JP4459712B2 - ポリエステル製造用触媒およびそれを用いたポリエステル - Google Patents

ポリエステル製造用触媒およびそれを用いたポリエステル Download PDF

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Description

本発明はポリエステル製造用触媒及びこれを用いたポリエステルに関する。
ポリエステルは、機械的強度、耐熱性、透明性及びガスバリア性に優れており、ジュース、清涼飲料又は炭酸飲料などの飲料充填容器の素材をはじめとしてフィルム、シート又は繊維などの素材として好適に使用されている。
このようなポリエステルは、通常テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸類と、エチレングリコールなどの脂肪族ジオール類とを原料として製造される。具体的には、まず芳香族ジカルボン酸類と脂肪族ジオール類とのエステル化反応により低次縮合物(エステル低重合体)を形成し、次いで重縮合触媒の存在下にこの低次縮合物を脱グリコール反応(液相重縮合)させて、高分子量化している。また場合によっては固相重縮合を行い、更に分子量を高めている。
ポリエステルの製造方法では、重縮合触媒として従来よりアンチモン化合物、ゲルマニウム化合物又はチタン化合物などが使用されている。しかしながら、アンチモン化合物を触媒として製造したポリエチレンテレフタレートは透明性、耐熱性の点でゲルマニウム化合物を触媒として製造したポリエチレンテレフタレートに劣ることが知られている。また、ゲルマニウム化合物はかなり高価であるため、ポリエステルの製造コストが高くなるという問題があった。このため製造コストを下げるため、重縮合時に飛散するゲルマニウム化合物を回収して再利用するなどのプロセスが検討されている。
またチタン化合物はポリエステルの重縮合反応を促進する作用のある元素であることが知られており、チタンアルコキシド、四塩化チタン、シュウ酸チタニル又はオルソチタン酸などが重縮合触媒として公知であり、このようなチタン化合物を重縮合触媒として利用するために多くの検討が行われている。しかしながら、従来のチタン化合物を重縮合触媒に用いた場合、アンチモン化合物、ゲルマニウム化合物に比べ活性はあるものの、得られたポリエステルが著しく黄色に着色するなどの問題がある。
上記着色問題を解決するために、コバルト化合物をポリエステルに添加して黄味を抑えることが一般的に行われている。確かにコバルト化合物を添加することによってポリエステルの色相(b値)は改善することができるが、コバルト化合物を添加することによってポリエステルの溶融熱安定性が低下し、ポリマーの分解も起こりやすくなるという問題がある。
また、他のチタン化合物として、水酸化チタンをポリエステル製造用触媒として用いること(例えば特許文献1参照。)、またα−チタン酸をポリエステル製造用触媒として用いること(例えば特許文献2参照。)が開示されている。しかしながら、前者の方法では水酸化チタンの粉末化が容易でなく、一方後者の方法ではα−チタン酸が変質し易いため、その保存・取り扱いが容易でなく、したがっていずれも工業的に採用するには適当ではなく、更に良好な色調(b値)のポリマーを得ることも困難である。
また、チタン化合物と亜リン酸エステルとを反応させて得られた生成物をポリエステル製造用触媒として使用すること(例えば、特許文献3参照。)、またチタン化合物とリン化合物との錯体をポリエステル製造用触媒とすることも提案されている(例えば、特許文献4参照。)。確かに、この方法によれば溶融熱安定性もある程度は向上するものの、得られるポリマーの色調は十分なものではない。
さらに、チタン化合物、芳香族多価カルボン酸及び特定のリン化合物とを反応させて得られた生成物をポリエステル製造用触媒として使用すること(たとえば、特許文献5参照)も提案されている。確かにこの方法によれば溶融熱安定性のほかに、色相も十分なポリエステルが得られる。一方でこれらの反応によって得られる触媒は粉体であり、ポリエステルに溶解しない。その為これらの触媒によって得られたポリエステルを使用してボトルを成形した場合、触媒が粒子状にポリエステル中に存在する為ボトルが曇るという問題があった。また、飲料充填容器に使用する場合には得られるポリエステル中のアセトアルデヒド含有量を低減させることも要望されている。
特公昭48−2229号公報 特公昭47−26597号公報 特開昭58−38722号公報 特開平7−138354号公報 国際公開第03/008479号パンフレット
