクレオチドとハイストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、かつシステインシンターゼ活性を有するタンパク質をコードするポリヌクレオチドを含有するポリヌクレオチド。
  9. 請求項7に記載のベクターが導入された酵母。
  10. 請求項6に記載のタンパク質の発現量を増加させることによって硫化水素生成能が低減された請求項9に記載の酵母。
  11. 請求項8〜10のいずれかに記載の酵母を培養することを含む酒類の製造方法。
  12. 醸造する酒類が麦芽飲料である請求項11に記載の酒類の製造方法。
  13. 醸造する酒類がワインである請求項11に記載の酒類の製造方法。
  14. 配列番号:1又は配列番号:5の塩基配列を有するシステインシンターゼ遺伝子の塩基配列に基づいて設計したプライマーまたはプローブを用いて、被検酵母の硫化水素生成能について評価する方法。
  15. 被検酵母を培養し、配列番号:1又は配列番号:5の塩基配列を有するシステインシンターゼ遺伝子の発現量を測定することによって、被検酵母の硫化水素生成能を評価する方法。
  16. 被検酵母を培養して、請求項6に記載のタンパク質を定量または配列番号:1もしくは配列番号:5の塩基配列を有するシステインシンターゼ遺伝子の発現量を測定し、目的とする硫化水素生成能に応じた前記タンパク質量または前記遺伝子発現量の被検酵母を選択する、酵母の選択方法。
  17. 基準酵母および被検酵母を培養して配列番号:1もしくは配列番号:5の塩基配列を有するシステインシンターゼ遺伝子の各酵母における発現量を測定し、基準酵母よりも該遺伝子が高発現である被検酵母を選択する、請求項16に記載の酵母の選択方法。
  18. 基準酵母および被検酵母を培養して各酵母における請求項6に記載のタンパク質を定量し、基準酵母よりも該タンパク質量の多い被検酵母を選択する、請求項17に記載の酵母の選択方法。
  19. 請求項8〜10に記載の酵母および請求項1618に記載の方法により選択された酵母のいずれかの酵母を用いて酒類製造のための発酵を行い、硫化水素生成量を調節することを特徴とする、酒類の製造方法。
JP2007539392A 2005-08-22 2006-08-21 システインシンターゼ遺伝子及びその用途 Active JP4460004B2 (ja)

Applications Claiming Priority (3)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2005240350 2005-08-22
JP2006047554 2006-02-23
PCT/JP2006/316785 WO2007023973A1 (en) 2005-08-22 2006-08-21 Cysteine synthase gene and use thereof

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2008529477A JP2008529477A (ja) 2008-08-07
JP4460004B2 true JP4460004B2 (ja) 2010-05-12

Family

ID=37103259

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2007539392A Active JP4460004B2 (ja) 2005-08-22 2006-08-21 システインシンターゼ遺伝子及びその用途

Country Status (9)

Country Link
US (1) US20090123599A1 (ja)
EP (1) EP1869175B1 (ja)
JP (1) JP4460004B2 (ja)
KR (2) KR20100024508A (ja)
CN (2) CN1920043B (ja)
AU (1) AU2006282317B2 (ja)
CA (1) CA2602486A1 (ja)
DK (1) DK1869175T3 (ja)
WO (1) WO2007023973A1 (ja)

Families Citing this family (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
WO2017188355A1 (ja) * 2016-04-28 2017-11-02 国立大学法人 熊本大学 イオウ原子を同位体標識したシステイン及びシステイン誘導体の合成法の確立

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0724586B2 (ja) 1992-03-04 1995-03-22 アサヒビール株式会社 酵母硫化水素生成抑制遺伝子及び当該遺伝子を導入した醸造用酵母
JP4149007B2 (ja) 1995-02-01 2008-09-10 麒麟麦酒株式会社 酵母の凝集性判定用dna分子および凝集性判定方法
AU780412B2 (en) 1999-11-30 2005-03-17 Asahi Breweries, Ltd. Method of judging flocculating properties of bottom brewer's yeast
JP4537094B2 (ja) 2003-03-04 2010-09-01 サントリーホールディングス株式会社 醸造用酵母遺伝子のスクリーニング法
DK1599605T3 (da) * 2003-03-04 2011-06-06 Suntory Holdings Ltd S. pastorianus SSU1-gen, polypeptid og deres anvendelse i alkoholfremstilling

