[第1実施形態]
本発明の第1実施形態による半導体装置及びその製造方法について図1乃至図9を用いて説明する。
図1は本実施形態による半導体装置の構造を示す概略断面図、図2乃至図9は本実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
はじめに、本実施形態による半導体装置の構造について図1を用いて説明する。
半導体基板10上には、素子領域14を画定する素子分離膜12が形成されている。素子領域14には、半導体基板10上にゲート絶縁膜16を介して形成されたゲート電極18と、ゲート電極両側の半導体基板10中に形成されたソース/ドレイン領域22とを有するMOSトランジスタ24が形成されている。
MOSトランジスタ24が形成された半導体基板10上には、層間絶縁膜26及びストッパ膜28が形成されている。層間絶縁膜26及びストッパ膜28には、ソース/ドレイン領域22に接続された導体プラグ35が埋め込まれている。
導体プラグ35が埋め込まれたストッパ膜28上には、絶縁膜36、層間絶縁膜38及び絶縁膜40が形成されている。絶縁膜36、層間絶縁膜38及び絶縁膜40には、バリア膜48及びCu膜よりなる配線51が埋め込まれている。
配線51が埋め込まれた絶縁膜40上には、絶縁膜52、層間絶縁膜54、絶縁膜56、層間絶縁膜58及び絶縁膜60が形成されている。絶縁膜52及び層間絶縁膜54には、配線51に達するビアホール66が形成されている。絶縁膜56、層間絶縁膜58及び絶縁膜60には、ビアホール66に接続された配線溝72が形成されている。ビアホール66には、バリア膜74及びCu膜76よりなる導体プラグ77aが埋め込まれている。配線溝72には、バリア膜74及びCu膜76よりなる配線77bが埋め込まれている。導体プラグ77a及び配線77bは一体に形成されている。
配線77bが埋め込まれた絶縁膜60上には、絶縁膜78が形成されている。
ここで、本実施形態による半導体装置は、主として、配線層51上に形成された絶縁膜52及び配線層77b上に形成された絶縁膜78に特徴がある。
絶縁膜52,78は、銅配線51,77b上に形成される膜であり、水分の拡散及びCu配線からのCuの拡散を防止するバリア膜として機能するものである。この目的のもと、本実施形態による半導体装置では、絶縁膜52,78を、銅に対して拡散バリア性を持つシリコン化合物を主体として形成している。
銅に対して拡散バリア性を持つシリコン化合物は、密度が1〜3g/cm3の範囲であり、銅に対する拡散バリア性を有していれば特に限定されるものではない。密度を1g/cm3以上とするのは、1g/cm3未満では膜が粗になりバリア性が低下するからである。また、密度を3g/cm3以下とするのは、3g/cm3を超えると誘電率が高くなりすぎるからである。シリコン化合物を用いるのは、誘電率が低い絶縁材料を形成できるからである。
銅に対して拡散バリア性を持つシリコン化合物としては、バリア性の高いSi−C結合やSi−N結合を多く含む物質が望ましい。Si−C結合を含むシリコン化合物としては、構造式
(式中、R
1,R
2は、互いに同一若しくは異なってもよく、それぞれ、水素原子を表すか、置換若しくは非置換のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基又はアルキル基を表し、nは10〜1000である。)
で表されるポリカルボシラン等を適用することができる。また、Si−N結合を含むシリコン化合物としては、構造式
(式中、R
1,R
2,R
3は、互いに同一若しくは異なってもよく、それぞれ、水素原子を表すか、置換若しくは非置換のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基又はアルキル基を表し、但しR
1,R
2,R
3のうち少なくとも1つは水素原子であり、nは100〜50000の数平均分子量を有するに必要な繰り返し単位の数である。)
で表されるポリシラザン等を適用することができる。
絶縁膜52,78には、また、製造方法に起因する残留成分として、炭素数が4以上、沸点が50℃〜500℃のアルコール類、アルデヒド類、カルボン酸類、糖類等の還元性を持つ有機化合物が僅かに含有されている。この有機化合物は、配線51,77b表面に形成された酸化銅を還元するために用いたものである。製造過程でこの有機化合物を完全に揮発させることは困難であり、膜中に僅かに残存している。
この有機化合物は、例えば、ブタノ−ル、ペンタノ−ル、ヘキサノール、ヘプタノ−ル、オクタノール、ノナノ−ル、デカノール、シクロヘキサノール、フェノール、フェニルメタノール、ブタナール、ペンタナール、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナ−ル、デカナール、ベンジルアルコール、シクロペンタンカルボアルデヒド、ベンズアルデヒド、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、安息香酸、L−アスコルビン酸、マルトース、セロビオース、イソマルトース、ゲンチオビオース、メリビオース、ラクトース、マルツロース、ラクツロースなどである。
次に、本実施形態による半導体装置の製造方法について図2乃至図9を用いて説明する。
まず、例えばシリコンよりなる半導体基板10に、例えばLOCOS(LOCal Oxidation of Silicon)法により、素子領域14を画定する素子分離膜12を形成する。素子分離膜12は、STI(Shallow Trench Isolation)法により形成してもよい。
次いで、素子領域14上に、通常のMOSトランジスタの製造方法と同様にして、半導体基板10上にゲート絶縁膜16を介して形成されたゲート電極18と、ゲート電極18の両側の半導体基板10内に形成されたソース/ドレイン領域22とを有するMOSトランジスタ24を形成する(図2(a))。
次いで、MOSトランジスタ24が形成された半導体基板10上に、例えばCVD法により例えばシリコン酸化膜(SiO2)を形成する。
次いで、例えばCMP法によりこのシリコン酸化膜の表面を研磨して平坦化し、シリコン酸化膜よりなり表面が平坦化された層間絶縁膜26を形成する。
次いで、層間絶縁膜26上に、例えば膜厚50nmのストッパ膜28を形成する。ストッパ膜28は、後述する工程においてCMP法によりタングステン膜34等を研磨する際にストッパとして機能する。また、ストッパ膜28は、後述する工程において層間絶縁膜38等に配線溝46を形成する際に、エッチングストッパとしても機能する。
ストッパ膜28としては、例えばプラズマCVD法により形成したシリコン窒化(SiN)膜、水素化SiC膜(SiC:H膜)、水素化酸化SiC膜(SiC:O:H膜)、窒化SiC膜(SiC:N膜)等を用いる。なお、SiC:H膜とは、SiC膜中にH(水素)を存在させてなる膜である。SiC:O:H膜とは、SiC膜中にO(酸素)とH(水素)とを存在させてなる膜である。SiC:N膜とは、SiC膜中にN(窒素)を存在させてなる膜である。
次いで、フォトリソグラフィ及びドライエッチングにより、ストッパ膜28及び層間絶縁膜26に、ソース/ドレイン領域22に達するコンタクトホール30を形成する(図2(b))。
次いで、全面に、例えばスパッタ法により、例えば膜厚50nmのTiN膜よりなる密着層32を形成する。密着層32は、後述する導体プラグの下地に対する密着性を確保するためのものである。
次いで、密着層32上に、例えばCVD法により、例えば膜厚1μmのタングステン膜34を形成する。
次いで、例えばCMP法により、ストッパ膜28の表面が露出するまで、密着層32及びタングステン膜34を研磨する。こうして、コンタクトホール30内に埋め込まれた密着層32及びタングステン膜34よりなる導体プラグ35を形成する(図2(c))。
次いで、導体プラグ35が埋め込まれたストッパ膜28上に、例えば気相成長法、より具体的にはプラズマCVD法により、水素化酸化SiC膜(SiC:O:H膜)よりなる絶縁膜36を形成する。
SiC:O:H膜とは、上述したように、SiC膜中にO(酸素)とH(水素)とを存在させてなる膜のことである。SiC膜は電気的には半導体であるが、SiC:O:H膜は電気的には絶縁体である。絶縁膜36は、緻密性が高い絶縁膜である。絶縁膜36の密度は、後述する多孔質の層間絶縁膜38の密度より高い。絶縁膜36は、水分等の拡散を防止するバリア膜として機能するものである。絶縁膜36により、多孔質の層間絶縁膜38に水分等が達するのを防止することができ、多孔質の層間絶縁膜38の比誘電率が上昇するのを防止することが可能となる。
SiC:O:H膜よりなる絶縁膜36は、例えば以下のようにして形成する。
まず、プラズマCVD装置のチャンバ内に、半導体基板10を導入する。プラズマCVD装置としては、例えば平行平板型のプラズマCVD装置を用いる。
次いで、基板温度を300〜400℃に加熱する。
次いで、アルキル基を有するシロキサンモノマを気化装置により気化し、反応性ガスを生成する。そして、不活性ガスをキャリアとして、反応性ガスをチャンバ内に導入する。反応性ガスの供給量は、例えば1mg/minとする。この際、平板電極間に高周波電力を印加することにより、反応性ガスのプラズマが発生し、SiC:O:H膜が堆積される。
こうして、SiC:O:H膜よりなる絶縁膜36を形成する。
次いで、絶縁膜36上に、例えば膜厚160nmの多孔質の層間絶縁膜38を形成する(図3(a))。多孔質の層間絶縁膜38としては、例えば多孔質シリカを適用することができる。
多孔質シリカよりなる層間絶縁膜38は、例えば以下のようにして形成する。
まず、多孔質の層間絶縁膜38を形成するための絶縁膜材料を用意する。具体的には、例えば、テトラアルコキシシラン、トリアルコキシシラン、メチルトリアルコキシシラン、エチルトリアルコキシシラン、プロピルトリアルコキシシラン、フェニルトリアルコキシシラン、ビニルトリアルコキシシラン、アリルトリアルコキシシラン、グリシジルトリアルコキシシラン、ジアルコキシシラン、ジメチルジアルコキシシラン、ジエチルジアルコキシシラン、ジプロピルジアルコキシシラン、ジフェニルジアルコキシシラン、ジビニルジアルコキシシラン、ジアリルジアルコキシシラン、ジグリシジルジアルコキシシラン、フェニルメチルジアルコキシシラン、フェニルエチルジアルコキシシラン、フェニルプロピルトリアルコキシシラン、フェニルビニルジアルコキシシラン、フェニルアリルジアルコキシシラン、フェニルグリシジルジアルコキシシラン、メチルビニルジアルコキシシラン、エチルビニルジアルコキシシラン、プロピルビニルジアルコキシシラン等を原料として用いて加水分解反応や縮重合反応を起こさせてなるポリマに、熱分解性化合物を添加してなる、液状の絶縁膜材料を用意する。熱分解性化合物としては、例えばアクリル樹脂等を用いる。