本発明の目的は、上記従来技術ではいずれも解決し得なかった、ポリエステルポリマーの色相を改善し、アセトアルデヒド含有量が少なく、かつ透明性に極めて優れるポリエステルポリマーを製造することのできるポリエステル製造用触媒を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するためにポリエステルの製造に用いられる重縮合触媒について鋭意研究したところ、重縮合触媒としてチタン化合物、芳香族多価カルボン酸及びリン化合物から反応させて作成される触媒粒子に微粉砕化の処理を実施し、微粉砕化後の平均粒径が10μm以下とする事によって、上記課題を解決することができ本発明を完成するに至った。
すなわち本発明の課題は、下記一般式(I)により表されるチタン化合物(1)、
Figure 0004459712
[上記式中、R、R、R及びRはそれぞれ同一又は異なるアルキル基又はフェニル基を表し、qは1〜4の整数を表し、かつqが2、3又は4の場合、2個、3個又は4個のR及びRは、それぞれ同一であっても異なっていてもどちらでもよい。]
並びに上記一般式(I)で表されるチタン化合物(1)、及び下記一般式(II)で表される芳香族多価カルボン酸
Figure 0004459712
[上記式中、lは2〜4の整数を表わす。]
又はその無水物とを反応させて得られたチタン化合物(2)から選ばれた少なくとも一種からなるチタン化合物成分と、
ブトキシエチルアシッドホスフェートのモノエステル又はジエステルであるリン化合物(3)の反応生成物であり、微粉砕化処理により平均粒径が10μm以下であるポリエステル製造用触媒を使用する事によって達成することができる。
本発明によれば、高い重合活性を備えるポリエステル製造用触媒を提供することができる。さらにこの触媒を用いたポリエステルは色相に優れ、特に成形品での透明性にも優れ且つアセトアルデヒドの含有量も少ないため、ボトル等の成形容器の材料として有用である。
以下、本発明について詳細に説明する。
(触媒)
本発明においてポリエステル製造用触媒は、チタン化合物、必要な芳香族多価カルボン酸、リン化合物の反応生成物であり、それを微粉砕化処理したものである。チタン化合物としては、下記一般式(I)で表されるチタン化合物(1)を用いることが必要である。
Figure 0004459712
[上記式中、R、R、R及びRはそれぞれ同一又は異なるアルキル基又はフェニル基を表し、qは1〜4の整数を表し、かつqが2、3又は4の場合、2個、3個又は4個のR及びRは、それぞれ同一であっても異なっていてもどちらでもよい。]
具体的には、チタンテトラブトキシド、チタンテトライソプロポキシド、チタンテトラ−n−プロポキシド又はチタンテトラエトキシドに例示されるテトラアルキルチタネート(チタンテトラアルコキシド)、ヘキサアルキルジチタネート及びオクタアルキルトリチタネートよりなる群から少なくとも1種選ばれる化合物を好ましく挙げることができるが、なかでも本発明において使用されるリン化合物成分との反応性の良好なチタンテトラアルコキシド類を用いることが好ましく、特にテトラブチルチタネートを用いることがより好ましい。
また芳香族多価カルボン酸又はその無水物としては、下記一般式(II)で表される化合物を用いることが必要である。
Figure 0004459712
[上記式中、lは2〜4の整数を表わす。]
具体的にはフタル酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸及びピロメリット酸並びにそれらの無水物よりなる群から少なくとも1種選ばれる化合物を好ましく用いることができる。特に、チタン化合物(1)との反応性がよく、また得られるポリエステル製造用触媒がポリエステルとの親和性が高いトリメリット酸無水物を用いることがより好ましい。これらの芳香族多価カルボン酸又はその無水物は1種又は複数種を併用して用いても良い。
また、リン化合物としては、下記一般式(III)で表されるリン化合物(3)を用いる必要がある。
Figure 0004459712
[上記式中、Rは1〜18個の炭素原子を有するアルキル基または6〜12個の炭素原子を有するアリール基を表す。m及びpは1〜3の整数、nは2以上の整数を表す。]
これらの中でpがより大きい化合物が好ましいと考えられる。これらのリン化合物は単一種を用いても複数種を併用して用いても良い。特に工業的に生産されており入手が容易という点で、ブトキシエチルアシッドホスフェート(上記式(II)において、Rがブチル基、n=2、p=1、m=1、2の化合物に対応する。)が好ましい。このリン化合物を用いることで、本発明の効果が実現できると考えられる。その原因の詳細は不明であるが、分散に用いるグリコールとの親和性が関連していると考えられる。