Also Published As

Publication number Publication date
EP1869175A1 (en) 2007-12-26
JP2008529477A (ja) 2008-08-07
CA2602486A1 (en) 2007-03-01
AU2006282317B2 (en) 2010-12-09
KR20070122475A (ko) 2007-12-31
CN1920043A (zh) 2007-02-28
DK1869175T3 (da) 2012-08-27
KR20100024508A (ko) 2010-03-05
CN102191261A (zh) 2011-09-21
AU2006282317A1 (en) 2007-03-01
WO2007023973A1 (en) 2007-03-01
CN1920043B (zh) 2012-05-30
US20090123599A1 (en) 2009-05-14
EP1869175B1 (en) 2012-08-08

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP5091867B2 (ja) グリセロール3リン酸デヒドロゲナーゼ遺伝子及びその用途
JP4478716B2 (ja) カタラーゼ遺伝子及びその用途
JP2009504131A (ja) ジヒドロキシ酸デヒドラターゼ遺伝子及びその用途
JP2009060790A (ja) 酵母に乾燥耐性および/または低温保存耐性を付与する活性を有するタンパク質をコードする遺伝子及びその用途
JP4460004B2 (ja) システインシンターゼ遺伝子及びその用途
JP4460007B2 (ja) ビシナルジケトン又はダイアセチル低減活性を有するタンパク質をコードする遺伝子及びその用途
JP2009528024A (ja) マルターゼおよびマルトーストランスポーター遺伝子の転写誘導因子をコードする遺伝子及びその用途
JP4478717B2 (ja) カタラーゼ遺伝子及びその用途
JP4954203B2 (ja) 細胞壁マンノプロテインをコードする遺伝子及びその用途
JP2009528019A (ja) トレハロース−6リン酸脱リン酸化酵素をコードする遺伝子及びその用途
JP4460003B2 (ja) 酵母の凝集性に関与するタンパク質をコードする遺伝子及びその用途
JP4460005B2 (ja) 酵母の凝集性に関与するタンパク質をコードする遺伝子及びその用途
JPWO2007026956A1 (ja) 低温発酵性及び/又は冷凍耐性を増強させる遺伝子及びその用途
JP4478718B2 (ja) グリコーゲン合成開始因子をコードする遺伝子及びその用途
EP1877552B1 (en) O-acetylhomoserinesulfhydrylase gene and use thereof
JP2009528020A (ja) グリコーゲン分岐酵素をコードする遺伝子及びその用途
JP2007053921A (ja) αグルコシドトランスポーター遺伝子及びその用途
JP2009528018A (ja) トレハロース合成促進活性を有するタンパク質をコードする遺伝子及びその用途
JP2009506751A (ja) グリセロールチャネル遺伝子及びその用途
JPWO2007026958A1 (ja) トリプトファントランスポーター遺伝子及びその用途
JP2009165353A (ja) アミノ酸トランスポーター遺伝子及びその用途
JP2009528021A (ja) グリコーゲン合成酵素をコードする遺伝子及びその用途
JP2007044016A (ja) 3−イソプロピルリンゴ酸デヒドロゲナーゼ遺伝子及びその用途
JP2009527220A (ja) アンモニアトランスポーター遺伝子及びその用途
JP2009011160A (ja) 細胞壁マンノプロテインをコードする遺伝子及びその用途

Legal Events

Date Code Title Description
A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A712

Effective date: 20090422

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20091117

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20091217

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20091217

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20100202

A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20100210

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

Ref document number: 4460004

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20130219

Year of fee payment: 3

FPAY Renewal fee payment (event date is renewal date of database)

Free format text: PAYMENT UNTIL: 20140219

Year of fee payment: 4

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250

R250 Receipt of annual fees

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R250