次いで、例えばスピンコート法により、このように調整した絶縁膜材料を塗布する。塗布条件は、例えば3000回転/分、30秒とする。これにより、絶縁膜材料の塗布膜を形成する。
次いで、熱処理(ソフトベーク)を行う。これにより、絶縁材料の塗布膜が硬化して層間絶縁膜38が形成されるとともに、熱分解性化合物が熱分解されて層間絶縁膜38中には空孔(細孔)が形成される。空孔の直径は、例えば10〜20nm程度となる。
この熱処理には、例えばホットプレートを用いる。熱処理温度は200〜350℃の範囲、例えば200℃に設定する。熱処理温度を200〜350℃に設定するのは、以下のような理由によるものである。熱処理温度を200℃より低く設定した場合には、熱分解性化合物が十分に熱分解されず、空孔が十分に形成されないこととなる。また、熱処理温度を200℃より低く設定した場合には、熱分解性化合物が熱分解される速度が極めて遅く、空孔を形成するのに長時間を要してしまうこととなる。一方、熱処理温度を350℃より高く設定した場合には、絶縁膜材料の硬化が急速に進行してしまい、空孔の形成が阻害されてしまうこととなる。
こうして、多孔質シリカよりなる層間絶縁膜38を形成する。
次いで、層間絶縁膜38上に、緻密性の高い絶縁膜40を形成する(図3(b))。例えば気相成長法、より具体的にはプラズマCVD法により、シリコン酸化膜よりなる絶縁膜40を形成する。緻密性の高い絶縁膜とは、多孔質の層間絶縁膜38より密度の高い膜を意味する。
緻密性の高いシリコン酸化膜よりなる絶縁膜40は、例えば以下のようにして形成する。
まず、プラズマCVD装置のチャンバ内に半導体基板10を載置する。プラズマCVD装置としては、例えば平行平板型のプラズマCVD装置を用いる。
次いで、基板温度を、例えば400℃に設定する。
次いで、トリメチルシランを気化装置により気化し、反応性ガスを生成する。そして、不活性ガスをキャリアとして、反応性ガスをチャンバ内に導入する。次いで、平板電極間に高周波電力を印加し、反応性ガスのプラズマを発生する。この際、堆積レートを比較的遅く設定すれば、緻密性の高い絶縁膜40を形成することが可能となる。
具体的には、例えば、以下のように成膜条件を設定すれば、緻密性の高い絶縁膜40を形成することが可能である。反応性ガスの供給量は、例えば1mg/minとする。キャリアガスとしては、例えばCO2を用いる。キャリアガスの流量は、例えば100sccmとする。平板電極間に印加する高周波電力は、例えば、13.56MHz(200W)及び100kHz(200W)とする。平板電極間に高周波電力を印加してプラズマを発生させる時間は、例えば5秒間とする。
このような条件でシリコン酸化膜よりなる絶縁膜40を形成すると、絶縁膜40の密度は例えば2g/cm3程度となる。なお、ここでは、絶縁膜40の膜厚を例えば30nmとする。こうして、緻密性の高い絶縁膜40が、多孔質の層間絶縁膜38上に形成される。
次いで、全面に、例えばスピンコート法により、フォトレジスト膜42を形成する。
次いで、フォトリソグラフィにより、フォトレジスト膜42に開口部44を形成する。開口部44は、第1層目の配線51を形成するためのものである。例えば、配線幅が100nm、配線間隔が100nmとなるように、開口部44をフォトレジスト膜42に形成する。
次いで、フォトレジスト膜42をマスクとして、絶縁膜40、層間絶縁膜38及び絶縁膜36をエッチングする。エッチングを行う際には、CF4ガス及びCHF3ガスを原料としたフッ素プラズマを用いてエッチングを行う。この際、ストッパ膜28が、エッチングストッパとして機能する。こうして、絶縁膜40、層間絶縁膜38及び絶縁膜36に、配線を埋め込むための配線溝(トレンチ)46を形成する(図4(a))。導体プラグ34の上面は、配線溝内46に露出した状態となる。
次いで、例えばアッシングにより、フォトレジスト膜42を剥離する。
次いで、全面に、例えばスパッタ法により、例えば膜厚10nmのTaNよりなるバリア膜48を形成する。バリア膜48は、後述する配線中のCuが絶縁膜中に拡散するのを防止するためのものである。
次いで、バリア膜48上に、例えばスパッタ法により、例えば膜厚10nmのCuよりなるシード膜(図示せず)を形成する。シード膜は、電気めっき法によりCuよりなる配線を形成する際に、電極として機能するものである。
次いで、シード膜上に、例えば電気めっき法により、Cu膜を形成する。これにより、シード膜と併せたトータルの膜厚が例えば600nmのCu膜50を形成する。
次いで、CMP法により、絶縁膜の表面が露出するまで、Cu膜50及びバリア膜48を研磨する。こうして、配線溝46内に、バリア膜48及びCu膜50よりなる配線51が埋め込まれる。このような配線51の製造プロセスは、シングルダマシン法と称される。
次いで、全面に、例えばスピンコート法により、例えば膜厚50nmの無機SOG膜よりなる絶縁膜52を形成する(図4(b))。絶縁膜52は、水分の拡散及びCu配線からのCuの拡散を防止するバリア膜として機能するものである。絶縁膜52により、多孔質の層間絶縁膜38に水分及びCuが達するのが防止される。
絶縁膜52の形成方法について、図9を用いて具体的に説明する。なお、図9に示す工程断面図は配線51の形成部分のみに着目したものであり、基板82には配線51よりも下層の構造体が総て含まれるものである。
まず、絶縁膜52を形成するための塗布溶液を用意する。この塗布溶液は、銅に対して拡散バリア性を持つシリコン化合物に酸化銅を還元可能な有機化合物を添加した組成物を溶液にしたものである。
銅に対して拡散バリア性を持つシリコン化合物は、密度が1〜3g/cm3の範囲であり、銅に対する拡散バリア性を有していれば特に限定されるものではない。密度を1g/cm3以上とするのは、1g/cm3未満では膜が粗になりバリア性が低下するからである。また、密度を3g/cm3以下とするのは、3g/cm3を超えると誘電率が高くなりすぎるからである。シリコン化合物を用いるのは、誘電率が低い絶縁材料を形成できるからである。
銅に対して拡散バリア性を持つシリコン化合物としては、バリア性の高いSi−C結合やSi−N結合を多く含む物質が望ましい。Si−C結合を含むシリコン化合物としては、構造式
(式中、R
1,R
2は、互いに同一若しくは異なってもよく、それぞれ、水素原子を表すか、置換若しくは非置換のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基又はアルキル基を表し、nは10〜1000である。)
で表されるポリカルボシラン等を適用することができる。また、Si−N結合を含むシリコン化合物としては、構造式
(式中、R
1,R
2,R
3は、互いに同一若しくは異なってもよく、それぞれ、水素原子を表すか、置換若しくは非置換のアルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基又はアルキル基を表し、但しR
1,R
2,R
3のうち少なくとも1つは水素原子であり、nは100〜50000の数平均分子量を有するに必要な繰り返し単位の数である。)
で表されるポリシラザン等を適用することができる。
酸化銅を還元可能な有機化合物は、炭素数が4以上、沸点が50℃〜500℃のアルコール類、アルデヒド類、カルボン酸類、糖類等の還元性を持つ有機化合物である。特に、還元性の高いアルデヒド類は有効である。炭素数が4以上、沸点が50℃以上であるのは、酸化銅の還元の際に必要となる熱処理の際に急激に蒸発せずに還元反応に寄与させる必要があるからである。沸点が500℃以下であるのは、沸点が高すぎると酸化銅の還元処理後に膜中から蒸発させるのが困難となるからである。
このような有機化合物としては、例えば、ブタノ−ル、ペンタノ−ル、ヘキサノール、ヘプタノ−ル、オクタノール、ノナノ−ル、デカノール、シクロヘキサノール、フェノール、フェニルメタノール、ブタナール、ペンタナール、ヘキサナール、ヘプタナール、オクタナール、ノナナ−ル、デカナール、ベンジルアルコール、シクロペンタンカルボアルデヒド、ベンズアルデヒド、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、安息香酸、L−アスコルビン酸、マルトース、セロビオース、イソマルトース、ゲンチオビオース、メリビオース、ラクトース、マルツロース、ラクツロースなどが挙げられる。
この有機化合物は、絶縁膜形成用組成物の全体に占める割合は、1〜50wt%の範囲とすることが望ましい。1wt%以上とするのは、1wt%未満では有機化合物添加の効果が得られないからである。また、50wt%以下とするのは、50wt%を超える有機化合物を添加すると形成した絶縁膜の膜厚が薄くなりすぎるため好ましくないからである。
絶縁膜52を形成するための塗布溶液としては、例えば、キシレン溶液としたポリカルボシランを主原料として用い、ベンズアルデヒドを全体に対して25wt%添加することで調整することができる。
次いで、配線層51が形成された基板82を、スピンコータの処理室80内に搬入する。この際、配線51の表面には、薄い酸化銅膜84が形成されている(図9(a))。この酸化銅膜84は、処理室80内に搬入するまでの過程で銅からなる配線51が酸素を含む大気に曝された結果形成されるものである。
次いで、処理室80内において、配線層51が形成された基板82上に、スピンコート法により調整した上記塗布溶液を塗布する。塗布条件は、例えば3000回転/分、30秒とする。これにより、配線51上には、酸化銅膜84を介して絶縁膜52となる塗布膜86が形成される。
次いで、塗布膜86を形成した基板82を、スピンコータの処理室80内において、例えばホットプレート88を用いて熱処理する(図9(b))。この熱処理は、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気中で行うことが望ましい。これは、還元された銅が再度酸化されるのを防止するためである。
ここでは、温度を変化して2段階の熱処理を行うものとする。ただし、熱処理は必ずしも2段階で行う必要はなく、一定温度で一回の熱処理を行うようにしてもよい。熱処理の回数は、布溶液中の溶剤及び還元剤の沸点等に応じて適宜設定することが望ましい。