これらのチタン化合物、必要な芳香族多価カルボン酸類、リン化合物を用いない場合には、得られるポリエステルの色相が良くない、曇りが発生する、アセトアルデヒド含有量が増加する、環状三量体の含有量が増加するなどの問題が発生する。また得られたポリエステルを飲料充填容器用途に用いた場合には、フレーバー性も悪化することがある。
次に、本発明のポリエステル製造用触媒を効率よく得るための製造方法を説明する。本発明の触媒の合成に用いるチタン化合物成分としては、上述のチタン化合物(1)を用いても、又はこのチタン化合物(1)を予め上記一般式(II)で表される芳香族多価カルボン酸又はその無水物と反応させてチタン化合物(2)とした後、リン化合物と反応させてもよい。該芳香族多価カルボン酸又はその無水物は、一般に水分や熱に対して不安定な上記一般式(I)のチタン化合物(1)を溶媒中でより安定化させる働きを有する。その添加量について特に限定は無いが、チタン原子に対して0.5〜4.0倍モル量が好ましく、1.0〜2.0倍モル量を添加することが更に好ましい。この範囲内にあるときは、上記の安定化効果が最大限に発揮されるとともに、最終的に得られるポリエステルの品質にも問題が無い。添加量がこの範囲外の場合には、得られるポリエステルの色相が良くない、曇りが発生する、アセトアルデヒド含有量が増加する、環状三量体の含有量が増加するなどの問題が発生することがある。
該チタン化合物(1)と該芳香族多価カルボン酸またはその無水物との反応は、芳香族多価カルボン酸又はその無水物の一部又は全部を溶媒に溶解し、この混合液にチタン化合物(1)を滴下し、0〜200℃の温度で少なくとも30分間、好ましくは30〜150℃の温度に40〜90分間加熱することによって行われる。また必要に応じてチタン化合物(1)の滴下後に残りの芳香族多価カルボン酸又はその無水物を添加してもよい。この際の反応圧力には特に制限はなく、常圧で充分である。なお前記溶媒としては、芳香族多価カルボン酸又はその無水物(以下「芳香族多価カルボン酸等」と称することがある。)の一部又は全部を溶解し得るものから適宜に選択することができるが、好ましくはエタノール、エチレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ベンゼン又はキシレン等から選ばれる。この反応によって得られる反応生成物であるチタン化合物(2)、又はチタン化合物(1)はそのままリン化合物(3)との反応に供してもよく、又はこれをアセトン、メチルアルコール及び酢酸エチル等よりなる群から少なくとも1種選ばれる溶媒によって再結晶して精製した後、これをリン化合物(3)と反応させてもよい。
なお本発明の触媒は、前述したとおりチタン化合物、必要な芳香族多価カルボン酸等及びリン化合物の二者又は三者を反応させることによって得られるが、このときグリコールを反応媒体として加熱すれば容易に製造することができる。
ここで用いるグリコールとしては、例えばエチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール又はシクロヘキサンジメタノールを例示することができるが、得られる触媒を用いて製造するポリエステルと同じグリコールを使用することが好ましい。なお上記の各化合物を混合し反応させるにあたっては、チタン化合物・芳香族多価カルボン酸等・リン化合物及びグリコールの4つを同時に混合する方法、又はチタン化合物・芳香族多価カルボン酸等・リン化合物のそれぞれグリコールの溶液を作成しその後3種類のグリコール溶液を同時に混合する方法、更にはチタン化合物・芳香族多価カルボン酸等・リン化合物のそれぞれのグリコール溶液のうち2種類のグリコール溶液を混合し、その後残り一種類の化合物のグリコール溶液を混合する方法のいずれの方法でも良い。しかしこれらの中では、チタン化合物成分のグリコール溶液と芳香族多価カルボン酸等のグリコール溶液とを混合し、その後リン化合物のグリコール溶液を混合する方法で製造することが好ましい。
反応温度に関しては、常温では反応が不十分であったり、反応に過大に時間を要したりする問題があるため、通常50℃〜200℃の温度で反応させることが好ましい。反応時間は、1分間〜4時間で完結させるのが好ましい。例えば、グリコールとしてエチレングリコールを用いる場合50℃〜150℃が好ましく、ヘキサメチレングリコールを用いる場合100℃〜200℃が好ましい範囲であり、また反応時間は、30分間〜2時間がより好ましい範囲となる。反応温度が高すぎたり、時間が長すぎたりすると触媒の劣化が起こるため好ましくない。
また、本発明の触媒を反応させるにあたり、リン化合物成分の配合割合が、チタン原子に対するリン原子のモル比率として1以上4以下であることが好ましく、更に1.5以上3以下であることがより好ましい。1未満では未反応チタン化合物成分が多くなり得られたポリマーの色調を悪化させる。逆に4を超えると、過剰な未反応のリン化合物成分の存在が多くなり、重縮合反応活性を低下させる。このような配合割合により反応させ得られた反応生成物が本発明の触媒であるが、その中に含有しているチタン原子とリン原子のモル比が1:1〜1:4であることが好ましく、1:1.5〜1:3であることがより好ましい。
更に本発明においては、このようにして得られたチタン化合物、必要な芳香族多価カルボン酸等及びリン化合物の反応生成物を、微粉砕化処理をおこない、微粉砕化処理後の平均粒径が10μm以下であることが必要である。さらに望ましくは7μm以下である。平均粒径が10μmより大きいと、最終的に成形して得られるボトル成形体の曇りの程度が大きく、製品として十分な物を得る事ができない。また平均粒径が小さければ、小さいほど、得られるボトル成形品の曇りの程度は低く、商品としての価値が高くなる。微粉砕化の処理方法については、得られる平均粒径を10μm以下に処理可能な方法であれば特に制限は無いが、購入コスト及び微粉砕化処理コストが低くかつメンテナンスの容易さの点より、撹拌式ミル及び/又は高速回転粉砕機を使用することが望ましい。
本発明の触媒を使用してポリエステルを製造するにあたっては、最終的に得られるポリエステルポリマー中にチタン元素として1〜50ppmになる量で、触媒として使用するのが好ましく、5〜30ppmになる量で使用するのが更に好ましい。1ppm未満ではポリエステルを製造する触媒量として十分でなく、50ppmを超えるとポリエステルの着色、成形品の曇りの原因となることがある。そして得られるポリエステル中の金属原子として、チタン以外の金属原子は、金属元素濃度換算で10ppm以下が好ましく、更には5ppm以下が好ましい。
なお、上記反応生成物をポリエステル製造用触媒として用いるには、重縮合反応時に存在していればよい。このため触媒の添加は、原料スラリー調製工程、エステル化工程又は液相重縮合工程等のいずれの工程で行ってもよい。また触媒全量を一括添加しても、複数回に分けて添加してもよい。
(ポリエステルの製造方法)
次に、本発明のポリエステル製造用触媒を用いたポリエステルの製造方法について説明する。本発明の触媒を用いてポリエステルを製造する際には、例えば芳香族ポリエステルを製造する場合には、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体と、脂肪族グリコールとを重縮合させて製造することができる。
(原料)
ここで芳香族ジカルボン酸としては、例えばテレフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、ジフェニルジカルボン酸若しくはジフェノキシエタンジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体を用いることができる。なおエステル形成性誘導体と具体的には低級アルキルエステル又は酸ハライドを挙げることができる。これらの中でもテレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体を用いることが好ましい。脂肪族グリコールとしては、例えば、エチレングリコール、トリメチレングリコール、プロピレングリコール、テトラメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ヘキサンメチレングリコール又はドデカメチレングリコールを用いることができる。これらの中でもエチレングリコールを用いることが好ましい。これら芳香族ジカルボン酸、そのエステル形成製誘導体及び脂肪族グリコールは単一種を用いても複数種を併用して用いても良い。
芳香族ジカルボン酸とともに、例えばアジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸若しくはデカンジカルボン酸などの脂肪族ジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体を原料として使用することができる。また脂肪族ジオールとともに、例えばシクロヘキサンジメタノールなどの脂環式グリコール、ビスフェノール、ハイドロキノン又は2,2−ビス(4−β−ヒドロキシエトキシフェニル)プロパンなどの芳香族基を含むジオールを原料として使用することができる。更に、トリメシン酸、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、トリメチロールメタン又はペンタエリスリトールなどの多官能性化合物を原料として使用することができる。