第1の熱処理は、主として酸化銅膜84を還元するための熱処理であり、熱処理温度を例えば350℃、熱処理時間を例えば600秒とする。熱処理条件は、塗布溶液中の還元剤の還元能力や沸点等に応じて適宜設定することが望ましい。
第2の熱処理は、主として塗布膜86を焼成して絶縁膜52を形成するための熱処理であり、熱処理温度を例えば450℃、熱処理時間を例えば1800秒とする。熱処理条件は、塗布溶液中の溶剤及び還元剤の沸点等に応じて適宜設定することが望ましい。
2段階の熱処理とすることにより、酸化銅還元用の有機化合物が急激に蒸発して酸化銅を十分に還元できなくなるのを防止するとともに、塗布膜86を確実に焼成することができる。
この2段階の熱処理により、酸化銅膜84を還元するとともに、還元剤としてのベンズアルデヒド及び溶剤が揮発し、清浄化された配線51の表面上には塗布膜86が焼成されてなる絶縁膜52が形成される(図9(c)、図4(b))。
次いで、絶縁膜52上に、多孔質の層間絶縁膜54を形成する。多孔質の層間絶縁膜54の形成方法には、例えば上述の層間絶縁膜38と同様の方法を適用できる。層間絶縁膜54の膜厚は、例えば180nmとする。
次いで、多孔質の層間絶縁膜54上の全面に、緻密性の高い絶縁膜56を形成する(図5(a))。緻密性の高い絶縁膜56の形成方法には、例えば上述の絶縁膜40と同様の方法を適用できる。絶縁膜56の材料としては、例えばSiC:O:H膜を用いる。絶縁膜56の膜厚は、例えば30nmとする。
次いで、絶縁膜56上に、多孔質の層間絶縁膜58を形成する。多孔質の層間絶縁膜58の形成方法には、例えば上述の層間絶縁膜38と同様の方法を適用できる。層間絶縁膜58の膜厚は、例えば160nmとする。
次いで、層間絶縁膜58上に、緻密性の高い絶縁膜60を形成する(図5(b))。緻密性の高い絶縁膜60の形成方法には、例えば上述の絶縁膜40と同様の方法を適用できる。絶縁膜60の材料としては、例えばSiC:O:H膜を用いる。絶縁膜60の膜厚は、例えば30nmとする。
次いで、全面に、例えばスピンコート法により、フォトレジスト膜62を形成する。
次いで、フォトリソグラフィにより、フォトレジスト膜62に開口部64を形成する。開口部64は、配線50に達するビアホール66を形成するためのものである。
次いで、フォトレジスト膜62をマスクとして、絶縁膜60、層間絶縁膜58、絶縁膜56、層間絶縁膜54及び絶縁膜52をエッチングする。このエッチングには、例えばCF4ガス及びCHF3ガスを原料としたフッ素プラズマを用いたプラズマエッチングを適用できる。エッチングガスの組成比やエッチングの際の圧力等を適宜変化させることにより、絶縁膜60、層間絶縁膜58、絶縁膜56、層間絶縁膜54及び絶縁膜52を順次エッチングすることが可能である。こうして、配線50に達するビアホール66を形成する(図6)。
次いで、例えばアッシングにより、フォトレジスト膜62を剥離する。
次いで、全面に、例えばスピンコート法により、フォトレジスト膜68を形成する。
次いで、フォトリソグラフィにより、フォトレジスト膜68に開口部70を形成する。
この開口部70は、第2層目の配線77a,77bを形成するためのものである。
次いで、フォトレジスト膜68をマスクとして、絶縁膜60、層間絶縁膜58及び絶縁膜56をエッチングする。このエッチングには、CF4ガス及びCHF3ガスを原料としたフッ素プラズマを用いたプラズマエッチングを適用できる。こうして、絶縁膜60、層間絶縁膜58及び絶縁膜56に、配線76aを埋め込むための配線溝72を形成する(図7)。配線溝72は、ビアホール66と繋がった状態となる。
次いで、例えばアッシングにより、フォトレジスト膜68を剥離する。
次いで、全面に、例えばスパッタ法により、膜厚10nmのTaNよりなるバリア膜74を形成する。バリア膜74は、後述する導体プラグ77a及び配線77b中のCuが絶縁膜中に拡散するのを防止するためのものである。
次いで、バリア膜74上に、例えばスパッタ法により、例えば膜厚10nmのCuよりなるシード膜(図示せず)を形成する。シード膜は、電気めっき法によりCuよりなる配線及び導体プラグを形成する際に、電極として機能するものである。
次いで、シード膜上に、例えば電気めっき法により、Cu膜を形成する。これにより、シード膜と併せたトータルの膜厚が例えば1400nmのCu膜76を形成する。
次いで、CMP法により、絶縁膜60の表面が露出するまで、Cu膜76及び積層膜48を研磨する。こうして、ビアホール66内にバリア膜74及びCu膜76よりなる導体プラグ77a埋め込まれるとともに、配線溝72内にバリア膜74及びCu膜76よりなる配線77bが埋め込まれる(図8)。導体プラグ77aと配線77bとは一体に形成される。このように導体プラグ76bと配線76aとを一括して形成する製造プロセスは、デュアルダマシン法と称される。
次いで、全面に、例えばスピンコート法により、例えば膜厚50nmの無機SOG膜よりなる絶縁膜78を形成する。絶縁膜78の形成方法には、例えば上述の絶縁膜52と同様の方法を適用できる。絶縁膜78は、水分の拡散及びCu配線からのCuの拡散を防止するバリア膜として機能するものである。
この後、必要に応じて上記と同様の工程を適宜繰り返し、図示しない第3層目の配線(第3金属配線層)が形成される。
こうして、本実施形態による半導体装置が製造される。
このように、本実施形態によれば、銅配線上に形成する水分及びCu拡散防止用の絶縁膜を形成する際に、銅に対して拡散バリア性を持つシリコン化合物に酸化銅を還元可能な有機化合物を添加した組成物を銅配線上に塗布し、熱処理により銅配線上の酸化銅を除去するとともに塗布膜を硬化して絶縁膜を形成するので、有機SOG膜により水分及びCu拡散防止用の絶縁膜を形成する場合であっても、酸化銅を還元した清浄な銅配線層上に低誘電率の絶縁膜を形成することができる。これにより、低誘電率で信頼性の高い積層絶縁膜構造体及び多層配線を得ることができる。また、この多層配線により、特に半導体装置の応答速度の高速化に寄与することができる。
以下に、本実施形態に関連する実施例1〜6及び比較例1,2を記載する。
[実施例1]
エタノール溶液としたポリカルボシランに、全体に対して25wt%のベンズアルデヒドを添加することにより、塗布溶液を調整した。
この塗布溶液を、シリコン基板上に電解メッキ法により形成した膜厚1μmの銅配線層上に、膜厚2μmでスピンコートした。次いで、不活性ガス雰囲気中で350℃、10分間の熱処理を行い、銅配線層の還元処理及び溶剤乾燥を行った。次いで、不活性ガス雰囲気中で450℃、30分間の熱処理を行い、塗布溶液を焼成して絶縁膜を形成した。
この試料について銅配線層の表面近傍における組成分析を行ったところ、従来の還元方式により成膜した無機SOG膜(後述の比較例1)及びCVD法により成膜したSiN膜(後述の比較例2)よりも銅配線層表面の酸素濃度が低かった。また、比較例2の試料と比較すると、Si−C結合の割合に違いが見られ、CVD法により形成した絶縁膜中におけるSi−C結合の割合の方が若干高めであった(表1参照)。
また、上記塗布液を、n+拡散層を形成したシリコン基板上にスピンコート法により塗布した。次いで、不活性ガス雰囲気中で350℃、10分間の熱処理及び450℃、30分間の熱処理を行い、絶縁膜を形成した。この絶縁膜に、クラックは認められなかった。次いで、この絶縁膜上に、上部電極として用いる金層を蒸着により形成した後、常法に従いレジストをマスクとして塩素系ガスでエッチングを行い、MOS構造を有する試料を作製した。
この試料を用いたプローバによる容量測定から算出した絶縁膜の誘電率は約3.0であり、比較例2の場合と比較して、誘電率を大幅に低減できた(表1参照)。
また、上記塗布溶液を、半導体素子及び第1層銅配線を形成したシリコン基板(銅配線の厚さは0.6μm、最小配線間隔は0.5μm)上に、スピンコート法により3000rpm、30秒の条件(シリコン基板上に2μm厚で塗布可能な条件)で塗布した。次いで、不活性ガス雰囲気中で350℃、10分間の熱処理を行い、銅配線層の還元処理及び溶剤乾燥を行った。次いで、不活性ガス雰囲気中で450℃、30分間の熱処理を行い、絶縁膜を形成した。次いで、この絶縁膜層上に、0.8μm厚のSiO2膜を形成後、常法に基づきパターンを形成し、フッ素ガスとアルゴンガスとの混合系でのエッチングを行ってスルーホールを形成してから、第2層銅配線を形成した。同様にして第3層銅配線まで形成した後、保護層として1.5μm厚のSiN膜を形成した。最後に、電極取り出し用の窓開けを行い、半導体装置を得た。
この半導体装置を、比較例1の無機SOG膜を用いて作成した半導体装置と比較したところ、約8%の配線遅延の低減が見られた。また、200℃、3000時間の高温放置を行った後の配線抵抗を測定したところ、本発明の還元方式により形成した絶縁膜を用いて作成した半導体装置では、比較例1の無機SOG膜を用いて作成した半導体装置に比べて約15%抵抗上昇を抑制することができた。
[実施例2]
エタノール溶液としたポリカルボシランに、全体に対して25wt%のベンジルアルコールを添加することにより、塗布溶液を調整した。
この塗布溶液を、シリコン基板上に電解メッキ法により形成した膜厚1μmの銅配線層上に、膜厚2μmでスピンコートした。次いで、不活性ガス雰囲気中で350℃、10分間の熱処理を行い、銅配線層の還元処理及び溶剤乾燥を行った。次いで、不活性ガス雰囲気中で450℃、30分間の熱処理を行い、塗布溶液を焼成して絶縁膜を形成した。
この試料について銅配線層の表面近傍における組成分析を行ったところ、比較例1の試料及び比較例2の試料よりも銅配線層表面の酸素濃度が低かった。また、比較例2の試料と比較すると、Si−C結合の割合に違いが見られ、CVD法により形成した絶縁膜中におけるSi−C結合の割合の方が若干高めであった(表1参照)。
また、上記塗布液を、n+拡散層を形成したシリコン基板上にスピンコート法により塗布した。次いで、不活性ガス雰囲気中で350℃、10分間の熱処理及び450℃、30分間の熱処理を行い、絶縁膜を形成した。この絶縁膜に、クラックは認められなかった。次いで、この絶縁膜上に、上部電極として用いる金層を蒸着により形成した後、常法に従いレジストをマスクとして塩素系ガスでエッチングを行い、MOS構造を有する試料を作製した。
この試料を用いたプローバによる容量測定から算出した絶縁膜の誘電率は約3.2であり、比較例2の場合と比較して、誘電率を大幅に低減できた(表1参照)。
また、上記塗布溶液を、半導体素子及び第1層銅配線を形成したシリコン基板(銅配線の厚さは0.6μm、最小配線間隔は0.5μm)上に、スピンコート法により3000rpm、30秒の条件(シリコン基板上に2μm厚で塗布可能な条件)で塗布した。次いで、不活性ガス雰囲気中で350℃、10分間の熱処理を行い、銅配線層の還元処理及び溶剤乾燥を行った。次いで、不活性ガス雰囲気中で450℃、30分間の熱処理を行い、絶縁膜を形成した。次いで、この絶縁膜層上に、0.8μm厚のSiO2膜を形成後、常法に基づきパターンを形成し、フッ素ガスとアルゴンガスとの混合系でのエッチングを行ってスルーホールを形成してから、第2層銅配線を形成した。同様にして第3層銅配線まで形成した後、保護層として1.5μm厚のSiN膜を形成した。最後に、電極取り出し用の窓開けを行い、半導体装置を得た。
この半導体装置を、比較例1の無機SOG膜を用いて作成した半導体装置と比較したところ、約8%の配線遅延の低減が見られた。また、200℃、3000時間の高温放置を行った後の配線抵抗を測定したところ、本発明の還元方式により形成した絶縁膜を用いて作成した半導体装置では、比較例1の無機SOG膜を用いて作成した半導体装置に比べて約13%抵抗上昇を抑制することができた。
[実施例3]
エーテル溶液としたポリカルボシランに、全体に対して25wt%のヘキサノールを添加することにより、塗布溶液を調整した。
この塗布溶液を、シリコン基板上に電解メッキ法により形成した膜厚1μmの銅配線層上に、膜厚2μmでスピンコートした。次いで、不活性ガス雰囲気中で400℃、10分間の熱処理を行い、銅配線層の還元処理及び溶剤乾燥を行った。次いで、不活性ガス雰囲気中で450℃、30分間の熱処理を行い、塗布溶液を焼成して絶縁膜を形成した。
この試料について銅配線層の表面近傍における組成分析を行ったところ、比較例1の試料及び比較例2の試料よりも銅配線層表面の酸素濃度が低かった。また、比較例2の試料と比較すると、Si−C結合の割合に違いが見られ、CVD法により形成した絶縁膜中におけるSi−C結合の割合の方が若干高めであった(表1参照)。
また、上記塗布液を、n+拡散層を形成したシリコン基板上にスピンコート法により塗布した。次いで、不活性ガス雰囲気中で400℃、10分間の熱処理及び450℃、30分間の熱処理を行い、絶縁膜を形成した。この絶縁膜に、クラックは認められなかった。次いで、この絶縁膜上に、上部電極として用いる金層を蒸着により形成した後、常法に従いレジストをマスクとして塩素系ガスでエッチングを行い、MOS構造を有する試料を作製した。
この試料を用いたプローバによる容量測定から算出した絶縁膜の誘電率は約3.4であり、比較例2の場合と比較して、誘電率を大幅に低減できた(表1参照)。
また、上記塗布溶液を、半導体素子及び第1層銅配線を形成したシリコン基板(銅配線の厚さは0.6μm、最小配線間隔は0.5μm)上に、スピンコート法により3000rpm、30秒の条件(シリコン基板上に2μm厚で塗布可能な条件)で塗布した。次いで、不活性ガス雰囲気中で400℃、10分間の熱処理を行い、銅配線層の還元処理及び溶剤乾燥を行った。次いで、不活性ガス雰囲気中で450℃、30分間の熱処理を行い、絶縁膜を形成した。次いで、この絶縁膜層上に、0.8μm厚のSiO2膜を形成後、常法に基づきパターンを形成し、フッ素ガスとアルゴンガスとの混合系でのエッチングを行ってスルーホールを形成してから、第2層銅配線を形成した。同様にして第3層銅配線まで形成した後、保護層として1.5μm厚のSiN膜を形成した。最後に、電極取り出し用の窓開けを行い、半導体装置を得た。
この半導体装置を、比較例1の無機SOG膜を用いて作成した半導体装置と比較したところ、約8%の配線遅延の低減が見られた。また、200℃、3000時間の高温放置を行った後の配線抵抗を測定したところ、本発明の還元方式により形成した絶縁膜を用いて作成した半導体装置では、比較例1の無機SOG膜を用いて作成した半導体装置に比べて約10%抵抗上昇を抑制することができた。
[実施例4]
エタノール溶液としたポリカルボシランに、全体に対して25wt%のブタン酸を添加することにより、塗布溶液を調整した。
この塗布溶液を、シリコン基板上に電解メッキ法により形成した膜厚1μmの銅配線層上に、膜厚2μmでスピンコートした。次いで、不活性ガス雰囲気中で300℃、10分間の熱処理を行い、銅配線層の還元処理及び溶剤乾燥を行った。次いで、不活性ガス雰囲気中で400℃、30分間の熱処理を行い、塗布溶液を焼成して絶縁膜を形成した。
この試料について銅配線層の表面近傍における組成分析を行ったところ、比較例1の試料よりも銅配線層表面の酸素濃度が低かった。また、比較例2の試料と比較すると、Si−C結合の割合に違いが見られ、CVD法により形成した絶縁膜中におけるSi−C結合の割合の方が若干高めであった(表1参照)。
また、上記塗布液を、n+拡散層を形成したシリコン基板上にスピンコート法により塗布した。次いで、不活性ガス雰囲気中で300℃、10分間の熱処理及び400℃、30分間の熱処理を行い、絶縁膜を形成した。この絶縁膜に、クラックは認められなかった。次いで、この絶縁膜上に、上部電極として用いる金層を蒸着により形成した後、常法に従いレジストをマスクとして塩素系ガスでエッチングを行い、MOS構造を有する試料を作製した。
この試料を用いたプローバによる容量測定から算出した絶縁膜の誘電率は約3.4であり、比較例2の場合と比較して、誘電率を大幅に低減できた(表1参照)。
また、上記塗布溶液を、半導体素子及び第1層銅配線を形成したシリコン基板(銅配線の厚さは0.6μm、最小配線間隔は0.5μm)上に、スピンコート法により3000rpm、30秒の条件(シリコン基板上に2μm厚で塗布可能な条件)で塗布した。次いで、不活性ガス雰囲気中で300℃、10分間の熱処理を行い、銅配線層の還元処理及び溶剤乾燥を行った。次いで、不活性ガス雰囲気中で400℃、30分間の熱処理を行い、絶縁膜を形成した。次いで、この絶縁膜層上に、0.8μm厚のSiO2膜を形成後、常法に基づきパターンを形成し、フッ素ガスとアルゴンガスとの混合系でのエッチングを行ってスルーホールを形成してから、第2層銅配線を形成した。同様にして第3層銅配線まで形成した後、保護層として1.5μm厚のSiN膜を形成した。最後に、電極取り出し用の窓開けを行い、半導体装置を得た。
この半導体装置を、比較例1の無機SOG膜を用いて作成した半導体装置と比較したところ、約10%の配線遅延の低減が見られた。また、200℃、3000時間の高温放置を行った後の配線抵抗を測定したところ、本発明の還元方式により形成した絶縁膜を用いて作成した半導体装置では、比較例1の無機SOG膜を用いて作成した半導体装置に比べて約13%抵抗上昇を抑制することができた。
[実施例5]
デカノール溶液としたポリカルボシランに、全体に対して25wt%のデカナールを添加することにより、塗布溶液を調整した。
この塗布溶液を、シリコン基板上に電解メッキ法により形成した膜厚1μmの銅配線層上に、膜厚2μmでスピンコートした。次いで、不活性ガス雰囲気中で300℃、10分間の熱処理を行い、銅配線層の還元処理及び溶剤乾燥を行った。次いで、不活性ガス雰囲気中で400℃、30分間の熱処理を行い、塗布溶液を焼成して絶縁膜を形成した。
この試料について銅配線層の表面近傍における組成分析を行ったところ、比較例1の試料及び比較例2の試料よりも銅配線層表面の酸素濃度が低かった。また、比較例2の試料と比較すると、Si−C結合の割合に違いが見られ、CVD法により形成した絶縁膜中におけるSi−C結合の割合の方が若干高めであった(表1参照)。
また、上記塗布液を、n+拡散層を形成したシリコン基板上にスピンコート法により塗布した。次いで、不活性ガス雰囲気中で300℃、10分間の熱処理及び400℃、30分間の熱処理を行い、絶縁膜を形成した。この絶縁膜に、クラックは認められなかった。次いで、この絶縁膜上に、上部電極として用いる金層を蒸着により形成した後、常法に従いレジストをマスクとして塩素系ガスでエッチングを行い、MOS構造を有する試料を作製した。
この試料を用いたプローバによる容量測定から算出した絶縁膜の誘電率は約3.0であり、比較例2の場合と比較して、誘電率を大幅に低減できた(表1参照)。
また、上記塗布溶液を、半導体素子及び第1層銅配線を形成したシリコン基板(銅配線の厚さは0.6μm、最小配線間隔は0.5μm)上に、スピンコート法により3000rpm、30秒の条件(シリコン基板上に2μm厚で塗布可能な条件)で塗布した。次いで、不活性ガス雰囲気中で300℃、10分間の熱処理を行い、銅配線層の還元処理及び溶剤乾燥を行った。次いで、不活性ガス雰囲気中で400℃、30分間の熱処理を行い、絶縁膜を形成した。次いで、この絶縁膜層上に、0.8μm厚のSiO2膜を形成後、常法に基づきパターンを形成し、フッ素ガスとアルゴンガスとの混合系でのエッチングを行ってスルーホールを形成してから、第2層銅配線を形成した。同様にして第3層銅配線まで形成した後、保護層として1.5μm厚のSiN膜を形成した。最後に、電極取り出し用の窓開けを行い、半導体装置を得た。
この半導体装置を、比較例1の無機SOG膜を用いて作成した半導体装置と比較したところ、約9%の配線遅延の低減が見られた。また、200℃、3000時間の高温放置を行った後の配線抵抗を測定したところ、本発明の還元方式により形成した絶縁膜を用いて作成した半導体装置では、比較例1の無機SOG膜を用いて作成した半導体装置に比べて約11%抵抗上昇を抑制することができた。
[実施例6]
エタノール溶液としたポリカルボシランに、全体に対して25wt%のデカン酸を添加することにより、塗布溶液を調整した。
この塗布溶液を、シリコン基板上に電解メッキ法により形成した膜厚1μmの銅配線層上に、膜厚2μmでスピンコートした。次いで、不活性ガス雰囲気中で300℃、10分間の熱処理を行い、銅配線層の還元処理及び溶剤乾燥を行った。次いで、不活性ガス雰囲気中で400℃、30分間の熱処理を行い、塗布溶液を焼成して絶縁膜を形成した。
この試料について銅配線層の表面近傍における組成分析を行ったところ、比較例1の試料及び比較例2の試料よりも銅配線層表面の酸素濃度が低かった。また、比較例2の試料と比較すると、Si−C結合の割合に違いが見られ、CVD法により形成した絶縁膜中におけるSi−C結合の割合の方が若干高めであった(表1参照)。