なおこれらの中でテレフタル酸又はそのエステル形成性誘導体は、芳香族ジカルボン酸又はそのエステル形成性誘導体100モル%に対して、80モル%以上、好ましくは90モル%以上となるような量で用いられ、エチレングリコールは脂肪族グリコール100モル%に対して、80モル%以上、好ましくは90モル%以上となるような量で用いられることが好ましい。すなわち本発明の触媒を用いて製造するポリエステルとしては、ポリエチレンテレフタレートが好ましい。
(エステル化工程)
まず、上記の原料を用いてポリエステルを製造するに際しては、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを直接エステル化反応させるか、芳香族ジカルボン酸のエステル形成性誘導体と脂肪族グリコールとをエステル交換反応させるか、又は芳香族ジカルボン酸にアルキレンオキサイドを付加反応させるなどしてオリゴマーを得た後、本発明のポリエステル製造用の重縮合触媒を用いて重縮合反応させるのが好ましい。例えば直接エステル化する具体的な方法においては、まず芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとを含むスラリーを調製する。このようなスラリーには芳香族ジカルボン酸1モルに対して、通常1.1〜1.6モル、好ましくは1.2〜1.4モルの脂肪族グリコールが含まれる。次にこのスラリーは、エステル化反応工程に連続的に供給される。エステル化反応は、反応物を自己循環させなから一段で実施する方法、又は2つ以上のエステル化反応器を直列に連結し実施する方法が好ましく、いずれも脂肪族グリコールが還流する条件下で、反応によって生成した水を精留塔で系外に除去しながら行う。反応物を自己循環させなから一段で連続的にエステル化を行う場合の反応条件は、通常反応温度が240〜280℃、好ましくは250〜270℃であり、反応圧力は常圧〜0.3MPaの条件下で行われ、エステル化率が通常90%以上、好ましくは95%以上になるまで反応させることが望ましい。
このエステル化工程により、芳香族ジカルボン酸と脂肪族グリコールとのエステル化反応物(オリゴマー)が得られ、このオリゴマーの重合度は4〜10程度である。上記のようなエステル化工程で得られたオリゴマーは、次いで重縮合(液相重縮合)工程に供給される。
(液相重縮合工程)
次に液相重縮合工程において、上記した重縮合触媒の存在下にエステル化工程で得られたオリゴマーを、減圧下でかつポリエステルの融点以上の温度(通常240〜300℃)に加熱することにより重縮合させる。この重縮合反応では、未反応の脂肪族グリコール及び重縮合で発生する脂肪族グリコールを反応系外に留去させながら行われることが望ましい。重縮合反応は1槽で行ってもよく、複数の槽に分けて行ってもよい。例えば重縮合反応が2つの槽(2段階)で行われる場合には、第1槽目の重縮合反応は反応温度が245〜290℃、好ましくは260〜280℃、圧力が100〜1kPa、好ましくは50〜2kPaの条件下で行われる。最終第2槽での重縮合反応は、反応温度が265〜300℃、好ましくは270〜290℃、反応圧力は通常1000〜10Paで、好ましくは500〜30Paの条件下で行われる。
このようにして、本発明のポリエステル製造用触媒を用いてポリエステルを製造することができるが、この重縮合工程で得られるポリエステルは、通常溶融状態で押し出しながら冷却後、粒状(チップ状)とする。得られたポリエステルの固有粘度は0.40〜0.80dL/g、好ましくは0.50〜0.70dL/gであることが望ましい。
また、重縮合反応では、必要に応じてトリメチルホスフェートなどのリン安定剤をポリエステル製造における任意の段階で加えてもよく、更に酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、蛍光増白剤、艶消剤、整色剤又は消泡剤その他の添加剤などを配合してもよい。
更に、得られるポリエステルの色相の改善補助をするために、反応系のポリエステルの製造段階において、アゾ系、トリフェニルメタン系、キノリン系、アントラキノン系又はフタロシアニン系等の有機青色顔料等や無機系以外の整色剤を添加することもできる。
(固相重縮合工程)
上記重縮合反応で得られたポリエステルは、必要に応じて、更に固相重縮合反応させることもできる。固相重縮合反応に供給される粒状ポリエステルは、予め固相重縮合を行う温度より低い温度に加熱して予備結晶化を行った後、固相重縮合工程に供給すると、固相重合反応中に粒状のポリエステル同士及び/又は粒状ポリエステルの反応容器内壁への融着を抑止することができるので好ましい。