また、上記塗布液を、n+拡散層を形成したシリコン基板上にスピンコート法により塗布した。次いで、不活性ガス雰囲気中で300℃、10分間の熱処理及び400℃、30分間の熱処理を行い、絶縁膜を形成した。この絶縁膜に、クラックは認められなかった。次いで、この絶縁膜上に、上部電極として用いる金層を蒸着により形成した後、常法に従いレジストをマスクとして塩素系ガスでエッチングを行い、MOS構造を有する試料を作製した。
この試料を用いたプローバによる容量測定から算出した絶縁膜の誘電率は約3.3であり、比較例2の場合と比較して、誘電率を大幅に低減できた(表1参照)。
また、上記塗布溶液を、半導体素子及び第1層銅配線を形成したシリコン基板(銅配線の厚さは0.6μm、最小配線間隔は0.5μm)上に、スピンコート法により3000rpm、30秒の条件(シリコン基板上に2μm厚で塗布可能な条件)で塗布した。次いで、不活性ガス雰囲気中で300℃、10分間の熱処理を行い、銅配線層の還元処理及び溶剤乾燥を行った。次いで、不活性ガス雰囲気中で400℃、30分間の熱処理を行い、絶縁膜を形成した。次いで、この絶縁膜層上に、0.8μm厚のSiO2膜を形成後、常法に基づきパターンを形成し、フッ素ガスとアルゴンガスとの混合系でのエッチングを行ってスルーホールを形成してから、第2層銅配線を形成した。同様にして第3層銅配線まで形成した後、保護層として1.5μm厚のSiN膜を形成した。最後に、電極取り出し用の窓開けを行い、半導体装置を得た。
この半導体装置を、比較例1の無機SOG膜を用いて作成した半導体装置と比較したところ、約10%の配線遅延の低減が見られた。また、200℃、3000時間の高温放置を行った後の配線抵抗を測定したところ、本発明の還元方式により形成した絶縁膜を用いて作成した半導体装置では、比較例1の無機SOG膜を用いて作成した半導体装置に比べて約13%抵抗上昇を抑制することができた。
[比較例1]
銅配線を形成したシリコン基板を真空チャンバ内で熱処理し、酸化銅の還元処理を行った。次いで、スピンコータにより、エタノール溶液としたポリカルボシランを膜厚2μmでスピンコートした。次いで、不活性ガス雰囲気中で、350℃10分間及び450℃、30分間の熱処理を行って塗布溶液を焼成し、有機SOG膜を形成した。
測定用試料の作成方法は、絶縁膜の形成方法を除き上記第1乃至第6実施例の場合と同様である。
[比較例2]
銅配線を形成したシリコン基板をCVD装置の成膜チャンバ内で熱処理し、酸化銅の還元処理を行った。次いで、この成膜チャンバ内に成膜用ガスを導入し、所定膜厚のSiN膜を形成した。
測定用試料の作成方法は、絶縁膜の形成方法を除き上記第1乃至第6実施例の場合と同様である。
表1に、実施例1〜6及び比較例1,2の評価結果をまとめる。
[第2実施形態]
本発明の第2実施形態による半導体装置及びその製造方法について図10を用いて説明する。なお、図1乃至図10に示す第1実施形態による半導体装置及びその製造方法と同様の構成要素には同一の符号を付し説明を省略し或いは簡潔にする。
図10は本実施形態による半導体装置の製造方法を示す工程断面図である。
本実施形態では、図1に示す第1実施形態による半導体装置の他の製造方法について説明する。
本実施形態による半導体装置の製造方法は、水分の拡散及びCu配線からのCuの拡散を防止するバリア膜として機能する絶縁膜52,78の製造方法が異なる他は、第1実施形態による半導体装置の製造方法と同様である。
まず、例えば図2(a)乃至図4(b)に示す第1実施形態による半導体装置の製造方法と同様にして、絶縁膜36、層間絶縁膜38及び絶縁膜40に埋め込まれた配線51を形成する。
次いで、全面に、例えばスピンコート法により、例えば膜厚50nmの無機SOG膜よりなる絶縁膜52を形成する。絶縁膜52は、水分の拡散及びCu配線からのCuの拡散を防止するバリア膜として機能するものである。絶縁膜52により、多孔質の層間絶縁膜38に水分及びCuが達するのが防止される。
絶縁膜52の形成方法について、図10を用いて具体的に説明する。なお、図10に示す工程断面図は配線51の形成部分のみに着目したものであり、基板82には配線51よりも下層の構造体が総て含まれるものである。
まず、配線層51が形成された基板82を、スピンコータの処理室80内に搬入する。この際、配線51の表面には、薄い酸化銅膜84が形成されている(図10(a))。この酸化銅膜84は、処理室80内に搬入するまでの過程で銅からなる配線51が酸素を含む大気に曝された結果形成されるものである。
次いで、処理室80内において、配線層51が形成された基板82上に、酸化銅を還元可能な有機化合物、例えばベンズアルデヒドをスピンコート法により塗布し、有機化合物膜90を形成する。この有機化合物は、第1実施形態による半導体装置の製造方法において絶縁膜52形成用の塗布溶液に添加したものと同じであり、ベンズアルデヒドのほか、炭素数が4以上、沸点が50℃〜500℃のアルコール類、アルデヒド類、カルボン酸類、糖類等の還元性を持つ有機化合物を適用することができる。
次いで、有機化合物膜90を形成した基板82を、スピンコータの処理室80内において、例えばホットプレート88を用いて熱処理する(図10(b))。この熱処理は、主として酸化銅膜84を還元するための熱処理であり、熱処理温度を例えば350℃、熱処理時間を例えば600秒とする。熱処理条件は、塗布溶液中の還元剤の還元能力や沸点等に応じて適宜設定することが望ましい。この熱処理は、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気中で行うことが望ましい。これは、還元された銅が再度酸化されるのを防止するためである。
この熱処理により、配線51表面の酸化銅膜84は還元されるとともに、還元剤としてのベンズアルデヒドが揮発し、清浄化された配線51の表面が露出される(図10(c))。この際、処理室80内を不活性ガスで充填しておくことにより、配線51の表面が再三化されることを防止することができる。
次いで、全面に、例えばスピンコート法により、Cuに対して拡散バリア性を持つ絶縁膜材料、例えばキシレン溶液としたポリカルボシランを塗布する。塗布条件は、例えば3000回転/分、30秒とする。これにより、配線51が埋め込まれた絶縁膜40上に、絶縁膜52となる塗布膜を形成する。Cuに対して拡散バリア性を持つ絶縁膜材料は、第1実施形態による半導体装置の製造方法において絶縁膜52の形成に用いた塗布溶液の主剤と同じであり、密度が1〜3g/cm3の範囲であるシリコン化合物を適用することができる。
この際、同じスピンコータの処理室80内において、熱処理後に連続して絶縁膜52となる塗布膜を形成することにより、酸化銅が形成されていない清浄な配線51の表面上に塗布膜を形成することができる。
次いで、絶縁膜52となる塗布膜を塗布したと同じスピンコータの処理室80内において、例えばホットプレートを用いて熱処理する。この熱処理は、主として塗布膜86を焼成して絶縁膜52を形成するための熱処理であり、熱処理温度を例えば450℃、熱処理時間を例えば1800秒とする。熱処理条件は、溶剤の沸点等に応じて適宜設定することが望ましい。また、この熱処理は、窒素やアルゴン等の不活性ガス雰囲気中で行うことが望ましい。これは、還元された銅が再度酸化されるのを防止するためである。
この熱処理により、塗布膜中の溶剤が揮発し、清浄化された配線51の表面上には塗布膜が焼成されてなる絶縁膜52が形成される(図10(d))。
この後、例えば図5(a)乃至図8に示す第1実施形態による半導体装置の製造方法と同様にして、半導体装置を完成する。
このように、本実施形態によれば、銅配線上に形成する水分及びCu拡散防止用の絶縁膜を形成する際に、同一の処理室内において連続して、酸化銅を還元可能な有機化合物を銅配線上に塗布して熱処理を行い銅配線上の酸化銅を除去し、銅に対して拡散バリア性を持つシリコン化合物を銅配線上に塗布して熱処理を行い絶縁膜を形成するので、有機SOG膜により水分及びCu拡散防止用の絶縁膜を形成する場合であっても、酸化銅を還元した清浄な銅配線層上に低誘電率の絶縁膜を形成することができる。これにより、低誘電率で信頼性の高い積層絶縁膜構造体及び多層配線を得ることができる。また、この多層配線により、特に半導体装置の応答速度の高速化に寄与することができる。
以下に、本実施形態に関連する実施例7〜12を記載する。
[実施例7]
シリコン基板上に、電解メッキ法により膜厚1μmの銅配線層を形成した。次いで、銅配線層上にベンズアルデヒドをスピンコートにより塗布した後、350℃、10分間の熱処理を行い、銅配線層の還元処理及び溶剤乾燥を行った。次いで、銅配線層上にキシレン溶液としたポリカルボシランを膜厚2μmでスピンコートした後、450℃、30分間の熱処理を行い、塗布溶液を焼成して絶縁膜を形成した。還元処理から絶縁膜形成までの一連の工程は、同一のスピンコータ内において連続処理した。
この試料について銅配線層の表面近傍における組成分析を行ったところ、比較例1の試料及び比較例2の試料よりも銅配線層表面の酸素濃度が低かった。また、比較例2の試料と比較すると、Si−C結合の割合に違いが見られ、CVD法により形成した絶縁膜中におけるSi−C結合の割合の方が若干高めであった(表2参照)。
また、n+拡散層を形成したシリコン基板上に、ベンズアルデヒドをスピンコートにより塗布した後、350℃、10分間の熱処理を行った。次いで、キシレン溶液としたポリカルボシランを膜厚2μmでスピンコートした後、450℃、30分間の熱処理を行い、塗布溶液を焼成して絶縁膜を形成した。上記一連の工程は、同一のスピンコータ内において連続処理した。この絶縁膜に、クラックは認められなかった。次いで、この絶縁膜上に、上部電極として用いる金層を蒸着により形成した後、常法に従いレジストをマスクとして塩素系ガスでエッチングを行い、MOS構造を有する試料を作製した。
この試料を用いたプローバによる容量測定から算出した絶縁膜の誘電率は約3.1であり、比較例2の場合と比較して、誘電率を大幅に低減できた(表2参照)。
また、半導体素子及び第1層銅配線を形成したシリコン基板(銅配線の厚さは0.6μm、最小配線間隔は0.5μm)上に、ベンズアルデヒドをスピンコートにより塗布した後、350℃、10分間の熱処理を行い、銅配線層の還元処理及び溶剤乾燥を行った。次いで、銅配線層上にキシレン溶液としたポリカルボシランを3000rpm、30秒の条件(シリコン基板上に2μm厚で塗布可能な条件)で塗布した後、不活性ガス雰囲気中で450℃、30分間の熱処理を行い、塗布溶液を焼成して絶縁膜を形成した。還元処理から絶縁膜形成までの一連の工程は、同一のスピンコータ内において連続処理した。次いで、この絶縁膜層上に、0.8μm厚のSiO2膜を形成後、常法に基づきパターンを形成し、フッ素ガスとアルゴンガスとの混合系でのエッチングを行ってスルーホールを形成してから、第2層銅配線を形成した。同様にして第3層銅配線まで形成した後、保護層として1.5μm厚のSiN膜を形成した。最後に、電極取り出し用の窓開けを行い、半導体装置を得た。