このような予備結晶化工程は、粒状ポリエステルを乾燥状態で通常120〜200℃、好ましくは130〜180℃の温度に1分間から4時間加熱することによって行うことができる。またこのような予備結晶化は、粒状のポリエステルを水蒸気雰囲気、水蒸気含有不活性ガス雰囲気下又は水蒸気含有空気雰囲気下で、120〜200℃の温度で1分間以上加熱することによって行うこともできる。予備結晶化されたポリエステルは、結晶化度が20〜50%であることが望ましい。なおこの予備結晶化処理によっては、いわゆるポリエステルの固相重縮合反応は進行せず、予備結晶化されたポリエステルの固有粘度は、重縮合後のポリエステルの固有粘度とほぼ同じであり、予備結晶化前後の固有粘度差は、通常0.06dL/g以下である。
固相重縮合工程は少なくとも1段からなり、温度が190〜230℃、好ましくは195〜225℃であり、圧力が200kPa〜1kPa、好ましくは常圧から10kPaの条件下で、窒素、アルゴン又は炭酸ガスなどの不活性ガス雰囲気下で行われることが好ましい。使用する不活性ガスとしては窒素ガスがより望ましい。
このような固相重縮合工程を経て得られた粒状ポリエステルには、必要に応じて水処理を行ってもよく、この水処理は、粒状ポリエステルを水、水蒸気、水蒸気含有不活性ガス又は水蒸気含有空気などと接触させることにより行われる。また上記のようなポリエステルの製造工程はバッチ式、半連続式、連続式のいずれでも行うことができる。
特に固相重縮合を行うポリエチレンテレフタレートは、一般的に飲料充填用ボトルなどに利用する場合が多く、そのため固有粘度が0.70〜1.0dL/gであるとともに、ポリエチレンテレフタレート中の環状三量体が0.5wt%以下、アセトアルデヒド含有量が5ppm以下であることが好ましい。なお、ポリエチレンテレフタレート中の環状三量体及びアセトアルデヒドは、通常固相重縮合工程で低減されるため、固相重縮合前の溶融縮合の固有粘度及び固相重縮合の条件などを調整することで対応できる。また、本発明のポリエステル製造用触媒を用いて得られたポリエステルは、アセトアルデヒドの含有量が、30ppm以下、好ましくは25ppm以下とすることができる。
以下、実施例により本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれにより何ら限定を受けるものでは無い。なお実施例・比較例中において「部」とは重量部を表すものであり、微粉砕化処理方法及び分析各値は、以下の方法に従って実施・測定した。
(1)固有粘度:
ポリエステル試料0.6gをo−クロロフェノール50cc中に加熱溶解した後、一旦冷却させた溶液をウベローデ式粘度計を用いて35℃の温度条件で測定した溶液粘度から算出して求めた。
(2)色相(Col):
粒状のポリマーサンプルを160℃×90分乾燥機中で熱処理し、結晶化させた後、カラーマシン社製CM−7500型カラーマシンで測定してL値、b値を求めた。なお、固相重縮合反応後のサンプルについては、160℃×90分の熱処理工程を行わないこと以外は同様に測定して求めた。
(3)ヘーズ:
ボトル形成用プリフォームを射出成形開始後、5ショット目以降のいずれか1個をサンプルとし、プリフォーム成形体胴部の長さ方向で中央箇所をサンプリングし、日本電色工業株式会社製濁度計(HD−1001DP)を用いて求めた。
(4)アセトアルデヒド含有量:
アセトアルデヒド(以下、「AA」と略記する。)含有量は、サンプルを凍結粉砕しバイアル瓶に仕込み、150℃×60分間保持し、株式会社日立製作所製ヘッドスペースガスクロマトグラフィーを用いて求めた。
(5)金属含有濃度分析(触媒中):
触媒中のチタン、リン原子濃度は、乾燥したサンプルを走査電子顕微鏡(SEM;日立計測機器サービス株式会社製S570型)にセットし、それに連結したエネルギー分散型X線マイクロアナライザー(XMA;株式会社堀場製作所製EMAX−7000)を用い定量分析して求めた。
(6)金属含有濃度分析(ポリエステルポリマー中):
ポリエステル中の残留触媒金属濃度は、粒状のポリマーサンプルをアルミ板上で加熱溶融した後、圧縮プレス機で平坦面を有する試験成形体を作成し、蛍光X線装置(理学電機工業株式会社製3270E型)を用いて求めた。
(7)環状三量体(Cy−3)含有量:
環状三量体(以下、Cy−3と略記する。)含有量は、サンプルを粉砕機で粉砕しその一定量を秤量し、これを少量のヘキサフロロイソプロパノール/クロロホルム混合溶液中に溶解し、この溶液をクロロホルムで一定濃度(50g/リットル)に希釈した。この試料溶液をゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC;Waters社製ALC/GPC244型)に供して、低分子量領域を分離しかつそのピークを検出し、Cy−3の標準サンプルから求めた検量線を基準にして求めた。