この半導体装置を、比較例1の無機SOG膜を用いて作成した半導体装置と比較したところ、約7%の配線遅延の低減が見られた。また、200℃、3000時間の高温放置を行った後の配線抵抗を測定したところ、本発明の還元方式により形成した絶縁膜を用いて作成した半導体装置では、比較例1の無機SOG膜を用いて作成した半導体装置に比べて約9%抵抗上昇を抑制することができた。
[実施例8]
シリコン基板上に、電解メッキ法により膜厚1μmの銅配線層を形成した。次いで、銅配線層上にベンジルアルコールをスピンコートにより塗布した後、350℃、10分間の熱処理を行い、銅配線層の還元処理及び溶剤乾燥を行った。次いで、銅配線層上にキシレン溶液としたポリカルボシランを膜厚2μmでスピンコートした後、450℃、30分間の熱処理を行い、塗布溶液を焼成して絶縁膜を形成した。還元処理から絶縁膜形成までの一連の工程は、同一のスピンコータ内において連続処理した。
この試料について銅配線層の表面近傍における組成分析を行ったところ、比較例1の試料の試料よりも銅配線層表面の酸素濃度が低かった。また、比較例2の試料と比較すると、Si−C結合の割合に違いが見られ、CVD法により形成した絶縁膜中におけるSi−C結合の割合の方が若干高めであった(表2参照)。
また、n+拡散層を形成したシリコン基板上に、ベンジルアルコールをスピンコートにより塗布した後、350℃、10分間の熱処理を行った。次いで、キシレン溶液としたポリカルボシランを膜厚2μmでスピンコートした後、450℃、30分間の熱処理を行い、塗布溶液を焼成して絶縁膜を形成した。上記一連の工程は、同一のスピンコータ内において連続処理した。この絶縁膜に、クラックは認められなかった。次いで、この絶縁膜上に、上部電極として用いる金層を蒸着により形成した後、常法に従いレジストをマスクとして塩素系ガスでエッチングを行い、MOS構造を有する試料を作製した。
この試料を用いたプローバによる容量測定から算出した絶縁膜の誘電率は約2.9であり、比較例2の場合と比較して、誘電率を大幅に低減できた(表2参照)。
また、半導体素子及び第1層銅配線を形成したシリコン基板(銅配線の厚さは0.6μm、最小配線間隔は0.5μm)上に、ベンジルアルコールをスピンコートにより塗布した後、350℃、10分間の熱処理を行い、銅配線層の還元処理及び溶剤乾燥を行った。次いで、銅配線層上にキシレン溶液としたポリカルボシランを3000rpm、30秒の条件(シリコン基板上に2μm厚で塗布可能な条件)で塗布した後、不活性ガス雰囲気中で450℃、30分間の熱処理を行い、塗布溶液を焼成して絶縁膜を形成した。還元処理から絶縁膜形成までの一連の工程は、同一のスピンコータ内において連続処理した。次いで、この絶縁膜層上に、0.8μm厚のSiO2膜を形成後、常法に基づきパターンを形成し、フッ素ガスとアルゴンガスとの混合系でのエッチングを行ってスルーホールを形成してから、第2層銅配線を形成した。同様にして第3層銅配線まで形成した後、保護層として1.5μm厚のSiN膜を形成した。最後に、電極取り出し用の窓開けを行い、半導体装置を得た。
この半導体装置を、比較例1の無機SOG膜を用いて作成した半導体装置と比較したところ、約6%の配線遅延の低減が見られた。また、200℃、3000時間の高温放置を行った後の配線抵抗を測定したところ、本発明の還元方式により形成した絶縁膜を用いて作成した半導体装置では、比較例1の無機SOG膜を用いて作成した半導体装置に比べて約10%抵抗上昇を抑制することができた。
[実施例9]
シリコン基板上に、電解メッキ法により膜厚1μmの銅配線層を形成した。次いで、銅配線層上にヘキサノールをスピンコートにより塗布した後、400℃、10分間の熱処理を行い、銅配線層の還元処理及び溶剤乾燥を行った。次いで、銅配線層上にキシレン溶液としたポリカルボシランを膜厚2μmでスピンコートした後、450℃、30分間の熱処理を行い、塗布溶液を焼成して絶縁膜を形成した。還元処理から絶縁膜形成までの一連の工程は、同一のスピンコータ内において連続処理した。
この試料について銅配線層の表面近傍における組成分析を行ったところ、比較例1の試料の試料よりも銅配線層表面の酸素濃度が低かった。また、比較例2の試料と比較すると、Si−C結合の割合に違いが見られ、CVD法により形成した絶縁膜中におけるSi−C結合の割合の方が若干高めであった(表2参照)。
また、n+拡散層を形成したシリコン基板上に、ヘキサノールをスピンコートにより塗布した後、400℃、10分間の熱処理を行った。次いで、キシレン溶液としたポリカルボシランを膜厚2μmでスピンコートした後、450℃、30分間の熱処理を行い、塗布溶液を焼成して絶縁膜を形成した。上記一連の工程は、同一のスピンコータ内において連続処理した。この絶縁膜に、クラックは認められなかった。次いで、この絶縁膜上に、上部電極として用いる金層を蒸着により形成した後、常法に従いレジストをマスクとして塩素系ガスでエッチングを行い、MOS構造を有する試料を作製した。
この試料を用いたプローバによる容量測定から算出した絶縁膜の誘電率は約3.1であり、比較例2の場合と比較して、誘電率を大幅に低減できた(表2参照)。
また、半導体素子及び第1層銅配線を形成したシリコン基板(銅配線の厚さは0.6μm、最小配線間隔は0.5μm)上に、ヘキサノールをスピンコートにより塗布した後、400℃、10分間の熱処理を行い、銅配線層の還元処理及び溶剤乾燥を行った。次いで、銅配線層上にキシレン溶液としたポリカルボシランを3000rpm、30秒の条件(シリコン基板上に2μm厚で塗布可能な条件)で塗布した後、不活性ガス雰囲気中で450℃、30分間の熱処理を行い、塗布溶液を焼成して絶縁膜を形成した。還元処理から絶縁膜形成までの一連の工程は、同一のスピンコータ内において連続処理した。次いで、この絶縁膜層上に、0.8μm厚のSiO2膜を形成後、常法に基づきパターンを形成し、フッ素ガスとアルゴンガスとの混合系でのエッチングを行ってスルーホールを形成してから、第2層銅配線を形成した。同様にして第3層銅配線まで形成した後、保護層として1.5μm厚のSiN膜を形成した。最後に、電極取り出し用の窓開けを行い、半導体装置を得た。
この半導体装置を、比較例1の無機SOG膜を用いて作成した半導体装置と比較したところ、約10%の配線遅延の低減が見られた。また、200℃、3000時間の高温放置を行った後の配線抵抗を測定したところ、本発明の還元方式により形成した絶縁膜を用いて作成した半導体装置では、比較例1の無機SOG膜を用いて作成した半導体装置に比べて約12%抵抗上昇を抑制することができた。
[実施例10]
シリコン基板上に、電解メッキ法により膜厚1μmの銅配線層を形成した。次いで、銅配線層上にブタン酸をスピンコートにより塗布した後、400℃、10分間の熱処理を行い、銅配線層の還元処理及び溶剤乾燥を行った。次いで、銅配線層上にキシレン溶液としたポリカルボシランを膜厚2μmでスピンコートした後、450℃、30分間の熱処理を行い、塗布溶液を焼成して絶縁膜を形成した。還元処理から絶縁膜形成までの一連の工程は、同一のスピンコータ内において連続処理した。
この試料について銅配線層の表面近傍における組成分析を行ったところ、比較例1の試料の試料よりも銅配線層表面の酸素濃度が低かった。また、比較例2の試料と比較すると、Si−C結合の割合に違いが見られ、CVD法により形成した絶縁膜中におけるSi−C結合の割合の方が若干高めであった(表2参照)。
また、n+拡散層を形成したシリコン基板上に、ブタン酸をスピンコートにより塗布した後、400℃、10分間の熱処理を行った。次いで、キシレン溶液としたポリカルボシランを膜厚2μmでスピンコートした後、450℃、30分間の熱処理を行い、塗布溶液を焼成して絶縁膜を形成した。上記一連の工程は、同一のスピンコータ内において連続処理した。この絶縁膜に、クラックは認められなかった。次いで、この絶縁膜上に、上部電極として用いる金層を蒸着により形成した後、常法に従いレジストをマスクとして塩素系ガスでエッチングを行い、MOS構造を有する試料を作製した。
この試料を用いたプローバによる容量測定から算出した絶縁膜の誘電率は約3.2であり、比較例2の場合と比較して、誘電率を大幅に低減できた(表2参照)。
また、半導体素子及び第1層銅配線を形成したシリコン基板(銅配線の厚さは0.6μm、最小配線間隔は0.5μm)上に、ブタン酸をスピンコートにより塗布した後、400℃、10分間の熱処理を行い、銅配線層の還元処理及び溶剤乾燥を行った。次いで、銅配線層上にキシレン溶液としたポリカルボシランを3000rpm、30秒の条件(シリコン基板上に2μm厚で塗布可能な条件)で塗布した後、不活性ガス雰囲気中で450℃、30分間の熱処理を行い、塗布溶液を焼成して絶縁膜を形成した。還元処理から絶縁膜形成までの一連の工程は、同一のスピンコータ内において連続処理した。次いで、この絶縁膜層上に、0.8μm厚のSiO2膜を形成後、常法に基づきパターンを形成し、フッ素ガスとアルゴンガスとの混合系でのエッチングを行ってスルーホールを形成してから、第2層銅配線を形成した。同様にして第3層銅配線まで形成した後、保護層として1.5μm厚のSiN膜を形成した。最後に、電極取り出し用の窓開けを行い、半導体装置を得た。
この半導体装置を、比較例1の無機SOG膜を用いて作成した半導体装置と比較したところ、約7%の配線遅延の低減が見られた。また、200℃、3000時間の高温放置を行った後の配線抵抗を測定したところ、本発明の還元方式により形成した絶縁膜を用いて作成した半導体装置では、比較例1の無機SOG膜を用いて作成した半導体装置に比べて約10%抵抗上昇を抑制することができた。
[実施例11]
シリコン基板上に、電解メッキ法により膜厚1μmの銅配線層を形成した。次いで、銅配線層上にデカナールをスピンコートにより塗布した後、300℃、10分間の熱処理を行い、銅配線層の還元処理及び溶剤乾燥を行った。次いで、銅配線層上にキシレン溶液としたポリカルボシランを膜厚2μmでスピンコートした後、400℃、30分間の熱処理を行い、塗布溶液を焼成して絶縁膜を形成した。還元処理から絶縁膜形成までの一連の工程は、同一のスピンコータ内において連続処理した。
この試料について銅配線層の表面近傍における組成分析を行ったところ、比較例1の試料及び比較例2の試料よりも銅配線層表面の酸素濃度が低かった。また、比較例2の試料と比較すると、Si−C結合の割合に違いが見られ、CVD法により形成した絶縁膜中におけるSi−C結合の割合の方が若干高めであった(表2参照)。
また、n+拡散層を形成したシリコン基板上に、デカナールをスピンコートにより塗布した後、300℃、10分間の熱処理を行った。次いで、キシレン溶液としたポリカルボシランを膜厚2μmでスピンコートした後、400℃、30分間の熱処理を行い、塗布溶液を焼成して絶縁膜を形成した。上記一連の工程は、同一のスピンコータ内において連続処理した。この絶縁膜に、クラックは認められなかった。次いで、この絶縁膜上に、上部電極として用いる金層を蒸着により形成した後、常法に従いレジストをマスクとして塩素系ガスでエッチングを行い、MOS構造を有する試料を作製した。
この試料を用いたプローバによる容量測定から算出した絶縁膜の誘電率は約3.2であり、比較例2の場合と比較して、誘電率を大幅に低減できた(表2参照)。
また、半導体素子及び第1層銅配線を形成したシリコン基板(銅配線の厚さは0.6μm、最小配線間隔は0.5μm)上に、デカナールをスピンコートにより塗布した後、300℃、10分間の熱処理を行い、銅配線層の還元処理及び溶剤乾燥を行った。次いで、銅配線層上にキシレン溶液としたポリカルボシランを3000rpm、30秒の条件(シリコン基板上に2μm厚で塗布可能な条件)で塗布した後、不活性ガス雰囲気中で400℃、30分間の熱処理を行い、塗布溶液を焼成して絶縁膜を形成した。還元処理から絶縁膜形成までの一連の工程は、同一のスピンコータ内において連続処理した。次いで、この絶縁膜層上に、0.8μm厚のSiO2膜を形成後、常法に基づきパターンを形成し、フッ素ガスとアルゴンガスとの混合系でのエッチングを行ってスルーホールを形成してから、第2層銅配線を形成した。同様にして第3層銅配線まで形成した後、保護層として1.5μm厚のSiN膜を形成した。最後に、電極取り出し用の窓開けを行い、半導体装置を得た。
この半導体装置を、比較例1の無機SOG膜を用いて作成した半導体装置と比較したところ、約9%の配線遅延の低減が見られた。また、200℃、3000時間の高温放置を行った後の配線抵抗を測定したところ、本発明の還元方式により形成した絶縁膜を用いて作成した半導体装置では、比較例1の無機SOG膜を用いて作成した半導体装置に比べて約11%抵抗上昇を抑制することができた。
[実施例12]
シリコン基板上に、電解メッキ法により膜厚1μmの銅配線層を形成した。次いで、銅配線層上にデカン酸をスピンコートにより塗布した後、300℃、10分間の熱処理を行い、銅配線層の還元処理及び溶剤乾燥を行った。次いで、銅配線層上にキシレン溶液としたポリカルボシランを膜厚2μmでスピンコートした後、400℃、30分間の熱処理を行い、塗布溶液を焼成して絶縁膜を形成した。還元処理から絶縁膜形成までの一連の工程は、同一のスピンコータ内において連続処理した。
この試料について銅配線層の表面近傍における組成分析を行ったところ、比較例1の試料よりも銅配線層表面の酸素濃度が低かった。また、比較例2の試料と比較すると、Si−C結合の割合に違いが見られ、CVD法により形成した絶縁膜中におけるSi−C結合の割合の方が若干高めであった(表2参照)。
また、n+拡散層を形成したシリコン基板上に、デカン酸をスピンコートにより塗布した後、300℃、10分間の熱処理を行った。次いで、キシレン溶液としたポリカルボシランを膜厚2μmでスピンコートした後、400℃、30分間の熱処理を行い、塗布溶液を焼成して絶縁膜を形成した。上記一連の工程は、同一のスピンコータ内において連続処理した。この絶縁膜に、クラックは認められなかった。次いで、この絶縁膜上に、上部電極として用いる金層を蒸着により形成した後、常法に従いレジストをマスクとして塩素系ガスでエッチングを行い、MOS構造を有する試料を作製した。
この試料を用いたプローバによる容量測定から算出した絶縁膜の誘電率は約3.2であり、比較例2の場合と比較して、誘電率を大幅に低減できた(表2参照)。
また、半導体素子及び第1層銅配線を形成したシリコン基板(銅配線の厚さは0.6μm、最小配線間隔は0.5μm)上に、デカン酸をスピンコートにより塗布した後、300℃、10分間の熱処理を行い、銅配線層の還元処理及び溶剤乾燥を行った。次いで、銅配線層上にキシレン溶液としたポリカルボシランを3000rpm、30秒の条件(シリコン基板上に2μm厚で塗布可能な条件)で塗布した後、不活性ガス雰囲気中で400℃、30分間の熱処理を行い、塗布溶液を焼成して絶縁膜を形成した。還元処理から絶縁膜形成までの一連の工程は、同一のスピンコータ内において連続処理した。次いで、この絶縁膜層上に、0.8μm厚のSiO2膜を形成後、常法に基づきパターンを形成し、フッ素ガスとアルゴンガスとの混合系でのエッチングを行ってスルーホールを形成してから、第2層銅配線を形成した。同様にして第3層銅配線まで形成した後、保護層として1.5μm厚のSiN膜を形成した。最後に、電極取り出し用の窓開けを行い、半導体装置を得た。
この半導体装置を、比較例1の無機SOG膜を用いて作成した半導体装置と比較したところ、約8%の配線遅延の低減が見られた。また、200℃、3000時間の高温放置を行った後の配線抵抗を測定したところ、本発明の還元方式により形成した絶縁膜を用いて作成した半導体装置では、比較例1の無機SOG膜を用いて作成した半導体装置に比べて約11%抵抗上昇を抑制することができた。
表2に、実施例7〜12及び比較例1,2の評価結果をまとめる。
[変形実施形態]
本発明は上記実施形態に限らず種々の変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、プラズマCVD法により多孔質シリカよりなる層間絶縁膜38,54,58を形成したが、層間絶縁膜38,54,58の材料や形成方法等は上記実施形態に限定されるものではなく、また、これら層間絶縁膜38,54,58をそれぞれ別々の材料及び別々の方法により形成してもよい。層間絶縁膜38,54,58は、多孔質膜でなくてもよい。
例えば以下に示すように、気相成長法により、カーボンを含むシリコン酸化膜(Carbon Doped SiO2)よりなる多孔質の層間絶縁膜38,54,58を形成してもよい。カーボンを含む多孔質のシリコン酸化膜は、例えば以下の方法により形成することができる。
まず、プラズマCVD装置のチャンバ内に、半導体基板10を導入する。プラズマCVD装置としては、例えば平行平板型のプラズマCVD装置を用いる。
次いで、基板温度を例えば300〜400℃に設定する。
次いで、アルキル基を有するシロキサンモノマを気化装置により気化し、反応性ガスを生成する。そして、キャリアガスを用いて、反応性ガスをチャンバ内に導入する。
次いで、平板電極間に高周波電力を印加し、反応性ガスのプラズマを発生する。この際、堆積レートを比較的速く設定することにより、多孔質のシリコン酸化膜となる。
具体的には、例えば、以下のように成膜条件を設定することにより、カーボンを含む多孔質のシリコン酸化膜を形成することが可能である。反応性ガスとして、例えば、ヘキサメチルジシロキサンを用いる。反応性ガスの供給量は、例えば3mg/minとする。キャリアガスとしては、CO2を用いる。キャリアガスの流量は、例えば6000sccmとする。平板電極間に印加する高周波電力は、例えば、13.56MHz(500W)及び100kHz(500W)とする。
このようにして、カーボンを含む多孔質のシリコン酸化膜を形成してもよい。
或いは、以下に示すように、熱分解性の原子団(熱分解性化合物)又は酸化分解性の原子団(酸化分解性化合物)を含む原料を用いて、熱分解性又は酸化分解性の原子団をプラズマにより分解させながら、気相成長法により、カーボンを含む多孔質のシリコン酸化膜よりなる層間絶縁膜38,54,58を形成してもよい。カーボンを含む多孔質のシリコン酸化膜は、例えば以下の方法により形成することができる。
まず、プラズマCVD装置のチャンバ内に半導体基板10を導入する。プラズマCVD装置としては、例えば平行平板型のプラズマCVD装置を用いる。
次いで、基板温度を例えば250〜350℃に設定する。
次いで、アルキル基を有するシロキサンモノマを気化装置により気化し、第1の反応性ガスを生成する。また、フェニル基を有するシラン化合物を気化装置により気化し、第2の反応性ガスを生成する。なお、フェニル基は、加熱した状態で酸化反応を起こさせると分解する原子団(熱分解性及び酸化分解性原子団)である。そして、CO2ガスをキャリアガスとして用いて、これらの反応性ガスをチャンバ内に導入する。この際、平板電極間に高周波電力を印加すると、CO2ガスがプラズマ(酸素プラズマ)となり、フェニル基が分解される。フェニル基を分解しながら、シリコン酸化膜を堆積するため、多孔質のシリコン酸化膜が形成されることとなる。
成膜条件は、例えば以下のように設定する。第1の反応性ガスとしては、より具体的には、例えばヘキサメチルジシロキサンを用いる。第1の反応性ガスの供給量は、例えば1mg/minとする。第2の反応性ガスとしては、より具体的には、例えばジフェニルメチルシランを用いる。第2の反応性ガスの供給量は、例えば1mg/minとする。キャリアガスの流量は、例えば3000sccmとする。平板電極間に印加する高周波電力は、例えば、13.56MHz(300W)及び100kHz(300W)とする。
このようにして、カーボンを含む多孔質のシリコン酸化膜を形成してもよい。
なお、ここでは熱を加えながら酸化を行うと分解する熱分解性及び酸化分解性の原子団を含む材料を用いる場合を例に説明したが、酸化を行うことなく熱分解し得る熱分解性の原子団を含む原料、又は、熱を加えることなく酸化分解し得る酸化分解性の原子団を含む原料を用いて、気相成長法により多孔質のシリコン酸化膜を形成してもよい。
或いは、以下に示すように、熱分解性の有機化合物を含む絶縁膜材料を塗布した後、熱分解性の原子団を熱分解することにより、多孔質有機絶縁膜よりなる層間絶縁膜38,54,58を形成してもよい。多孔質有機絶縁膜は、例えば以下の方法により形成することができる。