(8)触媒の平均粒径:
レーザー散乱式粒度分布測定器(島津製作所(株)製SALD2000)を用いて測定した積算粒度分布から、積算粒子数(体積換算)50%の粒子径を平均粒径とした。
(9)微粉砕化処理:
アイメックス(株)製撹拌式ミル(5L容積)に東芝バロティーニ製ガラスビーズEGB−503MMを80%充填し、流量30L/hで1回処理した。
[実施例1]
チタン化合物成分の調製:
溶液を混合撹拌できる機能を備え付けた2リットル容量の三ツ口フラスコを準備し、その中にエチレングリコール919部と無水トリメリット酸80部を入れて混合撹拌した中に、チタンテトラブトキシド71部をゆっくり徐々に添加し、透明なチタン化合物のエチレングリコール溶液を得た。以下、この溶液を「TB溶液」と略す。本溶液のチタン濃度を蛍光X線を用い測定したところ、1.02wt%であった。
リン化合物成分の調製:
加熱し混合撹拌できる機能を備え付けた2リットルの三ツ口フラスコを準備し、その中にエチレングリコール256部を入れて撹拌しながら100℃まで加熱した。その温度に達した時点で、城北化学工業(株)社製のブトキシエチルアシッドホスフェート(商品名JP−506H、モノエステル[m=1]とジエステル[m=2]の重量比4:6の混合物)を21.1部添加し、加熱混合撹拌して溶解し透明な溶液を得た。以下、この溶液を「P1溶液」と略す。
ポリエステル製造用触媒の調製:
撹拌下で100℃に加熱コントロールした上記の「TB溶液」中に、「P1溶液」全量を添加した後、100℃の温度で1時間撹拌保持した。この時の「P1溶液」、および「TB溶液」の配合量比は、チタン原子、リン原子のモル濃度比が1:2に調整されたものとなっており、次に、撹拌式ミルを使用して、微粉砕化の処理を行い、処理時間等の処理条件を調整し、平均粒径5μmの触媒を得た。得られた触媒を以下「TP1−5触媒」と略す。得られた触媒中のチタン原子/リン原子のモル比は1:2であった。
[実施例2]
実施例1において、撹拌式ミルを使用して、微粉砕化の処理を行い、処理時間等の処理条件を調整し、平均粒径10μmの触媒としたこと以外は基本的に同様な処理を行った。得られた触媒を以下「TP1−10触媒」と略す。得られた触媒中のチタン原子/リン原子のモル比は1:2であった。
[比較例1]
実施例1において、微粉砕化の処理を行わなかった事以外は、基本的に同様な装置及び手順で反応を実施して触媒を得た。なおこの触媒の平均粒径は20μmであった。得られた触媒を以下「TP1−20触媒」と略す。得られた触媒中のチタン原子/リン原子のモル比は1:2であった。
[比較例2]
実施例1において、撹拌式ミルを使用して、微粉砕化の処理を行い処理時間等の処理条件を調整し、平均粒径15μmの触媒としたこと以外は、基本的に同様な処理を行った。得られた触媒を以下「TP1−15触媒」と略す。得られた触媒中のチタン原子/リン原子のモル比は1:2であった。
[実施例3〜4、比較例3〜4]ポリエステルの製造:
予め225部のオリゴマーが滞留する反応器内に、撹拌下窒素雰囲気で255℃、常圧下に維持された条件下に、179部の高純度テレフタル酸と95部のエチレングリコールとを混合して調製されたスラリーを一定速度供給し、反応で発生する水とエチレングリコールを系外に留去ながら、エステル化反応を4時間し反応を完結させた。この時のエステル化率は98%以上で、生成されたオリゴマーの重合度は、約5〜7であった。
このエステル化反応で得られたオリゴマー225部を重縮合反応槽に移し、重縮合触媒として、実施例1〜2、比較例1〜2で得られた触媒溶液を0.832部投入した。引続き系内の反応温度を255から280℃、又、反応圧力を常圧から60Paにそれぞれ段階的に昇温及び減圧し、反応で発生する水、エチレングリコールを系外に除去しながら重縮合反応を行った。
重縮合反応の進行度合いを、系内の撹拌翼への負荷をモニターしなから確認し、所望の重合度に達した時点で、反応を終了した。その後、系内の反応物を吐出部からストランド状に連続的に押出し、冷却,カッティングして、約3mm程度の粒状ペレットを得た。この時の重縮合反応時間は、110分間であった。引き続き、それぞれ得られた粒状のポリエチレンテレフタレートを高速撹拌の流動式結晶化機で160℃、10分間処理して半結晶化させた後、窒素流通下160℃で4時間結晶化及び乾燥させて、予備結晶化を行った。続いて、ポリエチレンテレフタレートを充填塔式固相重合反応塔に移し、窒素流通下215℃で22〜25時間固相重縮合を行い、それぞれのポリエチレンテレフタレートの固有粘度が0.760dL/gになるように反応時間を調整した。これら得られたポリエチレンテレフタレートの品質を表1に示した。実施例1の触媒を用いて得たポリエステルを実施例3とし、以下使用した触媒が実施例2、比較例1〜2の順にそれぞれ実施例3〜4、比較例3〜4とした。結果を表1に表した。