まず、熱分解性有機化合物を含むポリアリールエーテルポリマを溶媒により希釈することにより、絶縁膜材料を形成する。熱分解性有機化合物としては、例えば200〜300℃で熱分解する有機化合物を用いる。このような有機化合物としては、例えばアクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、アクリルオリゴマ、エチレンオリゴマ、プロピレンオリゴマ等を用いる。溶媒としては、例えばシクロヘキサノンを用いる。
次いで、半導体基板10上の全面に、スピンコート法により、絶縁膜材料を塗布する。これにより、半導体基板10上に絶縁膜材料よりなる塗布膜が形成される。
次いで、ホットプレートを用いて熱処理を行う。熱処理温度は、例えば100〜400℃とする。これにより、塗布膜中の溶媒が蒸発し、乾燥した有機絶縁膜が形成される。
次いで、キュア装置内に半導体基板10を導入し、熱処理を行う。熱処理温度は、例えば300〜400℃とする。これにより、熱分解性の有機化合物が熱分解し、有機絶縁膜中に空孔が形成される。こうして、多孔質有機絶縁膜が形成される。
このようにして、熱分解性の有機化合物を含む絶縁膜材料を塗布した後、熱分解性の有機化合物を熱分解することにより、多孔質有機絶縁膜を形成してもよい。
或いは、以下に示すように、クラスタ状の珪素化合物(シリカ)を含む絶縁膜材料を塗布した後、熱処理を行うことにより、多孔質の絶縁膜よりなる層間絶縁膜38,54,58を形成してもよい。この多孔質の絶縁膜は、例えば以下の方法により形成することができる。
まず、クラスタ状のシリカを含む絶縁膜材料(シリカクラスタ前駆体)を用意する。このような絶縁膜材料としては、例えば、触媒化成工業株式会社製のナノクラスタリングシリカ(NCS)(型番:セラメートNCS)を用いる。かかる絶縁膜材料は、4級アルキルアミンを触媒として用いて、クラスタ状のシリカが形成されている。
次いで、全面に、例えばスピンコート法により、絶縁膜材料を塗布する。塗布条件は、例えば、3000回転/分、30秒とする。これにより、半導体基板10上に絶縁膜材料の塗布膜が形成される。
次いで、熱処理(ソフトベーク)を行う。熱処理を行う際には、例えばホットプレートを用いる。熱処理温度は、例えば200℃とする。熱処理時間は、例えば150秒とする。これにより、絶縁膜材料の塗布膜中の溶媒が蒸発し、多孔質の層間絶縁膜38が形成される。クラスタ状のシリカを含む絶縁膜材料を用いて層間絶縁膜38を形成するため、空孔が非常に小さい多孔質の層間絶縁膜38が形成される。具体的には、空孔の直径は、例えば2nm以下となるまた、クラスタ状のシリカを含む絶縁膜材料を用いて層間絶縁膜38を形成するため、空孔の分布が非常に均一となる。クラスタ状のシリカを含む絶縁膜材料を用いて層間絶縁膜38を形成すれば、極めて良質な多孔質の層間絶縁膜38を形成することが可能となる。
このようにして、クラスタ状の珪素化合物(シリカ)を含む絶縁膜材料を塗布した後、熱処理を行うことにより、多孔質の絶縁膜を形成するようにしてもよい。
なお、ここでは、クラスタ状の化合物として珪素化合物を含む絶縁膜材料を塗布する場合を例に説明したが、クラスタ状の化合物は珪素化合物に限定されるものではない。他のあらゆる材料よりなるクラスタ状の化合物を含む絶縁膜材料を塗布してもよい。
また、上記実施形態では、プラズマCVD法によりシリコン酸化膜よりなる緻密性の高い絶縁膜40,56,60を形成したが、絶縁膜40,56,60の材料や形成方法等は上記実施形態に限定されるものではなく、また、これら層間絶縁膜40,56,60をそれぞれ別々の材料及び別々の方法により形成してもよい。
例えば、以下に示すように、カーボンがドープされたシリコン酸化膜(Carbon Doped SiO2)よりなる緻密性の高い絶縁膜40,56,60を、気相成長法により形成してもよい。
まず、プラズマCVD装置のチャンバ内に半導体基板10を載置する。プラズマCVD装置としては、例えば平行平板型のプラズマCVD装置を用いる。
次いで、基板温度を例えば400℃に設定する。
次いで、ヘキサメチルジシロキサンを気化装置により気化し、反応性ガスを生成する。そして、不活性ガスをキャリアとして、反応性ガスをチャンバ内に導入する。次いで、平板電極間に高周波電力を印加し、反応性ガスのプラズマを発生する。この際、堆積レートを比較的遅く設定すれば、緻密性の高い絶縁膜40を形成することができる。
具体的には、例えば、以下のように成膜条件を設定すれば、緻密性の高い絶縁膜40を形成することが可能である。反応性ガスの供給量は、例えば1mg/minとする。キャリアガスの流量は、例えば500sccmとする。平板電極間に印加する高周波電力は、例えば、13.56MHz(200W)及び100kHz(200W)とする。平板電極間に高周波電力を印加してプラズマを発生させる時間は、例えば5秒間とする。
このようにして、カーボンがドープされたシリコン酸化膜(Carbon Doped SiO2)よりなる緻密性の高い絶縁膜を、気相成長法により形成してもよい。
或いは、以下に示すように、有機SOG膜を塗布することにより、緻密性の高い絶縁膜40,56,60を形成してもよい。
まず、有機SOG膜を形成するための絶縁膜材料を用意する。このような絶縁膜材料としては、例えば、テトラエトキシシランとメチルトリエトキシシランとを原料として用い、加水分解反応及び縮合反応を起こさせてなるポリマを用いる。
次いで、全面に、スピンコート法により、絶縁膜材料を塗布する。塗布条件は、例えば3000回転/分、30秒とする。これにより、多孔質の層間絶縁膜38上に絶縁膜材料の塗布膜が形成される。
次いで、熱処理(ソフトベーク)を行う。熱処理を行う際には、例えばホットプレートを用いる。熱処理温度は、例えば200℃とする。熱処理時間は、例えば150秒とする。これにより、絶縁膜材料の塗布膜が硬化し、緻密性の高い絶縁膜が形成される。
このようにして、有機SOG膜を塗布することにより、緻密性の高い絶縁膜を形成してもよい。
或いは、以下に示すように、無機SOG膜を塗布することにより、緻密性の高い絶縁膜40,56,60を形成してもよい。
まず、無機SOG膜を形成するための絶縁膜材料を用意する。このような絶縁膜材料としては、例えば、テトラエトキシシランを原料として用い、加水分解反応及び縮合反応を起こさせてなるポリマを用いる。
次いで、全面に、スピンコート法により、絶縁膜材料を塗布する。塗布条件は、例えば3000回転/分、30秒とする。これにより、多孔質の層間絶縁膜38上に絶縁材料の塗布膜が形成される。
次いで、熱処理(ソフトベーク)を行う。熱処理を行う際には、例えばホットプレートを用いる。熱処理温度は、例えば200℃とする。熱処理時間は、例えば150秒とする。これにより、絶縁膜材料の塗布膜が硬化し、緻密性の高い絶縁膜が形成される。
このようにして、無機SOG膜を塗布することにより、緻密性の高い絶縁膜を形成してもよい。
以上詳述した通り、本発明の特徴をまとめると以下の通りとなる。
(付記1) 表面に酸化銅膜が形成された銅配線上に、銅に対して拡散バリア性を有するシリコン化合物と、酸化銅を還元する有機化合物とを含む絶縁膜形成用組成物を塗布する工程と、
熱処理により、前記有機化合物によって前記酸化銅膜を還元して除去するとともに、前記シリコン化合物を硬化して前記シリコン化合物よりなる絶縁膜を形成する工程と
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
(付記2) 付記1記載の半導体装置の製造方法において、
前記絶縁膜を形成する工程は、前記酸化銅膜を還元して除去する第1の熱処理工程と、前記シリコン化合物を硬化する第2の熱処理工程とを有する
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
(付記3) 付記1又は2記載の半導体装置の製造方法において、
前記有機化合物が前記絶縁膜形成用組成物の全体に占める割合が、1〜50wt%である
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
(付記4) 表面に酸化銅膜が形成された銅配線上に、酸化銅を還元する有機化合物を塗布する工程と、
熱処理により、前記有機化合物によって前記酸化銅膜を還元して除去する工程と、
前記酸化銅膜を除去した前記銅配線上に、銅に対して拡散バリア性を有するシリコン化合物を含む絶縁膜形成用組成物を塗布する工程と、
熱処理により、前記シリコン化合物を硬化して前記シリコン化合物よりなる絶縁膜を形成する工程と
を有することを特徴とする半導体装置の製造方法。
(付記5) 付記4記載の半導体装置の製造方法において、
前記有機化合物を塗布する工程、前記酸化銅膜を還元して除去する工程、前記絶縁膜形成用組成物を塗布する工程及び前記絶縁膜を形成する工程は、同一の処理室内で連続して行う
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
(付記6) 付記1乃至5のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記有機化合物は、アルコール類、アルデヒド類、カルボン酸類及び糖類からなるグループから選択される少なくとも1の物質であって、炭素数が4以上であり、沸点が50℃以上である
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
(付記7) 付記1乃至6のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記シリコン化合物は、密度が1〜3g/cm3である
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
(付記8) 付記1乃至7のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記シリコン化合物は、ポリカルボシラン又はポリシラザンである
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
(付記9) 付記1乃至8のいずれか1項に記載の半導体装置の製造方法において、
前記熱処理は、不活性ガス雰囲気中にて行う
ことを特徴とする半導体装置の製造方法。
(付記10) 半導体基板上に形成された銅配線と、
前記銅配線上に形成され、銅に対して拡散バリア性を有するシリコン化合物よりなり、酸化銅を還元する有機化合物を含む絶縁膜と
を有することを特徴とする半導体装置。
(付記11) 銅に対して拡散バリア性を有するシリコン化合物と、酸化銅を還元する有機化合物とを含むことを特徴とする絶縁膜形成用組成物。