これら固相重縮合したポリエチレンテレフタレートを用いプリフォーム成形体を下記の方法で成形した。すなわちポリエチレンテレフタレート5kgを温度160℃、常圧、窒素流入下条件で10時間以上棚段式の乾燥機を用いて乾燥させた。次に乾燥ポリエチレンテレフタレートを射出成形機(株式会社名機製作所社製「M−100DM」)を用い、シリンダー温度275℃、スクリュー回転数160rpm、1次圧時間3.0秒、金型冷却温度10℃、サイクル30秒で、外径約28mm、内径約19mm、長さ136mm、胴部肉厚4mm、重量約56gの円筒状のプリフォームを射出成形した。得られたプリフォーム成形体の胴部中央箇所をサンプリングしてその固有粘度、ヘーズ、AA含有量及びCy−3含有量を測定した。これらの結果も合わせて表2に示した。
[比較例5]
比較例5として、重縮合触媒として、三酸化アンチモンの1.3%濃度エチレングリコール溶液に変更し、その溶液の投入量を4.83部とし、更に安定剤としてトリメチルホスフェートの25%エチレングリコール溶液を0.121部を投入したこと以外は実施例3と同様に、溶融重合(液相重縮合)、固相重合の操作を行った。得られたポリエチレンテレフタレートの品質を表1に示した。尚使用した三酸化アンチモン触媒は、完全にエチレングリコール溶液に溶解していた。また実施例3と同様にしてプリフォーム成形体を作成し、測定評価を行った。結果を表2に示した。
Figure 0004459712
Figure 0004459712
本発明によれば、高い重合活性を備えるポリエステル製造用触媒を提供することができる。さらにこの触媒を用いたポリエステルは色相に優れ、特に成形品の透明性にも優れ、ヘーズも小さく且つアセトアルデヒドの含有量も少ないため、ボトル等の成形容器の材料として有用である。

Claims (9)

  1. 下記一般式(I)により表されるチタン化合物(1)、
    Figure 0004459712
    [上記式中、R、R、R及びRはそれぞれ同一又は異なるアルキル基又はフェニル基を表し、qは1〜4の整数を表し、かつqが2、3又は4の場合、2個、3個又は4個のR及びRは、それぞれ同一であっても異なっていてもどちらでもよい。]
    並びに上記一般式(I)で表されるチタン化合物(1)、及び下記一般式(II)で表される芳香族多価カルボン酸
    Figure 0004459712
    [上記式中、lは2〜4の整数を表わす。]
    又はその無水物とを反応させて得られたチタン化合物(2)から選ばれた少なくとも一種からなるチタン化合物成分と、
    ブトキシエチルアシッドホスフェートのモノエステル又はジエステルであるリン化合物(3)の反応生成物であり、微粉砕化処理により平均粒径が10μm以下であるポリエステル製造用触媒。
  2. 微粉砕化の処理を撹拌式ミル及び/又は高速回転粉砕機で実施する請求項1記載のポリエステル製造用触媒。
  3. 含有しているチタン原子とリン原子のモル比が1:1〜1:4である請求項1又は2記載のポリエステル製造用触媒。
  4. チタン化合物(1)が、テトラアルキルチタネート、ヘキサアルキルジチタネート及びオクタアルキルトリチタネートよりなる群から少なくとも1種選ばれる化合物である請求項1〜3のいずれか1項記載のポリエステル製造用触媒。
  5. 芳香族多価カルボン酸又はその無水物が、フタル酸、トリメリット酸、ヘミメリット酸及びピロメリット酸並びにそれらの無水物よりなる群から少なくとも1種選ばれる化合物である請求項1〜4のいずれか1項記載のポリエステル製造用触媒。
  6. チタン化合物成分とリン化合物(3)の反応温度が50〜200℃である請求項1〜5のいずれか1項記載のポリエステル製造用触媒。
  7. 請求項1〜6のいずれか1項記載の触媒を用いて製造されチタン元素を1〜50ppm含有するポリエステル。
  8. ポリエステルがポリエチレンテレフタレートである請求項7記載のポリエステル。
  9. 固有粘度が0.70〜1.0dL/g、環状三量体の含有量が0.5wt%以下及びアセトアルデヒド含有量が5ppm以下である請求項7又は8記載のポリエステル。
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